やや足踏み続く機械受注と順調に上昇率が加速する企業物価!
本日、内閣府から2月の機械受注が、また、日銀から3月の企業物価 (PPI)が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比+1.5%増の8505億円を、企業物価(PPI)のうちのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.4%を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2月の機械受注1.5%増 製造業で大型案件、2カ月ぶり増加
内閣府が12日発表した2月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.5%増の8505億円だった。増加は2カ月ぶり。QUICKが事前にまとめた民間予想の中央値(3.7%増)は下回った。製造業で大型案件が増えた。非製造業でもその他非製造業などで大型案件が寄与した。ただ基調には大きな変化がないとして、判断は「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。現状の判断は2016年9月から続いている。
製造業の受注額は6.0%増の3508億円と2カ月ぶりに伸びた。需要者の業種別では、パルプ・紙・紙加工品が前月比6.3倍だった。紙パルプ事業者の自家発電向けに、大型の火水力原動機を受注した。食品製造業も生産などの設備需要で76.6%伸びた。
非製造業の受注額は1.8%増の5166億円と3カ月連続で増えた。需要者の業種別では、原子力原動機の大型受注があったその他非製造業が69.0%増と大きく伸びた。卸売業・小売業が25.7%増となったほか、運輸業・郵便業は船舶受注の寄与で22.9%増えた。金融業・保険業の回復基調は続いたが、伸び率は11.8%と前月(57.3%)から鈍化した。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額(原数値)は5.6%増だった。
3月の企業物価指数、前年比1.4%上昇 前月比0.2%上昇
日銀が12日に発表した3月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.2で、前年同月比で1.4%上昇した。前年比での上昇は3カ月連続で、上昇率は前月(1.1%)から拡大した。消費増税の影響を除くと14年7月(1.5%)以来2年8カ月ぶりの大きさだ。前月比では0.2%の上昇だった。プラントの定期修理で供給が減った石油製品の上昇が目立ったほか、燃料費の増加で電力価格も上がった。
円ベースの輸出物価は前年比で3.7%上昇し、前月比では0.3%上げた。中国の需要増加を受けてパラキシレンなどの化学製品の価格が上がった。半導体需要の増加を背景にシリコンウエハも値上がりした。
輸入物価は前年比で12.5%上昇し、14年1月(12.7%)以来3年2カ月ぶりの大きさだった。前月比は1.0%上昇。国際市況の回復で原油やナフサの価格が上昇した。中国で電気自動車(EV)の生産が旺盛でリチウムイオン電池に使われるコバルト地金なども値上がりした。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している746品目のうち前年比で上昇したのは286品目、下落は386品目だった。上昇と下落の品目差は100品目で、2月の確報値(132品目)から縮小した。
日銀の調査統計局は「人材不足が人件費の上昇につながるなかで、価格の転嫁が進むか注目している」との見方を示した。
とても長くなったものの、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、その次の企業物価とも共通して、景気後退期を示しています。

引用した記事にも見られる通り、統計からだけでは読み取れないんですが、記者発表などの場でイレギュラーな大型受注が見られた旨の事実が明らかにされているようです。もしそうであれば、機械受注の2月統計での前月比プラスはサステイナブルではない可能性があり、統計作成官庁の内閣府で基調判断を「、持ち直しの動きに足踏み」で据え置いたのも理解できるところです。パルプ・紙・紙加工品の前月比+533.9%増、食品製造業の+76.6%増などが目立っています。コア機械受注の1-3月期見通しは前期比で+1.5%増だったんですが、3月統計で+10%が必要らしく、エコノミストの間では、この見通し達成は必ずしも可能性が高いとは考えられていません。ただ、先日取り上げた3月調査の日銀短観では、設備の不足感が強まっているとともに、設備投資計画が従来の日銀短観に比べて強気に出ていた点を考慮すれば、機械受注は設備投資の先行指標として先行き緩やかなに伸びるんではないかと期待しています。加えて、世界経済の回復とともに輸出が拡大する可能性が高い点も設備投資の増加をサポートするものと私は考えています。

続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。影をつけた部分は、景気後退期を示しています。ということで、1月の国内物価前年同月比上昇率が久し振りにプラスに転じて+0.5%を記録したと思ったら、2月は早くも+1.1%、さらに、3月は+1.4%に達しています。何とも、エネルギー価格の大きな影響力の前に、旧来派の日銀理論家とは違う観点から、金融政策の無力さを感じてしまうのは私だけでしょうか。国内物価の品目別に見ると、石油・石炭製品をはじめ、非鉄金属、鉄鋼などの素材も大きな上昇率を示しています。しかし、電気機器や情報通信機器や輸送用機器といった我が国の主要輸出産業の製品群はまだ前年比で下落を続けており、国際商品市況における石油価格の上昇の波及はこの先も続くんだろうと私は考えています。ただし、上のグラフのうちの上のパネルでも、スロープは輸入物価、輸出物価、国内物価の順でスティープになっていますが、この傾きでこのまま長らくに渡って物価上昇が加速するわけもなく、国際商品市況における石油価格動向次第とはいえ、今年半ばくらいまでには傾きがフラットになる可能性が高いと理解しています。
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