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2017年8月19日 (土)

今週の読書はややセーブして計5冊!

今週の読書は新刊書で以下の通り5冊です。ギリギリいえば、経済書はゼロのような気がします。なお、それほど新刊ではないところでは、集英社文庫から5月に全12巻が完結した江戸川乱歩の『明智小五郎事件簿』も読み切りました。これについては日を改めて取り上げたいと思います。

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まず、リー・ギャラガー Airbnb Story (日経BP社) です。著者は「フォーチュン」をホームグラウンドとするジャーナリストです。英語の原題そのまま邦訳のタイトルとしており、2017年の出版です。ということで、タイトル通りに、エアビー創業者3人、すなわち、美大出身者2人とエンジニア、というか、プログラマの3人です。推進派と抵抗派の葛藤にも十分な紙幅を割き、決して、新ビジネスを礼賛するにとどまらない内容で、バランスもよくなっていますが、まあ、基本は肯定派の立場だという気はします。シェアリング・エコノミーを考える場合、いわゆるシリコンバレーの4強、すなわち、グーグルとファイスブックとアップルが従来にないまったく新しいビジネスを立ち上げているのに対して、従来からあるビジネスをリファインしたアマゾンとも違って、その中間的なビジネスと私は考えています。ただし、従来からあるホテルに代替するエアビー、タクシーに代替するウーバーですから、アマゾンに近い形態かもしれません。まったく新しいビジネスを始めたグーグルやファイスブックは既存の抵抗勢力は殆ど無い一方で、アマゾンは従来の街の本屋さんをなぎ倒して成長しているわけですし、エアビーはホテルから競争相手と目されています。すなわち、かつてのスーパーマーケットのようなもので、パパママ・ストアからの反発はものすごいものがあった一方で、消費者からのサポートがどこまでられるかも成長の大きなファクターです。そして、グーグルやフェイスブックのようにブルーシーに悠々と漕ぎ出すのではなく、ロビイストを雇ったり、抵抗勢力に対抗する新興勢力を組織したりと、政治的な取り組みも必要とされかねません。そして、最後はマーケットを独占できるわけではなく、本書ではホッケー・スティックのような成長曲線と表現されていますが、実は、ロジスティック曲線で近似される成長曲線であろうと私は考えており、成長が鈍化するポイントはいつかは訪れます。現時点では1次微分も2次微分もプラスでしょうが、2次微分がゼロからマイナスになり、そして1次微分もゼロになる時期が訪れるかもしれません。当然です。その時にこれらのシェアリング・ビジネスがどう成熟しているかを知りたい気がしますが、私の寿命は尽きている可能性もあります。

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次に、豊田正和・小原凡司『曲がり角に立つ中国』(NTT出版) です。著者は経済産業省OBと海上自衛隊OBで、それぞれ経済や通商、さらに、安全保障の観点から現在の中国について現状分析と先行きの見通しを議論しています。安全保障の観点は私の専門外ですので、主として経済や通商の観点を見てみると、本書と同じように、私も中国はルイス的な転換点を越えて、従って、日本の1950-60年代のようないわゆる高度成長の時期を終えた可能性があると考えています。それを Gill and Kharas のように中所得の罠と呼ぶかどうかはともかく、少なくとも、海外から技術単独かもしくは資本に体化された技術を導入し、資本の生産性を向上させるとともに、ルイス的な用語を用いれば、生存部門から資本家部門への労働の移動がほぼ終了し、従って、少し前までの低賃金の未熟練労働力が内陸部から無尽蔵に湧き出てくるわけではなく、労働の限界生産性と等しい賃金を支払う必要が出てきたため、チープレーバーに基礎を置く製造業が採算を悪化させている時期に達しています。ただし、ここは私は議論あるところではないかと思いますが、中国の現時点での政権の最大の眼目が共産党政権の存続であることから、すなわち、国民の最大福祉ではないことから、大きな矛盾を抱えることとなります。そして、実際にその矛盾が激化し始めたのは天然モン事件の後の江沢民政権であり、広範な支持基盤のなかった江沢民政権が党や軍などに汚職を許容したり、あるいは、国内問題から国民の不満の目をそらせるために日本などに無理筋の要求をしたりという筋悪の政治が始まります。そして、江沢民-朱鎔基コンビ、胡錦濤-温家宝コンビに比較して、現在の習近平-李克強コンビは習主席に大きな比重がかかりすぎている気もします。もちろん、いわゆる核心については、温家宝主席以外はみんな核心だったわけですから、大騒ぎする必要はないかもしれませんが、少なくとも経済と外交まで総理の李克強から取り上げるのは行き過ぎだという気がします。毛沢東と周恩来んのコンビよりもバランスが悪そうに見えます。そして、ひょっこりひょうたん島のように動けないわけですから、我が国は地理的にどうしようもなく中国の隣国であり、無理筋にも対応させられているのもどうかという気がします。米国のトランプ政権がほぼほぼ中国に無力なのも情けない気がします。

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次に、酒井順子『男尊女子』(集英社) です。定評あるエッセイストによる男女同権、もしくは、男尊女卑的な目線からのエッセイです。相変わらず、よく調べが行き届いた大学生のリポートのようにスラスラ読め、決して、それほど為になるわけではないものの、あるある感がとても強い気がします。もっとも、著者や私のようなベビーブーマーの後の世代くらいまでで、私の倅どものようなミレニアル世代には理解がはかどらない可能性もあるような気がします。ということで、男性に比べて女性が戦略的に、先より後、前より後ろ、上より下のポジショニングを取って、男尊女卑的な因習に従うふりをしつつ、実は、モテを追求しているんではないか、という視点を本書は提供しています。そうかもしれません。私は男尊女卑も男女同権もいずれも興味なく、というか、どちらにも与せずに、ケース・バイ・ケースで経済学的な比較優位の基礎に立って役割分担をすればよい、という能天気な考え方ですので、世の中の男性の平均ほどは男尊女卑的な考えに凝り固まっているわけではないと認識しています。ただ、同しようもないのが妊娠能力であり、これは生物学的な性別に依存します。それ以外は、絶対優位ではなく、比較優位に基づいて役割分担すればいいと考えています。もっとも、実は、最大の制約要因は時間の有限性、というか、平等性であって、等しく各人に1日24時間が与えられています。生産性や性別に何の関係もなく24時間なわけで、これが最大の役割分担の制約条件となります。ですから、ホントに比較優位に基づいて役割分担をすると、場合によっては1日24時間では不足する可能性もあります。最後に、どうでもいいことながら、私はマッチョでレディ・ファーストを女性に対して極めて慇懃無礼に実行しているラテンの国に3年余り赴任していた経験があり、逆に、フツーにアジアな国にも3年間の経験があります。どちらもどちら、という気がします。日本に生まれ育った私には日本の男女間がもっとも自然に接することができるのは当然かもしれません。でも、歴史の流れとして男尊女卑の程度が弱まって、男女同権の方向に変化する歴史的な流れは止められないと覚悟すべきです。

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次に、青山七恵『ハッチとマーロウ』(小学館) です。著者はご存知芥川賞作家であり、私は彼女の大ファンです。基本的に、清純派の純文学作品が多いんですが、『快楽』などで少し背伸びをしようとした跡も見られる一方で、この作品では児童文学に近い仕上がりとなっています。タイトル通りの通称で呼ばれる2人の小学5年生の双子姉妹を主人公に、小学5年生から6年生にかけての12か月をほぼほぼ毎月1章で語り切っていて、ハッチとマーロウが交互に1人称で語っています。大晦日にシングルマザーのママが、大人を卒業してダメ人間になると宣言し、お正月からウダウダしてパジャマを着替えることもなく過ごします。ミステリ作家のママは仕事はもちろんしませんし、家事はすべて双子がこなさねばならなくなります。なお、舞台はほぼ長野県穂高のようです。そういった中で、お正月を過ごし、バレンタインデーを過ごし、4月には風変わりな転入生を軸に物語が進み、7月にはママと双子は東京でバカンスを過ごしたりします。小学5年生や6年生が1人称で語っているんですが、さすがの芥川賞作家ですので表現力はバッチリです。私くらいのスピードで読んでも隔月で1人称の語り口を交代する双子姉妹の個性、というか、俗にいうところのキャラがとても明瞭に読み分けられます。タイトルの順番ですから、おそらむハッチが姉でマーロウが妹なんだろうという気がしますが、勝ち気でシーダーシップに富み、自分のポニーテールも切り落とすくらい行動的なハッチに対して、ややハッチからは後方に退き妹らしくハッチについて行くマーロウ、ただ、ママがダラダラしたダメ人間ですので、ややキャラが立ってない気すらしてしまいます。双子姉妹の父親探しが迎える結末もとても興味深く仕上がっていますが、エンタメ小説ではなく純文学ですので、オチは明瞭ではありません。それでも、作者の表現力の豊かさには驚かされます。

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最後に、伊坂幸太郎ほか『短編少年』(集英社文庫) です。7月9日付けの読書感想文で取り上げた三浦しをんほか『短編少女』の姉妹短篇集です。収録作品は以下の通りです。すなわち、伊坂幸太郎「逆ソクラテス」、あさのあつこ「下野原光一くんについて」、佐川光晴「四本のラケット」、朝井リョウ「ひからない蛍」、柳広司「すーぱー・すたじあむ」、奥田英朗「夏のアルバム」、山崎ナオコーラ「正直な子ども」、小川糸「僕の太陽」、石田衣良「跳ぶ少年」です。これは私が男性だから、そう感じるだけかもしれませんが、『短編少女』と比べて、少年の方はまっすぐで、少なくともホラー的な作品はなかったような気がします。ただ、『短編少女』と比べて、読んだことのある作品は少なかったように思います。新鮮な気持ちで読んだ差なのかもしれません。

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