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2017年4月 4日 (火)

みずほ総研リポートに見る働き方改革の経済効果やいかに?

昨日、4月3日付けでみずほ総研から「働き方改革は日本の成長率を0.5~1.1%Pt押し上げ」と題するリポートが明らかにされています。タイトルから明らかな通り、働き方改革で大きく成長率が押し上げられるという内容となっています。まず、リポートから効果試算のテーブルを引用すると以下の通りです。

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上のテーブルを見ても明らかな通り、成長率押し上げの経済効果は労働投入量と生産性に分かれて試算されています。労働投入量については、もちろん、労働投入を増加させるというよりは減少を抑制するということなんですが、働き手の多様化や柔軟化による担い手の確保が進み、特に、(1) 女性の労働参加の促進、(2) 高齢者の就業促進、(3) 不本意非正規雇用の正規化に伴う労働時間の増加、の3点を見込んでいます。これによる成長率押し上げ効果が+0.4~+0.8%ポイントとなっています。他方、生産性改善効果としては、(1) 過度な長時間労働の解消による効率化、(2) 非正規雇用の正規化に伴うスキルアップ、などにより、+0.1~+0.3%ポイントの成長率押し上げ効果が見込める、としています。この両者を合わせて、+0.5~+1.1%ポイントになるわけです。
おそらく、労働者側、というか、実体としては労働組合ということになるんですが、こういった働き方改革を進めるの政府の姿勢に対してかなりの賛意を持っていて、受け入れに問題は少なかろうと、私は想像しています。ただ、労働サイドについて、疑問はデスキリングがどこまで進んでいるか、です。デスキリングとは、deskilling であり、skill の接頭辞として否定の意味を持つ de をつけ、さらに、ing を接尾辞として付加しています。日本語では「熟練崩壊」と訳されます。個々人というよりはマクロで見て、非正規雇用とか低賃金の未熟練労働としてスキルアップの機会なく過ごしてきた労働力集団が、熟練を積み重ねる可能性や能力を喪失していくプロセスを論じています。我が国でこのデスキリングのプロセスがまだ進んでいないことを願っています。しかし、より大きな問題は使用者の企業サイドです。果たして、デフレ期に染み付いてしまった安価な非正規雇用による企業活動の拡大や業績アップの方法を見直して、デスキリングに至る前に、多様な雇用者を受け入れ、また、非正規雇用を正規職員化してスキルアップなどを進めるなどの企業経営が出来るかどうか、がポイントになりそうな気がします。

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