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2016年3月10日 (木)

企業物価の下落はいつまで続くのか?

本日、日銀から2月の企業物価指数(PPI)が公表されています。ヘッドラインの国内物価上昇率は前年同月比で▲3.4%と、消費増税の影響が一巡した昨年2015年4月から1年近く連続でマイナスを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の企業物価指数、前年比3.4%下落 前月比は9カ月連続下落
日銀が10日発表した2月の国内企業物価指数(2010年=100)は99.8で、前年同月比3.4%下落した。原油価格の下落が響き11カ月連続で前年割れとなった。市場予想の中心は3.3%下落だった。前年比での下落幅は前の月(確報値で3.2%下落)からわずかに拡大した。
前月比では0.2%下落し、9カ月連続で前の月を下回った。下落要因の内訳を見ると、寄与度が最も大きかったのは石油・石炭製品だった。原油価格下落の影響が出た。液化天然ガス(LNG)の通関単価の下落などで電力・都市ガス・水道も下げた。国際市況の低迷を背景に、化学製品や鉄鋼、非鉄金属も下落した。
ただ、前月比の下落幅は1月の確報値(1.0%下落)から大幅に縮小した。2月に入り、中国の景気対策への期待が浮上し銅価格など非鉄金属市況が持ち直しの兆しを示したことが指数を下支えした。日銀の調査統計局では、非鉄金属が先行きの指数の下げ止まりに寄与するとみている。一方、原油価格も下げ止まりつつあるが、国内の電力料金などに反映されるまでには時間がかかるため、なお指数の重荷になるもようだ。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは287品目、下落は415品目となった。下落品目と上昇品目の差は128品目で、前の月の157品目から拡大した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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日銀からの公表資料では前月比で下落した主要な類別・品目が明らかにされており、国内企業物価では前月比▲0.2%下落のうち、軽油、ガソリン、液化石油ガスなどの石油・石炭製品だけで▲0.16%の寄与度があります。また、契約通貨ベースの輸入物価の前月比下落率▲2.9%のうち、原油、液化天然ガス、液化石油ガスなどの石油・石炭・天然ガスだけで▲2.76%の寄与となっています。季節調整済みの系列ではないので、確定的なことはいえないかもしれませんが、もう、何度も言い古された表現ながら、国際商品市況における石油価格の下落に伴う物価下落がまだ続いており、モノで構成される国内企業物価が大きく下落し、サービスで構成されるサービス物価の上昇率は国際商品市況の影響を受けつつも、国内労働市場における人手不足に起因する賃金上昇のインパクトの方が大きく、最近時点までプラスを維持しているのとは対照的です。ただし、国内物価の前年同月比上昇率で見て、直近の1月から2月には下落幅がやや拡大しましたが、それでも、下落幅がもっとも大きかった2015年9月の▲4.0%からは、極めて緩やかながら下落幅は縮小を見せています。国際商品市況における石油価格の動向は私には見極め難いものの、方向としては物価安定に向かっている期待は持てるのかもしれません。

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