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2015年10月 3日 (土)

米国雇用統計で雇用の伸びが鈍化し米国の金利引き上げはどうなるか?

日本時間の昨夜、米国労働省から9月の米国雇用統計が公表されています。ヘッドラインとなる非農業部門雇用者数は前月から+142千人増加し、失業率は前月と同じ5.1%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから記事を最初の3パラだけ引用すると以下の通りです。

Lackluster Jobs Data Raise Concerns on Economy's Course
Unexpectedly dismal job growth last month cast a shadow on the nation's economy, as a government report on Friday sent analysts scrambling for adjectives like "dreadful," "a body blow" and "grim" to describe just how disappointing they found the latest employment figures.
The Labor Department found that the jobless rate held steady at 5.1 percent in September, but wage gains stalled, the labor force shrank and employers created many fewer positions than they had been averaging in recent months. While the latest report is only a snapshot of the economy and the weakness may ultimately prove fleeting, it made clear that ordinary workers are still failing to take home the kind of monetary rewards normally expected from a recovery that has being going on for more than six years.
The new estimates came just two weeks after the Federal Reserve decided that the economy's advance remained too fragile to risk lifting interest rates from their near-zero level - even as it hinted an increase would come before the year's end. Now, experts said, signs of a slowdown may well push any rise into 2016.

この後にエコノミストなどへのインタビューが続きます。やや長く引用してしまったものの、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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非農業部門雇用者数の伸びが先月の統計からハッキリと鈍化し、米国連邦準備制度理事会(FED)が雇用改善の目安としており、市場の事前コンセンサスでもあった+200千人増に届かず、9月の非農業部門雇用増は+142千人にとどまり、さらに、先月8月の統計も当初発表の+173千人から+136千人に下方修正されています。ただ、失業率は引き続き極めて低い水準の5%そこそこですから、米国雇用の評価はビミョーなところです。米国の雇用増がやや減速した要因として、中国をはじめとする新興国の景気減速やドル高の影響をどう見るかなど、エコノミストのポジションが現れそうな気がします。米国の連邦公開市場委員会(FOMC)は日銀の金融政策決定会合と違って6週間おきですから、今月10月27-28日の開催です。私自身は先月の米国雇用統計発表の時点では、9月のFOMCで利上げの可能性が高いと考えていたところ、実際には利上げが見送られたわけですから、10月下旬のFOMCでも利上げが見送られる可能性が高いと見なさざるを得ません。もちろん、ポジションによって別の雇用減速の要因を引っ張り出せば話は別ですが、9月FOMCと10月FOMCで整合性が取れないと中央銀行と市場との対話に齟齬を来たしかねないおそれがあるようで怖いです。

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また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移していると受け止めており、少なくとも、底割れしてかつての日本や最近の欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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