下落幅が拡大した消費者物価(CPI)から何を読み取るべきか?
本日、総務省統計局から7月の消費者物価指数(CPI)が公表されています。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比は▲0.5%の下落を記録しました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の消費者物価指数、0.5%下落 下落幅3年4カ月ぶり大きさ
総務省が26日発表した7月の消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合が99.6と前年同月に比べて0.5%下落した。5カ月連続で前年実績を下回り、下落幅は2013年3月(0.5%下落)以来、3年4カ月ぶりの大きさ。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値は0.4%下落だった。原油価格の低迷を背景に電気代やガソリン代などが下落。新製品の端境期にあるスマートフォンの価格も落ち込んだ。
315の品目が上昇し、157が下落。横ばいは51品で、上昇品目の割合は60.2%だった。
生鮮食品を含む総合は99.6と前年同月比0.4%下落した。食料・エネルギーを除く「コアコア」の指数は100.3と0.3%上昇した。
東京都区部の8月のCPI(中旬速報値、15年=100)は、生鮮食品を除く総合が99.7と0.4%下落した。電気代やガソリン代の下落が影響した。
総務省は5年ごとにCPIの基準改定を実施している。今回の発表から、これまでの「2010年基準」から「2015年基準」に切り替わった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エベルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。この丸めた指数の公表方法については、2010年基準から2015年基準に変更されても、総務省統計局発表の「利用上の注意」を見る限り、同じ方式で踏襲されているようです。

先月6月のコアCPI上昇率が▲0.5%でしたから、またまたマイナス幅拡大した、と受け止められそうですが、本日の公表からCPIの基準年が2010年から2015年に改定されたため、ラスパイレス指数の上方バイアスが緩和されたことから、CPI上昇率はヘッドラインもコアもホンの少しだけ下振れています。もっとも、2015年の新基準でもコアCPI上昇率は6月▲0.4%から7月▲0.5%に下落幅が拡大しています。▲0.5%の下落に対する寄与は、上のグラフの4分類に従えば、エネルギーが大雑把に▲1%あり、これ以外はすべてプラスの寄与であり、食料が+0.3%、サービスが+0.2%で、コア財はほぼゼロです。5月にほぼ+0.2%の寄与があったコア財なんですが、6月には寄与を半減させて+0.1%、そして、とうとう、7月の寄与はほぼゼロとなりました。これを反映して、食料とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率も、5月+0.6%、6月+0.5%が7月には+0.3%まで上昇幅を縮小させています。コアコアCPI喉とでは、食料価格が引き続き上昇を続けているものの、エネルギー価格下落は石油価格レベルではすでに底を打っているものの、いちぶにまだ波及過程を終えていない可能性もありますし、何といっても、物価押し下げの大きな要因は円高です。為替水準については私はまったく予想もつきませんが、来年早々にはプラスに転じると考えていたコアCPI上昇率についても、為替次第ではさらに長くマイナスが続く可能性もあります。

最後に、上のグラフは新旧両基準、すなわち、2010年基準と2015年基準でのコアCPI上昇率の推移をプロットしています。赤が2015年の新基準ですが、ほぼ2010年基準と重なっており、ラスパイレス指数の特徴である基準改定に伴う下振れは大きくないと考えられます。控えめにいっても、2006年夏の基準改定の際の「CPIショック」のような差はないものと考えるべきです。
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