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2015年9月 9日 (水)

前月から上昇した消費者態度指数はマインド改善を示唆するのか?

本日、内閣府から8月の消費者態度指数が公表されています。昨日公表された景気ウォッチャーが供給サイドのマインド指標であるのに対して、本日公表の消費者態度指数は典型的な需要サイドのマインド指標です。前月から+2.0ポイント上昇して41.7となりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の消費者態度指数、1.4ポイント上昇の41.7 判断は据え置き
内閣府が9日発表した8月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.4ポイント上昇の41.7だった。2カ月ぶりの改善となった。「暮らし向き」や「雇用環境」など4つの意識指標が全て上昇した。ガソリン価格の低下などが消費者心理の支えになったもようだ。
もっとも今春以降は小幅な動きが続いていることを受け、内閣府は消費者心理の基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。調査基準日は8月15日で、8月下旬からの世界的な株価下落が始まる前におおよその回収を終えていた。
意識指標では「暮らし向き」が2.0ポイント上昇したほか、「雇用環境」も1.6ポイント上昇した。「耐久消費財の買い時判断」も1.5ポイント上昇した。
1年後の物価見通しについて「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月から2.2ポイント減少し、85.5だった。
調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は5518世帯(回答率は65.7%)だった。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

photo

8月の消費者態度指数を前月差でみると、「暮らし向き」が+2.0ポイント上昇し40.1、「雇用環境」が+1.6ポイント上昇し46.3、「耐久消費財の買い時判断」が+1.5ポイント上昇し40.3、「収入の増え方」が+0.3ポイント上昇し39.9と、すべてのコンポーネントが上昇を示しました。消費者態度指数の+2.0ポイントの上昇というのは大きく見えるんですが、7月がすべてのコンポーネントでマイナスを記録した翌月のリバウンドであり、天候不順等の影響を受けた7月から、その前の6月の水準に戻っただけで、特に大きく消費者マインドが改善したと考えるべき根拠はありません。従って、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣では基調判断を「足踏み」に据え置いています。昨日発表の景気ウォッチャーとともにマインド指標はいずれもかなり弱いと私は受け止めています。一例として考えるべきポイントは、「収入の増え方」が前月からわずか+0.3ポイントしか上昇しておらず、ほぼ横ばいであるにもかかわらず、「暮らし向き」が+2.0ポイント上昇したのは、明らかに何らかの物価が落ち着きを見せているからであり、引用した記事には「ガソリン価格の低下」とあります。いうまでもなく、原油をはじめとする国際商品市況の低迷がガソリン価格を押し下げており、相対価格の変化として生活必需品価格の低下につながっているわけですが、アベノミクスの本来の眼目や日銀のインフレ目標からすれば、物価の下落を原因としてではなく収入の増加により暮らし向きが改善されるのが望ましい姿と考えるべきです。その点からも、企業が内部留保しているキャッシュを何らかの所得分配機能を活かしつつ、家計に還元して所得の増加につなげることが必要です。

昨日の景気ウォッチャーと今日の消費者態度指数を見る限り、所得が伸びずマインドも好転せず、消費の回復にはかなり時間がかかる可能性があると考えざるを得ません。新興国をはじめとする世界経済の先行きを考えると、何らかの追加の金融緩和や経済対策が必要なのかどうか、考えるべき時期に達しているのかもしれません。

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