前月比プラスに転じた機械受注とマイナス続く企業物価から何が読み取れるか?
本日、内閣府から6月の機械受注が、また、日銀から7月の企業物価(PPI)が、それぞれ公表されています。電力と船舶を除く民需で定義されたコア機械受注の季節調整済みの系列は前月比+8.3%増の8498億円を記録し、企業物価のうちのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は▲3.9%の下落と引き続き大きなマイナスを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
機械受注、6月は8.3%増 航空機や工作機械伸びる
内閣府が10日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比8.3%増の8498億円だった。増加は3カ月ぶりで、伸び率は2016年1月以来5カ月ぶりの水準。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(3.5%増)を大幅に上回った。ただ内閣府は大幅に悪化した4-6月期実績を取り戻すほどではないとして、機械受注の判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業からの受注額は17.7%増の3666億円と3カ月ぶりに伸びた。航空機で大型案件があったことが寄与したほか、前月の落ち込みの反動が出た。業種別では航空機や工作機械が伸びた。その他輸送用機械、はん用・生産用機械などが好調だった。非製造業では鉄道車両で大型案件受注があり、2.1%増の4838億円と4カ月ぶりに改善した。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額(原数値)は0.9%減だった。
併せて発表した4-6月期の船舶・電力を除いた民需の受注額は2兆4312億円と前期比9.2%減にとどまった。4、5月の大幅悪化が響き、内閣府が5月に公表していた4-6月期見通し(3.5%減)を大幅に下回った。
7-9月期見通しは5.2%増を見込む。産業機械や工作機械の増加が見込まれるほか、4-6月期の反動増が見込まれる製造業が14.2%増と伸びる。非製造業は1.5%減にとどまる見通しだ。
7月の企業物価指数、前年比3.9%下落、原油安が影響
日銀が10日に発表した7月の企業物価指数(2010年=100)は前年同月比3.9%下落の99.2となり、16カ月連続で前年同月を下回った。下落率は市場予想の中央値(4.0%)より小幅にとどまった。原油安を背景に「石油・石炭製品」が下がった。「スクラップ類」も下落。「(スクラップと競合する)鉄鋼半製品の中国からの供給がアジアで増え、アジア市況が悪化したのが響いた」(調査統計局)という。
前月比では横ばいだった。毎年7-9月に適用される夏季割増料金の影響で、電力価格が上昇した。夏季電力割増料金の影響を除くと国内企業物価は前月比0.3%の下落だった。7月の原油価格の下落を反映し、「石油・石炭製品」が値下がりした。「電気機器」も下落した。需要期がすぎ、ルームエアコンが値下がりした。
円ベースの輸出物価は前月比で0.9%下落した。前年同月比では14.0%下がった。前年同月比での下落は15年8月以来、11カ月連続。円高の影響が響いた。「化学製品」はナフサの国際価格の下落でエチレンなどが値下がりした影響も出た。輸入物価は前月比で0.3%上昇し、前年同月比では21.7%下落した。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している814品目のうち、前年同月比で上昇したのは230品目、下落は508品目となった。下落品目と上昇品目の差は278品目で、6月の260品目から拡大した。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいます。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は次の企業物価上昇率とも共通して景気後退期を示しています。

まず、機械受注の動向ですが、上のグラフのうちの上のパネルを見ても明らかな通り、ほぼ下げ止まったんではないかという気はします。でも、コア機械受注の前月比で見て、4月▲11.0%減、5月▲1.4%減の後の6月+8.3%増ですから、ここ2-3か月の反動増の域を出るものではなく、引き続き、それほどの力強い回復ではないと私は受け止めています。海外需要は少なくとも先進国では反転し回復に向かっていますが、中国などの新興国ではまだ目立った反転回復の気配はなく、さらに、ここ数か月の円高が投資の回復にブレーキをかけているように見受けられます。四半期データでならして見ても、4-6月期のコア機械受注は前期比▲9.2%減と見通しの▲3.5%減を下回り、さらに、先行きの7-9月期+5.2%増と、増加に転じるものの力強さに欠け反動増の域を出ません。政策効果がどのように企業マインドや設備投資に現れるかを注目したいと思います。なお、6月のデータが利用可能となり、達成率も出ましたが、経験則である90%のラインは越えて95.1%を示しています。いつものグラフは省略です。

次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の、下のパネルは需要段階別の、それぞれの上昇率をプロットしています。いずれも前年同月比上昇率です。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。企業物価(PPI)はようやく下げ止まって来たと受け止めています。ただ、まだ▲4%近い下落ですので国際商品市況における石油価格次第とはいえ、ゼロ近傍ないしプラスに戻るのには少し時間がかかる可能性があります。この企業物価(PPI)から消費者物価(CPI)に波及して、最終的にCPIがマイナスを脱するのは今年暮れから来年初めと考えていたんですが、物価はさすがに persistent なものですから、現状の平均的な水準で、原油価格がバレル50ドル、為替がドル105円の水準を維持するとして、PPIからの波及を受けてコアCPIがゼロに戻るのが年末から来年初との予想をしているエコノミストが多そうな気がします。
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