法人企業統計に見る企業活動は上向きを確認し賃上げや設備投資の動向を考える!
本日、財務省から昨年2016年10~12月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で、売上高は2期連続の増収で前年同期比+5.6%増の350兆6366億円、経常も3期連続の増益で+26.6%増の20兆1314億円でした。また、設備投資は設備投資は製造業で+1.0%、非製造業で+6.3%それぞれ増加し、非製造業が牽引する形で、+4.5%増の14兆2901億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1~3月設備投資4.5%増、金額でリーマン前回復 法人企業統計
財務省が1日発表した2017年1~3月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比4.5%増の14兆2901億円だった。プラスは2四半期連続。建設業や不動産、自動車分野の投資がけん引した。設備投資額はリーマン・ショック前の08年1~3月期(16兆8648億円)以来の大きさ。経常利益は26.6%増の20兆1314億円と、10~12月期にはとどかなかったものの1~3月期としては過去最高で、企業の増益基調が続いた。財務総合政策研究所は「日本経済全体のゆるやかな回復基調が続いている」と指摘した。
設備投資を産業別にみると、非製造業が6.3%増えた。賃貸用不動産の取得や建設が伸びたほか、商業施設やオフィスビルの増加がけん引した。製造業は1.0%増だったが、10~12月期の7.4%からは伸びが鈍化した。自動車大手の新型車投入に伴う投資が増えた。
国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で1.3%増。製造業が1.8%減少したものの、非製造業が3.0%伸びた。
経常利益の増加は3四半期連続で、製造業の70.3%増という大幅な伸びが寄与した。新型車効果に加え、16年1月に起きた大手企業の工場事故による生産停止などの反動で増えた。非製造業は10.7%増と3四半期連続のプラスだった。原油など資源価格の回復が商社を中心とする卸売業の利益に貢献した。
全産業の売上高は5.6%増の350兆6366億円と2四半期連続の増収で、非製造業が6.1%、製造業が4.3%、それぞれ増えた。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の17年1~3月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。
やや長いものの、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。
上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、前世紀のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整していない原系列の統計ながら、1~3月期の売上高経常利益率は製造業が5.7%、非製造業が5.2%と、国内経済もそれなりに堅調に回復・拡大を示しているものの、世界経済のいっそうの拡大や円安を受けて、製造業が非製造業よりも高い収益力を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については昨年2016年1~3月期ないし年央くらいを底に、昨年10~12月期には明らかに上向きに転じ、今年1~3月期もこの流れが継続していることが確認できたと思います。特に、設備投資については2016年年央を底に上向きに転じているのが読み取れますが、海外での投資への漏れが生じていることが国内投資の水準からうかがわれます。投資については成熟を示している我が国産業の現状から、能力増強投資の割合が決して高くなく、人手不足に起因する省力化投資や更新投資が中心になっている可能性があります。経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、さらなる法人税引き下げなどによる企業活動活性化がどこまで必要なのかは疑問です。企業が賃上げに慎重姿勢を示しているのであれば、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。
続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。
本日公表された法人企業統計などを盛り込んで、1~3月期のGDP統計2次QEが来週6月8日に内閣府から公表される予定となっています。設備投資が上方修正され、成長率もわずかながら上方修正されるんではないかと私は予想していますが、改定幅は小さいと思われます。ただ、もともとの1次QEが年率+2%を超える高成長でしたところ、さらに成長率が上方修正されるわけです。また、日を改めて2次QE予想として取りまとめたいと思います。
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