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2017年5月31日 (水)

大きな伸びを示した鉱工業生産指数(IIP)の先行きをどう見るか?

本日、経済産業省から4月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月比+4.0%の増産を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産、4月は4.0%上昇 自動車伸びリーマン後最高水準に
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比4.0%上昇の103.8となった。上昇は2カ月ぶり。国内販売が好調な乗用車の増産などがけん引し、消費増税前の駆け込み需要が発生した14年1月実績(103.2)を超えてリーマン・ショック後では最高水準となった。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(4.5%の上昇)は下回った。
出荷指数は前月比2.7%上昇の101.1だった。在庫指数は1.5%上昇の111.3だった。在庫率指数は2.9%上昇の114.7となった。経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いた。
生産の増加に比べ、出荷の伸びがやや勢いを欠くことから在庫水準は高止まりしつつある。経産省では「景気拡大期の後半に出ることが多い(企業が需要増を見込む)在庫積み増し局面への転換を若干示唆する結果」とみている。ただ、在庫指数の主な押し上げ要因となっている普通車に関しては大型連休による船便の減少で輸出が滞り、一時的に在庫が積み上がっている可能性もあるとみている。
4月の生産指数は15業種のうち11業種が前月から上昇し、4業種が低下した。輸送機械工業が10.8%上昇したほか、汎用・生産用・業務用機械工業が9.2%、電子部品・デバイス工業が5.2%それぞれ上昇した。
5月の製造工業生産予測指数は前月比2.5%の低下を見込む。大型連休の日並びによる工場の稼働日数の減少などを背景に、輸送機械工業を中心に生産が減少したようだ。経産省による補正済みの試算値では3.5%の低下となる見通し。6月の予測指数は1.8%の上昇となる見込みだ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計をいくつも取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期です。

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最近、今年2017年に入ってからの生産の動きはかなり荒っぽくなっており、季節調整済みの前月比で見て、1月が減産で2月が増産になったのは中国をはじめとする中華圏の春節の影響でいたし方ない気もしますが、3月減産の後で今日統計が発表された4月の大幅増産となっています。さらに、先行きを製造工業生産予測指数で見ると、5月減産の後の6月増産と見込まれており、減産と増産が交互に現れる形となっています。しかも、4月統計以降の大きな振れの主役は我が国のリーディング・インダストリーである輸送機械だったりします。もっとも、5月のゴールデンウィークの日並びがよくて生産ラインの停止が長かったのが5月減産の原因らしいので仕方ない面もあります。ということで、4月の増産について産業別に寄与が大きい順で、輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業と電子部品・デバイス工業の3業種となっています。先行きについては、5月の製造工業生産計画では、輸送機械工業が大きな減産計画となっており、製造工業全体で前月比▲2.5%の低下見込みとなっている一方で、逆に、6月は輸送機械工業とはん用・生産用・業務用機械工業の上昇によって増産計画となっており、前月比+1.8%を見込んでいます。6月の増産幅が5月の減産に届きませんので、6月の生産水準は4月を下回る、ということになります。
ただ、最近の統計を見る限り、生産については拡大基調が確認できると私は受け止めています。もともと、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスも+4.5%の増産でしたし、ほぼこれに近いラインの結果といえます。しかも、生産・出荷・在庫のすべてが前月から増加しています。引用した記事にもある通り、生産の増加に比べて出荷の伸びが勢いを欠いているため在庫が結果として積み上がっている可能性が高いと私は考えていますが、業種によっては先行きの需要増に対応した意図的な在庫積み増し局面に入っている可能性もあります。ただ、グラフは示しませんが、典型的な在庫循環が観察される電子・デバイス産業では4月統計で在庫率が小幅に低下しているのも事実ですから、少なくとも在庫の積み上がりを懸念する必要はないものと受け止めています。予測指数が示されていない7月以降についても、国内の耐久消費財の買い替えサイクルや消費増税後の駆け込み需要の反動などもようやく一巡し、労働市場のひっ迫に伴う投資需要の顕在化も期待できます。加えて、世界経済の回復・拡大に牽引される形で年央以降も我が国の生産は緩やかな増産傾向を続けると私は予想しています。

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2017年5月30日 (火)

好調な経済を裏付ける商業販売統計と雇用統計をどう見るか?

本日、経済産業省から商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+3.2%増の11兆8110億円、季節調整済みの系列で前月比+1.4%増、また、失業率は2.8%と前月と同水準で、有効求人倍率は前月からさらに上昇して1.48のバブル超えを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の小売販売額、3.2%増 資源価格の強含みなど背景
経済産業省が30日発表した4月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比3.2%増の11兆8110億円だった。6カ月連続で前年実績を上回った。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別では燃料小売業の寄与度が最も大きく、前年同月と比べ11.9%増えた。原油価格の強含みを背景に石油製品の価格が上昇した。新型車効果の続く自動車小売業も6.0%増と好調を維持している。軽自動車も4カ月ぶりにプラスに転じた。気温の上昇に伴い春物衣料の販売が伸びたことから、織物・衣服・身の回り品小売業も5カ月ぶりに増加した。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.8%増の1兆5583億円だった。既存店ベースでは1.1%増だった。百貨店は訪日外国人(インバウンド)需要を含めた化粧品などの販売が好調で、既存店ベースでは14カ月ぶりに前年同月を上回った。閉店や改装などの影響で売り場面積が減り、全店ベースでの販売額は減少した。コンビニエンスストアの販売額は3.3%増の9514億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は、次の雇用統計とも共通して、景気後退期です。

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小売業販売額を業種別に少し詳しく見ると、燃料小売業が前年同月比+11.9%増、織物・衣服・身
の回り品小売業が+6.0%増、自動車小売業が+6.0%増、医薬品・化粧品小売業が+5.3%増、電機が含まれる機械器具小売業が+4.1%増、などと、各業種とも順調に売上げを伸ばしています。従って、統計作成官庁である経済産業省でも基調判断は「持ち直しの動き」で据え置いています。ただ、売上げ増の中身は一様ではなく、引用した記事にもある通り、燃料については国際商品市況における石油価格の上昇に起因して販売単価が上がっているのも大きな要因のひとつと考えるべきです。ただ、2番目の衣料関係では、天候要因もあって春物衣料品が売れているようです。5月末の現時点でも、今夏は猛暑が予想されており、季節がメリハリあって夏暑くて冬寒いのは消費の販売増につながる可能性が高いと私は受け止めています。自動車が販売を増加させているのも、自動車産業にとっては国内市場よりも海外輸出市場のボリュームの方が大きいとはいえ、我が国のリーディング・インダストリーなだけに、それなりの波及効果が見込めるんではないかと期待されます。GDP統計の国民経済計算では国内消費の外数で輸出扱いとなるインバウンド消費についても、かつてのような爆発的な伸びは一段落しましたが、引き続き、堅調に推移している印象です。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。引用した記事にもある通り、失業率も有効求人倍率もいずれもバブル経済以降くらいの人手不足を示す水準にありますが、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。私自身の直観ながら、失業率が3%を下回ると賃金上昇が始まると予想していたんですが、先週に取り上げたリクルートジョブズの派遣スタッフの時給調査結果に表れているように、派遣労働者の時給は人手不足と言われつつもここ数か月間は下げており、ようやく、下げ止まりつつあるところです。労働需要サイドで、デフレ経済下で安価な労働力に依存していた低生産性企業が退出し非正規雇用への需要が低下したのかもしれませんし、あるいは、労働供給サイドで、デスキリングが広範に生じているのかもしれません。たぶん、どちらも違うんだろうという気がしますが、素直に人手不足で賃金が上昇する世界がとても遠く感じてしまいます。

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2017年5月29日 (月)

東洋経済オンラインによる「給料への満足度」トップ150社ランキングやいかに?

先週5月26日付けで、東洋経済オンラインから「給料への満足度」トップ150社ランキングが明らかにされています。東洋経済オンラインのサイトから、1位から44位の50社の画像を引用すると以下の通りです。

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お給料の水準が満足度に反映されているのはほぼほぼ確実なんですが、ランキングに見られるように、平均給与が平均より低くても上位にランクインされている会社もあるように見受けられます。東洋経済オンラインのサイトではコメントを分析し、公平で明確な給与制度や、仕事の量や内容、福利厚生も含めた待遇というのも、「給与の満足度」の決定要素には含まれているといえるだろう、と指摘しています。まあ、そうなんでしょうね。

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2017年5月28日 (日)

3カード連続で負け越して首位を陥落し交流戦へ!

  RHE
横  浜006000000 6111
阪  神010000100 240

横浜にボロ負けして、3カード連続の負け越しで首位陥落でした。そして、交流戦が始まります。
帰宅した時点で、まだ4回だったんですが、1-6の大差をつけられ、そのまま押し切られました。まあ、鳥谷選手が先発出場かなわず、福留選手がお休みでしたので、打線はかなり弱体化していたのは確かなんですが、それにしても、打てません。今日も4安打ですから、チャンスがありながら得点できないというよりも、チャンスすらできない気がします。交流戦ではDHも使える場合がありますし、打線の奮起を期待します。

交流戦に入っても、、
がんばれタイガース!

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2017年5月27日 (土)

ホームランの熱烈援護を受け青柳投手が今季初勝利!

  RHE
横  浜000020000 293
阪  神00510201x 982

3回の糸井選手の先制スリーランなどの援護を受け青柳投手が今季初勝利で横浜に完勝でした。
4時過ぎに帰宅すると、すでに甲子園のマウンドには青柳投手の姿はなく、その代打に鳥谷選手が、早くもフェイスガードなしで、左打席に立っていました。
5月にして早くも阪神打線は梅雨入りか、という気にさせられる試合が続いていたんですが、今日の試合はホームラン攻勢で横浜を圧倒しました。これで、糸井選手が復調、ということになればという気がします。投手陣では、何とか青柳投手が6回2失点ですから、打たれながらもQSでした。大差の勝ち試合のリリーフ陣はほぼ完璧でした。

明日はルーキー小野投手を押し立てて、
がんばれタイガース!

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今週の読書は話題の経済書など小説なしで計7冊!

今週は大作の経済書をはじめとして、小説なしで計7冊でした。その昔に、「一日一善」という言葉がありましたが、ならしてみれば、「一日一冊」ということなのかもしれません。大作や力作が含まれていたこともあり、数字的にはややオーバーペースなんですが、うち3冊が新書だったりもします。来週はもっとペースダウンしたいと考えています。

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まず、ケネス S. ロゴフ『現金の呪い』(日経BP社) です。著者はハーバード大学の著名な経済学研究者であり、今世紀初頭には国際通貨基金(IMF)のチーフエコノミストも務めています。英語の原題は The Curse of Cash であり、2016年の出版です。本書ではタイトルに見られる通り、現金のうちの高額紙幣の廃止を提唱しています。すなわち、本書でも何度か繰り返されていますが、現金のないキャッシュレス社会ではなく現金の少ないレスキャッシュ社会を目指しているわけです。そして、その理由は2点あり、脱税や犯罪の抑止であり、典型的にはマネー・ロンダリングの防止です。そして、もうひとつがロゴフ教授の専門分野であり、金融政策へのインプリケーション、特にマイナス金利政策の効果の発揮です。実は、中身については以上で終わりです。実は、日本はGDP比で見て現金の発行残高比率がかなり高い国のひとつで、しかも、1万円札の比率がとても高くなっています。しかも、長らくデフレの状態にありますから、日本語版への前書きにもある通り、ロゴフ教授の考えからして、もっとも高額紙幣の廃止に適した国のひとつということになります。この点については私も異論ありません。日本を離れて、問題となりそうなのは、本書で著者自身も指摘している通り、2点あり、ひとつは途上国などでは、そもそも、銀行口座を保有していない国民が決して少なくない点で、電子マネーやスマートフォンなどを政府から支給して銀行口座を開設させる必要があります。もうひとつはマネーの動きに伴うプライバシーの保護です。そもそも、キャッスレスになればマネーの動きがほとんどリアルタイムで把握できるようになりますから、犯罪や脱税がやりにくくなるメリットがある一方で、個人の消費生活を含むプライバシーも追跡可能になってしまう可能性が高くなります。私はプライバシーについては、すでに何回か表明して来たように、何段階かのプライバシーの違いがあり、個人生活、特にベッドルームなどのプライバシーは当然に守られるべきだと考えていますが、金融取引はもちろん、消費生活などの市場における活動ではプライバシーがなくなっていく方向である点はやむを得ないと考えています。例えば、私は統計局で消費統計を担当していたんですが、対象家計に調査票を記入してもらうのではなく、電子マネーのカードのようなものを統計局から配布して、お給料の振り込みを受け、さらに、支出もその電子マネーですべて行い、統計の対象期間は無条件で電子マネーのお金の出入りを統計局に、リアルタイムでないまでも遅滞なく伝達されるようになっている、というのが究極の統計調査だと思っていました。それが、統計対象家計だけでなく、すべての家計や個人でそうなる可能性が出ているわけで、市場での経済活動についてはプライバシーは諦めるしかないと思っています。

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次に、サミュエル・ボウルズ『モラル・エコノミー』(NTT出版) です。著者は世界的なエコノミストであり、サンタフェ研究所の研究員です。これまで日本ではラディカル・エコノミストとして紹介されることが多かったようですが、本来は、進化社会科学に基づくマイクロ経済学を専門分野とし、少なくとも本書ではとてもリベラルな経済学を展開しています。英語の原題は The Moral Economy であり、2016年の出版です。本書では、進化経済学の立場からリベラルな市民社会における市民の行動原理を明らかにするという、何と申しましょうかで、とても壮大なテーマに挑戦しています。その際、上の表紙画像の副題などにも見られる通り、モラルとインセンティブを対比させる議論を基本にしています。そもそも、アダム・スミス以来の経済学では人間の行動動機の中核に博愛心ではなく、利己心を据えています。ですから、メカニズム・デザインをひもとくまでもなく、制度や政策を設計する際には、この利己心をうまく活用するインセンティブを組み込むことで、人間や企業を最適状態に導くことが可能であると考えられてきました。しかし、本書では人間の不合理性ではなく契約の完備制の問題からスミス的な見えざる手は有効ではなく、インセンティブに基づく制度や政策に疑問を呈しつつ、逆に、金銭的なインセンティブは人間が元来もっている責任、義務、利他性といった「市民的な徳」を、かえって弱める可能性を指摘しています。例えば、託児所での子供の引き取りの例などから、罰金による特定の行動の抑制が、罰金が遅刻対する対価と解釈される可能性として誤って受け止められたり、あるいは、広くインセンティブのもつ他律性が、人間の自律性を抑える可能性について、インセンティブに依存する制度設計に対する批判となっています。リベラルな市民社会では、参加の自発性、選好の中立性、パレート効率性の3者はリベラル・トリレンマにより同時には成立せず、制度設計の際は、インセンティブに頼るのではなく、互恵的で他者考慮的な価値を育み、人々が協力に向かうようルール形成する必要がある、というのが本書の結論となっています。ただ、市場における行動を分析しようとするマイクロな経済学では価格のシグナルというインセンティブがかなり有効である一方で、家族や市民社会における非経済的な行動ではインセンティブよりもより自律的な行動原理、特に、市民的な徳をもってする行動原理を考慮する必要があり、実際には行動経済学的な試行も必要になるような気が私はしています。なかなかの大作です。

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次に、サミュエル・ボウルズ&ハーバート・ギンタス『協力する種』(NTT出版) です。著者は2人ともサンタフェ研究所の研究者であり、本書の英語の原題は A Cooperative Spieces であり、2011年の出版です。邦訳のタイトルは直訳だったりします。本書はサンタフェ研究所系の研究者の著作らしく、とても学際的な仕上がりとなっています。ある意味で、文化人類学であり、また、進化社会学であり、私のようなエコノミストにとっては実験経済学とゲーム理論で人類の協力の進化の過程を明らかにしようと試みているように見えます。前に取り上げたボウルズ『モラル・エコノミー』と同じで、契約の不在もしくは不完備性から済素敵な見えざる手の役割が不十分となるとの仮定から議論を進めています。ゲーム論的に数学が駆使されており、しかも、パラメータに実際の数値例を援用したシミュレーション結果もいくつか示されています。基本的には、人類の利他性の涵養と協力の進行、ないし、利他的もしくは協力性の高いグループの生存可能性の高まりや繁殖可能性の増大などに関して、理論モデルの構築という壮大な試みなんですが、とてもリベラルな内容になっています。結果的に、人類間で協力を支える制度が共進化する条件を理論モデルを基にして明らかにしつつ、同時に、文化人類学や古生物学・考古学、さらには、遺伝学などの各種の実証データを自由自在に利用して、極めて長期に渡る人間進化の歴史が、抽象度の高い数理モデルによってうまく捉えられているの事実を主張しています。ハッキリいって、大学院も博士後期課程のテキストにも利用できるくらいのレベルの本ですので、立論の基本となっているプライス方程式をはじめ、専門外の私に十分理解できたかどうかは自信がありませんが、ゲーム理論を基盤として人間の社会と心の進化を説明しようとしたことに、私はびっくりしてしまいました。最後の解説で細かな用語法に関する瑕疵が指摘されていたりしますが、物の数ではありませんし、著者と解説者のレベルの違いすら悲しく感じられます。最後に、付録として12のテーマに渡ってテクニカルな解説がなされているんですが、その中のA2のエージェントベースモデルについてはとても参考になりました。こういった付録も、ひと通りは読み飛ばしておくべきかもしれません。

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次に、池田純一『<ポスト・トゥルース>アメリカの誕生』(青土社) です。著者は電通ご出身のコンサルタントであり、各党予備選の段階から昨年2016年の米国大統領選挙をたんねんに取材し、WIRED.jp に連載されたリポートを取りまとめて本書を発行しています。本書にもある通り、タイトルとしている post-truth とはオックスフォード英語辞典の用語であり、客観的な事実より感情的で個人的な信念の方が世論形成に影響を与える状況のことを指す、という意味らしいです。このあたりは受け売りです。本書のはしがきの段階から、本書のリアルタイムのリポートは「あてが外れた」感いっぱい、と著者自身が称している通り、予備選途中から米国大統領選挙でトランプ現大統領が本選でクリントン候補をかわして当選し、さらに、ごく初期の政権移行段階までをフォローしています。ただ、始まりの時点は予備選すべてではなく、例えば、いわゆるスーパーチューズデーは含まれていません。その米国大統領選挙をリアリティショーと位置づけ、意図的な炎上を含む本音トーク的なトランプ大統領自身によるツイート、フォロワーによる拡散とそれに伴うバズの拡大、テレビなどのマスメディアでの取り上げ、さらなる話題性の向上、知名度をさらにましたトランプのさらなるツイート、以下同様……というメディア・サイクルの循環が大統領選挙をハックし、それこそがトランプ大統領ののメディア戦略ではなかったのか、そしてそれが当選につながった可能性を指摘しています。まあ、いわゆるラスト・ベルトのヒルビリーによるトランプ支持の高さなども触れられていますが、大統領候補者によるテレビでのディベートなど、ほとんど政策論議らしきモノがなかった米国大統領選挙をメディア戦略で締めくくるのは、エコノミストとしてはやや疑問が残りますが、まあ、そうなのかもしれません。特に、クリントン候補が予備選の段階でウィリアムス候補に対抗するために、政策的に左寄りに軸足を移行させた、といったあたりは、TPPに対する態度など、私にも納得できる部分が少なくありませんでした。新聞やテレビといった伝統的なメディアを通じて米国大統領選挙はそれなりに進化を示し、例えば、ケネディがニクソンに勝利したのはテレビ討論会の影響が大きかった、などの歴史的事実もある一方で、昨今のIT技術の発展とそれを背景とするソーシャル・メディアは米国大統領選挙にとどまらず、先進国の意思決定に大きな変更を迫っています。そこに、サイバー攻撃的な介入、本書でもロシアによるサイバー攻撃の可能性が示唆されていますし、そういった動きに応じて、世論が短期に大きくスイングする可能性も含め、民主主義下での意思決定に及ぼす影響を考え直す時期に来ているのかもしれません。

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次に、亀田達也『モラルの起源』(岩波新書) です。著者は今は東大に移ったようですが、長らく北大でご活躍だった心理学の研究者と記憶しています。本書では、タイトル通りのモラルの起源について心理学的な探求を試みています。はじめにで、いきなり、文部科学省の通達に示された文系不要論への反論から始まり、ひと昔前の国立大学法人化反対論と同じで、大学教員のとても強い現状維持バイアスとか、研究者の視野の狭さに怯みがちだったんですが、まあ、200ページ足らずの小論ですし、何とか読み終えました。第1章では、進化論でよく使われる適応について簡単に検討した上で、自然だけではなく社会生活とまでいわないものの、何らかの群れの生活への適応について論じ、類人猿の脳が発達した原因も、群れの生活で求められる情報処理量の増大によるものと位置づけます。第2章で、人類と同じように、社会性のあるハチやアリと言った今空に着目しますが、このあたりは私には理解できませんでした。そして、第3章で利他性、第4章で共感と進み、最後の第5章で最後通牒ゲームという経済学的な実験も援用しつつ、分配のトピックに入り結論となります。ただ、最後通告ゲームなどでは市場経済の発達度合いによって分配のあり方の規範が異なることが論じられますが、日本を始めとする先進国での議論ではありません。サンデル教授の議論や著作などでで有名になったロールズ的な正義の問題とも関連しますが、私が不明なのは、人間は損得の観点から合理的にモラルを涵養するのか、それとも、損得の観点を超越してモラルを持つのか、という点です。多分、後者だろうと思うんですが、合理的にモラルを身につけるのか、必ずしも合理的でないのかは、エコノミストとしてはとても気になります。

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次に、三谷太一郎『日本の近代とは何であったか』(岩波新書) です。著者は長らく東大で政治学の研究者をしていた政治外交史の大御所です。明治維新以降の近代日本について、欧州をモデルとしつつ、政党政治を生み出し、資本主義を構築し、植民地帝国を出現させ、天皇制を精神的枠組みとした日本の近代をバジョットに依拠しつつ、これら近代日本の4本柱を歴史的、理論的に解き明かそうと試みています。幕藩体制下の合議制や月番制が、明治憲法下の議会制と内閣制などの権力分立制につながり、藩閥政治から政党政治が作られた一方で、特に、バジョット的な議論による統治については日本における定着が十分ではなかった可能性を示唆しています。ただ、幕藩体制下から統治システムとしては日本はかなり立派なパフォーマンスを示していた点も強調されています。資本主義の構築についてはマルクス主義的な資本の原始的蓄積を重視し、後発の資本主義国として民間資本ではなく国家による殖産興業が主要な資本蓄積の手段だったと結論しています。植民地の形成は、あるミニで、侵略でもありますが、その当時の世の習いだったような気もします。本書では、貿易、特に自由貿易と関連付けて議論されています。最後の精神的な支柱としての天皇制については、とても興味深い視点が提供され、すなわち、欧米諸国のようなキリスト教のバックボーンのない日本におけるキリスト教の代替であった、と主張しています。中でも、天皇の署名の後に内閣総理大臣以下の国務大臣の責任を示す副署がない教育勅語を取り上げ、憲法にすら縛られない神聖不可侵な天皇による絶対的な規範となった過程を跡付けています。バジョット的な思考による近代日本の解明はそれなりに私も理解できたんですが、別口で、ハーバーマスの公共性の議論を援用しつつ、政治的コミュニケーションを可能にした文芸的公共性の観点から、森鴎外の一連の史伝ものを読み解く方については、私は理解がはかどりませんでした。教養の不足を実感します。加えて、戦後の吉田ドクトリンに基づく強兵なき富国が2011年3月11日の震災で終了したというのも理解できませんでした。お恥ずかしい限りです。

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最後に、齋藤純一『不平等を考える』(ちくま新書) です。著者は早稲田大学の研究者であり、専門分野は政治理論・政治思想史だそうです。本書は3部構成となっていて、第1部で市民社会における市民の平等な関係について問い直し、第2部ではそういった市民の平等な関係を構築する支えとなる不安定への対応としての社会保障を論じ、最後の第3部では延々とデモクラシーを論じています。とても申し訳ないんですが、私の読解力の不足からか、第3部のデモクラシー論がどこまで格差や不平等と関連付けられているのか、私には読み取れず、著者が不平等に引っかけて自説を延々と展開しているに過ぎない、と感じられてしまいました。特に、何ら明示的な表現はないものの、「熟議民主主義」の賞賛は最近の政治動向を背景としているんだろうと、私は勝手に想像したものの、それが不平等や格差とどう関連しているのかは、本書からは読み取ることができませんでした。デモクラシーがキチンと機能しないと不平等の克服は出来ないということなのかもしれませんが、それなら第2部の社会保障は何なんだ、ということにもなります。ということで、少し不満の残る面もあり、特に、所得や経済的な面から社会保障を不平等に関連付けるのは、少なくとも私にはハードルが高いと感じられました。本書ではベーシック・インカムは否定的にしか取り上げられていませんが、平等化の推進、というか、不平等の克服を社会保障に期待するのは財源の面で、かなりコスト・パフォーマンスが悪い気がします。本書では、熟議民主主義についても、実際に熟議にコストをかけている例を持ち出していますが、そもそも投票に行くコストすら負担しようとしない主権者が何割かいるわけですから、例えば、熟議民主主義を達成するコストを負担できる人だけがデモクラシーを構成するとすれば、逆の意味で不平等につながりかねない危険を感じます。制度や政策を最善のものにしようとする努力はいいとしても、エコノミストとしては、コストを考えずにベストを追い求めるのにはムリがありそうな気がします。でも、本書ではこれも明示されていませんが、就職氷河期のころ卒業した非正規雇用を解消するには、それなりの財政負担も必要なのかもしれないと思ったりします。

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2017年5月26日 (金)

プラスを続ける消費者物価(CPI)及び企業向けサービス物価(SPPI)の先行きを考える!

今日は物価統計が2本、すなわち、総務省統計局の消費者物価指数(CPI)企業向けサービス物価指数(SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも4月の統計です。生鮮食品を除くコアCPIの前年同月比上昇率は+0.3%と、今年に入ってから4か月連続でプラスを続けている一方で、ヘッドラインSPPI上昇率は+0.7%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.7%と、徐々に上昇幅が拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の全国消費者物価、0.3%上昇 都区部は1年5カ月ぶりプラス
総務省が26日発表した4月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.1と、前年同月比0.3%上昇した。プラスは4カ月連続。ガソリンなど石油製品の価格上昇が大きく寄与したが、QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.4%上昇)は下回った。
生鮮食品を含む総合では全体の56.6%にあたる296品目が上昇し、168品目が下落した。横ばいは59品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.3と0.4%上昇した。イカなど一部魚介類の上昇が続いた。生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.7と横ばいだった。
併せて発表した東京都区部の5月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が100.0と、前年同月比0.1%上昇した。プラスは2015年12月(0.1%上昇)以来1年5カ月ぶり。石油製品の上昇に加えて、うるち米や牛肉など生鮮食品を除く食料が寄与した。生鮮食品を含む総合は100.1と0.2%上昇した。
4月の企業向けサービス価格、前年比0.7%上昇 広告が鈍化
日銀が26日に発表した4月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.7で、前年同月比で0.7%上昇した。前年同月比での上昇は46カ月連続。ただ、上昇率は5カ月ぶりに縮小(前月は0.8%上昇)し、前月比では0.2%の下落だった。広告の上昇率縮小が主因で、土木建築や宿泊などの諸サービスの上昇率も鈍化した。
広告を種類別に見ると、テレビ広告は3月にスポーツ特番などで押し上げられた反動で伸び率が縮小した。新聞広告は飲食店の全面禁煙の検討でたばこ会社が広告の出稿に慎重になった影響もあり、3月の上昇から4月は下落に転じた。
諸サービスのうち、土木建築は引き続き人件費が上昇しているものの、上げ幅は前月より小さかった。宿泊サービスは4月の訪日外国人客数が過去最多となったものの、近畿を中心に民泊の利用が多かったことやホテルの建設ラッシュを受け、値上げの勢いが鈍化した。
一方、人手不足による人件費の上昇を背景にした情報通信、燃料費の上昇による運輸・郵便の伸び率が拡大した。
企業物価指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち、消費税の影響を除くと前年比で価格が上昇したのは75品目、下落は30品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は45品目と、3月の確報値(20品目)から25品目拡大し、15年1月以来の大きさだった。
日銀の調査統計局は「企業間のサービス需給は大きな価格上昇につながるほどには逼迫していない」との見解を示した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、物価統計を2本も取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。なお、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。加えて、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。

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現状での物価上昇は財関係ではエネルギーが、そして、サービスでは人手不足が物価上昇を牽引しているように見えます。コアCPIの前年同月比上昇率は、今年に入ってから4か月連続でプラスを記録し、小幅ながらジワジワと上昇幅を拡大しています。私の計算によれば、コアCPI上昇率に対してエネルギーの寄与は+0.34%ありますので、ほぼすべてを説明しつくしているカンジです。また、長らくマイナスを続けていた東京都区部のコアCPIが久し振りにプラスに転じています。上のグラフでは灰色の折れ線グラフです。東京都区部の物価は、最近その傾向が崩れつつあるとはいえ、全国物価の先行指標と考えられており、先行きについても、全国ベースで秋口くらいまで上昇率のプラス幅が拡大するものと私は予想しています。ただ、おそらく、あくまでおそらくの直観的な理解ですが、日銀の物価上昇目標である+2%には今年中に届こうハズもありません。そして、国際商品市況の石油価格も、この先さらに上昇するようには見受けられませんから、早ければ年内くらいタイミングでコアCPIの上昇ペースは鈍化し始める可能性が高いんではないかと考えています。まとめれば、今年2017年10月前後くらいまでコアCPIは上昇幅を拡大させるものの、日銀の物価目標である+2%には届かず、その後、年内には上昇ペースが鈍化し始める可能性が高い、と私は受け止めています。企業間取引では4月は価格改定期なのでしょうが、何分、消費者物価にはこういったタイミングは設定されていない品目も多く、企業物価と同じような価格改定は見受けられなかったように思います。

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続いて、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、SPPI上昇率は今年2016年2-3月の+0.8%から小幅に縮小を示し、4月は+0.7%となりました。引用した記事にもある通り、広告が3月の+2.8%上昇から4月には+0.7%と大きく上昇率が鈍化しています。人手不足の影響については、土木建築サービスが引き続きたい相上昇率ながら3月の+6.1%から4月には+4.7%と上昇幅をやや縮小させている一方で、情報通信は3月の+0.2%から4月は+0.5%に加速を示しています。なかなか一様ではないものの、全般的に底堅いサービス物価の動向が垣間見える気がします。

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2017年5月25日 (木)

鳥谷敬、フェイスガードで代打に登場!

  RHE
読  売010000000 161
阪  神40200000x 690

6回、フェイスガードで打席に立った代打鳥谷選手に甲子園が割れんばかりの大歓声で揺れました。ゲームの方は、先発メッセンジャー投手のナイスピッチングに打線が奮起し、鳥谷選手の代役キャンベル選手が3打点を上げるなど、巨人に快勝でした。
帰宅した時点で、すでに序盤を終えて6-1の大量リードだったんですが、そのまま終盤まで得点は入りませんでした。要するに、得点シーンは見逃したことになります。それに余りあって、6回ツーアウトながら鳥谷選手が代打で登場した際には涙がこぼれそうになりました。結果は平凡なサードゴロでしたが、強烈な存在感を見せつけました。

明日の横浜戦は藤浪投手を押し立てて、
がんばれタイガース!

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東洋経済オンライン「日本企業の進出が加速している国トップ20」やいかに?

私は東南アジアはASEANの大国であるインドネシアの首都ジャカルタに家族とともに3年間の長きに渡って、インドネシア政府の国会開発企画庁にJICA専門家として派遣されていたことがあるんですが、先週金曜日5月19日付けで、東洋経済オンラインに「日本企業の進出が加速している国トップ20」のランキングが明らかにされています。タイトルがビミョーなんですが、おそらく、あくまでおそらくなんですが、日本企業がもっとも多く進出しているのは米国だろうという気がする一方で、それではランキングにならないようなカンジですから、日本企業の進出が加速している、という表現で日本企業の現地法人数につき、直近の2016年と5年前の2011年を比較しています。以下の通りです。

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東南アジアの中でも、ASEAN創設時の5か国、すなわち、インドネシア、マレーシア、シンガポーる、タイ、フィリピンといった国々もさることながら、これらから少し発展段階が後になるインドシナ半島のミャンマー、カンボジア、ベトナム、あるいは、中南米の大国であるメキシコやブラジルなどが目につきます。また、5年後、10年後はランキングが大きく変わっている可能性も否定できません。中国が20位までにランクインしていないのも、ある意味で、注目すべきなのかもしれません。

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2017年5月24日 (水)

能見投手の好投も報われず援護なくリリーフ陣が失点して巨人に連敗!

  RHE
読  売000000012 370
阪  神000000001 140

好投の能見投手に援護なくリリーフ陣が失点して巨人に連敗でした。昨夜のリプレイのような敗戦でした。鳥谷選手へのデッドボールが心配です。
これまた昨夜と同じく、帰宅した時点でまだ得点なく、8回に勝ちパターンのリリーフ桑原投手が失点し、さらに9回には藤川投手が傷口を広げ、9回ウラの上本選手のホームランもあだ花となりました。相変わらず3番糸井選手がブレーキで、今夜はバントが出来ませんでした。岡田彰布さんの解説が厳しかったです。

明日はメッセンジャー投手をしっかり援護して、
がんばれタイガース!

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リクルートジョブズの派遣スタッフ時給は下げ止まったか?

明週火曜日に失業率や有効求人倍率などの雇用統計が公表される予定となっていますが、先月も取り上げているリクルートジョブズの非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の4月の調査結果が明らかにされています。リンク先は以下の通りです。

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ということで、アルバイト・パート及び派遣スタッフそれぞれの募集時平均時給の推移は上のグラフの通りです。前者のアルバイト・パート順調に賃上げがなされているんですが、派遣スタッフについては3月統計ではとうとう前年同月比で▲2%を超えるマイナスを記録した後、直近の4月統計では▲0.4%減までマイナス幅を一気に縮小しています。実は、同じ業界の「エン派遣 三大都市圏の募集時平均時給レポート」でも4月の派遣スタッフ時給は昨年2016年10月から7か月連続でマイナスを記録したものの、3月の▲2.1%減から4月は▲1.7%減と、極めてわずかながらマイナス幅を縮小させており、いずれの調査でも派遣スタッフ時給は下げ止まった可能性が示唆されていると私は受け止めています。
両社でビミョーに職種の分類が異なるので何ともいえないんですが、エン・ジャパンのデータでは2015年年央くらいから2年近く医療・介護系の派遣スタッフ時給がマイナスを続けており、リクルートジョブズでも医療介護・教育系は必ずしも上昇圧力が感じられません。もっとも人手不足していそうな業界なんですが、同時に、もっとも規制の強い分野でもあり、政府の規制により賃金が上昇していない可能性も否定できません。民間企業に賃上げを促すのも重要ですが、もしも、政府の規制によって医療・介護分野で賃上げが抑制されているのであれば、民間企業に圧力をかけることとは別にやるべきことがあるような気もします。

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2017年5月23日 (火)

息詰まる投手戦ながら秋山投手に援護なく巨人に完封負け!

  RHE
読  売000000100 160
阪  神000000000 070

秋山投手に援護なく投手戦を落として巨人に敗戦でした。2週間前と同じ秋山投手と菅野投手の対決でしたが、2匹めのドジョウはいませんでした。
帰宅した時点でまだ得点なく、6回ウラの攻撃が無得点に終わった後、7回表に均衡が破れます。しかし、そのウラのラッキーセブンの攻撃はノーアウト1-2塁のチャンスをつかみながらも三者連続三振で得点ならず、最終回もチャンスありながら完封されてしまいました。秋山投手のピッチングは菅野投手に決して劣りませんでしたが、打線が沈黙し、特に、3番糸井選手がブレーキです。

明日は能見投手を押し立てて、
がんばれタイガース!

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東京商工リサーチによる「労働基準関係法令の違反企業332社」企業実態調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、5月17日に東京商工リサーチから「労働基準関係法令の違反企業332社」企業実態調査の結果が明らかにされています。昨今、就職戦線では売り手市場が続く中で、いわゆる「ブラック企業」に関する注目が高まっており、労働基準関係法令の違反企業がそのまま「ブラック企業」であると主張するつもりはありませんが、例の電通新入社員自殺事件も含めて、政府の働き方改革が進められているところ、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。なお、基となるデータは厚生労働省から公表されている以下の文書です。pdfファイルを開けば300社余りの企業の実名がズラリと並んでいます。ページ番号は振っていないんですが、電通はp.15の東京労働局の4番目に出現します。

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ということで、上のテーブルは東京商工リサーチのサイトから 労働基準関係法令違反 一覧公表企業 産業別 を引用しています。まず、テーブルに入る前に、公表された334件のうち、違反した労働基準関係法令の内訳は、労働安全衛生法違反が211件59.1%に上っており、建設作業現場や製造現場などでの安全管理義務を怠ったことで事故が発生したケースが中心になっています。次いで、違法な長時間労働などの労働基準法違反が63件17.6%、賃金未払いや最低賃金を遵守しない最低賃金法違反が62件17.3%と続いています。上のテーブルから明らかな通り、産業別で最多は建設業で115社34.6%、次いで、製造業の76社22.8%、サービス業他68社20.4%の3産業が突出し、この3産業で全体の約8割を占めています。もっとも、全体の企業数なり何なりでスケーリングする必要があるのかもしれませんが、そのあたりは不明です。なお、建設業と製造業の合計191社では、労働安全衛生法違反が156社81.6%と8割に達しています。

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次に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 労働基準法違反63社 産業別内訳 を引用しています。先ほどのテーブルが危険に関するものでしたが、上の円グラフは社会問題化している時間外労働の割増賃金未払いや36協定無視など、長時間労働に関する労働基準法違反の63社の産業別内訳です。製造業は引き続き2番目にランクインしてしまっていますが、この労働基準法違反では最多がサービス業他26社41.2%で4割を超えています。例の電通もこの中に含まれています。そして、製造業に次いで運輸業が12社19.1%と3番目に入っています。私はそれほどフォローしていませんが、ヤマト運輸の未払残業代はどうなったんでしょうか?

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最後に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから 労働基準関係法令違反 一覧公表企業 売上高別 を引用しています。公表332社のうち、売上高が判明した244社を売上高で見ると、1~5億円未満が77社31.5%ともっとも多く、次いで、1億円未満が58社23.7%、10~50億円未満が43社17.6%と続いています。売上高100億円以上も21社8.6%となっています。パナソニックの富山工場や日本郵便の新大阪郵便局も実名公表されています。ただ、売上高10億円未満の企業が約7割を占め、業績悪化や資金力の乏しさが労働基準関係法令の違反に直接、間接につながった可能性も示唆されていると、東京商工リサーチでは分析しています。

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2017年5月22日 (月)

輸出入ともに順調に拡大する貿易統計をどう見るか?

本日、財務省から4月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+7.5%増の6兆3292億円、輸入額は+15.1%増の5兆8474億円、差引き貿易収支は+4817億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の貿易収支、3カ月連続黒字 4817億円 半導体関連など好調
財務省が22日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は4817億円の黒字だった。貿易黒字は3カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は5153億円の黒字だった。アジア向けの製造装置や部品など半導体関連を中心に輸出が引き続き伸びた。前年と比べた資源価格の回復などを背景に輸入も増加し、差し引きでの黒字額は縮小した。
輸出額は前年同月比7.5%増の6兆3292億円と5カ月連続で増加した。4月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=110.92円と前年同月に比べ小幅な円高で、輸出への悪影響があったものの、海外景気の改善を背景にした輸出数量の伸びなどが寄与した。財務省は「前年同月は熊本地震が発生したことから、反動増が出ている可能性もある」とみている。前月(12.0%)に比べると伸び率は鈍化した。
半導体などの製造装置が韓国向けIC製造用をはじめ好調だったほか、中国向けの鉄鋼の伸びも目立った。地域別では中国向け輸出が14.8%増となった。対米国も2.6%増、対欧州連合(EU)は2.2%増となりともに前年同月を上回った。
輸入額は15.1%増の5兆8474億円だった。資源価格の回復に伴い、サウジアラビアからの原油・粗油、オーストラリアからの石炭などが増加した。原粗油の輸入は数量ベースでも10.8%増と4カ月ぶりに増えた。中東情勢が不透明性を増す中でエネルギーの調達先を多様化する動きもあるといい、米国からの液化石油ガスの輸入も大幅に増加した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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貿易指数の前年同月比で見て、輸出入ともに昨年2016年10月以降は、中華圏の春節効果でマイナスに振れた時期を除いて、ほぼ数量ベースで前年同月比を上回って推移しています。世界経済の順調な回復・拡大とともに、我が国経済も緩やかながら回復・拡大を継続していることが貿易統計から見て取ることができると私は受け止めています。この間、引用した記事にもある通り、やや為替が円高に振れたこともあって、輸出数量の伸びは前年同月比で見て、2月+8.3%増、3月+6.6%増から4月は+4.1%増とプラス幅が縮小している一方で、輸入数量はコンスタントに+4~6%増を記録しています。基本的には、世界経済は我が国を含む先進国も、新興国も、途上国も、ほぼ回復ないし拡大の局面にあり、季節調整していない原数値なんですが、輸出数量指数と輸入数量指数の両方が、米国向け、欧州(EU)向け、中国を含むアジア向けのすべてで4月統計では前年同月比でプラスを示しています。ただ、上のグラフのうち下のパネルの季節調整済みの系列の輸出額が3月4月と2か月連続で減少を示していますが、2月の中華圏の春節効果による輸出の激増がもたらしたイレギュラーな結果であり、3-4月とも昨年12月や今年の1月を上回っていますので、私はそれほど懸念していません。むしろ、国際商品市況における石油価格の上昇に伴って、季節調整していない原系列の輸入について、3-4月は価格指数が前年同月比でほぼ+10%ほど上昇し、金額指数でも両月とも約+15%の上昇を示しており、貿易収支の黒字がやや減少気味となっています。私はそれほど気にしていないんですが、石油価格の上昇とともに貿易収支が赤字に舞い戻る可能性が高まっているのも事実です。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。輸出額はハッキリと回復ないし拡大を示しており、その背景はOECD先行指数に見られる海外経済の回復による我が国輸出への需要拡大です。先進国も中国もいずれも景気は回復しており、我が国からの輸出も拡大の方向にあります。たっだ、何度も繰り返していますが、不透明な要因は米国のトランプ政権の通商政策、というか、通商政策をはじめとするそもそもの政策遂行能力です。それから、次々と出て来る北朝鮮のミサイル発射が通商にどういった影響を及ぼすのかは、エコノミストにはまったく予測不能です。

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2017年5月21日 (日)

とってもラッキーなラッキーセブンにヤクルトを逆転して連敗ストップ!

  RHE
阪  神002000300 562
ヤクルト021010000 491

あまりにラッキーなラッキーセブンで逆転し連敗ストップでした。先発投手はドラ2ルーキー対決ながら痛み分けに終わったことにしておきます。
帰宅した時点で、4-2とヤクルトにリードされ苦しい展開だったんですが、7回のラッキーセブンに内野安打2本で同点に追いつき、最後は福留選手への敬遠球がワイルドピッチとなり逆転してしまいます。リリーフ陣も8回のマテオ投手以外はややもたつきが見られ、最後はヒヤヒヤでした。ところで、私は見逃してしまったんですが、ヒーローインタビューは誰だったんでしょうか?

甲子園に戻ったジャイアンツ戦は、
がんばれタイガース!

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2017年5月20日 (土)

藤浪投手が乱調でヤクルトにボロ負けして3連敗!

  RHE
阪  神010000200 3100
ヤクルト00400310x 890

藤浪投手が乱調でヤクルトにボロ負けでした。中日戦から3連敗です。
帰宅した時点で、ちょうど8回ウラのヤクルトの攻撃中で、すでに大差がついていました。終盤で5点差は今の打線ではいかんともしようがなく、せめて9回の粘りが明日につながることを期待します。

明日はドラ2ルーキー小野投手を盛り立てて、
がんばれタイガース!

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今週の読書は経済書中心に計7冊!

今週は話題の経済書『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』をはじめ、経済書中心に小説まで含めて計7冊、以下の通りです。

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まず、玄田有史[編]『人手不足なのになぜ賃金が上がらないのか』(慶應義塾大学出版会) です。編者は東大社研で進めている希望学のプロジェクトなどで著名なんですが、本書は本来の専門分野である労働経済学に戻って、タイトル出て維持されているパズルの解明に当たっています。22人の精鋭エコノミストを中心に16本の論文を集めた論文集であり、従来のように、非正規雇用の増加、労働分配率の低下、生産性の低下についてはトートロジーの部分もあるとして排し、ミクロ経済学、マクロ経済学、行動経済学に基づく理論分析、実証分析、ケース・スタディなどのアプローチから議論を進めており、出版社からも明らかな通り、一般教養書ではなく学術書であると理解すべきです。でも、16章もあるんですから、それなりに一般向けの論文もあります。私は労働経済、特にマイクロな労働経済は専門がいながら、一昨年2015年5月にミンサー型の賃金関数を賃金センサスの個票から推計した論文を発表すた折に、それなりに賃金や労働経済について勉強しましたので、何となく読み進みましたが、それなりの基礎的な理解は必要かもしれません。各論文には、7つの観点からのマーカ、すなわち、需給、行動、制度、規制、正規、能開、年齢の7つのポイントのどれに相当するかを明記しています。労働・雇用の賃金を含めて、価格の伸縮性により需給が調整されるとする古典派経済学はもとより、不況期の賃金の下方硬直性を論じたケインズ経済学でも、現在の日本における好況期の賃金の情報硬直性、なんて考えもしなかったと思いますが、この難題に回答を試みています。基本的に、トートロジーの部分も少なくありませんが、本書の結論として有力な仮説は、バブル経済崩壊後の日本経済の停滞に中で企業が体力を消耗し、内部労働市場で雇用者をOJTにより育成することが出来なくなり、外部労働市場で派遣労働者などを受け入れていくうちに、非正規職員の比率を高める結果となり、本書では構造バイアスと称しているシンプソン効果により、正規も非正規もともに賃金が上昇しつつも、非正規のウェイトが高まるためにマクロの賃金は低下を続ける、ということのようです。ただ、本書では触れられていない続きがあって、おそらく低賃金の非正規を雇用するうちにマクロでデスキリングが生じている可能性が高いと考えるべきです。そして、安価な労働力が熟練を崩壊して生産性を低下させ、さらに悪い方向でのスパイラルが起こる瀬戸際なのかもしれません。私は半分くらいしか同意できません。おそらく、開発経済学のルイス転換点について論じた第7章の議論が私にはもっともしっくり来ていて、要するに、まだ完全雇用に達しておらず、労働のスラックは残っている、というのが正解なんだろうと考えています。また、第15章で論じているように、我が国では女性のパート労働者などの非正規雇用はそもそも低賃金労働と位置づけられてきた社会的な背景も見逃せないんだろうという気がします。現在までのところ、今年読んだ経済書の中ではマイベストかもしれません。

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次に、寺田知太・上田恵陶奈・岸浩稔・森井愛子『誰が日本の労働力を支えるのか?』(東洋経済) です。著者は野村総研のグループであり、テーマは労働力不足への対応、さらには人工知能(AI)の活用による人的労働力の代替まで視野に入れています。特に、後者については英国オックスフォード大学のオズボーン准教授らの研究成果も取り入れて、日本におけるAIによる代替確率が49%との試算結果を明らかにsており、2016年1月7日付けでこのブログでも取り上げています。ということで、本書では人手不足の日本経済にあって、海外からの移民、というか、「移民」という言葉は本書では慎重に避けているんですが、外国人労働力の受入れについては、日本の労働・雇用事情が必ずしも外国人労働者に魅力的ではない、と指摘して少しネガティブな見方を示しています。すなわち、長時間労働と賃金の低さがネックになるとの見方です。そうかもしれませんが、途上国からの単純労働の受入れに経済界が意欲を見せているのは不気味な気もします。ですから、外国人労働力ではなくデジタル労働力の活用に目が向くということになります。しかし、本書ではAIに主眼を置いており、いわゆるロボットについては、それほど注目していません。ドローンと自動運転くらいのものです。その上で、第5章で確実な5つのメガトレンドを指摘し、最初のメガトレンドとして、日本人アルバイトを大量に雇用するビジネス・モデルが困難になる点を取り上げます。本書では明示的ではありませんが、まさに、デフレ期に適したビジネス・モデルといえます。さらに、小売・物流・ヘルスケアでは雇用の経済条件の悪さから若年層の選別に遭遇して人手の確保が難しくなる可能性も第2のメガトレンドとして主張しています。そして、第5章ではこれら3業種の今後のビジネス・モデルについて、いくつかのシナリオを提示するとともに、最後の第6章ではAIに仕事を代替されるタイプとそうでないタイプの職業をいくつか上げて、人材育成の今後の方向などについて論じています。かなり先の時代に関する議論であり、どこまで本書の議論が該当するかどうか、私には何ともいえませんが、ある程度の方向は当たらないまでも、かすっているような気がします。最後に、どうでもいいことながら、巻末の職業別の代替可能性の推計結果の表を見ると、エコノミストの代替確率は0.4%でした。私はもうすぐ定年を迎えますからほとんど関係はないと受け止めているものの、何となく目が行ってしまいました。

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次に、イェスパー・コール『本当は世界がうらやむ最強の日本経済』(プレジデント社) です。著者はドイツ出身ながら、日本在住30年で在京の外資系証券会社などのエコノミストを務めた後、現在では、世界で運用資産残高630億ドルを超えるウィズダムツリーの日本における最高経営責任者(CEO)をしています。ということで、エコノミスト・アナリスト系の分析を本書では展開しています。本書はタイトルから明らかな通り、日本経済の現状を強く肯定するものであり、巷に広がる悲観的な見方を強烈に排しています。5章構成から成り、日本経済について、日本企業について、政府財政について、米国のトランプ政権成立による日本への影響、東京オリンピック。パラリンピックを含めた近未来の日本像について、をそれぞれ取り上げており、タイトルに見られる論調を展開しています。基本的なラインとして、私も同意する部分が多いんですが、順不同で3点だけ特徴的な議論を取り上げておきたいと思います。第1に、日本の財政が破たんする確率がとても低いのはもはやエコノミストの間で広く認識が共有されているような気がします。本書でも同じ論調です。逆に、財政破綻について議論したがるのは、もはやためにする議論としか思えません。第2に、本書ではデフレについて、現状を受け入れるとの論調を展開しているように見えます。しかし、第1章p.34では「賃金以上に物価が急上昇しているアメリカと比べたら、ずっとハッピー」というように、あくまで賃上げとの見合いで考えるべきという視点は私なんかと共通しています。第3に、第2章では日本企業の内部留保について、かなり強硬な意見を展開していて、すなわち、カギカッコの意味が不明ながら「規制強化」によって内部留保を無理やり使わせる政策を提唱しています。私の見方と大いに共通するものを感じます。こういったタイトルですから、眉に唾つけて読む読者が多そうな気もしますが、虚心坦懐にメディアの批判論調を念頭に、というか、座右に置きつつ、本書を読み比べて対応させつつ日本経済や日本企業の現状について自分なりに考えを巡らせるのもいいんではないでしょうか。いずれにせよ、こういった非主流派的な経済の見方を声高に主張する著者、というか、書籍もあっていいような気がします。すべてを鵜呑みにするにはややリスキーですが、メディアや主流派的な経済の見方を頭に置きつつ、セカンド・オピニオン的に読む本かもしれません。

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次に、李智雄『故事成語で読み解く中国経済』(日経BP社) です。著者は在京の外資系金融機関に勤務するエコノミストであり、韓国生まれです。その上で、この中国経済に関する本を書いているわけですから、東アジア限定ながら、かなりの国際人ということも出来るかもしれません。まあ、タイトルに見られる通り、中国の、というか、漢字圏の故事成語を各章の冒頭に置いて、それに関連する形で中国経済の解説を進めている点を別にしても、とても興味深いのは、中国経済に関して開発経済学的な見方をしている点です。本書の最初の何章かでは、吉川教授の『高度成長 日本を変えた6000日』を盛んに引用し、中国経済とルイス転換点についての言及もあり、私の専門分野に近い見方をしていると感じました。私が役所の同僚と昨年取りまとめたペーパーは、日本の高度成長期に関する研究だったんですが、単に日本経済の発展過程を明らかにするだけでなく、新興国や途上国の政府当局や民間企業のビジネスパーソンに対しても利益をもたらし、先進国を目指すキャッチアップに資するものを目指していました。まったく同じ観点といえます。いくつか、中国経済の解説の中で著者の見方も示されており、2020年ころまでには中国の成長率は大いに鈍化し4%くらいに落ち込む、という見方も私はその通りだろうという気がしています。本書でも引用されている米国ピッツバーグ大学のロースキー教授の論文の指摘をまつまでもなく、中国の統計の不正確さは定評のあるところですが、本書ではそれらの統計をひとつひとつ解説しています。特に、最終の第17章は著者のいう通り、通して読むより辞書的に読んだ方が適当なのかもしれません。それから、どうでもいいことながら、中国経済統計の季節調整が不十分なのは、本書で指摘するように、データ系列のサンプル数が足りない、というよりも、旧暦に従った春節がまったく不規則だからだと私は認識しています。クリスマスはいつでも12月ですが、中華圏の春節は1月になったり、2月に来たりします。この不規則性により、日本経済もかなりの影響を受けているわけで、何とかして欲しい気もしますが、どうにもならないんでしょうね。

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次に、ドン・タプスコット&アレックス・タプスコット『ブロックチェーン・レボリューション』(ダイヤモンド社) です。著者は新しいテクノロジー関連の専門家、というか、企業家らしく、あとがきや謝辞を見ている限り、親子ではなかろうかという印象を持っています。英語の原題は Blockchain Revolution であり、2016年の出版です。邦訳のタイトルはそのままで、どちらが先かは私には判りませんが、野口教授の『ブロックチェーン革命』が今年になって出版されており、このブログでは先月4月15日付けの読書感想文で取り上げています。ということで、要するにブロックチェーンに関する解説書なんですが、技術的な側面の解説はほとんどなく、経済社会、企業経営から始まって、民主主義や芸術まで幅広い分野での活用による大きな影響力を論じています。私はブロックチェーンとはデジタルな記録台帳であり、典型的には金融、特に、ビットコインに応用されていて、それなりにいわゆるフィンテックに活用されうる技術である、としか認識していませんでしたが、ここまで大きな風呂敷を広げている議論も新鮮な気がします。本書の読後に私がパッと思いつくだけでも、順不同に、交通、インフラ、エネルギー、水資源、農業、災害予測、医療・ヘルスケア、保険、土地台帳などの書類管理、ビル管理、製造・メンテナンス、小売業、スマートホーム、などなど、幅広い活用が期待されているようです。ただ、悲しいかな、私の知識は本書には遠く及ばず、理解がはかどりませんでした。以下、私の理解の限りで、インターネットが幅広い応用可能性を示し、センサー技術の進歩とともに、いわゆるIoTが進行して、あらゆるモノがネットに接続するようになった中で、かつては匿名の世界と考えられていたインターネットも、ほぼほぼプライバシーのない世界となっています。例えば、どこかの建物の写真をSNSにアップしたりしたら、アッという間に特定されかねません。そういった中で、インターネットに欠けているのがセキュリティであり、信頼できるプロトコルを提供するのがブロックチェーンといえます。分散処理されているために特定のサーバに依存することなく、パブリックに公開されていながら高度なセキュリティで保護されている、という一見背反する存在のデータベースといえます。高度なセキュリティ、というか、プルーフ・オブ・ワークの壁があって、とてつもなく大きなコストをかけないと偽造が出来ない、という方が正しいかもしれません。こういったデータベースがあって金融に応用されたりすると、銀行などの金融仲介機能が不要になって、従来の銀行利用者同士、すなわち、資金の提供者と利用者が直接に結びつくことが可能になり、ビットコインのような仮想通貨が広範に流通するようになれば、中央銀行の業務が空洞化する可能性もある、という意味で、現在の国家体制に対する大きなチャレンジになる可能性まで秘めているわけです。テクノロジー的には私の理解を超えていますが、金融をはじめとして経済社会に広く応用されれば、ある意味で、世界がひっくり返る可能性もありますので、エコノミストとしても目が離せません。

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次に、ジュリオ・アレーニ『大航海時代の地球見聞録』(原書房) です。著者は17世紀初頭に中国に赴任してきたキリスト教の宣教師です。イエズス会ですから、当然、カトリックなんですが、中国の方は明から清に政権交代する時期でもあります。本書はその著者による『職方外紀』の邦訳書です。約400年ほど昔の地球見聞録ですから、荒唐無稽な伝聞記も含めて、あるいは、ウンベルト・エーコの『バウドリーノ』ばりのホラ吹きというか、嘘八百も含めて、いろいろと奇怪な事実譚がつづられています。5巻まであって、アジア、ヨーロッパ、リビア(=アフリカ北部)、アメリカ、海洋の5巻構成です。当時の知識水準としては、さすがにコロンブス以降でアメリカも収録されていることから、地球が平板であるとは考えられておらず、地球は球形という認識は今と同じです。さらに、序文を寄せている中国人高級官僚、科挙に合格しているのでタイヘンな文化人と目される人物も、「世に伝わる胸に穴のあいた人や、踵が前についている人や、竜王・小人などについては、デタラメであるからのせない」と断っており、それなりの信憑性を持たせようと努力しているのは理解できますが、まあ、限界はあります。ですから、北海の浜に小人国があって、背の高さは2尺を超えないとか、100回顔を洗うと老いた顔が若返る泉とか、手がカモの足のような海人など、とても現在では信じられないような見聞録があったりします。アフリカがほとんど未知の大陸で、北アフリカをリビアとして取り出しているだけであり、また、アメリカは15世紀末に発見されてから100年ほどの段階の記述ですので、とても怪しげに受け止められていて、南米大陸最南端を「チカ」と称して、身長3メートルを超える巨人がいると記述したりしています。我が国では江戸初期の鎖国が完成したころの時代背景ですから、中国から輸入されて知識人は読んでいたらしいんですが、当時の人々もどこまで信用していたんでしょうか、あるいは、単なる面白い読み物、少なくとも現在では、当時の知的水準から見ても単なる面白い読み物、と我々は受け止めていますが、そういった扱いだったんでしょうか、とても興味があります。

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最後に、江國香織『なかなか暮れない夏の夕暮れ』(角川春樹事務所) です。作者はなかなか人気の女性作家なんですが、私は不勉強にして短編集の『つめたいよるに』しか読んだことがありません。この作品は、海外のサスペンス小説にのめり込んでいて、女の出入りが激しいながら独身中年の男性を主人公とし、ドイツ在住の写真家で日本にも家を持ってよく帰国する姉、認知していて同居はしていないが読書好きという共通点がある娘とその母親とその結婚相手の男性、さらに、親戚で友人の顧問税理士などが登場します。主人公がサスペンス小説にのめり込んでいるのは、働かなくても親の遺産で生活ができるからで、姉の写真が章を取った記念で、ほとんど道楽で開いたソフトクリーム屋の従業員なども登場します。それから、「なかなか暮れない」というタトルは寿命の延びた日本人の人生にも引っかけていて、主人公が認知した娘などのごく例外を別にすれば、主人公をはじめとして中年の登場人物ばかりです。そして、主人公に生活感がまったくない分、顧問税理士が生活感をすべて背負って登場し、再婚後の結婚生活を破綻させたりする一方で、主人公とその姉などは親の遺産に支えられつつも、のんびりと暮れて行く夏の夕暮れのように、とてもゆったりとした生活を送っています。高校教師の女性が別荘を探し出したりするのも、生活感という観点からは飛び抜けている気がします。とても興味深いのは、主人公と3人のシングルマザーとの関係性です。1人目は、子どもは認知したものの、籍を入れずに別れた女性、2人目はソフトクリーム店の元従業員で、主人公は何の関係もないのに、この女性が不倫の末に産んだ男の子を認知しています。3人目は高校時代の同級生で、最近男女の仲になったファッションエディターで、大きな男の子がいたりします。主人公はそれぞれに対して、関係ない子供の認知をして生活費を渡したりして、必要がない責任まで果たそうとするが、3人の女性は主人公のその根拠ない優しさ、というか、お人好しな行動のために、逆に、理不尽、というか、淋しげな思いをしているように見えます。途中で、テレビを見るのはやさしさの表れで、周囲の人とテレビ画面を共有できるのに対して、読書は共有できない、という観点がある女性から示されますが、これらの女性たちが人生を共有して、ともに生きて行く誰かを望むのに対して、主人公はあくまで読者の態度を貫いているように見えます。しかも、それが50歳という立派な中年男性を主人公に回っているわけですので、ダラダラ続く、というか、なかなか暮れないんだろうと思います。

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2017年5月19日 (金)

三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「新入社員意識調査アンケート結果」やいかに?

とても旧聞に属する話題かもしれませんが、例年通り、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから「新入社員意識調査アンケート結果」が5月9日に明らかにされています。一定時間は仕事から離れてオフを過ごしたいという意味で、「自分ファースト」志向が高まるとともに、理想の上司は「寛容型」との結果が出ているようです。まず、リポートから【アンケート調査結果の概要】を4点だけ短く引用すると以下の通りです。

【アンケート調査結果の概要】
  • 一定時間は仕事から離れてオフを過ごしたい。「自分ファースト」志向が高まる。
  • 理想の上司は「寛容型」。
  • 今の日本は「曇り」。10年後についても悲観的な見方が広がる。
  • 女性は自身が出世する姿を具体的にイメージしにくい傾向がある。

ということで、例年の定点観測で、東京、名古屋、大阪において新入社員を対象としたセミナーを開催し、受講者に対してアンケートを実施した結果を取りまとめています。リポートからいくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポート p.4 から 今の会社を選んだ基準 の問いに対する回答を引用すると上のグラフの通りです。雰囲気、やりがい、安定がトップスリーです。男女の性差でビミョーに違いがあり、男性はやりがいや安定を、女性は距離感を重視している傾向が少しだけ見受けられます。なお、グラフは引用しませんが、就活でブラック企業かどうかを意識した比率は昨年よりもジワリと高まっているようです。

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次に、リポート p.7 から 会社に望むこと のうちのいくつかのポイントについて、2004年以降の時系列をプロットした折れ線グラフを一挙に3枚引用すると上の通りです。見れば明らかなんですが、能力の発揮・向上はまだまだ高い水準ながら傾向的に低下を示しており、給料アップがほぼ安定しているのに対して、労働時間や私生活への不干渉などがまだ比率は低いものの一貫して増加の傾向にあります。理由や動機はすっかり忘れましたが、私はバブル末期にメガバンクの運動会で週末を潰された記憶があり、確かに時代背景もあって豪華絢爛な運動会だったんですが、ああいった社を上げてのイベントはもう流行らないんだろうという気がします。

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次に、リポート p.12 から 就労意識 、すなわち、転職したいか、定年まで働きたいか、ついて、2004年以降の時系列をプロットしたグラフを引用すると上の通りです。米国のサブプライム・バブル崩壊後は安定志向が強まって定年まで働きたいとの就労意識がと読まったように見えますが、2012年末の安倍内閣の成立とアベノミクスによる現在の景気拡大局面の継続で、再び転職志向が強まっているような印象です。

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最後に、リポート p.17 から 残業に対する考え方 、すなわち、残業かお給料かの二者択一について、これも2004年以降の時系列をプロットしたグラフを引用すると上の通りです。コチラは米国のサブプライム・バブル崩壊とは関係なく、傾向的にお給料アップよりも残業をなくす方向が選好されて来たんですが、今年の新入社員は反転の兆しを見せています。今年の新入社員だけの特徴なのか、今後のトレンドを示唆しているのか、現時点では何ともいえませんが、定点観測として少し注目しています。また、最初に引用した【アンケート調査結果の概要】の3点目で、10年後の日本経済に関する悲観的な見方が広がっている、とありますが、私のような経験豊かなエコノミストでも10年後の経済なんて判りはしませんから、新入社員の意識で論じても仕方ないような気がします。いかがでしょうか?

最後の最後に、生産性本部でも毎年新入社員の意識調査を実施しており、今年の新入社員のタイプは「キャラクター捕獲ゲーム型」だそうです。Pokémon GO を強く意識したネーミングとなっています。昨年はドローンだった記憶があり、世間動向を意識しているだけなのか、それとも、新入社員がホントにそのタイプなのかどうかは疑問が残り、私のこのブログでは適当に既読スルーしているのが実情です。

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2017年5月18日 (木)

1~3月期のGDP統計速報1次QEは潜在成長率を超えて年率+2.2%の高成長を記録!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.5%、年率では+2.2%を記録しました。潜在成長率をかなり超えて、なかなかの高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1~3月期GDP、年率2.2%増 個人消費がけん引
内閣府が18日発表した2017年1~3月期の国内総生産(GDO)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%増、年率換算では2.2%増だった。プラスは5四半期連続。個人消費が持ち直し、輸出も伸びた。
QUICKがまとめた民間予測の中央値は前期比0.4%増で年率では1.8%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.0%減、年率では0.1%減だった。名目は5四半期ぶりにマイナスだった。
実質GDPの内訳は、内需が0.4%分の押し上げ効果、外需の寄与度は0.1%分のプラスだった。項目別にみると、個人消費が0.4%増と、5四半期連続でプラスだった。生鮮野菜の価格高騰が一服し、消費者心理が改善した。
輸出は2.1%増、輸入は1.4%増だった。アジア向けを中心に需要が堅調で輸出が拡大した。国内需要が伸び、輸入量が増加した。
設備投資は0.2%増と、2四半期連続でプラスだった。生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は0.7%増。公共投資は0.1%減。民間在庫の寄与度は0.1%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.8%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.1%のプラスだった。
同時に発表した16年度のGDPは実質で前年度比1.3%増と、2年連続のプラス成長となった。生活実感に近い名目では同1.2%増となり、5年連続のプラス成長となった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/1~32016/4~62016/7~92016/10~122017/1~3
国内総生産GDP+0.6+0.4+0.2+0.3+0.5
民間消費+0.3+0.2+0.4+0.0+0.4
民間住宅+1.1+3.1+2.7+0.4+0.7
民間設備+0.1+1.3▲0.2+1.9+0.2
民間在庫 *(▲0.3)(+0.3)(▲0.4)(▲0.2)(+0.1)
公的需要+1.1▲0.8▲0.1▲0.5+0.1
内需寄与度 *(+0.2)(+0.5)(▲0.1)(▲0.0)(+0.4)
外需寄与度 *(+0.4)(▲0.1)(+0.4)(+0.4)(+0.1)
輸出+0.5▲1.4+1.9+3.4+2.1
輸入▲2.0▲1.1▲0.2+1.3+1.4
国内総所得 (GDI)+1.3+0.6+0.1+0.0▲0.0
国民総所得 (GNI)+0.9+0.3▲0.0▲0.1+0.2
名目GDP+0.9+0.2+0.1+0.4▲0.0
雇用者報酬 (実質)+1.6+0.1+0.7▲0.3▲0.1
GDPデフレータ+0.9+0.4▲0.1▲0.0▲0.8
内需デフレータ▲0.3▲0.7▲0.8▲0.3+0.1

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率が5四半期連続でプラスを示し、特に大きいものではありませんが、赤の消費と黒の外需がプラス寄与しているのが見て取れます。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前期比+0.4%増の年率+1.8%増でしたから、ほぼジャストミートしたことになります。しかも、5四半期連続のプラス成長ですから、2015年中が少し低空飛行したのと比べれば、順調な回復・拡大との印象を受けます。1~3月期については、消費と輸出が成長を牽引しています。消費については天候不順による『生鮮野菜の価格高騰などの生活に密着した商品の物価高をようやく脱し、マインドが改善しているのが要因と受け止めています。ただ、下のグラフに雇用者所得のグラフを掲げましたが、1~3月期はデフレを脱却してプラスの物価上昇率を記録し始めていますので、実質所得が伸び悩み始めています。ですから、4~6月期においてはベアを伴う賃上げや、さらに、恒常所得ではないと見なされる場合が多いものの、夏季ボーナスなどの所得増が実現できるかどうか、が重要になるような気がします。マインドだけで消費を支えるのはサステイナブルではありません。もうひとつの牽引役である輸出については、経済要因としては大きな懸念はありません。日銀の異次元緩和の下で為替が円高に振れることはありませんし、海外経済が先進国と中国をはじめとする新興国の足並みそろって回復ないし拡大に向かっていますので、我が国からの輸出も順調に伸びると見込まれます。ただ、エコノミストには理解できないような経済外要因は不安が残ります。ひとつは北朝鮮の動向であり、エコノミストの予想を軽く超える可能性が高いと考えられます。もうひとつはトランプ政権下での米国の通商政策の動向が不透明です。ロシアゲートをチラチラと見ている限り、まともな政策運営が期待できかねる可能性すらあり、現在の米国政権の通商政策がどちらに向かうかはまったく不透明で、直接に、あるいは、為替相場における円高を通じて間接に、我が国の輸出に何らかの影響を及ぼす可能性もなしとしません。

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最後に、上のグラフは実質の雇用者所得を年率換算でプロットしています。このブログでも何度か主張した通り、消費は所得とマインドなんですが、最近時点ではマインドを反映する貯蓄率は順調に低下している一方で、実質雇用者所得が上のグラフの通りやや伸び悩んでいます。特に、1~3月期については消費者物価(CPI)が上昇に転じましたので、この先、名目ではなく実質で所得がさらに伸び悩む可能性が懸念されます。家電エコポイントや消費増税などの政策効果で耐久消費財の買い替えサイクルが大きく歪められたんですが、ようやく今年あたりから白物家電の買い替えサイクルが到来したとの見方が出始めています。短期的にはマインドで消費が拡大することは十分あり、それが景気の起爆剤になるケースも少なくありませんが、消費がさらに拡大を継続するためには所得の裏付けが必要です。

最後の最後に、GDPデフレータが前年同期比▲0.8%とマイナス幅を拡大し、1~3月期から消費者物価(CPI)が上昇に転じたのと逆の動きを示しています。基本的には、国際商品市況における石油価格の上昇などで控除項目の輸入デフレータが上昇しているためであると私は認識しています。国内需要デフレータはCPI上昇率に歩調を合わせて1~3月期からプラスに転じており、デフレ脱却の方向はCPIとGDPデフレータで整合的と考えるべきです。

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2017年5月17日 (水)

息詰まる投手戦の接戦を制して中日に連勝!

  RHE
中  日000000100 181
阪  神00001001x 230

先発の能見投手とバルデス投手の投手戦に、高山選手の決勝ツーベースが決着をつけ、中日に連勝、横浜戦から4連勝で貯金12となりました。
帰宅した時点で、ちょうど8回表の中日の攻撃を継投でしのいだところで、そのウラに高山選手の決勝打が飛び出し、盤石のリリーフ陣で中日終盤の猛攻を耐えて逃げ切りました。わずか3安打で2得点でしたが、8安打の中日を上回り、長打の威力を見せつけられた気がします。能見投手の2勝目がお預けになったのだけが心残りです。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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力強さに欠ける機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から3月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て、前月比+1.4%増の8623億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の機械受注1.4%増 4~4月見通しは5.9%減 製造業さえない
内閣府が17日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.4%増の8623億円だった。増加は2カ月連続。製造業でコンピューターなど電子機器の受注が増えた。ただ、QUICKが事前にまとめた金融機関など民間の調査機関の予測中央値である2.5%増には届かなかった。内閣府は機械受注の基調判断について「持ち直しの動きに足踏みがみられる」で据え置いた。
1~3月期では前期比1.4%減少した。同時に発表した4~6月期の見通しは5.9%減で、2四半期連続での減少を見込む。非製造業の9.6%減が響く。小売りや金融での需要が落ち込む見通し。製造業も1.1%減の予想。市場では「米国の通商政策に不透明感が残る間は、企業は設備投資に慎重にならざるを得ない」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との見方があった。
3月の受注額は、製造業が0.6%増の3529億円だった。増加は2カ月連続だが、伸び率は前月の6.0%から減速した。非製造業の受注額は3.9%減の4964億円と4カ月ぶりの減少。廃棄物処理関連の原子力原動機の受注が減ったことが影響した。前年同月比での「船舶、電力を除く民需」受注額(原数値)は0.7%減だった。
2016年度の受注額は前年度比0.5%増の10兆2314億円で、2007年度以来9年ぶりの水準を回復した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフを見ても、2013年のアベノミクス以降はジワジワとコア機械受注は増加の傾向にあることは確かですが、ジグザグと増減を繰り返しており、これだけの人手不足の要素市場にあって、省力化などの必要性が考えられるにもかかわらず、設備投資が盛り上がらないのも不思議な気がします。今年に入って、月次のコア機械受注は1月に前月比で▲3.2%の減少から始まり。2月+1.5%増、今日公表の3月も+1.4%増と小幅の増加が続いたものの、1~3月期でならしてみれば▲1.4%減を記録し、4~6月期の見通しも▲5.9%減と2四半期連続での減少が見込まれています。3か月前の調査では、1~3月期は前期比で+1.5%増が見込まれていましたが、結局、下振れて終わりましたし、4~6月期についてはそもそも見通しがかなり大きな減少となっています。
機械受注やその川下の設備投資については、現在の生産・出荷や輸出などの指標を見る限り、また、労働市場の人手不足とも考え合せて、緩やかな増加が見込まれると私は考えて来ましたが、北朝鮮をはじめとする北東アジアの地政学的なリスク、さらに、TPPからの離脱をはじめとする各種の大統領令を連発する米国トランプ政権の通商政策、というか、もっといえば、現在の「ロシアゲート」と呼ばれるような大統領としての政策遂行能力への疑問、などなど、経済外的な要因により下押し圧力がかかっている可能性は否定できません。なお、米国通商政策がクローズアップされることが多いんですが、例えば、今年2017年1~3月期に限ってみれば、コア機械受注のうち、製造業▲4.2%減、非製造業+0.0%の横ばいでしたので、そう見えなくもないんですが、4~6月期の見通しに目を転ずると、製造業▲1.1%減、非製造業▲9.6%減ですから、それだけでもない気がします。人手不足で賃金が上昇しない点とともに、私の目から見てややパズルです。

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2017年5月16日 (火)

長打攻勢の大量点を秋山投手が完投勝利で守り切り中日にボロ勝ち!

  RHE
中  日000010000 161
阪  神30003200x 861

初回から長打攻勢で大量8得点を叩き出し、秋山投手の今季チーム初の完投で中日にボロ勝ちでした。
帰宅した時点でちょうど5回ウラの攻撃が始まったところで、三振ゲッツーによりチャンス潰えたかに見えましたが、満塁から糸原選手の走者一掃ツーベースが飛び出して3得点、次の6回は糸井選手のツーランと、中谷選手の初回のスリーランこそ見逃しましたものの、見どころタップリの長打攻勢で8得点でした。ヒット数は両チーム同じ6安打だったんですが、長打の差が勝敗を決しました。私がファンの鳥谷選手の連続試合打点が途切れたのが唯一の難点ですが、秋山投手の完投勝利は今季チーム初でもありますし、お見事の一言です。

明日も能見投手を盛り立てて、
がんばれタイガース!

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明後日公表予定の1-3月期GDP統計1次QEは高成長か?

4月中にほぼ必要な統計が出そろい、明後日の5月18日に1~3月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定ですが、すでに、シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期以降を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、下のテーブルの上から5機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研となっています。その下の4機関には先行きはありません。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.4%
(+1.8%)
4~6月期を展望すると、トランプ米大統領の政策運営や北朝鮮情勢など海外の政治・経済動向は不透明感が強く、マーケットの変動などが景気を下押しするリスクはあるものの、①輸出の増加や在庫調整の進展を受けた製造業の生産活動の持ち直しや、②2016年度第2次補正予算の執行に伴う公共投資の増加、などが引き続き景気を下支えすることで、景気回復基調が続く見込み。
大和総研+0.4%
(+1.7%)
先行きの日本経済は、基調として足下の緩やかな拡大が継続するとみている。個人消費を中心とした内需は一進一退ながら堅調な推移が続くと同時に、世界経済の回復を背景とした外需の拡大が日本経済の成長を支えるだろう。ただし、米国の通商政策や地政学的リスクの高まりなど、外需の下振れリスクには警戒が必要である。
みずほ総研+0.4%
(+1.5%)
2017年度の日本経済について展望すると、海外経済の回復が、引き続き輸出や設備投資の回復につながるだろう。五輪関連や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることも、設備投資の押し上げ要因になるとみられる。他方、個人消費については、耐久消費財が持ち直していること、株高などを背景に消費者マインドが改善していることがプラスに働くものの、年度半ばにかけて見込まれるエネルギー価格の上昇が下押し要因となるだろう。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.4%)
日本経済は1年以上にわたって潜在成長率を上回る成長を続けている。内容的にも2016年後半は外需中心の成長だったが、2017年1-3月期は民間消費が高めの伸びとなったことから内需の伸びが高まり、内外需のバランスが取れた成長となった。先行きについても、海外経済の回復を背景に輸出の増加が続くことに加え、企業収益の改善に伴う設備投資の持ち直しが見込めることなどから、景気は堅調な推移が続くことが予想される。ただし、名目賃金が伸び悩んでいるため、物価上昇に伴う実質所得の低下が消費を下押しするリスクには注意が必要だろう。
第一生命経済研+0.4%
(+1.8%)
先行きについても、輸出の増加が続く可能性が高いことに加え、景気対策効果の顕在化によって公共投資も増加が予想される。1-3月期に足踏みとなった設備投資についても、企業収益の持ち直しや景況感の回復を受けて増加が期待できる。今後も着実な景気回復が続く可能性が高いだろう。
伊藤忠経済研+0.4%
(+1.6%)
10~12月期(前期比+0.3%、年率+1.2%)から成長ペースはやや加速したことになるが、国内民間需要は個人消費が横這い、設備投資は小幅増加にとどまる中で住宅投資の落ち込みにより前期比+0.1%の微増、純輸出(輸出-輸入)が成長率を+0.2%Pt押し上げており、輸出頼みの緩やかな成長という姿は変わらないことになる。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.5%
(+2.1%)
1-3月期の実質GDP成長率を前期比年率2.1%と予想する。昨年4-6月期(同2.2%)以来3四半期ぶりに、年率で2%台の成長率に復帰する見通しである。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.1%)
2017年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比+0.5%(年率換算+2.1%)と5四半期連続でプラスとなったと見込まれる。景気が持ち直していることを確認する結果となるだろう。
三菱総研+0.4%
(+1.6%)
2017年1-3月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.4%(年率+1.6%)と5四半期連続のプラス成長を予測する。好調な輸出に加え、消費も底堅く推移しており、内外需バランスのとれた成長となろう。

ということで、季節調整済み系列の前期比年率で+1%台後半から2%くらいの成長率予想が主流となっています。潜在成長率に比較してかなり高めの成長であり、中でも、政策効果で大きな歪みを生じていた耐久消費財の買い替えサイクルが始まったと見なされている消費について、ようやく回復の兆しが見えているのが明るい材料と考えています。ただ、企業部門の設備投資は、上のテーブルの中では伊藤忠商事経済研を除いて、まだほぼすべての機関でマイナス予想となっており、6月1日公表予定の法人企業統計を見たい気もしますが、我が国企業部門の力量低下が著しく表れているような気もします。外需についてもプラス寄与は続いていますが、その幅はかなり縮小して、外需主導から消費主導の成長の姿が示されるとの予想が中心です。上のテーブルのヘッドラインで取り上げようと試みた先行きについても順調な景気の回復・拡大を予想する向きが多く、特に、企業収益の面から設備投資の拡大も見込んでいる機関が少なくありません。ただ、わけの判らない地政学的リスクの発生、北朝鮮のミサイル発射とか、あるいは、経済合理的でない米国の通商政策の方向性とか、そういったリスクがどこまで顕在化するかどうか、エコノミストには理解不能な部分もあったりします。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2017年5月15日 (月)

3年振りに+2%超を記録した企業物価(PPI)上昇率は日銀の物価目標と整合的か?

本日、日銀から4月の企業物価 (PPI)が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+2.1%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業物価指数、前年比2.1%上昇 3年3カ月ぶりの上昇率
日銀が15日に発表した4月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.4で、前年同月比で2.1%上昇した。前年比での上昇は4カ月連続で、上昇率は前月(1.4%)から拡大した。上昇率は消費増税の影響を除くと2014年1月(2.5%)以来3年3カ月ぶりの大きさだ。市況上昇を背景に鉄鋼価格に値上がりが目立ったほか、原油先物相場の上昇を受けガソリンや軽油も値上がりした。ただ最近はガソリン価格などが伸び悩んでおり、前月比では0.2%の上昇にとどまった。
円ベースの輸出物価は前年比で3.0%上昇したが、前月比では1.9%下げた。輸入物価も前年比で10.9%上昇する一方、前月比では2.2%下げた。原油価格の下落や前月比での円高・ドル安進行が響いた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している746品目のうち前年比で上昇したのは315品目、下落は331品目だった。上昇と下落の品目差は16品目で、2月の確報値(106品目)から大幅に縮小した。
日銀の調査統計局は「中国の需要動向や地政学リスクの為替相場や国際市況への影響をより慎重にみていく必要がある」との見方を示した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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少し前から4月の価格改定期を着目していたんですが、予想通り、というか、何というか、割と素直に価格改定が進んだ印象があります。ヤマト運輸の価格改定にも注目ですが、運輸サービスは今日発表の企業物価(PPI)の外数です。今年に入ってPPIの前年同月比上昇率がヘッドラインの国内物価だけでなく、円建てで見た輸出物価・輸入物価ともにプラスに転じ、特に、国内物価上昇率は1月+0.5%、2月+1.1%、3月+1.4%から4月+2.1%とかなり急激な勢いで上昇率が加速して来ており、しかも、4月のPPIの前年同月比上昇率で大きな上昇を示した品目は石油・石炭製品+23.8%と鉄鋼+10.3%と非鉄金属+8.9%などなんですが、エネルギーはもちろんのこと、鉄鋼や非鉄金属などの基礎的な素材製品の値上がりが大きいわけで、これから先、いわゆる川下製品への波及が見込まれます。従って、5-6月くらいまでは少なくとも+2%超の物価上昇率水準が続くんではないかと私は考えています。ただ、一本調子で上昇率が加速するわけでもないでしょうし、少し前までの円高に振れた為替の影響も出ることも考えられ、人手不足の影響を受けやすいサービス物価(SPPI)はともかく、エネルギー価格の影響を受けやすいPPI上昇率については、年央くらいまでには上昇率の加速も止まる可能性が高い、と私は受け止めています。でも、+2%前後の上昇率はキープしそうな勢いです。消費者物価(CPI)に波及し、日銀のインフレ目標と整合的な動きに向かう可能性が十分あることを指摘しておきたいと思います。

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2017年5月14日 (日)

最終回に横浜クローザーを打ち込んで逆転勝ち!

  RHE
阪  神020000002 481
横  浜200000000 251

リリーフ投手陣の差を見せつけて横浜に逆転勝ちでした。
1時スタートとは知らずに、2時過ぎに帰宅した時点で2-2の同点でした。終盤までジリジリとする展開だったんですが、横浜クローザーのパットン投手を打ち込んで競り勝ちました。阪神リリーフ陣のマテオ投手とドリス投手は盤石でした。首位キープはもちろん、これで堂々の貯金10です。

甲子園に戻って中日戦も、
がんばれタイガース!

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2017年5月13日 (土)

今週の読書は経済書や専門書に小説と新書まで合わせて計8冊!

今週の読書はやや先週よりも増えて、学術書である経済書に加えて、ノンフィクションの専門書に小説と新書まで合わせて計8冊でした。以下の通りです。

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まず、鍋島直樹『ポスト・ケインズ派経済学』(名古屋大学出版会) です。著者は名古屋大学の研究者であり、出版社と考え併せても、学術書であることは明らかですので、それなりの覚悟で読み進む必要があると思います。いくつか書き下ろしの章があるとはいえ、ほとんどの章は既発表の論文で構成されています。ただ、本書でも指摘している通り、「ポスト・ケインズ派経済学」という一派があるのかどうかは疑わしく、そこはマルクス主義経済学とは一線を画します。もっとも、ケインズによってマクロ経済学が創始されたわけでしょうから、私のような開発経済学を専門とするエコノミストも含めて、成長や物価、開発などをマクロの立場から研究・分析する一派は広い意味でのポスト・ケインジアンと読んでも差し支えないような気もします。ということで、本書ではケインズ経済学あるいはポスト・ケインズ経済学の主要な特徴として、有効需要の理論を上げています。私なんぞは価格の硬直性と考えないでもないんですが、まあ、いいとします。その上で、ニュー・コンセンサス・モデルにおける余りに実物的な均衡理論を批判し、需要の増加が物価を引き上げるだけに終わって、産出水準を引き上げない点を疑問視するとともに、マクロ経済における投資の役割と、それゆえの公共投資委員会の設立をもくろんだケインズの意図などを解説してくれています。また、古典派的な貨幣ベール論を廃し、金融政策の基礎を与えたケインズ経済学の評価を確立します。最後の第4部では、カレツキがケインズとは独立に同じ結論に足していた可能性を議論しています。また、最近のことですので、サブプライム・バブル崩壊に関連して、独自にケインズ経済学をひも解いたミンスキーの金融不安定仮説についても触れています。全体として、右派的・保守的な新自由主義経済理論に代わって、左派的かつリベラルなケインズ経済学・ポスト・ケインズ経済学の確立に向けた議論が展開されています。ただ、少し不満だったのは、もっと不平等や格差に関する議論が欲しかった気がします。最終的には成長に収斂する可能性は高いものの、経済学や経済政策を評価する軸として、格差是正がどのような位置を占めるか、不平等の是正をどう進めるべきか、などなどの議論につなげる観点が少し稀薄ではないか、と私は受け止めてしまいました。

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次に、加藤創太・小林慶一郎[編]『財政と民主主義』(日本経済新聞出版社) です。編者・著者は官庁出身の研究者が多く並んでいた気がします。日銀出身者もいたりします。人材豊富なのかもしれません。本書は東京財団の研究活動の成果とされています。ということで、本書では財政政策が民主主義下における決定による何らかの歪み、特に、財政の膨張や財政収支の赤字化のバイアスを持つ可能性を議論し、可能な範囲でその是正策を展開しています。すなわち、経済政策の代表格として金融政策が政府から独立した中央銀行によって運営されている一方で、本書が対象とする財政政策は歳入・歳出が予算として議会で議決される必要があり、その意味では、強い民主主義下での決定ともいえます。本書の何人かの論者は、暗示的ながら、欧州などにおける財政に関する独立組織を例示して、財政政策についても金融政策と同じように、専門家による運営を示唆している場合もありますが、私はまったく逆の主張であり、金融政策も民主主義下では国民の意思を無視しえないと考えていますので、ノッケから本書とは逆の立場に近いことを実感しました。しかし、第2章ではシルバー民主主義のバイアスが実証的に確認されており、その意味では私の主張に近いチャプターもあったりします。財政赤字を問題視し、アプリオリに財政収支均衡を政策目標とするのであれば、本書のような議論もあり得ることとは思いますが、財政政策の目標というそもそも論を開始した議論を本書では展開しているので、かなり空回りした印象があります。すなわち、財政政策の主要な機能としては通常の教科書的には3点上げられており、第1に資源配分の改善、すなわち、公共財の供給、第2に所得の再分配、すなわち、格差の是正、第3にマクロ経済の安定、となります。その中で、財政政策が民主主義下で赤字化しやすいバイアスを持つ可能性は、ブキャナン・タロックも論じている通りであり、私も否定しないものの、こういった財政政策の機能を無視する形で財政規模の縮小や収支均衡を論じても仕方ないんではないか、というのが私の感想です。財政赤字を回避したければ、いろんな方法があり得ますが、その際の財政政策の国民生活への影響や上に上げた財政政策の機能に対する何らかのトレードオフがあるのかどうか、そういった視点なしに単なる財政の収支均衡だけを論じても何の意味もないんではないかと危惧します。

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次に、八代充史『日本的雇用制度はどこへ向かうのか』(中央経済社) です。著者は慶応大学の研究者であり、本書ではホワイトカラーの人事管理、特に、同一産業・同一市場で競争している企業の人的資源管理は、日系、米系等の資本国籍間の人材獲得競争を通じて一定方向に収斂するのか、あるいは異なったままなのか、という、雇用制度間競争の視点から日本的雇用制度にアプローチを試みています。産業としては投資銀行を取り上げており、市場としては英国のロンドンと東京に着目しています。なお、最終章は自動車産業を取り上げているんですが、投資銀行と対比させて、我が国の得意分野、というか、比較優位のある産業の代表として概観していると考えた方がよさそうで、本格的に自動車産業のホワイトカラーの人事管理を分析しているわけでもなさそうな気がします。ということで、本書の分析の対象として中心となるのは投資銀行なんですが、典型的な産業と呼びうるかどうかには私は疑問を持っています。すなわち、マクラガンのサーベイに代表されるように、賃金調査が行き届いており、業界の平均的な賃金水準が一目で明らかになっており、しかも、歩合制セールスマンよろしく、ホワイトカラー労働者各個人の売上げや収益への貢献がかなりの程度に明確だからです。本書が対象とするホワイトカラーの人事管理は、あくまで、企業のフロントとなる営業部門であり、もっとも人事管理の分析で難しいそうな間接部門、典型的には総務や人事や経理などのホワイトカラーの生産性分析や、それに基づく人事管理賃金設定などに関する分析ではありません。ただ、資本基準で収斂するのか、市場基準で収斂するのか、とくに、日系投資銀行の人事管理について、統計分析ではなく、ヒアリングという代表制に疑問の残る手法ながら、ある程度の傾向を明らかにしたのは、それなりに評価すべきかもしれません。ただ、限界の方を強く感じるのは私だけではなかろうという気がします。

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次に、山口敬之『暗闘』(幻冬舎) です。今年4月1日付けの読書感想文で取り上げた『総理』と同じ著者により、同じ出版社から出されていて、続編といえます。著者はTBSの政治部の記者であり本書も基本的に取材に基づくノンフィクションと考えられます。本書では第2次安倍内閣以降の現内閣の外交政策に焦点を当てています。基本的に、従来からの職業外交官、すなわち、外務省のお膳立てによる外交について、特に対中国外交については、ほぼ相手国の言いなりになった主体性のない外交として廃され、国益を重視した主体性があって官邸主導の外交を進めようとする意気込みに満ちています。その昔であれば、諸外国のことについては政治家には情報が少なく、在外公館のネットワークを持つ職業外交官の方に比較優位があったのかもしれませんが、情報については政治家でも遜色なく入手できるようになり、しかも、組織的な外交というよりは首脳間の人間的な信頼関係に基づく外交が目指されるようになった結果として、政治主導・官邸主導の外交の現在があるといえるんですが、著者はそこまでの目配りは行き届いていません。ページ数で数えたボリュームとしては、当然ながら、ほぼ半分が対米外交に割かれていて、残りを中国とロシアが占めています。本書も示唆されている通り、ロシアと中国では世界経済に占めるウェイトが桁違いなんですが、我が国の場合は北方領土問題が残されており、まだ平和条約が未締結となっているわけで、欧米外交に占めるロシアの比重よりは重いものがあるのは理解すべきです。さいごに、時期的な関係で仕方ないんでしょうが、やはり、北朝鮮の瀬戸際外交と挑発については十分な紙幅が割かれていません。次の課題なのかもしれません。

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次に、塩田武士『罪の声』(講談社) です。2017年本屋大賞にて第3位にして、第7回山田風太郎賞受賞作品ですから、とても話題の小説です。作者は関西系の新聞社のジャーナリスト出身だったと思うんですが、私はデビュー作の『盤上のアルファ』と『女神のタクト』ほか何冊か読んだ記憶があります。この作品は、グリコ森永事件を下敷きにして、ノンフィクションっぽく仕上げた小説だと私は受け止めています。どこまで真実に基づいていて、どこからが著者の創作なのかは、もちろん、明らかではありません。江戸期のナントカ草紙みたいなものではないかと思います。グリコ森永事件はギンガ萬堂事件と表記され、かい人21面相はくら魔天狗と変えられています。犯人一味の家族が追うラインとジャーナリストが追うラインの2ラインありますが、真実に近づくにつれて2つのラインは交わっていっしょになります。当然です。プロローグとエピローグが別にあるものの全7章構成となっていて、第6章の後半で事件のほぼほぼ全貌が犯人一味のひとりからジャーナリストに語られる一方で、犯人一味のうちのある家族のその後について第7章で明らかにされます。まあ、常識的なセンですが、犯人一味は経済ヤクザ、警官崩れ、裏社会のフィクサー、過激派学生のなれの果て、また、在日やエセ同和などからなり、事件の前面に押し出された身代金まがいの金銭目的ではなく、株式の仕手戦での利益を少なくとも目的のひとつとしている点が明らかにされます。第3章や第4章くらいまでの前半は、個人が追いかけるラインはともかく、ジャーナリストが追いかけるラインは英国まで取材に行ったりして、緻密に構成されて緊張感も高く、それなりに読者をワクワクさせるものがあるんですが、後半に入って、特に第6章で英国にいる犯人一味のひとりがQ&Aで事件の全貌を明らかにするところは、いかにも「アッサリと自供した」という感じで、物語が進むに従って、作者の筆の疲れもあったのかもしれませんが、ストーリーの進み方が荒っぽくなった印象があります。特に、真実を追いかけるジャーナリストが何の妨害工作や危険にも出会わずに、割と一直線に真実に近づいて行くのが、何やら物足りないと感じる人も少なくなさそうな気がします。とても面白い着想なんですが、筆力や表現力ではなく、ストーリーの構成にもう一工夫あったら、さらに出来がよくなるような気がします。でも、ノンフィクションというか、真実に近い内容を含んでいると想像させるに足る小説です。

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次に、中山七理『翼がなくても』(双葉社) です。オリンピックを視野に入れた女子アスリート、陸上短距離200メートルの実業団選手が、隣家で引きこもりになっている幼馴染みの運転する自動車にひかれて陸上選手の生命である足を切断してしまうところからストーリーが始まります。そして、その加害者の幼馴染みが自宅で刃物により殺害されます。他方、オリンピックからパラリンピックに目標を切り替えて、高価な義足を購入して専任のスタッフ体制を充実させて、ひたすら邁進する主人公の女性アスリートの姿に共感を覚えるものの、殺人事件の謎解きミステリとしては凡庸といわざるを得ません。私自身は、この作者の岬洋介シリーズとヒポクラテスのシリーズは何冊か読んでいる一方で、悪徳弁護士を主人公とする御子柴礼司シリーズと刑事を主人公とする刑事犬養隼人シリーズはほとんど読んでいないんですが、この作品は謎解きのミステリが凡庸であることを作者自身も理解しているためか、キャストは豪華な布陣となっていて、シリーズ主人公の御子柴礼司と犬養隼人がダブルキャストで登場します。主人公の女性アスリートが次々と高額の資金を必要とする障害者スポーツ向けの用具やスタッフを準備するのと殺人事件の謎解きが表裏をなしているわけですが、ミステリとしても、障害者スポーツ小説としても、凡庸極まりなく、かなり物足りない、というよりも、むしろ、ガッカリさせられた気がします。

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次に、森永卓郎『消費税は下げられる!』(角川新書) です。著者はテレビなどでもおなじみのJT出身のエコノミストです。財務省の宣伝工作で「常識」とすらなっている感がありますが、日本の財政は先進国の中では最も不健全で借金頼みになっている、という事実について反論し、よくあるパターンながら、債権債務のネットで見るとか、いろいろと数字を示した後で、本筋の日本の財政が日銀のQQEにより超健全になり、サステイナビリティに何ら問題がない、という結論が示されます。ここまでなら、今までに出版されたいくつかの書籍と同じ主張です。この先が本書の特徴であり、日本の財政は決して悪くないのだから、消費税は下げられるし、消費税を下げれば現在の消費の停滞は打破できる、と主張します。まあ、その通りです。単に、消費税は下げられる、というだけではタイトルを見ただけでも得られる情報なんですが、消費税以外にも、かなり具体的な政策提言が含まれており、特に、第4章の税・財政改革の諸提案だけでも読むに値すると思います。いかに現行の制度が富裕層に有利で格差を助長するものとなっているか、についても理解が深まるような気がします。全体として、かなりリフレ派の発想に近い、すなわち、正統派の経済学に基づいている、と私は受け止めています。

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最後に、常見陽平『なぜ、残業はなくならないのか』(祥伝社新書) です。著者はリクルート出身の研究者らしいんですが、私はよく知りません。問いがタイトルになっていて、その回答は私には明らかなんですが、どうしても、質的な回答にならなければ得心が行かないということなんだろうと受け止めています。すなわち、私の目から見て、非正規の季節雇用がこれだけ増加しても残業があるのは、業務に対して雇用者が不足していて、量的に業務量とそれを実行すべき雇用者がアンバランスだからです。それを何とか生産性やカギカッコ付きの「質的な改善」で乗り切ろうということなんですが、ある程度までは出来るとは考えられるものの、業務を減らすか雇用を増やすかしか根本的な解決がないのに、なぜかその周辺をグルグルと回って、本質的な解決を提示せずに済むように取り計らっているようです。政府の働き方改革の中で、本書にも取り上げられている電通の過労自死事件があり、上辺だけ夜の10次で仕事を終えても、業務量としてせねばならない仕事がある限り、お持ち帰りのサービス残業をせざるを得ません。ですから、雇用を増加させるのがもっとも根本的な解決なんですが、そうすると雇用コストが上昇しますから、そこで初めて業務の削減に目が行く、ということなんだろうと思います。ヤマト運輸の現在のやり方ですし、本書でも最後の方は業務を厳選するという方向性も示されています。いずれにせよ、このタイトルの本書がこの内容ですから、ワーク・ライフ・バランスの取れた日本の未来はいつになればやって来るのか、とても不安な気がします。

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2017年5月12日 (金)

マクロミル・ホノテによる今夏のボーナス調査の結果やいかに?

今週月曜日5月9日にマクロミル・ホノテから「2017年夏のボーナス調査」の結果が明らかにされています。
とても少ないサンプルながら、ボーナス受給予定者の平均見込み額は507,265円などと、かなり有効数字の桁数に疑問のある結果も出ていたりします。まず、マクロミル・ホノテのサイトから調査結果のTOPICSを3点だけ引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 2017年夏のボーナス、"受給予定"は83%、2割弱は"受給なし"
  • ボーナスの見込み額は、平均507,265円、"金融・保険業"が最高の693,939円
  • "受給なし"の理由は、「支給制度がない」54%が最多

繰り返しになるものの、どこまでの信頼性が確保されているかは疑問なしとしませんが、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、調査対象は民間企業に勤務する正社員となっています。この調査対象者に、この夏のボーナスの支給についてたずねると、支給される予定は83%、支給されない予定は17%という実態が示されています。ただし、非正規も含めると支給割合は下がるんではなかろうかと私は想像しています。さらに、マクロミル・ホノテのサイトからグラフを引用すると、上のグラフは 2017年夏のボーナス 会社員の受給予想 <従業員規模別> となっていて、大雑把に、会社の従業員規模が大きくなるにつれ、受給予想が高まる傾向が読み取れます。また、下のグラフは 会社員のボーナス受給額予想 平均見込み額 であり、回答者はボーナスを受給予定の人だけです。支給見込みの平均額は507,265円であり、業種別に見てもっとも高いのは金融・保険業で693,939円、一方もっとも低いのはサービス業で351,258円となっています。こういったボーナス支給で消費がもう少し喚起されるといいんですが、果たしてどうなりますことやら。

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2017年5月11日 (木)

上向いた景気ウォッチャーとリーマン・ショック以前の水準に回帰した経常収支!

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。、景気ウォッチャーは季節調整済みの系列で見て、現状判断DIは前月比+0.7ポイント上昇の48.1を、また、先行き判断DIも前月比+0.7ポイント上昇の48.8を、それぞれ記録し、経常収支は季節調整していない原系列の統計で2兆9077億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の街角景気、現状判断指数は5カ月ぶり改善 家計悪化に歯止め
内閣府が11日発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前の月に比べ0.7ポイント上昇の48.1だった。改善は5カ月ぶり。雇用動向の改善や、客足が復調した飲食関連が寄与し、家計動向の悪化に歯止めがかかった。ただ、人手不足で機会損失などへの懸念は続き、サービス関連はほぼ横ばい。企業動向も伸び悩んだ。
部門別にみると、雇用動向は1.4ポイント上昇の54.8と、4カ月ぶりに改善した。家計動向のうち飲食関連では人手不足を受けて賃金などコスト増が続いたが、客足の回復で懸念が和らいだ。ただ、家計動向は0.7ポイント、企業動向は0.3ポイントといずれも小幅な改善にとどまった。
街角では雇用動向について「製造業を中心に、求人数は増加傾向にある」(北関東の職業安定所)との声がある。家計動向のうち飲食関連では「4月の来店客数が前年比103%を超えている」(近畿のレストラン)、一方で「今年は極端に歓送迎会が少なく非常に危惧する事態となっている」(中国のスナック)と強弱が入り交じった。企業動向でも「積極的な設備投資、新製品開発、既存品のバージョンアップが顕著」(東北の電気機械機具製造業)との見方と「受注が落ち着いてきている。年度初めで顧客も動きにくそうだ」(近畿の建設業)との慎重な見方が混在した。
2~ 3カ月後を占う先行き判断指数は、前の月から0.7ポイント上昇し48.8となった。上昇は2カ月ぶり。雇用関連が2.2ポイント改善した。「人手不足で前年度に新卒者を採用できなかった企業が多く、採用意欲がさらに上向く」(北海道の大学)という。半面、家計動向の改善幅は0.3ポイント増にとどまった。一部百貨店で客数回復や夏場の観光需要に対する期待が聞かれたが「乗務員不足による稼働率低下の影響がますます大きくなっている」(北海道のタクシー運転手)との声も根強い。
内閣府は現状の基調判断は「持ち直しが続いているものの、引き続き一服感がみられる」との表現を維持した。先行きは前月に続いて「人手不足やコストの上昇に対する懸念もある一方、引き続き受注や設備投資等への期待がみられる」とした。
2016年度の経常収支、20兆1990億円の黒字 旅行収支は過去最大
財務省が11日発表した2016年度の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は20兆1990億円の黒字だった。経常収支の黒字額はリーマン・ショック前の07年度(24兆3376億円)以来9年ぶりの高水準となった。原油安で貿易収支の黒字幅が大幅拡大したことが寄与した。旅行収支は比較可能な1996年度以降で過去最大の黒字額となった。
貿易収支は5兆7654億円の黒字と前年度(3296億円の黒字)から大幅に拡大した。黒字額は10年度(8兆332億円)以来の高水準だった。液化天然ガス(LNG)や原粗油などの減少で輸入が10.9%減少。自動車や鉄鋼などの低迷で輸出も3.4%減少したが、輸入の落ち込みが上回った。
サービス収支は1兆5058億円の赤字と前年度から1531億円赤字幅を拡大した。知的財産権などの使用料の受け取りが減り、「その他サービス収支」の赤字額が増えた。一方、旅行収支は訪日客の増加を背景に1兆2789億円の黒字と過去最高を記録した。
第1次所得収支は18兆356億円の黒字(前年度は20兆8964億円の黒字)だった。円高などを背景に、証券投資で受け取る配当金などが減少した。
同時に発表した3月の経常収支は2兆9077億円の黒字だった。黒字は33カ月連続となったが、黒字幅は前年同月から645億円縮小した。貿易収支は8655億円の黒字(前年同月は8711億円の黒字)だった。輸出入ともに増えたが、輸入の増加が上回った。サービス収支は1804億円の黒字(前年同月は2630億円の黒字)、第1次所得収支は2兆1951億円の黒字(前年同月は2兆1591億円の黒字)だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、2つの統計を並べるとどうしても長くなってしまいがちです。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーの現状判断DIも先行き判断DIも、すべてのコンポーネント、すなわち、家計動向関連、企業動向関連、雇用関連の3項目とも上昇を示しています。引用した記事にあるように、いよいよ季節もよくなって家計のマインドも底入れしつつある、との楽観論がある一方で、まだまだ小動きの範囲内であって、悪化に舞い戻る可能性も小さくない、という悲観論も残っていて、私も判断がつきかねています。先日発表のあった消費者態度指数は需要サイドのマインドで少し悪化したのに対して、今日の景気ウォッチャーは供給サイドのマインドであり改善を示しています。この不整合の要因として、供給サイドと需要サイドとで、ビミョーに価格上昇の受け止め方が違う可能性があると私は考えています。すなわち、4月の消費者態度指数は価格上昇に対する消費者サイドの嫌気が現れているのに対して、景気ウォッチャーは価格上昇に対する販売者サイドの好感を表している可能性があります。いずれにせよ、現状判断DIも先行き判断DIも、いずれも、3つのコンポーネントのうち雇用関連の上昇幅が最も大きくなっており、人手不足の現状が反映されていると受け止めています。現状判断の理由集を見ていると、数量も単価もまずまずよくなっている印象なんですが、逆に、悪くなっている理由には北朝鮮情勢が上げられている例が散見されます。ホントなんでしょうか。単に、成績の悪い理由を北朝鮮に押し付けているだけという気もしなくもありませんが、北朝鮮のミサイル発射で人出が悪影響を受けるようなことになれば、そうなのかもしれないと思ったりもします。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。引用した記事にもある通り、経常収支は2011年3月の震災や2009年のリーマン・ショック前の水準に戻ったと受け止めています。今年1-3月期のGDP統計が来週18日に内閣府から公表されますが、経常収支のGDP比も4%くらいに拡大しているんではないかという気がします。経常黒字をもおたらしたのが国際商品市況における石油価格の下落ですから、トランプ米国政権の通商政策に何らかの影響を及ぼす可能性は低いと考えるべきですが、黒字の水準としてはかなり高いと見る向きもありそうです。トランプ政権の政策動向と我が国の経常収支の関係についてはやや複雑で、通商政策により米国内への投資の回帰がホントに進むのであれば、我が国の経常黒字の縮小要因となりますが、インフラ整備などの財政政策は黒字拡大要因となります。もちろん、為替への影響も見逃せません。

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2017年5月10日 (水)

終盤の追い上げ届かず東京ドームらしい空中戦で巨人に打ち負ける!

  RHE
阪  神020004001 7101
読  売20412000x 9100

東京ドームらしい空中戦で巨人に打ち負けました。
帰宅した時点で大差がついていたんですが、6回から終盤にかけて追い上げは見事でした。ついこの間、9点差をひっくり返したばかりですので、大いに期待をもたせるものがありました。最後は逃げ切られたものの、次につながる粘りを見せてもらった気がします。

次の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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景気動向指数に見る景気は長期の拡大を続ける!

本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。景気動向指数のうち、CI一致指数は前月比▲0.6ポイント下降の114.6を、CI先行指数は+0.8ポイント上昇の105.5を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の景気一致指数、2カ月ぶり低下
内閣府が10日発表した3月の景気動向指数(2010年=100、CI)によると、景気の現状を示す一致指数は前月より0.6ポイント低下し、114.6となった。2カ月ぶりに前月を下回った。スマートフォン(スマホ)用の電子部品や半導体製造装置の生産・出荷が減ったためだ。
内閣府は一致指数からみた基調判断を「改善を示している」とし、6カ月連続で据え置いた。
一致指数を構成する指標で、前月と比べられる7つの指標のうち、4つが押し下げ要因となった。電子部品などの生産・出荷が落ち込んだほか、自動車やバイクなど耐久消費財の出荷も減少した。新型車発売の効果が一巡したとみられる。
小売・卸売の販売額、有効求人倍率の3つの指標は前月を上回ったが、全体を押し上げるほどではなかった。
数カ月先の景気を示す先行指数は前月比0.8ポイント上昇の105.5となった。2カ月連続で上昇し、15年6月以来1年9カ月ぶりの高水準となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気動向指数のうちのCI一致指数は2か月振りの下降とはいえ、昨年2016年10月に「足踏み」から「改善」に基調判断が上方改定されてから半年間据え置かれており、2012年12月の現在の内閣発足から今年2017年3月まで4年余りの長期に渡る景気拡大局面ということになります。ということで、少し詳しくCI一致指数を見ると、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、有効求人倍率(除学卒)がこの順でプラスに寄与しており、逆に、投資財出荷指数(除輸送機械)、生産指数(鉱工業)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数がマイナスに寄与しています。商業販売統計と耐久消費財出荷が相反する結果となっていて、やや混乱を来たしかねない内容ながら、まだら模様というべき状態です。また、CI先行指数が上昇した要因は、消費者態度指数と新設住宅着工床面積と日経商品指数(42種総合)のプラス寄与が大きくなっています。
繰り返しになりますが、内閣府による景気基準日付に従えば、現在の景気循環の拡大局面は2012年11月を谷として、もしも2017年3月まで景気拡大が継続していると仮定すれば、景気拡大が52か月となり、いわゆるバブル景気、すなわち、1986年11月を谷として1991年2月を山とする第11循環の景気拡大期の51か月を上回ることとなります。戦後における長期に渡る景気拡大は、米国のサブプライム・バブルと同時期の2002年1月を谷とし2008年2月を山とする第14循環の73か月、次いで、いわゆるいざなぎ景気と呼ばれる1965年10月を谷とし1970年7月を山とする第6循環の57か月があり、現在の景気拡大はこれらに続いて戦後3番目の長さということになります。基本的に、エコノミストとして景気拡大が長期に及ぶのはめでたいことだと受け止めていますが、もう少し消費に力強さが加わればより望ましい姿に近づくような気がします。

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2017年5月 9日 (火)

先発秋山投手のナイスピッチングで巨人に完勝して6連勝!

  RHE
阪  神202000000 490
読  売010000100 280

先発秋山投手のナイスピッチングで巨人に完勝し6連勝でした。
失礼ながら、かなり格が違う気もしたんですが、秋山投手が菅野投手に投げ勝って6連勝でした。打線はベテラン左打者が侍ジャパンのエースを打ち崩して4得点をもぎ取っています。8回と9回は僅差の勝ちパターンのリリーフ陣であるマテオ投手とドリス投手が危なげなく抑え切りました。

明日も、
がんばれタイガース!

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賃金の伸びが大きく鈍化した毎月勤労統計をどう見るか?

本日、厚生労働省から3月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.4%増を、また、現金給与指数のうちの所定内給与は季節調整していない原系列の前年同月比で▲0.1%の減少を、それぞれ記録しています。これに加えて、消費者物価が上昇を示していますので、消費者物価でデフレートした実質賃金はさらに大きなマイナスとなります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

名目賃金、10カ月ぶりマイナス 3月の毎月勤労統計
厚生労働省が9日発表した3月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月と比べて0.8%減少した。減少は2カ月ぶり。名目賃金にあたる現金給与総額は27万7512円で前年同月比で0.4%減少した。正社員の基本給が減っている。大企業は賃金のベースアップを進めているが、産業界全体で見ると賃上げの動きが滞っている可能性がある。
名目賃金が前年同月を下回ったのは10カ月ぶり。内訳をみると、基本給を示す所定内給与は前年同月比0.1%減。残業代を示す所定外給与は1.7%減、通勤手当や賞与を示す特別に支払われた給与は3.6%減った。
基本給を雇用形態別にみると、ほぼ正社員に相当する「フルタイム労働者」が0.1%減と、14年4月以来およそ3年ぶりにマイナスに転じた。SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「フルタイムの基本給が弱いのは大企業のベア以外に賃金を押し上げる動きが乏しいため」と分析する。
足元の労働市場では人手不足が進む。完全失業率は3月で2.8%と完全雇用に近い状態だ。企業はパートタイム労働者については賃上げに動いており、パートの時間あたり賃金は2.1%増だった。
厚労省は実質賃金の落ち込みについて、昨年3月の実績が高いため、前年同月比はその反動でマイナスになった可能性もあると説明している。今年3月に政府がまとめた働き方改革の実行計画の会議で安倍晋三首相が労使に賃上げを要請するなど、賃金上昇への期待は高い。
先行きは春季労使交渉で大手企業が表明したベアがどこまで広がっているかが焦点になる。大和総研の長内智シニアエコノミストは「企業には稼ぐ力があり、4年連続の賃上げ2%達成は可能だ」と見る。
実質賃金は名目賃金から物価上昇分を除いた指標で、消費動向を左右する。3月は消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が前年同月比0.3%上昇し、実質賃金を名目より押し下げた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額と所定内給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目の1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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景気に敏感に対応する製造業の所定外労働時間が鉱工業生産指数(IIP)と歩調を合わせて低下したことは当然としても、本日公表の3月の毎月勤労統計の最大の謎は賃金であろうと私は考えていますが、この賃金の落ち込みはかなりの程度に労働時間で説明できるのではないかと私は理解しています。すなわち、働き方改革の推進などにより、所定内労働時間を中心に労働時間が短縮されて来ている可能性があります。所定内労働時間は2014年通年で▲0.6%減、2015年▲0.3%減、2016年▲0.5%減と緩やかに低下を示してきましたが、2017年に入って、季節調整していない原系列の労働時間指数の前年同月比で見て、1月▲1.2%減、2月▲0.7%減、3月▲2.0%減と急激に減少を始めています。総実労働時間でも、2017年1月▲1.1%減、2月▲0.5%減、3月▲1.9%減と大きな減少が続いており、2月は昨年がうるう年であった点を考慮すると、実質的にはもっと大きなマイナスと考えるべきですから、労働時間の減少が大きくなっており、賃金の低下幅はこれより小さく、時間当たり賃金は上昇していると受け止めています。ひとつの傍証として、パートタイム労働者の時間当たり賃金も昨年10月ころからほぼコンスタントに前年比で+2%前後を記録しています。
労働時間の長短と所得の多寡はトレードオフの関係にあり、当然ながら、短い労働時間と高額の所得は両立しません。もちろん、働きづめに働いて所得を稼いでも、支出するヒマがないようではマクロの消費は増加しません。逆に、支出する余暇が十分でも、労働時間が短すぎて所得が十分でなければ同じことです。現時点では、政府の働き方改革の中で労働時間の短縮が先行しているようで、典型的には2月から実施されているプレミアム・フライデーなのかもしれませんが、それだけ所得が減少しがちになる可能性があるのかもしれません。

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2017年5月 8日 (月)

消費者態度指数の低下は何を意味するのか?

本日、内閣府から4月の消費者態度指数が公表されています。前月から▲0.7ポイント低下し43.2を記録しています。先月から、統計作成官庁の内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に上方修正していますが、今月は「持ち直し」のまま据え置かれました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の消費者態度指数、前月比0.7ポイント低下の43.2 基調判断据え置き
内閣府が8日発表した4月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.7ポイント低下の43.2だった。足元の食料品の値上げなどを受けて物価上昇への警戒感が強まったことに加え、株価下落による資産価値の減少などで生活環境が悪化すると見込む消費者が増加した。
内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直している」で据え置いた。消費者態度指数は5カ月ぶりに低下したものの、3カ月移動平均では前月を上回ったことを考慮した。
指数を構成する4つの意識指標のうち「暮らし向き」が1.2ポイント、「収入の増え方」が0.8ポイントそれぞれ低下した。「耐久消費財の買い時判断」も前月を1.6ポイント下回った。一方で「雇用環境」は0.8ポイント上昇と堅調に推移した。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月より7.4ポイント高い78.9%だった。上昇幅は比較可能な13年4月以降では最大となった。公共料金や食用油などの価格上昇に加え、今後控える宅配便の値上げも意識されたようだ。「低下する」との見通しは2カ月連続で減少したほか「変わらない」との見方も3カ月ぶりに減った。
調査基準日は4月15日。調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は5654世帯(回答率67.3%)だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、消費者態度指数を構成する4つのコンポーネントのうち、雇用環境だけは+0.8ポイント上昇し47.7となったものの、他の3つのコンポーネント、すなわち、耐久消費財の買い時判断が▲1.6ポイント低下の42.2、暮らし向きが▲1.2ポイント低下の41.5、収入の増え方が▲0.8ポイント低下の41.4と、それぞれ、算出されています。上のグラフを1変数だけのユニバリエイトに見ても、何となく「持ち直し」の動きに乗っているように見えますし、基調判断の変更は不要ではなかろうかと私も思っています。4つのコンポーネントのうちでも、もっとも基礎的な雇用環境が人手不足の中で改善を続けていますので、収入や暮らし向きといった他の項目も雇用が改善する限り、少しラグがあるかもしれないものの、決して悲観する必要はないものと私は受け止めています。
また、今日の今日で、この統計には反映されようもなかったわけですが、フランス大統領選挙の決選投票でEU加盟を堅持するマクロン候補が大差で勝利し、日本円は対ドルでも対ユーロでも円安に振れて、東証株価指数はこの結果を好感して450円の上昇を記録しています。米国の経済通商政策動向がまだまだ不透明ながら、昨年の英国国民投票でのBREXITや米国大統領選挙の結果と違って、安心できる結果に受け止められたような気がします。

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2017年5月 7日 (日)

能見投手の今季初勝利を完封リレーで飾り首位をガッチリとキープ!

  RHE
ひろしま000000000 070
はんしん00020301x 670

堂々の横綱相撲で広島を3タテでした。
今シーズンまだ勝ち星のない能見投手の先発で、初回にいきなりのピンチをしのいで中盤4回に鳥谷選手の先制打を呼び込みます。さらに、6回にも福留選手に続いて鳥谷選手がタイムリーをかっ飛ばし、8回にはダメ押しの犠牲フライと、鳥谷選手が大活躍の巻でした。投手陣は能見投手が6回途中まで、6回から7回には桑原投手がつなぎ、8回は岩崎投手、9回は藤川投手と、大差の勝ちパターンのリリーフ陣で完封リレーの完成でした。僅差の勝ちパターンのマテオ投手とドリス投手はお休みでした。広島を3タテして首位をキープです。

東京ドームのジャイアンツ戦も、
がんばれタイガース!

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2017年5月 6日 (土)

卑劣なビデオ判定を乗り越えて9点差を逆転し首位攻防第2戦を制し単独首位に立つ!

  RHE
ひろしま220230000 9161
はんしん00001731x 12103

9点差を大逆転して首位攻防第2戦も広島に連勝でした。
私のよく知らない福永投手の先発で、1回2回と広島に2点ずつ献上し、4回までに6失点、5回に登場した松田投手も3点取られて、さすがに、今日は負けと覚悟を決めましたが、6回ウラに一挙7得点して1点差に詰め寄り、大いなる期待を持たせます。7回ウラは卑劣なビデオ判定により江越選手の同点に向けた激走をフイにされましたが、糸原内野手の同点打に続き、またまた梅野捕手の逆転打が出て広島をうっちゃりました。何か、神がかりのような攻撃でした。まだシーズン早い段階ながら、首位に立ったのは誇らしい限りです。

明日先発の能見投手に今度こそ勝ち星を、
がんばれタイガース!

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今週の読書はゴールデンウィークでサボって計6冊!

今週はゴールデンウィークということもあり、ボケボケと過ごしています。読書は以下の通りで、計6冊です。

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まず、エステル・デュフロ『貧困と闘う知』(みすず書房) です。著者はこのブログの読書感想文でも2012年7月13日付けで取り上げた『貧乏人の経済学』の共著者であり、米国マサチューセッツ工科大学の開発経済学を専門とする研究者であり、同時にフランス開発庁の資金供与による「貧困と闘う知」講座の初代教授でもあります。本書はその講義録であり、フランス語の原題は LE DÉVELOPMENT HUMAINLA POLITIQUE DE L'AUTONOMIE となっていて、副題がともに Lutter contre la pauvreté のⅠとⅡです。原書は2010年の出版です。副題を邦訳書のタイトルとし、第1部が人間開発、第2部が自立政策と題されていますから、メインとサブのタイトルを逆転させつつも、ほぼ直訳といえます。邦訳された本書の第Ⅰ部では教育と健康が、第Ⅱ部ではマイクロファイナンスとガバナンス・汚職がそれぞれ取り上げられています。『貧乏人の経済学』でも注目されたランダム化比較実験(RCT)を駆使して、低開発国における経済発展の方策を探っています。第Ⅰ部の教育と健康については、まあハッキリいって、常識的な結論が得られています。いずれも外部性のある分野であり、政府の援助プログラムの有効性を検証しています。メキシコのPROGRESAの成功などを取り上げ、イースタリー教授らの政府援助を廃してインセンティブに基づく制度設計ではなく、サックス教授のようなビッグプッシュに至る前に政府開発援助が有効であることを確認した結果となっています。常識的というか、今さら感すらあって、特に目新しくもない一方で、興味深いのは第Ⅱ部です。特に、第3章はマイクロファイナンスを問い直す、と題され、金融へのアクセスについて分析が進められていて、元祖ともいうべきグラミン銀行の連帯責任の下での女性に原則特化した融資制度について検証を行い、取りあえず、現在のところ、男性と女性にランダムに融資した実験というものはなく、逆から見て、女性への融資が特に効果的であるというエビデンスはないと主張しています(p.117)。ただ、本書の著者に表現では「信頼できる評価を利用することができない」ということであり、本書でも認知されているように、女性に対する教育の充実が経済発展のゴールデンルートであることは多くの開発経済学者で共有されており、何らかの性差はあるのかもしれない、と私は考えないでもありません。当然ながら、マイクロファイナンスは開発経済学の実験材料を提供するために実施されているわけではありません。加えて、元祖のグラミン銀行とともにメキシコのコンパルタモスの例を引きつつ、逆選択、モラル・ハザード、情報の非対称性などの金融サービスにつきものの問題点についても考察を進めており、さらに、金融に限らないテーマとしてソーシャル・キャピタルの形成や取引費用についても論じていますが、結論はそうクリアではありません。

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次に、J.D.ヴァンス『ヒルビリー・エレジー』(光文社) です。米国のいわゆるラスト・ベルト=錆びついた工業地帯に生まれ育ち、高校卒業後に海兵隊からオハイオ州立大学とイェール大学ロースクールを出て弁護士となり、現在はシリコンバレーで起業した会社の社長を務めるいかにもアメリカン・ドリームの立志伝中の人物が自伝的に自分自身の生涯、イェール大学のロースクールを出るあたりまでを綴っています。ヒルビリーとか、レッドネックなどと呼ばれる米国の白人貧困層の赤裸々な生活実態が明らかにされています。作者は自分自身について、白人にはちがいないが、ニュー・イングランドなどのアメリカ北東部のいわゆるワスプ=WASP(ホワイト・アングロサクソン・プロテスタント)に属する人間ではなく、スコッツ=アイリッシュの家系に属し、大学などの高等教育を受けることのない労働者階層の一員として働く白人アメリカ人の家系で出であると位置づけています。そして、何がヒルビリーをヒルビリーたらしめているかという点については、経済社会的な雇用の質の低下などではなく、本書の著者はヒルビリーたち自身の思考パターンや行動原理を問題視しています。見栄っ張りで自分たちが上流階級にいるかのような金の使い方、あるいは、我慢ができずにすぐに暴力に訴えるやり方、また、社会的な秩序を軽視ないし無視し力による支配を目指したり、教育の価値を理解せずに女々しいことと捉えたり、などなどといた個人レベルの問題点をいくつか本書の中で指摘しています。もちろん、成功したアメリカン・ドリームの体現者が上から目線で評論家のように指摘しているという嫌いはありますが、ひとつの見識かもしれません。昨年の米国大統領選挙のトランプ大統領誕生の背景となる米国経済の一面を垣間見ることができるかもしれません。

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次に、小木津武樹『「自動運転」革命』(日本評論社) です。著者は慶応大学出身で群馬大学の工学研究者です。ですから、ソフトウェアかハードウェアか知りませんが、自動運転に関する工学的な専門家といえます。ただ、本書では社会経済的な影響についても考察しています。工学的なソフトとハードの解明については、私は専門外でどこまで理解できたのかは自信がないんですが、第3章の自動車産業への影響、最終章第7章の自動運転の未来像については、私でもとても興味深く読めました。自動車産業については、コストカットの低価格路線かニッチな市場の探索か、という二極化の方向が示されていますが、少し物足りません。というのは、自動車産業に限らず、製造業や付加価値の低いサービス産業など、かなり多くの産業セグメントが、少なくとも日本においては、この両極化の方向をたどる可能性が高いからです。自動運転の専門家としては、工学の専門外かもしれませんが、こういった一般論ではなく、もう少し突っ込んだ議論を展開して欲しかったところです。最終章については、あくまで工学的な可能性に基づく推論としても、とても興味深かったです。すでに公務員の定年の60歳に手が届こうかという私にとっては、およそ平均寿命の先の未来も含まれていたりしますが、確かにこういった方向かもしれないと思わせるものがあります。ただ、2点だけ異論をさしはさむと、ユーザの年齢層を考えると、本書の著者が主張するように、運転技能の低下を自覚した高齢者層から自動運転車が普及するのではなく、自動車を単なる移動手段としか考えないミレニアル世代から普及しそうな気がします。というのは、高齢者はあくまで運転技能の低下を自覚しなさそうだからです、最後まで手動運転にこだわって事故を頻発させるのは、現状でもそうですが、高齢者ではなかろうかという気がします。もう1点は、手動運転を喫煙に例えていますが、高齢者が自分の運転技能に対する誤った評価に基づく手動運転にこだわる例を別にすれば、私は逆だろうと思っています。すなわち、洋服に対する着物のような位置を占める可能性が高いと私は想像しています。例えば、いつの時点かは忘れましたが、ポルシェのCEOがポルシェのオーナーなら自分で運転したいだろう、と発言して、自動運転の技術開発に消極的な姿勢を示したことがあります。こういったカンジではないでしょうか。いずれにせよ、ここ何週間かで自動運転に関する本を何冊か読みましたが、いよいよ時代の流れがそうなっていることを実感させられました。

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次に、吉田修一『犯罪小説集』(角川書店) です。作者は我が国を代表する小説家の一人です。それにしても潔いタイトルです。『怒り』や『悪人』に連なる系譜の作品と私は受け止めています。すなわち、犯罪に関連する短編集であり、「青田Y字路」、「曼珠姫午睡」、「百家楽餓鬼」、「万屋善次郎」、「白球白蛇伝」の5篇が収録されています。何らかの意味で、実際にあった犯罪行為を作者なりにデフォルメしているんではなかろうかと思いますが、オモテの世界の公務員である私には、3話目の「百家楽餓鬼」が大王製紙のギャンブル事件であるとしか判りませんでした。少し違うかもしれませんが、最終話の「白球白蛇伝」は清原なんでしょうか。ただ、こういった実際の事件とは無関係に読む方が、自由にイメージを膨らませて読む楽しみがあるのかもしれません。簡単に5話を要約すると、女児が行方不明になったことで揺れる小さな村の夏、三角関係のもつれで店の客に内縁の夫殺しを依頼したスナックのママ、バカラ賭博で何億もの借金を重ねる大企業の御曹司、老人たちの集落で孤立した60代の「若者」が振るう凶刃、華やかな生活から抜け出せなかった元プロ野球選手の借金の末の凶行、と並びます。犯罪や罪の行為に関する作者の鋭い、鋭すぎる目線を通じて、犯罪を犯してしまう人間とその犯罪者を取り巻く周囲の人間たちが浮かび上がってきます。何ともいえない哀情あふれる哀しい行為とその犠牲となった人々のさらなる哀しみが胸を打ちます。

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次に、村山早紀『桜風堂ものがたり』(PHP研究所) です。著者は私はよく知りませんが、童話や児童文学やファンタジー小説などを出版しているようで、私はこの作品で初めて接しました。主人公の月原一整は地方都市にある老舗の百貨店のテナントである銀河堂書店に勤め文庫本を担当する物静かな青年であり、人づきあいが苦手なものの埋もれていた名作を見つけ出して光を当てるケースが多く、店長から「宝探しの月原」と呼ばれ信頼されていたんですが、ある日、店内で起こった万引き事件の犯人の中学生が百貨店を飛び出したところに自動車事故にあい、万引き犯とはいえ配慮を欠いた行動として銀河堂書店を辞めて、ネット上のSNSでのお付き合いから、この作品のタイトルとなっている桜風堂書店に勤務します。そして、銀河堂書店から桜風堂書店にかけても、テレビドラマなどのシナリオライターが初めて挑み、最初から文庫本で発行される小説の販促に力を入れる、というストーリーです。小説に登場する人物相関図が出版社の特設サイトにあるんですが、とてもキャラの作りが平板で、しかも、「小説は事実よりも奇なり」というカンジで、ご都合主義的に出来上がっていて、読んでいて感動がないというか、少なくとも、ビジネスを経験した大人の読者には感情移入が難しいような気がします。要するに、おままごとのような書店経営が透けて見えます。というか、経営者ではない書店員の受け止めはこんなものかもしれませんが、1か所だけアマゾンが登場して、登場人物もSNSなどで盛んに情報交換・交流したりする一方で、なぜか、書籍販売だけは出版社の営業も含めて超アナログだったりします。このあたりの矛盾に気づかずに書き進んだり読み進んだりする神経が私にはよく理解できません。しかも、本を売る側のセルサイドの主張がいっぱいある一方で、バイサイドの読者側の感想がなくはないものの乏しいような気がします。顧客のニーズを書店員が作り出すという昔懐かしい発想の営業活動なのかもしれません。いずれにせよ、ストーリーといい、登場人物のキャラといい、私の読みたい小説のレベルには達していなかった気がします。楽しく読めましたが、児童文学っぽい平板な印象でした。もっとも、中村文則のようなノワール小説も私には理解できませんが、その逆の児童小説っぽいこの作品も評価しません。

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最後に、深井智朗『プロテスタンティズム』(中公新書) です。著者は東洋英和女学院大学の研究者であり、専門分野はドイツのプロテスタンティズムのようです。ということで、今年2017年はルターが95か条の提題により宗教改革の幕を切って落とした1517年からちょうど500周年に当たります。その宗教改革によって発生したキリスト教の新派であるプロテスタンティズムについて本書は論じています。一般的に、カトリシズムがバチカンの法王や法王庁を頂点とするピラミッド型の宗教である一方で、プロテスタントについては聖書が何よりの拠り所ですから、その解釈によっていろんな派閥に別れるとされています。また、私のような仏教徒には理解し難いんですが、本書でも取り上げられている通り、アウクスブルクの宗教平和により領主の信ずる宗教がその領土・領民の宗教となります。その最も典型的な例が英国国教会であることは言うまでもありません。王権神授説もさることながら、ヒストリアンとしての私の解釈によれば、領主裁判権が神の名の下に実行される影響ではないか、と考えているんですが、日本の江戸期などの封建制よりも農奴としての土地への緊縛の度合いが高かった欧州における宗教的特徴のひとつといえます。本書の最後の2章は保守としてのプロテスタンティズムとリベラルとしてのプロテスタンティズムを論じていますが、当然ながら、後者の典型例がヴェーバーの『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』となっています。二重の予定説として、神の祝福を受ける人は現世で成功しているから、しっかり働いて社会経済的に成功することが天国への近道、という見方です。そして、本書では、私もほのかに感じていますが、ルターの信仰義認と浄土真宗の他力本願がとても似ていると指摘しています(p.63)。

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2017年5月 5日 (金)

米国雇用統計は6月公開市場委員会(FOMC)での利上げをサポートするか?

本日先ほど、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は3月の8万人足らずから、一気に回復して+211千人増となり、失業率もさらに前月から0.1%ポイント下がって4.4%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の8パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

U.S. labor market rebounds as employers add 211,000 jobs; unemployment rate falls to 4.4%
Solid job growth returned last month as the labor market rebounded from what appears to have been a steep weather-related March slowdown, the Labor Department said Friday.
The U.S. economy added 211,000 net new jobs in April, up sharply from a downwardly revised 79,000 the previous month that was the weakest showing since last spring.
The report signals that the overall economy is poised for stronger growth after an anemic first quarter.
The unemployment rate dropped to 4.4% in April, its lowest level in nearly a decade.
Wages also improved. Average hourly earnings were up 7 cents to $26.19 after a downwardly revised 2-cent increase in March. For the year ended April 30, wages were up 2.5%.
Job growth last month was fueled by the service sector.
Leisure and hospitality employers added 55,000 net new jobs, up from 9,000 in March. Healthcare and social assistance payrolls swelled by 36,800 in April after a 16,400 increase the previous month.
And retailers reversed a recent trend of job losses, adding 6,300 net new positions after cutting payrolls by 27,400 in March.

この後、カリフォルニア州のローカルな雇用の話題などが続きますが、長くなりますので割愛しました。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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ゴールデンウィーク中ですので、簡単に済ませたいと思います。非農業部門雇用者数の前月差伸びについて、市場の事前コンセンサスは+185千人くらいといわれていたんですが、それを上回って211千人増でした。加えて、失業率がさらに下がって4.4%を記録しています。サブプライム・バブル崩壊直前の水準まで低下したことになります。次の米国連邦公開市場委員会(FOMC)は6月13-14日に開催予定ですが、もう一回米国雇用統計の公表がありますので、5月の雇用統計を見極めつつ利上げの判断がなされるものと多くのエコノミストは理解しています。直感的には、利上げの可能性の方がやや高いんではないかと私は受け止めています。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じた印象ながら、もう一段の加速が見られません。ただ、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなり、逆に、トランプ政権の経済政策次第では上昇率が加速する可能性もなしとしません。

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ラッキーセブンの逆転劇で広島との首位攻防第1戦を制す!

  RHE
ひろしま010300010 581
はんしん00010250x 8101

ラッキーセブンの猛攻で首位攻防第1戦は広島に先勝でした。
今日は試合開始早々からのテレビ観戦でしたが、先発のメッセンジャー投手が広島の長打攻勢で、前半5回までに4-1とリードを許します。しかし、6回に1点差に詰め寄り、7回ラッキーセブンに昨日のヒーロー梅野捕手の逆転打から一気に差を広げ、何とか逃げ切りました。最終回のドリス投手もまずまずの出来だったという気がします。ただ、1回の守備でいきなり交代した上本選手のケガが心配です。得点が入って面白かったですが、長い試合でした。

明日先発の福永投手はよく知らないんですが、
がんばれタイガース!

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2017年5月 4日 (木)

5回のビッグイニングを活かしてヤクルトにボロ勝ち!

  RHE
阪  神001150000 7150
ヤクルト000010000 151

今日は中盤にビッグイニングを作りヤクルトにボロ勝ちでした。
今日も昨日と同じで、帰宅して中盤から野球観戦です。5回に一挙5点でほぼほぼ試合を決めたので、あとはラクなテレビ観戦でしたが、それでも、藤波投手には完投して欲しかったです。ヒーローインタビューで梅野捕手から「ストライクが入るよう」と言われないよう、次の登板はがんばって下さい。打線は好調を維持しているんですが、高山外野手が登場しませんでした。やや気がかりです。

明日からの首位攻防戦も、
がんばれタイガース!

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2017年5月 3日 (水)

終盤にヤクルトのリリーフ陣をメッタ打ちして乱戦を制す!

  RHE
阪  神000002033 8131
ヤクルト100000030 481

昨夜は悔しい負けだったんですが、今日は終盤の8-9回にヤクルトのリリーフ陣をメッタ打ちして乱戦を制しました。
午後から近くの区営体育館のプールでひと泳ぎして帰宅すると、5回を終わった時点で1-0で負けていましたが、円陣を組んだ成果もあって6回に鳥谷選手の逆転打が出ます。8回に3点でダメ押し、と思ったんですが、セットアッパーのマテオ投手の乱調で1点差に詰め寄られてしまいます。でも、9回に再び3点を入れ、今度こそダメ押しで逃げ切りました。岩貞投手のピッチングはあまり見ていないんですが、2勝目を上げました。

明日はカード勝ち越し目指して、
がんばれタイガース!

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2017年5月 2日 (火)

東洋経済オンラインによる都道府県別「未婚率上昇率」ランキングやいかに?

やや旧聞に属する話題ながら、4月28日付けで東洋経済オンラインから都道府県別「未婚率上昇率」ランキングが明らかにされています。絶対的な未婚率も去ることながら、未婚率の上昇、すなわち、1980年から2015年までの期間で、どの程度未婚率が上がったか、にも着目しています。ということで、下の日本地図の画像は生涯未婚率上昇率マップを東洋経済オンラインのサイトから引用しています。

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続いて、東洋経済オンラインのサイトから都道府県別生涯未婚率上昇率ランキングを引用すると以下の通りです。北国、というか、東北地方やいわゆる過疎地域の多そうな印象のある県が未婚率の上昇が大きく、東京都・神奈川県や近畿圏の京阪神はそれほど未婚率が上昇していないように見えます。ただ、もともと1980年時点での未婚率に差があったのかもしれません。私の専門外ですので、よく要因はわかりませんが、確かに、東洋経済オンラインが主張するように、「青森で16倍! 北日本で密かに進む未婚化の怪」が正しいのかもしれません。

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2017年5月 1日 (月)

帝国データバンクによる「人材確保に関する企業の意識調査」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先月4月20日付けで帝国データバンクから「人材確保に関する企業の意識調査」と題する調査結果が明らかにされています。pfdの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の要旨を引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 人材採用のための新たな取り組みを行っている企業は、全体の72.2%(10,082社中7,281社)と高水準。このうち、最も多くの企業が行っている取り組みは「賃金体系の見直し」(46.6%)となり、規模別では、規模が小さいほど高い割合となった。
  2. 企業が求める人材像のトップは「意欲的である」(49.0%)となり、約半数の企業から支持された。第2位は「コミュニケーション能力が高い」(38.6%)、第3位は「素直である」(32.2%)が続いた。人物像類型(「能動型人材」「協働型人材」「変革型人材」「地力型人材」の4つ)別で見ると、第2位の「コミュニケーション能力が高い」、第3位「素直である」を含む「協働型人材」に類型される人物像を選択する企業が多かった。

要旨の第2点は私の興味の範囲外ですので無視するとして、第1点でやはり「賃金体系の見直し」という表現で賃上げをアジェンダのセットしなければ人材確保が難しい段階まで、ようやく労働市場が完全雇用に近づいたと実感しています。取り急ぎ、人材確保のための取り組みについて、リポートのテーブルのデータを基にしたグラフは以下の通りです。

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実に、雇用の質的な改善について、賃金引き上げだけでなく、長時間労働の抑制をはじめとして、政府が取り組んでいる働き方改革のメニューがずらりと並んでいます。少子化による人口減少のために労働市場の逼迫度が増しており、賃上げとともに働き方改革が大いに進む条件が整備されています。政府の後押しも十分、なのかもしれません。

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