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2016年3月 1日 (火)

本日公表の雇用統計と法人企業統計から何が読み取れるのか?

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、財務省から法人企業統計が、それぞれ公表されています。雇用統計は今年1月、法人企業統計は昨年10-12月期の統計です。失業率・有効求人倍率ともに前月より改善を示し、それぞれ、失業率は0.1%ポイント低下して3.2%を記録し、有効求人倍率も+0.01ポイント上昇して1.28倍となっています。一方、法人企業統計では季節調整していない原系列のベースで、売上高は前年同期比▲2.7%減の331兆8402億円、経常利益は▲1.7%減の17兆7630億円、設備投資は+8.5%増の10兆5302億円となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

完全失業率、1月は前月比0.1ポイント低下の3.2% 「改善傾向続く」
総務省が1日発表した1月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は3.2%で、前月から0.1ポイント低下した。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値は3.3%だった。総務省は雇用情勢について「引き続き改善傾向で推移している」としている。
就業率は前年同月から0.8ポイント上昇し、57.8%となった。人手不足や女性の労働参加などを背景に、製造業や医療・福祉、運輸・郵便業などで就業者が増加した。
完全失業率を男女別にみると、男性が前月比0.2ポイント低下の3.4%、女性が横ばいの2.9%だった。完全失業者数は前月比9万人減の212万人となった。このうち、勤務先の都合や定年退職など「非自発的な離職」は1万人増、「自発的な離職」は6万人減だった。
就業者数(同)は6458万人で前月から61万人増加した。雇用者数も50万人増の5725万人となった。
法人企業統計、設備投資8.5%増 経常益は4年ぶり減 10-12月期
財務省が1日発表した2015年10-12月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比8.5%増の10兆5302億円だった。伸び率は7-9月期(11.2%増)から鈍ったものの、11四半期連続で増えた。製造業、非製造業とも投資が拡大した。一方、新興国の景気減速などが逆風となり、経常利益は4年ぶりの減益に転じた。
産業別の設備投資の動向は、製造業が10.2%増と6四半期連続で増えた。業種別ではスマートフォン(スマホ)や自動車向け電子部品の生産増強があった情報通信機械のほか、自動車で新型車向けの増強投資や研究開発などがみられた。非製造業は7.6%増で11四半期連続のプラス。卸売業の物流センター建設や、宿泊業でホテルの建設・改修などが寄与した。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は、季節調整済みの前期比で0.0%減だった。わずかながら、7-9月期(5.7%増)からマイナスとなった。内訳は製造業が0.1%増、非製造業が0.1%減だった。
経常利益は前年同期比1.7%減の17兆7630億円となり、東日本大震災後に企業収益が落ち込んだ11年10-12月期以来の減益に転じた。非製造業は12.7%伸びる一方で、製造業が21.2%減った。情報通信機械の中国向け電子部品の売り上げが振るわなかった。輸送用機械では人件費などの固定費増も重荷となった。ただ、経常利益額は統計データがさかのぼれる1954年4-6月期以降で過去3番目の高水準だった。
全産業の売上高は前年同期比2.7%減の331兆8402億円で、3四半期ぶりの減収だった。石油・石炭業で原油安に伴う販売価格の下落の影響が出た。鉄鋼業は鋼材の供給過剰による価格低下も収益を下押しした。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の15年10-12月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。

いずれも包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。しかし、昨日と同じように2つの統計の記事を一気に並べるとそれなりのボリュームになります。続いて、雇用統計については、以下のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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雇用統計については、失業率が低下し有効求人倍率が上昇していますので、雇用が改善しつつさらに人手不足が進んだ形になっていますが、中身が少し異なります。すなわち、総務省統計局の労働力調査の結果として公表される失業率については、昨年2015年12月から今年1月に向かって、供給サイドの労働力人口が増加し、企業側の需要サイドである雇用者や就業者がそれ以上に増加するという好循環の中で失業率が低下しています。雇用が改善したため非労働力人口から労働市場に参入し、かつ、雇用されたり就業したりする人もそれ以上に多かった、という内容です。他方、厚生労働省のハローワークなどで取りまとめている有効求人倍率は、企業からの需要サイドの求人数が減少しつつ、供給サイドの求職者数がさらに減少して、結果的に有効求人倍率が上昇しています。求職者数の減少は失業率の低下と方向性としては同じなんですが、求人数の減少は企業活動の水準低下を示しているのか、あるいは、人手不足で採用を諦めたのか、場合によっては人手から機械に代替する設備投資を考えているのか、詳しい情報はありませんが、必ずしも好ましい形での有効求人倍率上昇ではない可能性が示唆されていると私は受け止めています。特に、雇用の先行指標となる新規求人については、上のグラフの最後のパネルで示した通り、新規求人数は1月に減少しましたが、それ以上に新規求職者数が減っていますので、1月の新規求人倍率は2.07倍と12月の1.90倍から跳ね上がっています。ただ、単月の動きですので神経質になる必要性は低いともいえ、あるいは、季節調整要因とかのテクニカルな動きである可能性も排除できませんし、我が国労働市場はほぼ完全雇用に達したと多くのエコノミストは考えていますので、ノイズとはいわないものの、重視する必要のない細かな変動の範囲内かもしれません。いずれにせよ、量的な雇用の拡大はまだ続いていることが確認され、次には賃上げや正規雇用の増加などの質の改善の局面が遅からずやって来ることを私は期待しています。

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次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが上のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。また、影をつけた部分は雇用統計と同じで景気後退期を示しています。ということで、企業活動には少し翳りのようなものが見え始めた気がします。季節調整済みの系列が公表されている上のグラフの3指標、すなわち、売上げと経常利益と設備投資を見ると、売上高は4四半期連続で前期比減少を記録し、1-3月期▲0/9%減、4-6月期▲0.1%減、7-9月期同じく▲0.1%減の後、10-12月期は▲1.6%減を記録しています。経常利益も2四半期連続の前期比マイナスです。特に製造業の経常利益の落ち込みが大きくなっています。非製造業の経常利益は依然として過去最高に近い水準にあるんですが、製造業は過去最高益を記録した2014年10-12月期のレベルからは20%超の落ち込みを示しています。消費をはじめとして内需も冴えないんですが、中国をはじめとする新興国経済の低迷や円安効果がの一巡したことなどを受けて製造業の収益環境は厳しくなりつつあり、春闘をリードするのは製造業ですから今後の賃上げ交渉への影響などが懸念されます。設備投資については製造業・非製造業とも7-9月期からほぼ横ばいとなっています。先行き設備投資については、企業収益が不透明であり、需要項目として経済成長を牽引する期待がどこまでできるかについてはやや疑問が残ります。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。いずれも、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しました。また、最初にお示ししたグラフでは季節調整済みの設備投資はこの7-9月期にやや増加したものの、キャッシュフローとの比率で見れば設備投資は50%台後半で停滞が続いています。これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。経常利益などの企業収益の先行きに不安が残るものの、これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないかと私は期待しています。

本日公表された法人企業統計などを盛り込んで、昨年2015年10-12月期のGDP統計2次QEが来週3月8日に公表される予定となっています。需要項目の中では、季節調整済みの前期比で+1.4%増だった設備投資がやや下方修正され、その影響で成長率も下方修正されると考えられ、仕上がりの前期比成長率は▲0.4%から変更ないか、少し下方修正されるといったあたりではないかと私は予想しています。また、日を改めて2次QE予想として取りまとめたいと思います。

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