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2017年9月16日 (土)

今週の読書もついつい読み過ぎて計7冊!

今週の読書はぶ厚な経済書をはじめとして、以下の7冊です。先週も『戦争がつくった現代の食卓』と『世界からバナナがなくなるまえに』の食べ物関係2冊を読んだんですが、なぜか、今週も歴メシと和菓子の2冊が入っています。食欲の秋なのかもしれません。

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まず、 エドワード P. ラジアー/マイケル・ギブス『人事と組織の経済学 実践編』(日本経済新聞出版社) です。著者は米国の労働経済学者であり、ラジアー教授なんぞはノーベル経済学賞に擬せられたりもしているような気がします。英語の原題は Personal Economics in Practice, 3rd Edition であり、2015年の出版です。そして、学術的な水準は大学院博士前期課程くらいに使えるテキストです。学部生ではやや難しいでしょう。ただし、1998年にラジアー教授は邦訳で同じ出版社から『人事と組織の経済学』を出版しており、やや英文タイトルに変更あったものの、中身は半分以上同じだという気がします。というのも、私は労働経済学とかのマイクロな分野はほとんど専門外なんですが、数年前に勤務上の都合で国際共同研究を担当し、まったく専門外ながら労働や雇用に関する研究のグループの研究取りまとめをせねばならなかったことがあり、その際に1998年出版の旧版を読みました。旧版の方がややページ数が多かった気はしますが、冒頭の採用に関するチャプターなんか、安定した生産性を示す労働者よりも、リスクある労働者を雇うべし、といった結論も旧版から同じだと思いだしてしまいました。すなわち、野球でいえばアベレージ・ヒッターではなく、ホームランか三振か、といったバッターを雇用すべきであるという結論で、安定性を重視する日本人としては不思議に思ったんですが、本書の結論のひとつとしては、リスクある労働者が結果を出せない場合、すなわち、野球でいえば三振ばかりしている場合、解雇すればいいじゃないか、という、いかにも米国流の考え方だったのを思い出してしまいました。米国的なCEOの超高給と一般労働者との給与格差については、職階による給与の差が大きいほどスキルアップのインセンティブが大きくなる、と旧版と同じ論理を展開している部分が多いんですが、IT化の進展により意思決定の中央集権化が進む可能性を指摘していたりと、当然のように版を重ねている部分もあります。第2版を見ていないので何ともいえませんが、適切にアップデートしている気もします。ただ、人事管理に関しては、合理的なホモ・エコノミカスを対象とするインセンティブの体系ですので、合理的といえば合理的なんですが、資本と異なるモビリティの問題とか、個々人による異質性の問題とか、まだまだ解明されていない点は多いと考えさせられます。加えて、現時点では実験経済学は消費の場などにおける選択の問題が中心に据えられていますが、労働経済学が分析対象とする雇用や業務遂行の際の選択を実験で明らかにできれば、さらに経済学は進歩しそうな気もします。もっとも、専門外の私が知らないだけで、すでにそういった研究は進められていそうな気もします。

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次に、淵田康之『キャッシュフリー経済』(日本経済新聞出版社) です。著者は野村総研のベテラン研究員であり、著者が野村総研から出している主要なリポートの一覧が野村総研のサイトに示されています。本書のテーマは、今年5月27日付けの読書感想文で取り上げたロゴフ教授の『現金の呪い』の理論的な面を背景に、日本の現状に合致するように取りまとめてあります。というのも、買い物の決済でキャッシュが占める比率は日本ではとても高く5割ほどに達します。銀行預金が大好きな点と併せて、日本人のひとつの嗜好を示しているような気がします。米国では買物のキャッシュ支払比率は2割に届かず、カード払いが半分ほどに上ります。また、1000ドル札のような超高額紙幣はないものの、日本で1万円札が市中で何の問題もなく流通するのもやや不思議です。名目値でほぼ等価の米国の100ドル札は、少なくとも私の経験では、首都ワシントンのスーパーマーケットでとても使い勝手が悪いです。もちろん、米国の100ドル札はいわゆる法貨ですから、受け取ってもらえないことはあり得ないんですが、ホンモノの100ドル札であることをチェックするのに、やたらと手間取り時間もかかります。ロゴフ教授の主張するキャッシュレス化の利点はマネー・ロンダリングなどの不正対策や金融政策の効率化だったんですが、本書では4点指摘しており、第1にそもそも紙幣やコインを製造するコストの削減、あるいは、偽札や盗難などのリスクの減少、第2に銀行ATMでの現金引き出しやスーパーの支払いの場での小銭の勘定などに費やす時間の短縮、第3にストレスない快適な買い物の実現、第4にマネー・ロンダリングや不正送金の防止などを上げています。さらに、日本の現状にかんがみて、例えば、インバウンド消費の支払いにおけるキャッシュフリー化などの利点も論じていますし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた課題ともいえます。キャッシュ大国である、当然に、その逆から見て、キャッシュフリー後進国である日本の実情に即して、どのようにキャッシュフリー化を進めるかにつき、政府や日銀の政策面も批判的に紹介しつつ、現実的な対応を議論しています。

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次に、大島隆『アメリカは尖閣を守るか』(朝日新聞出版) です。著者は朝日新聞をホームグラウンドとするジャーナリストです。国際報道のキャリアが長く、米国駐在経験もあるようです。ということで、本書のタイトル通りの内容について、米国のサイドから公開されている公文書などを渉猟して明らかにしようと試みています。というのも、オバマ前政権も現在のトランプ政権も、尖閣諸島における我が国の施政権を認めていて、我が国の施政権の及ぶ範囲は米国の防衛義務が及ぶと明らかにしていますので、本書のタイトルに対する回答は yes でしかあり得ません。そして、その yes である根拠を時代をさかのぼって明らかにしようと試みているわけです。もちろん、その背景には米国ファーストで、同盟国に対して応分の負担を求める発言を繰り返すトランプ大統領の存在があります。さかのぼるのはサンフランシスコ平和条約と同時に署名された日米安保条約です。でも、沖縄返還時の交渉経緯も重要です。ただし、この沖縄返還までは日米のほかのもう1国の当事者である中国とは、台湾の中華民国政府を意味していたのに対し、現在では北京の中華人民共和国の共産党政権となっています。そして、忘れてはいけない点は、本書でも何度も繰り返されている通り、尖閣諸島の領有権については米国は態度を明らかにせず、関係国で話し合いをすべき、という原則であり、尖閣諸島についても領有権に対する態度があいまいです。ただ、尖閣諸島の施政権については日本が有していることを認めており、従って、日本の施政権の及ぶ範囲で日米安保条約に基づく防衛義務が発生する、という立場です。ですから、本書では明記していないものの、竹島については韓国が実効支配していることから、日本の施政権を米国が認めない可能性が大いにある点は留意しておかねばなりません。おそらく、バックグラウンドで大量のドキュメントを消化している割には、出て来た結論はありきたりな気もしますが、バックグラウンドの確認努力を評価すべきなのかもしれません。

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次に、遠藤雅司『歴メシ!』(柏書房) です。著者は歴史料理研究家だそうで、本書では、最古のパン、中世のシチュー、ルネサンスの健康食、ヴェルサイユ宮殿の晩餐会などなど、オリエントから欧州にあった8つの時代の歴史料理を検証し、現代人向けのレシピにまとめています。第1章 ギルガメシュの計らい では古代メソポタミアを、第2章 ソクラテスの腹ごしらえ ではいわゆる古典古代のギリシアを、第3章 カエサルの祝勝会 ではローマ帝政期を、第4章 リチャード3世の愉しみでは中世イングランドを、第5章 レオナルド・ダ・ヴィンチの厨房 では中世イタリアを、第6章 マリー・アントワネットの日常 と 第7章 ユーゴーのごちそう会 ではでは革命期のフランスを、第8章 ビスマルクの遺言 では統一期のドイツを、それぞれ取り上げています。フランス革命までは料理人といえば、我が国の「天然平価の料理人」ではないですが、王宮や貴族のお抱えで料理を作っていたものの、革命により貴族が没落し、その料理人がパリ市内でレストランを開いた、ということのようです。私は料理はまったくせず、しかも、つくるほうだけでなく食べる方でも、グルメでも何でもなく、食事とは栄養の補給くらいにしか考えていません。ですから、長崎大学経済学部の教員として単身赴任していた折にも、鍋釜はもちろん、コップや皿などの食器すら宿舎に持っておらず、朝食の際にパンをミルクで流し込むほかは、大学生協などでの外食か、そうでなければ、弁当を買い求めていました。不健康な食生活でしたので、よく体を壊していましたし、2009年にメキシコ発の豚インフルエンザが我が国でも流行した際には、しっかりとり患して長崎でも流行の最先端ではなかろうかといわれたくらいです。ですから、いろんな料理のレシピを見ても実感が湧かないこと甚だしいんですが、お料理の好きな人は実際に作ってみようかと考える向きも少なくないような気がします。次の『和菓子を愛した人たち』と同様に、フルカラーの写真が満載です。

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次に、虎屋文庫『和菓子を愛した人たち』(山川出版) です。虎屋のサイトで2000年から連載されてきた歴史上の人物と和菓子の内容を書籍化したものです。どうでもいいことながら、オールカラー300ページほどで税込み2000円弱というのは安いと思います。もっと、どうでもいいことながら、我が家の倅たちが幼稚園くらいのころに、絵本を買う場合、イラストだと安かったんですが、写真だととたんに高価になった記憶があります。上に見える表紙画像は川崎巨泉の饅頭食い人形なんですが、こういった写真がフルカラーで収録されています。ということで、もともとのサイトからの転載が中心ですから、タイトル通りに、原則2ページくらいの細切れながら、歴史上の著名人と和菓子の関係を明らかにしています。冒頭は紫式部から始まっています。フルカラーですから、和菓子の色彩上の利点なども手に取るように明らかで、谷崎潤一郎が引用している夏目漱石の言葉で、羊羹の色に対比して洋菓子のクリームの色は「あさはか」と表現されています。ただ、やや勘違いもあるような気もしますし、虎屋文庫がおおもとになっているので、虎屋で扱っていないタイプの和菓子が含まれていないという恨みもあります。上の表紙画像にしても、私は和菓子というよりは中国風の印象なんですが、どうでしょうか。また、本書冒頭の紫式部にしても、当時の文化を背景に考えれば、洋菓子のシュークリームがあるわけではなく、国風文化の下で中国の影響すら薄いわけですから、和菓子が好きだったというよりは、甘いもの、現在の言葉でいえばスイーツが好きだった、ということなんでしょう。鎖国下の江戸時代もチャプターひとつを占めていますが、同様だという気がします。また、唐菓子がよく取り上げられている気がして、和菓子との境界につきやや疑問が残ります。

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次に、本格ミステリ作家クラブ[選・編]『ベスト本格ミステリ 2017』(講談社ノベルス) です。本格ミステリ作家クラブの創設が2000年で、その翌年の2001年から編まれている短編集の2017年版です。収録作品は、天野暁月「何かが足りない方程式」、青崎有吾「早朝始発の殺風景」、西澤保彦「もう誰も使わない」、似鳥鶏「鼠でも天才でもなく」、井上真偽「言の葉の子ら」、葉真中顕「交換日記」、佐藤究「シヴィル・ライツ」、青柳碧人「琥珀の心臓を盗ったのは」、伊吹亜門「佐賀から来た男」、倉狩聡「もしかあんにゃのカブトエビ」の短編と評論が1編となっています。極めて論理的に謎が解き明かされる「早朝始発の殺風景」、また、なかなか上手に騙してくれる「交換日記」などが私の感性に合致した気がします。2段組みの小さな活字で、資料編も合わせれば500ページ近いボリュームなんですが、さすがの作家陣の短編作品ですので、私はとてもスラスラ読み進むことができました。

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最後に、米澤穂信ほか『短編学校』(集英社文庫) です。このブログでも読書感想文に取り上げた記憶がありますが、同じ集英社文庫から出版されている『短編少女』や『短編少年』といったシリーズの最新刊ではないかと思います。収録作品は、米澤穂信「913」、本多孝好「エースナンバー」、中村航「さよなら、ミネオ」、関口尚「カウンター・テコンダー」、井上荒野「骨」、西加奈子「ちょうどいい木切れ」、吉田修一「少年前夜」、辻村深月「サイリウム」、山本幸久「マニアの受難」、今野緒雪「ねむり姫の星」の10作品となっています。 短編集にもかかわらず、なかなか深い作品が多かったような気がします。でも、こういったアンソロジーの常として、10本もの収録作品があれば、2-3は既読である可能性があります。まあ、既読の作品数が多いということは、それだけ残念という意味ではなく、読書家の証なのかもしれません。

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