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2016年4月 9日 (土)

今週の読書は経済書を中心に計8冊!

今週の読書は経済書と小説に新書も加えて、以下の8冊です。まだかなり多過ぎる気がしていますが、実は、この週末もかなり予約していた本が図書館に届いてしまいました。来週くらいまでは読書過多な気がしますが、季節もよくなって他の活動にも時間を割きたく、読書は少しずつペースダウンさせたいと願っています。

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まず、ジョセフ E. スティグリッツ『スティグリッツ教授のこれから始まる「新しい世界経済」の教科書』(徳間書店) です。著者はいうまでもなく、リベラル派の格差などを問題視する経済学者であり、ノーベル賞受賞のエコノミストです。本書の英語の原題は Rewriting the Rules of the American Economy となっています。今年になってルーズヴェルト研究所のリポートとして明らかにされた後、出版されています。1980年ころからの英国のサッチャリズムと米国のレーガノミクス以来、トップ1%層が経済の成果をほぼ1人占めにし、国家の礎となるべき中流や下層の国民生活が極めて劣悪化している米国資本主義の現実を解き明かすとともに、新たな経済に向けてルールを書き直すことを提唱しています。第1部の3章で現状を分析し、以下に格差が拡大し、資本主義経済が富裕層にのみ奉仕する体制に変化し、中間層や下層の国民の賃金が上がらなくなった理由を労働組合運動や税制などの面から解き明かしています。私はすっかり忘れましたが、第3章の賃金の動向の分析は、かなりマルクス『資本論』の絶対的剰余価値の生産に近い気がしました。なお、これは褒め言葉です。第2部では処方箋を展開し、最上層の抑制、例えば、知的財産権のバランス回復や to big to fail なのであれば、スタンダード石油やAT&Tを分割したのと同じ主砲を金融機関にも導入する方向が可能であると示唆しています。また、トービン税の可能性にも触れられています。そして、中間層を成長させるべく労働組合の交渉力の強化や教育と医療の充実などのための方策が論じられています。何といっても、富裕層によるレント・シーキングを防止する観点からも、累進課税の強化は欠かせません。また、Gali などの最近のフィリップス曲線に関する研究でも、賃金決定において労働組合の交渉力はそれなりにモデルに組み入れられており、私は興味を持って見ていたりしますので、決して突飛な発想ではないと思います。そして、何よりも、スティグリッツ教授の専門分野である情報の非対称性により、市場がまったく効率的な資源配分に適さなくなっている可能性にも目を向けるべきです。その市場の失敗を是正するのは政府の役割です。

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次に、橘木俊詔『21世紀日本の格差』(岩波書店) です。いうまでもなく、著者は格差・不平等や貧困問題に関する第1人者のエコノミストであり、本書は、ピケティ教授が来日した際の講演や橘木教授のコメントなどを基に構成する予定であったところ、ピケティ教授から断られたようで、そのため、最初に、ピケティ教授の『21世紀の資本』と昨年のノーベル経済学賞受賞のディートン教授と『21世紀の不平等』のアトキンソン教授を並べて説き起こす章から始まり、格差や貧困に関する論考を連ねています。現在の日本における格差や貧困の現状を分析して、1960-70年代から悪化していることを明らかにしつつ、高所得層への累進度の高い税制が可能かどうか、必死になって説得しています。そして、その中で、成長と平等のトレードオフについて考えを進めています。おそらく、私の直感では成長と平等はトレード・オフの関係にありそうな気がしますが、経済変動への耐性とか、金融危機からの立ち直りなんかは平等の度合いが高い方が有利な気がします。定量的な論証は出来ませんが、直感的にそう感じる部分があります。ただ、ここでは橘木教授自身の格差や貧困問題に関する罪と罰も同時に考えたく、すなわち、労働経済学の観点からマイクロな視点を前面に打ち出して、定量的な分析を繰り広げるのは、決して正しくないわけではないんですが、結局、データや期間の取り方などで必ずしも頑健な結果が得られるわけではない一方で、マクロの議論をすっ飛ばして、実に細かい方向に進みかねません。というか、本書でも、健康格差や老老格差などの本質ではない方向に進むバイアスを示しているような気がします。マクロで労働分配率が低下している点については、結局、誰も目をつけず放置されていたところ、ピケティ教授が敢然と立ち向かったんですが、それを無視してピケティ理論の本質を見逃す形で、こういった細かな論点にすり替えのような議論を持ち込むのは私は大きな疑問です。格差や貧困は先進国でも途上国や新興国でも、もっと大きな観点から議論され、解決されるべき問題ではないでしょうか。現在の安倍政権が外交や安保政策では右派的な傾向を見せつつ、労働政策や国民生活では賃上げや同一労働同一賃金への方向を示しているのはどうしてなのか、リベラルな思考からしっかりと解明されるべきではないでしょうか?

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次に、日本経済新聞社[編]『TPPがビジネス、暮らしをこう変える』(日本経済新聞出版社) です。昨年秋に大筋合意され、幹事国のニュージーランドから全文が明らかにされたTPPですが、日本政府もCGEモデルを使って経済効果を試算して昨年12月下旬に公表したりしています。ということで、本書では日経新聞の記者によってTPPによる国民生活やビジネスシーンの変化の方向を打ち出しています。第1章では国民生活の、第2章ではビジネスシーンの、それぞれのTPP発行後10年という日本における仮想的な変化の方向をシミュレーションしています。というか、見方によってはバラ色の未来を描き出して見せています。チクリと、バターの品薄は解消されない一方で、工業製品には恩恵少ない、といったことも現実として指摘しています。第3章ではTPP交渉を取材から振り返り、私も同じ印象なんですが、やっぱり、米国の知的所有権における譲歩が大きかった点を指摘しています。第4章と第5章では今後の世界経済や貿易の方向を占い、日米を中心とするTPPと中国と欧州を含むアジア・インフラ投資銀行(AIIB)の覇権争い的な途上国の囲い込みを予想しています。その中では、ASEANの大国であるインドネシアとタイがTPPに参加の意向を表明しており、特に、インドネシアはやや不透明なやり方で高速鉄道を中国に落札させながら、大統領が明確にTPP参加の意向を表明していますから、なかなか面白そうな展開になるような気がします。最後に、1990年代前半のウルグアイ・ラウンド交渉妥結時の農業対策費6兆円の反省の上に立ったTPP対策のあり方を議論しています。TPPは関税交渉としては、確かに質が高いと言われてはいますが、特に先進国である日米では大きな関税引き下げの余地もなく、むしろ、知的財産権とISDSなどの紛争解決などのほうが関税よりも重要と指摘する意見もあります。私はそれなりに関税交渉の複雑怪奇さを知っているだけに、TPPの交渉成立には感慨を覚えないでもないんですが、長期に渡る関税引き下げプロセスが始まったばかりで、私の寿命が尽きるころにはまだゼロ関税の自由貿易の達成は出来ていないでしょうから、まだまだ先の長いお話だと受け止めています。

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次に、上野千鶴子『おひとりさまの最期』(朝日新聞出版) です。著者は著名な社会学者であり、我が母校である京都大学の先輩でもありますから、マルクス主義の影響をかなり受けています。そして、団塊の世代です。本書は、同じ著者の『おひとりさまの老後』、『男おひとりさま道』に続く3部作の完結編だそうです。高齢化が進む日本で、死に場所難民が増加することを予想し、自宅でひとりで死ぬことが多くの高齢者の幸福ではないか、という観点から、どのようにすれば在宅ひとり死が出来るかを考察しています。そして、現在の政府の医療や介護といった社会福祉政策の方向性は、動機が財政費用削減一辺倒なのは気にかかるとしても、在宅ひとり死という高齢者の幸福実現には有益との立場で、動機の不純正を考慮しつつも賛同していたりします。そして、在宅ひとり死に最適なのはガンによる死亡だと指摘しつつも、さすがに死因は選べないので、在宅ひとり死の条件として、24時間対応の巡回訪問介護、訪問看護、訪問医療の多職種連携による3点セットが必要と分析しています。ただ、政策的には施設の作り過ぎ、高齢者本人的には金銭的な余裕がない点、そしてその高齢者の家族が外野からじゃまをすることなどが、高齢者の在宅ひとり死の実現を阻んでいると指摘しています。私も流石に自分自身の死を実感できる年齢には達していないので、少し理解不能な部分もありますが、基本的に著者の見方には賛成です。もっとも、私の母は80歳を超えてまだ存命ですし、父や祖父母や近い親戚などでガンで死んだ人はいません。父方の祖母などは100歳超で死ぬまでガンにはなりませんでしたので、ガンで死ぬのは遺伝的には望み薄かもしれません。また、女房子供がいますので、在宅ひとり死の実現にためには、少なくとも、女房よりも長生きしなければなりません。これはがんばれば可能かもしれません。

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次に、赤川次郎『東京零年』(集英社) です。ここから小説です。著者は紹介するまでもない売れっ子小説家であり、私も三毛猫ホームズシリーズ、3姉妹探偵団シリーズ、大貫警部の四文字熟語シリーズなどは、一部の最新刊を別にすれば、全部読んでいる気がします。ということで、この作品は『すばる』に2年余りにわたって連載されてきた単行本化であり、近未来のディストピア、すなわち、自由と民主主義が形骸化し権力国家・警察国家となった日本を舞台に、張り巡らされた陰謀がますます凶暴化する様子を描き出しています。ひょっとしたら、現実に現在の日本もこのディストピアに片足を突っ込みつつあるんではないかという恐怖も私にはあったりします。ストーリーは、その警察国家の立役者である元検事と警察国家に反対する元ジャーナリストのそれぞれの子供の世代が、ジャーナリストを陥れた陰謀を暴くべく協力して謎の解明に当たる、ということで進みますが、結局、謎は解明されるものの、だからといって何の解決にもつながらない、という、まさにディストピア小説の真髄のような終わり方です。同じような警察国家・監視国家を描いた古典的作品にジョージ・オーウェル『1984』があり、割と最近話題になった伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』などもそうですが、この『東京零年』の新しさは、さすがの権力側もネットに出てしまえば報道管制してもどうしようもない、というところです。ですから、この作品の最後は個人が犠牲になったり、個人で出来る範囲の責任を取ったり、といった個人レベルの行動で終わっていますが、ジャーナリストが一方のサイドで旗を振るわけですから、どういった報道管制が敷かれようと、ネットを使った情報統制逃れ、例えば、アラブの春をもっと取材して、どのようにネットの情報が民衆を動かすことが出来るか、などを小説にも取り込みつつ、もっと明るい日本の未来を描き出すことが出来なかったものか、やや残念に思うところがあります。『ゴールデンスランバー』で主人公が逃げ切った痛快感などもありません。その意味で、というか、二重に読後感がよくなかった作品であるという気がします。

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次に、住野よる『君の膵臓をたべたい』(双葉社) です。男子高生がひょんなきっかけで『共病文庫』と題する日記のような文書を見てしまい、クラスメートの女子高生が膵臓の病気で余命いくばくもないことを知ってしまったところからストーリーが始まります。明るくて元気のいい女子高生と人付き合いが苦手でやや暗い男子高生という、あまりにありきたりな2人の間に芽生える恋物語です。そして、予定通りというか、何というか、終盤に女子高生の方は亡くなるんですが、すべての予想を裏切る形で死んでしまいます。そして、『共病文庫』を男子高生が読む中で、読者もいっしょに涙することになる、というのが一般的な展開なんだろうという気がします。web小説から出発して、よく売れている本だそうですが、私はもうひとつピンと来ませんでした。若い命、というか、人の生き死にを題材にする小説ですから、書きようによっては涙を誘うことも可能ですし、それなりに感動的なシーンを演出できもするんでしょうが、小説として工夫したのが、女子高生の死に方だけのような気がして、どうも感情移入できませんでした。年齢的な障害かもしれません。2人が新幹線で旅行する大宰府と思しき旅行先をはじめとして、男子高生の氏名も最後の方まで明らかにされず、名無しのままで物語りが進行しますし、死に至る膵臓の病気というのも正体不明のままで読者の想像に任されます。ということで、小説ですから、ルポルダージュのようにすべてを明確にする必要はないんですが、読書であればネットで調べるというわけに行かない場合も少なくなく、読者の気持ちに寄り添った書きぶりが要求されることは作者として認識すべきです。この作品を読む限り、私の評価はそれほど高まらないんですが、同じ出版社からすでに出ている第2作の『また、同じ夢を見ていた』も図書館に予約してありますので、ソチラを読んでからまた考えたいと思います。エラそうに行ってファンの方には申し訳ありませんが、どうしても私の評価は高まりません。

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次に、田中素香『ユーロ危機とギリシャ反乱』(岩波新書) です。著者はいわずと知れた欧州経済の専門家であり、東北大学名誉教授です。岩波新書のシリーズでも2010年に『ユーロ 危機の中の統一通貨』を出版しています。ということで、本書では前書の後を受けて、2010年から本格化したギリシアの財政バランスを震源とするユーロ危機を論じています。ユーロ危機に対応するECB、EU、IMFのいわゆるトロイカ体制の中で、危機を克服できたのはECBの政策対応によると分析し、その後、ユーロ制度は単なる単一通貨システムではなく、独仏のコアとなる国々が南欧や東欧といった周縁ペリフェリ諸国の金融・銀行制度を監督・指導する帝国システムに変容したと結論しています。その上で、チプラス政権下でのギリシアの反乱というか、緊縮策の受け入れ拒否をちらつかせた援助引き出し交渉について分析を加えていて、ユーロの解体も、ギリシアの離脱も考えられないと結論しています。私も実は地方大学に出向していた際に「ギリシアにおける財政危機に関するノート」なる論文を2010年に書いており、統一通貨の導入、すなわち、各国別に独立した金融政策の放棄のシステム下では、金利はコア諸国には高く、ペリフェリ諸国には低すぎることから、ペリフェリ諸国でバブル経済的な現象が生じる一方で、為替はペリフェリ諸国の競争力を殺ぐ一方で、コア諸国の輸出には促進的である、というのは考慮すべきです。ドイツが内需主導ではなく、輸出により現在の好景気を支えているのは見逃すべきではありません。また、本書の結論の通り、確かにユーロ解体やギリシアの離脱は考えられないんですが、問題の本質が変化してきたように私は受け止めています。すなわち、本書でいうところの「ギリシア反乱」と同じトーンで、Grexit だけでなく Bregxit までが国民投票にかけられるわけですから、ホントにEUやユーロから離脱するんではなく、離脱の姿勢を交渉力の源泉としてシステムの変更を要求する、という戦略を取る国が現れていることは考慮すべきです。現時点で Bregxit まで視野に入れていないという意味で、本書には少し物足りなさが残った気がします。

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最後に、葉山考太郎『30分で一生使えるワイン術』(ポプラ新書) です。この本は、2009年に同じタイトルで出版された単行本に加筆修正したのか、しないのか、このたび新書で出たものらしいです。先週の読書感想文でも書きましたが、私はグルメやおしゃれには縁遠いエコノミストで、アルコールの入ったお酒といえば、一般的な忘年会や職場の歓送迎会などの場を別にすれば、自宅では年に数十缶だけ缶ビールを飲みます。国税庁の仕事はしたことがありませんから、ビールと発泡酒と第3のビールの区別もつきません。ただ、我が阪神タイガースのナイターを見ながら飲んでます。それだけで、日本酒やワインなどはほとんど飲みません。ただ、25年ほども前に在チリ大使館で経済アタッシェをしていて、当時は三菱商事が大々的にチリ産ワインを日本に輸出し始めたころでしたので、いくつかワイナリーを回った経験もありますし、実は、日本でも山梨のどこかのワイナリーを訪問した記憶もあります。もっとも、バブル経済のとてつもなく派手な時代だったと覚えています。今年になって2016年1月28日付けのエントリーで、チリ産ワインが我が国の最大の輸入ワインになったとの朝日新聞の記事を取り上げたところですし、本書を図書館で見つけて借りてみました。もちろん、お酒と食事はかなり密接な関係があり、上質のワイン産地は料理の面でも秀でている場合が多いような気がします。私の英国人の友人は英国が大陸の領土を失って、すなわち、国内でワインを製造できなくなったため料理の質が大きく低下した、と主張しています。そうかもしれません。ひょっとしたら、日本料理の真髄も日本酒でこそ味わえるのかもしれません。私はグルメではありませんから、よく判りません。その意味で、ワインはフランス料理をはじめとするラテン各国の料理のホントの美味しさを引き出してくれるような気もします。逆にいえば、食事なしにワインだけを飲んで酔っ払っているのは、やや筋違いという可能性もあります。どうでもいいことながら、ディナーの最後のディジェスティフはスペイン語ではバハティーボといい、コニャックなどと並んで、本書にはないウィスキーなんぞも可と私は考えています。

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