10-12月期2次QEは1次QEから上方改定されるもマイナス成長は変わらず!
本日、内閣府から昨年2015年10-12月期のGDP統計の改定値が公表されています。エコノミストの業界で2次QEと呼ばれているのは広く知られた通りです。先月公表の1次QEから上方改定され、季節調整済みの系列の前期比成長率で▲0.3%、前期比年率で▲1.1%のマイナス成長を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
10-12月期GDP改定値、年率1.1%減に上方修正 設備投資など上振れ
内閣府が8日発表した2015年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.3%減、年率換算では1.1%減だった。設備投資や民間在庫の寄与度が小幅に上振れて、2月15日公表の速報値(前期比0.4%減、年率1.4%減)から上方修正となった。
QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値は前期比0.4%減、年率1.4%減となっており、速報値から横ばいになると見込まれていた。石原伸晃経済財政・再生相は記者会見で「日本経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)は良好で、変化があるとは認識していない」と語り、緩やかな回復基調が続いているとの見方を示した。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.2%減(速報値は0.3%減)、年率では0.9%減(1.2%減)だった。
実質GDPを需要項目別にみると、設備投資が1.5%増(1.4%増)と、小幅に上方修正された。法人企業統計でサービス業などで投資が活発だったことが反映された。個人消費は0.9%減(0.8%減)となった。テレビや白物家電などが小幅な下振れにつながった。民間在庫の寄与度はマイナス0.0ポイント(マイナス0.1ポイント)だった。原材料や仕掛かり品の在庫が速報値で仮置きしていた数値を上回った。公共投資は3.4%減(2.7%減)となった。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス0.4ポイント(マイナス0.5ポイント)だったほか、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.1ポイント(プラス0.1ポイント)だった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてプラス1.5%(プラス1.5%)だった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2014/10-12 | 2015/1-3 | 2015/4-6 | 2015/7-9 | 2015/10-12 | |
1次QE | 2次QE | |||||
国内総生産 (GDP) | +0.5 | +1.1 | ▲0.4 | +0.3 | ▲0.4 | ▲0.3 |
民間消費 | +0.7 | +0.2 | ▲0.8 | +0.4 | ▲0.8 | ▲0.9 |
民間住宅 | ▲0.4 | +2.1 | +2.3 | +1.6 | ▲1.2 | ▲1.2 |
民間設備 | ▲0.1 | +2.9 | ▲1.1 | +0.7 | +1.4 | +1.5 |
民間在庫 * | (▲0.3) | (+0.6) | (+0.3) | (▲0.2) | (▲0.1) | (▲0.0) |
公的需要 | +0.3 | ▲0.4 | +0.9 | ▲0.2 | ▲0.1 | ▲0.1 |
内需寄与度 * | (+0.2) | (+1.1) | (▲0.1) | (+0.1) | (▲0.5) | (▲0.4) |
外需寄与度 * | (+0.1) | (+0.3) | (▲0.0) | (▲0.2) | (+0.1) | (+0.1) |
輸出 | +3.2 | +2.1 | ▲4.6 | +2.6 | ▲0.9 | ▲0.8 |
輸入 | +1.1 | +1.9 | ▲2.5 | +1.3 | ▲1.4 | ▲1.4 |
国内総所得 (GDI) | +0.6 | +2.1 | +0.0 | +0.4 | ▲0.3 | ▲0.2 |
国民総所得 (GNI) | +1.5 | +1.2 | +0.5 | +0.3 | +0.1 | +0.2 |
名目GDP | +0.9 | +2.0 | ▲0.1 | +0.6 | ▲0.3 | ▲0.2 |
雇用者報酬 | +0.1 | +0.8 | ▲0.1 | +0.7 | +0.2 | +0.2 |
GDPデフレータ | +2.3 | +3.3 | +1.5 | +1.8 | +1.5 | +1.5 |
内需デフレータ | +2.1 | +1.4 | +0.0 | +0.0 | ▲0.2 | ▲0.2 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2015年10-12月期の最新データでは、前期比成長率がマイナスに転じ、特に、赤い消費のマイナス寄与が大きい一方で、水色の設備投資と黒の外需がプラス寄与しているのが見て取れます。

まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは1次QEからほぼ変わらずでしたから、結果は少し上振れしたと受け止めるべきなんでしょうが、景気認識としては大きな変更はなく、引き続き、10-12月期も景気は踊り場で停滞していた、と考えるべきです。もちろん、消費や設備投資が上方改定されたのは事実なんですが、他方で、在庫の上方改定もあって、これは逆から見れば、在庫調整が進んでいないともいえます。さらに、上方改定されたものの、消費も輸出もマイナスのままですし、雇用者報酬もプラスではあっても上昇幅は大きく鈍化しています。設備投資を除いて、消費や輸出はいうに及ばず公共投資まで、最終需要項目が軒並み前期比マイナスというわけですから、決して順調な景気回復過程とは見なせないと考えるエコノミストが多そうな気がします。
先行きについては、年明け直後の金融市場の動揺の影響が見込みがたいんですが、基本は設備投資がプラスを続け、消費も10-12月期のようなマイナスにならずに横ばい基調を示し、輸出についても米国景気が堅調ですのでそれなりの回復を見せるとすれば、かなり仮定のお話が多いものの、このままマイナス成長が続くとは考えられず、緩やかながら回復軌道に戻るんではないかと私は見込んでいます。ただし、賃上げに支えられた消費と計画に近いラインで実行される設備投資がこの先の景気の牽引役になることを期待しつつも、新興国経済や為替動向など、下振れリスクがまだまだ残されているのも事実です。

最後に、GDP統計を離れて、今日は、内閣府から1月の消費者態度指数と景気ウォッチャーのマインド調査結果が、また、財務省から12月の経常収支が、それぞれ公表されています。いつものグラフは上の通りです。日経新聞のサイトの記事へのリンクだけ以下の通り示しておきます。
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