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2016年8月 9日 (火)

日銀ワーキングペーパー「税務データを用いた分配側GDPの試算」やいかに?

かなり旧聞に属する話題かもしれませんが、日銀調査統計局からワーキングペーパーとして「税務データを用いた分配側GDPの試算」と題する研究成果が公表されています。もちろん、pdfの全文ぺーパーもアップされています。まず、長くなりますが、ペーパーの要旨を日銀のサイトから引用すると以下の通りです。

要旨
我が国の経済の実態を把握するうえで最も重要な統計であるGDP統計を、税務データを用いて分配側から推計するとどうなるのだろうか。現行GDP統計では、「GDPにおける三面等価の原則」に従い、分配側GDPは、支出側、生産側GDPに等しくなるように、営業余剰・混合所得を調整している。本稿では、米国の例も参考にしながら、税務データ等を利用し、営業余剰・混合所得の直接推計を試みる。また、その際、現行GDP統計では毎月勤労統計、労働力統計等から推計している雇用者報酬についても、税務データから推計した。得られた結果からは、支出側、生産側GDPと、本稿で試算された分配側GDPとは大きなかい離がみられた。こうしたかい離がなぜ生じているのかについてはさらに詳細な分析が必要であり、本稿で試みた直接推計の手法についてもなお改善の余地があろうが、ここでの試算値は、日本経済をみるうえで、ひとつの視座を与えるものと思われる。

上の要旨には支出側・生産側GDPと本ペーパーで試算された分配側GDPがかい離している、としか書かれていませんが、実は、日銀試算の分配側GDPは政府の算出している支出側GDPより上方にかい離しています。すなわち、政府の公式統計になるGDPは過小推計の可能性があるのではないか、と日銀は主張したいのであろうと、私は想像しています。ということで、いくつかグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。ただし、このペーパーでは、税務統計から分配側のGDPを試算していますので、上の要旨にもある通り、法人と個人の両方あって、法人税から営業余剰などを、また、個人所得税から雇用者報酬を、それぞれ試算しているところ、今夜のブログでは個人所得の雇用者報酬について着目したいと思います。

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まず、上のグラフはぺーパーから 図表10 賃金・俸給の試算値と現行値の比較 の (1) 水準 を引用しています。見れば明らかな通り、最近時点で賃金・俸給の試算値は現行GDP統計を10兆円を上回ってかい離しています。個人所得だけをとってもこれくらいのかい離があると、日銀は主張しているわけです。もっとも、我々が所得に比べて税金を取られ過ぎているのかもしれません。

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次に、法人も合わせたかい離幅を示すグラフとして、上のグラフはぺーパーから 図表21 試算値(分配側GDP)と現行値(支出側GDP) を引用しています。これもグラフを見れば明らかな通り、直近の2014年度では30兆円近いかい離が指摘されています。ひょっとしたら、法人も税金を納め過ぎているのかもしれません。まあ、そんなことはなさそうな気もします。むしろ、安倍内閣の目標である名目GDP600兆円達成の現実性が高まったのかもしれません

私は統計局勤務の経験こそあれ、GDP統計の経験はなく、国連のSNAマニュアルに基づくコモディティ・フロー推計などにも詳しくないんですが、おそらく、政府統計である限りは現行のGDP統計は国連マニュアルに従って作成されているハズで、日銀試算はあくまでひとつの研究成果と受け止めています。

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