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2017年3月31日 (金)

鉱工業生産指数(IIP)と雇用統計と消費者物価指数(CPI)の今後の動向やいかに?

本日、経済産業省から1月の鉱工業生産指数(IIP)が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、それぞれ公表されています。鉱工業生産は季節調整済みの系列で前月比+2.0%の増産、失業率は2.8%と前月から▲0.2%ポイント低下し、有効求人倍率は前月から横ばいで1.43を記録し、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は+0.2%と先月統計からプラスに転じいます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

失業率2月2.8%、22年ぶり低水準 鉱工業生産2%上昇
雇用が一段と改善している。総務省が31日発表した2月の完全失業率(季節調整値)は2.8%と前月に比べ0.2ポイント低下した。1994年6月の2.8%以来22年8カ月ぶりの低水準。同日発表の有効求人倍率は1.43倍(季節調整値)と前月と同じだが、四半世紀ぶりの高さだ。運輸、製造業など幅広い業種で人手不足が続いている。
失業者が減り、就業者が増えたことが指標の改善につながった。失業者(原数値)は188万人と前年同月に比べ25万人減った。自営業を含めた就業者は6427万人。働き始める女性や高齢者が増え、51万人増えた。
雇用者のうち正社員は51万人増加した。非正規社員は15カ月ぶりに減少に転じ、10万人減った。企業は人材確保のため、待遇の良い正社員の採用を増やしている。
人手不足は深刻だ。厚生労働省発表の有効求人倍率は1.43倍だった。新規求人数(原数値)をみると、製造業(前年同月比10.7%増)や運輸・郵便業(5.6%増)などで増加が目立った。
生産活動も世界経済の回復を受けて活発になっている。経済産業省が同日発表した2月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比2.0%上昇の102.2だった。上昇は2カ月ぶり。自動車産業が春先に投入する新車を増産したほか、機械や化粧品関連も全体を押し上げた。同省は基調判断は前月と同じ「持ち直しの動き」とした。
全15業種のうち9業種で前月水準を上回った。普通乗用車やエンジンなど輸送機械が全体をけん引、4.7%上昇した。はん用・生産用・業務用機械は前月水準を4.9%上回った。一方、メモリーや液晶部品など電子部品・デバイスは1.6%低下し、5カ月ぶりに前月を下回った。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、3月は2.0%低下するものの、4月は8.3%の大幅上昇を見込んでいる。
2月の全国消費者物価、0.2%上昇 エネルギー価格上昇で
総務省が31日発表した2月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が99.6と、前年同月比0.2%上昇した。プラスは2カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.2%上昇)に一致した。原油などエネルギー価格が上昇したことが寄与した。
生鮮食品を含む総合では全体の56.4%にあたる295品目が上昇し、173品目が下落した。横ばいは55品目だった。
生鮮食品を含む総合は99.8と0.3%上昇した。イカなど生鮮魚介の価格高騰が続き、指数押し上げに寄与した。生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.3と、0.1%上昇した。プラスは41カ月連続。
併せて発表した東京都区部の3月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が99.4と、前年同月比0.4%下落した。下落は13カ月連続。エネルギーが前年同月比で下落したことが響いた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げると、かなり長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた部分は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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鉱工業生産は季節調整済みの前月比で+2.0%の増産となりました。特に、業種別では、輸送機械工業が前月比+4.7%増、はん用・生産用・業務用機械工業が+4.9%増、化学工業(除. 医薬品)が+7.2%増など、の業種の伸びが大きくなっています。通常、我が国が世界経済の中で比較優位を持っていると考えられている業種の伸びが高くなっており、その意味では、何となく安心感があります。バックグラウンドとしては、世界経済が回復基調に復したことから我が国工業品に対する需要が復活した点が上げられます。一方で、出荷は前月から減少しています。この点が3-4月の生産計画に出ており、製造工業生産予測調査に従えば、3月が▲2.0%の減産となり、逆に4月は+8.3%の増産と見込まれています。4月の増産予測はにわかには信じがたく、仕上がりでは増産幅は縮小される可能性が高いと考えるべきですが、2月の生産がプラスで出荷がマイナスの分、3月が減産で調整するというのは、いかにもありそうなパターンではなかろうかと受け止めています。ただ、財別の出荷では上のグラフの下のパネルに見る通り、資本財(除. 輸送機械)こそ前月比▲3.1%減ですが、耐久消費財は+3.5%増を記録していますし、グラフには取り上げていないものの、建設財は+0.6%増、非耐久消費財も+1.3%を示しています。生産は世界経済の拡大に伴って回復基調にあると考えられます。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。引用した記事にもある通り、失業率も有効求人倍率もいずれも人手不足を示す水準にありますが、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、完全雇用には達していない、と私は考えています。引用した記事もそうですが、世間一般で人口に膾炙した「人手不足」は、あくまで、我が国の失われた20年のデフレ期に容易に雇用できた低賃金の非正規労働が不足しているだけであり、より本格的に企業活動の拡大に貢献したり、高賃金でなければ雇用できない正規職員などの人手が不足しているわけではないのだろうと理解しています。しかし、失業率が3%を割り込んで2%台後半に入りましたので、いよいよ本格的に賃金が上昇する水準に達しつつあるような気もします。2%台の失業率が今後も続くかどうか、現時点ではなんともいえませんが、私は大いに期待しています。

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次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、ようやく、国際商品市況の石油価格の底入れから上昇に従って我が国の物価も上昇に転ずる、との結果となっています。上のグラフでは積上げ棒グラフの黄色がエネルギー価格の寄与なんですが、2月CPIからプラス寄与に転じています。ただ、石油価格下落の影響はこの先もまだ物価に波及を続ける可能性があり、上のグラフでも食料とエネルギーを除くコアコアCPI上昇率が低下してマイナスに転じているのが見て取れます。従って、先行きのコアCPI上昇率がこのまま一直線でプラス幅を拡大するかどうかは楽観できないと受け止めています。

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最後に、CPI上昇率がプラスに転じた現時点で、物価上昇の「質」というか、大雑把ながら品目別に少しだけ詳しく見ておきたいと思います。上のグラフは、上のパネルが頻度別消費者物価上昇率を、下のパネルが基礎的・選択的別消費者物価上昇率の推移を、それぞれプロットしています。プラスに転ずる少し前から、頻度別では頻度高く購入する財・サービスの物価上昇が高くなり、同時に、選択的消費よりも必需的消費の物価上昇の方が高くなっています。直観的には所得の低い階層の世帯にダメージの大きい物価上昇のように見えますが、グラフはお示ししないものの、5分位別の消費者物価上昇率では、2月統計でも所得の最も低い第Ⅰ分位の消費バスケットに合わせた物価上昇率が+0.2%であるのに対して、所得の最も高い第Ⅴ分野では+0.3%となっています。それ以前は、この差がより大きく、例えば、1月統計では第Ⅰ分位+0.3%に対して第Ⅴ分位+0.5%でした。所得と物価上昇の影響との関連が今のところは謎となっており、今後の推移を見たいと思います。

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2017年3月30日 (木)

来週公表予定の3月調査の日銀短観の予想やいかに?

来週月曜日4月3日の公表を前に、シンクタンクや金融機関などから3月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと大企業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2016年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、今年度2017年度の設備投資計画に着目しています。ただし、三菱総研だけは設備投資計画の予想を出していませんので適当です。それ以外は一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
12月調査 (最近)+10
+18
<n.a.>
n.a.
日本総研+13
+18
<▲5.3%>
2017年度の設備投資計画は、全規模・全産業で前年度比▲5.3%と、2016年度の同期調査(同▲4.8%)に比べやや慎重な出だしとなる見通し。米国トランプ政権の政策運営や、欧州の政治情勢に不透明感が残り、国内経済に対する成長期待も高まらないなか、企業の設備投資マインドの力強い改善は期待し難い状況。もっとも、2016年度の設備投資が高水準で着地すると見込まれることを勘案すれば、期初計画としては底堅い水準となる見込み。良好な企業収益を背景とした潤沢なキャッシュフローに加え、低金利、維持・更新や省力化・合理化などに向けた投資需要が引き続き堅調なことから、先行き、設備投資は着実に上方修正されていく見通し。
大和総研+14
+21
<▲4.9%>
2017年度の設備投資計画(全規模全産業)は前年度比▲4.9%とマイナス成長を予想する。ただし、これは、3月調査において企業が翌年度の設備投資計画を控えめに回答するという「統計上のクセ」があることを反映したものにすぎず、マイナス幅自体は概ね例年並みになると想定した。また、日本では3月決算の企業が多く、年度決算発表前に公表される3月日銀短観において、来年度見通しの数字を回答することが難しいという実情がある。現在、海外経済の回復や2016年11月以降の円安を受けて、製造業の企業収益に上振れ余地が生じているものの、そうした収益環境の変化は、今回の設備投資計画にはほとんど反映されないとみている。
みずほ総研+12
+19
<▲4.0%>
2017年度の設備投資計画(全規模・全産業)は、前年比▲4.0%と予想する。例年通り、3月調査時点で設備投資計画が定まっていない中小企業がマイナスの伸びとなるが、近年の3月時点の計画と比べればやや高い伸びを予想している。大企業については、製造業は円安や世界経済の回復に伴い、生産や収益の増加基調が続くと考えられ、前年比プラスを予想している。一方で、非製造業は、円安やエネルギー価格上昇による消費の下振れリスクが意識され、慎重な設備投資計画になると予想する。
ニッセイ基礎研+15
+23
<▲4.0%>
2017年度の設備投資計画(全規模全産業)は、2016年度計画比で▲4.0%を予想している。例年3月調査の段階ではまだ計画が固まっていないことから前年割れでスタートする傾向が極めて強いため、マイナス自体にあまり意味はなく、近年の3月調査との比較が重要になる。今回は、企業収益の底入れを受けて、近年の3月調査での伸び率をやや上回る計画が示されると見ている。ただし、海外経済をめぐる先行きの不透明感が強いことから、様子見姿勢を強める企業も多いとみられ、例年の伸び率を大きく上回ってくる可能性は低いだろう。
第一生命経済研+16
+20
<大企業製造業+3.2%>
<大企業非製造業▲2.7%>
短観の設備投資計画は、3月の実績見込みは堅調になりそうだ。大企業は、2015年度の実績に近いプラス幅になると見込まれる。中小企業も、非製造業ではプラスの伸び率に転じる。短観で見たときの設備投資は割に強めの数字となるだろう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券+16
+23
<大企業全産業▲0.5%>
17年度の設備投資計画も、過去の3月調査に比べ、高めの数値が示される見通しである。企業業績の回復に加えて、極めて緩和的な金融環境が、引き続き設備投資の回復を後押ししている模様である。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+13
+18
<大企業全産業+0.1%>
2017年度の計画については、大企業では例年通りゼロ近傍からのスタートとなるだろう。設備投資に対する慎重な姿勢に変化はないと思われるが、企業の手元資金が潤沢であること、人手不足感が強まる中で機械への投資の重要度が増すことなどが追い風になる。中小企業については、今回の調査時点では多くの企業で来年度の設備投資計画が定まっていないと考えられ、例年通り大幅なマイナスからのスタートとなるだろう。
三菱総研+14
+19
<n.a.>
業況判断DI(大企業・全産業)は、+17%ポイント(12月調査から3%p上昇)と、2期連続での業況改善を予想する。海外需要の持ち直しを背景に、製造業を中心に業況改善を見込む。
富士通総研+16
+19
<▲4.0%>
2017年度の設備投資計画は、年度入り前でまだ慎重であるが、2016年度の同じ時期よりは高い伸びになると見込まれる。

ということで、見れば分かると思いますが、大企業の製造業と非製造業のそれぞれの業況判断DI、さらに、全規模全産業の2017年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除くベースです。業況判断DIは昨年2016年12月調査からやや改善を示すと予想されており、特に、円安や世界経済の回復に伴う輸出の恩恵を受ける製造業は非製造業よりも業況感の改善がより力強い、と考えられています。非製造業は石油価格高による消費の伸び悩みもひとつの不安材料と見なされています。また、特に私が注目した2017年度の設備投資計画については、大企業についてはほぼ前年並みながら、「統計のクセ」として規模の小さい企業の計画がまだ決まらないため例年通りのマイナス・スタートということになりそうです。
下のグラフは全規模・全産業の設備投資計画をニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2017年3月29日 (水)

前月から増加幅が大きく縮小した商業販売統計に見る消費の現状やいかに?

本日、経済産業省から2月の商業販売統計が公表されています。小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.1%増の10兆7800億円、季節調整済みの系列で前月比+0.2%増と、1月統計ほどではないとしても、まずまずの結果を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の小売業販売額、0.1%増 燃料・自動車の増加目立つ
経済産業省が29日発表した2月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比0.1%増の10兆7800億円だった。小幅ながら4カ月連続で前年実績を上回った。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別では、原油高に伴う石油製品の価格上昇を背景に燃料小売業が10.0%増えた。新車効果の続く自動車小売業も4.8%増加した。化粧品が好調な医薬品・化粧品小売業も1.5%増えた。
一方で、飲食料品小売業など他の業種は軒並み前年を下回った。うるう年だった前年に比べ営業日数が減少したことが響いた。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で2.6%減の1兆4493億円だった。既存店ベースでは2.7%減少した。うるう年の反動減が出た。コンビニエンスストアの販売額は0.8%増の8542億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。

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ということで、商業販売統計のうち名目消費の代理変数となる小売業販売額については、繰り返しになりますが、季節調整していない原系列の統計で2月が前年同月比+0.1%増と、1月の+1.0%増からは増加幅が大きく縮小しましたが、引き続き堅調な動きを見せています。この結果について考えておくべきポイントは2点あり、名目で+0.1%増ですから消費者物価(CPI)の最近の動きを考慮すると、名目ではプラスでも、実質ではマイナスの可能性が大きいと考えるべきです。例えば、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは2月のCPI上昇率は+0.2%が見込まれています。他方、昨年2016年2月がうるう年であった点を考慮すれば、いわゆる「実力」ベースの消費は統計上の+0.1%増よりも高い伸びとなっていた可能性もあります。季節調整済みの系列で1月から+0.2%増を示していますので、これも考え合わせると、それなりの伸びと私は受け止めています。
さらに、少し詳しく業種別に小売業販売額を見ると、季節調整していない原系列の前年同月比で見て、国際商品市況における石油価格の上昇を受けて、燃料小売業が+10.0%増を示した点を別にすれば、自動車小売業の+4.8%増が目を引きます。しかも、昨年年央くらいから一貫して前値比でプラスとなっています。自動車と並んでもうひとつの代表的な耐久消費財である電機が含まれる機械器具小売業はまだ前年比マイナスを続けていますが、そろそろ、消費増税前の駆込み需要の反動を脱しつつある局面ではないかと想像しています。家電については白物家電は上向きという情報もあり、例えば、日本電機工業会(JEMA)の2月の出荷統計を見ると、冷蔵庫、エアコン、洗濯機などの民生用電気機器の出荷はこのところ前年比プラスで推移していますから、テレビなどの一部の品目でエコポイントによる需要の先食いの反動がまだ続いている可能性があります。

いずれにせよ、消費はゆるやかに上向きと私は考えており、統計の作成官庁である経済産業省でも、小売業販売の基調判断を「持ち直しの動き」に据え置いています。ただし、先行きのリスクがないわけではなく、すなわち、賃金動向は所得を通じて大きな影響があり、今年の春闘の動向などにつき、懸念がないわけではありません。労働分配率が低下する一方で、大きく積み上がった企業の内部留保の賢明なる活用が求められています。

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2017年3月28日 (火)

リクルートジョブズ調査による派遣スタッフとアルバイト・パートの募集時平均時給やいかに?

今週金曜日に雇用統計が公表される予定となっています。すなわち、総務省統計局の失業率、また、厚生労働省の有効求人倍率などです。世間一般では労働市場はほぼ完全雇用に近いんではないか、との見方が支配的になっている一方で、私なんぞは賃金が上がらないからまだ完全雇用ではない、と主張しているところ、政府統計で賃金の推移を見る毎月勤労統計の評判が必ずしも芳しくなく、今夜はリクルートジョブズの調査から、それぞれ今年2月の「派遣スタッフ募集時平均時給調査」と「アルバイト・パート募集時平均時給調査」のデータをグラフにして簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフはリクルートジョブズ調査による三大都市圏における派遣スタッフ及びアルバイト・パートのそれぞれの募集時平均時給の推移を実額と前年同月比伸び率でプロットしています。それぞれ凡例の通りです。下のパネルのアルバイト・パートについては、まだ前年同月比で+2%程度の伸びを示していますが、上のパネルの派遣スタッフの時給については前年比で低下に転じており、昨年2016年9月に▲0.7%減を示してから10月こそ+0.1%増となったものの、11月▲0.1%減、12月▲0.4%減と続き、今年2017年1月▲0.9%減の後、2月も▲0.8%減を記録しました。
2月の派遣スタッフの平均時給の伸びを三大都市圏の地域別に見ると、東海ではまだプラス圏内で推移しているものの、関西と関東ではマイナスを記録しています。職種別ではデザイナーやweb関連などのクリエイティブ系が特に大きなマイナスを記録しています。リクルートジョブズの調査では、職種はオフィスワーク系、営業・販売・サービス系、IT・技術系、クリエイティブ系、医療介護・教育系の5系統に分割されているんですが、地域別・職種別に3x5の15のマトリックスのうち、直近の2017年2月調査で前年同月比伸び率がマイナスを記録しているのは、関東のIT・技術系、クリエイティブ系、医療介護・教育系と東海の医療介護・教育系、さらに、関西のIT・技術系、医療介護・教育系と幅広く下落を示しており、これらが全体を大きく下押しして派遣スタッフの時給の平均を押し下げています。特に医療介護・教育系では医療と思われる看護師・准看護師、それに、教育と思われるインストラクター・講師の時給の下落が大きくなっています。私も何が起こっているのか、正確な情報は持ち合わせませんが、人手不足で非正規雇用のアルバイト・パートや派遣スタッフでも時給が上昇を続ける、という意味での完全雇用に達しているわけではない、という認識が成り立とうかと考えています。春闘をはじめとする賃金の先行き動向も不透明ですし、「人手不足で完全雇用」という状況にはまだ達していないという見方が正確なんだろうと私は受け止めています。

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2017年3月27日 (月)

上昇率を高めた企業向けサービス価格指数(SPPI)をどう見るか?

本日、日銀から2月の企業向けサービス物価指数(SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て、ヘッドラインSPPIは+0.8%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.8%と、徐々に上昇幅が拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の企業向けサービス価格指数、前年比0.8%上昇 広告が寄与
日銀が27日発表した2月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.3で、前年同月比0.8%上昇し、44カ月連続で前年を上回った。上げ幅は前月から0.3ポイント拡大し、消費税を除いたベースでは15年8月以来、1年半ぶりの高い伸び率となった。前月比も0.3%上昇した。好調な収益や年度末に向けた予算消化などを背景に、企業のテレビ広告への出稿意欲が高まったことが指数を押し上げた。
広告のほか運輸・郵便では原油価格の上昇による貨物運賃の改善や、中国の鉄鉱石の需要増加で外航貨物輸送の荷動きが好調だったことも寄与した。外航タンカーは15年9月以来、1年5カ月ぶりにプラスに転じた。諸サービスのうち宿泊サービスでは、大都市のホテルが出張などビジネス需要や外国人観光客の減少に対応して単価を引き上げたほか、地方ではコンサートのための宿泊や外国人観光客の増加により、前月からプラス幅が拡大した。
対象の147品目のうち、価格が上昇したのは62、下落した品目は47で、上昇品目数は下落品目数より15品目多かった。
日銀の調査統計局はヤマトホールディングス(9064)傘下のヤマト運輸の値上げ検討について「今後どうなるかは分からないが、道路貨物輸送に影響が出ても不思議はない」との見方を示した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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SPPI上昇率はこのところ+0.2%~+0.5%のレンジ圏内で推移して来たんですが、とうとう+0.5%wpかなり上回る上昇率に達しました。素直に考えれば、国際商品市況の石油価格の波及効果ではないか、と考えないでもなかったんですが、石油価格に敏感な国際運輸を除くコアSPPIでもヘッドラインと同じ上昇率ですので、石油価格上昇の寄与は決して大きくないと考えるべきです。すなわち、前年比寄与度の前月差を詳しく見ると、外航貨物輸送は+0.03%と、それなりのプラスの寄与度を示していますが、それ以上に、テレビ広告の+0.13%を含む広告が+0.21%と大きな寄与を示しており、宿泊サービスの+0.04%なども外航貨物運輸の寄与度を上回っています。引用した記事にも、年度末の予算消化もあるんでしょうが、好調な企業業績に支えられたテレビ広告、大都市のホテルの客室単価引き上げなどが上昇要因として明記されています。
私には判断がつきかねているんですが、2月のこのSPPI上昇率の加速が一時的要因なのか、トレンドの変化なのか、やや不明です。国際商品市況の石油価格に連動した上昇加速の部分は大きくなさそうです。そして、このまま3月の年度末を迎えた後、4月の価格改定期の動向については、私の希望的観測も含めて、日銀のインフレ目標に近づくような価格改定が数多く見られるよう願っています。特に、ヤマト運輸 vs アマゾンほかのネット通販の価格交渉がどのように決着するかは大きな関心と興味を持ってウォッチしたいと思います。

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2017年3月26日 (日)

オリックスとの最後のオープン戦を終え、今週はいよいよペナント開幕!

  HE
阪神000101000 261
オリックス12010000x 480

オープン戦最終戦はオリックスとの対戦で、先発能見投手の立ち上がりが不安定で失点し、結局負けました。でも、私は初めて糸井選手がヒットを打つところを見ました。
今週金曜日の広島でのペナント開幕を前に期待が盛り上がります

今シーズンは優勝目指して、
がんばれタイガース!

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2017年3月25日 (土)

今週の読書はまたまた少しオーバーペースで経済書など計8冊!

今週はついつい借り過ぎて読み過ぎました。話題の働き方改革の中で、同一労働同一賃金を正面から取り上げた経済書、WBCで侍ジャパンが準決勝で敗退した一方で、プロ野球の開幕も近づき、背番号にまつわるノンフィクション、さらに、やや物足りなかったものの、話題の作家による小説などなど、以下の通りの計8冊です。

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まず、山田久『同一労働同一賃金の衝撃』(日本経済新聞出版社) です。著者は住友系の民間シンクタンクである日本総研のチーフエコノミストであり、雇用や労働分野に強いと見なされています。本書では、その昔からスローガンとなっている「同一労働同一賃金」に関して、その実現はそう簡単なことではなく、雇用や労働のさらにさかのぼること社会政策まで含めた対応が必要と論じています。まず、エコノミストとして、当然ながら、生産性に応じた賃金が支払われるのがもっとも合理的であり経済社会においても効率性を維持できるんですが、日本に限らず実はそうなっていません。私が大学で日本経済論を教えていた時でも、本書でいうところの我が国のコア労働力が服している終身雇用制では、ピッタリ半々ではないものの、前半期は生産性より低い賃金が、逆に、後半期では生産性より高い賃金が、それぞれ支払われる、ということになっていました。生涯パターンに応じた生活給的な側面があるからです。本書では明示的に指摘されていませんが、我が気宇に労働市場の最大の問題はこの終身雇用にあります。もちろん、ホントに死ぬまでの終身雇用ではありませんので、正しくは長期雇用ということになりますが、我が国労働市場でも戦前まではまったくこのような慣行はなく、戦後の高度成長期の人手不足の下で、企業の人材囲い込みが始まり、汎用的な生産性を高めるOffJTではなく、OJTを重視し退職金を高額にし転職コストを高騰させるようなシステムが徐々に出来上がったわけです。その中で、男性正社員が無限定に会社に奉仕して、エコノミック・アニマルとか、モーレツ社員と呼ばれて、先進国でもまれな長時間労働に従事する反面、過程では女性が専業主婦として家事や子育てに専念する、というシステムが出来上がってしまいました。それが現在では働く人のダイバーシティが進み、さらに、長期停滞の中でコストカットの対象に労賃が目の敵にされて非正規雇用が増加し、ここまで格差が広がった時点では正規と非正規のよく似た労働については同じ賃金を支払うという原則が再浮上したと考えるべきです。ですから、欧州のような公平の観点だけではなく、日本では転職がまだ長期雇用的な慣行の下でコストが大きいわけですので、単に賃金だけでなくキャリアパスも含めて、どのような人生設計の下で働くか、雇用されるか、という点こそ重視されるべきではないでしょうか。ですから、賃金だけを労働実態に応じて同一にするのは、キャリアパスの観点がが無視されている限りは、私には片手落ちとしか考えられません。私の目から見て、そういった観点からは、本書はとてもいい議論を展開していると思います。オススメです。

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次に、ジョン・プレンダー『金融危機はまた起こる』(白水社) です。著者はファイナンシャル・タイムズでよく見かけるコラムニスト、ジャーナリストです。英語の原題は Capitalism というある意味で壮大なタイトルであり、2015年に出版されています。内容としては、資本主義の本質に迫ろうと試みているのはそうなのかもしれませんが、わずかこの程度のボリュームではそんなことは不可能なわけで、基本的な題材は2007-09年くらいまでのサブプライム・バブルとその崩壊に端を発する金融危機に取っており、最終章では資本主義の本質は不均衡だと結論しています。ただし、本書でもよく引用されるシュンペーターの時代との違いは将来像として社会主義・共産主義という選択足がなくなった点です。他方、著者はあえて避けていますが、均衡からの乖離を含めて資本主義の不均衡が、正と負のどちらのフィードバックを持ったモメンタムなのかは考えておく必要があります。繰り返しになりますが、著者はこの観点に気づいていないか避けているかどちらかであり、もしも、均衡から乖離して正のフィードバックを持つのであれば資本主義は立ち行きませんが、負のフィードバックであれば政策対応は必要ないともいえます。いずれにせよ、邦訳版の編集者がタイトルに選び、著者も本書の中で論じているように、金融危機はまた起こるでしょうし、問題は起こるか起こらないかではなく、どの時点でどれくらいの規模で発生するか、なんでしょうね。私もそう思います。ただ、最後に、金融危機をカギカッコ付きで「言い当てた」エコノミストの著者などからいくつか引用していますが、とても疑わしいと私は受け止めています。サブプライム・バブルとその崩壊だけを予言するのは、どちらかといえば、必然や偶然の要素よりも平凡なエコノミストが一貫して同じ向きの発言をしていれば可能なわけで、上向きと下向きのどちらも的中できなければ、いつものバイアスで予言しているだけのオオカミ少年、と見なされる恐れもあることは考慮すべきです。ついでながら、古今の西洋向けばかりで「東西」ではありませんが、著名なエコノミストに限らず教養人の文献が引用されているのも本書の魅力に数える人がいるかもしれません。著者が博覧強記なのか、それとも、ネット検索がうまいのか、どちらかだという気がします。私の目から見ても、ケインズとマルクスが並んで引用されている本は決して多くなさそうな気もします。

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次に、大内伸哉『AI時代の働き方と法』(弘文堂) です。著者は神戸大学の労働法学者であり、一応、タイトルや本書の冒頭でも人工知能(AI)に関連する労働法の考察に並々ならぬ意欲を見せていて、AIそのものに関してはどこからか引き写してきた解説はあるんですが、AIに関する労働法の整備に関しては羊頭狗肉であって、何ら中身はありません。私はそれなりの関心があったので、その点は期待外れでしたが、まあ宣伝文句ですからこんなもんでしょう。そして、その中身は現在の労働法制は正規社員の身分保障が強すぎて時代遅れ、の一点張りでした。トホホというカンジで、ほとんど何の論証もなく「時代遅れ」の一点張りで押し通しています。確かに、終身雇用、年功賃金、企業内組合の日本的な雇用慣行は高度成長期に人手不足が深刻化し、人材を囲い込むために発達した制度であり、高度成長期の人手不足に適合的な制度であるという意味で「時代遅れ」というのは、ある意味で、その通りです。ただ、第5章の特に終わりあたりで著者も意識的にぼかしていますが、企業の経済合理的な選択と集中のためには、雇用者の流動化も有効なんですが、企業そのものも流動化するという極めて有効な手段があります。米国の雇用は日本に比べてと絵も流動的なんですが、企業そのものも連邦破産法11章、いわゆるチャプター11によりかなり柔軟な対応が可能となっています。著者は労働法学者であって会社法学者ではないようですから、企業はあくまで going-concern であって、経済合理性の追求のために労働者にしわ寄せが来るのをいかに労働法という次元でさばくか、に関心があるのでしょうが、エコノミストの目から見れば、生産要素の柔軟で流動的な配置転換という意味では、資本も労働も同じ生産要素です。極めて単純化した見方ながら、経済合理性の追求のためには、労働者は会社の言いなりになるしかない、だから、正社員の身分保障は緩和すべき、というのは一方のイデオローグであり、他方、労働者の経済的厚生水準の維持強化のために企業活動に制約を加えることも必要、特に金融活動の規制は金融危機回避のために必要性が高い、というのも別のイデオローグかもしれません。

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次に、ジュリア・ショウ『脳はなぜ都合よく記憶するのか』(講談社) です。著者はロンドンの大学をホームグラウンドとする記憶研究者、というか、過誤記憶の研究者です。精神科の医者なのか、心理学の専門家なのかは私には不明です。英語の原題は The Memory Illusion であり、2016年の出版です。過誤記憶の研究者として犯罪事件の事実解明に加わっているそうですから、過誤記憶研究者は人権派弁護士と並んでカギカッコ付きの「犯罪者の味方」と見なされる場合もありそうな気がします。どうして記憶が間違っているのかは、いくつかの原因があるようですが、そのひとつに優越感情による認知の歪みがあります。要するに、自分が他者よりエラいと思っているので、過誤記憶を持ってしまうわけです。ですから、犯罪に近い状況では交通事故の状況の見方が、関係者間で大きく異なることもあり得るわけです。ただし、さすがに、現役の総理大臣夫人から100万円の寄付があったかどうかは、記憶に間違えようがない気がするんですが、いかがなもんでしょうか。そして、記憶に間違いがあって、議院証言法上の証人として国会で事実と異なる自分の過誤記憶を披露してしまえば、まあ、偽証罪に問われたりするわけです。この2冊前の本の感想文で、博覧強記とネット検索の補完性というか、代替性というか、についてやや揶揄するようなことを書きましたが、実は、私自身は自分自身の脳に収納しておく記憶容量にまったく自信がありませんので、出来る限り外部記憶装置に収納しておくようにしています。この読書感想文もその一環です。決して自慢でも何でもなく、これだけの読書量があれば、すべてを記憶しておくことはまったく不可能です。外部のサーバに出来る限り読んだ後に感想文を残しておくことにしています。最後に、本書では、フロイトの精神医学や心理学はまったくのエセ科学と喝破したり、睡眠学習の非現実性を明らかにしたりと、とても私の考えに近い著者の見方に好感が持てます。もっとも、そうでない人はそうでないかもしれません。

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次に、佐々木健一『神は背番号に宿る』(新潮社) です。著者はNHKの関連会社を振り出しに映像ジャーナリズムで活躍しており、本書はNHKの関連企画の取材を基にしているようです。なお、単に「背番号」というだけでは、多くの球技で採用されているシステムですが、上の表紙画像に見られる通り、野球、特にプロ野球に特化して背番号にまつわるエピソードを集めています。まず、何といっても、私が読もうと思ったきっかけは、最初に取り上げられている選手が江夏投手だからです。誌かもその次が村山投手です。江夏投手の背番号28については、本書でも触れらている通り、小川洋子『博士の愛した数式』で有名になった完全数です。約数を全部足し合わせると元の数になるという意味だそうです。江夏というのは、昨年逮捕された清原といっしょで、晩年に薬物で逮捕され有罪判決を受けましたので、その分、少年野球などからは距離を置いて見られていますが、本書でも指摘されている通り、すでに刑期を終えて出所し社会的な制裁を受けていますので、そろそろ過去のお話しにしてしまうのも一案でしょう。いくつかの名門球団で、いわゆる永久欠番とされた背番号の由来、あるいは、逆に、あれほど活躍したにもかかわらず永久欠番とならなかった背番号、例えば、今は2年連続トリプル・スリーの山田選手が引き継いでいるヤクルトの1番を背負っていた若松選手のケース、などを判りやすく興味深く展開しています。およそ、私なんぞのまったく知らない選手のエピソードまで含めて、いろんな背番号にまつわる話題を提供しています。プロ野球ファン、特に江夏投手を知る阪神ファンは必読かもしれません。

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次に、マリア・グッダヴェイジ『戦場に行く犬』(晶文社) です。著者は米国西海岸在住でジャーナリストの経験が長く、現在では愛犬家のブログ投稿サイトの運営などをしています。2012年の出版であり、英語の原題は Soldier Dogs です。私は本来こういった軍事関係は決して評価せず、逆に回避する傾向があり、例えば、小さいころからガンプラを与えてきた上の倅が中学に入って模型部に入って部活をする際も、プラモデルの中に頻出する軍艦や戦闘機や戦車などの兵器関係は「おとうさんは嫌いである」と宣言した記憶があります。ちなみに、倅が同じ趣旨の発言を部活でしたところ、「ガンダムって兵器じゃないの?」といわれたらしいですが、まあ別のお話しでしょう。ということで、兵器や軍事に否定的な感情しか持たない私がどうして本書を読んだのかというと、実は、歴史的に見て我が家では飼い犬だけが太平洋戦争の戦場に駆り出されているからです。すなわち、私の父親は昭和ヒトケタの1930年生まれで、終戦の1945年までに徴兵年齢に達せず、その私の父の父親である祖父は年齢が行っていて招集されず、結局、飼っていた犬だけが軍隊に引っ張られて「戦死」したらしいです。犬種について私はよく知りませんし、どこで何をしてどうして「戦死」したのかは、軍事作戦上の機密事項でもないんでしょうが、明らかではありません。さらに、このブログの読書感想文では取り上げませんでしたが、昨年、出版から2年近く遅れて『アメリカ最強の特殊戦闘部隊が「国家の敵」を倒すまで』を読み、それはウサマ・ビンラディンの追跡と奇襲を跡付けたノンフィクションで、本書にも何度も出て来ますが、カイロという軍用犬が登場します。米国ではとても有名な軍用犬で、当時のオバマ大統領がこの部隊をねぎらいに出向いた際に、"I want to meet that dog." 「あの犬に会わせてくれ」と言ったらしいです。軍用犬ではなく警察犬などでも同じようなストーリーは有り余るほど存在するんでしょう。さらに、私は軍事作戦についてはまったくシロートですし、一時流行した言い方をすれば、私自身は明らかにイヌ派ではなく、ネコ派なんですが、本書では人間と犬の絆について、そして、その昔には「犬畜生」という言葉もありましたが、犬という動物の評価について、考えさせられるものがありました。私は違いますが、愛犬家の中にはとても高く評価する人もいそうな本です。

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次に、真山仁『バラ色の未来』(光文社) です。作者は売れっ子のエンタメ作家であり、本書は、ズバリ、統合リゾート(IR)法案にからんで、利権渦巻く政治の世界を舞台にしています。すなわち、青森県の寒村の町長がホームレスとして東京で死を迎えるところから物語は始まり、その町長が誘致しようとしたマカオのカジノを経営する中国人女性、コンサルとして暗躍する広告代理店の男性、もちろん、総理大臣とそのファーストレディまでカジノに思惑を抱いて利権に漁ります。それを社会の木鐸として事実関係、特に、利権の構図とカジノの影の側面を明らかにしようとする名門新聞社の編集局次長まで上り詰めた女性記者と、同じ新聞社の幹部ながら時の政権のブレーンとして政権の暗部を報道するのを防止しようとする専務編集局長、などなど、羅列すれば複雑そうに見えますが、それはそれなりに単純な人間関係の中でストーリーは進みます。ただ、後半から失望する読者が多そうな気がします。第1に、カジノの負の側面を政治家の利権と国民のギャンブル依存症だけで済ませようとする作者のお手軽プロットです。反社会的組織の暗躍やその組織による薬物汚染をはじめ、いくらでもカジノ反対論の根拠はあるのに依存症だけで済ませようというのは手抜きに過ぎます。依存症であれば、本書で作者も何人かの登場人物に発言させているように、本人の問題とも言い逃れできます。第2に、ラストがお粗末です。メディアの記者が何を記事にして、社内政治の流れで何を記事に出来ないか、しかも、編集にはかかわらないはずの社主まで登場させた割りには、メディアの対応がお粗末としか言いようがありません。せっかく、話題のIRやカジノを題材にしながら、作者の力量不足、取材不足としか考えられません。この作品くらいの出来であれば、この作者は諦めて別の作者の手に委ねるのも文学界全体としてはよかった可能性すらあります。誠に、残念。

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最後に、赤川次郎『招待状』(光文社文庫) です。著者はよく知られた売れっ子のミステリ作家であり、三毛猫ホームズのシリーズなどは私も愛読しています。本書は通常の単行本と文庫本とで同時に発行されたんですが、私が読んだのは上の表紙画像の文庫本でした。中身は、ファンクラブ会誌「三毛猫ホームズの事件簿」で毎号書き下ろされているショートショートです。お題は読者から寄せられています。「再出発」から始まって、「シンデレラの誤算」、「父の日の時間割」、「封印された贈り物」、「幽霊の忘れ物」、「テレビの中の恋人」などなど、27のストーリーを収録しています。この作者本来のミステリーはもちろん、サスペンス、ファンタジー、ラブストーリーなどですが、さすがに、ショートショートの短い文章ですので、ひねりのある結末は少なく、基本的にストレートな内容に仕上がっています。この作者の作品らしく、ユーモアたっぷりで、表現は悪いかもしれませんが、時間潰しに最適です。

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2017年3月24日 (金)

米国への移民は米国の労働力人口にどれほど貢献しているのか?

とても旧聞に属する話題ですが、私が時折チェックしている米国の世論調査機関であるピュー・リサーチ・センターから3月8日付けで Fact Tank として、Immigration projected to drive growth in U.S. working-age population through at least 2035 と題するリポートが明らかにされています。通常の世論調査 = Opinion Pollではなく、Fact Tank と題されていて、違いについては私もそれほど理解ははかどらないんですが、2035年までの米国の労働力人口における移民などの構成を分析しています。グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはピュー・リサーチのサイトから Immigrants and their U.S.-born children expected to drive growth in U.S. working-age population を引用しています。日本では労働力人口は15-64歳なんですが、米国では25-64歳と少し違いはあるものの、上のグラフのいずれのパネルでも、グレーが米国生まれの両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口、濃い黄土色が移民の労働力人口、薄い黄土色が移民の両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口となっています。移民と米国生まれの両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口がどこに属するのかは明らかではありません。なお、我が国では団塊の世代と呼ばれるベビーブーマーは極めて狭い範囲で1946-48年生まれ位を指す場合が多いんですが、米国のベビーブーマーは戦後生まれで1965年くらいまでに誕生した世代を指します。ということで、ピュー・リサーチの推計によれば、2015年時点で173.2百万人の米国労働力人口は2035年には183.2百万人に達すると見込まれています。しかし、この米国労働力人口の増加は移民や移民の両親の下に生まれた米国生まれの労働力人口を含めた数字であり、米国のベビーブーマーの加齢に従って、グレーの米国生まれの下に生まれた米国生まれの労働力人口は2015年くらいを境に減少に転ずると予想されています。また、グラフは引用しませんが、この後には、2035年時点で米国労働力人口は移民を含めるかどうかで17.6百万人の差が出ると試算した結果をプロットしたグラフを置いています。ということで、リポートの最後のパラの最初のセンテンスで、"Immigrants also play a large role in future U.S. population growth." と結論しています。

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2017年3月23日 (木)

東洋経済オンラインによる「非正社員の多い」トップ500社やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、東洋経済オンラインにて先週木曜日の3月16日付けで、「非正社員の多い」トップ500社が明らかにされています。トップはダントツぶっちぎりでイオンとなっています。以下、50位までのランキングのテーブルを東洋経済オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。

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大手の自動車や電機メーカーのように、比率は高くないものの従業員数が多いので、非正社員も多いというパターンが散見されますが、やっぱり、大雑把な印象では世間一般でいわれているように、メーカーよりは小売り・外食・介護などが多いような印象です。なお、どうでもいいことながら、17番目のファーストリテイリングはユニクロなどの持ち株会社だと思うんですが、意外と非正社員比率が高くないように私は受け止めています。雇用に関する本を読み進んでいるので、少し関心が高まって取り上げてみました。

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2017年3月22日 (水)

貿易統計は世界経済の回復とともに我が国輸出の増拡大基調を確認!

本日、財務省から2月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+11.3%増の6兆3465億円、輸入額は+1.2%増の5兆5331億円、差引き貿易収支は8134億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の貿易収支、2カ月ぶり黒字 10年3月以来の水準
財務省が22日発表した2月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は8133億8900万円の黒字だった。貿易黒字は2カ月ぶりで、2010年3月以来の水準。QUICKがまとめた市場予想の中央値は8591億円の黒字だった。中国の旧正月(春節)休暇が前年より早く1月中に始まった影響で輸入需要の一部が前倒しになった半面、輸出には反動増が発生し対中国貿易が60カ月ぶりの黒字となった。
輸出額は前年同月比11.3%増の6兆3465億円と3カ月連続で増加。2月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は113.40円と前年同月に比べ3.4%の円高だったが、輸出数量全体の伸びや対中国輸出の好調が寄与し、増加幅は15年1月(16.9%)以来の大きさとなった。
中国向けギアボックスなどの自動車部品や香港向けICといった半導体など電子部品の伸びが目立った。地域別では中国向けが28.2%増、米国向けが0.4%増となった。欧州連合(EU)向けも3.3%増と5カ月ぶりに増加した。
輸入額は1.2%増の5兆5331億1100万円となった。資源価格の回復に伴いアラブ首長国連邦(UAE)からの原粗油、オーストラリアからの石炭などが伸びた。ただ、中国からの衣類やアイルランドからの医薬品の輸入が減り、増加幅は限られた。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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貿易黒字の幅については、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば+8591億円の黒字でしたので、ほぼジャストミートした感じです。ただし、これも引用した記事にある通り、中華圏の春節が昨年から1か月ズレて1月に始まった影響によるものであり、要するに、輸出拡大が貿易黒字に寄与しているわけです。昨年2月はうるう年でしたので、その1日多いうるう年効果を上回る春節効果は偉大であると改めて感じました。どうでもいいことかもしれませんが、季節調整済みの系列でも主節効果で歪みが生じている気がします。なお、今後も貿易収支の黒字基調は大きな変化ないと多くのエコノミストは予想しているものの、その黒字幅は縮小する可能性が強いと私は考えています。

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>輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。2月の輸出については、中華圏の春節効果である点は前のパラに記した通りですが、上のグラフの真ん中のパネルや一番下のパネルに見られる通り、先進国はもとより、中国をはじめとする新興国でも景気は底入れして回復に向かっており、世界経済の拡大とともに我が国の輸出への需要が高まりを見せ始めています。ただし、米国の通商政策及び為替政策のリスクは依然として私には不明です。

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2017年3月21日 (火)

マンションサプリ調査による東京メトロで最も資産性が高い沿線やいかに?

とても旧聞に属する話題ながら、3月7日付けでマンションサプリから「東京メトロで最も資産性が高い沿線」に関する調査結果が明らかにされています。関連データは相場情報サイト「マンションマーケット」のデータを用いているようです。

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結果は上のテーブルの通りです。間隔10年間ということで、2007年と直近の2017年を比較しています。東京メトロ9路線のすべてにおいて、この10年間で平均m²あたりのマンション価格は下落しているんですが、最も下落率が小さかったのが千代田線沿線で、逆に大きく下落したのが銀座線、ということになっています。大雑把に見て、格差がhす苦笑yし収束が進んでいるように見えなくもありません。それにしても、東京メトロ沿線ではマンション1m²あたりで100万円近くするんですね。改めて驚いてしまいました。

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2017年3月20日 (月)

世論調査結果「特殊詐欺に関する世論調査」に見る根拠の不明な自信は何を招くか?

ちょうど1週間前の先週月曜日3月13日に内閣府政府広報室から「特殊詐欺に関する世論調査」の結果が公表されています。その昔に、「オレオレ詐欺」などと呼ばれていた詐欺に関する世論調査です。年齢別に見て、やや疑義のある結果でしたので簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、年齢別に見て、特殊詐欺に対する意識、すなわち、自分が被害にあうかどうかについての問いに対する回答結果の比率です。見れば明らかな通り、「自分は被害にあわないと思う」が年齢が高くなるに従って増加しています。なかなか根拠が疑わしい結果ではないかと思いますが、さらに、被害にあわない根拠を問うと、さらに根拠が薄弱そうに見えます。

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ということで、上のグラフは、被害にあわないと思う理由のうち、「だまされない自信があるから(家族の声やうそを見分けられる自信がある)」と回答した比率を年齢別にプロットしています。これまた、年齢が高くなるに従って「だまされない自信がある」とする比率が上昇しています。

どういった根拠で、このような自信がわいてくるのか、私はとても知りたいと思いますが、そう遠くない将来に、私もこういった年齢層の仲間入りをするわけですから、根拠薄弱な自信は慎みたいと自戒しています。

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2017年3月19日 (日)

ウェザーニューズによる「第2回桜開花予想」やいかに?

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とても旧聞に属する話題ですが、3月7日にウェザーニューズから今年2017年の「第2回桜開花予想」が明らかにされています。3月5日にも日本気象協会の開花予想を取り上げたところなんですが、まあ、そこは季節の話題です。
見れば明らかですが、上の2枚の画像のうち、上の方が各地の桜の名所別、下が都市別、となっています。東京ではこの3連休明け、数日ならずして開花が始まるとの予想です。全国で早いところでは、福岡県舞鶴公園や熊本県熊本城、高知県高知公園では3月22日、東京都上野恩賜公園では23日、京都府清水寺では30日、などの見通しとなっています。

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2017年3月18日 (土)

今週の読書は充実した経済書中心に計5冊!

今週の読書は経済書、特に私の専門分野である開発経済学を含めて経済書中心に以下の5冊です。先週末に米国雇用統計が割り込んで営業日が1日少ないので、こんなもんかという気もします。特に、藤田先生ほかの『集積の経済学』をはじめとして、分厚くボリュームたっぷりの本が目白押しでしたので、冊数の割にはなかなかの読書量ではなかったかと自負しています。

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まず、外山健太郎『テクノロジーは貧困を救わない』(みすず書房) です。著者は、マイクロソフト、特に、マイクロソフト研インドでの研究歴が長く、本書では主としてインドでの体験を基に議論が進められています。本書でいうところのテクノロジーとは、狭く考えればパソコンやスマートフォン、あるいは、それらのハードで走らせるソフト、ということになり、いわば、我が国のODAが進めてきたような途上国援助のうちのハコモノ援助、道路や橋や空港やといったインフラ整備を中新とする援助のようなものであり、それはたしかに貧困を救わないかもしれないわけですが、テクノロジーについて人間が利便性を追い求めてきた仕組みややり方などすべてに対する総称として考えれば、それなりに貧困削減には役立ってきた気もします。ただし、本書で著者は貧困削減のためには、取り組む人々のヤル気や意識の高さなどをとても重視しているような気がします。そういった、いわば、エウダイモニア的な崇高な意識の下での貧困削減が重要であり、そういった崇高な見識をテクノロジーは増幅するが創造はしない、というのが本書の結論なんだろうという気がします。私はそこには疑問があります。もちろん、エウダイモニア的な崇高な意識の高さは重要かもしれませんが、」そういった意識の高さがなくても社会的な仕組みの中でジコチュー的な人間でも大きな貧困削減の成果が上げられる、といった方向にシステムや制度を設計することこそが重要ではないでしょうか。崇高な意識の下では、貧困削減だけでなく、ほかの何らかの政策目標、もっとも極めて専門的な技術を要するものを除きますが、そういった、一般的な政策目標は何だって達成されそうな気がします。その意味で、意識の高さだけを要件と考えるのはよろしくないと私は考えます。そうでない一般的な人々が、貧困削減に成功するような仕組みや制度を考えて実行するのが開発政策ではないんでしょうか。

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次に、藤田昌久 & ジャック F. ティス『集積の経済学』(東洋経済) です。本書の英語の原題は Economics of Agglomeration ですから、邦訳はそのまま直訳されています。初版は2002年に出版されていますが、本翻訳書の底本は2013年出版の第2版です。著者は2人とも経済学者であり、2008年にノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授らとともに空間経済学のリーダーでもあります。ただ、少しだけアプローチが異なり、藤田教授は一般均衡論的なアプローチ、ティス教授は産業組織論的なアプローチとの特徴があります。いずれにせよ、本書は世界的な空間経済学の権威による専門学術書、ないし、大学院レベルのテキストとしても耐え得る著作です。まあ、ハッキリいって、私のようなシロートが通勤電車で読み飛ばすような内容では本来ありません。当然のように、数式も頻出して解析的にエレガントに結果が導かれたりします。私が「定量分析」と呼ぶような手法のごとく、再帰的に力ずくで漸近的な結果を求めようとするわけではなかったりします。空間経済学は都市の形成という観点で、実は都市以外は農村だったりするわけですが、2部門モデル的な要素が強くて、私の専門分野である開発経済学と通ずる部分も少なくなく、少なくとも、クルーグマン的な核周辺モデルにおいて、非常に単純化すれば、核=都市=製造業と商業に対する周辺=農村=農業の2部門モデルの分析はそれを歴史的な展開に置き換えれば開発経済学そのものです。ですから、空間経済学では本書にも登場する「首都の罠」、すなわち、首都以外の都市が形成されず製造業も育たない、といった望ましくない状況が開発経済学といっしょになって研究されていたりもします。第2版の本書では最終章をはじめとしてグローバル化に対応した部分に追加修正が加えられており、核となる国に戦略的な経営・研究開発・ファイナンスなどの本社機能が置かれ、周辺国に未熟練労働を相対的に多く使う工場が置かれたり、といった結果が導出されています。加えて、コミュニケーション費用が低下すれば、周辺国の工場の比重が増加、核となる国の熟練労働者の厚生が低下するという結果も得られています。ですから、トランプ米国大統領的に、国境に大きな壁を築いてコミュニケーション費用を高めれば、あるいは、逆のことが生じるのかもしれません。繰り返しになりますが、かなり高度な内容の専門学術書、ないし、大学院レベルのテキストです。税抜きで6000円というお値段も考え合わせて、買うのか借りるのか、読むのか読まないのか、について合理的な選択をするべきかもしれません。

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次に、野村直之『人工知能が変える仕事の未来』(日本経済新聞出版社) です。著者は労働や雇用ではなく、人工知能(AI)の方の専門家です。ですから、タイトルに魅力を感じて、私なんぞは読み始めたなですが、やっぱり、AIの解説の方に重きが置かれていて、少し肩透かしを食った恰好です。でも、2045年にAIの能力が人間を上回るという意味でのシンギュラリティを迎える、とかの宣伝文句先行型のAIの先行き見通しに本書は疑義を唱え、もっと落ち着いた先行き予想を展開しています。すなわち、AIについては人間の道具となる弱いAIと人間の脳機能を超えるようなスーパーな存在を目指す強いAIを区別し、後者が人間を超えるという意味でのシンギュラリティの近い将来での到来に疑問を呈しています。もちろん、前者の人間の道具としてのAIについては、単なる3メートルの棒でも人間の能力を超えるからこそ道具として有用なわけですから、特定の用途で人間の能力を超えるのは当然、という見方です。そして、最終章15章では例のオックスフォード大学によるAIに代替される労働について考察を加え、その昔のラダイト運動なども引きつつ、決して悲観一色の見方ではありません。その前提として、何回かベーシック・インカムの導入について前向きの記述を見かけます。AIを導入して人間労働を大幅に削減しつつ、働かなくてもベーシック・インカムで最低限の生活を保証する、というのが将来の政策の方向なのかもしれません。ただし、AIをはじめとする最先端技術における日本の貢献や政策動向についての本書の見方はとてもありきたり、というか、ハッキリいって、ほとんど何の見識もありません。2045年のしんgyラリティに少し不安を感じた向きに落ち着いた技術論を供給するのが本書の主たる貢献ではないかという気がします。雇用や労働のあり方まで著者に将来像の提示を求めるのは少し酷かもしれません。

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次に、翁邦雄『金利と経済』(ダイヤモンド社) です。著者は日銀金融研所長などを歴任していて、いわゆる旧来からの日銀理論家ですから、現在のアベノミクスや黒田総裁の下でのリフレ派の日銀金融政策に対してはとても批判的なバイアスを持っていることを前提に読み進む必要があります。非常に単純にいえば、本書では物価の動きの背景にある国際商品市況における石油価格についてはまったく考慮することなく、要するに、現在の黒田総裁の下での日銀金融政策が自ら掲げたインフレ目標の2%を達成できていない点を基本的には理論面から分析しています。まず、現在の米国のポリシー・ミックスが拡張的な財政政策と引締め的な金融政策になっていて、1960年代のケインジアン的な政策とは逆に、1980年代のレーガン政権下の政策と類似性あるとの見方を示し、その中で、1980年代前半においては為替の円安が進みつつ、それは持続性なかったためにプラザ合意から円高に反転したわけですが、我が国のアベノミクス、実は、本書でも指摘するように、安倍政権成立の少し前から円安が進んだ点との類似性を見ています。それはそうかもしれません。その上で、現状の長期停滞理論を持ち出し、自然利子率の低下の影響を日本経済にも写し出そうと試みています。ただ、結論で大きく異なる点が、要するに、自然利子率まで実際の金利を下げようとするリフレ派とちがって、国民に大きな負担を強いるカギカッコ付きの「構造改革」により自然利子率を引き上げようとする点です。どうして日銀理論家がここまで中長期的な視点で自然利子率を引き上げるような形の構造改革を提唱するのか、私にはまったく不明です。通常、中央銀行は短期循環を視野に入れた景気循環の平準化、というか、景気後退の回避を念頭に金融政策を運営し、政府はより長期の政策目標を設定して、まあ、いわゆる構造改革を含めて、例えとしてはよくないかもしれませんが、よく「国家100年の大計」と称される教育などの政策まで含めたグランド・デザインを描く、というのが役割分担だ、と私も官庁エコノミストの先輩から聞かされた記憶があります。私が考えるに、金融政策の庭先をきれいにしておいて、物価への政策の影響力がないとか何とかいって、裁量的な金政策を自由気ままに企画立案していた昔の姿が懐かしい、といっているように聞こえてしまうエコノミストもいるかもしれません。いないかもしれません。繰り返しになりますが、本書は現在のアベノミクスや黒田総裁の下でのリフレ派の日銀金融政策に対してはとても批判的なバイアスを持っている著者の手になるものである点を前提に読み進む必要があります。

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最後に、須賀しのぶ『また、桜の国で』(祥伝社) です。著者は、私は作品を読んだことはないんですが、それなりに売れている作家であろうと受け止めています。本書は今年上期の直木賞候補作となっています。戦間期のポーランドの首都ワルシャワを舞台に、外務書記生という在外公館の中でも書記官未満のやや低い職階をこなす青年を主人公にし、しかもこの青年の父親が白系ロシア人という設定のかなり大がかりな歴史小説です。少年時代のポーランド人孤児との邂逅は別にして、物語は1938年秋に主人公の青年がポーランドの日本大使館に赴任するところから始まります。誇り高いポーランド人を持ってしても、ロシア、ハプスブルク家のオーストリア、近代以降のプロシアや統一後のドイツなどの列強に囲まれて、なかなか独立を維持することさえ困難なポーランドにあって、第2次隊戦前夜の不穏な世界情勢を背景に、そして、独ソ不可侵条約に基づいて独ソに分割されるポーランド、頼りにならない英仏など、20世紀前半の欧州情勢を余すところなく盛り込みつつも、ポーランドの首都ワルシャワにおける主人公の日本人外交官として、あまりにもポーランドに肩入れした姿勢に不安を感じながら私は読み進みました。というのも、一応、私は外交官経験者ですし、戦争前夜の欧州の情報収集担当こそ経験がありませんが、似たような情報収集はどこの大使館でもやっています。大使館勤務の当時に私が外交官としてやったのはGATTウルグライ・ラウンドのドンケル事務局長提案に対する主要国の姿勢に関する情報収集でした。それはさて置き、本書のキモは米国人ジャーナリストだと思っていた人物の意外な正体なんですが、それも面白い趣向ながら、やっぱり、直木賞を逃した最大の要因は登場人物のキャラがあまりに似通っているからではないでしょうか。すべて正直で一途で思い込んだら命がけ、のような熱血漢ばかりです。日和見をして風見鶏のように態度を変える人物とか、味方だと思っていたのに実は敵のスパイだったとか、そういったヒネったキャラが見当たりません。その分、物語が平板で深みがなく、スラスラと進んでしまいます。いくつか、表現上の不一致も散見され、例えば、ドイツ側ではナチスの象徴としてのヒトラーは登場しますが、ソ連のスターリンに関する言及はどこにも出てきません。また、主人公が列車で出会ったカメラマンのヤンについても、生意気な発言を「である」調でしているかと思えば、急にへりくだって「です・ます」調でしゃべり始めたり、編集作業で訂正しきれていない部分も少なくありません。小説としての完成度はその分割り引かれそうな気がします。

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2017年3月17日 (金)

東京商工リサーチ「長時間労働」に関するアンケート調査の結果やいかに?

広く報じられている通り、今週になって、労使間で協議してきた残業時間の上限規制を巡る協議が決着し、月45時間を超える残業時間の特例は年6カ月までとし、年720時間の枠内でか月100時間と2-6か月平均80時間の上限を設けることとなりました。こういった中、東京商工リサーチから3月10日付けで「長時間労働」に関するアンケート調査の結果が明らかにされています。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから残業があると回答した企業に対して 労働時間が短縮する場合に予想される影響 を問うた結果です。実は、この前に、グラフは省略しますが、残業の有無について、恒常的にあるが7,095社(57.3%)、時々あるが4,504社(36.4%)、「ない」と「させない」が764社(6.1%)との結果が示され、その残業の理由として、取引先への納期や発注量に対応が6,170社(37.6%)、また、人手や時間の不足との結果が示されています。ということで、回答のトップは仕事の積み残しが5,659(28.9%)で2位以下を引き離しています。続いて、受注量(売上高)の減少、従業員の賃金低下となっていますが、影響はないという回答も無視できない割合であります。なら、どうして残業があるのかは理解できませんが、まあ、そうなっているわけです。

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次に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから残業減少の努力をしていると回答した企業に対して 残業削減に取り組んでいる施策 を問うた結果です。回答のトップは仕事の効率向上のための指導が7,123社(37.8%)、次いで、仕事の実態に合わせた人員配置の見直しが5,621社(29.8%)、ノー残業デーの設定が2,981社(15.8%)などとなっています。ひとつの特徴は、ノー残業デーの設定を別にすれば、資本金1億円で境界をつけている規模別に大きな差が見られる点です。人手不足で余裕の乏しい中小企業等では残業削減にも限界があるのかもしれませんし、グラフは省略しますが、この後に残業削減に取り組んでいない理由を問う設問があり、回答のトップは必要な残業しかしていないの901社(51.0%)となっています。

残業削減のための新規採用や設備増強というのは、経営者の頭にはなかったりするんでしょうか?

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2017年3月16日 (木)

PwC による The World in 2050 やいかに?

先月半ばだったと思うんですが、PwC から The World in 2050 と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、PwC のサイトから Key findings を6点引用すると以下の通りです。

Key findings
  • The world economy could more than double in size by 2050, far outstripping population growth, due to continued technology-driven productivity improvements
  • Emerging markets (E7) could grow around twice as fast as advanced economies (G7) on average
  • As a result, six of the seven largest economies in the world are projected to be emerging economies in 2050 led by China (1st), India (2nd) and Indonesia (4th)
  • The US could be down to third place in the global GDP rankings while the EU27’s share of world GDP could fall below 10% by 2050
  • UK could be down to 10th place by 2050, France out of the top 10 and Italy out of the top 20 as they are overtaken by faster growing emerging economies like Mexico, Turkey and Vietnam respectively
  • But emerging economies need to enhance their institutions and their infrastructure significantly if they are to realise their long-term growth potential.

もうほとんど、私のブログくらいのレベルではこれで十分だという気がしますので、後はいくつか図表を引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のテーブルは PwC のサイトから、2016年と2050年の購買力平価で換算したGDP規模のランキングのテーブルを引用しています。中国がトップであることは変わりありませんが、米国は2050年時点では中国に次ぐ2位の座をインドに明け渡して世界3位に後退すると予想されています。我が日本は2016年の4位から後退するとはいえ、2050年時点でもまだGDP規模で世界第8位の実力を誇っています。

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次に、上のテーブルは PwC のサイトから、2050年時点でまだトップ10に入らないまでも、2016年から順位を大きく上げるであろう国をピックアップしています。すなわち、アジアからベトナムとフィリピン、アフリカからナイジェリアです。それぞれ、順位を上げて抜き去る国の数と2016-50年の平均成長率が示されています。

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最後に、上のテーブルは PwC のサイトから、2016年と2050年における中国・インドと米国・欧州のそれぞれの購買力平価換算のGDPの世界におけるシェアを比較しています。当然ながら、新興国代表たる中国とインドはシェアを上昇させ、先進国代表の米国と欧州はシェアを下げています

まあ、方向としては、言われるまでもない事実なんでしょうが、2050年という超長期の先行き見通しに関して具体的な数字をもって示したのが値打ちあるかもしれません。繰り返しになりますが、今世紀半ばの時点においても我が日本はまだまだ世界トップテンに入るGDP規模を持ち続ける、という事実も忘れるべきではありません。

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2017年3月15日 (水)

侍ジャパンがイスラエルを下して全勝で決勝ラウンド進出!!!

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Japan00000503x 8131

今夜は大学時代の友人と飲み会があり、終盤だけしか観戦しておらず、ほとんど試合は見ていないんですが、イスラエルを下して全勝で決勝ラウンド進出でした。先制弾の筒香選手、ジャパンの4番として素晴らしい活躍です。阪神にはこういった決定力がないんですよね。

決勝ラウンドの準決勝も、
がんばれ侍ジャパン!

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東洋経済オンラインによる「就職に力を入れている大学」ランキング100やいかに?

先週金曜日の3月10日に東大の前期試験の合格発表が終わり、ほぼ今年の受験シーズンが終了したような気がしますが、その3月10日付けの東洋経済オンラインでは「就職に力を入れている大学」ランキング100が明らかにされています。取り急ぎ、1位の明治大学から同率55位までのランキングの画像を東洋経済オンラインのサイトから引用すると以下の通りです。

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諸般の事情により、簡単に済ませておきたいと思います。

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2017年3月14日 (火)

侍ジャパンがキューバを再び撃破してWBC2次ラウンドで連勝!

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WBC2次ラウンド第2戦で再びキューバを撃破して侍ジャパンは負けなしの連勝でした。山田選手の先頭打者ホームランと8回のダメ押しホームラン、内川選手の勝ち越し犠牲フライ、投げては最後の牧田投手の見事なリリーフと、文句なしのWBC5連勝でした。これで決勝ラウンドのロサンゼルスが大きく近づいた気がします。

次のイスラエル戦も、
がんばれ侍ジャパン!

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ディムスドライブによる「マスクに関するアンケート」調査結果やいかに?

とても旧聞に属する話題なんですが、2月28日付けでディムスドライブから「マスクに関するアンケート」調査結果が明らかにされています。この季節に私はマスクが手放せず、街中でもマスク着用者が増えたような気がするんですが、その実態はどうなっているのか興味あるところです。まず、ディムスドライブのサイトから調査結果のポイントを8点引用すると以下の通りです。

「マスク」に関するアンケート
  • 風邪や花粉症などの予防のためにマスクを使用する人 約6割
  • マスク使用季節のメインはやっぱり『冬』と『春』。『夏』も1割
  • マスク素材は『不織布(使い捨てタイプ)』が94.8%
  • マスクは『1日使ったら新しいものに交換』56.2%
  • 『ドラックストア』で購入が8割超。 『スーパー』も2割程度
  • 使用しているマスクの"機能・特徴"は『風邪・インフルエンザ・花粉症』予防など
  • 使用してみたい"機能・特徴"では
    『喉を潤す加湿マスク』『メガネ・サングラスが曇らないマスク』なども
  • 『夏に着けても暑くならないマスク』『保湿効果のあるマスク』など…こんなマスクがあったらいいな

ややポイントが多すぎて、長くなってしまいました。最後の2点はどうでもいいような気もしますが、一応、並びで取り上げておきました。いくつか図表を引用しつつ簡単に取りまとめておきます。

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まず、上の図表はディムスドライブのサイトから 予防の為にマスクをするか の質問に対する回答結果です。老若男女合せて60%近い人が予防のためにマスクをすると答えています。まあ、そうかもしれません。こういった調査の取りまとめで、「よくする」+「たまにする」で合計してしまっていますが、それなら、「する」と「しない」2分割で回答させた方が、回答者の負担が少ないんではなかろうか、と私は思わずにいられません。どうせ、大した集計はしないんでしょうから、回答者の負担軽減もそれなりに重要です。

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次に、上の図表はディムスドライブのサイトから マスクを使用する季節 に関する質問の回答結果です。冬と春に多いんですが、やっぱり、花粉症の季節と気温の低い季節の合わせ技なんだろうと思います。私にとっても、マスクは半分くらいは防寒具なのかもしれません。

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最後に、上の図表はディムスドライブのサイトから マスク購入場所 に関する問いに対する回答結果です。やっぱり、ドラッグストアが多くなっています。私も使っているマスクがそもそも有名ドラッグストアのブランドですので、そこにしか売っておらず、ドラッグストアで買っています。

ちょうど1か月前の2月14日にも、@nifty 何でも調査団による「マスクについてのアンケート・ランキング」を取り上げたところなんですが、マスクについてはいろいろと気にかかるところがあり、似たようなアンケート調査結果を失礼しました。

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2017年3月13日 (月)

前月比でマイナスとなった機械受注とプラスに転じた企業物価(PPI)上昇率から何が読み取れるか?

本日、内閣府から1月の機械受注が、また、日銀から2月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比▲3.2%減の8379億円を、企業物価(PPI)のうちのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.0%を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1月の機械受注3.2%減 製造業で反動減
内閣府が13日発表した1月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整値)は前月比3.2%減の8379億円だった。減少は2カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.5%減)を下回った。製造業が前月に大型案件があった反動で2ケタ減となった。非製造業は微増だったが補えなかった。判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業の受注額は10.8%減の3309億円と4カ月ぶりに減った。需要者の業種別では、化学工業(27.9%減)や「窯業・土石製品」(61.4%減)、「非鉄金属」(84.5%減)などで前の月の反動減が出た。
非製造業の受注額は0.7%増の5076億円と2カ月連続で増えた。需要者の業種別では、「金融業・保険業」(57.3%増)や「情報サービス業」(11.3%増)で電子計算機が伸びた。「不動産業」では運搬機械などが伸び、85.4%増だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」受注額(原数値)は8.2%減だった。
内閣府は今回の公表に併せて、季節調整系列の遡及改訂を実施。1-3月期の船舶・電力を除いた民需の受注額を3.3%増から1.5%増見通しへと下方修正した。うち製造業は11.6%増から9.7%増に、非製造業は2.3%減から3.3%減にそれぞれ引き下げた。2016年10-12月期実績は0.2%減から0.3%増に引き上げ、2四半期連続で増加だったとした。
2月の企業物価、前年比1.0%上昇
日銀が13日に発表した2月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は97.9で、前年同月比で1.0%上昇した。前年比での上昇は2カ月連続で上昇率は前月(0.5%)から拡大した。消費増税の影響を除くと14年8月以来(1.1%)の大きさとなった。国際商品市況の改善や原材料価格の上昇を製品価格に転嫁する動きが続いている。
前月比では0.2%の上昇だった。合成ゴムなどの化学製品価格が上昇した。原油や液化天然ガス(LNG)といった国際商品価格の上昇による電力価格の上昇も寄与した。中国のインフラ投資期待から鉄鉱石が値上がりし、鉄鋼製品の価格も上昇した。
円ベースの輸出物価は前年比で2.5%上昇したが、前月比では0.5%下げた。輸入物価も前年比で10.1%上昇する一方、前月比では0.7%の上昇にとどまった。前月比での小幅な円高・ドル安の進行が響いた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している746品目のうち前年比で下落したのは399品目、上昇は271品目だった。下落と上昇の品目差は128品目で、1月の確報値(151品目)から縮小した。
日銀の調査統計局は「国内の需給要因で上昇している品目数は多くない。人手不足の影響が今後の企業物価にどう出てくるかに注目している」との見解を示した。

とても長くなったものの、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

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船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの前月比で▲3.2%減の8379億円を記録しています。生産や輸出などを含めて、今年2017年の1月の統計の、特に、季節調整済みの系列については、中華圏の春節が昨年の2月から今年は1月末にやや前倒し気味でしたので、1月の季節調整値が下振れ要因となっている場合が少なくないと私は感じていましたが、少なくとも、この機械受注に関する限り、引用した記事にもある通り、原系列の前年同月比でも大きなマイナスですので、製造業における反動減、特に、昨年2016年11月に前月比で+8.1%を記録した大きなプラスからの反動減という側面が強いのだろうと受け止めています。昨年2016年1-2月はこれも中華圏の春節による大きなスイングがあり、いずれも季節調整罪の系列の前月比で、1月が+28.5%増の後、2月が▲24.0%減を示しています。もともと、変動の激しい指標ですので、コア指標を設定したりしているわけですが、これくらいの変動はあるのかもしれません。引用した記事にある通り、製造業の産業別では、化学工業や窯業・土石製品、非鉄金属などの減少が大きくなっています。他方、船舶と電力を除く非製造業は底堅く、1月統計でも+0.7%増を記録しています。人手不足の影響によりいわゆる省力化投資が進んでいる印象です。先行きについては、機械受注やその先の設備投資ともに、輸出に牽引された製造業と人手不足や東京オリンピックに伴うインフラ投資による非製造業といった産業別の要因に違いはあるものの、緩やかな増加基調を続けるものと私は考えています。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、1月の国内物価前年同月比上昇率が久し振りにプラスに転じて+0.5%を記録したと思ったら、2月は早くも+1.0%に達しています。何とも、エネルギー価格の大きな影響力の前に、旧来派の日銀理論家とは違う観点から、金融政策の無力さを感じてしまうのは私だけでしょうか。国内物価の品目別に見ると、石油・石炭製品をはじめ、非鉄金属、鉄鋼などの素材も大きな上昇率を示しています。しかし、電気機器や情報通信機器や輸送用機器といった我が国の主要輸出産業の製品群はまだ前年比で下落を続けており、国際商品市況における石油価格の上昇の波及はこの先も続くんだろうと私は考えています。もちろん、この先も物価上昇率がさらに加速するというわけでもなく、せいぜい年央くらいまでの賞味期限ではないかと予想しています。

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2017年3月12日 (日)

侍ジャパンが延長戦のタイブレークを制してオランダに勝利!

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変則的なタイブレークの延長戦を制して侍ジャパンはオランダ戦に勝利でした。中田選手の活躍と9人の投手をつないだ必死の継投でオランダ打線を抑え切りました。日付が変わるころまでの死闘を制して第2ラウンドでも勝利です。

次のイスラエル戦も、
がんばれ侍ジャパン!

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先週の読書は経済学の学術書をはじめとして計6冊!

先週の読書は経済の学術書をはじめとして以下の6冊でした。1日1冊に近いペースですが、半分の3冊は新書と文庫本ですから、それほどのボリュームではありません。これくらいのペースか、もう少し少ないのが理想のような気がします。週に10冊はあまりにも多すぎると思います。でも、昨日自転車で図書館を回ったところ、今週の読書は少し多くなりそうな予感です。

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まず、岩本康志ほか『健康政策の経済分析』(東京大学出版会) です。著者は医療経済学や健康政策に関するミクロ経済学に関する研究者であり、出版社から考えても本書が学術書であることは明らかです。その上、本書のもっとも大きな特徴のひとつは、福井県と東京大学高齢社会総合研究機構による共同研究の一環として、福井県国民健康保険団体連合会が共同電算処理で管理している調査客体について、医療保険レセプト、介護保険レセプト、特定健診・特定保健指導のデータを個人で接合した総合パネルデータを構築してさまざまな定量分析を行っている点です。しかも、データに即して最新の定量分析手法が採用されており、定量分析手法に関する補論も収録されています。ということで、いくつか分析結果を取り上げると、やはり、従来の既存研究で明らかにされるとろもに直観的にも理解されている通り、医療費の集中度は極めて高くなっています。すなわち、上位10%でほぼ半分近く、上位30%では全体の80%ほどの医療費を占めています。しかも平均への回帰は見られず、医療費に大きなウェイトを占めるグループはほぼ固定的です。財政制約が強まる中で、この医療費のかかるグループに対する何らかの処置が必要となる可能性が示唆されています。同様に、医療費抑制の観点から、死亡前1年間の終末期医療についても、医療と介護のトレードオフあるものの、何らかの抑制策の必要性が示唆されています。また、高齢者の社会的入院もまだ解消されていない事実が明らかにされていますし、短期入所療養介護については供給により需要が創出される実態が明らかにされています。福井県だけのデータであり、しかも、医療保険レセプトは国民健康保険に限っていて企業従業員が抜けているおそれが強いわけですから、何らかのバイアスがある可能性は排除されないものの、こういった定量分析に基づく政策評価はこれからも必要になるように私は感じています。ただし、別の観点から、財政制約の強まりという背景はあるものの、必ずしも政策評価が定量分析に基づくものに限られる怖さも感じるべきです。定量分析でムダと評価されても国民に支持される政策はあるわけで、そういった観点からの政策評価も忘れられるべきではありません。

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次に、植村修一『バブルと生きた男』(日本経済新聞出版社) です。著者は日銀OBでバブル前後の時期に当時の大蔵省銀行局総務課にも出向経験あるらしいです。1979年の日銀入行だそうですから、30歳前後でバブルを経験し、その後、バブル崩壊や後始末に追われた世代かもしれません。作なん一昨年あたりから、その昔のバブル経済を回顧する本が何冊か出版され、私も少し読んだりしたんですが、本書についてはパーソナル・ヒストリーですから、しかも、60歳を超えた日銀OBのパーソナル・ヒストリーですから、検証のしようのない一方的な自慢話も含めて、読み進む上で、それなりのバイアスはあるものと覚悟する必要があるかもしれません。何点か目についたところで、バブル経済を知らない世代に参考となるのが広末涼子主演の映画「バブルへGO!!!」だというのは私もそう思います。ちょうど2007年封切りで、その直後に私は地方大学に出向したため、そのころの大学生はバブル経済をまったく知らず、実は、今の大学生は私の倅と同年代なんですが、ここに至ってはリーマン・ショックすら知らなかったりするんですが、結末は別として、この映画はバブル経済をよく理解した人が作っている気がします。それから、日銀OBにしてはめずらしく2000年8月の速水総裁の下でのゼロ金利解除に批判的です。日銀の人は我々役人と同じで無謬主義だと勝手に思っていました。前に読んだ誰か日銀OBの本では、この2000年8月のゼロ金利解除について「間が悪かった」とだけ書いてあって、唖然とした記憶があります。最後に、私はこの著者から少し年下で、いずれにせよアラ還なんですが、私の結婚が大きく遅れたのはバブルで遊び回っていたためではなかろうかと反省しています。まあ、反省してももはやどうにもならないんですが…

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次に、ブルース・シュナイアー『超監視社会』(草思社) です。著者は世界的な暗号研究者、コンピュータ・セキュリティの権威と紹介されています。英語の原題は Data and Goliath であり、2015年の出版です。著者が本書の中で明記しているように、テクノロジーの進歩の影の部分をかなり意図的に拡大して取り上げています。すなわち、特にインターネットの検索履歴、GPS位置情報、メール、チャットやフェイスブックなどのSNSへの書き込み、オンライン決済、オンラインバンキングなどなど、あるいは、単にインターネットの何らかのホームページを見ているだけでも、スマホやパソコンから日々大量の個人データが生成しており、個人が特定されるリスクが大きいと本書は指摘しています。私の知る限りでも、その昔はインターネットの世界は匿名の世界であるといわれていましたが、今では何のプライバシーもありません。何かコトが起これば個人が特定され、その人本人の顔写真、あるいは、家や通っている学校か会社あたりの写真が、おそらく、12時間以内くらいにどこかにアップされかねません。ただ、本書はそのテクノロジーの影の部分を故意に誇張しており、光の部分を小さく見せていることは確かで、個人を特定できなければ利便性が大きく低下する可能性も忘れるべきではありません。そして、本書の著者の巧妙なところなんですが、第1部では企業の個人情報収集を取り上げつつ、第2部では国家、というか政府の個人情報収集、特にインテリジェンス機関のテロ防止のための対応に話をすり替えて、恐怖心をあおっていたりもします。私の考えるに、プライバシーについて著者は意図的に混同してゴッチャにしているんではないかと思います。私の基本的な考えとして、市場参加者としてのプライバシーはもはやないと考えるべきです。何をいくらでいつどこで買ったか、はもはやプライバシーではありません。他方で、夫婦間の寝室での行為や真剣な男女間のお付き合い、シャワールームやトイレでの下半身の画像などはかなり古典的なプライバシーです。ただ、グレーゾーンがかなり広く、真剣なお付き合いの男女が結婚式場を予約した後、キャンセルした、とかはグレーゾーンです。また、個人で完結せずに社会的に波及効果があり、経済学でいうところの外部性の大きな行為や事実もグレーゾーンに入るかもしれません。例えば、伝染性高い疾病はプライバシーではないと考えられますし、性犯罪者の犯罪歴がどこまでプライバシーなのか、どうかは議論あるかもしれません。おそらく、著者はプライバシーを広く考えて情報監視を嫌うでしょうし、逆に、情報を監視しているインテリジェンス機関は狭く考えるバイアスがあることは言うまでもありません。それから、本書では国民の参加による民主主義で決定する理想が高く掲げられていますが、他方で、これも経済学的に考えれば、金融政策のように政府から独立して専門家が司る分野もあり得ます。情報処理、特に情報の監視がどちらなのかも議論すべき課題かもしれません。プライバシーの境目と民主主義か専門家か、この2点が本書ではスッポリと抜け落ちています。

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次に、呉座勇一『応仁の乱』(中公新書) です。とても渋い新書ながら、2016年に注目されたトップ10に入る新書ではないでしょうか。タイトルそのままに、応仁の乱を気鋭の中世史の研究家が解明を試みています。その史料として活用されたのが、奈良の興福寺の別当=寺務が書き残した日記や覚書です。著者自身が冒頭に書き記しているように、応仁の乱はとても有名であって、教養ある日本人であればほとんど全員がその名を知っているんでしょうが、戦乱の中身についてはもちろん、どうして10年余の長きにわたって終結しなかったのか、などなど、それなりに我々の不勉強なところを著者はうまくついているような気がします。私も東軍の細川が西軍の山名に勝って、その結果として、室町幕府の将軍が決まったとか、山名の陣地が今では西陣と呼ばれているとか、よういった表面的な事実は知らないでもないんですが、本書でかなり勉強になりました。私は京都南部の出身で奈良にある中学高校に通いましたから、それなりに奈良の興福寺には通じており、例えば、近鉄奈良駅前に東向き商店街という荷があったんですが、中世から近世初頭にかけて絶大な勢力を誇った興福寺に玄関を向けて建てられたので、そういった名称になったとか、いろいろとあります。でも、京都の特に洛中の京都人が「先の大戦では、このあたりは丸焼けで」という際の「大戦」は応仁の乱であるというのは、決して趣味のよくないジョークだと考えています。

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次に、東野圭吾『雪煙チェイス』(実業之日本社文庫) です。強盗殺人の容疑をかけられた大学生が、アリバイを証明してくれる「女神」を探して、根津が監視員を務めるスキー場にやって来ます。そして、警察の方でも所轄と警視庁の確執があり、それぞれの刑事がスキー場に時間差をもってやって来ます。スキー場では、ゲレンデ・ウェディングの準備が進められる中、監視員の根津や旅館の女将、あるいは、観光に関係するツアー・コンダクターなどなど、スキー場周辺の関係者も容疑をかけられた大学生に加担したり、警察官を助けたりと、いろいろと色分けされる中で、当然ながら、最後は強盗殺人事件が解決されます。当然、容疑をかけられた大学生は犯人ではありません。やや趣向は違いますが、『ゴールデンスランバー』に少し似たところのある逃亡劇です。ただ、『ゴールデンスランバー』と違って、最後の最後にホンの2-3ページの推理で終りますが、強盗殺人事件の犯人は明らかにされ事件は解決します。同じ出版社の『白銀ジャック』と『疾風ロンド』に続く根津シリーズの第3弾なんですが、前作をいくつか読んでいないと、キャラの作りが少し薄いというか、それほど強烈なキャラではないので、スキー場の人の区別がつきにくい気がします。ただ、2-3日の間の出来事で、しかも若い大学生などが、アラ還の私なんぞから見れば、かなりなムチャをしますので、その限りでは、なかなかのスピード感です。スピーディな展開にハラハラドキドキしつつ、サスペンスとともにコミカルな要素も申し分なく、楽しいミステリに仕上がっています。でも、本格的な謎解きに期待すべき作品ではありません。

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最後に、吉川英治ほか『七つの忠臣蔵』(新潮文庫) です。赤穂浪士の討ち入り、仇討など、いろいろな呼ばれ方をしますが、本書は「忠臣蔵」に込められた人間模様を描いた短編7編を集めた短編集です。上の表紙画像に見られる通り、豪華執筆陣ですが、ほとんど故人ではないかという気もしますし、もちろん、最新作ではあり得ません。収録された短編は以下の通りです。すなわち、仇討ち劇の陰に咲く悲恋を描いた吉川英治「べんがら炬燵」、知られざる浅野内匠頭の狂態に注目した池波正太郎「火消しの殿」、剣の達人堀部安兵衛の峻厳たる男気に感動を覚える柴田錬三郎「実説「安兵衛」」、脱盟の汚名を呑んだ槍の名手高田郡兵衛の煩悶を取り上げた海音寺潮五郎「脱盟の槍 高田郡兵衛」、大石の志を試した商人天野屋の大阪商人としての生きざまに着目した佐江衆一「命をはった賭け 大坂商人天野屋利兵衛」、敵役である吉良の何とも表現しがたい精神構造に焦点を当てた菊池寛「吉良上野の立場」、涙腺の緩い読者の滂沱の涙を誘う若き浪士の姿を感動的に表現した山本一力「永代橋帰帆」となっています。私のような時代小説ファンには必読かもしれません。

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2017年3月11日 (土)

非農業部門で235千人の増加を記録した米国雇用統計は利上げを支持するか?

日本時間の昨夜、米国労働省から2月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+235千人増と、市場の事前コンセンサスの+190千人増を大きく上回りました。加えて、失業率も前月から0.1%ポイント下がって4.7%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の3パラだけ記事を引用すると以下の通りです。


Warm weather and rising business optimism helped the U.S. economy to create another burst of job growth last month, giving President Trump an early confidence boost and all but assuring that the Federal Reserve will nudge up interest rates next week.
Employers added 235,000 jobs in February, about as many as in January and well above analysts' expectations and the average monthly payroll growth for all of last year, the Labor Department said Friday,
Friday's report was the first major employment gauge capturing an entire month with Trump as president, and administration officials were so eager to link the unexpectedly strong showing to Trump that White House Press Secretary Sean Spicer broke an obscure federal rule by publicly touting the news within the first hour of the report's release.

この後、さらに政府の報道官の発言やエコノミストへのインタビューなどが続きますが、長くなりますので割愛しました。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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1月の米国雇用統計でアッとびっくりしましたので、2月の非農業雇用者数増加の+235千人増には驚きませんでしたが、もはや、secular stagnation は米国経済には当てはまらないんではないかというくらいの堅調な米国雇用統計でした。雇用者の増加幅はひとつの目安とされる200千人を今年2017年に入って1月2月と2か月連続で上回っていますし、直近3か月でみても増加幅は月平均+209千人と力強さを保っています、しかも、トランプ大統領の重視するメインストリームの製造業雇用も、昨年2016年12月+18千人増、今年2017年1月+11千人増、2月+28千人増と着実に3か月連続で増加を示しています。加えて、失業率も前月から低下を示していますし、こういった好調な雇用情勢を受けて、米連国邦準備理事会(FED)は次回の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げに踏み切るんでいはないかと、大方のエコノミストは考えています。私もそうです。イエレン議長は3月3日の講演会で雇用統計の目安として「月75千から125千人の就業増」を上げており、2月の米国雇用統計の結果は文句なしでこれを上回っていますので、米国労働市場がほぼ完全雇用に達した中で、まだインフレが高まる局面には達していないものの、米国の利上げの確度はとても高いと考えるべきです。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、ほぼ横ばい状態が続いている印象ですが、それでも、12月の前年比上昇率は+2.9%を記録し、2009年6月以来7年半振りの高い伸びを示しています。2月の+2.6%も底堅い気がしますし、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなったと考えるべきです。

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2017年3月10日 (金)

藤浪投手の力投で侍ジャパンが中国に完勝!

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何といっても、今夜の中国戦における侍ジャパンの勝因は藤浪投手の好投に尽きます。2イニングスを無失点4三振の力投でした。いよいよ、明後日は2次ラウンドに入りオランダ戦です。まだまだ、藤浪投手の活躍は続きます。

2次ラウンドも、
がんばれ侍ジャパン!

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本日公表の法人企業景気予想調査に見る企業マインドやいかに?

本日、財務省から1-3月期の法人企業景気予測調査が公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は10-12月期の+3.0からやや下降して1-3月期は+1.3を記録し、先行きについては、4-6月期は▲1.1に落ちた後、7-9月期は+5.4に上昇すると見通されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業1-3月景況感、3四半期連続のプラス
財務省と内閣府が10日発表した1-3月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を示す景況判断指数(BSI)は1.3のプラスだった。プラスは3四半期連続。電子部品や自動車向けの工作機械の販売が好調に推移した。3カ月前の前回調査時点より円安・株高が進んだことも、企業の景気に対する見方を改善させたとみられる。
指数は自社の景況が前期に比べ「上昇」したとの回答割合から「下降」の割合を引いた値。調査基準日は2月15日で、資本金1千万円以上の企業1万2765社から回答を得た。財務省は1-3月期の結果を踏まえた判断を「緩やかな回復基調が続いている」として前回調査から据え置いた。
調査時点の為替レートは1ドル=114円48銭で、前回調査時点より6円35銭円安が進んだ。
大企業のうち製造業、非製造業とも3期連続のプラスだった。製造業全体ではプラス1.1。足元の円安で半導体製造装置や自動車向けの工作機械などが好調だった。逆に食料品製造業は円安による原材料価格の上昇でマイナス12.7だった。
非製造業はプラス1.5。特に良かったのは建設業だ。マンションなどの需要が好調でプラス19.8だった。日銀のマイナス金利政策に伴う収益悪化を懸念し、金融業、保険業はマイナス5.2だった。
調査では2期先までの先行きを聞いている。2017年4-6月期はマイナス1.1、7-9月期にはプラス5.4に転じる見通し。世界情勢の不透明さから企業が先行きの見通しを立てるのが難しくなっているとみられ、財務省は「今後の動きを注視する」としている。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、企業マインドは必ずしもよくないわけですが、少なくとも足元の1-3月期については前期よりBSIが低下しつつもプラスを維持しています。評価の難しいところです。売上高予想が2016年度については減収見込みで、来年度2018年度が増収見通しとなっているものの、足元での売上の伸び悩みが企業マインドに影を落としている可能性があると私は受け止めています。加えて、今年度来年度ともに経常利益が減益見通しとなっているのも影響があるんではないかと考えています。
個別項目では、雇用に引き続き不足感が広がっています。特に人材確保が難しい中堅・中小企業が大企業に比較して人手不足感が大きいとの結果で、産業別では機械で代替できない部分の大きな非製造業の不足感が製造業よりも高くなっています。設備投資計画は全規模全産業で見て、今年度2016年度は前回調査の+2.5%増から+2.0%増にやや下方修正されたものの、底堅い動きを示し、来年度はこの時期にはまだ計画が固まらずに、▲4.6%減と見通されていますが、産業別では製造業ではプラス、非製造業ではマイナスの内訳となっています。

4月3日に公表予定の日銀短観の予想が、今日の法人企業景気予測調査の結果などを受けて、早ければ来週あたりから明らかにされ始めるんではないかと私は考えていますが、そのうちに日を改めて取り上げたいと思います。

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2017年3月 9日 (木)

本日公表の毎月勤労統計に見られる賃金動向やいかに?

本日、厚生労働省から1月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から横ばいを示し、他方で、現金給与指数は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.5%の伸び、特に、そのうち所定内給与は+0.8%増となっています。ただし、消費者物価がすでにプラスの上昇を示しており、物価上昇を差し引いた実質賃金は横ばいとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

実質賃金1月横ばい 物価上昇で押し下げ
厚生労働省が9日発表した1月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月と比べて横ばいだった。名目賃金にあたる現金給与総額は27万274円で前年同月比で0.5%増加した。物価の上昇が実質賃金を名目より押し下げた。実質賃金の力強い回復がなければ、消費の拡大にはつながりにくい。
名目賃金の内訳をみると、基本給を示す所定内給与は前年同月比0.8%増の23万8737円で、00年3月以来16年10カ月ぶりの大幅増となった。ただ雇用形態別にみるとフルタイム労働者の所定内給与は0.4%増で、16年平均の0.6%増を下回る。厚労省はフルタイム労働者比率の増加が賃金を押し上げていると分析する。
企業は将来の人手不足をみこして長く雇える正社員の求人を増やしている。そのためパートタイム労働者比率は前年と比べ0.33ポイント低下した。マイナスに転じるのは08年10月以来8年3カ月ぶりだ。パートと比べて賃金が高いフルタイム労働者が増え、賃金全体を押し上げた格好だ。
消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)は円安や原油相場の持ち直しで前年同月比0.6%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、1番下の3番目のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、景気動向に敏感な所定外労働時間については、中華圏の1月春節効果などにより生産が低下した影響で残業も伸びを鈍化させ横ばいとなっています。先行き、景気が緩やかに回復するとともに、残業を示す所定外労働時間も増加に向かう可能性が高いと私は考えていますが、政府のはたらき方改革やワーク・ライフ・バランスの重視などにより、従来のような景気と残業の連動性は崩れる可能性があるんではないかとも言われており、先行きは景気に従って増加一辺倒ではない可能性もあります。賃金については、特に所定内賃金が前年から大きく伸びました。ただし、消費者物価が昨年10-12月期からヘッドライン指数の上昇率はすでにプラスに転じており、生鮮食品を除くコア指数の上昇率も今年に入ってプラスに転じていますので、さらに大きな名目賃金の伸びがなければ消費を活性化させるには力不足の可能性があります。ただ、上のグラフのうちでも一番下のパネルに示された通り、フルタイムの一般労働者の増加率がパート労働者の伸びを上回り始めました。現在、かなり完全雇用に近いものの、決して完全雇用に到達していない労働市場の状況を考えると、賃金よりも先に正規雇用の増加という形で雇用の質の向上がもたらされるのかもしれません。完全雇用に伴う賃金上昇はさらに時間がかかるのかもしれませんが、よし悪しは別として、少なくともフルタイムの一般職員の方が給与水準が高いですから、引用した記事でも示唆されているシンプソン効果により、パートタイムよりもフルタイム職員が増加するのはそれだけでマクロの所得増につながると考えるべきです。

最後に、サイド・インフォメーションながら、今日の公表から毎月勤労統計の指数が2010年基準から2015年基準に基準改定されています。厚生労働省のお知らせメモにある通り、指数は遡及改定されたものの、増減率は旧基準指数に基づくものから遡及改定されないため、新基準指数で計算している私のブログの増減率と厚生労働省の公式な増減率がビミョーに異なっている可能性があります。悪しからず。

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2017年3月 8日 (水)

侍ジャパンがオーストラリアに勝ってプールBで連勝!

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先発菅野投手の力投と連夜の筒香選手のツーランで侍ジャパンはオーストラリアに勝利しプールBで連勝でした。明後日は中国戦ですが、2次ラウンド進出はほぼ確実でしょうか。

明後日の中国戦も、
がんばれ侍ジャパン!

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年率成長率+1.2%に上方修正された10-12月期GDP統計2次QEをどう見るか?

本日、内閣府から昨年2016年10-12月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.2%を記録しました。外需中心ながら、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率1.2%増に上方修正 16年10-12月改定値
内閣府が8日発表した2016年10-12月期の国内総生産(GDP)改定値の伸び率は物価変動を除いた実質で前期比0.3%増、年率換算では1.2%増だった。設備投資が大きく上振れし、速報値(前期比0.2%増、年率1.0%増)から上方修正した。ただ、QUICKが7日時点でまとめた民間予測の中央値(前期比0.4%増、年率1.6%増)を下回った。
実質GDPの伸び率を需要項目別にみると、設備投資は前期比0.9%増から2.0%増に上方修正した。不動産、建設や食品を中心に設備投資が伸びた。個人消費も0.0%減から0.0%増へと若干改善した。自動車販売が好調だったほか、不振の衣服もやや持ち直した。
民間住宅は0.2%増から0.1%増に引き下げた。不動産仲介手数料が減少した。民間在庫の寄与度は速報値のマイナス0.1ポイントからマイナス0.2ポイントに下振れした。基礎化学や自動車向けの仕掛かり品在庫で下方改定した。公共投資は12月の建築総合統計の結果を受け、1.8%減から2.5%減に下方修正した。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需がプラス0.1ポイント(速報値はマイナス0.0ポイント)となった。輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.2ポイントと横ばいだった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.4%増(0.3%増)、年率では1.6%増(1.2%増)だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期と比べてマイナス0.1%となった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2015/10-122016/1-32016/4-62016/7-92016/10-12
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)▲0.2+0.5+0.5+0.3+0.2+0.3
民間消費▲0.6+0.4+0.2+0.3▲0.0+0.0
民間住宅▲1.0+1.5+3.3+2.4+0.2+0.1
民間設備+0.1▲0.2+1.4▲0.1+0.9+2.0
民間在庫 *(+0.0)(▲0.3)(+0.3)(▲0.3)(▲0.1)(▲0.2)
公的需要+0.3+0.9▲0.7+0.0▲0.0▲0.3
内需寄与度 *(▲0.3)(+0.1)(+0.6)(▲0.1)(▲0.0)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.0)(+0.3)(▲0.0)(+0.4)(+0.2)(+0.2)
輸出▲0.8+0.9▲1.2+2.1+0.5+0.5
輸入▲0.8▲1.1▲1.0▲0.3▲0.2▲0.2
国内総所得 (GDI)▲0.1+1.0+0.7+0.2+0.1+0.1
国民総所得 (GNI)▲0.0+0.6+0.4+0.1+0.0+0.1
名目GDP▲0.2+0.7+0.4+0.1+0.3+0.4
雇用者報酬+0.6+1.1+0.3+0.7+0.0+0.2
GDPデフレータ+1.5+0.9+0.4▲0.1▲0.1▲0.1
内需デフレータ▲0.0▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3▲0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2016年10-12月期2次QEの最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、特に、水色の設備投資と黒い外需がプラス寄与している一方で、灰色の民間在庫がマイナス寄与していて在庫調整が進んでいるのが見て取れます。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、前期比+0.4%、前期比年率+1.6%の成長率が見込まれていましたので、本日公表された実績成長率はこれをやや下回ったものの、少なくとも上方修正という点では一致していました。1次QEでは内需の寄与度がゼロで、外需に依存した成長という印象でしたが、2次QEでは外需の寄与度+0.2%は変わらなかった一方で、設備投資の上振れなどから内需の寄与度が+0.1%に上方修正され、他方、内需寄与度の内数ながら在庫寄与度が1次QEの▲0.1%から▲0.2%に下方修正され、在庫調整の進展をうかがわせる内容となっていて、内外需そろってのより好ましい成長の姿を垣間見ることが出来ます。ただ、消費の伸びがとても低くなっており、法人企業統計などのほかの統計も併せて見た企業部門の収益やGDP統計の設備投資などを考え合わせると、家計部門の苦しさが浮き彫りになっているのも確かです。消費者物価はヘッドライン上昇率は昨年2016年10-12月期からすでに前年比でプラスに転じており、春闘を含めて今年の賃上げで物価を考慮した実質賃金がプラスにならなければ消費の回復が見込めない可能性は残ります。企業サイドでは他の企業が賃上げしてくれて自社が賃上げしないというのが、あるいは、ベストの状況かもしれませんが、マクロ経済の合成の誤謬などから囚人のジレンマ的な状況に陥って、結局、賃上げがまったく実現しない可能性もあります。政府の何らかの所得政策が必要な局面かもしれないと思わないでもありません。この消費の低迷を別にすれば、以下でOECDの「中間経済見通し」Global Interim Economic Outlook, March 2017 を取り上げますが、基本的に我が国経済の先行きについても着実な回復が継続する可能性が高い、と私は考えています。

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また、昨夜、経済協力開発機構(OECD)から「中間経済見通し」Global Interim Economic Outlook, March 2017 が公表されています。上のテーブルはリポートから成長率見通しの総括表 OECD Interim Economic Outlook real GDP growth projections を引用しています。
世界経済は財政政策による景気浮揚策 "boosted by fiscal initiatives" もあって、緩やかな成長を続けると予想されており、日本の成長率も今年2017年+1.2%、来年2018年+0.8%と潜在成長率近傍ないしやや上回る成長と見込まれています。これは円安による生産と輸出の回復に基づいている一方で、引き続き、消費は伸び悩んでおり "consumption spending remains subdued"、我が国の成長見通しは賃上げ次第である "growth prospects will depend on the extent to which wage growth picks up from its current low rate" と結論しています。また、世界経済には石油価格の上昇や金利の上昇といったリスクが残されている、と評価しており、このため、可能な場合は財政による短期的な需要創出に加え、包括的な成長 "inclusive growth" を目指す長期的な構造改革の政策対応の必要性を指摘しています。こらの政策には、労働者のスキルを高め、競争と貿易の障害を取り除き、所得の増加を目指した労働市場政策を組み合わせるべき "These should combine policies to develop skills, remove barriers to competition and trade, and improve labour market policies in a way that raises overall incomes and shares the gains widely." と主張しています。

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最後に、他の国内経済指標に目を向けると、本日、内閣府から1月の景気動向指数と2月の景気ウォッチャーが、また、財務省から1月の経常収支が同じく公表されています。いつものグラフだけ、上の通り示しておきます。

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2017年3月 7日 (火)

WBCが開幕し侍ジャパンが猛打でキューバに勝利!

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侍ジャパンは今日からWBC本戦の日程が始まり、猛打でキューバに圧勝でした。実は、5回の1-7で勝負あったと見て、長々と入浴タイムに入ってしまい、ネットで確認したら、勝っていた、ということです。まあ、我がタイガースの選手は藤浪投手だけしか招集されていませんので、それほど興味はないんですが、それでも、テレビ観戦に熱が入ってしまいます。

明日のオーストラリア戦も、
がんばれ侍ジャパン!

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下の倅が高校を卒業する!

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今日は、下の倅の通う高校の卒業式でした。倅も無事に卒業し、卒業証書その他一式をもらって帰宅しました。というか、ホントは祝賀会だか何だかに行って、まだ帰宅していなかったりします。
下の写真は女房に頼んで撮ってもらいました。卒業式場でのヒトコマです。背広にネクタイ姿が多いようで、我が家の倅もそうだったりします。

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高校卒業おめでとう!

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明日公表の10-12月期GDP統計2次QEの予想やいかに?

先週公表の法人企業統計を始めとして、ほぼ必要な統計が明らかになり、明日3月8日に昨年2016年10-12月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定です。シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の今年1-3月期以降を重視して拾おうとしています。しかしながら、明示的に取り上げているシンクタンクはみずほ総研だけであり、とても長めに先行き予想をリポートから引用しています。ほかは伊藤忠経済研がチラリと触れているだけで、大多数の機関では誠にアッサリとヘッドラインの成長率だけの引用です。2次QEですので、法人企業統計のリポートのついでに取り上げられているものもあります。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.2%
(+1.0%)
n.a.
日本総研+0.3%
(+1.1%)
10-12月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資が上方修正される一方、公共投資、在庫変動は下方修正となる見込み。
大和総研+0.4%
(+1.7%)
10-12月期GDP二次速報(3月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年率+1.7%(一次速報: 同+1.0%)と、一次速報から上方修正されると予想する。
みずほ総研+0.3%
(+1.3%)
2017年の日本経済について展望すると、輸出・設備投資を中心に、景気回復が続くと見込まれる。
今週発表された鉱工業生産(前月比▲0.8%)は市場の事前コンセンサス(同+0.4%)を下回るなど、やや低調な結果だった。もっとも、これは2016年後半の生産が、熊本地震からの挽回生産などのために押し上げられていた反動が表れたものと考えられる。したがって、1-3月期は景気回復に一服感が生じる可能性があるものの、その後の景気は、ITサイクルの改善や中国・鉱工業セクターの持ち直しといった外部環境の改善を背景に、回復が続くとの見方を維持している。設備投資については、国内で五輪関連や都市再開発関連の案件が進捗することなども、押し上げ要因になるだろう。
ただし、個人消費の回復については、引き続き精彩を欠くと予想している。耐久消費財が持ち直していること、株高などを背景に消費者マインドが改善していることがプラスに働くものの、年半ばにかけて見込まれるエネルギー価格の上昇が個人消費の下押し要因となるだろう。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.6%)
16年10-12月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.6%)となり、1次速報の前期比0.2%(前期比年率1.0%)から上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.4%
(+1.7%)
1次速報の段階で既に景気が回復基調にあることは確認されていたが、2次速報ではそうした動きがより明確化する形になる。
伊藤忠経済研+0.3%
(+1.2%)
1-3月期は今年度第2次補正予算で具体化された景気対策の執行が本格化し公共投資が成長を支えるとみられるが、輸出の動向が懸念される中で、景気の持続的な回復には国内民間需要の復調が待たれるところである。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.4%
(+1.7%)
実質GDP成長率が1次速報の前期比年率1.0%から同1.7%に上方修正されるものと予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.6%
(+2.4%)
2016年10-12月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.6%(年率換算+2.4%)と1次速報値の同+0.2%(同+1.0%)から上方修正される見込みである。
三菱総研+0.5%
(+1.9%)
2016年10-12月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.5%(年率+1.9%)と、1次速報値(同+0.2%(年率+1.0%))から上方修正を予測する。

法人企業統計を取り上げた先週のブログでも軽く言及しましたが、1次QEから少し上方改定されるというのが直観的な私の理解です。現在の日本の潜在成長率から見て、かなりな高成長だと私は考えるんですが、メディアなどでは「もっと、もっと」という意見が主流を占めるのかもしれません。まあ、リフレ派エコノミストが一定の比重を占める現在の内閣で重視している物価上昇率が高まらないわけですから判らないでもないんですが、仕上がりの成長率としては十分ではないんでしょうか。下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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2017年3月 6日 (月)

トレンド Express による春節期間中の中国人観光客の動向やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、2月28日付けでトレンド Express から今年の春節期間における中国人観光客の動向について、SNS 上のクチコミを分析した結果が明らかにされています。インバウンド消費はこの先さらに伸びる可能性は必ずしも大きくありませんが、地域によっては貴重な売上に結びついている場合も少なくありません。トレンド Express のサイトからテーブルを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、行った先のランキングは上のテーブルの通りです。昨年の春節時期と同じでトップは沖縄でした。まあ、プレコードの統計調査表に記入してもらっているわけではなく、あくまで、春節の時期にSNS上に出現した地名を拾っているだけですから、場所の統一性はありません。すなわち、トップ5で見ても、清水寺や心斎橋・道頓堀などのピンポイントの建物や狭い範囲の地名があるかと思うと、都市名で札幌が入っていますし、沖縄は県名と解釈するのが妥当なんでしょう。清水寺、表参道、USJが昨年からジャンプアップしてトップ10に入っています。逆に、昨年4位だったラオックスは20位圏外になったようです。観光のコト消費と、買い物のモノ消費のバランスがビミョーに取れているような気がします。また、テーブルは引用しませんが、36位に阿蘇火山博物館が、また、37位に岡崎といった地方がランクインしており、地方分散化が進んでいるといえそうです。

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次に、モノ消費について、商品カテゴリで分類したテーブルが上の通りです。ドラッグストアや家電量販店などで売っている商品が多くランクインしているような気がします。トップ5は昨年から順位が入れ替わっただけで、中身の変更はありません。ジャンプアップしたのは医療器具であり、血圧計、体温」、鼻洗浄などのキーワードが見受けられるようです。背景には健康管理への関心の高まりや日本製の医療器具への注目がありそうな気がします。

かつての「爆買い」と称された中国人観光客のインバウンド消費の勢いはかなり下火になりましたが、まだもう少し中国人観光客のお買い物熱は続きそうな気もしないでもありません。

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2017年3月 5日 (日)

第2回目の日本気象協会桜予想やいかに?

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先週3月1日に日本気象協会から第2回目の桜予想が明らかにされています。上の桜前線地図を見れば理解できるように、都心がトップを切る可能性もあるようです。すなわち、3月の気温は全国的に平年並みかやや高い予想で、桜のつぼみは順調に生長する見込みとなっており、3月22日には全国のトップを切って東京都心(千代田区)をはじめ、福岡市や宇和島市、その後、月末にかけて西日本や東海地方・関東地方の大部分の地点で開花する見込みで、開花から1週間から10日ほどで満開を迎える予想、だそうです。とても楽しみです。

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2017年3月 4日 (土)

今週の読書は話題の村上春樹『騎士団長殺し』ほか計7冊!

今週の読書は話題の村上春樹『騎士団長殺し』第1部・第2部ほか、以下の7冊です。通常は経済書を読書感想文の冒頭に置くんですが、例外的に『騎士団長殺し』を最初に置きました。ほかは新書が多く、なぜか、経済書がありません。というか、『経済数学の直観的方法』の新書2冊だけです。それから、今日はほとんど自転車での図書館回りをしなくなり、逆に、図書館の予約本があまり届いていませんでした。来週の読書はさらにペースダウンしそうです。

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まず、村上春樹『騎士団長殺し』第1部 顕れるイデア編と第2部 遷ろうメタファー編(新潮社) です。作者は言わずと知れた我が国を代表する作家であり、毎年9月や10月になるとノーベル文学賞の候補に擬せられる世界的な小説家です。第1部と第2部ともに500ページを超える大作であり、上下巻ではないことから第3部が続く可能性もあり得るんではないかと期待する読者もいそうな気がしますが、第2部の終わり方からして可能性は小さいと私は受け止めています。あらすじなどはあらゆるメディアで報じられていますのですっ飛ばすとして、参考文献をいくつか上げると、作者ご自身の作品では、異界への進出という点に関しては、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』でやみくろを追うんだか、追われるんだかに似たような気がします。また、その昔に出来た子供の物語としてはエリス・ピータースの修道士カドフェルのシリーズの『氷のなかの処女』でカドフェル自身のパレスチナに残したオリヴィエという20代半ばの息子との邂逅を思い出しました。また、やたらとセックスのシーンが多い点については山内マリコの一連の小説が思い浮かびました。最後に、絵画という点では綾辻行人の一連の館シリーズの幻視者として登場する画家の藤沼一成を連想させました。最後に、第2部の終了部分からは第3部は可能性小さいんですが、逆に、第1部冒頭のプロローグでは異界の川の渡し守の顔のない男が主人公からかつて預かったペンギンのお守りを対価に肖像画を描く約束を求めて訪れるも果たせず再訪を予告するシーンがあり、この部分からは第3部が続くことが期待、というか、予想されなくもありません。たぶん、続くんでしょう。私自身の評価としては、前作の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』よりは格段に読み応えあると考えますが、『1Q84』との比較は第3部が出てから、あるいは、さらにその先の続編が出てから考えますが、現時点では『1Q84』にはかなわない気もします。誰かの個人ブログで見かけたんですが、読んだ人向けながら、とても分かりやすい画像へのリンクを貼っておきます。

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次に、フランク・トレントマン『フリートレイド・ネイション』(NTT出版) です。著者はドイツ生まれで米国ハーバード大学で博士学位を取得した英国のロンドン大学の研究者です。エコノミストというよりはヒストリアンです。英語の原題は邦訳そのままに、2008年のリーマン・ショック前後に出版されています。出版からほぼ10年近くを経過していますが、それほど賞味期限切れという感じはしませんでした。というのは、本書の歴史的なスコープは19世紀後半から20世紀前半の戦間期をもって終了しているからです。地理的なスコープとして英国を対象に自由貿易を論じているわけですが、本書の最大の特徴は、自由貿易を大文字で始まる倫理的あるいは思想的な文化とか信念とかの体系と小文字で始まる取捨選択が可能な経済政策のツールを区別している点で、極めて大雑把にいえば、主として本書の前半で文化や信念の体系としての大文字の自由貿易を論じ、後半では政策ツールとしての小文字の自由貿易を論じています。日本では自由貿易とか、貿易自由化を論じる際に、我が国の消費者団体、主婦連とか地婦連とかは食の安全性の観点から外国産の農産物が入りやすくなる貿易自由化には反対するんですが、英国では、というか、19世紀後半20世紀初頭の英国では消費者自身が安価な食品輸入を求めて自由貿易擁護の傾向を持った点が大きく異なります。経済学的には自由貿易が一国の利益になるのは、不利益を被るグループへ対してその補償を行うという限りにおいて、なんですが、そういった経済学の観点ではなく、本書では世界に先駆けて産業革命を達成し「世界の工場」となった英国の民主主義と自由貿易と資本主義といった思想や信念が国のアイデンティティの形成にどのようにかかわったか、また、20世紀の第1次世界大戦後に米国や他の欧州諸国からの追い上げを受けて英国がもはや世界をリードする大国でなくなり、いかにして自由貿易を放棄して行ったか、といった歴史的な観点から自由貿易、というよりも、一般的な小文字の自由貿易ではない英国独自の大文字の自由貿易に関する思想のようなものの考察を進める本書の読書は、昨年の英国の国民投票によるEU離脱、いわゆるBREXITとか、米国の大統領選挙で当選したトランプ大統領の保護主義的な傾向を有する通商政策などを考える上で、それなりの知的な貢献が出来そうな気がします。大判で500ページ近い大作ですが、それなりの価値はあるかもしれません。日経新聞と読売新聞の書評へのリンクは以下の通りです。

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次に、『経済数学の直観的方法 マクロ経済学編』『経済数学の直観的方法 確率・統計編』(講談社ブルーバックス) です。これはおそらく、私の商売道具に近いという印象を持ったため、『騎士団長殺し』と同じように書店で買い求めました。1週間分の読書感想文で4冊も買った本が取り上げられるのもめずらしい気がします。この2冊はマクロ動学モデルのひとつであるDSGEモデルを理解するための『マクロ経済学編』とブラック・ショールズ・モデルを理解するための『確率・統計編』の2さつであり、どちらも初級・中級・上級の3部構成となっています。ただ、『マクロ経済学編』にはオマケが3章あり、微分方程式の基本思想、固有値の意味、位相・関数解析が収録されています。どのような読者にも対応した作りになっている気がしますが、ある程度の基礎的な理解力あれば、2冊で数時間かければ読み切れると思います。それで、直観的には経済数学のある程度の部分が理解できる可能性があります。その点については素晴らしい本だという気もします。ただ、経済数学はDSGEの動学モデルとブラック・ショールズだけではありませんし、少なくとも、オマケのない『確率・統計編』にノンパラメトリックな確率統計論がオマケで欲しかった気がします。もうひとつ、「これだけ理解できれば、経済学部卒業くらいの知識が身につく」といった趣旨の表現が何か所かにありましたが、経済学部の教員経験者としてカンベンして欲しい気もします。ちなみに、確率統計論のうちのランダムウォークについてのエッセイを地方大学に出向していた際に私は紀要論文で残しています。ネイティブ・チェックもない英文で、数式がいっぱい展開してあって読みにくいかもしれませんが、以下のリンクの通りです。

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次に、NHK取材班『総力取材! トランプ政権と日本』(NHK出版新書) です。著者はNHK取材班ということで、その取材班のトップはNC9のキャスターをしていた大越記者だったりします。ほぼ、昨年いっぱいのトランプ大統領の動向を米国に出向いての取材により明らかにしようと試みています。もちろん、今までのいわゆる「トランプ本」と大きく異なる点はないんですが、締切りが早かった分、やや楽観的なトーンでまとめられ、ひょっとしたらTPPに復帰するんではないか、といったトーンも見られなくもないんですが、それも程度問題です。すでに辞任してしまったフリン前補佐官の就任前インタビューで、米国の最大の脅威は経済であると喝破していたりします(p.171)。でも、トランプ大統領誕生の最大の受益者はロシアのプーチン大統領であろうという点については、多くの識者が一致しているような気がします。やや中途半端な時期に編集された新書ですが、米国大統領の権限がそれほどでもなく、入国制限が裁判所によって簡単にひっくり返されるなど、もう少し大統領制についての取材も欲しかった気がします。

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最後に、森山優『日米開戦と情報戦』(講談社現代新書) です。著者は日本近現代史やインテリジェンスの研究者であり、新潮選書で『日本はなぜ開戦に踏み切ったか』の著者です。この前著は私も出版からかなり遅れて読んだんですが、1940-41年当時の我が国の陸海軍省、参謀本部、軍令部、外務省などの首脳や幹部が対外軍事方針である「国策」をめぐり、迷走の末に対米英蘭戦を採択したわけですが、その意思決定過程をたどり日本型政治システムの致命的欠陥を史料から明らかにしています。本書はその前著の姉妹編であり、日本国内だけでなく戦争相手の米英のインテリジェンスによる情報収集や意思決定についても軽くスコープに入れています。前著と同じように、軍部を含めて我が国政府機関の意思決定における両論併記や非(避)決定について論じるとともに、インテリジェンス活動についても取り上げています。ただし、最後の最後に著者自身が明記しているように、日米英の3か国において、正しい情勢判断を出来たのは、日本でいえば幣原であり、米英でいえば駐日大使であったそうだが、要するに、暗号解読により入手したインテリジェンス情報に接した政府幹部・首脳は強硬論に走って戦争に進む結果になって情勢判断を誤り、オープンソースを主とした情報源と現地情報を肌で知る外交官が戦争回避に動いて正しい判断を下すことが出来た、と論じています。特に、著者は南部仏印進駐が開戦を決定つけたと結論をしていますが、それを正しく見抜いたのは日本では幣原だけだったそうです。日本政府の両論併記や非(避)決定の過程については前著の方が詳しいんですが、タイトルにあるインテリジェンスの活用については本書の方が詳細に渡り、併せて読むとよく理解できるのかもしれません。

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2017年3月 3日 (金)

本日公表された雇用統計と消費者物価(CPI)と消費者態度指数から何が読み取れるか?

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、また、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、さらに、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。雇用統計とCPIは1月の統計であり、消費者態度指数は2月の統計です。いずれも季節調整済みの系列で、失業率は3.0%と前月から▲0.1%ポイント低下し、有効求人倍率は前月から横ばいで1.43を記録し、生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は+0.1%と久々にプラスに転じ、消費者態度指数は前月比▲0.1ポイント上昇の43.1となりました。まず、統計のヘッドラインを報じる記事を日経新聞のサイトから引用すると以下の通りです。

1月失業率、3.0%に改善 求人倍率は1.43倍
総務省が3日発表した1月の完全失業率(季節調整値)は3.0%と前月から0.1ポイント改善した。改善は横ばいをはさんで4カ月ぶりとなる。厚生労働省が同日発表した有効求人倍率(同)は1.43倍と前月と同じだった。雇用情勢は1990年代半ば並みの水準で、サービス業を中心に人手不足が深刻だ。
完全失業率は働く意欲がある人のうち、職がなく求職活動をしている人の割合を示す。2016年6月以降8カ月間は、3.0~3.1%で推移しており、95年並みの水準だ。
男性は3.1%と前月から0.3ポイント改善した。95年9月以来21年4カ月ぶりの低水準となった。女性は2.7%と前月と同じだった。解雇による離職の減少が失業率の改善につながった。失業者(原数値)は197万人で前年同月に比べ14万人減っている。
企業は人手を囲いこむ狙いから、待遇の良い正社員の採用を増やしている。正社員は前年同月に比べ65万人増えたのに対し、非正規は3万人の増加にとどまった。この結果、非正規比率は0.5ポイント低下の37.5%となった。これまでは非正規の採用が中心だった女性や高齢者で、正社員の雇用が増えている。
企業からの求人は高止まりしている。ハローワークに提出された仕事の数を示す有効求人数(季節調整値)は前月に比べ、0.6%増えた。
新規求人数(原数値)を産業別にみると運輸・郵便業(4.8%増)や社会福祉・介護事業(6.5%増)などで増えている。
求人を出しても人手が確保できず、サービスを見直す企業が出ている。ヤマト運輸が宅配便サービスの見直しを検討したり、外食産業が深夜営業をやめたりしている。製造業でも人手不足は深刻で、新規求人は前年同月比7.7%増加した。
当面、人手不足は解消しそうにない。雇用の先行指標とされる新規求人倍率(季節調整値)は2.13倍で、前月を0.06ポイント下回った。下落は7カ月ぶりだが、2倍を超える高い水準で推移している。少子高齢化の進行で生産年齢人口が減少しているという構造問題も人手不足の背景にある。
1月の全国消費者物価、1年1カ月ぶりプラス エネルギー価格上昇で
総務省が3日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が99.6と前年同月と比べ0.1%上昇した。プラスは1年1カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた市場予想の中央値と同じだった。前年同月と比べて原油などエネルギー価格が大幅に上昇したことが寄与した。
生鮮食品を除く総合では全体の56.4%にあたる295品目が上昇し、170品目が下落した。横ばいは56品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.0と0.4%上昇した。エネルギー価格の上昇に加え、キャベツが69.1%上昇するなど一部の生鮮野菜で価格高騰が続いており、指数を押し上げた。今回から新たに公表した生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.3と0.2%上昇した。プラスは40カ月連続。
東京都区部の2月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が99.2と、前年同月比0.3%下落した。下落は12カ月連続だった。エネルギー価格は上昇基調にあるものの、自動車利用の割合が地方に比べて低く、指数への寄与が限られた。中国の旧正月にあたる春節が前年より早い1月に始まったことで、宿泊料などに影響が出た。
2月の消費者態度指数、0.1ポイント低下 3カ月ぶり、先行き不透明感
内閣府が3日発表した2月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下の43.1だった。低下は3カ月ぶり。エネルギー価格の上昇や米トランプ政権の誕生など先行きに不透明感を持つ消費者がやや増えた。ただ3カ月移動平均は上昇傾向にあり、消費者心理の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する4つの指標のうち、「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」の3つが悪化した。1年後の物価見通しは「上昇する」と答えた比率(原数値)は前月より1.2ポイント低い73.7%だった。
調査基準日は2月15日。全国8400世帯が対象で、有効回答数は5610世帯、回答率は66.8%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げると、かなり長くなってしまいました。続いて、雇用統計のグラフは以下の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。

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ということで、雇用指標のうちで遅行指標ながら失業率が低下したので、さらに完全雇用と人手不足の印象が強まりましたが、私は賃金が上昇しないという意味で、まだ完全雇用に達しているわけではないと受け止めています。その傍証ながら、月曜日にはリクルートジョブズ調査による「2017年1月度 派遣スタッフ募集時平均時給調査」などを見つつ、派遣スタッフの募集時平均時給が関東と関西で低下して来ている結果を示した通りです。加えて、昨夜の記事でも、人手不足は受注や売上の伸びとの見合いで人手不足なのか、それとも、賃上げが出来ないくらい利益や売上げが伸びないので採用が出来ない結果の人手不足なのか、との疑問を提示しましたが、派遣スタッフの時給の低下は後者の可能性が示唆されているのかもしれないと考えないでもありません。ただし、引用した記事にも見られる通り、賃上げという質的な待遇改善よりも正規職員採用という質的改善を志向する企業も少なくないようで、それはそれで、完全雇用に近づいているのかもしれません。もっとも、やはり賃上げから消費の喚起が景気や成長の観点から望ましいのはいうまでもなく、例えば、法人企業統計でも利益剰余金だけは大きく積み上がっていますが、個別の企業が景気変動に対する耐性を強めるべく内部留保の確保に走れば、逆に、合成の誤謬を生じて景気回復の力強さを削ぐ可能性もあります。その防止のためには、税制なのか、所得政策なのか、現状では私も結論を得ていませんが、国民生活の安定と成長強化のために何らかの政策が必要なのかもしれません。

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次に、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、とても久し振り、正確には以来のコアCPIのプラスです。ただし、日銀のリフレ策が功を奏した結果、というよりも、国際商品市況における石油価格の上昇の方が影響力が強かったような気がします。いずれにせよ、円安と油価の上昇で今年の年末にかけてコアCPI上昇率は+1%前後まで達するとの見方がエコノミストの間では支配的なように見受けられます。

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最後に、消費者態度指数のグラフは上の通りで、ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は雇用統計と同じで景気後退期を示しています。ということで、消費者態度指数を構成するコンポーネントについて前月差でみると、収入の増え方が▲0.2ポイント低下、暮らし向きも▲0.1ポイント低下、耐久消費財の買い時判断もやはり▲0.1ポイント、他方、雇用環境だけは+0.2ポイント上昇となっています。先月と同じように雇用が消費者マインドを牽引する形です。賃上げ動向と併せて私の気にかかっている収入の増え方については、昨年2016年10月以降で見て、ボーナス効果があったのか唯一12月を除いて、5か月のうちの4か月で前月差マイナスと落ち込んでいます。収入が増えた実感がなく、マインドも上向きませんから、これでは、消費が冴えないわけです。ただ、収入を得る大きな手段のひとつ、というか、おそらく最大の手段である雇用環境については、昨年12月から3か月連続で前月差はプラスです。解釈は容易ではありませんが、株価はそこそこ上がっているようですし、雇用から得られる所得以外の収入が伸び悩んでいるとも思えません。ややです。まあ、±0.1ポイントの上げ下げは誤差範囲かもしれません。統計作成官庁の内閣府でも、基調判断は据え置かれています。

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2017年3月 2日 (木)

帝国データバンク「人手不足に対する企業の動向調査」結果やいかに?

かなり旧聞に属する話題ですが、2月21日に帝国データバンクから2017年1月の「人手不足に対する企業の動向調査」の結果が明らかにされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のポイントを2点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 企業の43.9%で正社員が不足していると回答、半年前の2016年7月調査から6.0ポイント増加した。正社員の人手不足は、過去10年で最高に達した。業種別では「放送」の73.3%でトップとなった。さらに、「情報サービス」や「メンテナンス・警備・検査」「人材派遣・紹介」「建設」が6割以上となった。また、規模別では、規模の大きい企業ほど不足感が強く、「大企業」では51.1%と半数を超えている。大企業における人手不足が中小企業の人材確保にも影響を与えている可能性がある
  2. 非正社員では企業の29.5%が不足していると感じており、半年前から4.6ポイント増加した。業種別では「飲食店」「娯楽サービス」「飲食料品小売」などで高い。上位10業種中8業種が小売や個人向けサービスとなり、個人消費関連業種で人手不足が高くなっている。規模別では、規模の大きい企業ほど不足感は強い。他方、正社員と非正社員の両方で上位にあがったのは「メンテナンス・警備・検査」と「人材派遣・紹介」の2業種にとどまり、雇用形態による不足業種が大きく異なる結果となった

ということで、リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから最近の期間で半年おきに3回の調査における従業員の過不足感を問うた結果のグラフを引用しています。正社員・非正社員ともに不足感がもっとも大きく、逆に、過剰感はもっとも小さくなっています。特徴的な点は、過剰感は正社員の方が非正社員よりも大きいにもかかわらず、不足感は正社員の方が非正社員よりグンと大きいという結果になっています。また、自由回答から企業の声がいくつか取り上げられており、量的に人手不足で受注機会を逃しているという声だけでなく、質的に技術者のスキル(能力)不足も課題となっている様子がうかがえます。さすがに大企業では人繰りは何とかならないでもない一方で、特に、従業員数の少ない小規模企業では人手のやりくりが苦しくなっている企業もあるようです。

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次に、上のグラフはリポートから業種別・規模別の人手不足の現状を表すグラフを引用しています。正社員の不足については、放送でもっとも高く、以下、情報サービス、メンテナンス・警備・検査、人材派遣・紹介、建設のトップ5では60%を超える企業で不足感が広がっています。非正社員の不足では、飲食店が最高で、次いで、娯楽サービスも60%を超えています。以下、飲食料品小売、繊維・繊維製品・
服飾品小売、医薬品・日用雑貨品小売がトップ5であり、トップ10のうち8業種が小売・個人向けサービスといった個人消費関連で不足感が強くなっています。しかし、私の目から見て、受注や売上げが伸びたので企業活動とのとの見合いで人手不足なのか、それとも、賃上げが出来ないくらい利益や売上げが伸びないので人手不足なのか、どちらかが気にかかるところです。
最後に下のグラフはリポートから時系列で見た正社員・非正社員の「不足」割合のグラフを引用しています。正社員・非正社員とも最近10年で不足との回答割合がもっとも高くなっているのが読み取れます。ただ、前のパラの疑問の繰り返しなんですが、受注や売上げが伸びたので企業活動とのとの見合いで人手不足なのか、それとも、賃上げが出来ないくらい利益や売上げが伸びないので人手不足なのか、どちらかが気にかかるところです。

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2017年3月 1日 (水)

本日公表の法人企業統計調査は企業部門の良好な業績を確認! でも家計部門は?

本日、財務省から10-12月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で、売上高は5四半期振りの増収を示し、経常利益は2四半期連続の増益で、しかも、四半期ベースで過去最高を記録しています。すなわち、売上高は前年同期比+2.0%増の338兆3486億円、経常利益も+16.9%増の20兆7579億円でした。また、設備投資は前年同期比+3.8%増の10兆9350億円と、2四半期振りのプラスに転じています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

法人企業統計、設備投資3.8%増 10-12月期 経常利益は最高
財務省が1日発表した2016年10-12月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比3.8%増の10兆9350億円だった。プラスは2四半期ぶり。製造業と非製造業ともに増加した。経常利益は16.9%増の20兆7579億円となり、四半期ベースで過去最高を記録した。
設備投資を産業別にみると、製造業が7.4%増と2四半期ぶりに伸びた。化学や輸送用機械で生産能力の増強などを目的とした投資が増えた。非製造業は1.9%増と3四半期ぶりのプラス。情報通信業で通信設備装置の高速化に対応する投資が増えた。不動産業で商業施設やオフィスビルなども伸びた。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で3.5%増加した。製造業が7.4%増加し、非製造業は1.3%増だった。
経常利益は前年同期比16.9%増の20兆7579億円。増益は2四半期連続。製造業が25.4%増と6四半期ぶりに増加。情報通信機械が不採算事業の売却で利益率が改善。化学では医薬品の販売好調が寄与した。非製造業は12.5%増と2四半期連続でプラス。持ち株会社の子会社からの配当金が増えた。
全産業の売上高は2.0%増の338兆3486億円だった。5四半期ぶりに増収となった。非製造業は2.8%増と5四半期ぶりにプラス。飲食・宿泊業で売り上げが伸びた。資源価格上昇で卸売業も増収となった。製造業は0.1%減と6四半期連続でマイナス。円高で情報通信機械などの売り上げが減少した。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の16年10-12月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。

やや長いものの、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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法人企業統計を見る限り、2015年最終四半期ころから円高に従って企業部門の経済活動には陰りが見え始めたんですが、昨年2016年年央ころに企業活動が底を打ち、2016年10-12月期には企業業績がかなり上向いていることが確認されたと、私は受け止めています。上のグラフの上のパネルにも見える通り、また、引用した記事にもある通り、四半期ベースでは経常利益は過去最高を記録しています。また、グラフの下のパネルでは設備投資が増加の兆しを見せていますが、この法人企業統計の信頼性を考え合わせると、もう少し別の指標を見たり、あるいは、この法人企業統計ももう少し長めに見たい気もします。しかしながら、2014年の消費増税から消費が低迷を続けている現状にあって、指標としては消費に代表される家計部門の停滞と企業部門の業績を突き合わせて見ると、やはり、所得面では企業部門から家計部門へのなんらかの移転が必要としか考えられません。現状の人手不足を考えると、さらに雇用者を増加させるというよりは、基本的には賃上げなが必要んでしょうが、何ともバランスの悪い経済になっている気がします。その上で、現状の財政赤字を考えると財政調整が必要とはいえ、法人税を減税しながら消費税を増税する方向を志向するのは、私の目には疑問が大きいとしか映りません。何らかの所得政策、特に格差を是正し貧困層を底上げするような所得政策、ベーシック・インカムなどの議論を開始すべき時期に差しかかっている気がします。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと積み上がりを見せています。労働分配率と設備投資の対キャッシュフロー比率も、いずれも、やや上昇する兆しを見せたんですが、元に戻ってしまったような気がします。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。

本日公表された法人企業統計などを盛り込んで、昨年2016年10-12月期のGDP統計2次QEが来週3月8日に内閣府から公表される予定となっています。設備投資が上方修正され、成長率もわずかながら上方修正されるんではないかと私は予想していますが、改定幅は小さいと思われます。また、日を改めて2次QE予想として取りまとめたいと思います。

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