« 3四半期振りに大企業製造業の業況判断DIが悪化した日銀短観をどう見るか? | トップページ | 米国雇用統計で雇用の伸びが鈍化し米国の金利引き上げはどうなるか? »

2015年10月 2日 (金)

ほぼ完全雇用を示す雇用統計から次の段階の労働市場を見通す!

本日、雇用統計、すなわち、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などが公表されています。失業率は前月から0.1%ポイント上昇して3.4%を記録した一方で、有効求人倍率は前月から+0.02ポイントさらに上昇して1.23に達しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

求人倍率23年ぶり高水準、8月1.23倍 失業率3.4%
厚生労働省が2日発表した8月の有効求人倍率(季節調整値)は前月から0.02ポイント上昇して1.23倍だった。1992年1月以来、23年7カ月ぶりの高水準となる。一方、総務省が同日発表した8月の完全失業率(同)は3.4%で前月より0.1ポイント上昇した。同省はよりよい条件の仕事を探す人が増えた影響とみており「雇用情勢は改善傾向で推移している」と判断している。
有効求人倍率は仕事を探す人1人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。8月は企業の求人が増え、有効求人数は235万3699人で前月から2.2%増えた。これに対し、有効求職者数は194万3130人で0.7%の増加にとどまった。
新たな求職の申込件数は41万8392件と前年同月より4.0%減った。一方で新規求人数は前年同月より4.9%多い81万6451人に増え、企業にとって採用が難しい状況が続いている。
主要産業別でみると、宿泊・飲食サービス業(前年同月比で13.4%増)や教育・学習支援業(同8.3%増)などで新規求人数が増えた。
働ける人のうち、職に就かずに仕事を探している人の割合を示す8月の完全失業率は前月より0.1ポイント上昇した。よりよい条件の仕事を求めて自発的に離職する人が前月より4万人増えており、総務省は「景気回復に伴う内容で、悪いものではない」と説明している。

いつもながら網羅的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のいつものグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

photo

まず、失業率について見ると、単純に公表されている完全失業者数と労働力人口から割り算してもう少し桁数を詳しく計算すると、7月の失業率が3.334%で8月が3.394%となります。労働力人口が変化ない中で失業者数が4万人増加し、しかも、引用した記事にもある通り、条件のいい職を求めての自発的離職が4万人増なんですから、8月の失業率の上昇については何ら悲観的に見る必要はありません。有効求人倍率はさらに上昇して1992年バブル経済崩壊直後の水準に達しています。一番下のグラフの新規求人も増加しており、雇用の先行指標ですから、この先もしばらく雇用は堅調な推移を続けそうです。
失業率の水準に照らし合わせて、もちろん、有効求人倍率も考えれば、労働市場はほぼ完全雇用の状態にあると私は考えています。人手不足の状態ともいえます。ですから、賃金が上昇したり、非正規雇用から正規雇用へのスイングが生じたりし始めるんではないかと期待しているところ、2013年1月から総務省統計局の労働力調査で月次の統計を取り始めた正規・非正規雇用の状況については、まだ、非正規雇用が減って正規雇用が増えるような変化は生じているようには見えません。来週月曜日の毎月勤労統計の賃金統計なども参照したいと思います。

|

« 3四半期振りに大企業製造業の業況判断DIが悪化した日銀短観をどう見るか? | トップページ | 米国雇用統計で雇用の伸びが鈍化し米国の金利引き上げはどうなるか? »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ほぼ完全雇用を示す雇用統計から次の段階の労働市場を見通す!:

« 3四半期振りに大企業製造業の業況判断DIが悪化した日銀短観をどう見るか? | トップページ | 米国雇用統計で雇用の伸びが鈍化し米国の金利引き上げはどうなるか? »