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2016年12月 8日 (木)

下方修正されたGDP統計2次QEは日本経済の停滞を示唆するのか?

本日、内閣府から7-9月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は1次QEの+0.5%から+0.3%にやや下方修正されています。外需中心ながら、まずまずの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月GDP改定値、設備投資下振れで年1.3%増に下方修正
内閣府が8日発表した2016年7-9月期の国内総生産(GDP)改定値の伸び率は物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.3%増だった。設備投資が下振れし速報値(前期比0.5%増、年率2.2%増)から下方修正された。今回の改定値から推計方法と基準年が見直され、数値が改定されている。
QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値(前期比0.6%増、年率2.3%増)を下回った。
実質GDPの伸び率を需要項目別にみると、設備投資は前期比0.0%増から0.4%減に下方修正した。法人企業統計で不動産や鉄鋼などの設備投資が減少に影響した。民間在庫の寄与度も速報値のマイナス0.1ポイントからマイナス0.3ポイントに下振れした。原材料や仕掛かり品在庫に加え、製品在庫も下方改定された。
公共投資は9月の建設総合統計が堅調だったことから、0.7%減から0.1%増となった。個人消費も飲料やテレビ、宿泊施設サービスなどの消費が好調で0.3%増と速報段階の0.1%増から上方修正された。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がマイナス0.0ポイント(速報値はプラス0.1ポイント)となった。輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.3ポイントとなり、プラス0.5ポイントから減少した。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.1%増(0.2%増)、年率では0.5%増(0.8%増)だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてマイナス0.2%となった。
16年7-9月期の名目GDPは年換算で537兆円となり、これまで最大だった1997年10-12月期の524兆円を上回った。今回の改定値で05年から11年への基準年の改定と国連の新たな国際基準が適用され、企業の研究開発費や防衛装備品などが投資としてGDPに算入されるようになったため。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/7-92015/10-122016/1-32016/4-62016/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.2▲0.4+0.7+0.5+0.5+0.3
民間消費+0.5▲0.7+0.4+0.2+0.1+0.3
民間住宅+1.8▲1.2+1.3+3.5+2.3+2.6
民間設備+0.6+0.4▲0.3+1.4+0.0▲0.4
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.1)(▲0.1)(+0.2)(▲0.1)(▲0.3)
公的需要+0.2+0.0+1.0▲0.6+0.2+0.3
内需寄与度 *(+0.3)(▲0.5)(+0.3)(+0.5)(+0.1)(▲0.0)
外需寄与度 *(▲0.1)(+0.1)(+0.4)(▲0.1)(+0.5)(+0.3)
輸出+2.1▲0.6+0.8▲1.3+2.0+1.6
輸入+2.5▲0.9▲1.2▲0.9▲0.6▲0.4
国内総所得 (GDI)+0.6▲0.3+1.2+0.6+0.4+0.3
国民総所得 (GNI)+0.5▲0.2+0.8+0.4+0.3+0.1
名目GDP+0.6▲0.3+0.8+0.2+0.2+0.1
雇用者報酬+0.8+0.4+1.2+0.4+0.7+0.8
GDPデフレータ+1.8+1.5+0.9+0.4▲0.1▲0.2
内需デフレータ+0.0▲0.0▲0.3▲0.7▲1.0▲0.8

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年7-9月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、黒い外需が大きくプラス寄与している一方で、灰色の民間在庫がマイナス寄与して在庫調整が進んでいるのが見て取れます。

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まず、成長率の下方修正については、基本的に、前々期の1-3月期と前期の4-6月期のそれぞれの成長率が上方改定されていて、発射台が高くなっていますので、やや7-6月期の成長率が低まったように見える点も考慮すべきでしょう。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比+0.6%、前期比年率2.3%でしたから、ずいぶんと下振れした印象がありますが、発射台の違いとともに、需要項目別で見ても、在庫調整に伴うマイナス寄与の拡大もあり、それほど悲観的に受け止める必要はないものと私は考えています。もちろん、下のグラフに関連して後に見る通り、今回の2次QEの公表に関しては基準改定に加えて、1993SNAから2008SNAへの国連マニュアルのアップデートに従った大幅な見直しの結果ですから、この程度の修正はあり得ると多くのエコノミストは考えていたんではないでしょうか。すなわち、1次QEから1か月を経過したことに伴う新たな経済指標が、景気動向によって下振れしているわけではないと考えるべきです。ですから、7-9月期は外需主導ながら、消費も底入れを示して来ており、3四半期連続のプラス成長でもありますので、日本経済がいわゆる踊り場を脱却して、持ち直しの動きに復帰する方向にあるとの見方を示すエコノミストも私だけでなく少なくないものと予想しています。ただし、BREXITに始まったEUの動揺、TPPからの離脱をはじめとするトランプ次期米国大統領の経済政策動向などなど、先行きリスクはまだまだたくさん残されています。

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今回2次QEについては、第1回目の年次推計、いわゆる確報の作業とともに、実質と名目の基準を2005年から2011年に新しくする基準改定、そして、何よりも準拠する国連マニュアルを1993SNAから2008SNAにアップデートするという、極めて大規模な改定でした。国連マニュアルのアップデートにより、従来から明らかにされていた通り、企業活動のうちの研究開発(R&D)が資本化されて設備投資に算入されることなどにより設備投資額のかさ上げがなされています。他の項目と含めて、2005年から2011年への基準改定の影響を除く意味で、名目GDPの実額の水準をプロットしたのが上のグラフです。水色の棒グラフが従来の統計で、赤い上乗せ部分が今回の大規模改定に伴って生じたかさ上げ部分です。2015年度で32兆円近くになります。安倍内閣の名目GDP600兆円の目標が近づいたのかもしれません。

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最後に、GDP統計を離れて、本日、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、また、財務省から10月の経常収支が、それぞれ公表されています。いつものグラフは上の通りです。上のパネルは景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIをプロットしており、下のパネルは青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。いずれも季節調整済みの系列です。景気ウォッチャーの力強い回復が印象的です。

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