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2016年10月28日 (金)

月末閣議日に公表された雇用統計と消費者物価(CPI)を考える!

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局の消費者物価指数(CPI)が、それぞれ公表されています。いずれも9月の統計です。季節調整済みの系列で見て、失業率は3.0%と前月から▲0.1%ポイント低下し、有効求人倍率も前月からさらに0.01ポイント上昇して1.38を記録した一方で、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は▲0.5%と7か月連続でマイナスに落ち込んでいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

雇用、景気刺激なき改善 人手不足が成長阻む
雇用指標が一段と改善した。厚生労働省が28日発表した9月の有効求人倍率(季節調整値)は前月に比べ0.01ポイント上昇し1.38倍となり、1991年8月以来25年1カ月ぶりの高水準となった。総務省発表の完全失業率(同)も3.0%と前月から0.1ポイント改善した。ただ雇用の改善は非正規が中心で、業種的な偏りもある。賃金の上昇は依然として緩やかで、消費改善への波及力は乏しく、物価の下落も続く。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人あたり何件の求人があるかを示す。9月は3カ月ぶりに上昇した。パートタイム労働者(4カ月以上継続)の求人倍率は1.47倍と正社員の0.89倍を大きく上回っている。
正社員に比べて賃金水準が低い女性や高齢者のパートで人手を確保しようという企業が多い。一方、正社員は1倍に届いておらず、求人の方が少ない状態が続く。
業種別にみると、建設業が3.45倍、飲食などサービスが2.97倍だった。IT(情報技術)など「専門的・技術的職業」は1.95倍で、市場拡大が期待される次世代産業を担う人材も不足している。労働市場が硬直的なうえ、雇用のミスマッチもあり「企業が必要とする人材が採りにくい状況が続き、成長の制約となっている」(SMBC日興証券の丸山義正氏)との指摘が出ている。
失業率は2カ月ぶりに低下し、7月に記録した95年5月以来の水準に並んだ。働き始める女性が増えたことが改善につながった。9月の就業者数は男性が前年同月に比べ11万人増えたのに対し、女性は48万人増えた。パートやアルバイトの時給が1000円を超えるなど雇用改善の明るい面も出ている。しかし6割を占める正社員の賃金上昇は緩やかなため、消費への波及力は弱いままだ。
総務省の9月の家計調査によると、2人以上の世帯の1世帯あたり消費支出は26万7119円で、物価変動の影響を除いた実質で前年同月比2.1%減だった。7カ月連続の減少となる。うるう年の影響を調整すると、1年1カ月連続の減少だ。
台風など悪天候や気温が高かった面に加え、根強い消費者の節約志向が影響した。品目別にみると、秋物衣料が不振だった被服および履物が13.6%減、外食は4.7%減だった。
消費の不振は物価が上がらない一因となっている。総務省の9月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が前年同月比0.5%下落し、99.6となった。前年同月を下回るのは7カ月連続だ。原油安で電気代が6.5%、ガソリンは9.2%それぞれ下がったほか、炊飯器など家庭用耐久財が6.8%下落した。
食料(酒類を除く)およびエネルギーを除く総合指数は3年ぶりの横ばいだった。SMBCフレンド証券の岩下真理氏は「年金生活者などが必需品以外買わない傾向にあり、外食や衣料品などが値下げに動かざるを得ない」と指摘する。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。それにしても、会員限定の記事だということもあってとても長くなりました。続いて、雇用統計については、上のグラフの通りです。上のパネルから順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は景気後退期です。

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雇用統計のグラフの3指標はすべて前月から改善を示しています。なお、上のパネルから順に、景気との関係は一般に、失業率は遅行指標、有効求人倍率は一致指標、新規求人は先行指標と考えられています。ですから、引き続き、ほぼ完全雇用状態に近い人手不足が続いています。正社員の有効求人倍率も0.88倍を記録して高い水準にあります。毎月勤労統計の賃金統計なども見てみたい気がしますが、どうも、前々からこのブログで表明している通り、まったく理論的な根拠はないものの、人手不足や労働需給のひっ迫は賃金よりも正社員増の方に現れる可能性も否定できません。ただ、リクルートワークスによる「2016年9月度 アルバイト・パート募集時平均時給調査」によれば、首都圏のパート・アルバイトの平均時給は1,028円と前年同月より18円、+1.8%の増加を示しています。この増加率を大きいと見るか、小さいと見るかは諸説あるものと思いますが、首都圏・東海・関西の3大都市圏の平均を見ても自給で1,000円近くに達して、前年からの伸び率も+2%前後に達していますので、こういった賃金の伸びが物価にも波及する可能性が高いんではないかと私は期待しています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エベルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。ということで、日銀の物価目標である+2%にはほど遠く、マイナス幅が拡大してしまっています。ただし、引き続き、国際商品市況における石油価格の下落に起因する部分はいかんともしがたく、上のグラフに見る通り、コアCPIの前年同月比▲0.5%を寄与度分解すると、エネルギーが▲0.66%、生鮮食品を除く食料が+0.18%、サービスが+0.16%、生鮮食品を除くコア財が▲0.18%となっています。エネルギーの寄与度のマイナス幅が一時の▲1.00%超から縮小しつつある一方で、エネルギー価格の下落がコア財の価格下落に波及してきた印象です。それでも2013年から始まった日銀の異次元緩和にもかかわらず、インフレ目標にはまったく達しそうにもありません。

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