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2016年2月19日 (金)

産労総合研究所による「2016年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」の結果やいかに?

とても旧聞に属する話題かもしれませんが、2月5日に産労総合研究所から「2016年 春季労使交渉にのぞむ経営側のスタンス調査」の結果が発表されています。いくつか結果を紹介すると、今春に賃上げを実施予定の企業は6割弱の58.9%、自社の賃上げ率の予測としては2015年と同程度が6割となっています。また、2016年の年間賞与額は、2015年と比べてほぼ同額が30.1%に上るものの、同時に、現時点ではわからないが41.1%と上回っています。さらに、非正社員の処遇見直し状況では、2015年に非正社員の「賃金を増額した」企業は53.4%に達しています。今春闘での賃上げは我が国の景気の先行きにとっても大きな影響を示すことが考えられますので、私のこのブログでもリポートからグラフを引用しつつ、簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、リポートから 図表2 2016年の自社の予想賃上げ率 のグラフを引用すると上の通りです。賃上げを実施する予定の58.9%の企業だけを対象にした結果ですので、かなり偏りはあることと思いますが、見れば明らかな通り、前年並みという回答がもっとも多くなっています。ただし、企業規模別では1000人以上の大企業と300-999人の中堅企業と299人以下の中小企業の3階級だけなんですが、昨年2015年を上回るのは大企業よりも中小企業の方が割合が高く、逆に、下回るは中小企業よりも中堅企業、さらに、中堅企業よりも大企業で割合が高く、規模の小さな企業で人手不足が深刻なために賃上げに頼る構造になっている可能性がうかがわれます。

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次に、リポートから 図表5 企業業績が向上した場合の配分 のグラフを引用すると上の通りです。半分強の55.5%の割合で賞与に回すというスタンスで、約4社に1社の24.7%が賃上げと賞与にバランスよくというスタンスを示しています。企業業績が向上しても、賃上げにも賞与にも回さないという企業が5.5%ありますが、過剰債務などの何らかの事情があるものと勝手に推測しています。

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続いて、リポートから 図表6 2016年の年間賞与の見通し のグラフを引用すると上の通りです。現時点では不明なのが4割を超えており、何とも評価しがたい結果です。なお、この調査は昨年2015年11月に実施され、今年の年明け以降の金融市場の動揺が織り込まれておらず、上場企業等を中心に3000社に送付して146社の回答だそうですから、信頼性の点ではかなりの幅を持って見る必要があるのかもしれませんが、相変わらず、企業業績が上がっても恒常所得の毎月の賃上げに充当する企業の割合が低いように私には感じられてしまいます。さらに、年明け以降の金融市場の動揺などの不透明感を加えて、実際の春闘などではどのような賃上げ結果が得られるのでしょうか。大いに注目しています。

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