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2016年7月31日 (日)

先発岩崎投手の好投に代打狩野選手の逆転打で中日に快勝し長期ロードへ!

  HE
中  日010000000 162
阪  神00000024x 690

先発岩崎投手が7回を1失点に抑え、狩野選手の逆転ツーベースで中日に快勝でした。なかなか得点できずに貧打復活かと心配しましたが、ラッキーセブンに逆転した後、8回はつるべ打ちでダメを押し、最後はサターホワイト投手も見ることができ、ウル虎の夏を5勝1敗で調子を上げ、いざ、ロードに出発です!

次の横浜戦も、
がんばれタイガース!

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2016年7月30日 (土)

今週の読書は経済書、専門書、小説とバランスよく計6冊!

このところ、週6冊というのが定着しつつあるような気もします。少し多い気がするので、もっとペースダウンしたいところなんですが、8月が近づいて時間的な余裕もありそうと考えないでもありません。今週の読書は以下の通り6冊で、経済書2冊、教養書2冊、小説も2冊です。

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まず、赤林英夫・直井道生・敷島千鶴[編著]『学力・心理・家庭環境の経済分析』(有斐閣) です。本書は慶応大学が2010年から実施している「日本子どもパネル調査」が2時点間のデータ蓄積を終えたことから、慶応グループの研究者が子供と教育の関係に関する経済学からのアプローチの研究成果を取りまとめた学術書です。冒頭の2章が経済学的な教育の役割やデータの特徴などについて解説した後、過程や親の経済力や社会的なバックグラウンド、あるいは、家庭環境や生活の質 QOL が子供の認知的な(cognitive)能力、すなわち、いわゆる成績にどのように影響するか、あるいは、出生時の体重などの健康がその後の学びにどのように影響するかを分析しています。いくつかの知見が得られているものの、現時点では判断を留保すべき内容となっています。すなわち、例えば、所得が子供の成績に影響を及ぼすかどうかについては、データをプールしたクロスセクションの分析では明らかに正の相関がみられる一方で、longitudinal なパネルデータでは算数/数学などの一部で引き続き正の相関が観察されるものの、かなりの程度に相関が失われてしまいます。もちろん、非認知的な能力、すなわち、協調性、粘り強さやガマン強さなどが何に影響を及ぼし、何から影響を受けるのか、といった分析も現時点では少し物足りない気もします。しかし、この2時点間のデータが利用可能になった時点で、分析としては不十分で物足りないながらも研究成果として公表する意義も決して小さくないと私は受け止めています。すなわち、データへの協力を求め、こういったデータの必要性に対する認識を高めるためには、やや強引な手法かもしれませんが、ギリギリで longitudinal なパネルデータが利用可能となる2時点間のデータがそろった段階でも、何らかの研究成果を示すべきとの圧力も感じるからです。以下の通り、出版社のココログのサイトにウェブ付録を設けたのも新しい試みかもしれませんが、補論で計量分析の基礎を解説するのは不要という気もします。

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次に、ヴォルフガング・シュトレーク『時間かせぎの資本主義』(みすず書房) です。著者は公明はドイツのマルキストです。経済学というよりは社会科学全般、ないし、社会学に専門性が高いような気がします。ドイツ語の原題は GEKAUFTE ZEIT ですから、時間を買う、という意味だと思います。2012年のフランクフルト大学社会研究所におけるアドルノ記念講演をもとに2013年に出版されています。ということで、本書では、大雑把に戦後経済を振り返って、1960年代はブレトン・ウッズ体制下での経済的な繁栄がもたらされた一方で、1970年代前半の石油危機などの外的要因も加わって高度成長が終了し、その時点でケインズ的な財政出動によるインフレによる時間かせぎがはじまり、それも行き詰って、1980年代はレーガノミクスやサッチャリズムによる新自由主義的な経済政策が模索され、規制緩和と民営化による資本の収益の拡大による、やっぱり、時間かせぎをした後、2000年代のいわゆるリーマン・ショック後の金融危機や世界経済の停滞がピークを迎えたと分析し、銀行危機・国家債務危機・実体経済危機という三重の危機を迎えたとの認識を示します。それまでの資本主義は危機の先送りの過程で民主主義は解体されてしまった中で、資本主義の危機はいつまで先送りできるのか、あるいは、民主主義が資本主義をコントロールすることは可能か、について考察が進められます。著者の結論としては、少なくとも、現状の中央銀行による量的緩和などの金融政策を用いた時間稼ぎは、今のところ、時間を稼ぐという目的は果たしているように見える一方で、その資金源が最終的には国民の税金であることに変わりはなく、買われた時間を利用して問題の根本解決に取り組まない限り、いずれは中央銀行が自ら抱えた不良債権のためにその通貨圈の貨幣価値を下落させることになる、というものであると私は認識しています。ある程度は是認できる正しい認識のような気もしますが、我が国でいえば、金融政策を否定した「構造改革派」の考えにも近い気もします。

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次に、阿川尚之『憲法改正とは何か』(新潮選書) です。著者は慶応大学名誉教授であり、米合衆国憲法の専門家です。本書では、英国からの独立と米合衆国憲法の制定、その後の修正憲法の過程とその理念を論じ、ついでに、日本国憲法の改憲論についても常識的な議論を展開しています。国の成り立ちとその姿を決める成文法としての憲法を論じ、一般の法律よりも修正方法を厳しくした理念については判らないでもないものの、200年余りの米合衆国憲法の歴史で議会が修正すること27回、しかし、世界大恐慌機のローズベルト政権のころには、連邦最高裁が違憲判決を出しまくりながらも、大統領府が危機克服に事業を展開する一方で、連邦最高裁の判事の入れ替えを画策するなど、いわゆる三権分立の下でのチェック&バランスとともに、米合衆国では連邦政府と州政府の間の緊張関係もあり、それなりに緻密な論理展開により憲法が修正されていることが理解できます。目を転じて、我が国の日本国憲法についても、統治の原理としては変更すべきでない部分があります。例えば、国民主権とか基本的人権などですが、他方で、統治の原理まで行かない行動様式、というか、実践的な行政や裁判などの権力の行動様式については、場合によっては時代とともに変更することも考えて然るべき場合も考えられないでもないんではないかと思います。本書で論じているように解釈改憲の手法で実質的な改憲がなされたこともありますし、少なくとも憲法修正に関する議論を封じ込めるのは原論の自由の蹂躙に当たりかねない場合もあり得そうな気もしますし、もう少し自由で柔軟な議論が起こらないものかと、専門外ながら、私も考えないでもありません。私がもっとも期待するアウトカムは、十分に議論した上で、現行憲法のうち守るべきは何かについての国民的なコンセンサスが確立することであって、十分な議論なしに現行憲法の修正は許すべきではない、との結論はいかがなものかと受け止めています。

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次に、チャールズ C. マン『1493』(紀伊國屋書店) です。著者は米国の科学ジャーナリスト、また、サイエンス・ライターであり、英語の原著も同じタイトルで2011年に出版されています。前著の『1491』でコロンブスによる発見前の米州大陸について、主として自然科学的な見地からの知的貢献をなした後、本書ではタイトルから容易に想像される通りに、コロンブスの米州大陸発見後の自然科学的な見地からの「コロンブス交換」をテーマにしたノンフィクションです。すなわち、主として欧州人が欧州から米州大陸に持ち込んだもの、また逆に、米州大陸から欧州や中国をはじめとするアジアなどの旧世界に持ち込まれたもの、について分析しています。まず、米州大陸に持ち込まれ、欧州人を脅かしたものとして病気があります。米州大陸、特にインカ帝国との関係で天然痘が持ち込まれたのが歴史的に有名ですが、北米湿地帯に持ち込まれたマラリアと黄熱病が、入植者の欧州人に大量死をもたらしたと著者は主張します。逆に、欧州にもたらされたジャガイモがアイルランドなどの飢饉を救ったのも事実ですし、新大陸からの食料が中国における人口爆発と人口大国への道を切り開いた、とも分析しています。やや、アナール学派の歴史分析っぽいんですが、社会的な視点も忘れられているわけではなく、アフリカから奴隷として黒人が強制的に渡った点もコロンブス交換の一種として描き出されています。もちろん、新大陸から欧州に持ち出されたものとして有名な銀やタバコ、あるいは、ゴムなどの産品が当時のグローバル化の波に乗って世界を行き交う様は、わくわくさせられるものすらあります。今年2016年4月23日付けの読書感想文でフェイガン『人類と家畜の世界史』を取り上げましたが、時間と空間をかなり絞ってあるものの、やや似た構成と内容になっているような気もします。コロンブスの米州大陸発見1492年から500年の記念の日に、私は外交官として在チリ大使館に勤務していたことを懐かしく思い出しました。

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次に、角田光代『坂の途中の家』(朝日新聞出版) です。長らく図書館予約の順番待ちの行列に並んで、ようやく回って来た話題作です。作者は直木賞も受賞し、『八日目の蝉』や『紙の月』などの映画化された作品もある人気の小説家です。この作品は、幼児の子育て中の専業主婦が裁判員裁判の裁判員、といっても、補充裁判員に選出され、しかも、担当する刑事裁判が乳児の虐待死という設定で、『八日目の蝉』から『紙の月』とキワモノ度が増した後、さらにキワモノ的な色彩が強くなった気がしないでもありません。「週刊朝日」で連載が終了したのが3年ほど前ですから、売れっ子作家が忙しいのか、大きな手直しがあったのか、私は連載中の本作品を読んでいないので何とも判りません。個人の自由度が増して基本的人権が確立した一方で、半ば封建的な家制度が崩壊しつつあり、子育てや老人介護などでもしも社会的なケアが十分でないなら、自由度が増しながらも小さくなった家庭への負担が大きくなる可能性はあります。この作品で裁判の被告となっている女性は、ある意味で、大きくなった負担の犠牲者かもしれないと、この作品の主人公が考える一方で、私のような読者のサイドではそれほど多くの家庭が崩壊しているわけでもない、という事実を知っています。社会派の大きな問題を取り上げたサスペンスなんですが、最初に書いた通り、別の意味では、キワモノ度が増した気もします。そのあたりはエコノミスト的に考えるとトレードオフなのかもしれませんが、少し私のような読者にはキワモノ的な雰囲気が強くなった点が気にかかります。まったく別の観点から、2点だけ指摘しておくと、私の見落としかもしれませんが、「ストレス」という言葉が出て来ません。何らかの作者の主張が込められているのかもしれません。さらに、本作品のタイトルが『坂の途中の家』となっている理由を、これまた読み落としてしまいました。

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最後に、畠中恵『おおあたり』(新潮社) です。しゃばけシリーズ最新刊です。短編5話からなっていて、本のタイトルと同じ「おおあたり」、「長崎屋の怪談」、「はてはて」、「あいしょう」、「暁を覚えず」の5話です。いつもながら、長崎屋の若だんなとその周辺にいる佐助と仁吉をはじめとする妖のお話です。まず、若だんなの幼なじみで菓子店の三春屋の跡取りながら安野屋に修行に出ている栄吉が辛おかきでおおあたりを取りながら、模倣品が出て、結局、何だかんだで婚約者を逃してしまう表題作から始まって、獏の噺家の怪談がリアルに再現されるように追いかけられるお話、などなど、今年は特につながりのない短編集です。昔話シリーズで、佐助と仁吉が長崎屋で奉公を始めたころのお話も収録されています。ということなので、話頭を転じて、同じ作者による2シリーズを比較したいと思います。すなわち、このしゃばけのシリーズが新潮社から出ているほかに、実写の時代劇ドラマにもなり、文芸春秋社から出ているまんまことのシリーズです。表面的に、もっとも大きな違いは人ならぬ妖が出て来るかどうかなんですが、実は、時の流れが違うんではないかと私は感じています。しゃばけシリーズはサザエさんと同じで、登場人物は年を取らない、もしくは、時間の歩みがとても遅いように感じる一方で、まんまことシリーズは着実に年月が過ぎ去って、子どもが生まれたり、老人が死んだりします。しゃばけシリーズでは、栄吉は安野屋に修行に出たまま三春屋には戻って来そうもありませんし、時の流れを止めるために、婚約者と分かれさせられたりしているように私は感じます。別の言い方をすれば、時の流れが人ではなく妖と同じ悠久の流れになっているんではないかと思います。長崎屋の若だんなの婚約者はまだ子供のおりんちゃんですから、この祝言は遠い遠い先のお話のように設定されています。それに比べて、まんまことシリーズでは、主人公の麻之助はお寿ずと祝言を上げて、出産時に女房と娘のお咲を亡くしたりしますし、幼馴染で親友の八木清十郎の父親は死にます。時の流れが妖ではなく人と同じ気がします。まんまこのとシリーズには、これを示唆する『ときぐすり』というタイトルの単行本もあります。でも、この両シリーズには接点があって、それが大貞の親分です。本書の最終話は、大貞の親分が中山道を下って来る別の親分を接待するのに、若だんなが知恵を貸すこととし、そのためにみょうちきりんな薬を飲むお話なんですが、まんまことシリーズには大貞の親分の倅の小貞が麻之助のもう1人の幼馴染で親友の相馬吉五郎に男惚れして、岡っ引きの手下のようなマネをしたりします。私は本書が大貞の親分の初出かと思って、本書を貸してくれた同僚に質したところ、もっと前にも大貞の親分が登場しているようです。しゃばけシリーズのファンで、まんまことシリーズは読んでいないようですので、私のように両シリーズがごっちゃになって記憶が不鮮明ということもないようです。すなわち、大貞の親分はかなり早い段階から両シリーズに共通して登場しているような気がします。時間の流れの違う両シリーズのいずれにも登場する大貞の親分とその倅の小貞は、はたして、年を取るんでしょうか、死んだりするんでしょうか、とても興味深い展開ですが、確かなことが判明するには後10年くらいはかかりそうです。20年くらいかかるかもしれません。そうなると、私の方の寿命が尽きそうな気がしないでもありません。

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2016年7月29日 (金)

いっせいに公表された政府統計から景気は回復に向かうのか、停滞するのか?

今日は閣議日かつ月の最終営業日でしたので、政府統計が大量に公表されています。すなわち、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局の消費者物価指数(CPI)などが、それぞれ明らかにされています。いずれも6月の統計です。まず、とても長くなりますが、統計のヘッドラインなどを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

6月の鉱工業生産、1.9%上昇 基調判断を上方修正
経済産業省が29日発表した6月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比1.9%上昇の96.5だった。上昇は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値の0.7%上昇を大幅に上回った。秋の新商品の投入を控えてリンスやせっけんなど家庭用の化学製品の生産が好調だったほか、自動車の生産も伸びた。
経産省は「企業の生産計画が多少強気になってきた」とし、生産の基調判断を「一進一退」から「一進一退だが、一部に持ち直し」に上方修正した。基調判断の引き上げは15年9月以来。4-6月は96.1となり、1-3月から横ばいだった。
6月は15業種中13業種が前月から上昇した。内訳をみると、化学工業が4.0%上昇したほか、輸送機械は普通車が好調で1.6%上昇した。電子部品・デバイスも1.6%伸びた。
出荷は1.2%上昇の94.6となった。電子部品・デバイスやはん用・生産用・業務用機械などの出荷が伸びた。在庫率指数は1.4%低下の116.2となった。
同時に発表した製造工業生産予測調査では7月が2.4%上昇、8月は2.3%上昇を見込んでいる。ただ、生産の実績は予測調査から下振れする傾向にあるため、経産省は7月は0.9%程度の上昇になると試算している。7月は化学工業やはん用・生産用・業務用機械での上昇が見込まれている。
6月の小売業販売、1.4%減 原油安や軽自動車の販売不振が響く
経済産業省が29日発表した6月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.4%減の11兆3110億円だった。前年実績を割り込むのは4カ月連続。原油安で燃料小売業が減少。軽自動車の販売不振も響いた。季節調整した前月比は0.2%増だった。経産省は小売業の基調判断を「弱含み傾向」に据え置いた。
大型小売店の販売額は百貨店とスーパーの合計で前年同月比0.7%減の1兆5675億円だった。百貨店の既存店販売は3.6%減。紳士服など主力の衣料品が低調だった。高額商品の販売も苦戦した。スーパーの既存店販売は0.4%減だった。飲食料品の販売は伸びたものの、衣料品の減少が響いた。
コンビニエンスストアの販売額は3.8%増の9436億円だった。加工食品などが好調だった。
求人倍率、全都道府県で1倍超 6月1.37倍に上昇
厚生労働省が29日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は、前月と比べて0.01ポイント上昇の1.37倍だった。上昇は4カ月連続で、1991年8月以来、24年10カ月ぶりの高水準だった。求人票を受け取った地域別では1963年の集計開始以来、初めてすべての都道府県で1倍を超えた。幅広い業種で人手不足が続いている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。仕事の数を表す有効求人数(同)が前月比で0.4%増加し、有効求人倍率を押し上げた。訪日客が増え、宿泊・飲食サービス業などで求人数の増加が目立った。厚労省は「雇用情勢は着実に改善が進んでいる」としている。
地域別で見ると、これまで沖縄が一貫して1倍を下回っていたが、宿泊・飲食サービス業や生活関連サービス業などで求人数が増え、初めて1倍を上回った。人手不足に伴う雇用の逼迫感が、地方にも波及している。
総務省が同日発表した完全失業率(同)は3.1%で前月より0.1ポイント低下した。6月の完全失業者数(原数値)は前年同月に比べ14万人減少の210万人だった。減少は73カ月連続。勤め先や事業の都合による離職が前年同月比で5万人減った。自己都合の離職は2万人増えた。
6月の消費者物価指数、0.5%下落 原油安受け、13年3月以来のマイナス幅の大きさ
総務省が29日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2010年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合が103.0と前年同月に比べて0.5%下落した。下落幅は2013年3月(0.5%下落)以来3年3カ月ぶりの大きさになった。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値は0.4%下落だった。原油価格の低迷が続き、電気代やガソリンなどエネルギー価格が下がった。
生鮮食品を含む総合は103.3と0.4%下落した。下落は4カ月連続。食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は101.6と0.4%上昇したが、前月(0.6%上昇)に比べて伸び率は鈍化した。
東京都区部の7月のCPI(中旬速報値、10年=100)は生鮮食品を除く総合が101.4と前年同月に比べて0.4%下落した。前の月(0.5%下落)に比べて下落幅は縮小した。電気代やガソリン代などが引き続き重荷となった。食料・エネルギーを除く総合は0.3%上昇。6月の0.4%上昇から伸び率が鈍化した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、統計をこれだけ引用すると長くなります。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は商業販売統計や雇用統計とも共通して景気後退期です。

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鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で見て、前月比+1.9%増ですから、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスの+0.7%増を大きく上回り、さらに、実績が下振れしやすいとはいえ、製造工業生産予測調査でも7月+2.4%増の後、8月も+2.3%増と大幅増が続くとの予想ですから、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を半ノッチ引き上げて「一進一退で推移しているが、一部に持ち直しがみられる」と上方修正しています。また、製造工業生産予測調査の7月の+2.4%増に対して、「鉱工業生産指数の先行き試算値」なるメモも公表されており、予測調査結果の+2.4%に対して、鉱工業生産指数ベースに引き直すと、前月比+0.9%に相当するとの試算結果を明らかにしています。先行きについては、消費が横ばい圏内での動きを私は予想しており、設備投資は先送りの模様眺めながら、やや増加の方向にあるものの、外需については需要要因からはプラスも円高が進んだ価格要因ではマイナスと、方向感覚に乏しい気がしており、引き続き、「一進一退」であって、基調判断に加えられた「一部に持ち直しの動き」が見られ始めるかどうか、やや不確定要素が多い気がしています。もっとも、方向感に乏しいといいつつダウンサイドに進むよりもアップサイドに進む可能性の方が高いのはいうまでもありません。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。小売販売額は名目ですから、後に取り上げる消費者物価でデフレートするとしても、前年同月比▲1.4%減は大きなマイナスです。季節調整済みの系列では前月比+0.2%増のプラスとはいえ、引き続き、消費は力強さに欠ける動きと私は受け止めています。ただし、これも方向感としては、マインドがそれほど改善しないながらも、これも後に取り上げる雇用統計における人手不足と賃金は上がらないながら、正規雇用の増加や雇用者増によるマクロでの賃金総額の増加に支えられ、少なくとも、消費は緩やかな増加の方向にあるものと考えるべきです。やや、消費増税の先送りに伴う駆込み需要の先送りもあり、ジグザグが出る可能性はあります。

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続いて、雇用統計については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。グラフを見れば明らかな通り、失業率は前月から0.1%ポイント低下して3.1%を示し、有効求人倍率は、これも前月から+0.01ポイント改善して1.37倍に達しました。引用した報道にもある通り、全都道府県で1倍を超え、産業別地域別で幅広い人手不足が見られるようです。おそらく、雇用はほぼ完全雇用の水準に張り付いており、今後は量的な改善から質的な雇用の改善に進む段階であろうと私は認識していますが、雇用の質的改善は賃金の上昇よりは正規雇用の増加に現れる可能性があります。少し後になりますが、8月5日に厚生労働省から公表予定の毎月勤労統計を見たい気がします。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。東京都区部の統計だけが7月中旬値です。いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は6月統計でとうとう▲0.5%に達しました。4か月連続のマイナスを記録しました。ただ、基本的には、国際商品市況における石油価格の下落に伴うエネルギー価格のマイナス寄与が大きく、私の計算では前年同月比ベースで▲1%を超えます。加えて、2015年末からの円高も物価下落に寄与している可能性が高く、国際商品市況の石油価格はすでに底を打っているものの、年内のコアCPIのプラス転換は少し遅れる可能性があると私は受け止めています。

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最後に、政府統計を離れて、日銀が追加緩和に踏み切りました。「金融緩和の強化について」が公表されており、昨日から開催されていた金融政策決定会合においてETF買入れ額の増額による緩和強化を決めたほか、企業・金融機関の外貨繰り支援策も、総額を現行の120億ドルから倍増の240億ドルとする旨を決定しています。政府の大規模な経済対策に対応する措置であり、私は政府・日銀による景気拡大策を強く期待してます。なお、上のテーブルは「展望リポート」に示された2016-2018年度の政策委員の大勢見通しを引用しています。成長率見通しがやや下方修正されているのは読み取れると思います。

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2016年7月28日 (木)

マクロミルによる2016年上半期日本の世相調査の結果やいかに?

ちょうど1週間前と旧聞に属する話題ながら、7月21日にマクロミルから2016年上半期日本の世相調査の結果が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。今年の上半期を「味」に例えるなら、「にがい」が45%でダントツとなっており、「にがいニュース」のランキングは1位「舛添(元)都知事の辞職」、2位「清原和博容疑者逮捕」、3位「熊本地震発生」などとなっています。

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上のグラフは、リポートから 【図1】2016年上半期日本の世相を味に例えると? の結果を引用しています。半数近くの45.2%が「にがい」となっています。また、2016年上半期「にがいニュース」ランキングTOP10 は、重複を恐れず、もう一度1位から10位を引用すると以下の通りです。

1位
金銭疑惑の舛添(元)都知事が辞職(69.0%)
2位
清原和博容疑者、覚せい剤所持容疑で逮捕(51.5%)
3位
熊本地震発生(51.0%)
4位
ベッキー、ゲスの極みボーカルと不倫騒動(49.6%)
5位
三菱自動車 燃費データ不正(42.6%)
6位
沖縄で米軍属の男逮捕、20歳女性を乱暴、殺害、遺棄容疑(36.8%)
7位
長野県軽井沢でスキーバスが道路から転落、14人が死亡、26人が怪我(36.2%)
8位
甘利経産大臣(当時)の、民間会社からの金銭授受問題(34.4%)
9位
バドミントン桃田選手のリオ五輪出場停止 先輩の田児選手と違法賭博店に出入りの疑い(30.4%)
10位
野球賭博問題(28.4%)

どちらかといえば、「しょっぱい」ニュースであって、しかも、国内ではないんですが、今年2016年上半期に私の記憶に残っているのは何と行っても BREXIT です。

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2016年7月27日 (水)

世銀チーフエコノミストに9月からポール・ローマー教授が就任予定!

月曜日の Financial Times 紙に The World Bank recruits a true freethinker と題して報じられていたんですが、9月からポール・ローマー教授が世銀のチーフエコノミストに就任する予定だそうです。世銀からは7月18日付けのプレスリリースで明らかにされています。

この5月の日本の週刊エコノミスト誌で報じられていたんですが、思い出されるのは、ルーカス教授との論争です。「数学もどき」Mathiness として、2014年のルーカス教授らの経済成長モデルに関する論文を痛烈に批判しています。Financial Times 紙の記事でも、第2パラで "Prof Romer has challenged orthodoxy in a number of ways." と紹介されていたりします。私も金融セクターを持たない実物的景気循環論 Real Business Cycle の理論は間違っていると思います。
以下はルーカスvsローマー論争を代表する論文へのリンクです。Romer (2015) によれば、Lucas and Moll (2014) には極限の取り方に数学的な問題があると主張しており、モデルの内容と論文の記述が食い違っていることに関して、NBERのワーキングペーパーの段階で指摘したにもかかわらず、著者たちに完全に無視され、さらには査読プロセスも通過し、権威あるジャーナルにそのまま載ってしまった、らしいです。大先生に弱い経済学界の実態を批判するもののようで、判る気もしますが、ご参考まで。

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2016年7月26日 (火)

久々のゴメス選手の決勝ホームランでヤクルトに先勝!

  HE
ヤクルト300000000 370
阪  神00030002x 5110

先発岩貞投手が初回にヤクルト山田選手に両リーグ1番乗りの30号スリーランで先制されたものの、中盤に連打で追いつき、終盤にゴメス選手の決勝ツーランでヤクルトに先勝でした。今日も鳥谷選手をスタメンから落としましたが、途中出場でヒットも打ちましたし、もう戻してもいいんではないでしょうか。岩貞投手はシーズン序盤の不自然なくらいの好投は鳴りをひそめたものの、フツーに好投のQSだった気がします。

明日も、
がんばれタイガース!

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企業向けサービス物価上昇率は小幅なプラスで膠着状態が続く!

本日、日銀から6月の企業向けサービス価格指数(SPPI)が公表されています。ヘッドラインの前年同月比上昇率は+0.2%と、かろうじてプラスを維持しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月企業向けサービス価格、前年比0.2%上昇 伸び率は横ばい
日銀が26日発表した6月の企業向けサービス価格指数(2010年=100)は103.0と前年同月比0.2%上昇した。伸び率は5月から横ばいだった。人手不足の業種は上昇しているが、円高の影響が上昇幅を抑えている。日銀は「国内需給の改善による値上げは続いているが動きは強くない」(調査統計局)として、当面は物価が大きく上がりにくいとみている。
品目別にみると、労働者派遣サービスや土木設計など人手不足が続く業種は堅調だった。訪日外国人観光客数の増加を背景に宿泊サービスも上昇した。一方で外航貨物輸送やリースなどは円高の影響で円ベースでの契約単価が低下した。
伸び率は前月比では横ばいだった。全147品目のうち前年比の上昇品目数は51、下落品目数は59で、下落品目数が8品目多かった。5月確報の7品目から差が拡大した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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企業向けサービス物価(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率が+0.2%、国際運輸を除くコアSPPI上昇率が+0.4%と、いずれも先月の統計から変わりありません。引用した記事にもある通り、人手不足の影響が大きい労働者派遣サービスや土木建築サービズ、あるいは、外国人観光客に支えられた宿泊サービスなどが寄与度差でプラスに働いている一方で、国際商品市況における石油価格の下落の影響が大きい外航貨物輸送がマイナスとなっています。広告については、新聞広告とテレビ広告がマイナスを示した一方で、インターネット広告はプラスとなっており、差引き小幅のマイナス寄与度差を記録しています。また、リースが小さいながらマイナスの寄与度差を示しているのは円高による円ベースの契約単価の引下げと報じられています。いずれにせよ、このところ繰り返しているように、物価は膠着状態が続いています。でも、国際商品市況における商品価格の下落はほぼ一巡した一方で、人手不足に起因するサービス価格は、おそらく、消費者物価を下支えし、この先、マイナス回避、というか、プラスへの浮上につながって行くような気がします。

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2016年7月25日 (月)

貿易収支が黒字に戻った6月の貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。ヘッドラインとなる輸出額は季節調整していない前年同月比で▲7.4%減の6兆255億円、輸入額はさらに減少幅大きく▲18.8%減の5兆3326億円、差引き貿易収支は+億円の黒字となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の貿易収支、黒字6928億円 1-6月は東日本大震災後初の黒字
財務省が25日発表した6月の貿易統計速報(通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は6928億円の黒字(前年同月は609億円の赤字)だった。貿易黒字は2カ月ぶり。QUICKがまとめた市場予想は4948億円の黒字だった。輸出入ともに減少したものの、原油価格の下落の影響が大きかったため黒字を確保した。併せて発表した1-6月の貿易収支は原油安が奏功し、東日本大震災が発生した2011年上半期以来続いていた赤字基調から回復。半期ベースでは11期ぶりの黒字を確保した。
輸出額は前年同月比7.4%減の6兆254億円となり、9カ月連続で減った。米国向けの自動車やインド向けの鉄鋼などの減少が響いた。地域別では米国向けが6.5%減、中国を含むアジア向けが10.6%減だった。英国の離脱が決まった欧州連合(EU)は0.4%の減少で、財務省は「投票が下旬だったことで、影響はあまり出ていない」とみていた。対ドルの円相場は平均値で108.48円と前年同月に比べ11.8%の円高だった。
輸入額は18.8%減の5兆3326億円と、18カ月連続のマイナスだった。原油安が続いており、サウジアラビアなどからの原粗油、カタールからの液化天然ガス(LNG)などが減った。タイからのナフサの輸入額も落ち込んだ。
併せて発表した1-6月の貿易収支は1兆8142億円の黒字だった。原油安効果で10年下半期(3兆3124億円の黒字)以来の黒字を確保した。輸出額は前年同期比8.7%減の34兆5183億円と2期連続で減った。輸入額は17.2%減の32兆7041億円にとどまり、3期連続で減少した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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先月の貿易統計発表時に、貿易赤字はさしたる懸念なしと私は考えていて、事実、今月の公表では黒字に戻っています。問題は、むしろ、輸出も輸入もいずれも減少しつつ、いわば「縮小均衡」的に貿易収支が小幅に動いているだけであり、要するに輸出が伸びない点です。しかも、輸入額の減少は国際商品市況における石油価格の下落に起因しており、石油価格次第では貿易収支は不安定で、いかようにも動きかねません。もちろん、為替も同じく不安定要因かもしれませんが、石油価格にせよ、為替にせよ、市場で決まる価格ですのでそれなりのボラティリティは覚悟すべきかもしれません。先行きの海外景気の回復に基づいて、貿易収支はかなりの程度に黒字が定着しつつあると私は考えていますが、価格要因はまだ不透明です。

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輸出のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、下のパネルはそのうちの輸出数量指数の前年同月比だけ抜き出しています。いつも使っているOECD先行指数については、EU離脱を決めた英国の国民投票結果の予期せぬイベントのために、OECDのステートメントによれば9月まで発表がなされないようですので、しばらくはグラフを差し替えています。上のパネルから明らかな通り、為替が円高に振れて輸出価格への下押し圧力が大きく、価格指数が輸出額を引き下げていますが、6月統計では久し振りに輸出数量指数がプラスに転じています。今後、このプラスがこのまま定着するとまでは楽観していませんが、海外経済の景気回復とともに輸出は緩やかに伸びる方向にあるものと私は期待しています。

最後に、来月の8月15日に内閣府から4-6月期のGDP速報1次QEが明らかにされますが、外需は成長率にプラス寄与し、その幅は+0.2%から+0.3%くらいではないかと直観的に弾き出しています。ご参考まで。

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2016年7月24日 (日)

長時間の乱打戦を制してオールスター後の初勝利を飾る!

  HE
阪  神021103010 8151
広  島102200000 5120

序盤から両チームが活発に打ち合った乱打戦を制して広島に勝利でした。鳥谷選手をスタメンから落とし、大きな犠牲を払ってのオールスター明け初勝利でした。先発メッセンジャー投手の出来はイマイチでしたが、リリーフ陣が踏ん張って広島打線をしっかりと抑えました。途中出場の鳥谷選手も打点を上げて気を吐きました。

甲子園に戻ってのヤクルトとの最下位争いでは、
がんばれタイガース!

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エコノミスト誌のビッグマック指数による購買力平価に基づくGDP規模やいかに?

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最新号のエコノミスト誌に久し振りにビッグマック指数が掲載されています。上の画像の通りです。エコノミスト誌のサイトから引用しています。
マイナス領域は自国通貨が過小評価されていることを示し、逆に、プラスのドメインは過大評価ということになります。日本でいえば、円レートは米ドルに対して30パーセントほど購買力平価に比較して円安ということになります。今回、とても興味深いのは、記事の副題が "The size of the world economy - measured in burgers" となっていて、国別及び世界のGDP総額でビッグマックがいくつ買えるかを算出しています。一番右の列で10億個単位で表示されています。すなわち、これが、ビッグマックで計測した購買力平価に基づくGDP規模ということになります。ビッグマック指数に基づく購買力平価では、中国の経済規模は米国より大きく、世界経済の約2割を占め、日本経済のほぼ3倍、ということになります。実感として、中国発の世界経済の停滞の発生などを考慮すると、そうなのかもしれないと思ったりもします。

なお、エコノミスト誌の別のサイトではインタラクティブに計算できるツールが置いてあります。日曜日らしいくだけた話題ながら、経済評論のブログに分類しておきます。

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2016年7月23日 (土)

黒田投手の200勝に花を添えてまたまた広島に負けて5連敗!

  HE
阪  神000000000 060
広  島30400000x 7100

まともなプロ野球どうしの試合にもならず、ワンサイドゲームで広島にボロ負けでした。黒田投手の200勝に花を添えて、なすすべなく勝負になりませんでした。泥沼の5連敗です。オールスター明けの初勝利はいつになるんでしょうか?

なるようにしかならないながら、
がんばれタイガース!

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今週の読書は少しペースダウンして小説も含めて計6冊!

今週の読書は、先週と同じように、少しペースダウンしました。経済書、というか、パンフレットのような本に専門書や教養書、加えて小説も含めて計6冊、以下の通りです。

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まず、上村雄彦[編]『世界の富を再分配する30の方法』(合同出版) です。編者はエコノミストというよりは、グローバル政治論やグローバル公共政策論を専門分野とする研究者です。本というよりは、その昔のパンフレットに近い印象で、例えが突飛かもしれませんが、ケインズの「平和の経済的帰結」なんかも、こういった形で出版されたんだろうと勝手に想像しています。なお、同じ出版社から、ここ何年かの間に「30の方法で世界を変える本」をタイトルに有するシリーズが何冊か刊行されており、私のような開発経済学のエコノミストには気になるタイトルとして、本書のほか『世界から貧しさをなくす30の方法』、『世界から飢餓を終わらせるための30の方法』などが含まれています。というとで、本書は国内的な富の不平等とともに、各国間、すなわち、先進国と途上国の間の富の不平等をなくすための方策を訴えるパンフレットです。その要諦は地球規模で税金を徴収するグローバル・タックスということになります。このグローバル・タックスを金融取引について応用したのがトービン・タックスといえば、理解が速いかもしれません。もちろん、グッズではなくバッズに課税を強化するという趣旨で、いわゆる炭素税はもとより、武器売買への課税、さらに、将来を見据えて資源採掘産業に対するグローバルな課税、そして、もちろん、金融取引に対するトービン・タックスなど、何種類かの課税対象を取り上げています。そして、その資金を基に貧困削減はもちろん、地球温暖化の防止などに役立てることを主張しています。ただ単なる主張にとどまらず、第5章では実現に向けた取り組みも明らかにしており、なかなか啓蒙的なパンフレットに仕上がっています。反論はいくつも出るでしょうが、本書で主張している通り、ODAによる途上国支援が遅々として進まず、航空券連帯税のようにグローバル・タックスの萌芽のような制度も導入されつつある現時点で、とてもためになる本です。開発経済学をひとつの専門分野とするエコノミストとして、多くの方にオススメできる本だと思います。

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次に、スティーヴ・ロー『データサイエンティストが創る未来』(講談社) です。著者はニューヨーク・タイムズをホームグラウンドとするジャーナリストであり、英語の原題は表紙画像に見える通り、Data-ism ですから、直訳すれば「データ主義」ということになるのかもしれません。インターネット時代は必然的にビッグデータ時代となり、大量のデータが蓄積されようとしています。そして、それらのデータが然るべきソフトウェアで解析される時代が到来しつつあります。これらのデータを支える情報源、すなわち、ウェブページ、ブラウザの閲覧履歴、センサーからの信号、ソーシャルメディア、スマートフォンから得られるGPSデータ、ゲノム情報、監視カメラの録画など、止まるところを知りません。本書では、冒頭でデータがこれだけ集積されると、「量的変化が質的変化に転化する」とし、明示されていませんが、あるいは、著者も認識していないのかもしれませんが、ヘーゲル弁証法的な立場を取っているようです。そして、何人かのキーパーソンが子供時代のエピソードとともに紹介されて、この先のデータ主義の広がりを示唆しています。その中の1人が、今を時めくFacebookを退職する際に、「コンピュータサイエンティストの優秀な頭脳が、ターゲット型オンライン広告にばかり費やされる」ことに失望した、という部分があります(p.114)。私も、上下にシフトさせたりして、無理やりにでも広告をクリックさせようとする悪質なアンケート・サイトをいくつか知っていますが、もっと生産的で世のため人のためになるデータ分析をお願いしたいもんです。なお、本書でも紹介されているテューキーの「データ解析の未来」は、学術論文としてはかなり長いんですが、読んでおく価値があります。以下のリファレンスの通りです。

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次に、デイヴィッド・ライアン『スノーデン・ショック』(岩波書店) です。著者はカナダのクイーンズ大学の社会学教授であり、大学に設置されている監視研究センターの所長を務めている監視を専門分野とする研究者です。英語の原題は Surveillance after Snowden となっています。本書をひとことで言うと、スノーデン事件で明らかになった、あるいは、その後、判明した監視体制、特に、米国国家安全保障局(NSA)をはじめとするファイブ・アイズ、すなわち、米国、カナダ、英国、オーストラリア、ニュージーランドのアングロサクソン5国による監視体制と民主主義のあり方に関する入門書です。インターネットの発達とともに、いわゆるビッグデータからいろいろ情報を収集することが容易になり、いわゆる仮想敵国だけでなく、米国の同盟国たるドイツやブラジルの首脳まで盗聴の対象にしていたとして、それなりの衝撃を引き起こしたのは記憶に新しいところです。ただ、本書でも指摘している通り、あるいは、やり過ぎかもしれないものの、こういった情報収集体制がテロの防止などに役立っている可能性は否定できません。ただし、どこまで役立っているかは市民から見て不透明です。ということで、私のような単純な思考パターンのエコノミストからすれば、監視体制の強度は明らかに自由な市民生活とトレードオフの関係にある一方で、テロの防止などに対してはそれなりに正の相関がありそうな気もします。他方で、匿名性が強調されるインターネットの世界で、ホントに匿名のままでいいのかという疑問もあります。ですから、Facebookやmixiなど、実名主義を取っているSNSがあるのも事実です。もっとも、トレードオフの関係にある市民生活の自由と監視体制の強度の間で、どの最適点を取るかは難しいところです。

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次に、ジャンナ・レヴィン『重力波は歌う』(早川書房) です。作者は米国の物理学者だそうですが、読んでいてジャーナリストのリポートのような気がします。というのは、経済学なんかもそうなんですが、研究者が書けば人間が出て来ないんですが、本書は研究者を中心に書かれています。なお、英語の原題は Black Hole Blues となっており、なんと今年2016年の出版です。というのも、解説にもある通り、昨年9月に重力波が検出されたらしいとの発表が米国国立科学財団(NSF)から今年2016年2月になされたからかもしれません。ストーリーはアインシュタインの一般相対性理論で予告された重力波の検出に取り組む米国の物理学界を対象にしています。すなわち、ワイス教授、ソーン教授、ドレーヴァー教授のトロイカ体制からなるLIGOという研究機関の設立から始まりそうなんですが、実は、その前の親の世代から話が始まります。ナチスによるユダヤ人迫害に触れたいんだろうと思います。といったことは別にして、本書で中心に据えられるLIGOはまさに重力波の検出のために設立された機関であり、連邦議会での承認などにも話は及んでいます。私は専門外もはなはだしく、まあ、我が国のスーパー・カミオカンデがニュートリノ検出のための大がかりな設備ですし、そういったものを想像して読み進みました。ただし、欧州のCERNも有名なんですが、中性子をぶつけるという以上の知識はありません。重力波とは何か、については、本書冒頭のp.52から解説されており、翻訳者の解説に少ししありますが、要するに、質量が運動する際に出るものらしく、質量=エネルギーは重力波となって失われるとされ、ただ、極めて微弱なために、ブラックホール級の大きな質量でないと地球上では観測されないとのことです。アインシュタインの一般相対性理論からは重力による光の屈折、高速による時間の遅れ、重力赤方偏移などとともに、重力波も予言されていましたが、理論的にはともかく、実証的には検出が最後になったそうです。干渉計とか、共鳴棒とか、研究者の写真とともに、重力はを検出する装置の写真も盛り込まれており、私のような専門外の人間には何のことやらサッパリ理解は進まないものの、それなりに教養を身につけることが出来そうな気もします。それにしても、物理学というよりは、工学に使い検出の工夫だったように受け止めています。

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次に、桐野夏生『バラカ』(集英社) です。人気作家が2011年から連載を始めて、極めて長期に渡って書き綴って来た大作の震災文学です。福島の原発が爆発を起こして、東京ですらかなり高い放射能汚染に見舞われるという想定で、北関東は群馬に働きに来ていたブラジル人夫婦の間に生まれた少女が、反原発の側からも原発推進の側からも、いずれからも極めて都合よく象徴的な存在として祭り上げられ、その数奇な人生をたどるものです。しかしながら、何となく、私にはしっくり来ませんでした。「震災履歴」の情報開示というのは、伊藤計劃の『ハーモニー』あたりからのインスピレーションでしょうが、何といっても物足りないのは、第1にラストの足の速さです。すなわち、バラカが川島の下から逃げ出して岩手の農園に帰った時点で、川島がバラカを殺そうとしたり、あるいは、川島自身が自殺したりと、パタパタを先を急いで一気に20年余りも先を飛ばしたりするのは、ひどく唐突感があります。第2に聖霊の声教会のヨシザキ牧師をはじめとして、極めてご都合主義的に少ない登場人物の間のリンケージでコトを済ませようとしています。世界最大のカトリック国民であるブラジル人がプロテスタントに傾倒するのも意味不明です。いずれにせよ、登場人物の少ない妙に狭い世界で物語が完結し、最後は駆け足で小説が終わったのか、終わらせられなかったのかも不明ですので、違和感を感じて読後感が悪いものになってしまいました。せっかく、基本ラインは私と同じ反原発なんですから、もっとしっかりした小説を書いて欲しかった気がしますが、人気作家はこの程度でも許されるのかもしれません。とてもガッカリしました。

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最後も小説で、葉真中顕『ブラック・ドッグ』(講談社) です。DOGなる過激な動物愛護団体、というか、動物解放組織と自ら定義し、ヒトとヒト以外の動物の種差別=スピーシズムを否定し、人間だけでなく動物も含めた最大多数の最大幸福を目指す団体による東京へのテロ活動をテーマにしています。そこに、ペットの声が理解できるという妙ちきりんな美女やその女性を看板に据えたペット会社、さらに、虐待され棄てられたペットの里親を探す団体の活動家、ジャーナリスト、また、単にその場に居合わせただけの中学生のクラスメートなどなど、かなり広がりを持った登場人物で物語が進み、当然ながら、テロを仕掛けたDOGサイドの人間も含めて、そのかなりの部分が死に絶えます。特に主人公的な人物は設定されていないような気もしますが、登場人物がモノローグを語るパートが少なくなく、誰のモノローグなのだろうかと、私のような浅い読み方しか出来ない読者は戸惑うかもしれません。東京のベイエリアのペットに関連するイベントを知能が高くて凶暴な怪物が襲い、次々と殺されていくというストーリーです。特に、倫理的なテーマや教訓めいたテーマがあるわけではなく、テロはほぼほぼ成功に終了しますので、特に勧善懲悪というわけでもなさそうですし、候補作に上げられながら直木賞を逃したのも理由がありそうな気がします。私はこの作者のデビュー作『ロスト・ケア』から、いくつか作品を読んで来ていますので、本作品もいちファンとして読んでみましたが、そうでない読書子にはオススメしません。なお、続編がありそうな終わり方だと私は受け止めていますが、その続編を読みたいかどうかは、現時点では、ビミョーなところかもしれません。

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2016年7月22日 (金)

藤浪投手を立てても点差以上のワンサイドゲームでまたまた広島に負けて4連敗!

  HE
阪  神000100100 291
広  島02101000x 4100

先発藤浪投手でも連敗を止められず、点差以上のワンサイドゲームで広島にボロ負けでした。ヒット数は広島の10安打に遜色ない9安打なんですが、決定打不足で得点力がありません。特に、今夜のように先発投手が序盤から失点すれば、もはや中盤で敗色濃厚です。オールスター明けの初勝利はいつになるんでしょうか?

終末の土日で何とか1勝目指して、
がんばれタイガース!

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マクロミル・ホノテによる「夏休みの過ごし方」に関するアンケート調査結果やいかに?

今週月曜日の7月19日にマクロミルのホノテのサイトに「夏休みの過ごし方」に関する調査結果が明らかにされています。公務員を含む会社員の理想の夏休み期間は7日間ながら、現実は平均3.9日間で理想の約半分にとどまっているものの、今年は「山の日」ができて、ちょっぴり休暇が長くなった人もいたりするようです。まず、ホノテのサイトからTOPICSを引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 会社員(公務員含)の理想の夏休み期間は7日間。しかし現実は平均3.9日間で理想の約半分。
    • 最も長いのは「製造業」の4.7日間、最短は「医療・福祉業」で2.3日間
  • 初施行「山の日」の恩恵にあずかって夏休み期間が長くなった人はわずか17%。
  • 夏休みは "自宅でのんびり派" が多数か。平均予算は7万4千円。
    • レジャー予定はこれから計画? 旅行予定者は30%だが、行きたい人は77%。
    • 働く大人は、みなお疲れ!? 73%が夏休みは「たくさん寝たい」。13%は夏休み中にも「仕事」を予定。
    • ライフイベントが動く夏休み! 19%は家族に相談事あり。恋人がいる人の35%が親に紹介したい。

週末前の軽い話題として、マクロミルの夏休みに関する調査結果を図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、グラフは引用しませんが、会社員・公務員を対象に、理想の夏休み期間を尋ねたところ、最も多い回答は7日間(29%)で、次に2位は10日間(20%)、3位は5日間(17%)と続いており、それなりの旗艦の休みを希望している一方で、現実の夏休み平均取得日数は業種別に上のグラフの通りです。平均で3.9日となっており、どうも人手不足の業種ほど休暇が短いという傾向がありそうな気がします。

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今年から8月11日が「山の日」として祝日に加えられましたが、、上のグラフは「山の日」の夏休み期間への影響について尋ねた結果です。恩恵にあずかった16.9%を多いと見るか、少ないと見るかは、何ともビミョーなところですが、当然ながら、祝日の増加により夏休みが逆に減ったという2.2%は上回っています。今年の場合は8月11日が木曜日ですので、それなりに恵まれた職場では、飛び石連休の谷間も休むことが可能かもしれません。

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最後に、夏休みの予定を尋ねた結果のグラフは上の通りです。私も断然家でゆっくりです。

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2016年7月21日 (木)

Twitter による2016年参議院選挙の振り返りやいかに?

やや旧聞に属する話題なんですが、7月11日に Twitter から「2016年 #参院選 を振り返って」と題するリポートが明らかにされています。Twitter 上でどのような議論やトピックがなされたのか振り返った結果となっています。投票と開票結果は広く報じられた通りなんですが、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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選挙期間中、Twitter で話題になっていた上位3政党は自民党31.1%、民進党21.1%、共産党20.7%でした。得票数や当選議席数などに比べて共産党が Twitter 上で話題になっていた、のが読み取れます。逆から見て、Twitter 上で話題になっている割には、得票や議席に結びついていない、という見方もできそうです。

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さらに、選挙期間中に各政党についてツイートした方が、各政党について何回ツイートしているかの結果が上のテーブルの通りです。ここでも共産党は話題にされているようで、1人平均10回近くツイートされています。他方で、3回程度の政党もあったようです。ここにも政党に対する注目度に差が出ていたようです。

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最後に、政策に関するツイート結果は上のグラフの通りです。憲法改正32.7%、景気・経済17.9%、エネルギー(原発など)14.4%などの結果が示されています。もちろん、憲法改正などは賛成なのか、反対なのか、判然とはしないんですが、憲法改正が話題になっていたことは確かなようです。

やや無理やりながら、経済評論のブログに分類しておきます。

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2016年7月20日 (水)

接戦にもならずにボロ負けで巨人に甲子園で3タテされる!

  HE
巨  人010004001 670
阪  神010000001 282

接戦にも持ち込めずに甲子園で巨人にボロ負けでした。ヒット数は巨人を上回る8安打なんですが、阪神打線には好機に決定打が出ず得点力がありません。ホームランは3戦して今夜の最終回の狩野選手だけでした。もはや、7月の段階でペナントレースから脱落なんでしょうか。

次の広島戦は何とか1勝目指して、
がんばれタイガース!

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IMF「経済見通し改定」World Economic Outlook Update やいかに?

昨日、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。改定前は4月の見通しでしたので、主たる変更の原因は英国のEU離脱、いわゆる BREXIT ということになりそうな気がします。アップされているpdfの全文リポートの1ページ目が全体のサマリーになっているんですが、その2パラ目の書き出しの3センテンスを引用すると以下の通りです。

World Economic Outlook Update
The outcome of the U.K. vote, which surprised global financial markets, implies the materialization of an important downside risk for the world economy. As a result, the global outlook for 2016-17 has worsened, despite the better-than-expected performance in early 2016. This deterioration reflects the expected macroeconomic consequences of a sizable increase in uncertainty, including on the political front.

ということで、国際機関のリポートを紹介するのはこのブログの特徴のひとつでもあり、今夜は図表をを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。IMFのサイトから見通しの総括表となる成長率見通しのテーブルを引用すると以下の通りです。いつもの通り、テーブルの画像をクリックすると、リポート最終ページの見通し総括表のみのpdfファイルが別タブで開くようになっています。

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見れば明らかな通り、BREXIT がもたらした不透明性を踏まえ、英国経済の成長率見通しは2016年について+1.9%から+1.7%へ、2017年については+2.2%から+1.3%へ大幅に下方修正されています。なお、欧州委員会が英国国民投票後の経済見通し The Economic Outlook after the UK Referendaum を公表しており、'Mild' scenario と 'Severe' scenario を設定した2016-17年の見通しが明らかにされていますが、そのリポートから Table I.1: Overview - The first assessment, GDP growth を引用すると以下の通りです。厳しいシナリオでは2017年英国経済はマイナス成長と見込まれています。

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世界経済の成長率については2016-17年の両年ともに▲0.1%ポイント下方改定され、それぞれ+3.1%、+3.4%と緩やかな回復が続き、少し成長率は加速するものと見込まれています。ただし、日本経済については、先進国の中でも低成長が続き、2016年+0.3%、2017年+0.1%との予想となっています。日本経済については、BREXIT とともに消費税率引上げの先送りも考慮されており、2016年についてはいわゆる駆込み需要が発生しないことから下方修正、2017年については駆込み需要後の反動減が回避されるため上方修正となっています。リポートpp.3-4にかけての日本経済に関する見通しの記述は以下の通りです。

First-quarter activity in Japan came in slightly better than expected - even though the underlying momentum in domestic demand remains weak and inflation has dropped. With the announced delay in the April 2017 consumption tax hike to October 2019, the growth forecast for 2017 would have been raised by some 0.4 percentage points next year. However, the further appreciation of the yen in recent months is expected to take a toll on growth in both 2016 and 2017: as a result, the growth forecast for 2016 has been reduced by about 0.2 percentage points, and the upward revision to growth in 2017 is now projected to be only 0.2 percentage points. Japan's growth in 2017 could be higher if, as expected, a supplementary budget for fiscal year 2016 is passed, providing more fiscal support.

最近の円高が成長にダメージを及ぼす恐れとともに、補正予算による財政サポートが成長に寄与するとの期待を明らかにしています。また、リポートでは、世界経済への全般的な下押しリスクとして、イタリアとポルトガルをはじめとする欧州の銀行の安定性、中国の信用リスク、保護主義の高まり、また、テロなどの地政学的なリスクを指摘しており、政策的には短期の需要下支えと中期の構造改革の組合せが不可欠と結論しています。
最後に、リポートp.8のグラフ Figure1.Growth Forecasts under Different Senarios を引用すると以下の通りです。

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2016年7月19日 (火)

ピュー・リサーチによる米国大統領選挙に関する世論調査結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、私がよく参照している米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから7月7日に、"2016 Campaign: Strong Interest, Widespread Dissatisfaction" と題する米国大統領選挙に関する世論調査結果が発表されています。もちろん、サイトにはpdfファイルの全文リポート、何と100ページを超える分量のリポートもアップされています。全体のサマリーとなっているサイトの1ページ目から、いくつかグラフを引用して簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Voter satisfaction with presidential candidates at lowest level in decades と題する冒頭のグラフを引用しています。"voter satisfaction" ですから「満足度」とでもいうのか、いわゆる支持率とは微妙に異なり、例えば、2000年から2012年までの米国大統領選挙における民主党と共和党の両候補者の満足度を合計すると100を超えたりします。ただ、今年の両党候補者についてはヒラリー候補43%、トランプ候補40%ですから、ほぼ支持率に近いのかもしれません。もっとも、上のグラフの注にある通り、6月中下旬の段階の結果であり、ニューヨーク・タイムスとCBSの合同世論調査による最近の結果では両者はほぼ拮抗しているとの結果も示されています。

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次に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Economy and terrorism are top issues for voters in 2016 を引用しています。米国大統領選挙のトップ・イシューとしては、経済、テロ、外交政策、保健政策(ヘルスケア)、銃規制、移民、社会保障、教育などがこの順で上げられています。ヒラリー候補の夫であり、民主党の当時の候補者であったクリントン元米国大統領の1992年の選挙戦では、 "It's the economy, stupid!" が合言葉になっていましたが、今年の米国大統領選挙でもそうなのかもしれません。あるいは、フランスのニースでのテロやトルコ軍のクー・デタ未遂などを受けて、テロや外交政策などがより重視されるようになったりするんでしょうか?

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最後に、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Trump and Clinton on the issues を引用しています。ヒラリー候補ととトランプ候補の政策への対応についての質問です。トップ・イシューに上げられていた経済やテロについては、ややトランプ候補に軍配が上がっていますが、外交政策、保健政策(ヘルスケア)、銃規制、移民などでヒラリー候補を評価する見方も多くなっています。

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2016年7月18日 (月)

小さなミスが積み重なって巨人に競り負ける!

  HE
巨  人000001001 260
阪  神000100000 160

相変わらず打線が湿りっぱなしで守備にミスが出ては勝てません。先発メッセンジャー投手はよく投げたんですが、阪神打線の調子からして、もはやゼロに抑えないと勝てないのかもしれません。とても気の毒です。なお、ヤクルトが勝って、またまた最下位転落です。

明日は、
がんばれタイガース!

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新しい研究成果が公表される!

先週金曜日7月15日の午後に研究所のサイトに新しい研究成果のリサーチノートがアップされました。以下の通りです。

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2016年7月17日 (日)

オフィスのエアコン事情やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、7月7日に三菱電機ビルテクノサービスから「ビジネスパーソン1,000名に聞く、夏のオフィスのエアコンに関する意識と実態調査」と題するアンケート調査結果が公表されています。もちろん、pdfのリポートもアップされています。サイトから調査結果の概要を6点引用すると以下の通りです。

ポイント
  • 6割(60.5%)のオフィスが空調機の温度設定が変更可能!
  • オフィスの設定温度は28℃以上が最多(3割弱)!
  • 6割(60.0%)の女性は、オフィスが "寒い"と感じている!
  • 8割以上(82.5%)がオフィスの冷房で"体調不良"になった!
  • 7割(70.3%)の女性が、黙ってこっそり設定温度を変更していた!
  • 変更した温度が元に戻される7割(73.7%)、8割弱(78.0%)が再び希望温度に変更!

付け加えるべきことはなにもないんですが、下のグラフはリポートから引用しています。私も、少なくとも今年については、役所のオフィス以外は、やや冷房の利かせ過ぎのきらいがあると感じていて、薄手のカーディガンなんぞを持ち歩くことが多くなっています。

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2016年7月16日 (土)

今週の読書は経済書から小説まで計6冊!

今週は先週から当然のようにペースダウンし、経済書をはじめとして、以下の6冊です。

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まず、森川正之『サービス立国論』(日本経済新聞出版社) です。著者は経済産業研究所の官庁エコノミストです。私と同業者ですので、かつて同じ課で仕事をしていたこともあって、それなりに顔見知りではありますが、ご著書をいただけるほどの間柄ではありません。ということで、本書はタイトル通りにサービスに関する経済分析です。まず、我が国サービス業の生産性について実証分析を紹介し、米国をはじめとする諸外国と比べてものすごく低いというわけではないものの、さらなる生産性向上の余地があると結論しています。ただし、いわゆるボーモル病は成り立つ可能性が高いとも見通しています。そして、サービス産業のイノベーションに話が進み、労働や雇用との関係では、サービス産業に限らないんですが、明らかに、生産性が上がると雇用は減少するという短期的な関係を論じています。最後は国際化や景気循環との関係などが論じられており、7章や8章ではサービス産業の生産性と需要との関係が取り上げられています。私の従来からの主張なんですが、サービス産業に限らないんですが、当然に、需要が高まると生産性は向上します。サービス産業ではホテルや遊園地を想像すれば明らかなように、需要が増加すればホテルの部屋は埋まって従業員1人当たりでも、資本ストックたる部屋1部屋当たりでも、どちらでも生産性は高まります。こういった需要と順循環的な生産性の計測に私は常々疑問を持っており、何らかの構造的な生産性向上のための政策的な措置がなくても、少なくとも短期には需要増加により生産性が高まりますから、どこまでターゲティング・ポリシーのような政策措置が必要なのかは疑問に感じています。その疑問に応えてくれはしませんが、それなりの学術書であり、サービス産業について考えさせられる本です。

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次に、友野典男『感情と勘定の経済学』(潮出版) です。著者は明治大学教授で行動経済学や実験経済学の専門分野とする研究者です。ほぼほぼカーネマン教授の『ファスト&スロー』や一連の著作に基づいた入門書で、特にオリジナリティはないような気もしますが、行動経済学についてわかりやすく解説しています。直観的に判断するシステム1と熟慮して判断するシステム2の分類は、まったくカーネマン教授と同じですし、利得よりも損失により大きく対処するのは、ツベルスキー=カーネマンのプロスペクト理論そのものですから、このキーワードを使って欲しかった気がします。伝統的な経済学が想定する合理性からやや欠けるという意味での「限定合理性」というキーワードも現れません。しかしながら、こういった専門用語で表現される内容を平易に解説し、加えて、共同体原理で動く無報酬のボランティア活動に市場原理の金銭インセンティブを持ち込むことのムリ、あるいは、必ずしも日本人特有でないとしても同調性のある経済社会での選択行動、リスクに対する主観的確率と客観的確率のズレ、あるいは、リスク回避すべきケースなのに回避しようとしない正常性バイアス、などなど、最後は幸福論まで、いろいろと行動経済学の観点から解き明かしています。ただ、1点だけ気にかかるのは、最後にまとめて参考文献が並べられてはいますが、本文中にはまったく注記もなく、学術書であれば「剽窃」に近い印象です。何とかならなかったのでしょうか?

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次に、速水健朗『東京β』(筑摩書房) です。著者はフリーランスのジャーナリストであり、タイトルにつけられた「β」とはソフトウェアなんかの完成版前のプレリリースにつけられるβバージョンと同じ意味らしいんですが、永遠に東京はβバージョンのままなのかもしれません。大雑把に地理的に東京を区分した章立てとなっており、湾岸のいわゆるウォーターフロントから始まって、新宿副都心、スカイツリーや東京タワーなどのランドマーク、そして、個別的な地点としての新橋と羽田が最後の方に取り上げられています。小説、映画、ドラマ、あるいはその他のハイカルチャーやサブカルチャーから東京について文化的に把握しようと試みていますが、この手の文化論では忘れられがちな視点ながら、背景としての経済的な動向、すなわち、高度成長期とか、バブル経済とか、経済の停滞などにも目が配られています。京都から東京に出て来た田舎者としての私なんぞには、それなりに参考になる部分もありますが、東京で生まれ育ったわが家の倅たちにはどうなのか、と思わないでもありません。東京という都市を「花の都」と見るか、当然の日常の風景と受け止めるか、読者の視点によりかなり違いが生じるような気がします。でも、東京在住者でもそうでなくても、日本の首都の文化的な姿を把握するのはそれなりに意味のあることだと考える向きもあるかもしれません。

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次に、ネッサ・キャリー『ジャンクDNA』(丸善出版) です。ハッキリいって、理科系でない私にはとても難しかったです。英語の原題は日本語と同じで、著者はウィルス学で博士号を持つ研究者です。現在の科学では、「遺伝子はタンパク質をコードするDNA配列」と定義され、それ以外のタンパク質をコードしない部分は「ジャンクDNA」とよばれつつ、それがボリューム的には98%に達するわけなんですが、このジャンクDNAに関する入門書・解説書ながら、当然かなり難しいです。私の理解した範囲では、遺伝子に起因する病気の発生確率を順々に解説しているようにしか読めませんでした。その意味で、ジャンクDNAは遺伝的な病気の原因とか、老化や寿命との関係が研究されているという事実がある一方で、p.241の図14.1にも見えるように、生物がより知的で高等になるにつれて増えていくのはタンパク質のコーディングに関わる遺伝子数ではなく、コーディングしないジャンクDNAの割合だったことも明らかになっています。ヒトのゲノムは解析されましたが、宇宙の暗黒物質ダークマターと同じように、ゲノムの中にもまだ解明されていない「ダークマター」があり、遺伝的な疾病や老化だけでなく、タンパク質のコーデョングならざる何らかの意味を持っている可能性があるのは判りました。まあ、それだけです。私の知的好奇心が、コチラ方面に向いてないのかもしれません。

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次に、ジャイルズ・ミルトン『レーニン対イギリス秘密情報部』(原書房) です。著者は英国のノンフィクション作家であり、邦訳本も何冊かあって、なかなか人気のようです。本書の英語の原題は RUSSIAN ROULETTE であり、2013年の出版されています。邦訳タイトルの通り、ロシア革命直前の1916年から革命初期の1921年くらいまでのソ連における英国諜報部(SIS)の活動を追ったノンフィクションです。当然ながら、英国サイドの公開情報に基づいた記述ですので、ソ連サイドの情報はほとんどないようですから、それなりのバイアスはあるものと考えるべきですが、昔ながらのスパイ活動、すなわち、変装や消えるインク、あるいは、パスポートなどの偽造などなど、ソ連に潜入した英国スパイの活動がテンコ盛りです。イアン・フレミングの小説に登場する007ジェームズ・ボンドのモデルとされるシドニー・ライリーも登場します。英国スパイは、まず、ロシア革命初期にはソ連の対独戦継続を画策し、東部戦線が停戦されると、今度はコミンテルンのインドへの「革命の輸出」を阻止すべく、積極的かつ金銭に糸目をつけない活動を繰り広げます。ソ連サイドの情報がないのは残念ですが、当時の超大国である英国が米国や欧州あるいは日本などの同盟国の動向などお構いなしに、自国の都合で対ソ連の諜報活動を展開している様子がよく伺われます。現在の米国もその意味では同じようなもんなんだろうという気がします。

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最後に、長岡弘樹『赤い刻印』(双葉社) です。今週の読書で小説はこれ1冊です。作者は『傍聞き』や『教場』などの警察小説で人気のミステリ作家です。私も『傍聞き』と『教場』は読んでいます。本書も短編集で、4話から編まれています。第1話は『傍聞き』と同じ母子が主人公として登場し、シングルマザーの母親は所轄の課長に昇進し、女の子は小学6年生から中学3年生に成長しています。何年たっても年齢が増えないサザエさんスタイルとは異なるようです。ほか、医大の学生と教授の関係、特に、脳の海馬の障害から1日しか記憶を保持できなくなった学生に対して日記を命じた教授と、さらに、薬物の毒性に関する興味深い物語、自殺した小学生の親の小児科医と自殺の原因を作った担任との駆け引き、老齢の母親と障害を持つ弟の介護に疲れ切った女性を見守る医師の役割、などなど、決して恵まれた状況にあるわけではない個人個人をやさしく見守る作者の視点、さらに、不正を許さない厳しい目線、さまざまな人間関係のからみ合いの中で見えて来る真実を描き出しています。

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2016年7月15日 (金)

UNICEF The State of the World's Children 2016 が刊行される!

とても旧聞に属する話題なんですが、6月22日にUNICEFから "UNICEF The State of the World's Children 2016" が公表されています。ほぼ30年に渡って毎年公表されているリポートで、日本語では「世界子供白書」と呼ばれています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。私は開発経済学を専門分野のひとつとするエコノミストとしてUNICEFには少額ながら寄付もしています。国連のミレニアム目標はかなりの程度に成功を収め、世界の貧困は大きく削減されましたが、子供や女性をはじめとする恵まれない人々はまだまだ世界に残されています。こういった機会に、もう一度世界の子供や女性や家族の貧困について考えるべきかもしれません。下の画像は今年のインフォグラフィックスです。UNICEFのサイトから引用しています

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2016年7月14日 (木)

ピュー・リサーチによる米国とオバマ政権に関する国際世論調査結果やいかに?

昨夜の熊本地震の影響に続いて、これまた、とても旧聞に属する話題なんですが、私がよく参照している世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから6月29日に米国に関する国際世論調査結果である "As Obama Years Draw to Close, President and U.S. Seen Favorably in Europe and Asia" が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。米加両国の北米のほか、欧州10国、アジア太平洋4国を対象にした国際世論調査です。タイトル通りに、オバマ政権2期8年間も評価されていたりします。いくつか、図表を引用しつつ簡単に紹介しておきたいと思います。

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まず、上のグラフは欧州10国を対象とした米国大統領への信頼度です。2001年から2016年までの時系列で示されています。ブッシュ前大統領が任期8年間かなり低位で推移したのに対し、オバマ現大統領はかなりの信頼を集めているといえます。このグラフには現れませんが、欧州の例外はギリシアです。欧州ではギリシアのみ米国をはじめとする外国に対する評価が厳しくなっているような気がします。債務削減でアレコレいわれているわけですから、当然かもしれません。

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次に、上のグラフは米国に対する好感度です。米加に加えて欧州10国とアジア太平洋4国の調査対象が網羅されています。意外とカナダの米国に対する好感度が低いのが読み取れますが、欧州ではポーランドとイタリア、アジア太平洋では日本の好感度が高くなっています。ギリシアは債務問題への対応などに起因すると私は認識しているんですが、諸外国には押しなべて厳しい見方をしているような気がしてなりません。そのギリシアに次いで米国への好感度が低いのが中国です。

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続いて、上のグラフは米国の影響力低下の認識に関する意識調査の結果です。10年前との比較で問うています。日本は米国への好感度が高い一方で、米国の影響力や重要性の低下がかなり大きい、というか、正確には、世界における米国の重要性の低下が大きいと受け止めているようです。日本では米国に対する好感度とともに期待も大きそうです。逆に、インドでは10年前から米国の重要性は低下しておらず、むしろ上昇していると考える人の方が多いようです。これは私には理解できません。また、ギリシア、ポーランド、イタリアなどでもインドと同じように、米国の重要性は増しているという意識の方が大きいという結果が読み取れます。

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最後に、米国以外の調査対象国において、世界のリーダーに対する信頼度の調査結果です。すなわち、信頼度の対象は、米国のオバマ大統領、ドイツのメルケル首相、ロシアのプーチン大統領、中国の習主席、加えて、米国大統領候補のクリントン候補とトランプ候補となっています。とても興味深い結果が示されていますが、やっぱり、というか、何というか、米国大統領候補としては、多くの国でトランプ候補よりもクリントン候補が支持を集めているようです。トランプ候補は、日本を含むいくつかの国では、1ケタの支持しかないようです。何となく判る気もしないでもありません。

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2016年7月13日 (水)

何とかヤクルトに連勝して5位ターン!

 十一 HE
阪  神01001000002 4130
ヤクルト」00001010000 280

何とか延長戦をモノにしてヤクルトに連勝でした。これでオールスター休みは5位ターンです。今日もムダの多い打撃陣でしたが、延長に入って11回に4番福留選手の長打でケリをつけました。反省の多い前半戦でした。シーズン当初の超変革は吹っ飛んだ気がします。

オールスター明けの後半戦は、
がんばれタイガース!

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帝国データバンクによる熊本地震によるマクロ経済への影響分析やいかに?

とても旧聞に属する話題ながら、6月28日に帝国データバンクから「熊本地震によるマクロ経済への影響分析」と題するリポートが公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから分析結果を4点引用すると以下の通りです。

分析結果
  1. 平成28年熊本地震による被害の大きかった熊本県と大分県の名目県内総生産(GRP)は、日本全体の1.9%(2013年度)を占めており、自動車工場の被災でサプライチェーンが大きく毀損した新潟県中越沖地震(2007年7月)の被災地となった新潟県と同程度
  2. 熊本地震では、九州自動車道の一部不通で生産された農産物の流通への打撃が懸念されるほか、電気製品に組み込まれる電子部品などの供給力低下は、企業がサプライチェーンを再構築するきっかけとなる可能性もある
  3. 過去の震災が日本経済に与えた影響では、東日本大震災を除き、発災の翌期にはプラス成長に転じており、とりわけ個人消費の回復がけん引してきた。しかし、過去の震災は日本経済が堅調に推移していたなかで発生していた。今回の熊本地震は、国内総生産(GDP)が過去8期中4期でマイナス成長を記録するなど、景気が停滞するなかで発生しており、影響は新潟県中越沖地震を上回る懸念もある
  4. TDBマクロ経済予測モデルによる見通しでは、日本銀行と政府による支援策で、震災からの復旧・復興に向けた環境が整いつつあり、住宅投資や公共投資の集中投下で2017年1-3月期以降は過去の震災時と比較して堅調に推移すると予測される

かなり長くなってしまって、ほぼほぼすべてを網羅的に概観しているような気もしますが、追加的に、政府の対策を簡単に見ておきたいと思います。まず、内閣府では「平成28年熊本地震の影響試算について」と題するリポートで、熊本・大分両県に及ぶストック被害を約2.4-4.6兆円と試算しています。両県のストック総額が約63兆円ですから、大雑把に4%から7%くらいの被害ということになります。これに対して、政府は4月26日に激甚災害の指定を行い、土木施設災害復旧事業等に関する特別の財政援助、農地等の災害復旧事業に係る補助の特別措置などを実施する政令がすでに施行されており、また、補正予算案につて、被災者の生活再建や道路の復旧などを後押しするため7,780億円を計上する方針と報じられています。日銀も4月28日に貸付総額3,000億円を無利息で実施するという被災地金融機関支援オペの措置を決定・導入しています。
最後に、下のグラフはリポートから 震災発生後の実質GDPの推移 のグラフを引用しています。黒いラインがTDBマクロ経済予測モデルを用いた帝国データバンクの予測なんですが、これを見る限りは、熊本地震の影響は限定的とも見えます。でも、このグラフはかなりミスリーディングです。すなわち、オレンジのラインの新潟県中越沖地震の後の実質GDPが大きく落ち込んでいるのが読み取れますが、これは地震の影響というよりは、リーマン証券の破たんなどの金融危機の影響と考えるべきです。このグラフでは、東日本大震災だけが景気回復を腰折れさせかねない経済へのインパクトを持っていた、と私は考えています。その点を考慮しつつ眺める必要がありそうです。

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2016年7月12日 (火)

下落が続く企業物価もそろそろ下げ止まるか?

本日、日銀から6月の企業物価(PPI)が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲4.2%と引き続き大きなマイナスを記録しています。円ベースでの輸出物価は▲14.4%、輸入物価は▲23.2%の下落でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業物価指数、前年比4.2%下落、円ベースの輸出物価は大幅下落
日銀が12日に発表した6月の企業物価指数(2010=100)は前年同月比4.2%下落の99.2となり、15カ月連続で前年同月を下回った。市場予想の中央値である4.2%と同じだった。原油や液化天然ガス(LNG)価格の下落を背景に電力やガスの値下がりなどが指数を押し下げた。
前月比では0.1%下がった。前月を下回るのは2カ月ぶり。「電力・都市ガス・水道」で電気やガスの料金が下落したほか、「スクラップ類」も下がった。5月半ば以降、中国の鉄鋼メーカーの増産で日本からの輸出価格が下落し、国内価格も連動して下がった。「化学製品」や「非鉄金属」も下落した。
円ベースの輸出物価は前月比で2.2%下落した。前年同月比では14.4%下がり、09年8月(14.5%下落)以来、6年10カ月ぶりの大幅な下落となった。「輸出は強含んでいるが、円高の影響が大きかった」(調査統計局)という。特に「はん用・生産用・業務機器」で油圧・空気バルブが中国の建機メーカー向けの定期的な価格改定により、円建てで値下げとなったことが響いたほか、「電気・電子機器」も下がった。
輸入物価は前月比で0.5%下落し、前年同月比では23.2%下がった。「化学製品」では、欧州からのがん治療薬の材料が原料のプラチナ価格の下落やユーロ安で下がった。汎用プラスチックも原油由来の原料価格が下がったことが影響した。「電気・電子機器」も下落した。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは237品目、下落は498品目となった。下落品目と上昇品目の差は261品目で、6月の249品目から拡大した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは下の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。

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まず、数字の上だけのお話かもしれませんが、ヘッドラインの国内物価の下落率は4月▲4.2%、5月▲4.3%に続いて、6月は▲4.2%ですから、下落幅の拡大に歯止めがかかっています。もちろん、これくらいは統計の誤差の範囲内かもしれませんし、このまま下落幅が縮小し物価上昇に向かうと考えているわけではありません。ただ、景気拡大の折には、いわゆる主役の交代というのがあって、牽引役が、例えば、輸出から消費に、そして、消費から設備投資に移り変わるケースがあるんですが、企業物価を見る限り、物価下落というかデフレの主役の交代があったようで、少し前までは国際商品市況における石油価格の下落だったんですが、現在も石油価格やLNG価格の下落が電気料金などに波及している面も残っているものの、物価下落の主役は石油価格の下落から円高に移行したように私は受け止めています。6月下旬は、いわゆるBREXITで為替がかなり円高に触れてしまい、今度の欧州をはじめとする新興国も含めて海外経済の動向も不透明ながら、米国経済は、6月雇用統計を見る限り、それなりの回復を示し始めているようですし、引用した記事に見える通り、ボリューム的には海外経済の回復に伴って輸出が強含んでいる一方で、輸出物価は円高のために大きな下落を示したようです。
消費者物価(CPI)への波及については、生鮮食品を除くコアCPIで見て、かなり直観的かつ大雑把ながら、現状の石油価格がバレル40-50ドル、為替が1ドル105円くらいであれば、足元のマイナスを脱して年内か年明けくらいには前年同月比でプラスに転じる可能性が高いとの感触を私は持っていますが、すでに総務省統計局からスケジュールが公表されている通り、来月末にはCPIの基準改定があります。前年同月比で▲0.5%ポイントくらいの下振れが生じる可能性も排除できず、そうなれば、コアCPIのマイナス脱却はさらに先になる可能性があります。2005年基準への改定の際には、このテクニカルな要因で小規模ながら「CPI基準改定ショック」が市場に生じましたので、今夏も少し用心しておく必要があるかも知れません。

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2016年7月11日 (月)

2か月連続で前月比マイナスに落ち込んだ機械受注と設備投資をどう見るか?

本日、内閣府から5月の機械受注が公表されています。電力と船舶を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列は前月比▲1.4%減の7850億円と2か月連続の前月比割れとなり、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動き」から「足踏み」に下方修正しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注、5月は前月比1.4%減 基調判断9カ月ぶり下方修正
内閣府が11日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べて1.4%減の7850億円だった。2カ月連続で前月実績を下回った。QUICKが事前にまとめた市場予想(2.9%増)に反して落ち込んだ。
内閣府は機械受注の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「足踏みがみられる」に下方修正した。下方修正は2015年8月以来、9カ月ぶり。「足踏みがみられる」という判断は15年9月以来となる。内閣府は、判断を見直した理由について「1-3月期に相次いだ大型案件の反動減の影響が大きい」と説明した。
製造業からの受注額は、6.4%減の3115億円と2カ月連続でマイナスとなった。業種別では、情報通信機械からの半導体製造装置や産業用ロボット、はん用・生産用機械では運搬機械や電子計算機の受注が減った。非製造業は0.3%減の4738億円だった。減少は3カ月連続。業種別では、金融業・保険業からの電子計算機の受注が減った。
内閣府による4-6月期の見通し(前期比3.5%減)を達成するためには、6月に前月比27.7%以上の伸びが必要になる。

いつもながら、よくりまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、引用した記事にもある通り、コア機械受注の季節調整済みの系列で前月比+3.2%増を中央値とし、レンジの下限でも▲1.3%減でしたから、▲1.4%減の実績は予想をかなり下回りました。4月の統計が公表された際には、4月単月の減少であって循環的な動きの中の回復過程における超一時的な突発事故なのか、それとも、新興国経済の停滞や円高の進行といった国際要因に消費低迷などの国内要因を合せて、回復過程にある循環を腰折れさせるような現象なのか、何とも現時点では判断できないと考えていましたが、どうやら、後者に近い印象が漂い始めています。直観的に、私は景気後退の先触れのような動きとはまだ考えておらず、振れの大きい統計にありがちな一時的な下降局面の可能性があり、政策的なテコ入れによって景気の腰折れは避けられる可能性が高いと考えていますが、引き続き冴えない動向の消費とともに設備投資まで弱含みとなれば、逆に、政策による下支えなければ景気回復局面が腰折れする可能性は高まるのは当然です。

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2016年7月10日 (日)

格の違いを見せつけられて広島にまたまたボロ負け!

  HE
広  島350010000 9151
阪  神000000000 080

なすすべなく広島にボロ負けでした。首位を独走する広島と最下位の阪神の力の差がそのまま出た形です。いずれにせよ、序盤に先発投手がここまで崩れては試合になりません。打線は相変わらず得点力なく、広島にラクに3タテされてしまいました。優勝を狙うチームは違います。

オールスター前の最下位争いでは、
がんばれタイガース!

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先週の読書は経済書のオーバーペースで9冊を読み飛ばしてしまう!

先々週は適度なペースダウンを達成した気がしたんですが、先週は近くの図書館から経済書がいっぱい借りられて、ついついオーバーペースに陥ってしまいました。経済書を中心に以下の9冊です。今週はもう少し抑え気味にしたいと考えています。

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まず、小池和男『「非正規労働」を考える』(名古屋大学出版会) です。著者は労働経済学の大御所、もう80代も半ばだろうと思います。我が母校の京都大学経済研究所の所長の経験もあったかと記憶しています。出版社を見ても、一般向けというよりも、かなり学術書に近いと考えるべきです。ということで、本書では非正規労働について、職務内容や昇進、給与などについて、政府統計の時系列をたどるんではなく、ケーススタディや個別の聞き取り調査から論を説き起こしています。古くは1950年代の造船所における社外工や1960年代の自動車工場の臨時工など、その後、本工に採用される場合とそうでない場合の違い、あるいは、賃金格差などを研究対象としています。未熟練雇用すべてを非正規にすれば労働への配分を減少させる、るいは、コストを削減することが出来るにもかかわらず、すべてが非正規とならずに正規雇用が残る要因を探ったり、景気循環対策における非正規雇用の合理性などを論じています。ただし、現時点で注目されている同一労働・同一賃金についてはまったく視野に入っていません。少し残念かもしれません。

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次に、藤田昌久[編]『日本経済の持続的成長』(東京大学出版会) です。本書は著者が所長を務める経済産業研究所(RIETI)の研究成果を集大成したサーベイ論文集といえます。人口動態、貿易、企業活動、生産性、雇用などマイクロからマクロまで幅広い経済的な話題を網羅しており、出版も東大出版会ですから、それなりのレベルの学術書と考えるべきです。私が特に記憶に残ったのは、第2章で貿易を分析しており、バブル経済崩壊後の日銀理論に翻弄された「失われた20年」における円高は企業努力で対応できないほど輸出競争力を変化させる、といった分析でした。「失われた20年」の主役だった日銀金融政策の失策とアベノミクスの方向性の正しさを裏打ちした分析といえます。また、労働関係でも興味深い分析があり、注目の非正規雇用にとどまらず、最低賃金や女性雇用の拡大やダイバーシティなどについても論じられています。ただし、前書と同じように、ごく最近のトピックである同一労働・同一賃金については、本書でもスコープが及んでいません。少し残念です。

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次に、みずほ総研『中国発 世界連鎖不況』(日本経済出版社) です。各章をみずほ総研のエコノミストが分担執筆しています。入社時の社名などからみごとに3社のバランスを取っていることが伺われますが、それはさて置き、タイトル通りに、昨年年央からの中国などの新興国を起点とする世界経済の停滞を対象に、その広がりの可能性と処方箋を解き明かしています。読ませどころは主として後半にあり、第Ⅳ章のリスク分析から、この先、アブナい4か国としてベネズエラ、ブラジル、アルゼンチン、トルコを名指しで取り上げています。それに次ぐのは、ロシア、南アあたりでしょうか。そして、意外と我が国経済が中国経済圏に組み込まれている事実を指摘して、中国発の世界不況でもっとも影響の大きい国のひとつと結論されています。それはその通りだと私も合意します。しかし、最後に、世界経済の現状は各国が金融緩和競争によって自国通貨の減価を目指し、それを基礎として輸出や外需に基づく成長を目指している、従って、財政政策にスイッチを切り替えたり、日本の場合は成長戦略が必要、というもので、このあたりはかなり怪しいと私は受け止めています。問題が需要不足にあることは同意しますが、金融政策でも短期的には需要を創出することは不可能ではありません。金融政策にムリなのは長期的な供給サイドの強化です。私の考える処方箋は、短期的に金融政策で需要を下支えしつつ、成長戦略で長期的な供給力を担保するというものです。

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次に、永濱利廣『60分でわかる「マイナス金利」』(三才ムック) です。監修者は第一生命経済研の人気エコノミストで、タイトル通りのムックなんですが、第1章が20項目のQ&Aに当てられており、第2章から第3章にかけて少し詳しい解説が置かれています。冒頭から、マイナス金利に対する極めて妥当な評価が述べられており、円高や株安を阻止し、日銀のインフレ目標達成のための強い決意を示す政策手段と位置付けられています。もちろん、タイトル通りに基本的には入門編のムックなんですが、基本的な評価が私のようなリフレ派から見て極めて正しいです。例えば、よくメディアなどで政府や日銀に対する批判的な見方として紹介されているように、マイなし金利を導入しても現状では、結局、円高や株安が進行しているのでマイナス金利は失敗だったのではないか、という誤った見方に対しては、冒頭から、マイナス金利にしていたからこそ現状程度でとどまっていたのであって、マイナス金利で泣けれあもっと円高や株安が進んでいた、と正統的な経済学の解説を加えています。ですから、基本線を解説しつつも、キチンとした経済の理解に基づいていることが読み取れ、マイナス金利だけとか、金融政策だけの解説にとどまっているわけではなく、日本経済全体の正しい理解や為替相場を通じての世界経済の理解、あるいは、日銀に先行してマイナス金利を導入した欧州の例を参照しつつ、幅広い経済の理解に結びつくところが大きなポイントだろうという気がします。高校生ではさすがに少し難しいかもしれませんが、大学に入ったばかりで、決して経済学部ではない大学生とか、経済学の専門教育を受けているわけではない若手のビジネスマンなどにも大いにオススメです。逆に、専門知識があり経済分析の業務を担当している向きには物足りないかもしれませんが、それはそれで、専門分野だけに部分的なりとはいえ、新たな知識も得られるのではないかという気がします。タイトル通り、1時間ほどで読み切れると思います。

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次に、デイビッド・ヨッフィー/マイケル・クスマノ『ストラテジー・ルールズ』(パブラボ) です。著者はハイテク分野での戦略論を専門としており、それぞれ、ハーバード大学およびマサチューセッツ工科大学のビジネス・スクールの研究者です。出版社は聞きなれないところです。それはともかく、本書はビル・ゲイツ(マイクロソフト)、アンディ・グローブ(インテル)、スティーブ・ジョブズ(アップル)という3人のIT業界の経営者たちの戦略的思考法のプロセスを解き明かし、5つの法則にまとめたものです。すなわち、ほぼほぼ第1章から第5章までのタイトル通りであり、pp.21-22から引用すると、第1に未来のビジョンを描き、逆算して今何をすべきかを導きだす、第2に会社を危険にさらすことなく、大きな賭けをする、第3に製品だけではなく、プラットフォームとエコシステムを構築する、第4にパワーとレバレッジを活用する - 柔道と相撲の戦術、第5に個人的な強み(パーソナル・アンカー)を核にして組織をつくる、ということだそうです。随所に3人の経営者のエピソードが盛り込まれており、めちゃくちゃに働いた、などが印象的でした。こういった経営学の戦略論は私の専門外といいつつ、ここまでワーカホリックに働く経営者に私はなれそうにもありません。加えて、もう少しイノベーションとの関係に着目してくれていれば、経営学だけでなく経済学のエコノミストにも親しみやすい本になった気がしないでもありません。

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次に、アンドリュー・クレピネヴィッチ/バリー・ワッツ『帝国の参謀』(日経BP社) です。話題の書です。少なくとも、専門外のエコノミストである私が手に取って読んでみようと考える程度には話題の書だという気がします。著者は後述の国防総省総合評価局の勤務経験者で、現在は安全保障関係のシンクタンクNPOに勤務しています。ということで、序文などではしつこいくらいに否定しているんですが、本書は米国国防総省総合評価局のアンドリュー・マーシャル局長なる90代の人物の生涯を振り返る伝記です。ニクソン政権のジェームズ・シュレンジャー長官以後のすべての国防長官に仕えている、と本書では記されています。著者2人の上司だったわけですが、1950-70年代くらいまでの米ソの冷戦下での米国側からのソ連の軍備に対する安全保障上の総合評価を確立した人物とされています。国防総省に総合評価局 Office of Net Assessment (ONA) が設置され、本書では Office を「室」と訳しているものの、実体的には「局」なんだろうと私は受け止めていますが、90代半ばの最近時点まで局長を張っている人物です。読ませどころは連戦下での総合評価、ネット・アセスメントであり、仮想敵国の戦力を分析するというもので、その分析結果を大統領や国防長官をはじめとする政権トップに伝達するのが評価の役割と心得えて、最終的な解決策の震源は慎むという態度を取っていると本書では記されています。情報ないし諜報と訳される「インテリジェンス」には、情報収集と分析と、特に安全保障上の場合はそれに対する対応の3段階があると私は考えていますが、そのうちの分析を長らく国防総省で担当してきた人物の伝記なわけで、1980年代のレーガン政権期にほぼ活動の頂点を迎え、1990年代初頭にはソ連が崩壊し、インターネットの発達などの諸条件の変化などにより、インテリジェンス活動は別の局面を迎えます。2000年代に入れば中国という新たな大国の台頭があります。そういった変化の激しい時代に、私のような安全保障の門外漢にも参考になる本だという気はしますが、今の若者には我が国のバブル経済のころの話をしても体験なくて理解が及ばない場合もあったりしますので、米ソ冷戦なんてバブルよりも前の時代のしかも海外の安全保障上の人物の伝記が、どこまで受け入れられるかは未知数のような気がします。私くらいの年齢層が読者の中心かもしれません。

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次に、大橋鎭子『「暮しの手帖」とわたし』(暮しの手帖社) です。現在放送中のNHK朝ドラ「とと姉ちゃん」に対してモチーフとなった、というか、ほぼほぼ原作本と見なしていいと思います。2010年大橋鎭子89歳の折に単行本として出版された後、今年になってポケット版が刊行されています。NHK朝ドラの影響は甚大です。表紙は大橋鎭子その人であり、章別の扉も自筆の手書き文字だったりします。写真を見る限り、高畑充希よりは女学校の先生役だった片桐はいりに似ている気がしないでもありません。第1章は、何といっても著者の人生に大きな影響を及ぼした、という普通の表現ではムリがあるくらいのカリスマ編集者である花森安治との出会いを置いています。そして、第2章からは少女時代、高等女学校時代、などなどクロノロジカルに著者の人生を追ったエッセイです。朝ドラでも印象的だった歯磨きチューブの破裂事件なども盛り込まれていますが、現時点までの朝ドラの進行で大きく印象が異なるのは、向井理が演じている叔父と坂口健太郎が演じた帝大生の星野はこのエッセイには現れません。まあ、朝ドラはノンフィクションではなく、本書がほぼほぼ原作とはいっても、フィクション性の強いドラマで再現されているわけですから、ある意味で、当然の変更かもしれません。私は朝ドラ前半で印象的だったシーンとして、星野の帰郷を河原で見送る常子役の高畑充希の凄みのある笑顔が記憶にあったりします。それはともかく、本書は90歳近い人物の著作とは思えないくらいに、とても若々しくみずみずしい表現と文体で、読者にグイグイと迫って来ます。これくらいの年齢の著者であれば、やや事実を脚色しつつ自慢話に持って行ったりとか、戦争の暗い時代の恨み言が多かったりとか、気に食わない出来事や人物にやたらと批判的になったりする場合も少なくないように私は受け止めているんですが、そういったカギカッコ付きの「老害」的な表現や「偏屈」な面はほとんど見受けられません。実に素直で天真爛漫な人柄のよさがにじむような文章です。もちろん、戦後からの昭和の時代を駆け抜け、ある意味では女傑と受け止める場合もありそうな人物による自伝的なエッセイですから、時代背景に対する理解を欠く読者も多そうな気がしますが、単なる「暮し」や女性といった視点だけでなく、その時代の雰囲気までも感じ取ることが出来ます。

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次に、米澤穂信『真実の10メートル手前』(東京創元社) です。作者は売れっ子のミステリ作家であり、この作品は第155回直木三十五賞候補作のひとつに、このブログにすでに読書感想文をアップした伊東潤『天下人の茶』や門井慶喜『家康、江戸を建てる』などとともに、リストアップされています。前回には大きく外したんですが、性懲りもなく、今回の直木賞は湊かなえ『ポイズンドーター・ホーリーマザー』ではなかろうか、と予想しておきます。ということで、元に戻せば、この作品は作者の生み出した女性ジャーナリストの大刀洗万智を主人公としており、ネパールを舞台にした前作『王とサーカス』と同じベルーフ・シリーズの短編集です。タイトル作を先頭に6篇の短編が収録されています。ということなんですが、大刀洗万智を主人公とするベルーフ・シリーズの常で、大刀洗万智本人が物語を進めるわけではなく、ワトソン役は短編により異なります。ですから、とても不自然なことに、主人公の取材にワトソン役が同行しなければなりません。同業者のジャーナリストはまだしも、中学生や外国人が取材に同行するのはムリがあるような気もしないでもありません。本短編集にはいわゆる本格ミステリではなく、災害による死亡や心中も含めた自殺による死亡のケースもあり、その真相に主人公が迫ります。もっともミステリらしい短編は「ナイフを失われた思い出の中に」であり、警察が逮捕した男性とは異なる人物が真犯人ではないかと強烈に示唆しています。でも、本作品も警察に逮捕された男性から発表された文章がかなり不自然で、どうして不自然かというと、男性の父親や姉に比べて、かなり文章作成から読み取れる知性に差があるような気がするからです。他は、決して隠れた真犯人を探し出すわけではありませんが、人の死亡にまつわって真相を明らかにするという意味では、とても本格的な謎解きです。私の勝手な予想に従えば、ひょっとしたら、直木賞ではないかもしれませんが、面白いミステリです。

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最後に、篠田節子『竜と流木』(講談社) です。著者は人気の作家で、生物パニックのサスペンス作品です。ミクロ・タタに棲む愛くるしい両生類ウアブは島の守り神として自然の循環の中で水をきれいに保つために一定の役割を果たすとともに、島の子供達や幼いころの主人公と泉で戯れていたんですが、インフラ整備のためにウアブの棲む泉から水道をひいてから、さまざまな異変が始まります。ウアブを隣の島メガロ・タタにある富裕層向けのリゾートとして開発されたココスタウンの池に移したところ、夥しいウアブの死骸が浮き上がり、同時に、主人公の父親である米国人や同僚たちが真っ黒で俊敏なトカゲのようなものに立て続けに襲われ、噛まれてショック状態になったりします。しかも、このトカゲは口中に細菌を持っているらしく、リゾートを利用する富裕層はともかく、医者にかかれない貧しい島民の場合は死に至ったりして、その被害は広がり続けます。同じ作者の『ブラック・ボックス』が何となくウヤムヤで終わったのに対し、この作品は問題の「竜」をかなりアブナい、というか、トリッキーな方法で根絶させることが出来ます。ちょっとしたSF小説っぽい仕上がりになっていて、ストーリー展開も軽快ですが、やや登場人物を作り過ぎていてキャラが同意できません。でも、人気作家の人気小説ですし、読んでおいて損はありません。

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2016年7月 9日 (土)

序盤の拙攻がたたって広島にまたまたボロ負け!

  HE
広  島003010300 7110
阪  神010000000 190

広島の11安打に対して阪神は8安打だったんですが、序盤の拙攻で広島にボロ負けでした。2回の先制後のノーアウト満塁を拙攻で逃して、さらに3回表にはゲッツーが取れずにランナーを残して新井選手に逆転スリーランを浴び、追い上げ期機の3回のノーアウト3塁にも外野フライすら上げられず、序盤にもう少し得点できていれば試合の流れも違っていた可能性もありますが、結局、投手陣が持ちこたえられずに失点を重ねて、またまた広島にボロ負けしてしまいました。点差が開いたのもありますが、足を使った攻撃も鳥谷選手の盗塁くらいで、投手交代以外、およそベンチワークは何もなかったように思います。

明日は3タテを免れるべく、
がんばれタイガース!

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大きく雇用者が増加した6月の米国雇用統計に金融政策はどう対応するか?

日本時間の昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。金融政策動向と合わせて注目されていたところ、失業率は前月から0.2%ポイント上昇して4.9%を記録したものの、非農業雇用者数の増加幅は+287千人と前月から大きく伸びています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、New York Times のサイトから統計のヘッドラインを報じた最初の2パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

Jobs Roar Back With Gain of 287,000 in June, Easing Worry
Quashing worries that job growth is flagging, the government on Friday reported that employers increased payrolls by 287,000 in June, an arresting surge that could reframe the economic debate just weeks before Republicans and Democrats gather for their conventions.
The official unemployment rate did rise to 4.9 percent, from 4.7 percent, but that was largely because more Americans rejoined the work force. And average hourly earnings ticked up again, continuing a pattern of rising wages that brought the yearly gain to 2.6 percent.

この後、さらにエコノミストなどへのインタビューが続きます。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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季節調整済みの系列で見て、非農業部門雇用者数の伸びは5月が+11千人の増加にとどまった一方で、直近の6月は287千人と、ADPの結果などから+170-180千人と200千人をやや下回る市場の事前コンセンサスも大きく超えました。5月の低調な結果の一因ともなった米国通信大手ベライゾンの一時的なストライキも終息したようで、情報産業の雇用が+44千人増え、このところ弱含んでいた製造業も2か月ぶりに増加に転じたほか、堅調な個人消費を背景にレジャー・接客業や、いずこも堅調なヘルスケア産業などのサービス産業の雇用も大きく増えました。ただし、資源安で鉱業部門は減少傾向が続いています。ということで、金融政策に目を転じると、米国連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)は原則として6週間に1回開催し、前回6月14-15日のあとは7月26-27日です。当然ながら、8月の夏休みは開催予定はないんですが、では、好調な結果を見せた雇用統計を背景に、7月最終週のFOMCで利上げがあるかといえば、私を含めて多くのエコノミストは極めて懐疑的です。なんとなれば、BREXITの動揺がまだ市場に残っており、そこに不安定要因を増幅させるのは避けると考えているからです。ですから、為替市場も米国雇用統計公表の一瞬は円安に振れましたが、すぐに戻ってしまいました。次の米国の利上げは気の長い話になりそうです。

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また、日本やユーロ圏欧州の経験も踏まえて、もっとも避けるべきデフレとの関係で、私が注目している時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ底ばい状態が続いている印象です。サブプライム・バブル崩壊前の+3%超の水準には復帰しそうもないんですが、まずまず、コンスタントに+2%のラインを上回って安定して推移しているとともに、じわじわと+2%台半ばくらいまで持ち直してきていると私は受け止めています。少なくとも、底割れしてかつての日本や欧州ユーロ圏諸国のようにゼロやマイナスをつけてデフレに陥る可能性は小さそうに見えます。

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2016年7月 8日 (金)

広島の独走をアシストし最下位に沈むタイガース!

  HE
広  島311000030 871
阪  神000200000 233

まず何といっても、3安打では勝てません。4回ウラの攻撃が今日のゲームを象徴していました。ノーアウト満塁で三振と内野ゴロでゲッツーなんですから、得点は必要ないといわんばかりの攻撃でした。ヘイグ内野手はファームで何してるんでしょうか。北條選手は3試合ノーヒットです。ベンチの采配も不可解でした。どこまで藤浪投手を続投させるつもりだったんでしょうか。なにもかもがチグハグで、広島に独走を許し、またまた最下位転落なんでしょうか。

明日は、
がんばれタイガース!

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下振れした毎月勤労統計の賃金と景気ウォッチャーのマインドをどう見るか?

本日、いくつか政府から経済統計が明らかにされています。すなわち、取り上げる順に、厚生労働省から5月の毎月勤労統計が、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。まず、統計のヘッドラインを報じた記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

名目賃金、5月は11カ月ぶり減 パート基本給がマイナス
厚生労働省が8日発表した5月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、名目にあたる従業員1人当たりの現金給与総額は26万7933円と、前年同月比0.2%の減少となった。マイナスは11カ月ぶり。パートタイム労働者の給与が、労働時間の減少で基本給マイナスとなったのが響いた。
厚労省は「緩やかな賃金増の基調に大きな変化はない」とみるが、個人消費を押し上げるほどの勢いはない。
名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は0.1%減の23万9216円。一般労働者の0.1%増に対し、パートタイム労働者は0.5%減だった。ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は4.1%減の9727円。
物価変動の影響を除く実質でみた賃金指数は0.2%増。プラスは4カ月連続。5月は消費者物価指数(CPI)が前年同月比0.5%下落しており、働く人の実入りが結果的に増えた格好だ。
6月の街角景気、3年7カ月ぶり低水準 円高受け先行きも悪化
内閣府が8日発表した6月の景気ウオッチャー調査によると街角景気の実感を示す現状判断指数は前月比1.8ポイント低下の41.2にとどまった。悪化は3カ月連続で、指数の水準は第2次安倍政権発足前の2012年11月以来の低さとなった。項目別では家計動向と企業動向、雇用関連が低下した。家計動向のうちサービス関連の落ち込みが目立った。内閣府は基調判断を「弱さがみられる」に据え置いた。
家計関連では「円高傾向が続いており、団体の外国人観光客を中心に集客が落ち込んでおり、売り上げが減少している」(北海道・観光型ホテル)との指摘があった。雇用関連では「人材不足が顕著になっている。企業からの依頼は増えているものの、条件にマッチした人材を派遣できないケースが増えている」(南関東・人材派遣会社)との声も出ていた。
2-3カ月後の景気を聞いた先行き判断指数は5.8ポイント低下の41.5と2カ月ぶりに悪化した。低下幅は14年2月以来2年4カ月ぶりの大きさで、指数は14年3月以来の低水準となった。家計動向、企業動向や雇用関連の項目全てで指数が低下した。街角では英国の欧州連合(EU)離脱決定を受け「円高や株安などの消費マインドに悪影響を与える要因により、消費行動がさらに鈍化する」(南関東・百貨店)といった見方があった。
5月の経常黒字、1兆8091億円 円高で22カ月ぶりに前年比縮小
財務省が8日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆8091億円の黒字だった。黒字は23カ月連続だが、前年同月(1兆8536億円)に比べ黒字額は減った。円高で第1次所得収支の黒字幅が縮小したため。前年比での経常黒字額の減少は2014年7月以来22カ月ぶり。
貿易収支は399億円の黒字と前年同月(487億円の赤字)から黒字に転換した。原油や液化天然ガス(LNG)など燃料価格の下落で輸入額が5兆57億円と13.4%減少した。鉄鋼や電子部品の価格低迷で輸出額も5兆456億円と11.9%減少したが、輸入減少による影響が上回った。
サービス収支は1174億円の黒字と、前年同月に比べて黒字幅が305億円拡大した。訪日外国人の増加で旅行収支が1996年以降の5月として過去最大の黒字となったことが寄与した。
第1次所得収支は1兆8982億円の黒字と、前年同月に比べて1064億円黒字幅が縮小した。円高で企業が海外事業への投資で受け取る配当金や証券投資からの収益が目減りした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、3つの経済指標を並べましたので、とても長くなってしまいました。続いて、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。順に、上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、まん中のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与の季節調整していない原系列の前年同月比を、下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用指数の推移を、それぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。

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毎月勤労統計のうち、景気に敏感な一番上のパネルの所定外労働時間については、ほぼ鉱工業生産指数や出荷指数と整合的であり、季節調整済みの系列で見て5月は前月比マイナスを記録しています。真ん中のパネルの給与なんですが、なぜか5月は前年同月比でマイナスを示しています。消費者物価上昇率でデフレ―とした実質賃金はプラスというものの、最近時点での傾向的な動向とつながらない気がします。所定内賃金もマイナスでした。ただ、夏季賞与については私はそれなりに期待しています。すなわち、大企業のみとはいえ、2016年の経団連集計では+3.74%と2015年最終集計の+2.81%を上回っています。毎月勤労統計ベースでは集計は遅くなりますが、中小企業を含めてもプラスに出るんではないかと期待しています。最後に、一番下のパネルの就業形態別の雇用では、まだパートタイム労働者の伸びの方が高いとはいえ、フルタイムの一般労働者の伸びが高まっているのが読み取れます。このブログでの従来からの主張ですが、人手不足が続いている中で、雇用の量的な拡大は完全雇用に達すれば停止する一方で、雇用の質的な改善は賃金ではなくフルタイムの正規職員増という形で進む可能性が十分あるんではないか、と私は考えています。

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。6月の景気ウォッチャーは私も少しびっくりするくらいに落ちました。基本的に、消費者態度指数が需要サイドを、景気ウォッチャーが供給サイドを、それぞれ代表するマインド指標なんですが、6月については消費者態度指数が改善した一方で、景気ウォッチャーは悪化を示しています。報道に見られる通り、供給サイドからすれば、BREXITをはじめとする海外経済の不確実性の高まりや人手不足の影響などから事業活動にマイナスの影響を読み取っている可能性が高いと私は受け止めています。上のグラフに見られる通り、今年に入ってからはダダ下がりに下がっていて、底堅い日銀短観とも整合性ありません。逆に、マインド指標のソフトデータは先行指標ですので、その意味から、景気ウォッチャーにも注目したいと思います。いずれにせよ、6月のこのデータは私にはよく理解できません。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれませんが、経常収支についてもかなり震災前の水準に戻りつつある、と私は受け止めています。直近時点での経常収支は国際商品市況での石油価格の上昇とともに円高の進行による所得収支の目減りのため、やや経常黒字が縮小していますが、かつてのような経常赤字を記録するのは、当面はなかろうと考えています。

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2016年7月 7日 (木)

ルーキー青柳投手の好投とゴメス選手の打棒で巨人に完勝して連敗ストップ!

  HE
阪  神202020000 6100
読  売000000000 010

安打数は昨夜を1本上回るだけの10本だったんですが、ゴメス選手の4打点を青柳投手が1安打ピッチングで守って巨人に完勝でした。序盤で得点できるとラクな試合運びとなる典型だった気がしますし、クリンナップが打てば得点ができるのも当然です。先発投手が1安打無失点で7回まで投げ切り、セットアッパーとクローザーがピシャリと抑えれば勝てるのは当たり前です。問題はこんな試合が3連戦で1試合しかないことと、競った試合をどう勝てるかです。でも、明日からの広島戦が楽しみです。

広島戦も、
がんばれタイガース!

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本日公表の景気動向指数から先行き景気をどう考えるか?

本日、内閣府から5月の景気動向指数が公表されています。ヘッドラインとなるCI一致指数は前月から▲1.5ポイント下降して110.5を、CI先行指数は前月と変わらず100.0を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数、1.5ポイント低下 5月、判断「足踏み」で据え置き
内閣府が7日発表した5月の景気動向指数(2010年=100、速報値)で、景気の現状を示す一致指数は前月比1.5ポイント低下の110.5だった。低下は3カ月ぶり。内閣府は一致指数の基調判断を「足踏みを示している」に据え置いた。
前月と比較可能な8指標のうち6指標が一致指数のマイナスに影響した。なかでも軽自動車などの出荷が落ち込んだことで、耐久消費財出荷指数が悪化。鉱工業生産財出荷指数も指数低下につながった。有効求人倍率や中小企業出荷指数(製造業)は改善したが補えなかった。内閣府は4月の熊本地震による影響は限定的とみている。
数カ月先の景気を示す先行指数は横ばいの100.0だった。新規求人数や新設住宅着工床面積が改善を示した。一方、鉱工業用生産財在庫率指数などが悪化した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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グラフを見ても明らかなんですが、CI一致指数に比べてCI先行指数が長らく下降状態にあったんですが、3か月後方移動平均で見て5月指数は11か月振りに上昇に転じています。また、CI一致指数が3か月振りに下降し、単月で▲1.5ポイントとそこそこの大きさなんですが、3か月後方移動平均ではまだプラスを維持しています。少し詳しく系列別に見ると、CI先行指数では新規求人数(除学卒)、新設住宅着工床面積、消費者態度指数などがプラス寄与した一方で、逆サイクルの鉱工業用生産財在庫率指数や中小企業売上げ見通しDIがマイナス寄与しており、相殺して前月から横ばいの一方で、CI一致指数では有効求人倍率(除学卒)と中小企業出荷指数(製造業)を除いて、ほとんどがマイナス寄与しており、特に大きい順で、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数、生産指数(鉱工業)、投資財出荷指数(除輸送機械)などとなっています。5月のCI一致指数が大きく下降したのは鉱工業生産と出荷の影響を受けており、逆に、CI先行指数は雇用、住宅、消費者マインドといった系列がプラス寄与しています。CI一致指数は5月に下降したわけですし、統計作成官庁の内閣府の基調判断の通り、当面の景気は「足踏み」が続く可能性があるものの、少し先を見通せば、CI先行指数は先行き景気の緩やかな回復を示唆している可能性が高いんではないか、と私は楽観しています。また、本日公表の5月の景気動向指数の系列を詳細に見る限り、その場合のけん引役は企業部門ではなく家計部門となる可能性が十分にあるんではないか、という気もします。

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2016年7月 6日 (水)

拙攻に次ぐ拙攻で巨人に逆転負けし3連敗で最下位街道を爆進!

  HE
阪  神001000000 190
読  売00001200x 360

打線は6安打の巨人を上回る9安打を放ちつつも、相も変わらぬ拙攻続きで巨人に逆転負けでした。3連敗で勝てないのは打線が大問題であり、超変革打線はまったく機能しなくなりました。先発岩崎投手はQSに近い出来だったにもかかわらず、まったく勝てそうな気がしませんでした。明日はローテーションの谷間ですから、できれば今日は勝っておきたかったんですが、敵地でもありますし3タテを食らう可能性も高まったのかもしれません。

明日は3タテを免れるべく、
がんばれタイガース!

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JTBによる夏休みの旅行動向やいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、先週7月1日にJTBから「2016年夏休みの旅行動向」が公表されています。国内旅行人数はやや減少するものの、燃油サーチャージがゼロとなり、海外旅行が増加する見込みとなっています。

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まず、上のグラフはリポートにあるデータから作成しています。最近時点では、3年連続で旅行者総数も総消費額も減少していることが読み取れます。今年についても、景気の先行き不透明観が払拭されませんし、リポートでは燃油サーチャージの価格効果や60歳代以上のシニア層でのブームから海外旅行は増加するような結果が示されていますが、ここまでテロや銃の乱射事件が頻発すれば、たとえ予定していたにせよ、私なんぞは少し海外旅行は先送りしかねないところです。なお、、出発日のピークは、欧州などの長距離方面は8月13日(土)、ハワイや東南アジアなどの中距離方面は8月10日(水)、韓国や台湾などの近距離方面では8月14日(日)だそうです。
リポートによれば、国内旅行の行き先では、北海道新幹線開業に伴い北海道や東北が注目されており、また、熊本地震後に帰省やボランティアに参加する人も増え九州が増加しているようです。今春オープンした京都鉄道博物館や15周年を迎えたユニバーサル・スタジオ・ジャパンの効果もあり、近畿も人気を集めているらしいです。国内旅行の出発日ピークは、8月12日(金)から8月15日(月)とのことです。8月11日の山の日はどうなっているんでしょうか?

我が家では、下の倅が高校3年生ですので家族で旅行することはありませんが、大学生の上の倅は、昨年の京都に続いて、今年の夏休みもどこかに行くようなことをいっていました。

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2016年7月 5日 (火)

東京商工リサーチによる「賃上げ、同一労働同一賃金に関するアンケート調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週6月29日に東京商工リサーチから「賃上げ、同一労働同一賃金」に関するアンケート調査の結果が公表されています。賃上げの実施状況や同一労働・同一賃金に伴う影響などが明らかにされています。グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから、Q1.賃上げ実施状況 を引用しています。有効回答8,097社のうち、賃上げを実施したのは6,483社でちょうど80.0%を占めています。ただし、「定期昇給のみ」が2,998社37.0%ともっとも多く、そのほか、「定期昇給+賞与・一時金の増額」の907社11.2%、「ベースアップのみ」の824社10.1%となっています。他方、「実施しなかった」は1,614社19.9%と、まだ2割あります。また、グラフは引用しませんが、Q2.賃上げ実施理由 では、もっとも多かった回答は「従業員の定着・確保を図るため」の4,399社67.8%であり、「業績が回復したため」や「他社の賃上げ動向を見て」を上回っています。これは注目すべきかもしれません。

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次に、大きく飛んで、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから、Q6.「同一労働同一賃金」の導入で想定されること を引用しています。もっとも多かった回答は「職務・職種の細分化」の2,935社36.2%であり、続いて、「賃金水準の引き上げ」2,303社28.4%、「非正規従業員の増加」1,641社20.2%となっています。なぜか、「正規従業員の増加」という選択肢が存在しないので判りかねますが、賃金水準の引き下げよりは引き上げを想定する企業の方が多くなっています。なお、「その他」では、「中小企業では浸透しない(理由をつけて実施しない)」や「配置転換の横行」など制度導入に懐疑的な意見や危惧する声もある一方、「職場内の人間関係の安定化に繋がる」といった意見もあったようです。

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2016年7月 4日 (月)

英国のEU離脱・残留を決める国民投票における投票行動やいかに?

とても注目された英国のEU離脱に関する国民投票について、かなり旧聞に属する話題かもしれませんが、Lord Ashcroft Polls から投票直後の6月24日に How the United Kingdom voted on Thursday... and why と題して、いくつかのセグメント別の離脱・残留に関する投票結果の分析が提供されています。図表を引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは Lord Ashcroft Polls のサイトから性別、年齢別、社会階層別の投票結果を引用しています。男女で差はないように見えますが、年齢別では明らかな傾向が読み取れ、若いほど「残留」への投票が多く、年齢が上がるにしたがって「離脱」の割合が増えています。日本と同じように年齢層の高い投票者が決定権限を持ちかねないようなシルバー・デモクラシーが英国でも支配的なのかもしれません。なお、下4行のABとC1とC2とDEは英国の社会階層なんですが、Aが upper middle class、Bが middle class、C1が lower middle class、C2が skilled working class、Dが working class、Eが those at lowest level of subsistence らしいです。ですから、大雑把に社会階層が高いほど「残留」を志向していたんではないかと私は想像しています。

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次に、上のグラフは Lord Ashcroft Polls のサイトから政党別の投票結果を引用しています。上から順に、保守党、労働党、自由民主党、イギリス独立党、緑の党、スコットランド国民党です。明らかに想像される通り、イギリス独立党はもとより旗幟鮮明ですが、政権与党の保守党以外の多くの野党では「残留」を志向する割合が高かったことが読み取れます。政党別では、政権与党の保守党がEU離脱をリードしたといえます。

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2016年7月 3日 (日)

先発岩貞投手が序盤に崩れて中日にボロ負け!

  HE
阪  神100200000 391
中  日10500011x 8110

打線は昨日と同じ9安打3得点だったんですが、先発岩貞投手が序盤に崩れて中日にボロ負けでした。打線はいくら組み替えても拙攻を繰り返し残塁の山を築いて3得点で、投手陣が崩れて序盤に大量失点すればひとたまりもありません。今週は火曜日から東京ドームで巨人戦、金曜日からは甲子園に戻って首位を独走する広島戦と続きますが、見通しは暗いと感じてしまいました。

巨人戦は、
がんばれタイガース!

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映画「高台家の人々」を見に行く!

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このところ、映画を見に行っていない気がして、梅雨なので今日のお天気については雨を予想しつつも大きく外れながら、近所のシネコンまで映画「高台家の人々」を見に行きました。森本梢子による同名の人気コミックスを原作として実写で映画化されています。マンガの方は集英社の月刊『YOU』に連載されています。主演は綾瀬はるかと斎藤工です。ストーリーはよく知られた通り、妄想癖のあるヒロインに対して、イケメンかつ超大金持ちの高台家の跡取りが、何と、妹や弟ともに英国人の祖母譲りの人の心が読めるテレパスで、ヒロインの妄想を読み取ってしまう、というコメディです。もちろん、高台家の母親からヒロインが無理難題をふっかけられたり、一時は御曹司からヒロインの心が離れたりと、といった日本的なストーリーもシリアスかつコミカルに展開され、なかなか面白い恋愛映画に仕上がっています。マンガらしい荒唐無稽な場面もありますが、もちろん、ハッピーエンドで終わります。私が好感を持っている俳優さんや女優さんが多数出演しているのもポイントだったりします。

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2016年7月 2日 (土)

打線は拙攻続くも能見投手とリリーフ陣が踏ん張って中日を下す!

  HE
阪  神020010000 390
中  日020000000 260

先発能見投手とリリーフ投手陣の踏ん張りで中日に勝利でした。打線は拙攻を繰り返し残塁の山を築いたんですが、何とか最少得点差で逃げ切りました。それにしても、あの当たりの決勝点で伊藤選手がヒーロー・インタビューですかね?

明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書は『Who Get's What』ほか経済書と小説など計5冊!

今週の読書はノーベル経済学賞受賞のロス教授の『Who Get's What』ほか、経済書と小説など計5冊です。

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まず、アルビン E. ロス『Who Get's What』(日本経済新聞出版社) です。著者は2012年ノーベル経済学賞受賞のエコノミストであり、専門はメカニズム・デザインです。本書では価格をシグナルとして効率的な資源配分が実現される市場ではない場合、ソロモン王のジレンマのような金銭の授受を避ける取引、すなわち、臓器移植のマッチング、就職活動や学校選択などのマッチング、あるいは、恋人や結婚のマッチングなどなどについて、マッチ・メイキングのアルゴリズムと市場デザインの入門的・基礎的な考え方を取り扱っています。だいたい、真ん中あたりの8章からがコアになるパートなんでしょうが、とても判りやすい一方で、メカニズム・デザインの本質までは明らかに理解できない気がして、少し物足りないと感じる読者も入るかもしれません。

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次に、岩村充『中央銀行が終わる日』(新潮選書) です。著者は日銀OBのエコノミストであり、本書ではビットコインなどの新しい形態の仮想通貨を取り上げて、経済成長とともに設立された中央銀行がその独占的な通貨発行権という使命を必要としなくなる段階、すなわち、中央銀行が歴史的な役割を終えるまでを展望しています。ということで、本書の前半はブロック・チェーンなどのビットコインの仕組みをかなり大雑把に解説し、後半ではいわゆる legal tender 法定通貨を独占的に発行する中央銀行の役割について、その歴史的使命を終えんとする段階までを考察しています。直観的には、通貨と景気循環の関係を捨象すれば、流通通貨の独占的な発行権に基づく中央銀行は歴史的使命を終える可能性があるかもしれませんが、景気循環やその影響を受ける国民生活を考えるとそう簡単ではない気もします。

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次に、本城雅人『ミッドナイト・ジャーナル』(講談社) です。決して大手ではないものの、全国紙社会部の事件記者を主人公とし、警察の内部の動きにも迫った小説です。7年前に、「被害者女児死亡」という世紀の大誤報を打ち、地方に飛ばされたり、記者を辞めて整理部への異動に甘んじた3人の記者が、東京都北部から埼玉県や千葉県にまたがるエリアでの児童連続誘拐事件を追って、7年前の事件ともリンクして、真実にたどり着く過程を描き出しています。その中で、新聞社内部での出世競争、警察に対する取材、被害者やその家族との接し方など、わたしのような犯罪とは縁遠い生活を送っている一般人には計り知れないものの、それなりに興味深い社会はエンタメに仕上がっています。

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次に、森博嗣『χの悲劇』(講談社ノベルス) です。売れっ子ミステリ作家によるGシリーズの最新刊です。真賀田四季の真賀田研究所でプログラマとして働いていた島田文子が主人公です。香港を拠点として人工知能の開発を進めす研究所に勤務する島田が、トラム内で起こった殺人事件に巻き込まれ、あるサイトにおかれているファイルの解読を依頼されたり、西之園萌絵の両親の搭乗した飛行機の爆破自己に関する質問を受けた時点から展開が速くなり、香港や日本のインテリジェンス当局との協力の形で主人公が仕事を進めていきます。そして、ミステリですから、それなりの結論にたどり着きます。宣伝ではGシリーズの転換点にして、後期3部作の始まりと銘打たれています。なお、ネタバレに近いんですが、この作者の各シリーズの作品については、どの時代順で並んでいるのかを把握しておくことが必要です。その意味で、私の場合は本作品の最終パラを先に読んでおくことで本作品を鑑賞する際に有益であったと考えています。そうでない人もいるかもしれませんが、ご参考まで。

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最後に、橘木俊詔『新しい幸福論』(岩波新書) です。労働経済学や格差に関する研究で著名なエコノミストによる幸福論らしいんですが、ハッキリいって雑です。哲学的な幸福論、すなわち、3大幸福論と称される、ヒルティ、アラン、ラッセルの流れの中の幸福論であればともかく、格差も含む経済学に根差した最近の幸福論におけるポラック教授、フレイ教授、ディーナー教授などの貢献は無視されていますし、豊かさと幸福感におけるイースタリンのパラドックスもご理解になっていないような気がします。しかも、経済全体はゼロ成長で人口減少とともに1人当たり所得が増加する経済がいいんであって、マイナス成長もプラス成長も否定するなんて、この著者クラスのエコノミストになれば「オレはそう考える」で押し切っているような雰囲気すらあります。あまり科学的な態度とはいえない気がします。橘木先生の立論が従来から自分の好みにあっている人にはオススメしますが、幸福論について勉強したい向きには別の本を探した方がいいような気がします。

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2016年7月 1日 (金)

底堅い業況判断DIを示した6月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から6月調査の日銀短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月から横ばいの+6を、大企業非製造業も3月の+22からやや悪化して+19を、それぞれ記録しました。先行きは、大企業製造業はやはり横ばいの+6と、大企業製造業はやや悪化して+17と、それぞれ見込まれています。また、今年度2016年度の大企業全産業の設備投資計画は3月調査の▲0.9%減から上方修正され+6.2%増と集計されています。ただし、過年度2015年度の大企業全産業の設備投資計画は前年度比で+9.8%減から+3.4%の実績見込みに大幅に下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月日銀短観、大企業・製造業DIプラス6 前期から横ばい 先行きもプラス6
日銀が1日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業製造業でプラス6だった。前回の3月調査(プラス6)から横ばいだった。国内外の需要低迷に加え外国為替市場での円高が進んだ影響で自動車産業など輸出関連企業の景況感が悪化した一方、市況改善などを背景に素材関連企業が持ち直した。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。6月の大企業製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値のプラス4を上回った。回答期間は5月30日-6月30日で、回答基準日の6月13日までに7割の企業が回答した。英国のEU(欧州連合)離脱決定で金融市場などが混乱した影響はほとんど反映していないとみられる。
3カ月先については、大企業製造業がプラス6の見通しだった。世界経済の先行き不透明感や円高が景況感の重荷になるが、熊本地震後に低迷した製造業の挽回生産などの拡大を見込んでいた。
2016年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業製造業で1ドル=111円41銭だった。前回の117円46銭よりも円高・ドル安方向に修正された。
大企業非製造業のDIはプラス19と、前回から3ポイント悪化した。
悪化は2四半期連続。国内個人消費の低迷を背景に業況感が悪化した。訪日外国人観光客に関連する消費の伸び悩みも業況感を下押しした。
3カ月先のDIは2ポイント悪化し、プラス17を見込む。円高・株安などで個人消費の先行きへの懸念が強い。
中小企業は製造業が1ポイント悪化のマイナス5、非製造業は4ポイント悪化の0だった。先行きはいずれも悪化を見込む。
2016年度の設備投資計画は大企業全産業が前年度比6.2%増だった。6月調査の0.9%減から上方修正された。もっとも昨年の同時期の計画(9.3%増)を下回った。
16年度は大企業のうち製造業は12.8%増、非製造業は2.7%増を計画している。
16年度の全規模全産業の設備投資計画は前年度比0.4%増で、市場予想の中央値(0.5%増)を下回った。
大企業製造業の16年度の輸出売上高の計画は前年度比1.6%減で3月調査の1.5%減から下方修正された。円高や新興国経済の減速を背景に、企業が慎重な姿勢を示したとみられる。
大企業製造業の販売価格判断DIはマイナス12と、3月調査(マイナス15)から3ポイント改善。DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。企業がコストを販売価格に転嫁する姿勢はみられるものの、景気の不透明感などからDIの改善幅は小幅だった。
金融機関の貸出態度判断DIは全規模・全産業で23と、3月調査から横ばいだった。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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まず、企業マインドは足元と目先の先行きで意外と底堅いと私は受け止めています。もっとも、英国のEU離脱、いわゆるBREXITがほとんど考慮されていないようですから、その点は割り引く必要があるかもしれません。いずれにせよ、昨年年央からの中国やブラジルをはじめとする新興国景気の低迷、今年明けて以降の株安や為替の円高進行などの金融市場の動揺、などなど、企業マインドを悪化させる要素が決して少なくない中で、少なくとも大企業レベルではマインドは底堅いというべきです。ただ、ここから先は私の解釈、というか、直観的な理解なんですが、現時点では、このまま景気後退に一直線で進むというマインド悪化は見られず、先行きに対する漠然とした不安感とでもいう雰囲気が漂っている段階ではないかと考えられます。もしもそうであれば、政策的に何らかの景気対策を考えることにより、この漠然とした不安感はある程度までは取り除ける可能性がなくはない、と私は考えています。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感は完全に払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても不足感が広がっています。特に、採用に苦労している中堅・中小企業では大企業よりも不足感が強まっています。ただし、足元から目先の先行きについては、統計の誤差範囲かもしれませんが、人手不足に関しては大企業レベルでは不足感の加速には歯止めがかかりつつあるように見受けられる一方で、規模の小さな企業ではまだまだ不足感が強まっているようです。

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続いて、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年2016年度の計画は黄緑色のやや太いラインと同色の大きなマーカで示されていますが、見ての通りで、3月調査から上方修正され大企業全産業で前年度比+6.2%増と計画されています。全規模全産業では、3月調査の前年度比▲4.8%減から、6月調査では+0.4%増に上方修正されています。この統計の「クセ」のようなもので、3月調査のほぼ横ばいという標準的なところから始まって、6月調査では大きく上方修正、というパターンが見られます。先行き、さらに景気が上向くのであれば、それに従って上方修正される可能性が高くなるのが日銀短観の統計としてのクセと考えるべきです。ただし、注意しておかねばならないのは、昨年度2015年度の設備投資計画の実績見込みが、3月調査の大企業全産業の+9.8%増から6月調査では+3.4%増に大きく下方改定されている点です。すなわち、2015年度の設備投資計画から後送りされて2016年度の計画がやや膨らんだ、という面があるのを忘れるべきではありません。私はかねてより設備投資については、強気のマインドのソフトデータと冴えないハードデータの乖離を指摘して来ましたが、どうも、強気のソフトデータの方にムリがあったようです。そして、その分が2015年度から2016年度に後送りされているだけなのであれば、2016年度の設備投資計画の今後の行く方にも影響が出る可能性を指摘しておきたいと思います。

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最後に、日銀短観のほかに本日公表された経済指標のグラフは上の通りです。上から3枚のパネルは雇用統計であり、それぞれ、失業率有効求人倍率、新規求人数の推移です。さらに、消費者物価上昇率と消費者態度指数のグラフが続きます。なお、去る6月17日に総務省統計局から「2015年基準改定に伴う公表スケジュール」が公表されており、2015年度基準消費者物価が8月に公表される旨が明らかにされています。

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