大きく雇用者が増加した6月の米国雇用統計に金融政策はどう対応するか?
日本時間の昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。金融政策動向と合わせて注目されていたところ、失業率は前月から0.2%ポイント上昇して4.9%を記録したものの、非農業雇用者数の増加幅は+287千人と前月から大きく伸びています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから統計のヘッドラインを報じた最初の2パラだけ記事を引用すると以下の通りです。
Jobs Roar Back With Gain of 287,000 in June, Easing Worry
Quashing worries that job growth is flagging, the government on Friday reported that employers increased payrolls by 287,000 in June, an arresting surge that could reframe the economic debate just weeks before Republicans and Democrats gather for their conventions.
The official unemployment rate did rise to 4.9 percent, from 4.7 percent, but that was largely because more Americans rejoined the work force. And average hourly earnings ticked up again, continuing a pattern of rising wages that brought the yearly gain to 2.6 percent.
この後、さらにエコノミストなどへのインタビューが続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

季節調整済みの系列で見て、非農業部門雇用者数の伸びは5月が+11千人の増加にとどまった一方で、直近の6月は287千人と、ADPの結果などから+170-180千人と200千人をやや下回る市場の事前コンセンサスも大きく超えました。5月の低調な結果の一因ともなった米国通信大手ベライゾンの一時的なストライキも終息したようで、情報産業の雇用が+44千人増え、このところ弱含んでいた製造業も2か月ぶりに増加に転じたほか、堅調な個人消費を背景にレジャー・接客業や、いずこも堅調なヘルスケア産業などのサービス産業の雇用も大きく増えました。ただし、資源安で鉱業部門は減少傾向が続いています。ということで、金融政策に目を転じると、米国連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)は原則として6週間に1回開催し、前回6月14-15日のあとは7月26-27日です。当然ながら、8月の夏休みは開催予定はないんですが、では、好調な結果を見せた雇用統計を背景に、7月最終週のFOMCで利上げがあるかといえば、私を含めて多くのエコノミストは極めて懐疑的です。なんとなれば、BREXITの動揺がまだ市場に残っており、そこに不安定要因を増幅させるのは避けると考えているからです。ですから、為替市場も米国雇用統計公表の一瞬は円安に振れましたが、すぐに戻ってしまいました。次の米国の利上げは気の長い話になりそうです。

また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移しているとともに、じわじわと+2%台半ばくらいまで持ち直してきていると私は受け止めています。少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。
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