上昇幅が拡大した企業向けサービス物価をどう見るか?
本日、日銀から7月の企業向けサービス価格指数(SPPI)が公表されています。ヘッドラインのい前年同月比上昇率は+0.4%と6月の+0.2%から上昇幅がわずかに拡大しています。なお、国際委運輸を除くコアSPPIの前年同月比上昇率も6月からやや拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
7月の企業向けサービス価格、0.4%上昇 広告が好調
日銀が25日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2010年=100)は103.4と、前年同月比0.4%上昇した。伸び率は6月に比べ0.2ポイント拡大し、15年8月の0.6%以来の水準となった。内訳で見ると、テレビ広告は化粧品、清涼飲料、電気機器、軽自動車などの単価が上昇。大型スポーツ特別番組や新聞広告、インターネット広告への出稿も好調だった。
ソフトウエア開発は前年同期に金融関連の値上げがあった反動で下落したが「(あらゆる機器がネットにつながる) IoT 関連の受注環境は好調」(調査統計局)という。
宿泊サービスも下落した。「夏休みの値上げシーズンだが、首都圏のインバウンド需要がやや弱かった」(同)と説明。道路貨物輸送では前年に人件費の上昇した影響が一巡した。
全147品目のうち、上昇品目は57、下落品目は53で、上昇品目と下落品目の差は4で、3カ月ぶりにプラスに転じた。
企業向けサービス価格指数は運輸や通信、広告など企業間で取引されるサービスの価格水準を示す。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

繰り返しになりますが、企業向けサービス物価(SPPI)のヘッドラインの前年同月比上昇率が+0.4%、さらに、国際運輸を除くコアSPPI上昇率が+0.6%と、いずれも先月の統計から+0.2%ポイント上昇幅が拡大しています。引用した記事にもある通り、広告の寄与が大きくなっています。すなわち、前年同月比で見て、大類別の広告の上昇率は6月の+0.9%から7月は+3.2%に大きく上昇幅が拡大し、前月比でも+1.9%の上昇を示しています。引用した記事にはありませんが、私がエコノミスト仲間から漏れ聞くところによりますと、リオデジャネイロ・オリンピックの影響が大きいらしいです。そもそも、開会式が8月ですし、日本人選手団のメダル・ラッシュで湧いたのはオリンピック中盤以降だという気がしないでもないんですが、7月の段階から広告の単価が上がっていたことは理解できるところです。また、引用した記事にもある通り、大類別の情報通信の中で、インターネット付随サービスも6月の上昇率+2.9%に続いて7月も+5.4%と順調な上昇を示しています。IoT関連の需要が堅調な上に人手不足の影響も加わっているようです。いずれにせよ、基本的には、人手不足による人件費の影響がまだ続いている一方で、業界や地域によってはこれらが一巡した場合も見られます。また、インバウンド関連の需要も一服感があり、宿泊サービスなどへの影響は否定できません。従って、ひょっとしたら、リオデジャネイロ・オリンピックが開催されていた8月までは広告の単価が強含みのままで推移する可能性が高いんですが、オリンピックがいつまでも続くわけではありません。他方で、円高に伴う企業収益の低下は需給緩和を通じて全般的な企業間物価水準を引き下げる可能性が高いと考えるべきです。ですから、7月の上昇幅拡大は長続きするかどうか、私はやや疑問に感じています。
最後に、明日、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が公表されます。明日の公表からCPIの基準年が2015年に基準改定されます。多くのエコノミストは基準改定による物価上昇率の下振れ、かつて2006年の際に「CPIショック」と呼ばれたような想定外の下振れはないものと考えていますが、一応、私が来た範囲で、いくつかのシンクタンクのリポートへのリンクを以下に示しておきます。
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