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2017年8月31日 (木)

7月統計で減産を示した鉱工業生産指数(IIP)をどう見るか?

本日、経済産業省から7月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。季節調整済みの系列で前月比▲0.8%の減産となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです

鉱工業生産、7月は0.8%低下 半導体製造装置など振るわず
経済産業省が31日発表した7月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み)速報値は前月比0.8%低下の101.5となった。低下は2カ月ぶり。汎用・生産用・業務用機械工業で半導体製造装置やタービン類の生産が減少したほか、電気機械工業でも発電関連設備などが振るわなかった。QUICKが事前にまとめた民間予測の中央値(0.3%の低下)も下回った。
7月の出荷指数は前月比0.7%低下の100.0だった。在庫指数は1.2%低下の107.8、在庫率指数は2.4%上昇の113.1となった。経産省は生産の基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いた。在庫指数が2カ月連続で低下したことに加え、生産指数の水準も1~6月と同程度を維持していることを考慮した。
7月の生産指数は15業種のうち11業種が前月から低下し、4業種が上昇した。汎用・生産用・業務用機械工業が2.5%低下したほか、電気機械工業が2.9%、医薬品を除く化学工業が1.4%それぞれ低下した。一方、中国や韓国向けにスマートフォン(スマホ)用の半導体メモリーなどが伸びたことが寄与し電子部品・デバイス工業は4.3%上昇した。
製造工業生産予測調査によると、8月は前月比6.0%の上昇、9月は3.1%の低下を見込む。ただ、経産省では「強めの生産計画に実績が追いつかなくなっている」傾向などを踏まえ、補正済みの試算値では8月は1.4%程度の上昇にとどまるとみている。8月が試算値通りとなれば、9月の生産は反動による減産の影響が薄れることから横ばいか微減となる見通しだとした。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2010年=100となる鉱工業生産指数そのもの、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲0.4%の減産でしたから、やや減産幅が大きいんですが、低下の幅は決して大きくなく、引き続き、生産は高水準にあると私は受け止めています。四半期でならして見て、4-6月期まで1年余りの期間に渡って生産は前期比プラスを継続しており、7-9月期についても四半期ベースで減産する可能性は大きくないと考えるべきです。内外需がまだかなり高水準にあり、昨日公表された米国の4-6月期GDP成長率を見ても、世界経済の回復・拡大基調は鮮明であり、外需はかなり堅調です。内需についても、8月の東京の日照時間が過去最低の可能性との報道も見かけて天候要因が気がかりですが、自動車が政策要因に基づく攪乱を終えて買い替えサイクルを迎えたり、電機などの耐久消費財でも売上げ増の予想があったりして、設備投資も含めて内需もようやく回復に向かう段階に入った可能性が高く、内外需ともに生産をサポートする方向にあると考えられます。ですから、製造工業生産予測調査でも8月は前月比+6.0%の上昇、9月は▲3.1%の低下を示しており、8月増産は勢い大き過ぎる印象もありますが、9月減産が見込まれていて、単月ではジグザグした動きながら、製造工業生産予測調査でも目先の生産の方向性は明らかに示されているといえます。
もっとも、先行き懸念がないではなく、最大のリスクの源は米国経済であろうと私は考えています。トランプ政権の通商政策は不透明なことはいうまでもありませんが、連邦準備制度理事会(FED)の金融政策が引締めに向かっていることは明らかで、直観的ながら、FEDの利上げは米国経済よりもむしろ新興国経済により大きな影響を及ぼす可能性があり、加えて、その影響の大きさも不確実性が高いと私は懸念しています。思わぬインパクトが思わぬ国や地域で生じるかもしれません。それだけに、消費や設備投資などの回復の兆しをより確実なものとし、内需中心の成長を確立させておきたいところです。

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2017年8月30日 (水)

延長10回糸井選手のホームランでヤクルトにサヨナラ勝ち!

  RHE
ヤクルト0000020100 380
阪  神1010000101x 440

わずかに4安打ながら、最後は延長10回糸井選手のホームランでヤクルトにサヨナラ勝ちでした。糸井選手以外は3番に入った大山選手が3打点と活躍し、3点目は代走植田選手が快足を飛ばして同点のホームインでした。鳥谷選手にヒットが出なかったのが残念で、また、リリーフ陣はそこそこ打たれて疲れが見えた気もします。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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自動車の小売売上額が伸びた商業販売統計から消費をどう見るか?

本日、経済産業省から7月の商業販売統計が公表されています。統計のヘッドラインとなる小売業販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.9%増の12兆2310億円、季節調整済みの系列で前月比+1.1%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の小売販売額、1.9%増 自動車と化粧品けん引
経済産業省が30日発表した7月の商業動態統計(速報)によると、小売業販売額は前年同月比1.9%増の12兆2310億円だった。9カ月連続で前年実績を上回った。経産省は小売業の基調判断を「持ち直しの動きがみられる」で据え置いた。
業種別でみると最も増加寄与度が高かったのは自動車小売業で、前年同月比で6.6%増加した。新型車の好調が続いているが、季節調整済みの前月比では2.0%減と4カ月ぶりに減少に転じており足元の販売には減速感もみられる。
次点の医薬品・化粧品小売業は5.0%増となった。インバウンド需要を含めた化粧品の好調や、日照時間の長さを受けた紫外線(UV)対策関連商品の伸びなどが寄与した。ドラッグストアの新規出店効果もあった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で0.2%減の1兆7179億円だった。既存店ベースでも同じく0.2%の減少となった。6月に夏のセールを前倒しで実施した反動が出たことなどから衣料品が苦戦し、百貨店が全店ベースで2.5%減少した。一方、スーパーは1.1%増加した。主力の飲食料品が堅調だったほか、エアコンをはじめとした家電の販売も支えとなった。
コンビニエンスストアの販売額は3.1%増の1兆763億円だった。冷たい調理麺やファストフードなどを中心に商品の販売が好調に推移したほか、プリペイドカードやチケットの販売が伸びサービス売上高も2カ月ぶりに増加した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下のパネルは季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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この私のブログでは決して積極的にフォローはしていませんが、昨日公表された総務省統計局の家計調査については、7月統計は市場の事前コンセンサスと比較しても下振れした結果だったんですが、今日発表の経済産業省の商業販売統計については、まずまず強含みで持ち直しの結果が出ています。引用した記事にある通り、自動車はエコカー減税や消費税率引き上げなどの政策的な攪乱要因からかなりの程度に脱しつつあり、少しずつ買い替えパターンを取り戻しつつあると私は見ています。自動車ほどではありませんが、家電の耐久消費財についても家電エコポイントや消費増税による攪乱から買い替えパターンが復活しつつある印象です。しかし、天候要因との関係では実感とのズレもあるような気がします。すなわち、7月から8月にかけては、気温や日照時間が例年を下回った気がしていたんですが、インバウンド消費に基づく化粧品やドラッグストアでの売上は別としても、UV対策商品の売行きが伸びたという実感は私にはありません。もっとも、7月の天候と8月の天候を私は混同している可能性もありますし、東京だけの天候要因ではなく、全国ベースではやっぱり猛暑だったのかもしれず、その意味で、私の直観的な印象が間違っている可能性もあります。家計調査と商業販売統計で共通して夏物衣料品が伸びていますので、その意味では、季節要因が消費にプラス要因だった可能性もあります。他方で、天候ではなく、インバウンド消費の影響かもしれません。まあ、印象論ですので結論は不確かです。
先日、内閣府から公表された4-6月期のGDP統計1次QEでは消費がかなり大きなプラスを記録しましたが、7-9月期のGDPベースの消費はマイナスに落ち込む可能性が高いと覚悟していましたが、統計局の家計調査が低いところから7月が始まり、経産省の商業販売統計がやや高いところから始まった印象です。来週金曜日には4-6月期の2次QEが明らかになりますし、GDPでもっともシェアの大きい消費の動向については注視していきたいと思います。

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2017年8月29日 (火)

ルーキー小野投手の初勝利おめでとう!

  RHE
ヤクルト000000000 022
阪  神02001000x 370

ルーキー小野投手が初勝利を飾り、ヤクルトに完封勝ちでした。打つ方は3点ですから少し物足りないものの、福留選手とロジャース選手の飛車角落ちですから仕方ありません。その分、いつものポーカーフェースそのままに、鳥谷選手が淡々と2000本安打への歩みを進めて先制点を叩き出し、内野手がそれぞれ打点を上げました。投げる方は、13回目の先発登板で小野投手が初勝利を上げ、7回からの勝ちパターンのリリーフ陣も完璧でした。

甲子園に戻って明日も、
がんばれタイガース!

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雇用統計は失業率も有効求人倍率も引き続き人手不足を示す!

本日、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が公表されています。いずれも7月の統計です。失業率は2.8%と前月から変わらず、有効求人倍率は前月からさらに上昇して1.52倍、また、正社員の有効求人倍率も前月統計から1倍に達しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の有効求人倍率1.52倍 製造業・運輸業が活発
厚生労働省が29日発表した7月の有効求人倍率(季節調整値)は前月より0.01ポイント高い1.52倍だった。上昇は5カ月連続。製造業や運輸業の求人が活発だった。総務省が同日発表した7月の完全失業率(同)は2.8%と6月と同じで、女性の失業率が24年2カ月ぶりの低い水準だった。景気回復と人手不足を受け、雇用環境は安定した状況が続いている。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人当たり何件の仕事があるかを示す。7月はバブル期に最も高かった1.46倍より高く、1974年2月以来43年5カ月ぶりの高水準だった。
企業の求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は15.0%だった。インターネットを通じて企業に直接求職する例などを除くが、6~7人雇おうとして採用できたのが1人という計算だ。比較可能な2002年以降で過去最低だった。
企業は将来の人手不足を見越して、長期で雇える正規社員の雇用を増やしている。正社員の求人倍率は1.01倍で、統計がある04年11月以来初めて1倍を上回った6月と同水準だった。正社員数は前年同月比で60万人増え、3カ月連続で非正規社員の増加を上回った。
新たに出された求人の数を示す新規求人数(原数値)は前年同月比で3.5%増加した。業種別にみると、スマートフォンや自動車の生産が好調な製造業(10.5%増)や運輸・郵便業(9.2%増)で増加が目立った。
完全失業率は働く意欲のある人のうち、職がなく求職活動をしている人の割合を示す。失業率を男女別にみると、男性は3.1%、女性は2.5%。女性の失業率は1993年5月以来の低水準だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、失業率も有効求人倍率もいずれもバブル経済期のレベルに匹敵するところまで人手不足を示す水準にあります。特に、有効求人倍率については、バブル経済期を飛び越えて、第1次石油危機直後の1974年までさかのぼらねば経験できない水準まで上昇を示しており、しかも、引用した記事にもある通り、正社員の有効求人倍率が前月統計から1倍を超えて1.01倍を記録しましたので、新聞・テレビなどのメディアなどでははやし立てていますが、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。なお、私の手元にあるデータでは、有効求人倍率の過去最高値は1973年11月の1.93となっていて、さすがに、この水準に到達するにはもっと時間がかかりそうです。賃金が上がらない基本的な理由は、人手不足に伴う労働市場への新規参入です。その昔は、ルイス的な二重経済の下で農村から都市部の製造業などに労働が移動したんですが、さすがに、二重経済が解消されてから長らく経過し、現在では、子育てが一段落した中年女性と一線を退いた高齢男性が新たな職場に参入しているようで、総務省統計局が労働力調査の中で公表している性別階級別の就業率を見ると、35-44歳の女性と65歳超の男性の就業率の上昇が観察されます。しかし、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、正規職員の増加によりマクロの所得としては増加が期待できる雇用水準ではないかと私は考えています。

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2017年8月28日 (月)

@nifty何でも調査団によるスナック菓子ランキングやいかに?

先週金曜日の8月25日付けで、@nifty何でも調査団からスナック菓子ランキングが明らかにされています。同じような調査は何種類もあるのかもしれませんが、とても興味あるところ、以下の通りです。

1位
ポテトチップス (カルビー) 88.2%
2位
かっぱえびせん (カルビー) 84.4%
3位
カール (明治) 71.8%
4位
キャラメルコーン (東ハト) 68.3%
5位
ポテトチップス (湖池屋) 67.4%
6位
じゃがりこ (カルビー) 67.2%
7位
とんがりコーン (ハウス食品) 65.9%
8位
サッポロポテト (カルビー) 62.9%
9位
ベビースターラーメン (おやつカンパニー) 56.1%
10位
カラムーチョ (湖池屋) 46.8%

眠気覚ましも含めてガムを別にすれば、私はオヤツはチョコレートか、この季節はアイスクリーム一筋で、こういったスナック菓子は食べないんですが、職場で周囲を見回していると、何となく判る気もします。

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2017年8月27日 (日)

藤浪投手復活の手応えもリリーフ陣が崩壊して巨人にボロ負け!

  RHE
阪  神000000000 020
読  売00000060x 680

投手戦でジャイアンツに競り負けました。7回はリリーフ陣が崩壊し、結果的には大敗かもしれませんが、藤浪投手の復活は手応えあったというべきです。リリーフ陣はムリをしていますので、この季節は仕方ないかもしれません。むしろ、打てない打線に責任があったのかもしれません。それにしても、広島と巨人に勝ち越せませんから、このあたりが今の阪神の実力なんでしょうね。

今週は甲子園に戻って、
がんばれタイガース!

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2017年8月26日 (土)

先発能見投手を打線がしっかり援護して巨人に完勝

  RHE
阪  神050000120 8100
読  売000300010 481

打線が先発能見投手をしっかり援護して巨人に完勝でした。序盤の2回にジャイアンツの先発ルーキーに猛虎打線が襲いかかり、終盤にも効果的に追加点を上げ、投げては先発能見投手をつないで、8回に失点したマテオ投手を別にして勝ちパターンのリリーフ陣は完璧でした。

明日は藤浪投手に注目して、
がんばれタイガース!

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今週の読書はいろいろ読んで計7冊!

今週は夏休みからお仕事に復帰して、それでも8月ですので、やや時間的な余裕もあり、7冊とついついオーバーペースになってしまいました。新書や文庫を含みますので、それほどのボリュームでもないんですが、来週はもう少しセーブしたいと思います。

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まず、山口一男『働き方の男女不平等』(日本経済新聞出版社) です。著者は米国シカゴ大学社会学教授ですが、研究内容はほとんど経済学といって差し支えありません。本書では、タイトル通り、男女間の労働市場における差別についてモデルを用いた理論分析と実証分析を行っています。基本的には、労働供給サイドではなく、企業側の女性労働の需要サイドの研究なんですが、途中で少し私も混乱を来してしまい、時間当たり賃金率なのか、時間当たり賃金率に労働時間を乗じた所得なのか、もしも後者であれば、単に女性を長時間働かせればOKということかもしれません。ただ、最終第8章で著者の考えが最後の最後に明らかにされるんですが、生産性と比較した賃金の機会の平等を考えるのであれば、統計的な差別を含めて、企業サイドの女性労働値の差別的取扱いに従って、機会の平等を確保しつつ結果の平等を達成できない事態が考えられるとした上で、結果としての平等を追求すべき著者の考えが明らかにされます。ホントの適材適所を実現し、性的な差別のない雇用環境を整え、各人が生産性や適正に従った労働を実行し、その労働に応じた賃金を受け取る、というのは確かに理想かもしれませんが、現在の制度学派的な思考の下では、ハッキリいって、労働や雇用の課題ではありません。所得はもちろん、ワークシェアリングを含めた分配の課題と考えるべきです。そして、理想の所得の分配が、理想的な労働や仕事の配分に基づいて実行されるかは、マルクス主義的に考えなくても、現行の制度下では実行可能かどうかは疑問です。ケインズの1日3時間労働とともに、のっとも理想的な雇用や労働の配分と所得の分配を実現するためには、現在の市場による資源配分ではない、別のシステム、ひょっとしたら、社会主義や共産主義かもしれませんが、たぶん、違うだろうと私は想像しています。そういった、別の次元を考える必要があるような気がしてなりません。

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次に、香取照幸『教養としての社会保障』(東洋経済) です。著者は厚生労働省、というか、厚生省出身の公務員で、現在はどこかの大使に転出していますが、小泉内閣のころに長らく官邸に詰めていたことを記憶しています。私もそのころ官邸勤務でした。ということで、タイトルからも理解できる通り、社会保障という場合、著者のように実務として関係する場合、そして、アカデミックな世界などで学問として関係する場合が多く、制度的に複雑なこともあって、身近な割には教養として接することはないような気もします。平易な表現とともに、国民各層が身近に接するマイクロな社会保障の面だけでなく、政府財政への影響なども含めたマクロの社会保障の両面を取り上げています。なかなかの良書だという気がしますが、難点もいくつかあります。まず、冒頭に社会保障に対する批判については教育の責任として文部科学省に責任を転嫁しています。私は冒頭のこの部分だけでかなり評価を落としているんではないか、と受け止めてしまいました。それから、ここまで社会保障を展開しているんですから、最近の話題としては人工知能(AI)やロボットの活用に伴うベーシック・インカムについてほとんど触れないのは、やはり、現時点での社会保障論としては物足りない気がします。

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次に、塚崎公義『経済暴論』(河出書房新社) です。著者は興銀の調査部から学界に転じたエコノミストのようです。実務家ご出身で大学院などのアカデミックな経歴ではありませんから、経済学部卒業ではなく法学部卒業だったりします。ということで、少し常識登攀するようないくつかの事実を平易に解説しています。ただし、私の目から見て、経済合理性に基づいて世間一般の常識と反する結果を導き出しているケース、例えば、埋没原価サンクコストの問題とか、組織への忠誠心と仕事のプロ意識のトレードオフとか、が取り上げられている一方で、行動経済学的な検知などから人間の非合理的な決定が世間一般の常識と反するケースを、特に区別せずに同一の「世間一般の常識と違う」というカテゴリーでくくっていますので、経済学的な素養があれば、逆に疑問に感じる場合もありそうな気がします。でも、本書の結論たる最終第6章の、特に、最後の数点の論点、すなわち、日銀が債務超過に陥っても問題ない、また、日本政府は破綻しない、あるいは、日本経済は労働力不足で黄金時代を迎える、などの論点は私もまったく同意します。ただ、黒田日銀の金融政策を「偽薬効果」と称しているのは、何らの根拠が示されておらずレッテル貼りに終わっているのが残念です。期待に働きかける金融政策に対する無理解が背景にあったりするんでしょうか?

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次に、有栖川有栖『濱地健三郎の霊なる事件簿』(角川書店) です。作者はご存じ関西系の新本格派ミステリの代表的な作者の1人です。法月綸太郎や綾辻行人など私の出身の京都大学ではなく、同志社大学のご出身だと記憶しています。この作品は作者あとがきによれば怪談という位置づけのようですが、依然、『幻坂』に2話ほど収録されてうぃた主人公を心霊探偵として前面に押し出して、事件解明に当たるミステリ風な短編を収録しています。オカルトものとして怪奇現象の解明や除霊などをするものとしては、櫛木理宇「ホーンテッド・キャンパス」がありますが、それほど心霊現象を全面に押し出したものではなく、心霊現象をヒントに実際の人間の犯罪行為を解明するというパターンが多かったような気がします。また、オカルト探偵といえば、エドワード D. ホックの作になるサイモン・アークがいますが、サイモン・アークは超常現象に見える事件ながらm実は物理法則に即した、というか、決して超常現象ではない事件を解明しますので、かなり違います。ということで、本書は、決して、殺された被害者の例から犯人を聞き出すという安直なミステリではなく、新本格の旗手の手になるミステリです。それから、次の真梨幸子のイヤミスとついつい読み比べて比較してしまうんですが、やっぱり、法月綸太郎とかこの作者の作品は文体がとても上品です。それだけ読みやすいともいえます。

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次に、真梨幸子『祝言島』(小学館) です。作者はイヤミスの女王のひとりであり、主として女のいやらしさを盛り込んで読後感の悪いミステリを書く作家です。とはいいつつ、私はかなりこの作家は評価しており、出来る限り新刊書を読もうと努力しています。本書は、作中では小笠原諸島の南端付近にあって、すでに地図からは抹消されているタイトルの島にまつわる物語ですが、主たる舞台は東京です。1964年の東京オリンピックの直前に祝言島の火山が噴火し、島民は青山の都営住宅に避難した、という設定になっています。そこから、40年余の後の2006年12月1日に東京で3人の人物が連続して殺され、未解決となっている「12月1日連続殺人事件」をからめて、独特の異様なストーリを紡ぎ出しています。ミステリである限り、殺人などの違法行為は当然に物語に含まれますが、この作品ではかつてのロボトミー手術などの集団による不法行為が盛り込まれており、その点にやや違和感を覚えました。また、トランスセクシュアルの存在も盛り込んでいますが、真梨作品としてはそれほどの出来とは思えませんでした。たしかに、グロテスクでエロの要素もあるんですが、私自身の読書の傾向として、ややロボトミーで読む気をなくした気がします。

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次に、吉川洋・八田達夫{編著}『「エイジノミクス」で日本は蘇る』(NHK出版新書) です。著者・編者は高名なマクロ経済学者ですが、野村総研や三菱総研のスタッフも執筆陣に加わっています。高齢化が進展して経済の将来に悲観的な見方が広がる中で、敢然とこの見方に挑戦し、高齢化をイノベーションの好機と捉え、日本経済の明るい先行きを示しています。具体的には、本書のp.30の図用に従って、財・サービスのイノベーション+制度のイノベーション×病弱な人+健康な人、2×2の4つのマトリクスに従って、以下第2章から5章まで4章に渡って各論が展開されます。基本的には、ベンチャー資本などによる新たな革新の方向性をかなり拡大解釈しているだけなんですが、やっぱり、こういったイノベーションに関するケーススタディでは、当然ながら、成功例ばかりがクローズアップされ、成功例の裏側にその数倍数十倍数百倍の失敗例が隠されていることが忘れられていることは覚悟しておくべきです。まあ、統計の分析とケーススタディの違いです。本書で取り上げられているイノベーションのシーズがどこまで現実に開花するかは私にも不明ですが、高齢化が決して経済成長にマイナスばかりではない、という点は特に強調されるべきであろうと思います。

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最後に、泡坂妻夫・折原一ほか『THE 密室』(実業之日本社文庫) です。推理小説の中でも、密室をテーマとしたアンソロジーです。収録作品は、飛鳥高「犯罪の場」、鮎川哲也「白い密室」、泡坂妻夫「球形の楽園」、折原一「不透明な密室」、陳舜臣「梨の花」、山村正夫「降霊術」、山村美紗「ストリーカーが死んだ」の7つの短編であり、作者の氏名の50音順で収録されています。それほどレベルは高くありませんが、それぞれに特徴的な密室事件の解明が図られています。江戸川乱歩などのその昔から、縁の下や屋根裏などのある日本家屋の特徴として、密室が成立しにくいといわれ続けていますが、それなりにバリエーションに富んだ短編ミステリを収録しています。ただし、繰り返しになりますが、それほどレベルは高くない上に、それほど新しくもないので、もっと本格的に密室を読みたい向きには、ナルスジャックと組む前のボアローの編集になる『殺人者なき6つの殺人』の方がいいかもしれません。もっとも、コチラもそれほどレベルは高くありません。

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2017年8月25日 (金)

5回に先発青柳投手とリリーフ岩崎投手が打ち込まれて巨人に負ける!

  RHE
阪  神120000000 3110
読  売10005000x 6101

投手陣が5回を乗り切れずに巨人に完敗でした。先発の青柳投手が同点ホームランを浴び、リリーフした岩崎投手も火に油を注いで火だるまに炎上しました。打つ方も、11安打と巨人を上回りながら、いつもの決定打不足で3得点に終わりました。あれだけボール球を振り回す選球眼ではダメでしょうね。

まだまだ続く消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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プラスの続く消費者物価(CPI)と企業向けサービス物価(SPPI)をどう見るか?

本日、総務省統計局から消費者物価指数(CPI)が、また、日銀から企業向けサービス物価指数(SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも7月の統計です。生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は+0.5%、また、SPPIのヘッドライン上昇率も+0.6%と順調にプラスを継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

消費者物価7月0.5%上昇 2年7カ月ぶり水準、ビール類寄与
総務省が25日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの激しい生鮮食品を除く総合指数が100.1となり、前年同月比で0.5%上昇した。プラスは今年1月から7カ月連続で、電気代などエネルギーのほか、安売り規制が強化されたビール類が上昇に寄与した。
前年比の伸び率は消費増税の影響を除くと、14年12月以来、2年7カ月ぶりの水準。物価が上昇したのは282品目(53.9%)で、前月(279品目)を上回った。
全体の伸びをけん引した品目はエネルギーで、全体を0.42ポイント押し上げた。電気代が6.1%、ガソリンが6.3%がそれぞれ上がった。
生鮮食品を除く食料は0.9%上昇した。国税庁が6月から酒の安売り規制を強化。メーカーと小売業者に対して、行き過ぎた安売りをさせないようにしたことで、例えばビールは前年を7.9&上回るなど上昇材料になった。
エネルギーも除く総合指数は0.1%上昇にとどまった。5カ月ぶりの上昇だが、エネルギー以外の物価の伸びは鈍い。スマートフォンを含む携帯電話機は8.6%低下した。
総務省が同日発表した東京都区部の8月のCPI(中旬速報値)は、生鮮食品を除く総合指数で0.4%上昇した。エネルギーが引き続き全体を押し上げたほか、8月から70歳以上の高額療養費の自己負担額の上限が引き上げられた影響で、診療代が3.5%のプラスになった。
一方、携帯電話の通信料は5.4%低下した。前月の2.3%から下落幅が広がった。同省は「KDDIの新しい値下げプランの影響が出ている」と指摘。来月発表の8月の全国分も押し下げ要因になるもようだ。
生鮮野菜は2.3%低下した。8月は東京都心で40年ぶりに21日連続で雨が降るなど、関東や北日本で天候不順が続いているが、同省によると「長雨の影響はまだ出ていない」という。
7月の企業向けサービス価格、前年比0.6%上昇 49カ月連続前年上回る
日銀が25日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.9で、前年同月比で0.6%上昇した。前年比での上昇は49カ月連続。人手不足による労働者派遣サービスの価格上昇などが指数全体を押し上げた。
輸送関連の価格も上昇した。「貨物輸送ではドライバー不足による人件費上昇分を輸送価格に転嫁する動きが続いている」(調査統計局)。今年は夏休みシーズンの旅客需要が好調なこともあり航空旅客輸送では割引運賃の設定が減少しているという。訪日外国人の利用増もあり宿泊サービスの価格も上昇基調が続いている。
一方で前年同月比での指数の上昇幅は6月(0.7%上昇)から縮小した。自動車やオンラインゲーム関連の広告需要の落ち込みでテレビ広告の価格が下落したことが響いた。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち、価格が前年比で上昇したのは80品目、下落は33品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は47品目と6月の確報値(45品目)と比べて拡大した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、統計を2つも取り上げたので、とても長くなってしまいました。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。

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上のグラフについては、加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。念のため。ということで、現状での物価上昇は財関係ではエネルギーが、そして、サービスでは人手不足が物価上昇を牽引しているように見えます。ただし、私の計算によれば、サービスの寄与度は先月6月統計からマイナスに転じており、7月統計で全国CPI上昇率+0.5%を牽引しているのは、私の計算による寄与度ベースで、エネルギー+0.42%、生鮮食品を除く食料+0.20%であり、上のグラフからも明らかな通り、コア財とサービスの寄与度はマイナスです。もっとも、財についてはビールの安売り規制が、また、サービスについては携帯電話料金の低下の影響もあり、やや官の行動に民が追随している印象もあり、必ずしも、人手不足の緩和や需給ギャップなどの市場要因ではなく、やや攪乱要因ではないか、と私は受け止めています。本来の需給要因としては、買い替えサイクルに従って、そろそろ、耐久消費財の価格の下落も終息に向かい、年内いっぱいはコアCPI上昇率は+1%近くを目指して上昇幅を拡大する可能性が高い、と私は予想しています。しかし、来年に入った後については、そのまま日銀の物価目標である+2%に向かって上昇幅を拡大するかどうかは不透明で、為替や国際商品市況の石油価格などの動向を見る限り、再びCPI上昇幅が縮小する可能性も決して小さくないと受け止めています。賃金動向も気がかりですが、日銀金融政策の正念場かもしれません。

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続いて、SPPI上昇率のグラフは上の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。SPPI上昇率については、コアCPI上昇率が徐々に上昇幅を拡大しているのに対して、逆に、2-5月で4か月連続して+0.8%の上昇を示した後、6月+0.7%、7月+0.6%と上昇幅を縮小させています。引用した記事にもある通り、テレビ広告をはじめとする広告の前年同月比上昇率が6月▲0.4%に続いて、7月も▲2.9%と下落している影響が大きいんですが、逆に、人手不足の中で労働者派遣サービスは6月+1.4%に続いて、7月も+1.8%と着実なプラスを記録しており、底堅い動きを示しています。貨物輸送をはじめとする運輸・郵便なども堅調です。

日銀の物価目標+2%が順調に進んでいると考えているエコノミストは少数派ではないかと思うんですが、私は現実に合わせて物価目標を引き下げることについては疑問を持っています。すなわち、為替相場がいくぶんなりとも購買力平価に基づいて決定される部分があるなら、諸外国のインフレ率より日本の方が低ければ円高に振れるおそれが高いからです。少なくとも物価と為替については国際標準を目指して金融政策を割り当てるべきであろうと考えています。

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2017年8月24日 (木)

マクロミル・ホノテによる世界15都市のSNSランキングやいかに?

一昨日8月23日にマクロミル・ホノテから世界15都市別SNS利用状況調査の結果が明らかにされています。下の画像の通りです。

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Facebook と YouTube の利用率は調査対象となった15都市のうちで上海を除く14都市でトップ3にランクインしており、特に、Facebook は、台北・東南アジア各都市で9割を超え、北米・欧州でも7~8割に上っています。また、LINE はバンコク、台北、東京の順に浸透を見せており、ジャカルタでも6割が利用しています。
私自身は世界標準の Facebook に登録していて、高校と大学時代の友人をごく少数だけ友人登録しているんですが、我が家の倅どもの世代などはいろいろとやっているんでしょうね。

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2017年8月23日 (水)

ホームラン飛び交う空中戦を制してヤクルトに完勝!

  RHE
阪  神004010200 7101
ヤクルト100120000 4121

両軍合わせて5ホーマーの空中戦を制してヤクルトに完勝でした。先発の岩田投手は5回途中で降板し勝ち星がつきませんでしたが、イニングをまたいだ藤川投手が2勝目を上げました。主力打者のホームランもさることながら、2000本安打までカウントダウンに入った鳥谷選手も毎試合着実にヒットを積み重ねています。

まだまだ続く消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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リクルートジョブズ調査によるアルバイト・パートと派遣スタッフ平均時給やいかに?

本日、厚生労働省から毎月勤労統計の6月確報が公表され、賃金が速報から確報に向けてずいぶんと上方修正されています。すなわち、季節調整していない原系列の実質賃金は前年同月に比べて▲0.1%減少と、速報段階から+0.7%ポイント上方修正され、ややびっくりしたエコノミストも多かったように私は受け止めています。ということで、来週の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の7月の調査結を見ておきたいと思います。

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上のグラフを見ればかなり明らかなんですが、アルバイト・パートについてはまだ前年同月比でプラスであり伸びは続いていますが、伸び率としてはそろそろピークアウトとも見える一方で、派遣スタッフの方はまだ前年同月比でマイナスが続いています。同じ業界の「エン派遣 三大都市圏の募集時平均時給レポート」でも派遣時給は7月まで10か月連続で前年同月比マイナスを続けています。この派遣スタッフの時給低下は、どうも、医療・介護系の求人に起因しているようです。つまり、医療・介護系はもともと他の職種に比べ派遣時給の水準が低いようなんですが、同時に、慢性的な人材不足と業務の分業化を背景に求人数は大幅に増加しており、加えて、「時短OK」や「週3日から勤務可」など、短時間で給与水準の低いパートタイム案件が増加していることから、この影響で集計上はマイナスとなっている、とエン・ジャパンのリポートでは分析しています。

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2017年8月22日 (火)

死に馬のヤクルトにサヨナラ負け!

  RHE
阪  神000220000 480
ヤクルト010300001x 5120

中盤から打線がサッパリ振るわず、最下位に沈んで来季の監督交代まで発表された死に馬のヤクルトにサヨナラ負けでした。広島が横浜に大逆転で負けただけに、取っておきたい試合でした。小野投手の緊急降板も痛かったんですが、6回以降は打線がヤクルトのリリーフ陣に沈黙しました。桑原投手が最近はやや不安定な気もします。

まだまだ消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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2017年8月21日 (月)

集英社文庫の『明智小五郎事件簿』全12巻を読む!

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このお盆の夏休みまでに、集英社文庫から出版されていた江戸川乱歩の『明智小五郎事件簿』全12巻を読みました。作者の没後50年を記念して、昨年2016年5月から刊行が開始され、今年2017年4月に完結しています。ひとつの特徴として、発表順ではなく、シャーロッキアンよろしく、事件発生の年月を特定し、その順番で並べてあります。ただし、戦後の少年探偵団モノは含まれておらず、戦前までの事件しか収録されていません。やっぱり、怪人二十面相や黒蜥蜴などとの対決作品が読ませどころです。ほとんど現実味のない荒唐無稽な犯罪行為などもありますので、小説向きというよりはテレビや映画向きのストーリーかもしれません。なお、最初の画像は12巻セットですが、私は近くの区立図書館で借りて、週末ごとに2-3冊ずつ読み進みました。

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2017年8月20日 (日)

延長11回に鳥谷選手の決勝打で中日を3タテ!

 十一 RHE
阪  神10100000001 3100
中  日01001000000 292

先発能見投手は粘りながらも5回同点で降板し、最後は延長11回に鳥谷選手の決勝打で中日を3タテでした。鳥谷選手は順調に2000本安打へのカウントダウンを進めています。それにしても、長い試合でした。
相も変わらず、再三再四、塁上を賑わしながらも決定打のない阪神打線でした。特に大山選手のブレーキが効いていました。鳥谷選手がほとんどイニングの先頭打者だったような気がします。でも、6回以降のリリーフ陣は盤石で、特に、最後を締めたドリス投手の安定感は抜群でした。広島には勝てないんですから、クライマックス・シリーズ目指して、下位球団からしっかり勝っておきたいところです。

消化試合ながら次のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

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2017年8月19日 (土)

先発青柳投手のナイスピッチングで中日に連勝!

  RHE
阪  神020130011 8120
中  日100000000 130

先発青柳投手が8回途中まで3安打1失点とナイスピッチングで中日に連勝でした。ナゴヤドームであろうとどこであろうと、実力の差を見せつけました。
ドーム球場でデーゲームとは知らず、4時半に帰宅するとすでに最終回でした。先発青柳投手のピッチングも、9回以外の得点シーンも、すべて見逃しましたが、連日の楽勝で中日を連破です。

消化試合ながら能見投手の勝ち星に期待して、
がんばれタイガース!

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今週の読書はややセーブして計5冊!

今週の読書は新刊書で以下の通り5冊です。ギリギリいえば、経済書はゼロのような気がします。なお、それほど新刊ではないところでは、集英社文庫から5月に全12巻が完結した江戸川乱歩の『明智小五郎事件簿』も読み切りました。これについては日を改めて取り上げたいと思います。

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まず、リー・ギャラガー Airbnb Story (日経BP社) です。著者は「フォーチュン」をホームグラウンドとするジャーナリストです。英語の原題そのまま邦訳のタイトルとしており、2017年の出版です。ということで、タイトル通りに、エアビー創業者3人、すなわち、美大出身者2人とエンジニア、というか、プログラマの3人です。推進派と抵抗派の葛藤にも十分な紙幅を割き、決して、新ビジネスを礼賛するにとどまらない内容で、バランスもよくなっていますが、まあ、基本は肯定派の立場だという気はします。シェアリング・エコノミーを考える場合、いわゆるシリコンバレーの4強、すなわち、グーグルとファイスブックとアップルが従来にないまったく新しいビジネスを立ち上げているのに対して、従来からあるビジネスをリファインしたアマゾンとも違って、その中間的なビジネスと私は考えています。ただし、従来からあるホテルに代替するエアビー、タクシーに代替するウーバーですから、アマゾンに近い形態かもしれません。まったく新しいビジネスを始めたグーグルやファイスブックは既存の抵抗勢力は殆ど無い一方で、アマゾンは従来の街の本屋さんをなぎ倒して成長しているわけですし、エアビーはホテルから競争相手と目されています。すなわち、かつてのスーパーマーケットのようなもので、パパママ・ストアからの反発はものすごいものがあった一方で、消費者からのサポートがどこまでられるかも成長の大きなファクターです。そして、グーグルやフェイスブックのようにブルーシーに悠々と漕ぎ出すのではなく、ロビイストを雇ったり、抵抗勢力に対抗する新興勢力を組織したりと、政治的な取り組みも必要とされかねません。そして、最後はマーケットを独占できるわけではなく、本書ではホッケー・スティックのような成長曲線と表現されていますが、実は、ロジスティック曲線で近似される成長曲線であろうと私は考えており、成長が鈍化するポイントはいつかは訪れます。現時点では1次微分も2次微分もプラスでしょうが、2次微分がゼロからマイナスになり、そして1次微分もゼロになる時期が訪れるかもしれません。当然です。その時にこれらのシェアリング・ビジネスがどう成熟しているかを知りたい気がしますが、私の寿命は尽きている可能性もあります。

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次に、豊田正和・小原凡司『曲がり角に立つ中国』(NTT出版) です。著者は経済産業省OBと海上自衛隊OBで、それぞれ経済や通商、さらに、安全保障の観点から現在の中国について現状分析と先行きの見通しを議論しています。安全保障の観点は私の専門外ですので、主として経済や通商の観点を見てみると、本書と同じように、私も中国はルイス的な転換点を越えて、従って、日本の1950-60年代のようないわゆる高度成長の時期を終えた可能性があると考えています。それを Gill and Kharas のように中所得の罠と呼ぶかどうかはともかく、少なくとも、海外から技術単独かもしくは資本に体化された技術を導入し、資本の生産性を向上させるとともに、ルイス的な用語を用いれば、生存部門から資本家部門への労働の移動がほぼ終了し、従って、少し前までの低賃金の未熟練労働力が内陸部から無尽蔵に湧き出てくるわけではなく、労働の限界生産性と等しい賃金を支払う必要が出てきたため、チープレーバーに基礎を置く製造業が採算を悪化させている時期に達しています。ただし、ここは私は議論あるところではないかと思いますが、中国の現時点での政権の最大の眼目が共産党政権の存続であることから、すなわち、国民の最大福祉ではないことから、大きな矛盾を抱えることとなります。そして、実際にその矛盾が激化し始めたのは天然モン事件の後の江沢民政権であり、広範な支持基盤のなかった江沢民政権が党や軍などに汚職を許容したり、あるいは、国内問題から国民の不満の目をそらせるために日本などに無理筋の要求をしたりという筋悪の政治が始まります。そして、江沢民-朱鎔基コンビ、胡錦濤-温家宝コンビに比較して、現在の習近平-李克強コンビは習主席に大きな比重がかかりすぎている気もします。もちろん、いわゆる核心については、温家宝主席以外はみんな核心だったわけですから、大騒ぎする必要はないかもしれませんが、少なくとも経済と外交まで総理の李克強から取り上げるのは行き過ぎだという気がします。毛沢東と周恩来んのコンビよりもバランスが悪そうに見えます。そして、ひょっこりひょうたん島のように動けないわけですから、我が国は地理的にどうしようもなく中国の隣国であり、無理筋にも対応させられているのもどうかという気がします。米国のトランプ政権がほぼほぼ中国に無力なのも情けない気がします。

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次に、酒井順子『男尊女子』(集英社) です。定評あるエッセイストによる男女同権、もしくは、男尊女卑的な目線からのエッセイです。相変わらず、よく調べが行き届いた大学生のリポートのようにスラスラ読め、決して、それほど為になるわけではないものの、あるある感がとても強い気がします。もっとも、著者や私のようなベビーブーマーの後の世代くらいまでで、私の倅どものようなミレニアル世代には理解がはかどらない可能性もあるような気がします。ということで、男性に比べて女性が戦略的に、先より後、前より後ろ、上より下のポジショニングを取って、男尊女卑的な因習に従うふりをしつつ、実は、モテを追求しているんではないか、という視点を本書は提供しています。そうかもしれません。私は男尊女卑も男女同権もいずれも興味なく、というか、どちらにも与せずに、ケース・バイ・ケースで経済学的な比較優位の基礎に立って役割分担をすればよい、という能天気な考え方ですので、世の中の男性の平均ほどは男尊女卑的な考えに凝り固まっているわけではないと認識しています。ただ、同しようもないのが妊娠能力であり、これは生物学的な性別に依存します。それ以外は、絶対優位ではなく、比較優位に基づいて役割分担すればいいと考えています。もっとも、実は、最大の制約要因は時間の有限性、というか、平等性であって、等しく各人に1日24時間が与えられています。生産性や性別に何の関係もなく24時間なわけで、これが最大の役割分担の制約条件となります。ですから、ホントに比較優位に基づいて役割分担をすると、場合によっては1日24時間では不足する可能性もあります。最後に、どうでもいいことながら、私はマッチョでレディ・ファーストを女性に対して極めて慇懃無礼に実行しているラテンの国に3年余り赴任していた経験があり、逆に、フツーにアジアな国にも3年間の経験があります。どちらもどちら、という気がします。日本に生まれ育った私には日本の男女間がもっとも自然に接することができるのは当然かもしれません。でも、歴史の流れとして男尊女卑の程度が弱まって、男女同権の方向に変化する歴史的な流れは止められないと覚悟すべきです。

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次に、青山七恵『ハッチとマーロウ』(小学館) です。著者はご存知芥川賞作家であり、私は彼女の大ファンです。基本的に、清純派の純文学作品が多いんですが、『快楽』などで少し背伸びをしようとした跡も見られる一方で、この作品では児童文学に近い仕上がりとなっています。タイトル通りの通称で呼ばれる2人の小学5年生の双子姉妹を主人公に、小学5年生から6年生にかけての12か月をほぼほぼ毎月1章で語り切っていて、ハッチとマーロウが交互に1人称で語っています。大晦日にシングルマザーのママが、大人を卒業してダメ人間になると宣言し、お正月からウダウダしてパジャマを着替えることもなく過ごします。ミステリ作家のママは仕事はもちろんしませんし、家事はすべて双子がこなさねばならなくなります。なお、舞台はほぼ長野県穂高のようです。そういった中で、お正月を過ごし、バレンタインデーを過ごし、4月には風変わりな転入生を軸に物語が進み、7月にはママと双子は東京でバカンスを過ごしたりします。小学5年生や6年生が1人称で語っているんですが、さすがの芥川賞作家ですので表現力はバッチリです。私くらいのスピードで読んでも隔月で1人称の語り口を交代する双子姉妹の個性、というか、俗にいうところのキャラがとても明瞭に読み分けられます。タイトルの順番ですから、おそらむハッチが姉でマーロウが妹なんだろうという気がしますが、勝ち気でシーダーシップに富み、自分のポニーテールも切り落とすくらい行動的なハッチに対して、ややハッチからは後方に退き妹らしくハッチについて行くマーロウ、ただ、ママがダラダラしたダメ人間ですので、ややキャラが立ってない気すらしてしまいます。双子姉妹の父親探しが迎える結末もとても興味深く仕上がっていますが、エンタメ小説ではなく純文学ですので、オチは明瞭ではありません。それでも、作者の表現力の豊かさには驚かされます。

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最後に、伊坂幸太郎ほか『短編少年』(集英社文庫) です。7月9日付けの読書感想文で取り上げた三浦しをんほか『短編少女』の姉妹短篇集です。収録作品は以下の通りです。すなわち、伊坂幸太郎「逆ソクラテス」、あさのあつこ「下野原光一くんについて」、佐川光晴「四本のラケット」、朝井リョウ「ひからない蛍」、柳広司「すーぱー・すたじあむ」、奥田英朗「夏のアルバム」、山崎ナオコーラ「正直な子ども」、小川糸「僕の太陽」、石田衣良「跳ぶ少年」です。これは私が男性だから、そう感じるだけかもしれませんが、『短編少女』と比べて、少年の方はまっすぐで、少なくともホラー的な作品はなかったような気がします。ただ、『短編少女』と比べて、読んだことのある作品は少なかったように思います。新鮮な気持ちで読んだ差なのかもしれません。

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2017年8月18日 (金)

投打に活躍の先発秋山投手が10勝目を上げ中日を撃破!

  RHE
阪  神300012400 10130
中  日000001102 480

先発秋山投手が投打に活躍で中日を撃破でした。さすがに、このクラスになると実力差を見せつけた形かもしれません。
スタメン復帰の糸井選手が快調にすっ飛ばしましたし、若手の北条選手や大山選手にもホームランが出て、中日相手に快勝でした。福留選手を休ませつつ、勝ちパターンのリリーフ陣も温存し、打線がここまで得点するといろいろといいことがありそうです。

消化試合ながら青柳投手に期待して、
がんばれタイガース!

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2017年8月17日 (木)

広島との3連戦はホームゲームながら3タテを免れるのが精一杯!

  RHE
広  島100003000 480
阪  神002020001x 590
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広島相手に3タテを免れるのが精一杯でした。実力の差を見せつけられた気がします。
先発岩田投手はそれほど悪くなかったんですが、初戦2戦目と同じでやっぱり初回に失点します。桑原投手も広島にはもはや通用せず同点に追いつかれます。最後は何とかサヨナラで勝ちを拾ったものの、実力の差が大きいんでしょうね。現在の順位表通りなのでしょう。まあ、リーグ優勝はもはや目標にはなりませんから、当面の敵は横浜かもしれません。

明日先発の秋山投手の出来を確認しつつ、
がんばれタイガース!

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2017年8月16日 (水)

藤浪投手の復帰戦を飾れず広島のマジックは着実に減少!

  RHE
広  島102000200 5100
阪  神000002010 390

藤浪投手の復帰も甲斐なく広島に敗戦して、マジックが着実に減っていきました。
藤浪投手は初回に失点し、その後も不安定な内容でしたが、何とか5回途中まで3失点でしのぎました。デッドボールを出したので課題は残りましたが、昨年だか、一昨年だか、当時の黒田投手の藤浪投手のデッドボールへの対応の記憶があるだけに、大瀬良投手のスポーツマンシップ溢れた対応に感激してしまいました。甲子園ではないながらホームゲームで競った試合にもならずに連敗ですから、実力の差が大きいんでしょうね。現在の順位表通りなのでしょう。まあ、最終回の粘りが明日につながってほしい気がします。

ますます消化試合の色彩を強めつつも、
がんばれタイガース!

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2017年8月15日 (火)

広島にボロ負けしてマジック再点灯に貢献!

  RHE
広  島302600000 11130
阪  神200031000 6101

広島にボロ負けして、マジック再点灯でした。
やっぱり、オープン戦とかシーズン序盤は初物効果があったものの、現時点では小野投手は通用しないような気もします。序盤から失点を繰り返し、リリーフのメンデス投手も炎上し、試合は早々に壊れてしまい、打線は福留選手のホームランや梅野捕手の活躍などでそれなりに得点したものの、まったく及びませんでした。

明日は藤浪投手の復活を祈念して、
がんばれタイガース!

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ホントに梅雨は明けたのか?

今週に入っても、雨がちのお天気が続くようで、ホントに梅雨は明けたのか疑問に感じないでもありません。昨日は出勤したんですが、かなり電車は空いていました。今週は夏休みを取るサラリーマンも多そうな気がしますが、お天気が冴えません。
下の画像は日本気象協会のサイト「関東まだ続く曇雨天 晴天と暑さ戻る?」から引用しています。

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1993年夏のバブル経済崩壊後、日本経済が底割れした年の夏の雨っぽい天候になぞらえる向きもあるようなんですが、誠に残念ながら、私は1993年の夏は在チリ大使館で海外勤務の優雅な生活でしたので、その時の日本の天候はまったく不案内です。

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2017年8月14日 (月)

4-6月期GDP統計1次QEは内需主導で年率+4%の高い成長率を示す!

本日、内閣府から4~6月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+1.0%、年率では+4.0%を記録しました。潜在成長率を大きく超えて、消費などの内需が牽引する高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4~6月期GDP、年率4.0%増 個人消費など内需がけん引
内閣府が14日発表した2017年4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比1.0%増、年率換算では4.0%増だった。プラスは6四半期連続。個人消費や設備投資など内需がけん引し、公共投資も大幅に伸びた。景気の原動力だった輸出はマイナスに転じたが補った。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.6%増で、年率では2.4%増だった。生活実感に近い名目GDP成長率は前期比1.1%増、年率では4.6%増だった。名目は2四半期ぶりにプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が1.3%分の押し上げ効果、外需の寄与度は0.3%分のマイナスだった。項目別にみると、個人消費が0.9%増と、6四半期連続でプラスだった。
輸出は0.5%減と4四半期ぶりに減少した。輸入は1.4%増だった。国内需要が伸び、輸入量が増加した。
設備投資は2.4%増と、8四半期連続でプラスだった。生産活動が回復し、設備投資需要が高まった。住宅投資は1.5%増。公共投資は16年度第2次補正予算に盛り込んだ経済対策が寄与し、5.1%増だった。民間在庫の寄与度は0.0%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてマイナス0.4%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.4%のプラスだった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/4-62016/7-92016/10-122017/1-32017/4-6
国内総生産GDP+0.3+0.3+0.4+0.4+1.0
民間消費+0.1+0.4+0.1+0.4+0.9
民間住宅+3.2+2.8+0.3+0.9+1.5
民間設備+0.7+0.0+2.2+0.9+2.4
民間在庫 *(+0.3)(▲0.4)(▲0.2)(▲0.1)(+0.0)
公的需要▲1.2+0.0▲0.5+0.1+1.3
内需寄与度 *(+0.3)(▲0.1)(+0.1)(+0.2)(+1.3)
外需寄与度 *(+0.1)(+0.4)(+0.3)(+0.1)(▲0.3)
輸出▲0.9+2.1+3.1+1.9▲0.5
輸入▲1.2▲0.2+1.4+1.3+1.4
国内総所得 (GDI)+0.4+0.1+0.2▲0.0+1.1
国民総所得 (GNI)+0.1+0.0+0.1+0.2+1.1
名目GDP+0.0+0.1+0.5▲0.0+1.1
雇用者報酬 (実質)▲0.0+0.8▲0.3+0.3+0.7
GDPデフレータ+0.4▲0.1▲0.1▲0.8▲0.4
内需デフレータ▲0.7▲0.8▲0.3+0.0+0.4

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率が5四半期連続でプラスを示し、特に直近の4~6月期は伸びが高く、黒い外需(純輸出)がマイナスであるものの、主要場内需項目である水色の設備投資と赤い消費がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

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持続可能性をどこまで考慮するかにもよりますが、エコノミストの目から見て、満点に近い結果だった気がします。6四半期連続のプラス成長もさることながら、今年2017年に入って、内需と外需の寄与度が逆転し、内需寄与度の方が大きくなりましたが、それでも、1~3月期ではまだ外需寄与度が+0.1%に対して、内需寄与度+0.2%だったのに対して、4~6月期には内需+1.3%、外需▲0.3%ですから、圧倒的に内需主導型の成長と考えるべきです。需要項目別に少し詳しく見ると、消費についてはエコカー減税や家電エコポイント制度などに加えて、消費増税前の駆け込みによる需要先食いの悪影響が緩和しつつあり、自律的な耐久消費財の買い替えサイクルと相まって、特に自動車が好調だった印象です。設備投資については世界経済の回復・拡大に支えられた輸出の増加と企業業績の改善が設備投資を後押しし、さらに、最近の人手不足も省力化や合理化投資の追い風となっています。在庫については寄与度ベースで、7~9月期▲0.4%、10~12月期▲0.2%、今年2017年1~3月期▲0.1%と3四半期連続でマイナスをつけた後、4~6月期には+0.0%ですから、ほぼ在庫調整は終了し、先行きは需要動向次第で意図的な在庫の積み増しに入る可能性もあります。ただし、消費については天候要因も無視できず、梅雨が明けてからの梅雨空の天候のように、決してサステイナブルとはいえません。設備投資についても企業サイドのマインドがどこまで維持されるかは未確定であり、そして、何よりも、年率+4%という潜在成長率をはるかに超えた高成長は持続性ないと考えるべきです。従って、そのうちに消費や設備投資の調整局面が入り踊り場を迎える可能性も否定できません。ただ、昨年年央までの外需依存の成長と違って、内需が成長を主導していますので、それなりの継続性が期待できます。為替ショックなどにも強いかもしれません。

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内需主導型成長のバックグラウンドには堅調な雇用があります。毎月勤労統計などを見ている限り、なかなか賃金が伸びないと懸念していたんですが、SNAベースの雇用者報酬はやや伸びを高めていることが確認されました。上のグラフの通りです。やや停滞を示していた雇用者報酬も4~6月期には大きく伸びを高めています。天候や野菜などの価格動向を背景に、消費者のマインドは徐々に上向いていますが、短期的には消費はマインドで支えられる面があるものの、より長い目で見て所得のサポートが必要なのはいうまでもありません。賃金が統計に表れる部分ではそれほど上昇していないにもかかわらず、雇用者報酬がそこそこの伸びを示しているのは、やはり、雇用者数の伸びが大きいからです。マクロの雇用者報酬の伸びは、雇用者数の伸びと雇用者1人当たり賃金の伸びの掛け算で決まります。人手不足の下で、女性や高齢者などの就業率が高まればマクロの所得も伸びを高めます。堅調なマインドと相まって消費を支えるひとつの大きな要因です。

最後に、私は内閣支持率と景気はかなりの程度に連動すると考えているエコノミストの1人なんですが、この4~6月期は近年になくとても景気がよかったにもかかわらず、内閣支持率が急落したり、東京都議選で与党が大きく議席を減らしたりと、景気と内閣支持率が逆方向に動いた気がします。

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2017年8月13日 (日)

ローテーションの谷間に筒香弾の連発を浴びて横浜にボロ負け!

  RHE
阪  神010000001 290
横  浜03030200x 8111

3タテならず横浜にボロ負けでした。
ローテーションの谷間と福留選手のお休みが重なり、しかも、筒香選手が特大のスコアボード直撃も含めてツーラン連発では、なすすべなく横浜に負けてしまいました。でも、この3連戦でクライマックス・シリーズ出場の当面の敵である横浜に2勝1敗と勝ち越したのは意義あることと思います。来週の広島戦は、せめて1勝が目標?

連日の消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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2017年8月12日 (土)

今週の読書は話題の書を含めていろいろあって計7冊!

今週の読書は、経済書のほか、話題のビル・エモット『「西洋」の終わり』などの教養書、専門書も併せて、計7冊です。山の日の休日が私の読書を促進したとも思いませんが、ついつい読み過ぎてオーバーペースです。来週こそ強い決意を持ってペースダウンする予定です。それから、お盆休みには集英社から文庫本で出されていた江戸川乱歩の『明智小五郎事件簿』全12巻が完結しましたので読んでおきたいと予定しています。

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まず、池尾和人・幸田博人[編著]『日本経済再生 25年の計』(日本経済新聞出版社) です。慶応大学経済学部の看板教授陣とみずほ証券のエコノミストのコラボによる日本経済活性化への提言書です。冒頭の3章、金融政策、財政政策、債務問題を慶大グループが担当し、後の4章の意識改革、情報開示、エンゲージメント、イノベーションをみずほ証券のエコノミスト人が担当しています。タイムスパンの25年というのは、例のカーツワイルのシンギュラリティの2045年を意識したものではなく、高齢者が絶対数でピークに達する2040-45年くらいを念頭に、現時点から25年くらい、といった算定のようです。金融政策では、従来からの池尾教授の主張と同じで、日銀の金融緩和は潜在成長率を高めなかったので評価できない、という点に尽きます。そして、金融政策ながら章の後半は人口動態論を主体とする中期見通しに切り替わってしまいます。私くらいの頭の回転ではついて行けませんでした。財政政策についても土居教授の従来からの主張から大きく出ることないんですが、キャッシュフロー課税というテーマは斬新だった一方で、社会保障について高齢者への過度の優遇についてもう少し明らかにして欲しい気もします。債務問題については過剰債務が成長を阻害するという理論モデルの解説が中心となっていて、それはそれでとても私には興味深かったと受け止めています。ただ、直観的には過剰債務が長期停滞をもたらすというのは、そういったモデルを構築することは可能だろうとは理解しつつも、やや強引な立論かもしれないと感じてしまいました。後半4章については、よく判りません。ただ、日本居企業価値向上を阻害する何らかの構造的な要因があるとすれば、市場経済化で自立的にそれを取り除けないのはどうしてか、政府に勤務する官庁エコノミストとして、もう少していねいな方法論が欲しかった気がします。基本的に、資金調達に関するモディリアーニ=ミラー理論からの逸脱が生じているわけですし、証券会社や銀行はまさにそれをビジネス・チャンスにしているわけですから、基本となるモディリアーニ=ミラー理論に立ち返って、その基本モデルからの逸脱を論じて欲しい気がします。特に、モデル分析をていねいに展開している小林教授の章に続いての4章の後半部分ですから、やや気にかかってしまいました。

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次に、ビル・エモット『「西洋」の終わり』(日本経済新聞出版社) です。経済書っぽくないので2番手に配置しましたが、話題の書です。著者はながらく英国エコノミスト誌の編集長も務め、日本駐在もした知日派のジャーナリストであり、『日はまた沈む』で我が国のバブル経済崩壊を予言して当て、『日はまた昇る』我が国の復活を予言して大いに外したのは記憶の読者も少なくないことと思います。英語の原題は The Fate of the West であり、2016年の出版です。ということで、昨今のポピュリズムの台頭、特に、フランス人民戦線のルペン党首の人気だけでなく、エコくもUE離脱、いわゆるBREXITや米国大統領選でのトランプ大統領の当選などを背景に、移民排斥をはじめとする閉鎖的な政治経済の風潮を考慮し、リベラルな西洋の立場から世界の進むべき方向性を論じています。もちろん、西欧のほか米国や日本も本書でいうところの「西洋」のカテゴリーに入っています。自由と民主主義、さらに開放的な政策などを基調とする社会という意味なんでしょうから当然です。なお、ポピュリズム的な政治傾向と併せて、新自由主義的な経済政策の下での不平等の拡大や金融経済化の進展なども論じているんですが、特に、雇用についてはさらに規制緩和、わが国で称されているところの「岩盤規制」をさらに緩和する方向を示していたりして、やや疑問に感じないでもありません。さらに、私が疑問を強く感じているのは、特に大陸欧州で移民排斥をはじめとするポピュリズムの傾向が経済に先行き不透明感や、いわゆる長期停滞に起因している点を見逃しているような気がします。ただ、さまざまな経済の問題点を解決するのに成長を持って充てているのは当然としても、経済でないポピュリズムや移民排斥についても、国民の特に中間層といわれる中核をなす階層が、経済的に恵まれないことから、財政の社会保障を中心に大陸欧州で、いわゆる「国民」の枠を広げる移民受け入れに反対している点は明らかだと私は考えており、成長はかなり多くの現時点での政治経済社会の問題解決に資するんではないかと思います。もちろん、経済成長以外で西洋的な価値観を取り戻すのに有益・有効な手段についても本書では論じていますが、エコノミストの私にはやや専門外と受け止めています。私が従来から何度も繰り返している通り、現時点で、本書が言うところの「西洋」が世界的に覇権を握り、自由で平等な民主主義に基づく経済社会を実現しているのは、イングランドを起点とする産業革命に成功したからであり、ありていにいえば、その過去の遺産で現在まで食いつないでいると考えています。ですから、別の見方をすれば、その過去の遺産を食いつぶしつつあるともいえます。いずれにせよ、開かれた自由な民主主義、さらに、より平等な経済社会を基礎とする「西洋」の再構築のために、とても重厚な思考実験を展開している教養書といえます。

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次に、J.H.エリオット『歴史ができるまで』(岩波現代全書) です。著者は英国人のスペイン近世史の専門家です。私は数年前に、ひょっとしたら、本書の出版時かもしれませんが、BBCに著者が出演していたのを見かけたことがあります。当時でも80歳を超えていただろうと想像しますが、悪くいえば「痩せ衰えた老人」といった印象を受けました。英語の原題は History in the Making であり、2012年の出版です。ということで、著者が専門とするスペイン近世の歴史を題材に歴史学の方法論まで含めて議論を展開しています。なお、「近世」という用語は、決して日本に独特のモノで、単に江戸時代を指すだけでなく、封建制後期から産業革命までの期間を指す場合が多い気がします。英語では、"early modern"を当てます。著者自身は、いわゆるオーソドックスな歴史家であり、その対極、とまではいいませんが、マルクス主義的な歴史観を基本とした歴史家もいます。そして、マルクス主義の影響を強く感じさせるものの、少し距離を置いたフランスのアナール学派もあります。アナール学派の中心が『地中海』で有名なブローデルです。エリオット卿はブローデルとの交流も含めて、歴史に対する把握の方法を論じています。歴史の重ね合わせという言葉を著者は使っていますが、ある国あるいは地域のある時点だけを取り出しても、比較対象がなければ研究のしようがありません。そのため、世界横断的に同じ辞典の世界各国・各地域の比較対象を行うのが、少し違いますが、地理学に近く、時系列的に同じ国や地域を時間の流れの中の変化を見るのが歴史学ともいえます。ブローデルが為政者や権力者中心の歴史観ではなく、細菌や病気も含めて人口動態などを重視したのに対し、エリオット卿の歴史学は我々が通常目にする歴史書に見られる政治や外交や経済の出来事を並べる歴史観に基づいています。私は高校を卒業した直後に岩波文庫から出版されていたランケ『世界史概観』を読んで感激して経済史を志した記憶がありますが、著者のエリオット卿は本書にも見られる通り、美術史と連携した宮殿の復元、大西洋史といった比較史へと研究を広げる歴史学の大御所です。それから、先日取り上げた本では翻訳がひどいと明記しましたが、本書はとりわけ翻訳がていねいで素晴らしい出来に仕上がっている気がします。

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次に、ジョセフ・メイザー『フロックの確率』(日経BP社) です。著者は米国の数学教授であり、英語の原題は Fluke、2016年の出版です。 基本的に、世の中で起こる、あるいは、実際に起こったフロック、まぐれ当たりや巡り合せについて、数学的に解明を試みています。本書でも取り上げられていますが、人数が一定数集まると、本書の計算によれば、23人以上が集まると、同じ誕生日、生年月日ではなく、年なしの月日だけですが、同じ日付の誕生日の人がいる確率が50%を超えます。これらのほかに、マイアミで呼んだタクシーが3年前にシカゴで呼んだタクシーと同じ運転手だった女性、ロト宝くじに次々に4回当たった女性、被疑者2名にまったく同じDNA鑑定結果が出てしまった事件、などなど、現実に起こった事象について、認知バイアスなどによる確率の過大評価や過小評価も含めて、エピソードごとに著者がていねいに解説を加えています。ただ、良し悪しなんでしょうが、現実に起こったケースを基に議論を進めていることから、決定論的な確率に関する議論ですので、いわば、確率が決まってしまっているケースの議論に終始しています。ですから、発生するエピソードが、起これば事後的な確率が1で、起こらなければゼロという世界です。現実の世界では何らかの事象が確率分布に基づいて発生するケースも少なくなく、例えば、金融市場における資産価格決定などは議論から抜け落ちています。もちろん、シュレディンガーのネコのようなお話はカバーできていません。この点は、現実のケースを取り上げる判りやすさとトレードオフだと思いますので、何とも判断の難しいところですが、エコノミストや量子力学関係者からはやや物足りないという意見が出る可能性はあります。カジノにおけるギャンブルなどに通じる確率論であり、どうでもいいことながら、そういった方面からは歓迎されそうな気もします。

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次に、ヨハン・ガルトゥング『日本人のための平和論』(ダイヤモンド社) です。著者はオスロ出身で「平和学の父」と呼ばれているそうです。英語の原題は People's Peace であり、2017年の出版です。英語タイトルはともかく、中身はかなり邦訳タイトルに近く、確かに、日本人向けに書かれている気はします。例えば、本書冒頭のはじめにで、ニホンを苦しめている問題の根本原因は米国への従属と明記しています。しかし、他方で、米国への従属を断ち切る方策について、本書は何も触れていません。というか、対米従属の基本となっている安保条約については、改正とか破棄・廃棄ではなく、手を触れずに店晒しで無意味化させる、というまったく私には理解できない議論を主張しています。やや無責任な気もします。しかし、この能天気な無責任さは本書の貴重をなすトーンでもあります。決して理想主義ではないんですが、単に出来もしないことを羅列しているとみなす読者もいるかもしれません。私もそれに近い読み方をしてしまいました。でも、キリスト教的に極めて許容度の広い本であり、まったく反対のいくつかの観点をすべて許容しそうな勢いで議論が進みます。無責任の極みかもしれません。北方領土や尖閣諸島については、領有権を主張する両国の共同管理を主張していて、まさに、両国はそれを排除しようと試みている点を無視しています。私は大江健三郎のノーベル賞講演ではありませんが、日本人の特性のひとつは曖昧さであると感じていたんですが、本書の著者は白黒をハッキリつけすぎると受け止めているようです。国際常識も通用しません。まあ、私の専門外ですので、私の方で誤解しているのかもしれませんが、ほとんど参考にも何にもならない本です。最後に、日本における沖縄後について考える際に、呼んでおく基礎的な文献は、実は、『ゲド戦記』で有名なアーシュラ K. ル=グインの『風の十二方位』に収録されている短編「オメラスから歩み去る人々」です。10年ほど前に話題になったサンデル教授の『これからの「正義」の話をしよう』でも取り上げられています。

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次に、堂場瞬一『1934年の地図』(実業之日本社) です。著者は、警察小説とスポーツ小説を得意としたエンタメ小説家です。まずまずの売れ行きではないでしょうか。本書は、地理学の大学教授を主人公に、戦後1960年の日本を舞台にしています。そして、大戦前夜の1934年暮れにベーブ・ルースらとともにオールスター野球チームの一員として来日した大リーガーであり、その後、主人公と同じ地理学の専門家として研究者となった友人が来日します。主人公は1934年の米国野球オールスター来日の際に通訳を兼ねて接待に当たっており、26年振りの再会でした。しかし、主人公が学界に出席するため渡米した折に、思いもかけない事実が判明します。米国人の友人が1934年に来日した目的は必ずしも野球だけではなく、戦争開戦前の日本の実情を探ることも目的とされていたようであり、その情報収集から結果として大きな悲劇がもたらされることとなります。戦争当時の悲劇ですので、およそ、原爆被爆はもちろん、空襲を始めとする悲惨な戦争被害の中で埋もれがちな事実が明らかになるわけです。以下、私の個人的な感想ですが、ハッキリいって、イマイチです。主人公と米国人元大リーガーにとっては、それなりに重要な結果をもたらしたのかもしれませんが、そうであれば、もっとキチンと書くべきです。さらに、フィクションのエンタメ小説とはいえ、背景となる日本国内及び世界の政治経済情勢、特に、それが戦争につながるわけですから、そういったバックグラウンドも視野に入れるべきです。1934年の直前の1933年にはドイツのヒトラーが首相となり、米国のローズベルトが大統領に就任しているわけですし、日本と中国の関係では、1931年9月に柳条湖事件が起こり、翌年1932年には満州国が建国されています。そういった時代背景にも目を配って欲しかった気がします。そうでなければ、単なるスポーツをからめたメロドラマになってしまいかねません。

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最後に、首都圏鉄道路線研究会『駅格差』(SB新書) です。先月7月15日付けの読書感想文で同じシリーズの前書『沿線格差』を取り上げたばかりなんですが、その続きで沿線ではなく駅に着目した格差論です。『沿線格差』のように、勝ち組と負け組を明記したりしていないので、それなりにインパクトは低下しているような気もしますが、一般に理解されている点も、あまり理解されていない点も、それぞれにコンパクトによく取りまとめられています。住宅を中心に駅や沿線を考える場合が多い気もしますし、本書でもそうなっていますが、あとは観光地というのは大げさにしても、買い物などの訪問先的な観点は含まれているものの、本書で欠けている勤務先という観点も欲しかったと私は考えています。なお、総合ランキングや勝ち組と負け組はないんですが、いろんな観点からのランキングは各種豊富に取りそろえています。特に、男女別に見たトイレ事情のランキングは、それなりに実用的な気もしました。数年前に公務員住宅を出て住まいを探した折に、マンション名が駅名になっていて、必ずしも行政的な住所表記と一致しない例があったのを思い出してしまいました。まあ、一戸建てなら関係ないんですが、本書で指摘している通り、多少のごまかしやハッタリを含めて、必ずしも行政上の住所表記ではないイメージのいい街を自分の住まいに当てはめる例は少なくないと思います。そして、大いに理解できるところかという気がします。最後に、五島家が東急経営で鉄道や商業そして、住宅開発などで総合的な手腕を示したのに対して、西武の堤家は鉄道と商業を兄弟で分担して失敗した、かのように示唆する部分がありますが、西武の鉄道と商業、それも、西武百貨店とスーパーの西友、さらに住宅開発の国土計画などを分割してしまったのは米国投資ファンドのサーベラスです。海外ファンドに株式を買い占められて短期的視野で経営に圧力をかけられるとこうなる、という悪い見本のような気がします。

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2017年8月11日 (金)

先発岩田投手の好投にホームラン攻勢で応えて横浜にボロ勝ち!

  RHE
阪  神013030100 8131
横  浜000010000 142

岩田投手の好投とホームラン攻勢で横浜にボロ勝ちでした。
序盤から福留選手のお休みを感じさせない阪神打線の長打攻勢、ホームラン攻勢でした。2000本安打にジワジワ近づく鳥谷選手も3安打の猛打賞でした。もう、私の意識は早くも明日に飛んでいて、能見投手の健闘を祈念しています。

連日の消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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ウェザーニューズによる台風5号の進路予想の検証やいかに?

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台風5号は、迷走や停滞を繰り返した後、紀伊半島に上陸し北陸から日本海に抜けましたが、ウェザーニューズから台風5号の進路予想に関する検証結果が8月9日付けで明らかにされています。世界13機関の進路予想がバラバラに終わり、進路予想が難しいという意味で、めずらしい台風だったようです。私は専門外なんですが、上の画像の通りです。上の画像のうちでも、左側の上陸に際した進路については、結局、一番西側、というか、北側の進路がもっとも近かったと見えます。ウェザーニュースの見方では、英国の機関が一番精度がよかった、と結論されています。

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2017年8月10日 (木)

3か月連続マイナスを記録した機械受注と上昇幅の拡大した企業物価(PPI)!

本日、内閣府から6月の機械受注が、また、日銀から7月の企業物価 (PPI)が公表されています。機械受注では変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比▲1.9%減の7900億円だった一方で、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計から上昇幅を拡大して+2.6%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の機械受注1.9%減、電子部品向けなど鈍化
内閣府が10日発表した6月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ1.9%減の7900億円だった。受注額は2016年5月以来、1年1カ月ぶりの小ささ。情報通信機械を中心に製造業が振るわなかった。前月割れは3カ月連続で、QUICKがまとめた市場予想(4.3%増)を大きく下回った。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業が5.4%減と5カ月ぶりの大幅減となった。スマートフォン向けを含む電子部品用機械などの受注が鈍化し、情報通信機械が26.8%減となった。ただ自動車関連は12.7%増と、5月の7.4%減から持ち直している。内閣府は製造業の動向について「弱いとはいえないが目立った大型案件がなく、目先は実質的に横ばいとなりそうだ」(内閣府経済社会総合研究所)とみていた。
非製造業は0.8%増と4カ月ぶりに増加に転じた。通信業が28.8%増、運輸・郵便業が14.1%となったことが寄与した。いずれも前月に20%台の大幅なマイナスとなった反動増の面が大きい。非製造業は受注額でみると4508億円と、約2年ぶりの小ささとなった前月(4473億円)とほぼ同水準にとどまっている。
4~6月期の「船舶、電力を除く民需」の受注額は前期比4.7%減と1~3月期に続きマイナスだった。環境規制にからんだ駆け込み需要が剥落し建設機械が振るわず、非製造業の前月割れが続いたことが響いた。内閣府は7~9月期は非製造業が持ち直すとして7.0%の伸びを見込んでいる。
7月の企業物価指数、2.6%上昇 7カ月連続で前年上回る7月の企業物価指数、2.6%上昇 7カ月連続で前年上回る
日銀が10日に発表した7月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.8で、前年同月比で2.6%上昇した。7カ月連続で前年を上回り、消費増税の影響を除くと2013年11月(2.6%上昇)以来3年8カ月ぶりの伸びだった。電力料金の上昇に加え、銅市況の改善で銅地金などの価格も上がった。中国の通販市場拡大に伴い、段ボールに使う古紙の価格も上昇が目立ったという。前月比では0.3%上昇した。
円ベースの輸出物価は前年比で7.7%上昇し、14年1月(8.1%上昇)以来3年6カ月ぶりの伸びとなった。一方で前月比では1.3%上昇だった。輸入物価は前年比で11.9%上昇したが、前月比では横ばいだった。前月比での円高・ドル安の進行などが響いた。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年比で上昇したのは356品目、下落したのは277品目だった。上昇と下落の品目差は79品目と、6月の確報値(66品目)から増加した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、統計2本の記事を並べましたので、やたらと長くなってしまいました。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は、次の景気ウォッチャーとも共通して、景気後退期を示しています。

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日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の前月比伸び率は+4.5%と予想されていたんですが、実際には▲1.9%のマイナスで、しかも3か月連続の前月比マイナスですし、引用した記事にもある通り、季節調整済みの前期比で見ても、1~3月期の▲1.4%減に続いて、4~6月期も▲4.7%減と、2四半期連続の前期比マイナスを記録しています。ただし、3月時点での見通しでは、4~6月期も▲5.9%減が見込まれていましたから、それは上回って推移しています。加えて、先行き四半期である7~9月期の受注見通しについては、コア機械受注ベースで前期比+7.0%増の2兆6,011億円を見込んでいます。先行き7~9月期には製造業がマイナスと予想される一方で、非製造業はプラスと見込まれています。ということで、設備投資の先行指標であるコア機械受注は横ばい、というか、一進一退が続いているんですが、それほど悪い数字ではないものの、何とも先行きは見通しがたくなっています。標準的なシナリオでは、昨年末あたりからの製造業における稼働率の上昇や人手不足などに加えて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けて、緩やかながら設備投資は増加の方向を示すんではないか、と多くのエコノミストは考えています。私もそうです。今でもそうです。ただし、足元の企業マインドなどを考え合わせると、維持・更新投資は当然増加するとしても、国内での能力増強投資につては海外投資との見合いで慎重姿勢を示す企業も少なくないことから、どこまで設備投資がマクロでして伸びるかは必ずしも明らかではありません。1点だけ私から強調しておきたいのは、6月統計では引用した記事にもある通りに我が国のリーディング・インダストリーである自動車関連で持ち直しの動きがみられる点です。ただ、設備投資の先行きについては、そろそろ、緩やかな増加から横ばいの範囲に下方修正するエコノミストもいそうな気はします。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、最初のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、真ん中の2番目は需要段階別の上昇率、そして、最後の3番目は原油価格の指数そのものを、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2枚のパネルの影をつけた部分は、機械受注と同じく、景気後退期を示しています。ということで、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で見て、7月は+2.6%の上昇と前月からさらに上昇幅を拡大しています。ただ、上昇幅拡大の主因は電気やガスなどのエネルギー関連の価格上昇であり、原油価格がラグを伴って波及しているだけという気もします。上のグラフの中の一番下のパネルでは原油価格の指数をそのままプロットしていますが、前年同月比上昇率のベースでは、今年2017年1~3月期の各月に+90%超の大幅な上昇を記録した後、すでに上昇率ではピークアウトし、直近7月統計では+6.0%まで落ち着きを取り戻しています。国際商品市況で決まる価格ですので先行きは見通しがたいんですが、大幅な価格上昇の時期は過ぎた気もします。ですから、PPI上昇率の先行きについては、このまま上昇幅がさらに拡大することは考えにくいと私は受け止めています。

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2017年8月 9日 (水)

両チームとも継投に失敗しつつも何とか巨人に逆転勝ち!

  RHE
阪  神101000102 5120
読  売00000130x 460

両チームともリリーフ陣がリードを守りきれず、特に阪神は明らかに継投に失敗しながらも、何とか巨人に逆転勝ちでした。
7時半前に帰宅した時点で2-0のリードを保ち、先発青柳投手がノーヒット・ピッチングを続けていました。でも、青柳投手を引っ込めた当たりから流れが変化したのか、それとも、両チームともムリを重ねたリリーフ陣がそろそろ限界に達しつつあるのか、巨人にアッサリと逆転されたものの、最終回に阪神クリンナップで再び逆転し、最後はクローザーのドリス投手で逃げ切りました。ベンチワークたる継投の失敗に関しては、阪神の失敗度合いのほうが大きかった気がしますが、チームとしての地力の差で勝てたんではないでしょうか。それとも、福留外野手の個人技か?

連日の消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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来週月曜日に公表予定の4-6月期GDP速報1次QEの予想やいかに?

先週月曜日の7月月末までに必要な統計がほぼ明らかになり、来週月曜日の8月14日に4~6月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定です。すでに、シンクタンクや金融機関などから1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニュースレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期以降の先行きの景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、下のテーブルでは上から6機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研、ニッセイ基礎研、第一生命経済研、伊藤忠経済研となっています。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研+0.6%
(+2.2%)
7~9月期を展望すると、国内需要は、企業の良好な収益環境や人手不足を背景とした雇用所得環境の改善を下支えに、持ち直しの動きが続くとみられるほか、輸出も、世界的な設備投資意欲の改善などを背景に、再び増加基調に復帰する見込み。4~6月期の成長率を押し上げた公共投資や在庫投資のプラス寄与は縮小するものの、0%台後半とみられる潜在成長率を上回る成長ペースが続く見込み。
大和総研+0.7%
(+2.8%)
先行きの日本経済は、基調として足下の緩やかな拡大が継続するとみている。個人消費を中心とした内需は一進一退ながら堅調な推移が続くと同時に、世界経済の回復を背景とした外需の拡大が日本経済の成長を支えるだろう。ただし、Fedの利上げや共産党大会後の中国経済の減速懸念など、外需の下振れリスクには警戒が必要である。
先行きの個人消費は、一進一退ながら堅調な推移が続くと見込む。労働需給がタイトな状況の中、非製造業を中心とした労働需要の高まりから雇用者数が増加基調であることに加えて、賃上げ率は4年連続で2%を上回っている。これらがマクロの賃金(=一人当たり賃金×雇用者数)を押し上げると考えられ、個人消費のけん引材料となるだろう。一方、良好な消費者マインドの改善が一服することで消費性向の上昇が停滞することとなれば、個人消費は徐々に減速していく可能性がある。
みずほ総研+0.6%
(+2.5%)
7~9月期以降の日本経済について展望すると、海外経済の回復が、引き続き輸出や設備投資の回復につながるだろう。4~6月期の輸出はITセクターの減速などから減少したものの、7~9月期になると輸出は再び回復軌道に復するとみている。データセンターや車載向けの需要の堅調さに加えて、秋に控えるiPhone8の発売がIT関連輸出の押し上げ要因となるだろう。設備投資については、非製造業が各業種の個別要因から減速する可能性がある。もっとも、全体としては、五輪関連や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることから、設備投資は堅調さを維持するだろう。
個人消費については、耐久消費財が持ち直していること、株高などを背景に消費者マインドが改善していることがプラスに働くと見られる。天候要因による振れを伴いつつも、個人消費は緩やかな回復傾向が続くとみられる。
ニッセイ基礎研+0.9%
(+3.6%)
日本経済は2016年1-3月期以降、ゼロ%台後半とされる潜在成長率を上回る成長を続けているが、2017年4-6月期はその中でも最も高い伸びとなった模様だ。内容的にも2016年後半は外需中心の成長だったが、2017年入り後は民間消費、設備投資が明確に増加し、内需主導の自律的回復局面に移行しつつある。
7-9月期は4-6月期の高成長の反動もあり成長率は鈍化する公算が大きいが、4-6月期と同様に民間消費、設備投資などの国内民間需要中心の成長が続くことが予想される。ただし、名目賃金の伸び悩みが続いているため、今後物価上昇ペースが加速した場合には、実質所得の低下を通じて消費が下振れるリスクが高まるだろう。
第一生命経済研+0.8%
(+3.2%)
先行きも、景気は好調な推移が続く可能性が高い。米国を中心として海外経済が回復傾向を続けるとみられるなか、輸出は再び増加基調に戻る可能性が高いことに加え、設備投資も、企業収益の増加や高水準の企業マインドを受けて増加傾向が続くだろう。個人消費については4-6月期は出来過ぎの感が否めず、強気にはなれないが、少なくとも足を引っ張ることはなさそうだ。今後も着実な景気回復を見込んで良いだろう。
伊藤忠経済研+0.2%
(+0.9%)
今後の景気を展望すると、7~9月期には公共投資の落ち込みは避けられないものの、海外景気の拡大を背景に輸出が増勢を取り戻すほか、賃金上昇を受けて個人消費は持ち直しの動きを維持、設備投資も企業が比較的強気の今年度計画を実行に移し再び増加に転じるなど、国内民間需要が増勢を強めるとみられる。そのため、今後も潜在成長率を上回る景気拡大は十分に期待できそうであり、それが実現すれば年度末に向けて消費者物価上昇率は徐々に高まろう。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.6%
(+2.5%)
17年4-6月期は、国内需要が成長率を大きく押し上げた模様である。雇用・所得環境の改善を背景に、個人消費が引き続き堅調に推移したとみられるほか(前期比0.3%増)、設備投資の増加基調も一段と強まった可能性が高い(同2.0%増)。総額28兆円超の大型経済対策の執行本格化を受けて、公共投資も急速に拡大したとみられる(前期比4.1%増)。半面、輸出については、アジア向けの低迷を反映して、前期比0.1%増に鈍化したとみられるほか、住宅投資についても、相続対策とみられる貸家建設の需要一巡などから、同0.3%減が見込まれる。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.5%
(+2.2%)
8月14日に内閣府から公表される2017年4~6月期の実質GDP成長率は、前期比+0.5%(年率換算+2.2%)と6四半期連続でプラスとなったと見込まれ、景気が持ち直していることを確認する結果となろう。
個人消費は、雇用・所得情勢の改善などを背景に堅調に推移したと見込まれる。設備投資も、企業の新規投資に慎重な姿勢は続いているが、人手不足への対応もあって緩やかな増加傾向が維持されていると考えられる。また、公共投資は2016年度の補正予算の執行の影響によって高めの伸びとなった可能性がある。一方、外需については、輸出が前期比でマイナスとなった一方で、輸入の増加が続いており、寄与度は4四半期ぶりにマイナスに転じたと予想される。
三菱総研+0.5%
(+1.8%)
2017年4-6月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.5%(年率+1.8%)と6四半期連続のプラス成長を予測する。輸出の増勢は一服も、消費や設備投資など内需を中心とする成長持続を予想する。
消費は、良好な所得環境や消費者マインドの改善を背景に、自動車をはじめ耐久消費財に持ち直しの動きがみられるほか、気温が平年より高めに推移したことなどから電気代も増加しており、同+0.3%と6四半期連続の増加を予測する。設備投資は、設備稼働率の上昇や人手不足による自動化・省力化ニーズの強まりなどを背景に、同+0.6%と3四半期連続の増加を見込む。民間在庫は、需要回復を背景に前向きな在庫積み増し局面に入っているとみられ、同+0.2%pのプラス寄与を予想する。公的固定資本形成は、2016年度の大型経済対策(第2次補正予算)の本格執行化などから同+7.5%と高い伸びを見込む。

ということで、ある程度のばらつきはあるものの、かなり多くの機関で高成長を見込んでいるように私は受け止めています。+2%台後半から+3%を超える成長率を予測する向きもあります。もっとも、伊藤忠経済研のように年率+1%弱のほぼ潜在成長率に近いラインを予想する向きもあります。おおむね、潜在成長率を上回る成長を達成したのではないか、というのが少なくともエコノミストの間の緩やかなコンセンサスであり、私のような楽観派のエコノミストはかなりの高成長を実現したと感じています。加えて、米国の通商政策をはじめとする海外の政策要因も含めて、消費動向などのリスクがないわけではないものの、先行きについても海外経済の順調な回復・拡大による輸出の伸びなど、年内ないし年度内いっぱいは日本経済も順調な回復・拡大を続けるとの見方が多いようです。ただし、消費については少し見方が分かれており、すなわち、耐久消費財の最近時点での伸びを基に、サイクル的にも順調な回復を予測する楽観派のエコノミストと、4~6月期の消費の堅調さは天候というサステイナブルでない要因に支えられたものであり、このまま賃上げが進まないと物価上昇から実質所得の低下を招いて消費の伸びが鈍化する可能性がある、と見る慎重派のエコノミストです。私はいろんな局面では大雑把に楽観派に属する場合が多いんですが、この歴雪の消費動向に関してだけは慎重な見方をすべきと考えています。
最後に、下のグラフはいつもお世話になっているニッセイ基礎研のリポートから引用しています。上のテーブルで取り上げた中ではもっとも高い成長率予想を弾き出していますが、先行きの消費については慎重な見方も併せて示しています。

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2017年8月 8日 (火)

先発岩貞投手は巨人打線に通用せずボロ負け!

  RHE
阪  神000000001 170
読  売11400000x 681

昨年の2ケタ勝利の成績はまぐれだったと推測させるに十分なピッチングで、岩貞投手はまったく通用せず巨人にボロ負けでした。
7時半過ぎに帰宅した時点で、すでにボロ負け状態で、そのまま試合が終わりました。日テレG+の中継も、試合の行方よりも阿部選手の2000本安打の方が気になるらしく、勝負は決まりきった雰囲気でした。最終回の得点が明日につながるでしょうか。でも、明日と明後日は2日連続のローテーションの谷間ですから、明日、ジャイアンツのルーキー投手に負けると3タテされる可能性が高まるような気もします。

連日の消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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やや低下を示した景気ウォッチャーと金融危機前の水準に復した経常収支!

本日、内閣府から7月の景気ウォッチャーが、また、財務省から6月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調史絵済みの系列の現状判断DIが前月から▲0.3ポイント低下して49.7を、先行き判断DIも▲0.2ポイント低下して50.3を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+9346億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の街角景気、現状判断指数4カ月ぶり悪化 企業動向が鈍化
内閣府が8日発表した7月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前の月に比べ0.3ポイント低下し49.7となった。悪化は4カ月ぶり。企業動向の鈍化と、人手不足への懸念を背景とする雇用の悪化が響いた。
部門別にみると、企業動向は1.4ポイント低下の51.1だった。節目の50は超えているものの、受注や販売の鈍化が指摘された。雇用は0.4ポイント低下の56.8だった。人手不足が労働力などの供給制約になるとする捉え方が広がったもようだ。家計動向は48.1と横ばいだが、6月から7月にかけての豪雨災害を受け、九州の百貨店などでは客足が鈍化したとの指摘が目立った。
街角では企業動向について「ここ3カ月の受注量が極端に減ってきている」(近畿の出版・印刷・同関連産業)との指摘や、鋼材値上げに関連し「仕事量が思うようには増えず、(鋼材価格の)販売価格への転嫁は5割程度である」(東海地方)との声があった。雇用動向については「派遣求人は多数あるものの、求職者が減少しており、目標の人数に届いていない」(北関東の人材派遣会社)との見方があった。
23カ月後を~占う先行き判断指数は、前の月から0.2ポイント低下の50.3と4カ月ぶりに悪化した。家計動向が0.4ポイント低下し49.2となったほか、企業動向が1.2ポイント低下の50.9となった。半面、雇用は3.2ポイント改善し56.2となった。
内閣府は現状の基調判断を「持ち直しが続いている」に3カ月連続で据え置いた。先行きについては「人手不足に対する懸念もある一方、引き続き設備投資等への期待がみられる」とした。
1~6月経常黒字、10兆5101億円 リーマン前水準に
財務省が8日発表した1~6月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は10兆5101億円の黒字(前年同期は10兆4802億円の黒字)だった。上半期(1~6月)としては2年連続で10兆円の大台を上回り、リーマン・ショック前の07年(12兆6993億円の黒字)以来10年ぶりの高水準だった。
貿易収支は2兆531億円の黒字となり、前年同期(2兆3244億円の黒字)に比べて黒字額が縮小した。原粗油などの輸入が増加し、輸入全体で11.8%増加した。半導体製造装置や自動車部品の好調を映し、輸出も全体で10.1%増加したが、輸入の影響が上回った。
サービス収支は2974億円の赤字と前年同期(2489億円の赤字)に比べて赤字幅が拡大した。知的財産権使用料の支払いが増え、「その他サービス収支」の赤字額が拡大したことが響いた。一方、旅行収支は7903億円の黒字と訪日外国人の増加を背景に1~6月期としての過去最高の黒字額を記録した。
第1次所得収支は9兆7622億円の黒字と前年同期(9兆5527億円の黒字)に比べて黒字額が拡大した。海外子会社から受け取る配当金などが増えた。
併せて発表した6月の経常収支は9346億円の黒字だった。経常黒字は36カ月連続だが、黒字額は前年同月(9765億円の黒字)に比べて減少した。石炭や液化天然ガス(LNG)の輸入増加で、貿易収支の黒字額が前年同月に比べて2441億円縮小したことが響いた。
サービス収支は499億円の赤字と比較可能な1985年以降で最小の赤字額だった。旅行収支の黒字が追い風となった。第1次所得収支は5072億円の黒字と前年同月(4127億円の黒字)に比べて黒字額が拡大した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、経常収支の記事は1~6月の年上半期計数に重点を置き過ぎているきらいがあり、また、統計2つの記事を並べましたので少し長くなってしまいました。次に、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りです。また、影をつけた部分はいずれも景気後退期です。

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景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DIとも、わずかに低下を示しましたが、ほぼ前月から横ばいと私は受け止めています。先週水曜日8月2日に取り上げた消費者態度指数が需要サイドの消費者マインドを示していて、7月の指数は前月からわずかに上昇を示したのに対し、今日発表の景気ウォッチャーは需要サイドのマインドの代表であり、前月からわずかに低下を見せています。需要サイドと供給サイドで方向性は逆なんですが、ほぼ前月から横ばいという点では違いはありません。景気ウォッチャーをもう少し細かく、3つのコンポーネントである家計関連、企業関連、雇用関連、特に前2者の企業関連と雇用関連について詳しく見ると、現状判断DIについては家計関連が前月から横ばいであるのに対して、企業関連では前月からマイナスとなっており、また、先行き判断DIについては、家計関連・企業関連ともに前月差でマイナスですが、マイナス幅は企業関連の方が大きくなっています。この差について考えると、引用した記事にもある通り、人手不足の影響が上げられるかもしれません。すなわち、現状では人手不足の要因から量的に雇用者が増加したり、失業率が低下しつつも、賃上げはまだ緩やかな段階であり、家計にとってはマイナスではないかもしれませんが、大きなメリットも感じられない一方で、企業サイドではかなりの程度にデメリットを感じ始めている可能性が高いと私は考えています。人手不足に応じた賃上げがなされれば、家計にはプラスであることはいうまでもなく、人手不足に対応した賃上げが可能な企業にとっても売り上げ増のチャンスなんですが、他方で、賃上げを出来ない企業には大きな痛手となります。場合によっては、市場から退出することにもつながりかねません。もちろん、低賃金の未熟練労働に頼ったデフレ型企業が退出し、高賃金が可能な脱デフレ型企業が生き残るのは望ましい、という見方もあり得ますが、同時に、何らかの経済社会的な摩擦を生じる可能性も秘めています。人手不足を通じて、デフレに適応してしまった企業行動から、脱デフレへの対応を進める企業活動が求められていると考えるべきです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。引用した記事のタイトル通り、国際商品市況における石油価格の動向による振れはあるものの、我が国の経常収支はほぼほぼ2009年のリーマン・ショック前の水準に戻っています。ただ、経常黒字の構成はかなり違いがあり、2009年リーマンマン・ショック前は、極めて大雑把に、貿易黒字も第1次所得収支=投資収益収支もともに1兆円前後でしたが、最近時点では、第1次所得収支が1.5兆円を超える月もめずらしくない一方で、貿易黒字は大きく縮小しています。もっとも、輸出は世界経済の順調な回復・拡大に従って緩やかながら増加を続けており、この先も、経常収支や貿易収支がかつてのように赤字に突入する可能性は低いんではないかと私は受け止めています。

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2017年8月 7日 (月)

先行指数・一致指数とも上昇を示した景気動向指数の先行きやいかに?

本日、内閣府から6月の景気動向指数が公表されています。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比+1.6ポイント昇の106.3を、CI一致指数も+1.4ポイント上昇の117.2を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の景気一致指数、117.2に上昇自動車関連指数が持ち直し
内閣府が7日発表した6月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.4ポイント高い117.2と2カ月ぶりに上昇した。4月改定値の117.1を上回り、2014年3月以来の高さとなった。5月の大型連休に絡む生産調整でいったん落ち込んでいた自動車関連の指標が持ち直した。一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断は、最上位の「改善を示している」を9カ月連続で据え置いた。
6月は鉱工業用生産財出荷指数がけん引役となった。前月比3.2ポイント上昇し、全体での寄与度が最も大きかった。鉄鋼関連で、自動車向けエンジンや車体部品用の鋼材が伸びた。スマートフォン向け部品用も増えた。最終製品となる自動車の出荷も持ち直し、耐久消費財出荷指数も伸びた。
数カ月先の景気を示す先行指数は1.6ポイント上昇の106.3だった。上昇は2カ月連続。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日並びよく休みが取りやすかった5月のゴールデンウィークのライン停止後に6月の生産、特に、自動車の生産が大きく上向いたことから、CI一致指数もプラスを示しました。ただ、それだけではなく、2014年の消費増税からやや鈍化していた消費も含めて、景気が全般的に上向いていることも確かです。例えば、一致指数でプラス寄与の系列は、寄与の大きい順に、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)などとなっており、CI先行指数では、鉱工業用生産財在庫率指数、新規求人数(除学卒)、中小企業売上げ見通しDI、最終需要財在庫率指数などとなっています。消費、投資、在庫調整、雇用などの指標が、かなり幅広く一致指数や先行指数の上昇に寄与しているのがうかがわれます。
ついでながら、ちょうど1週間後の来週月曜日の8月14日に4~6月期のGDP速報、いわゆる1次QEが公表される予定となっており、そろそろ各シンクタンクなどの公表リポートを取りまとめに入っているんですが、かなりの高成長の予測が少なくありません。消費については天候要因もありますが、世界経済の回復・拡大に支えられていた輸出よりも、むしろ国内需要が伸びているとの予想が中心です。これだけ景気がいいのに内閣支持率を下げたのはやや不思議、というか、別の要因なんでしょうが、0%台後半といわれる潜在成長率水準を考慮すれば、現状はかなり景気がよくて、景気拡大局面もこのまま今しばらく続きそうな予感です。

なお、8月14日公表予定の4~6月期GDP統計1次QE予想は日を改めて取り上げたいと思います。

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2017年8月 6日 (日)

代打伊藤隼太選手のバックスクリーンへの逆転スリーランでヤクルトを3タテ!

  RHE
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阪  神00201030x 692

相変わらず、先発能見投手がヤクルト打線を抑えきれない中で、代打伊藤隼太選手のバックスクリーンへの逆転スリーランでヤクルトを3タテでした。
今日は、昨日の反省から、3時前から野球観戦の体制に入り、3回ウラの福留外野手の湿気た当たりの逆転シーンの後、4回表のヤクルト打線の両外国人の目の覚めるようなホームランを見せつけられたんですが、今日4安打の藤川俊介選手のタイムリーで1点差に詰め寄り、最後は、ラッキーセブンに代打伊藤隼太選手のスリーランによる逆転劇でした。最後は連投のドリス投手が失点しましたが、何とか逃げ切りました。ヤクルトに3タテなんですから、広島を追う阪神としてはめでたい限りなんですが、やっぱり、先発能見投手の衰えが気がかりです。2回の失点こそエラーがからんで気の毒でしたが、4回の3失点は完璧にとらえられた気がします。最後のドリス投手も安定感を失う試合も時折見受けられ、暑い8月に投手陣の整備、特に藤浪投手の復帰を私は心待ちにしています。

連日の消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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先週の読書は話題の経済書など計7冊!

先週の読書は、イングランド銀行の総裁を務め、サブプライム・バブルの崩壊を乗り切った中央銀行総裁のの1人であるマービン・キング卿の話題の書ほか、人工知能に関する日仏の学術書など、以下の通り計7冊です。キングの『錬金術の終わり』は、昨日の日経新聞の書評で取り上げられていました。米国雇用統計で1日営業日がズレて、やや多くなってしまいましたが、週5冊くらいにペースダウンしたいと希望しています。

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まず、マーヴィン・キング『錬金術の終わり』(日本経済新聞出版社) です。著者はご存じの通り、2003年から2013年まで10年間イングランド銀行の総裁を務めたエコノミストです。学界からチーフエコノミストとしてイングランド銀行に入り、総裁まで勤め上げた人物です。リーマン・ショック後の混乱を収拾した中央銀行総裁の1人であり、著者のことを錬金術師と称した向きもありました。英語の原題は The Endo of Alchemy であり、邦訳はこのタイトルそのまま直訳のようです。昨年2016年の出版です。ということで、何度か繰り返して、著者は本書のことを回顧録ではないと言明しています。そして、タイトルの錬金術とは、預金者から調達した資金が長期投資のために使われ、新たな経済的価値を生み出すという、歴史的に続いてきた現代金融の仕組みについて名づけられており、ところが、この金融の錬金術は、ハイパーインフレから金融破綻や銀行危機まで、経済に大きな厄災も同時にもたらしてきたわけで、悪い意味での錬金術を終わらせて、健全な金融と経済を築くにはどうすればよいのか、について考察を進めています。そして、金融危機や銀行破綻のひとつの原因が、高レバレッジと将来の不確実性にあると指摘していますが、ナイト流のリスクではない不確実性については、私はどうしようもないんではないか、と諦めの心境です。高レバレッジ、というか、それを逆から見た薄い自己資本については、単にバーゼル規制をもって対処するのか、それとも、強烈に100パーセント準備を必要とする単なる決済機能の提供者たるナロー・バンキングに移行するのか、後者は現実的ではないような気もします。そして、中央銀行の役割として、「どんなときも頼りになる質店」を提唱しています。また、究極の問いとして、著者は、銀行は政府の延長なのか、それとも市場の延長なのか、と問うています。いろいろと知的好奇心を満足させる本ではありますが、ひとつだけ、銀行に対比させるに個人や家計の預金者を想定しているような書き振りがいくつか見受けられます。およそ規模が違うんですから、せめて企業一般、そして、可能な部分については金融機関を対比させてほしい気もしました。

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次に、三橋貴明『生産性向上だけを考えれば日本経済は大復活する』(彩図社) です。作者はマーケット・エコノミスト系の活動をしてきた人だと思うんですが、私は余りよく知りません。あまりご著書を拝読したこともないような気がします。本書は、基本的に、著者なりに経済を解説しようと試みている気がするんですが、さすがに、『錬金術の終わり』に続けて読むと、ややキワモノっぽさが目立ってしまいました。通説を批判するという形で議論を始めながら、最終的には通説に収斂しているような気もしますし、中身でかなり矛盾も散見されます。例えば、期待についてはエラいエコノミストでも適応的期待、すなわち、合理的期待に近いフォワード・ルッキングな期待形成を否定して近い過去から現状の状態がこの先も続くという現状維持バイアスに近い見方を示したかと思えば、メディアの誤った見方をそのまま受け入れているかのごとき見方が示されていたりもします。何より、タイトルの生産性という言葉について、本書の冒頭では労働生産性、すなわち、労働者1人当たりのGDPで定義して、通説の供給サイドよりもむしろ需要により変動する部分が大きく、我が国の低生産性の原因がデフレにある点を指摘したりしている一方で、結局、供給サイドの議論に回帰したりしています。私は生産性については需要サイドの影響も決して無視できないと考えていて、デフレが低生産性の原因との見方も含めて、本書冒頭の見方に大いに賛成なんですが、著者の腰が定まらず、本書の議論では、結局、通説の供給サイドに立ち返ってしまいます。ただ、低生産性の原因がデフレである点を含めて、私と意見が合う部分もかなり多く、潜在成長率とは現実の成長率を大いに繁栄しているという点、完全雇用失業率は現在の3%前後ではなく、さらに低下して2%台前半であるとする点、などなどです。もっとも、タイトルに関する議論だけでページが埋まらなかったものと見え、第4章以下はタイトルとの関係に疑問が残ります。まあ、高齢の方のお話が長くなる原理を垣間見た気がします。要するに、お話しのトピックとは関係なく、自分の持論を延々と展開するということなのだと思います。

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次に、松田雄馬『人工知能の哲学』(東海大学出版部) です。著者はNECのキャリアが長いエンジニアで、決して哲学者ではありません。東北大学とのブレインウェア(脳型コンピュータ)の共同研究プロジェクトを経験し、その経験が本書にも活かされている気がします。そして、出版社からも理解される通り、本書は純粋に学術書であり、一般向けの判りやすい解説書ではありません。例えば、第4章なんぞは難解な数式が頻出します。ただ、現時点での話題の的である人工知能に関する哲学ですので、私のような専門外のエコノミストでもそれなりの一般的な基礎知識が蓄積されつつありますので、それなりに判りやすく読めました。そして、論点は、人工知能の前半の人工は問題ないとしても、人口でない神の作り賜いし生命とは何か、そして、その生命の持つ知能とは何か、に関する哲学的な議論を進めています。そして、本書の結論として、神の作り賜いし生命が発揮する知能とは、そういった用語は用いていませんが、私なりの理解として、合目的的な行動を支えるものであり、その目的の設定は人工知能には出来ない可能性が高い、ということなんだろうと受け止めました。さらに、2045年のシンギュラリティを主張しているカーツワイルが基礎としているムーアの法則が今後も継続される可能性も低い、と予想しています。まず、後者について、私は指数関数的な成長については、今後も継続する可能性の方が強いと思っていますが、伸び率が低下する可能性は否定しません。前者に戻ると、目的設定については、これが明らかな将棋や囲碁については、何の問題もなく人工知能が人間を上回ったのは、広く知られている通りです。そして、本書の著者は羽生三冠の言葉を引用して、人間が勝てなくなれば桂馬が横に跳ぶとか、ルールを変更すればいい、として、まさに人間の知能が人工知能を上回る点を明らかにしています。もちろん、目的が設定され、情報を処理しつつ評価関数がアップグレードされる段階になれば、人工知能の方に分があります。そういう意味では、目標を設定する人間の知能とそれを最適に遂行する方法を見出す人工知能という組み合わせで歴史は進むのかもしれません。錯覚を並べた第2章の観念論的な見方、脳が世界を主観的に作り出している、という見方に少し違和感を覚えますが、全体としてとても参考になるいい本だという気がします。

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次に、ジャン=ガブリエル・ガナシア『そろそろ、人工知能の真実を話そう』(早川書房) です。著者はパリ第6大学の哲学者であり、コンピュータ・サイエンスを専門と知る教授を務めています。フランス語の原題は Le Mythe de la Singulatité ですから、シンギュラリティを神話として、疑いの目で見ているカンジでしょうか。2017年今年の出版です。ただ、この直前で取り上げた『人工知能の哲学』と並べて読むと、かなり見劣りがします。訳者あとがきで、シンギュラリティについては楽観派と悲観派と中立派の3者があるとしていますが、本書は4番目の否定派です。私も基本的にはシンギュラリティは、少なくとも2045年までにはやって来ない確率が高いと考えていますが、何分、専門外のエコノミストですので。シンギュラリティが来ないと思いつつも、来たら何が困るかを考え、やっぱり、人工知能やロボットの導入に伴う失業問題だろうということで、それならベーシック・インカムを導入する、という論理構成になるんですが、本書ではホーキングやビル・ゲイツなどの悲観派の論調を否定派で押し通している印象です。ただ、コンピュータの演算能力と知性については直接の関係はない、というか、別物であるとの主張は私も同意します。ただ、情けないと私が感じたのは、コンピュータの能力の量的な向上が質的な変化をもたらす可能性、まさに、ヘーゲルの弁証法的な量的変化が質的変化に転化する、を理解していない点です。先の『人工知能の哲学』でも取り上げられていた中国語の部屋のエピソードについては、チューリング・テストとの関係で正しく論じて欲しかった気がします。本書と先の『人工知能の哲学』の評価の違いはアマゾンのレビューでもうかがえます。『人工知能の哲学』の評価が星5ツがとっても多いのに対して、本書の評価は星5ツ星1ツの両極端に分けれています。最後に、コンピュータや人工知能の進歩の末にある恐怖は、本書が否定するような人工知能の自律的な人類への反逆ではなく、どこかのマッド・サイエンティストが発達して人類の能力を超えかねない人工知能やロボットの能力を悪用することだと私は考えています。その点については、まだマジメに考えている科学者は少ないのだろうと思います。

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次に、ジョシュア・ハマー『アルカイダから古文書を守った図書館員』(紀伊國屋書店) です。著者は「ニューズウィーク」などで活躍してきたジャーナリストです。そして、邦訳タイトルだけからでは判りにくいんですが、英語の原題は The Bad-Ass Librarian of Timbuktu であり、アフリカ西部のマリを舞台にしたノンフィクションです。原書は2016年の出版です。内容は邦訳タイトルそのままで、トンブクトゥの古文書をマリの内戦で蜂起したアルカイダからいかに守ったかをリポートしています。上の表紙画像で古文書を手にしているのは、本書の主人公とでもいうべき図書館員ハイダラ氏です。時期としては、2012-13年にかけてであり、まさに、訳者あとがきにある通り、2013年1月にアルジェリア東部の天然ガス精製プラントをイスラム過激派が襲撃し、日揮から派遣されていたエンジニアなど日本人10人を含む外国人37人が犠牲になった事件と大雑把に流れを同じくするアフリカにおけるイスラム過激派のテロの動向を背景にしています。トンブクトゥは12世紀から16世紀くらいまで、交通の要衝としてアフリカにおけるイスラム宗教文化の中心として栄えた文化都市、学問の都であり、盛んに写本が作成され、写本の記述された中身も宗教以外にも天文学や医学や幾何学など広範な分野に渡るだけでなく、金箔の装丁など一級の美術品としても価値もある古文書が数多く残されているらしいです。そして、本書の主人公は、一族・一家に伝わる古文書を基に私設図書館を設立したり、その前は、古文書の研究機関・図書館に勤務して古文書を収集したりしていたことがあり、先ほどの2012-13年のアルカイダ系のイスラム過激派の武装蜂起でトンブクトゥの古文書が焼失の危険にさらされることを見抜き、3万冊余りの古文書をより安全なマリの首都バマコに運び込んだ物語です。前半は、主人公が父親から一家や一族に伝わる古文書を受け取り、決して売ったり譲渡したりしてはならないと今わの際に言い置かれ、古文書の研究機関兼図書館に勤務して多数の古文書の蒐集に当たったり、あるいは、この研究機関兼図書館から独立して、父親から引き継いだ古文書を基に私設図書館を開設する、といった、それはそれで興味深いストーリーなんですが、何といっても本書のハイライトは終盤にあり、アルカイダから逃れ、政府軍からも追われ、そして、当時のオランド大統領の決断により介入したフランス軍にも足止めを食らいながら、大量の古文書を運送するところです。もちろん、私のような開発経済学を専門とするエコノミストから見れば、トンブクトゥの人々にとっては、古文書は先進国からの援助を引き出すための、いわば「メシのタネ」なわけで、あだやおろそかにはできないんですが、文化の香りも手伝って、とてもいい物語に仕上がっています。映画化されれば、私はたぶん見に行くと思います。

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次に、マルタ・ザラスカ『人類はなぜ肉食をやめられないのか』(インターシフト) です。著者はサイエンス・ライターということのようです。ポーランド人でフランス在住らしいです。ほとんど肉食をしないベジタリアンのようです。英語の原題は Meathood ですから、接尾時の -hood については、いろんな意味があるんでしょうが、brotherhood と同じと考えて、直訳すれば「肉への愛情」くらいのカンジかもしれません。ということで、1か月ほど前の7月9日付けで取り上げたウィルソン『人はこうして「食べる」を学ぶ』によれば、食べるということは、本能ではなく、ましてや文化でもなく、学習の結果だということだったんですが、結論を先取りしていえば、本書では食事は文化だということになります。そして、肉食は権力、成功富、男らしさ、などなどを象徴していると著者は考えています。ただし、最近時点では、肉食に反対する一定の勢力が台頭し、大雑把に、健康の観点から肉食に反対するベジタリアン、そして、動物を殺すという倫理的観点からのベジタリアンです。後者は前者をやや軽蔑しているかのような記述も本書にはあります。また、当然ながら、宗教的観点から何らかの肉食を禁じる場合もあります。イスラム教やユダヤ教の豚は忌み嫌われて食べませんし、逆に、ヒンドゥー教の牛は神聖な生き物であり、やっぱり食べません。また、明治の近代世界に入る前の日本などでは、仏教的な観点から殺生を禁じて肉食は極めて稀だったといわれています。本書でも、日本では動物の肉をさくら、もみじ、ぼたんなどと呼んで、肉食っぽくなく感じさせる技を紹介しています。英語でも牛肉をビーフ、豚肉をポークと読んだりして、肉は生きている動物から切り離された名詞で呼ばれています。誠についでながら、私は関西人ですから、東京に出て来て宗教由来の言葉が少ないと感じた記憶があります。関西では「そら殺生でっせ」とか、「往生しましたわ」といった表現は日常的に使いますが、東京では聞いたことがありません。でも、肉食は関西の方が盛んな気もします。気ままに書き連ねましたが、私の年齢とともに肉食が減った気がします。

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最後に、阿川大樹『終電の神様』(実業之日本社文庫) です。著者は私よりさらに年長くらいな小説家なんですが、誠に不勉強にして、私はこの作者の作品を読んだことはありません。この作品は、かなり独立性の高い短編から編まれた連作短編集です。必ずしもタイトル通りの終電に限らないんですが、ある駅の近くで電車が人身事故や何らかのトラブルでしばらく止まることから生じる関係者の人生の変化を追っています。収録された7編の短編すべてが心温まるハッピーエンドではありませんが、何らかの人生に対するヒントは得られそうですし、読後感は悪くありません。女装の男性がキーワードになっている気がします。ただ、いくつか弱点もあります。作者の年齢から派生するような気もしますが、現在ではその昔ほど電車が止まる機会も少なくなりましたし、実感がどこまで読者と共有できるかは不安があります。それから、最後の短編などはとても話を作り過ぎてあざとい気もします。

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2017年8月 5日 (土)

秋山投手のアクシデントを乗り越えてヤクルトに連日の完封勝ち!

  RHE
ヤクルト000000000 031
阪  神11002000x 460

先発秋山投手のアクシデントも乗り越えて、ヤクルトに連日の完封勝ちでした。
ドーム球場のデーゲームを知らず、5時近くに帰宅すると、4-0でリードしているにも関わらず、先発秋山投手の姿がマウンドになく、よく判らなかったんですが、最後はクローザーのドリス投手が締めて、文句なしの勝利でした。得点シーンはすべて見逃しました。明日はもっと早くからスタンバイしたいと思います。

連日の消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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7月の米国雇用統計は金融の正常化をサポートするか?

日本時間の昨夜、米国労働省から7月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は6月の+231千人には及ばないものの、+180千人程度との市場の事前コンセンサスを上回り、+209千人増となり、失業率もさらに前月から0.1%ポイント下がって4.3%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の3パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

U.S. unemployment rate drops to 4.3% as employers add 209,000 jobs in July
U.S. job growth remained steady in July, though workers are still largely seeing slower wage gains, according to data released Friday by the U.S. Labor Department.
Some of the highlights of July's jobs report:
  • U.S. employers added 209,000 net new jobs, slightly above analysts' expectations.
  • The unemployment rate ticked down slightly to 4.3% from June's 4.4% and matched May's 16-year-low.
  • Average hourly earnings increased by 9 cents, or less than 1%, to $26.36 in July.

この後、エコノミストへのインタビューなどが続きますが、長くなりますので割愛しました。包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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相変わらず、米国の雇用は堅調です。6月7月の2か月連続で雇用者数の前月差増加幅は+200千人を超え、とくに、直近7月は非農業部門計の+209千人増のうち、+205千人が民間部門です。産業別では、Leisure and hospitality が前月から+62千人増を記録し、Professional and business services が+49千人増、Health care and social assistance も+45千人増となっており、トランプ米国大統領が重視している製造業 Manufacturing も+16千人増となっています。米国連邦準備制度理事会の連邦公開市場委員会(FOMC)カレンダーによれば、次回のFOMCは9月19-20日に開催される予定となっており、量的緩和(QE)で大量に買い入れた米国債の圧縮などに踏み切る可能性が高まってきている気がします。市場の観測では、まず、資産圧縮を優先し、次回の利上げは少しお休み、という見方が有力となっています。それが、金融政策の正常化、なのかもしれません。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じた印象ながら、もう一段の加速が見られません。ただ、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなりましたが、日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったのかもしれません。

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2017年8月 4日 (金)

メッセンジャー投手のナイスピッチングでヤクルトに完封勝ち!

  RHE
ヤクルト000000000 041
阪  神00001020x 330

なかなかいい投手戦だったんですが、メッセンジャー投手のナイスピッチングでヤクルトに完封勝ちでした。
7時半に帰宅した時点で先取点を取ったところでしたが、ノーアウト三塁で追加点なしに終わり、イヤな雰囲気だったんですが、7回に中谷選手のツーランが飛び出し、メッセンジャー投手の完封ピッチングでヤクルト打線を封じ込めました。打線はわずか3安打でしたが、ことごとく得点に結びつく効率のよさでした。

明日も消化試合ながら、
がんばれタイガース!

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毎月勤労統計に見るなかなか上がらない賃金をどう考えるか?

本日、厚生労働省から5月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.1%減を、また、現金給与指数のうちのきまって支給する給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.4%増を、それぞれ記録しています。ただし、消費者物価が上昇を示していますので、現金給与総額を消費者物価でデフレートした実質賃金は前年同月から▲0.8%の大きなマイナスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の名目賃金0.4%減 1年1カ月ぶりマイナス
厚生労働省が4日発表した6月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、名目賃金にあたる現金給与総額は42万9686円と前年同月比0.4%減となった。減少に転じるのは1年1カ月ぶり。夏のボーナスが減ったことが要因だ。
名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は前年同月比0.4%増の24万2582円と3カ月連続で増加。一方、ボーナスや通勤費にあたる「特別に支払われた給与」は1.5%減の16万8103円だった。
背景には夏のボーナスが幅広い産業で前年より減少したことがある。産業別では「鉱業、採石業等」(17.7%減)、「飲食サービス業等」(14.7%減)、「不動産・物品賃貸業」(12.3%減)が目立った。
物価変動の影響を除く実質賃金は0.8%減少した。減少は3カ月ぶり。消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が0.5%上昇したことで、実質賃金を押し下げた。
厚労省は「基本給は上昇傾向が続いており、給与総額の減少は一時的ではないか」との見方を示した。

今週の報道については、いつもの包括的なニュースではなくて、ほぼほぼお給料に終始している印象です。続いて、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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まず、グラフを上から順に、製造業の所定外労働時間は、なぜか、季節調整済みの前月比でマイナスを記録しています。今週月曜日に取り上げた鉱工業生産指数(IIP)がかなりのプラスでしたので、とても意外です。労働は生産の派生需要ですから、基本的には同じ方向に動くハズなんですが、私にはよく判りません。次に、2番目と3番目のパネルの賃金ですが、引用した報道では6月賃金がボーナスの影響で落ち込んだ点が強調されていましたが、少なくとも、消費に影響を及ぼす度合いの強い恒常所得と見なされている部分については、名目でプラスを続けています。ただし、デフレからの脱却はしていないものの、消費者物価がそれなりの上昇を示していますので、実質賃金はまだマイナスです。それから、6月の賃金総額が前年同月比でマイナスなのは、何といってもボーナスなんですが、夏季ボーナスについては額とともに、支払時期も注視すべきです。すなわち、年末ボーナスの支給が12月期決まりきっているのに対して、夏季ボーナスは6月支給と7月支給の両パターンあります。夏季ボーナスの総額ないし1人当たりとして前年よりも減少したのか、それとも、6月支給が減って7月支給に繰り延べられたのか、については気にかかるところですので、来月の統計もその点を忘れずチェックしたいと思います。最後に、4番目のグラフで、雇用の増加はパートタイムから徐々にフルタイムの一般労働者にシフトしているのが見て取れると思います。従って、賃金の上昇がはかばかしくなくても、パートタイムではなくフルタイムの正規雇用が増加することにより、マクロの賃金支給総額が増加する効果は望めるんではないかと私は期待しています。

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2017年8月 3日 (木)

インテージ調査による夏の食卓東西ランキングやいかに?

今年は猛暑といわれつつ、実は、まだ梅雨が続いているようなお天気の日もあり、なかなかお天気が安定しない印象なんですが、今年は夏土用が2日あるらしいとウワサに聞きつつ、私はまだうなぎは食べていません。ということで、調査大手のインテージから一昨日8月1日付けで、夏の食卓東西ランキングが明らかにされています。下の画像の通りです。

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トップの冷奴と2位のそうめん・冷麦は東西で共通です。ただし、冷やし中華や枝豆などのゆで豆は東西で食卓登場率がかなり異なっています。京都出身の私から見て、食文化については、圧倒的に関西の方が首都圏よりも洗練されている気がするんですが、そうではないと考える人も少なくんさそうな気もしますし、夏に限らず、季節ごとに地域や地方により郷土色が満点なのだろうと受け止めています。でも、夏は冷たいのがごちそうなのかもしれません。インテージのサイトには、他にもいろいろと情報が満載です。

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2017年8月 2日 (水)

土壇場の逆転劇で広島のマジック点灯を阻止?

  RHE
阪  神002000002 480
広  島200000010 371

土壇場9回に4番ロジャース選手の逆転タイムリーが飛び出し、広島のマジック点灯を阻止でした。
7時半に帰宅した時点で2-2の同点で先発小野投手はまだマウンドにいました。8回松山選手のホームランで勝負あったかに見えましたが、9回の逆転劇で何とか広島のマジック点灯を先送りした感じでしょうか。今季は広島の独走ですから、そのうちにマジックは点灯するんでしょうが、出来る限り、でもムリない範囲で、阪神もクライマックス・シリーズ出場目指してがんばって欲しいもんです。

明日も意地を見せて、
がんばれタイガース!

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一進一退の続く消費者態度指数をどう見るか?

本日、内閣府から7月の消費者態度指数が公表されています。前月から+0.5ポイント上昇し43.8を記録しています。統計作成官庁の内閣府では基調判断を「持ち直し」で据え置いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の消費者態度指数、前月比0.5ポイント上昇の43.8 基調判断据え置き
内閣府が2日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.5ポイント上昇の43.8だった。上昇は2カ月ぶり。株価上昇で資産効果が働き、消費者の暮らしへの見方が好転した。ビールが値上がりする一方で野菜価格が安定し、物価の見方が落ち着いたことも支えとなった。前月は0.3ポイント低下の43.3だった。内閣府は消費者心理の基調判断を「持ち直している」で据え置いた。
指数を構成する意識指標では、「暮らし向き」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」が前月を上回った。「雇用環境」は横ばいだった。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月より3.4ポイント低い75.8%と2カ月ぶりに減少した。一方で「低下する」との見通しは微増。「変わらない」は4カ月ぶりに増えた。調査基準日は7月15日。調査は全国8400世帯が対象で、有効回答数は5748世帯(回答率68.4%)だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、消費者態度指数を構成する4つのコンポーネントのうち、暮らし向き、耐久消費財の買い時判断、収入の増え方が上昇した一方で、雇用環境は前月と変わらず横ばいでした。上のグラフを見ても、2014年4月の消費増税の際に直近の底を打ってから、大雑把に改善傾向にあると考えていますが、まだ、サブプライム・バブル崩壊前の2005-06年における40代後半の指数の水準には達していません。7月統計の指数水準で見て、完全雇用に近い労働市場を反映して、雇用環境は48.1に達しているものの、収入の増え方が41.7、また、暮らし向きが42.3にとどまっています。雇用の改善で量的には雇用が増加し、家族の中でも働くメンバーが増加しているのかもしれませんが、お給料はさほどではなく暮らし向きも雇用の改善ほどにはよくなっていない、という実感なのでしょう。私は根本の雇用に関するマインドがいいので、収入や暮らし向きにも雇用の改善が当然に波及するものと単純に予想していましたが、まだ、ラグの範囲内なのか、あるいは、私の想定する単純な波及経路から構造変化が生じているのか、やや謎です。いずれにせよ、所得に先立ってマインドが向上を見せて来ましたが、ソフトなマインドだけでなく、そろそろハードの所得の上昇も消費の拡大には必要な段階に達しつつあるような気がします。

別の話題ですが、本日、国立社会保障・人口問題研究所から2015年度の「社会保障費用統計」が公表されています。相変わらず、高齢者にだけ優しい社会保障給付の実態が明らかにされています。可能であれば、日を改めて取り上げたい気もしますが、今週は米国雇用統計も公表される予定ですし、パスするかもしれません。

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2017年8月 1日 (火)

またまた大事な広島戦を落として明日にもマジック点灯か?

  RHE
阪  神000020100 381
広  島30010000x 460

広島との大事な一戦を落として明日にもマジック点灯です。
7時半に帰宅した時点で早くも3-0で負けていて、先発岩貞投手が初回に3失点とは緊張感の欠落もひどいもんだと感じざるを得ませんでした。中盤から終盤に打線が追い上げましたが、初回の3失点は重く、結局、逃げ切られてしまいました。攻撃も、8回はバント以外の作戦も見られずゲッツーで、9回は走者を走らせるとゲッツーで、何をやってもダメ、という感じなんでしょうか。まるで昨年と同じで情けない限りです。

明日くらいは意地を見せて、
がんばれタイガース!

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東京商工リサーチによる2017年3月期決算「上場企業2,172社の平均年間給与」調査の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、ちょうど1週間前の先週7月25日に東京商工リサーチから2017年3月期決算「上場企業2,172社の平均年間給与」調査の結果が明らかにされています。消費を支える所得の2016年度までの一隻について興味あるデータが提供されています。過去の数字ながら、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから、上場企業2,172社平均年間給与の推移のグラフを引用しています。2017年3月期決算の上場企業2,172社の平均年間給与は6,281千円、中央値6,100千円で、前年より41千円+0.6%の増加となっています。2011年3月期以来7年連続の増加で7年間で491千円の上昇を示しています。ただ、直近の伸び率は2016年3月期の+1.2%増を▲0.6%ポイント下回り、2013年3月期の+0.2%増以来の+1%割れとなっています

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次に、上のグラフは東京商工リサーチのサイトから、業種別の平均年間給与のテーブルを引用しています。業種別のトップは、建設業の7,118千円となっており、このテーブルの分類による全業種で唯一7,000千円越えとなっています。活発な建設投資を背景に、好決算が続出した上場ゼネコンが引き上げた、との分析です。次いで、水産・農林・鉱業の6,946千円、金融・保険業の6,940千円、不動産業の6,902千円、電気・ガス業の6,901千円の順となっています。逆に、最低は7年連続で小売業の5,153千円となっており、次いで、サービス業の5,390千円と、これら下位2業種だけは5,000千円台でした。ただし、小売業とサービス業では7年連続の増加を示しており、深刻化する人手不足に対応した待遇改善に動いている姿が透けて見える、と分析しています。

東証1部2部に加えて、地方上場、NASDAQにマザーズと上場企業対象の調査ですので、大企業に偏っていることは明らかですから、世間一般の感触よりも高めのお給料が弾き出されているように感じますが、人手不足に対応して消費を支える所得も徐々に増加を示しているようです。

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