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2017年9月20日 (水)

8月貿易統計に見る輸出と輸入の拡大は何を意味するか?

本日、財務省から8月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+18.1%増の6兆2780億円、輸入額も+15.2%増の6兆1643億円、差引き貿易収支は+1136億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の貿易収支、3カ月連続黒字 1136億円 米向け自動車など伸びる
財務省が20日発表した8月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は1136億円の黒字だった。貿易黒字となるのは3カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は1200億円の黒字だった。自動車や半導体関連の品目がけん引した輸出の伸びが輸入の伸びを上回り、前年同月の346億円の赤字から黒字に転じた。
輸出額は前年同月比18.1%増の6兆2780億円となり、9カ月連続で増加した。増加幅は2013年11月(18.4%)以来の大きさだった。輸出数量が輸入を上回る伸び率で堅調に推移している。8月の為替レート(税関長公示レートの平均値)が1ドル=110.77円と前年同月から7%程度の円安となり、円建ての輸出額を押し上げたことも寄与した。
米国向けの排気量2000cc超の自動車や香港向けの半導体などの電子部品の輸出がけん引した。地域別では、前年同月が低調だった反動もあり、対米国が21.8%増と14年12月(23.7%)以来の伸びを記録したことが目立った。対欧州連合(EU)は13.7%増、中国を含む対アジアも19.9%増とともに増加した。
輸入額は15.2%増の6兆1643億円だった。資源価格の上昇と円安の進行で、石炭や液化天然ガス(LNG)、原粗油といったエネルギー関連を中心に増加した。中国からのパソコン、ドイツからの自動車や航空機などの輸入が増えたことから、対中貿易は6カ月連続、対EU貿易は2カ月ぶりに赤字となった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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メディアの報道では、上に引用した記事もそうですが、3か月連続の貿易黒字がハイライトされているような気がします。大きな要因は、石油価格などをはじめとする国際商品市況における資源価格の落ち着きに加えて、世界経済の順調な回復・拡大に伴って、我が国の輸出がまさに主力輸出品である自動車などで伸びているからであると私は受け止めています。そして、我が国の景気も順調な回復・拡大軌道にあり、従って、輸入額も国内経済活動に応じた伸びを示しており、輸出と輸入がともに拡大する好ましい局面に入りつつあることを実感しています。もうひとつは、昨年6月の英国の国民投票により、いわゆるBREXITが決まり、世界経済が昨年年央にはもっとも不透明感が大きかった1年後の反動、という側面もありますから、それほど手放しで楽観するのもどうかという気もします。ただ、昨年後半のBREXITやトランプ大統領の当選といった時期からは、大陸欧州でのポピュリスト政党の大幅な躍進も見られず、フランス大統領選挙の結果なども踏まえれば、少しだけ世界経済の見通しがよくなった気もします。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。世界経済の回復・拡大、さらに、不透明感の低下に加え、我が国からに輸出は、引用した記事にもある通り、為替がフォローの風となって、大きく伸び始めました。為替さえ通常の水準を維持していれば、自動車産業をはじめとして、我が国産業にはまだまだ国際競争力があるんではないか、と改めて感じています。

最後に、そうはいっても、世界経済にリスクがないわけではなく、昨年のような政治的、というか、経済外的なリスクではないものの、欧米の金融政策に起因するリスクが顕在化する可能性があります。すなわち、米国連邦準備制度理事会(FED)は6月にも利上げを決めましたし、年内にも追加利上げが実施されたり、資産圧縮が始まる可能性もあり、米国経済の下押し圧力になるとともに、新興国の金融市場での波乱要因となる可能性も否定できません。加えて、欧州中央銀行(ECB)でも来年以降の資産買い入れの圧縮=テーパリングが、早ければ今秋から議論される可能性があり、何らかの市場の反応が発生する可能性があります。

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2017年9月19日 (火)

今夏の気候に起因する野菜価格に関する消費者の実感やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、ネット調査大手のインテージから、9月8日付けで2017年夏の野菜価格についての生活者の印象の調査結果が明らかにされています。今夏は梅雨が明けていないのではないか、とおもわれるほど雨が続き日照時間が不足している印象があり、野菜などの農作物価格が気がかりであったところ、なかなか興味深い調査結果が示されています。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、インテージのサイトから、今年の夏の野菜価格の印象 について問うた結果が上のグラフの通りです。「例年に比べて、高くなっていると感じた」が15.1%で、「例年に比べて、やや高くなっていると感じた」の47.2%まで含めると62.3%が、例年に比べて高くなっていると感じているようです。グラフの引用は割愛しますが、地域別で見ると、「やや」抜きで「高くなっている」との印象が四国と九州といった日本の南寄りのエリアで比較的高くなっているようです。

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次に、インテージのサイトから、高くなっていると感じた野菜 について問うた結果が上のグラフの通りです。見ての通りなんですが、上位に上がった品目はいずれも天候不順による生育不足や入荷量の減少が価格に影響した可能性があり、生活者として日常の買い物などにおいてもそれらの価格高騰が感じられているようです。

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2017年9月18日 (月)

広島リーグ優勝おめでとう!

  RHE
広  島100100010 360
阪  神000100100 280

広島カープのリーグ優勝おめでとうございます。
投手力も、打撃力も、守備力も走力も、そして、何よりもここ一番の勝負強さも、何から何まで阪神は広島にかないませんでした。実力差は大きいと感じてしまったシーズンといわざるを得ませんが、甲子園で敵チームの胴上げを見せつけられるのはとても悔しいものです。来年こそ優勝目指してがんばって欲しいと思います。クライマックスシリーズはどうでもいいです。

来年こそは、
がんばれタイガース!

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2017年9月17日 (日)

東洋経済オンラインによる「東京五輪を陰で支える」50法人ランキングやいかに?

本日9月17日付けの東洋経済オンラインで「東京五輪を陰で支える」50法人ランキングが明らかにされています。オリンピックを陰で支える、というよりは、公共事業をジャカスカ受注している、という方が正確な気もしますが、以下のテーブルの通りです。ご参考まで。

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2017年9月16日 (土)

今週の読書もついつい読み過ぎて計7冊!

今週の読書はぶ厚な経済書をはじめとして、以下の7冊です。先週も『戦争がつくった現代の食卓』と『世界からバナナがなくなるまえに』の食べ物関係2冊を読んだんですが、なぜか、今週も歴メシと和菓子の2冊が入っています。食欲の秋なのかもしれません。

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まず、 エドワード P. ラジアー/マイケル・ギブス『人事と組織の経済学 実践編』(日本経済新聞出版社) です。著者は米国の労働経済学者であり、ラジアー教授なんぞはノーベル経済学賞に擬せられたりもしているような気がします。英語の原題は Personal Economics in Practice, 3rd Edition であり、2015年の出版です。そして、学術的な水準は大学院博士前期課程くらいに使えるテキストです。学部生ではやや難しいでしょう。ただし、1998年にラジアー教授は邦訳で同じ出版社から『人事と組織の経済学』を出版しており、やや英文タイトルに変更あったものの、中身は半分以上同じだという気がします。というのも、私は労働経済学とかのマイクロな分野はほとんど専門外なんですが、数年前に勤務上の都合で国際共同研究を担当し、まったく専門外ながら労働や雇用に関する研究のグループの研究取りまとめをせねばならなかったことがあり、その際に1998年出版の旧版を読みました。旧版の方がややページ数が多かった気はしますが、冒頭の採用に関するチャプターなんか、安定した生産性を示す労働者よりも、リスクある労働者を雇うべし、といった結論も旧版から同じだと思いだしてしまいました。すなわち、野球でいえばアベレージ・ヒッターではなく、ホームランか三振か、といったバッターを雇用すべきであるという結論で、安定性を重視する日本人としては不思議に思ったんですが、本書の結論のひとつとしては、リスクある労働者が結果を出せない場合、すなわち、野球でいえば三振ばかりしている場合、解雇すればいいじゃないか、という、いかにも米国流の考え方だったのを思い出してしまいました。米国的なCEOの超高給と一般労働者との給与格差については、職階による給与の差が大きいほどスキルアップのインセンティブが大きくなる、と旧版と同じ論理を展開している部分が多いんですが、IT化の進展により意思決定の中央集権化が進む可能性を指摘していたりと、当然のように版を重ねている部分もあります。第2版を見ていないので何ともいえませんが、適切にアップデートしている気もします。ただ、人事管理に関しては、合理的なホモ・エコノミカスを対象とするインセンティブの体系ですので、合理的といえば合理的なんですが、資本と異なるモビリティの問題とか、個々人による異質性の問題とか、まだまだ解明されていない点は多いと考えさせられます。加えて、現時点では実験経済学は消費の場などにおける選択の問題が中心に据えられていますが、労働経済学が分析対象とする雇用や業務遂行の際の選択を実験で明らかにできれば、さらに経済学は進歩しそうな気もします。もっとも、専門外の私が知らないだけで、すでにそういった研究は進められていそうな気もします。

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次に、淵田康之『キャッシュフリー経済』(日本経済新聞出版社) です。著者は野村総研のベテラン研究員であり、著者が野村総研から出している主要なリポートの一覧が野村総研のサイトに示されています。本書のテーマは、今年5月27日付けの読書感想文で取り上げたロゴフ教授の『現金の呪い』の理論的な面を背景に、日本の現状に合致するように取りまとめてあります。というのも、買い物の決済でキャッシュが占める比率は日本ではとても高く5割ほどに達します。銀行預金が大好きな点と併せて、日本人のひとつの嗜好を示しているような気がします。米国では買物のキャッシュ支払比率は2割に届かず、カード払いが半分ほどに上ります。また、1000ドル札のような超高額紙幣はないものの、日本で1万円札が市中で何の問題もなく流通するのもやや不思議です。名目値でほぼ等価の米国の100ドル札は、少なくとも私の経験では、首都ワシントンのスーパーマーケットでとても使い勝手が悪いです。もちろん、米国の100ドル札はいわゆる法貨ですから、受け取ってもらえないことはあり得ないんですが、ホンモノの100ドル札であることをチェックするのに、やたらと手間取り時間もかかります。ロゴフ教授の主張するキャッシュレス化の利点はマネー・ロンダリングなどの不正対策や金融政策の効率化だったんですが、本書では4点指摘しており、第1にそもそも紙幣やコインを製造するコストの削減、あるいは、偽札や盗難などのリスクの減少、第2に銀行ATMでの現金引き出しやスーパーの支払いの場での小銭の勘定などに費やす時間の短縮、第3にストレスない快適な買い物の実現、第4にマネー・ロンダリングや不正送金の防止などを上げています。さらに、日本の現状にかんがみて、例えば、インバウンド消費の支払いにおけるキャッシュフリー化などの利点も論じていますし、2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けた課題ともいえます。キャッシュ大国である、当然に、その逆から見て、キャッシュフリー後進国である日本の実情に即して、どのようにキャッシュフリー化を進めるかにつき、政府や日銀の政策面も批判的に紹介しつつ、現実的な対応を議論しています。

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次に、大島隆『アメリカは尖閣を守るか』(朝日新聞出版) です。著者は朝日新聞をホームグラウンドとするジャーナリストです。国際報道のキャリアが長く、米国駐在経験もあるようです。ということで、本書のタイトル通りの内容について、米国のサイドから公開されている公文書などを渉猟して明らかにしようと試みています。というのも、オバマ前政権も現在のトランプ政権も、尖閣諸島における我が国の施政権を認めていて、我が国の施政権の及ぶ範囲は米国の防衛義務が及ぶと明らかにしていますので、本書のタイトルに対する回答は yes でしかあり得ません。そして、その yes である根拠を時代をさかのぼって明らかにしようと試みているわけです。もちろん、その背景には米国ファーストで、同盟国に対して応分の負担を求める発言を繰り返すトランプ大統領の存在があります。さかのぼるのはサンフランシスコ平和条約と同時に署名された日米安保条約です。でも、沖縄返還時の交渉経緯も重要です。ただし、この沖縄返還までは日米のほかのもう1国の当事者である中国とは、台湾の中華民国政府を意味していたのに対し、現在では北京の中華人民共和国の共産党政権となっています。そして、忘れてはいけない点は、本書でも何度も繰り返されている通り、尖閣諸島の領有権については米国は態度を明らかにせず、関係国で話し合いをすべき、という原則であり、尖閣諸島についても領有権に対する態度があいまいです。ただ、尖閣諸島の施政権については日本が有していることを認めており、従って、日本の施政権の及ぶ範囲で日米安保条約に基づく防衛義務が発生する、という立場です。ですから、本書では明記していないものの、竹島については韓国が実効支配していることから、日本の施政権を米国が認めない可能性が大いにある点は留意しておかねばなりません。おそらく、バックグラウンドで大量のドキュメントを消化している割には、出て来た結論はありきたりな気もしますが、バックグラウンドの確認努力を評価すべきなのかもしれません。

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次に、遠藤雅司『歴メシ!』(柏書房) です。著者は歴史料理研究家だそうで、本書では、最古のパン、中世のシチュー、ルネサンスの健康食、ヴェルサイユ宮殿の晩餐会などなど、オリエントから欧州にあった8つの時代の歴史料理を検証し、現代人向けのレシピにまとめています。第1章 ギルガメシュの計らい では古代メソポタミアを、第2章 ソクラテスの腹ごしらえ ではいわゆる古典古代のギリシアを、第3章 カエサルの祝勝会 ではローマ帝政期を、第4章 リチャード3世の愉しみでは中世イングランドを、第5章 レオナルド・ダ・ヴィンチの厨房 では中世イタリアを、第6章 マリー・アントワネットの日常 と 第7章 ユーゴーのごちそう会 ではでは革命期のフランスを、第8章 ビスマルクの遺言 では統一期のドイツを、それぞれ取り上げています。フランス革命までは料理人といえば、我が国の「天然平価の料理人」ではないですが、王宮や貴族のお抱えで料理を作っていたものの、革命により貴族が没落し、その料理人がパリ市内でレストランを開いた、ということのようです。私は料理はまったくせず、しかも、つくるほうだけでなく食べる方でも、グルメでも何でもなく、食事とは栄養の補給くらいにしか考えていません。ですから、長崎大学経済学部の教員として単身赴任していた折にも、鍋釜はもちろん、コップや皿などの食器すら宿舎に持っておらず、朝食の際にパンをミルクで流し込むほかは、大学生協などでの外食か、そうでなければ、弁当を買い求めていました。不健康な食生活でしたので、よく体を壊していましたし、2009年にメキシコ発の豚インフルエンザが我が国でも流行した際には、しっかりとり患して長崎でも流行の最先端ではなかろうかといわれたくらいです。ですから、いろんな料理のレシピを見ても実感が湧かないこと甚だしいんですが、お料理の好きな人は実際に作ってみようかと考える向きも少なくないような気がします。次の『和菓子を愛した人たち』と同様に、フルカラーの写真が満載です。

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次に、虎屋文庫『和菓子を愛した人たち』(山川出版) です。虎屋のサイトで2000年から連載されてきた歴史上の人物と和菓子の内容を書籍化したものです。どうでもいいことながら、オールカラー300ページほどで税込み2000円弱というのは安いと思います。もっと、どうでもいいことながら、我が家の倅たちが幼稚園くらいのころに、絵本を買う場合、イラストだと安かったんですが、写真だととたんに高価になった記憶があります。上に見える表紙画像は川崎巨泉の饅頭食い人形なんですが、こういった写真がフルカラーで収録されています。ということで、もともとのサイトからの転載が中心ですから、タイトル通りに、原則2ページくらいの細切れながら、歴史上の著名人と和菓子の関係を明らかにしています。冒頭は紫式部から始まっています。フルカラーですから、和菓子の色彩上の利点なども手に取るように明らかで、谷崎潤一郎が引用している夏目漱石の言葉で、羊羹の色に対比して洋菓子のクリームの色は「あさはか」と表現されています。ただ、やや勘違いもあるような気もしますし、虎屋文庫がおおもとになっているので、虎屋で扱っていないタイプの和菓子が含まれていないという恨みもあります。上の表紙画像にしても、私は和菓子というよりは中国風の印象なんですが、どうでしょうか。また、本書冒頭の紫式部にしても、当時の文化を背景に考えれば、洋菓子のシュークリームがあるわけではなく、国風文化の下で中国の影響すら薄いわけですから、和菓子が好きだったというよりは、甘いもの、現在の言葉でいえばスイーツが好きだった、ということなんでしょう。鎖国下の江戸時代もチャプターひとつを占めていますが、同様だという気がします。また、唐菓子がよく取り上げられている気がして、和菓子との境界につきやや疑問が残ります。

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次に、本格ミステリ作家クラブ[選・編]『ベスト本格ミステリ 2017』(講談社ノベルス) です。本格ミステリ作家クラブの創設が2000年で、その翌年の2001年から編まれている短編集の2017年版です。収録作品は、天野暁月「何かが足りない方程式」、青崎有吾「早朝始発の殺風景」、西澤保彦「もう誰も使わない」、似鳥鶏「鼠でも天才でもなく」、井上真偽「言の葉の子ら」、葉真中顕「交換日記」、佐藤究「シヴィル・ライツ」、青柳碧人「琥珀の心臓を盗ったのは」、伊吹亜門「佐賀から来た男」、倉狩聡「もしかあんにゃのカブトエビ」の短編と評論が1編となっています。極めて論理的に謎が解き明かされる「早朝始発の殺風景」、また、なかなか上手に騙してくれる「交換日記」などが私の感性に合致した気がします。2段組みの小さな活字で、資料編も合わせれば500ページ近いボリュームなんですが、さすがの作家陣の短編作品ですので、私はとてもスラスラ読み進むことができました。

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最後に、米澤穂信ほか『短編学校』(集英社文庫) です。このブログでも読書感想文に取り上げた記憶がありますが、同じ集英社文庫から出版されている『短編少女』や『短編少年』といったシリーズの最新刊ではないかと思います。収録作品は、米澤穂信「913」、本多孝好「エースナンバー」、中村航「さよなら、ミネオ」、関口尚「カウンター・テコンダー」、井上荒野「骨」、西加奈子「ちょうどいい木切れ」、吉田修一「少年前夜」、辻村深月「サイリウム」、山本幸久「マニアの受難」、今野緒雪「ねむり姫の星」の10作品となっています。 短編集にもかかわらず、なかなか深い作品が多かったような気がします。でも、こういったアンソロジーの常として、10本もの収録作品があれば、2-3は既読である可能性があります。まあ、既読の作品数が多いということは、それだけ残念という意味ではなく、読書家の証なのかもしれません。

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2017年9月15日 (金)

東洋経済オンラインによる40歳平均年収「63業界」ランキングやいかに?

先週金曜日9月8日付けで東洋経済オンラインから40歳平均年収「63業界」ランキングが明らかにされています。以下のテーブルの通りです。

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実は、大学の3年生になる上の倅と先週に進路に関する雑談をしました。倅のいうところによれば、上のテーブルのトップを飾ったコンサルとか、外資系の投資銀行などは、確かに高給は高給だが、メチャメチャ働かされる、とのうわさを耳にする、ということのようでした。私が大学生だったころは、やっぱり、銀行とか商社とか、あるいは、生損保などが人気で、銀行や商社はハードワークだといわれていて、私にはムリだろうと考えた記憶があります。お給料やワーク・ライフ・バランスのほかに、さらに考慮すべきは勤務地で、私が入ったお役所は2000年の省庁再編前は地方支分部局がなくて、東京だけにオフィスのある役所だったんですが、そもそも、なぜか国際派になってしまった私は海外勤務を2度に渡って計6年余り経験しましたので、国内での転勤よりもある意味でハードだったかもしれません。いうまでもなく、2度目の海外勤務のジャカルタには倅も連れて行っています。商社のような国際派に適した職場もあれば、ややドメっぽいながら全国に支店網を持つ生保のような会社もあります。そのあたりも考えどころなんでしょう。

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2017年9月14日 (木)

終盤から延長戦で決定打なく巨人に勝てず引き分け!

 十一十二 RHE
読  売000000011000 2100
阪  神200000000000 290

この3連戦で、どうしても巨人に勝てませんでした。阪神恒例の9月の大失速の原因であるリリーフ陣の疲労蓄積は現在の阪神ベンチには認識されていないようで、先発秋山投手を早々に降板させて継投に入りましたが、やっぱり終盤で巨人に追いつかれました。9回から延長戦は塁上を賑わせたんですが、これまたおなじみの決定打に欠け、勝利にはつながりませんでした。代打に送り出された若手のバッターが、あれだけ選球眼悪くボール球を振り回していては、打てようハズもありません。

消化試合はほどほどに、
がんばれタイガース!

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今日は私の誕生日!

今日は私の誕生日です。着々と定年に近づいています。体力もかなり衰えを感じています。気力はもともとそれほど充実していません。我が家の恒例のくす玉のフラッシュを置いておきます。めでたいとお考えの向きはクリックして、くす玉を割って下されば幸いです。

なお、私と同じおとめ座の生まれである下の倅の誕生日を今年はすっかり失念していました。ご本人には少し遅れて祝意を伝達しておきましたが、誠に痛恨の極みです。

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2017年9月13日 (水)

先発岩田投手が序盤で試合を壊して巨人にボロ負け!

  RHE
読  売060100000 7152
阪  神000000002 2112

先発岩田投手が序盤で試合を壊して巨人にボロ負けでした。ここに来て、阪神恒例の9月の大失速が出たんですが、打線も塁上を賑わして11安打を放ちながら決定打が出ませんでした。クライマックス・シリーズはもし出られたとしても、もちろん、出られないかもしれませんが、まったく期待できないと思ってしまいました。広島と巨人には勝てるような気がしません。

消化試合はムリすることなく、
がんばれタイガース!

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さらに上昇幅を拡大した企業物価(PPI)と大企業景況感がプラスに戻った法人企業景気予測調査をどう見るか?

本日、日銀から8月の企業物価 (PPI)が、また、財務省から7~9月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計からやや上昇幅を拡大して+2.9%を示した一方で、法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は4~6月期の▲2.0の後、7~9月期にはを+5.1記録し、先行きについては、10~12月期は+7.5に、また、来年2018年1~3月期は+5.6と、それぞれプラスを維持すると見通されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

8月の企業物価指数、前年比2.9%上昇 8年10カ月ぶり伸び率
日銀が13日に発表した8月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は98.8で、前年同月比で2.9%上昇した。伸び率は7月(2.6%)から拡大し、消費税の影響を除くと2008年10月(4.5%)以来8年10カ月ぶりの大きさとなった。8カ月連続の上昇となる。前年比での原油価格の上昇を背景に石油・石炭製品の価格が上げ幅を広げた。
前月比では横ばいだった。中国の需要増加を背景に8月に銅の国際価格や古紙の価格が上昇した。世界的に自動車の需要が好調で中国やトルコが粗鋼の生産を増やし、鉄鉱石が上昇したため、競合する鉄くずの価格も上がった。一方で、原料の値下がりで化学製品が下落したほか、今夏の天候不順でバーベキューなどの行楽需要が不振となり、牛肉の価格も下落した。
円ベースの輸出物価は前年比で8.6%上昇し、13年12月(12.7%)以来の伸び率となった。前月比では0.5%下落した。輸入物価は前年比で12.5%上昇し、14年1月(12.7%)以来の伸び率となった。前月比では1.3%下落した。為替相場が前年比で円安、前月比では円高となったことが影響した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年比で上昇したのは390品目、下落したのは256品目だった。上昇と下落の品目差は134品目と、7月の確報値(79品目)から55品目拡大した。
日銀の調査統計局は「中国の景気や国内の天候不順、地政学リスクが物価に与える影響を今後も注視していく」との見解を示した。
7~9月の大企業景況感、2期ぶりプラス 法人企業景気予測調査
財務省と内閣府が13日発表した法人企業景気予測調査によると、7~9月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はプラス5.1だった。情報通信機械器具や生産用機械器具を中心とした製造業がけん引し、2期ぶりにプラスとなった。前回調査の4~6月期はマイナス2.0だった。
7~9月期は大企業のうち、製造業がプラス9.4となった。情報通信機械器具製造業で自動車やスマートフォン(スマホ)向けの電子部品が好調なことや、生産用機械器具製造業で半導体関連の製造装置の需要が増加したことなどが全体の景況感を押し上げた。4~6月期のマイナス2.9から大幅に改善した。
非製造業はプラス2.9となり、前回調査のマイナス1.6から改善した。建設業で建築需要が堅調に推移しているのに加え、サービス業のうち宿泊業や娯楽業での来客数増加などが寄与した。
先行き10~12月期の見通しはプラス7.5で、製造業がプラス11.2、非製造業がプラス5.7だった。2018年1~3月期は全産業でプラス5.6となった。財務省と内閣府の総括コメントは「緩やかな回復基調が続いている」となり、前回調査時の「企業の景況感は慎重さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」と比べてやや明るさがみられた。
17年度の設備投資は前年度比で3.9%増加する見込みとなった。情報通信機械器具製造業のでスマホ向け電子部品の生産能力増強などが見込まれている。前回調査の3.8%増も小幅に上回った。経常利益の17年度見込みは0.6%増となり前回調査の0.4%減から改善がみられた。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。今回の調査は8月15日時点。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。ただし、統計2本の記事を並べましたので、やたらと長くなってしまいました。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、最初のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、真ん中の2番目は需要段階別の上昇率、そして、最後の3番目は原油価格の指数そのものを、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2枚のパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価は前年同月比で見て、8月は+3.0%の上昇と、前月7月の+2.6%からさらに上昇幅を拡大しています。ただ、上昇幅拡大の主因は電気やガスなどのエネルギー関連の価格上昇であり、国際商品市況における石油価格の上昇がラグを伴って波及しているだけという気もします。上のグラフの中の一番下のパネルでは原油価格の指数をそのままプロットしていますが、前年同月比上昇率のベースでは、今年2017年1~3月期の各月に+90%超の大幅な上昇を記録した後、すでに上昇率ではピークアウトし、直近8月統計では+20.0%まで上昇幅が縮小して来ていますが、昨年の指数のボトムは8月ですし、9~10月も指数のレベルは低くて、今年9~10月の指数が8月と同じであれば、まだ2ケタ上昇が続くことになります。いずれにせよ、国際商品市況で決まる価格ですので先行きは見通しがたいんですが、大幅な価格上昇の時期は過ぎた気もします。ですから、金融政策というよりも国際商品市況におけるエネルギー価格からの影響の強いPPI上昇率の先行きについては、このまま上昇幅がさらに拡大することは考えにくいと私は受け止めています。

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続いて、上のグラフは法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIをプロットしています。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。企業活動については、ハードデータの売上げや利益といった企業収益の部分が昨年年央から後半くらいに底を打ち、マインドのソフロデータについても昨年2016年10~12月期くらいから改善を示して来ていると受け止めています。ただ、跛行性が見られるのも確かで、規模の大きな企業ほどマインドは改善し、非製造業よりも製造業の方が海外経済の恩恵を受けやすく、マインドはより大きく改善を示しています。足元の10~12月期では大企業の景況判断BSIが+7.5、中堅企業は+4.6、中小企業は+0.7となっています。また、個別項目では、人手不足感が広がっており、特に、中堅・中小企業では大企業よりも人材確保が困難なようで、今年12月末時点の見通しで、従業員数判断BSIの不足超が大企業で14.8に上る一方で、中堅企業では26.6、中小企業でも25.2を示しています。また、注目の設備投資については、ソフトウェア投資額を含む、土地購入額を除くベースで、全規模全産業で見て今年度2017年度は前年度比+3.9%増、うち、製造業+8.2%増、非製造業+1.5%増となっています。人手不足に伴う賃金の上昇や設備投資の増加が景気拡大の好循環につながることが期待されます。

どうでもいいことながら、米国のアップル社からiPhoneの新製品が明らかにされています。iPhone発売から10年ということのようです。我が国の携帯3社はiPhone 8については9月22日発売を明らかにしていますが、iPhone X については未定だそうです。価格が10万円を軽く上回るようです。

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2017年9月12日 (火)

中国SNS上の「聖地巡礼」スポット分析結果やいかに?

やや旧聞に属するトピックですが、8月29日付けでトレンドExpressから、中国の代表的なSNSである新浪微博上の聖地巡礼に関するクチコミ分析の結果が明らかにされています。下のテーブルの通りです。

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ということで、ダントツ1位は「君の名は。」の飛騨高山となっています。なお、中国では昨年末から封切られているそうです。2位には「ジブリ各作品」の三鷹市がランクインしています。もともと、三鷹の森ジブリ美術館や9位にランクインしている清水市のちびまる子ちゃんランドは人気のスポットではなかろうかと思います。我が家の子供達が小さかったころは、熊本にウルトラマン・ランドなるスポットがあったんですが、ジャカルタで暮らしているうちに行きそびれて、結局、2013年に閉鎖されてしまいました。本題に戻って、3位「夏目友人帳」の八代市、4位「スラムダンク」の鎌倉市は昨年の1位と2位の作品です。10位「新世紀エヴァンゲリオン」箱根町は、この時期にどうして、という気になったんですが、昨年2016年夏に上海のゲームショーで高さ25メートルのエヴァ初号機が公開され話題になったので注目を集めたようです。
中国では、最近になって、アニメ・マンガなどの舞台となった「聖地巡礼」が日本旅行の目的のひとつとして扱われ始め、メディアへの露出が増えてきているようです。2015年8月からのクチコミ件数推移を見てみると、夏に盛り上がりを見せていて、夏休みや卒業のシーズンで多くの若者が旅行に出かけており、「聖地」ブランドのターゲットは若者ということになりそうです。

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2017年9月11日 (月)

7月統計で大きくリバウンドした機械受注の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から7月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比+8.0%増の8533億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の機械受注8.0%増、鉄道車両けん引 自動車は堅調維持
内閣府が11日発表した7月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ8.0%増の8533億円だった。4カ月ぶりに増加し、伸び率は2016年1月以来の大きさとなった。鉄道車両でまとまった受注が重なったことが大きく寄与した。自動車関連の堅調も続いた。QUICK算出の市場予想(5.1%増)を大きく上回った。内閣府は7月の大幅増は単月として目立つものの「増勢が定着するか見極める必要がある」と指摘し、基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
製造業が2.9%増と2カ月ぶりに増えた。自動車関連は0.8%増と伸び率は小さいが、2桁の伸び率となった前月(12.7%)の実績を上回った。その他製造業に含む合成樹脂加工機械にも関連した受注があったとみられ「自動車関連で好調が続いている」(内閣府経済社会総合研究所)。
非製造業は4.8%増と2カ月連続のプラスだった。運輸業・郵便業が64.9%増となり鉄道車両の寄与が全体を支えた面が大きく、内閣府は「想定された需要がようやく顕在化してきた」と指摘した。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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機械受注統計は単月でのブレが大きいとはいえ、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列の前月比・前期比で見て、1~3月期▲1.4%減、4~6月期▲4.7%減と、2四半期連続で前期比マイナスを記録し、月次ベースでも、4月▲3.1%減、5月▲3.6%減、6月▲1.9%減と3か月連続のマイナスの後の7月+8.0%増ですから、反動増の要因もあります。ですから、引用した記事にもある通り、統計作成官庁の内閣府では基調判断は「足踏み」で変更していません。上のグラフを見ても理解できるように、コア機械受注はほぼ横ばい圏内にあり、引用した記事の最後のパラにあるような需要の顕在化かどうかは、やや疑わしいと私は考えていますが、足元ではなくもう少し先を見通せば、設備投資は緩やかながら増加の方向にあると考えられます。ひとつには稼働率の上昇です。鉱工業生産指数のグループの一環に稼働率データがあり、季節調整済みの四半期データで見て、製造工業の稼働率指数が2016年1~3月期の96.1を底に、2017年4~6月期の101.9まで緩やかに上昇の方向にあります。私が役所に入ったころは、稼働率指数が90を超えると設備投資が増加し始めるという経験則があったんですが、指数の水準はともかく、稼働率の上昇が設備投資を増加させる方向性は変わらないと考えるべきです。それから、言い古された気がするものの、人手不足と2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたインフラ整備に伴う需要の盛り上がりも見逃せません。加えて、企業の供給サイドでも、業績の改善・高水準とともに、維持更新投資の必要も高まっていることから、かつてのように爆発的に設備投資が増加するという局面は考えにくいものの、緩やかに設備投資は増加の方向を示し、設備投資の先行指標であるコア機械受注はその動きに先立って増加に転じるものと私は予想しています。

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2017年9月10日 (日)

日本気象協会による紅葉の見ごろ予想やいかに?

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やや旧聞に属する話題ですが、先週9月6日に日本気象協会から第1回の紅葉の見ごろ予想が明らかにされています。日本気象協会のサイトから引用した上の画像の通りであり、東京周辺は平年並みの11月下旬といったところでしょうか。
ここ数年、残暑が厳しくて、夏からすぐに冬になってしまい、秋がとても短い気がしていたんですが、今年に限っては、8月がまるで梅雨のように雨が多くて日照時間が少なかった一方で、9月に入るとともに残暑もなく秋らしい気候になった気がします。予報でも暑さがぶり返すことはないように聞き及んでいます。今年もクールビズのノーネクタイは9月いっぱいですし、秋の夜長を楽しんで読書する季節になりつつあるようです。

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2017年9月 9日 (土)

今週の読書は直木賞受賞の佐藤正午『月の満ち欠け』ほか計7冊!

今週もまたまたオーバーペースで、やや読み過ぎた気がします。話題の経済書もありますが、今週の読書の目玉は何といっても直木賞の佐藤正午『月の満ち欠け』です。私は村上春樹の好きなハルキストですが、最近の小説ではダントツだった気がします。以下の7冊です。

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まず、ルトガー・ブレグマン『隷属なき道』(文藝春秋) です。著者はオランダ人のジャーナリストであり、広告収入にまったく頼らない「デ・コレスポンデント」の創立メンバーの1人だそうです。2014年に出されたオランダ語の原書は自費出版に近かったらしいんですが、アマゾンの自費出版サービスで英語に訳されると、今年2017年には世界20か国での出版が決まったといいます。英語のタイトルは Utopia for Realist となっています。ということで、本書の邦訳の副題は『AIとの競争に勝つベーシックインカムと1日3時間労働』となっていますが、決してAIやロボットとの競争だけを視野にしているわけではなく、特に格差についてその解消を目指していると考えるべきです。英国の有名なスピーナムランド制をはじめとして、カナダやインドなどで実施され、社会実験レベルのものまで含めたベーシック・インカムの効果に関する文献をひも解き、ベーシック・インカムが決して勤労を阻害したり、怠惰を招いたり、といった事実は観察されず、むしろ、貧困や格差の是正に役立っている点を強調しつつ、その上で、産業革命期から1980年代まで一貫して減少を示した労働時間が上昇に転じ、しかし、そういった中でも労働生産性は上昇を続けている、という事実を説得力ある方法で示しています。また、ありきたりな国民総幸福量、ブータンの例を引きつつ、こういった幸福度指標については明確に否定しています。ケインズの週15時間労働の予言にも触れつつ、正統派の経済学に基づいた方法でベーシック・インカムの利点を展開し、同時に、本書の終盤では国境を開放して自由な個人の行き来を推奨しています。決して、グローバル化を格差の原因として排除する議論には与していません。これも、正統派の経済学に立脚した議論といえます。ラッダイト運動の歴史に言及しつつ、AIとの競争には勝てないことを明言し、その意味では「敗北主義」っぽく見えなくもないんですが、私から見ればリアリストなんだろうと思えます。マルクス・エンゲルスのような左派経済学者に加えて、ケインズなどの正統派エコノミスト、さらに、ハイエクやフリードマンなどの右派まで幅広く引用して、左右両派のどちらからも支持されているベーシック・インカムの利点を浮き彫りにしています。AIによる職の代替可能性からベーシック・インカムが議論されることが多いんですが、あくまで私の信頼厚い左派からする議論かもしれませんが、格差是正まで含めて幅広い議論に資する良書だと思います。

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次に、大湾秀雄『日本の人事を科学する』(日本経済新聞出版社) です。著者は東大社研教授であり、専門分野は労働経済学や人事制度などであると私は認識しています。私は景気循環や開発経済などの中でも、マクロ経済を専門分野とするエコノミストであり、労働経済学とか、人的資源管理論とかのマイクロな分野は専門外なんですが、本書でも紹介される初歩的なミンサー型の賃金関数は推計して研究成果として取りまとめたことがあります。ということで、タイトルから勝手に想像して、マイクロな人事制度、すなわち、人事評価やそれに基づく人事異動による個々の労働者・雇用者の配置、さらに、評価に基づく職階とそれに連動する賃金水準の決定に関する議論を期待していたんですが、私の期待は裏切られました。わずかに関連するテーマは第4章の人事採用、それに、中間管理職の貢献の計測に関する議論だけでした。まあ、そうなんでしょうね。今話題の女性活躍推進、働き方改革、高齢化対応などのほか、定着率の向上などの人的資源管理に関するトピックが中心で、その前提として統計的・計量的な分析手法に関する簡単な解説などがあります。本書冒頭では、人事についてはいわゆるPDCAが回っていないと断言されており、人事に集まるデータを統計的・計量的に分析することにより、人事の過大に対応しようと試みています。ただ、先月8月26日付けの読書感想文で取り上げた山口一男『働き方の男女不平等』についても同じことを書きましたが、個々人の能力や生産性、あるいは、家庭環境などもひっくるめて人事で評価し最適な人事配置を行うことは、現在のシステムでは不可能と私は考えています。だからこそ、役所ほど典型的ではないとしても、大手企業などでは入社年次で管理されて来たわけであり、別の言葉でいえば、横並びで人事管理され、特に、大卒総合職の場合はゼネラリストとして、会社や役所などの組織にメンバーシップ参加し、無限定に指定された役割をこなす、という人事制度がまかり通って来たわけです。しかし、他方で、本書の p.237 で指摘されている通り、ゾクセイ、ニーズキャリアなどが大きく多様化し、単純な相対比較が難しくなった現時点で、どのような人事評価制度の下で評価を下し、各個人の適性や能力や生産性やその他の属性に従って、職階を上らせたり、あるいは、下らせたり、また、どういった役割でどの職場に配置するか、の労働力の最適配置論を考え直すべき時期に来ている気がします。もちろん、マイクロな人的資源管理論から派生して、マクロの経済社会全体の生産性やその生産性に基づくマクロ経済の成長や、さらにさらに、で、人口問題の緩和・解消などまで視野に収めた議論は華々しくていいんですが、人的資源管理論の本来の役割である個々人の処遇のあり方をすっ飛ばして、いきなりマクロの議論をしても合成の誤謬を生じるだけのような気がします。従って、もう20年近くも前の邦訳出版ですが、ラジアー教授の『人事と組織の経済学』などと比べるとかなり見劣りします。もっとも、比較対象の相手のレベルが違い過ぎるかもしれません。ただ、人事部局に集まるデータをもっと活用した方がいい、という点については一般論としては大賛成なのですが、実際のデータ管理の運用は困難がつきまとうような気もします。すなわち、役所の人事部門などは「身内に甘い」との指摘を受けることがあったりするんですが、人事に関するデータや各種情報が人事部局には集まるわけで、それをどう使うかは考えどころです。「身内に甘い」といわれても従業員を守る姿勢を貫くのか、それとも、次は誰をリストラ対象としようか、という視点で活用するのか、人事としての情報活用の方向性も考えどころかもしれません。

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次に、ロバート H. フランク『成功する人は偶然を味方にする』(日本経済新聞出版社) です。著者は米国コーネル大学ジョンソンスクール経済学教授であり、長らくニューヨーク・タイムズ紙で経済コラムを執筆しています。本書の英語の原題は Success and Luck であり、2016年の出版です。私もそうですが、うまく行けば自分の努力や能力を要因として上げ、逆に失敗すれば運が悪かったとか、他人の責任にする、というとても立派な人格的な傾向がある人は少なくありません。現在および少し前の阪神の監督について私の評価が芳しくないのはそういったところで、試合後の感想で、打たれた投手について「あそこは抑えて欲しかった」とか、打てなかった打者に対して「あそこは打って欲しかった」とかいう監督は私は決して評価しません。逆に、選手起用に関する監督自身の責任をアッサリと認めると潔さなんぞを感じます。同様に、本書では成功したケースでもご本人の能力や努力だけではなく、運の要素がかなりあることを認めつつ、失敗したケースでも成功のケースとの差は紙一重であり、運の要素で失敗に終わるケースが少なくない、という点を明らかにしています。同時に、政府などの公的部門が個人の効用や企業の生産活動に対して補完的なインフラを提供している点も強調しており、例えば、スピードの出る高級車を買っても道路が凸凹ではスピードを出してのドライブができないわけで、これらの点を総合して、成功した高所得者から累進的にガッポリと税金を取るべきである、と主張しています。そして、エコノミストの目から見てとても特徴的なのは、累進消費税を提唱している点です。私は不勉強にして知りませんでしたが、第2次大戦中にフリードマン教授も戦費調達の観点からその導入を提唱していたらしく、現在の我が国の消費税のように財サービスの購入時に税抜き価格に上乗せして消費者が業者に支払って、そのために、益税が出来たりする制度ではなく、収入と支出と貯蓄のバランスから支出額を算定して、それに対して累進的に課税するというシステムのようです。いずれにせよ、成功と不成功の間の差は大きくなく、しかも、現在のような勝者総取り方式で、小さな努力の差に対して大きな格差が生じかねない経済社会では、何らかの格差是正策が求められるのは当然です。最後に、成功と不成功を分ける要因として能力や努力ではなく、本書のように運を強調し過ぎると、努力しようとする意欲を阻害する可能性がありますが、現在の日本のように努力し過ぎて過労死したりするような社会では、もっとゆったり構えるというか、私は少しくらい努力を推奨しない意見があってもいいような気もします。ダメですかね?

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次に、アナスタシア・マークス・デ・サルセド『戦争がつくった現代の食卓』(白揚社) です。作者は編集者であり、本書のために2年半を調査に費やしたフードライターでもあります。ご亭主がキューバ人、ということはラテン人であり、お姑さんも本書に登場し、私の大使館勤務時の南米生活に照らしても食生活は豊かではないか、という気がします。本書では、特に、ネイティック研究所なる米軍ご用達の軍人向けの糧食などの開発研究所をはじめ、米軍と通常の我々一般人の食卓の関係をひも解くんだろうと期待して借りてみたんですが、もっと食品学、化学や生物学などの食品に関する学問、日本でいえば女子大にあるような食物学科のような学術的な内容が中心となっています。少し脱線すると、我が国の明治期に軍と食料ということでいえば、彼の文豪森鴎外も軍医として横槍片手に参加した脚気論争があります。白米だけで十分なカロリーが摂取できる一方で、脚気は何らかの病原菌に起因すると主張する森鴎外などの陸軍一派に対して、海軍は麦飯や白米まで精製しない玄米などにより、実証的に脚気を回避した論争です。もちろん、米軍でもその昔には同じような事件があったのかもしれませんが、少なくとも本書では関係ありません。軍人に供する食品に関しては、シュンペーター的なイノベーションの観点からして、食材、調理、包装を含めた輸送、などなどのイノベーションが考えられ、一般人食卓に供される食品と共通する部分も少なくありません。例えば、食材については米国人大好きなステーキについては、Tボーン・ステーキのような骨付き肉ではなく、成形肉の利用が始まったり、調理は保存食として従来からの塩漬け、燻製、干物などに加えて、宇宙食にも応用されたフリーズ・ドライの製法が発達したり、包装についてはナポレオン戦争期に開発された缶詰に加えて、レトルト・パウチのような空気を通しにくい包装が開発されたり、輸送については、もちろん、冷蔵・冷凍での輸送が可能になったり、と軍民共通のイノベーションがさまざまに紹介されています。ただ、第12章のスーパーマーケットのツアーで紹介されているように、軍民で共通している食品は30~70%にも上る一方で、具体的にそれほど一般読者向けの楽しく理解できる例が多くありません。私は女子大に設置されている食物学科が理系だということを大学に入ってから知って、少なからぬショックを受けたんですが、そういった理系の人向けの本だという気もします。私は国際派の公務員ですから、売国出張はついつい首都のワシントンDCが多くなるんですが、倅たちへの土産にはスミソニアン博物館の宇宙食のアイスクリームを買う場合が多いです。軍ではありませんが、こういった新しい食品のイノベーションが一般家庭の食卓に並んだりするんでしょうから、そういった楽しい実例がもっと欲しかった気がして残念です。

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次に、ロブ・ダン『世界からバナナがなくなるまえに』(青土社) です。訳者あとがきのよれば、著者は米国ノースカロライナ州立大学の研究者であり、専門分野は進化生物学だそうです。英語の原題は Never out of Season であり、2017年今年の出版です。邦訳タイトル通り、プランテーション栽培されるバナナの話から始まって、ジャガイモ、キャッサバ、カカオ、というか、チョコレート、コムギ、天然ゴムなどなど、企業収益性の観点から植物や生物としての多様性を損なう形でのモノカルチャー化が進み、結果として、緑の革命などのように多くの人口のための食料生産には資することとなった一方で、病原菌やネズミなども含めた病害虫の侵食には弱くなり、極めて短期間のうちに緑の農場が茶褐色になってしまう被害をもたらす可能性が高まったリスクを指摘しています。繰り返しになりますが、緑の革命により、スーパーマーケットで消費者の食料の入手は容易になった一方で、殺虫剤や除草剤などの化合物に対する依存が強まったり、灌漑の必要が高まったりしたため、農村は収穫が増加して収益が増大した一方で、種子や農業機械や肥料などの化学品を購入する必要が高まり、同時に、支出も増加するという経済モデルに組み込まれる結果となった、と著者は指摘します。まあ、私のようなエコノミストからすれば、経済学が農学を支配するようになってめでたい、と考えられなくもありませんが、他方で、完全に人為的な世界である経済と自然との共存の思想が不可欠な農学との乖離に目をつぶらねばならない必要も生じたわけです。どちらが好ましいかは基本的な世界観、人生観、哲学によります。先の『戦争がつくった現代の食卓』にもありましたが、食品工業が生み出した加工食品にもそれなりの合理性はありますし、すべての食料生産を近代資本主義的に短期的な効率性だけを優先させて行うことは問題があるとしても、農業を自然のままにして餓死する貧困層を放置するのには忍びません。ということで、人類のそのコンポーネントのひとつであるところの多様な生態系の維持と、人類そのものの生存や種の維持と、両者が矛盾なき場合は問題ないものの、両者が両立しない場合には悩ましい問題が生じる可能性があります。そういった意味で、世界観や人生観などの哲学的な見方も含めて、考えさせられる本でした。

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次に、佐藤正午『月の満ち欠け』(岩波書店) です。ご存じ、第157回直木賞受賞の話題作です。タイトル通り、生まれ変わり、あるいは、輪廻転生の物語ですが、そのバックボーンは明らかに熱烈なる恋愛小説です。ということで、私はこの60歳超のキャリアの長い人気作家の作品については、『鳩の撃退法』くらいしか読んでいないんですが、おそらく、この『月の満ち欠け』クラスの小説は日本文壇ではそうそう出ないような気もします。それほどの大傑作といえます。私の場合、読書の中でも小説の比重はそれほど大きくなく、経済書をはじめとする教養書や専門書の方が大きな比率を占め、さらに、小説の中でも好みで時代小説やミステリが多いものですから、純文学やこういった現代ものの大衆小説はそれほど読みませんが、完全にノックアウトされました。論評の前に、まず、私は自然の摂理のひとつとして、輪廻転生や生まれ変わりはあり得る可能性を否定しません。すべての生き物が生まれ変わって輪廻転生する、なんてことを主張するつもりは毛頭ありませんが、この小説にあるような動機も含めて、何らかの強烈な思いがあれば、生まれ変わりになって生命をつなぐこともあり得ますし、生命をつなげなければ幽霊になることもあり得る、とその可能性を全否定することはしません。まあ、レアケースなんだろうとは思います。他方で、私自身はそれほど強烈な思いを持っているわけではないので、生まれ変わりや輪廻転生をしないとは思いますが、さらに積極的にこれらを否定するために、浄土真宗の信者となって念仏を唱えるわけです。なお、一般的な用語ながら、輪廻転生から抜け出すことを解脱と定義しているのは広く知られた通りです。宗教から小説に戻ると、この作品と似た小説に東野圭吾の出世作である『秘密』があります。広末涼子主演で映画化もされました。これも、特定の人物の記憶をはじめとする人格が親しい他の人物に転移する、というストーリーです。しかし、『秘密』の場合は転移された方がその思いを振り払って自立して行くのに対して、この『月の満ち欠け』は何と4代に渡って思いを遂げるために生まれ変わりを繰り返します。というか、初代を別にすれば、生まれ変わりとしてこの世に現れるのは3代と数えることも出来ます。そして、原則として、同じ名前を引き継ぎ、とうとう東京ステーションホテルに現れなかった三角くんを思い続け、ラストにはその思いを成就するわけです。加えて、生まれ変わりはこの流れだけではなく、もう1人いることが強く示唆されます。ハッキリいって、これが衝撃のラストです。また、人間でない生まれ変わりの可能性も示唆されています。映画化されたら、私はぜひとも見たいと思います。

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最後に、NHKスペシャル取材班『縮小ニッポンの衝撃』(講談社現代新書) です。昨年2016年9月25日に放送された同名のNHKスペシャルの取材結果です。タイトルからして、いかにも人口減少の問題点に着目しているように思ったんですが、どうも、原因が人口減少とは言い切れず、ハッキリしない現状の問題点もひっくるめて、地方の衰退全般を取り上げているように感じられ、やや焦点がボケているように受け止めました。日本創成会議が取りまとめて中公新書で出版された消滅可能性都市の中に東京23区で唯一登場した豊島区への取材から始まって、財政再生団体に指定された北海道の夕張市、夕張市がやや極端な例であるとして、一部の地方公共団体にて行政サービスの提供が放棄された例として、島根県雲南市、浜田市、京都府京丹後市などの取材の結果が明らかにされ、こういった行政サービスの提供停止は、決して一部の例外的な地方だけの問題ではなく、タイムスパンの長さは別にして、日本全体の問題に拡大しかねない、とのトーンで取りまとめています。注目の本であり、図書館の予約からかなり待たされましたが、どうも私には気になる点があります。繰り返しになりますが、人口減少だけでなく、あらゆる社会的な日本の問題点を、かなり恣意的な取材により極端な例を持ち出して誇張しているような気がしてなりません。京都出身で、長らく東京で公務員をしてきた私ですので、かなりバイアスのかかった見方しかできませんが、それでも、人口問題も含めて社会的に、あるいは、経済的には市場にて、政策の必要なく解決できる問題も少なくありません。おそらく、人口減少問題も政策の手当なしで反転する可能性が十分あると私は考えますが、問題は時間的な余裕です。人口減少が反転するにはとてつもなく長期を要し、その期間をもっと短縮するために有効な政策がある、という点については私も合意します。本書のタイトルの問題意識では人口を増加させれば解決できるような、誤った印象を持たされかねませんが、人口だけでなく、もっと根源的な問題があることを明らかにすべきではなかろうかという気がします。

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2017年9月 8日 (金)

下方修正された4-6月期2次QEをどう見るか?

本日、内閣府から4~6月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.6%、年率では+2.5%を記録しました。1次QEから設備投資を中心に下方修正されたものの、潜在成長率をかなり超えて、消費などの内需が牽引する高成長といえます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率2.5%増に下方修正 4~6月改定値、設備投資下振れ
内閣府が8日発表した2017年4~6月期の国内総生産(GDP)改定値の伸び率は物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.5%増と、速報値(前期比1.0%増、年率4.0%増)から下方修正した。設備投資が大幅に下振れた。内閣府の詳細な計算によると、年率でみると速報値から1.4ポイントの下方修正で、現行の統計算出方法になった2010年4~6月期以降では最大の下げ幅となった。QUICKが4日時点でまとめた民間予測の中央値(前期比0.7%増、年率2.9%増)を下回った。
設備投資が前期比0.5%増と、速報値の2.4%増から大幅に下方修正されたのが響いた。改定の参照統計となる1日発表の法人企業統計で、自動車を中心とする輸送機械や電機など製造業で投資が一巡していた影響が出た。内閣府は4~6月期の設備投資の下振れを「一時的」(経済社会総合研究所)とみている。企業の設備投資計画が高水準なためで「計画通り進めば7~9月期以降は堅調な投資が続く」と説明している。
民間在庫の寄与度はマイナス0.0%と、速報値のプラス0.0から下方修正した。設備投資と民間在庫の低下で、実質成長率への内需寄与度はプラス0.9ポイントと、速報値の1.3ポイントから鈍化した。
このほかの内需項目では個人消費が前期比0.8%増(速報値は0.9%増)、住宅投資は1.3%増(同1.5%増)などが下方修正された。一方で公共投資が6.0%増(同5.1%増)となるなど、公的需要は速報値を上回った。
輸出は前期比0.5%減と速報値と同じで、輸出から輸入を差し引いた外需の実質GDP改定値への寄与度はマイナス0.3ポイントと速報値と同じだった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.7%増(速報値は1.1%増)、年率で3.0%増(4.6%増)だった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期比マイナス0.4%だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/4-62016/7-92016/10-122017/1-32017/4-6
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.5+0.2+0.4+0.3+1.0+0.6
民間消費+0.1+0.4+0.1+0.4+0.9+0.8
民間住宅+3.2+2.8+0.2+1.0+1.5+1.3
民間設備+1.4▲0.3+2.0+0.5+2.4+0.5
民間在庫 *(+0.4)(▲0.5)(▲0.2)(▲0.1)(+0.0)(▲0.0)
公的需要▲1.2▲0.0▲0.4+0.0+1.3+1.5
内需寄与度 *(+0.4)(▲0.2)(+0.1)(+0.2)(+1.3)(+0.9)
外需寄与度 *(+0.1)(+0.4)(+0.3)(+0.1)(▲0.3)(▲0.3)
輸出▲0.9+2.1+3.1+1.9▲0.5▲0.5
輸入▲1.2▲0.2+1.4+1.3+1.4+1.4
国内総所得 (GDI)+0.5+0.0+0.2▲0.1+1.1+0.7
国民総所得 (GNI)+0.2▲0.1+0.1+0.1+1.1+0.8
名目GDP+0.2▲0.0+0.5▲0.1+1.1+0.7
雇用者報酬▲0.1+0.8▲0.3+0.4+0.7+0.8
GDPデフレータ+0.4▲0.1▲0.1▲0.8▲0.4▲0.4
内需デフレータ▲0.7▲0.8▲0.3+0.0+0.4+0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された4~6月期の最新データでは、前期比成長率が6四半期連続でプラスを示し、黒い外需(純輸出)がマイナスであるものの、黄色い公的需要と主要な内需項目である赤い消費がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

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まず、報道のトーンは1次QEから2次QEにかけて下方修正された点を強調しているように見受けられますが、ホントは潜在成長率を超えてかなりの高成長であり、しかも、消費を中心とする内需が牽引する景気回復である上に、6四半期連続と安定したプラス成長を続け、先行きも世界経済の回復・拡大の順風を受けて、我が国経済を取り巻く環境はかなり明るい、と考えるべきです。ほとんど、以上で論評は終わりなんですが、先行きについて少し考えると、まず、消費については4~6月期ほどのプラスは望めないかもしれませんが、耐久消費財の買い替えサイクルがエコカー減税や家電エコポイント、さらに、消費増税前の駆込み需要などの攪乱から正常化して来ており、先行きも伸び率が鈍化するものの、着実な回復が見込まれます。設備投資は1次QEから大幅に下方修正されましたが、それでも前期比でプラスを記録しており、現在の人手不足や企業収益を考え合わせると、今後とも、緩やかながら増加を期待できると私は考えています。そして、在庫は1次QEの+0.0%の寄与度から、2次QEでは▲0.0%の寄与度に下方修正されて成長率の足を引っ張りましたが、逆に、在庫調整が進展して先行きの息の長い成長をもたらす可能性が高まったと見られます。外需についても、世界敬愛が回復・拡大を示す中で、4~6月期には前期比でマイナスとなった輸出も7~9月期には増加に転じると予想しています。3日前の9月5日に2次QE予想として示したテーブル第一生命経済研の見方にかなり近いと考えています。
ただし、私が考える先行きのリスクは2点あり、ひとつは賃金動向です。耐久消費財の買い替えサイクルが到来しても、基礎となる所得が伸びなければ消費の増加は実現しません。現状では、人手不足といわれつつも、賃金が上昇するに至っていません。雇用者数が増加して、しかも、正規職員へのシフトも見られますので、1人当たり賃金に雇用者数を乗じたマクロの所得は増加しつつありますが、この先、家計ベースのマイクロな賃金上昇が伴わなければ、消費は一層の拡大につながらないおそれもなしとはしません。もうひとつの先行きリスクは海外政策動向です。フランス大統領選挙の結果やドイツ総選挙の予想などから、クローズな政策を志向するポピュリスト政党のさらなる進出は後景に退いた気がしますが、米国のトランプ大統領は健在であり、特に通商政策動向は不透明です。加えて、米国では金融政策で金利引上げが志向されており、先行き、新興国や途上国を含めて金融上の何らかの問題を生ずる国が出る可能性もあります。そのあたりは、現時点では何ともいえません。

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4~6月期GDP統計2次QEから目を別の指標に転じると、本日、内閣府から8月の景気ウォッチャーが、また、財務省から7月の経常収支が、それぞれ公表されています。いつものグラフは上の通りです。グラフだけで簡単に済ませておきます。悪しからず。

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2017年9月 7日 (木)

すべてのコンポーネントがマイナスとなった景気動向指数の先行きをどう見るか?

本日、内閣府から7月の景気動向指数が公表されています。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比▲0.7ポイント下降して105.0を、CI一致指数も▲1.2ポイント下降して115.6を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の景気一致指数、1.2ポイント低下 半導体関連など反動減
内閣府が7日発表した7月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.2ポイント低い115.6と2カ月ぶりに低下した。半導体製造装置や自動車の出荷が鈍化したのが響いた。ただ指数を押し下げた要因のうち自動車は8月に販売が持ち直しており、指数が一方的に弱含む可能性は「それほど高くない」(内閣府の経済社会総合研究所)という。一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断は最も強気の「改善を示している」に10カ月連続で据え置いた。
7月は投資財出荷指数(輸送機械を除く)が0.49ポイント、耐久消費財出荷指数が0.32ポイント、それぞれ低下した。鉱工業用生産財出荷指数や生産指数(鉱工業)、商業販売額(卸売業)など、速報段階で算出できる7指標すべてが押し下げ要因となった。全ての指標がマイナスとなるのは、現行の算出基準で遡ると2011年3月以来、6年4カ月ぶり。内閣府は「生産や出荷の指数が近年でみて高くとどまっており、半導体製造装置などで反動減が出た」と説明している。
数カ月先の景気を示す先行指数は0.7ポイント低下の105.0と、3カ月ぶりに低下した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、CI一致指数を構成するコンポーネントのうち、トレンド成分ではない7指標がすべてマイナスを示しています。マイナス寄与の大きい順に、投資財出荷指数(除輸送機械)、耐久消費財出荷指数、鉱工業用生産財出荷指数、生産指数(鉱工業)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、有効求人倍率(除学卒)となっています。特に、投資財出荷のマイナスが大きくなっています。ただ、これも引用した記事にもあるように、8月には我が国のリーディング・インダストリーである自動車販売がすでに持ち直していますので、CI先行指数が下降しているとはいえ、このまま景気動向指数が下降を続けるとは私も想定していません。従って、基調判断は「改善」で据え置かれており、判断根拠としては、3か月後方移動平均は▲0.36ポイント下降しているものの、振幅の目安となる標準偏差の1.04には遠く及びませんし、7か月後方移動平均はむしろ+0.16ポイントの上昇を示しており、12か月連続の上昇となっています。
なお、CI先行指数のマイナス寄与は、鉱工業用生産財在庫率指数、新設住宅着工床面積、新規求人数(除学卒)などで大きくなっています。いずれにせよ、CI一致指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が高く、7月減産の後、過大推計のバイアスがあるとはいえ、製造工業生産予測調査で8月は前月比+6.0%の上昇を示していますので、来月の景気指数ではCI一致指数はプラスを記録するんではないかと私は楽観しています。

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2017年9月 6日 (水)

広島に連敗して今シーズンは完全に終戦!

 十一 RHE
阪  神01000011000 382
広  島00000003001x 4100
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新戦力の広島に連敗して今シーズンは終戦でした。ここに来て、阪神恒例の9月の大失速が出てはひとたまりもありません。残された目標は、クライマックス・シリーズに勝ち残れるように、ムリなく勝ちを拾いに行くことと、鳥谷選手の2000本安打だけのような気もします。

消化試合はムリすることなく、
がんばれタイガース!

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毎月勤労統計に見る賃金の減少は何を意味するのか?

本日、厚生労働省から7月の毎月勤労統計が公表されています。景気動向に敏感な製造業の所定外労働時間指数は季節調整済みの系列で前月から▲1.0%減を示し、また、現金給与指数のうちのきまって支給する給与は季節調整していない原系列の前年同月比で+0.5%増となった一方で、ボーナスなどの特別に支払われた給与が大きく減少したため、現金給与総額のは▲0.3%減を記録しています。さらに、消費者物価が上昇を示していますので、現金給与総額を消費者物価でデフレートした実質賃金は前年同月比で▲0.8%の大きなマイナスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

名目賃金、7月0.3%減 1年2カ月ぶりマイナス
ボーナス減響く

厚生労働省が6日発表した7月の毎月勤労統計調査(速報値、従業員5人以上)によると、労働者1人あたりの名目賃金にあたる現金給与総額は37万1808円と前年同月比0.3%減少した。前年同月を下回るのは1年2カ月ぶり。夏のボーナスが減ったことが要因だ。物価上昇分を差し引いた実質賃金は0.8%減少した。
名目の給与総額のうち、基本給にあたる所定内給与は前年同月比0.5%増の24万2487円と4カ月連続で増加。一方、ボーナスなどにあたる「特別に支払われた給与」は2.2%減の11万156円だった。夏のボーナスが飲食サービス業で前年同月比23.0%減と大幅に減少し、賃金全体を押し下げた。
実質賃金の減少は2カ月連続。減少幅は15年6月以来2年1カ月ぶりの大きさだ。消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が0.6%上昇したことで、実質賃金を名目賃金よりさらに押し下げた。
厚労省は「基本給は上昇傾向が続いており、給与総額の減少は一時的ではないか」との見方を示した。また速報段階ではボーナス分を集計できていない事業所もあり、確報値で変動する可能性がある。

やや賃金に関して集中的に報じている印象がありますが、まずまずよく取りまとめられている気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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上のグラフに沿って見ていくと、まず、景気と連動性の高い製造業の残業時間については、鉱工業生産指数(IIP)とほぼ連動して7月は減少に転じています。次に、報道でも注目を集めた賃金ですが、前年同月比で見て、現金給与総額で▲0.3%減、内訳をもう少し詳しく見ると、所定内給与は+0.5%増、所定外給与は+0.1%増、所定内給与と所定外給与を合わせたきまって支給する給与は+0.5%増ながら、ボーナスなどの特別に支払われた給与が▲2.2%減となっていて、全体をマイナスにしています。消費への影響が大きく、経済学的にいわゆる恒常所得と呼ばれる部分の賃金は名目で増加しているんですが、ボーナスなどの臨時的な賃金部分が減少しているわけです。ですから、各家計にとって名目値では賃金や所得は増加の印象があると考えられますが、デフレ脱却に向けて消費者物価が上昇を始めていますので、物価上昇でデフレートした賃金はマイナスを示したままであることも確かです。ただ、上のグラフのうちの最後のパネルに見られる通り、パートタイム労働者の伸び率がかなり鈍化して、各企業はフルタイム雇用者の増加を目指し始めているように見えます。ですから、労働者がパートタイムからフルタイムにシフトすることにより、マイクロな賃金を集計したマクロの所得については、決してマイクロな労働者ごとに観察されるほどは悪化していない、と私は受け止めています。もちろん、9月1日に公表された法人企業統計に見る通り、企業が収益力を高める一方で労働分配率は低下を続けていますから、上のグラフの3番目のパネルに見られる通り、季節調整済みの系列で賃金を見ても、なかなかリーマン・ショック前の水準に戻りそうにありません。ただ、先行きに関しては、人手不足の進行とともにサービス業などで賃金上昇につながる可能性も大きくなっており、消費を牽引する所得の増加に期待が持てると私は考えています。

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2017年9月 5日 (火)

今週金曜日9月8日公表予定の2次QE予想やいかに?

先週金曜日の9月1日に公表された法人企業統計まで、ほぼ必要な統計が出そろい、今週金曜日の9月8日に4~6月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定ですが、すでに、シンクタンクや金融機関などから2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期以降の景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクは、みずほ総研と第一生命経済研だけでしたし、かすったのも伊藤忠経済研だけでしたので、最初の2機関についてはやや長めにヘッドラインを引用しています。何分、2次QEですので法人企業統計のついでの扱いだったり、そうでなくてもアッサリしたリポートも少なくありません。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+1.0%
(+4.0%)
n.a.
日本総研+0.8%
(+3.3%)
4~6月期の実質GDP(2次QE)は、公共投資が小幅上方修正される一方、設備投資、在庫変動が下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+3.3%(前期比+0.8%)と1次QE(前期比年率+4.0%、前期比+1.0%)から下方修正される見込み。
大和総研+0.7%
(+2.7%)
基礎統計の直近値の反映により公共投資が下方修正となるほか、需要側統計の法人企業統計の結果を受けて設備投資が下方修正される見込みだ。
みずほ総研+0.6%
(+2.6%)
7~9月期以降の日本経済について展望すると、海外経済の回復が、引き続き内外需の押し上げにつながるだろう。4~6月期の輸出はITセクターの減速などから減少したものの、7~9月期になると輸出は再び回復軌道に復するとみている。データセンターや車載向けの需要の堅調さに加えて、年後半に控えるiPhone8の発売がIT関連輸出の下支えとなるだろう。設備投資については、五輪関係や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることも、押し上げ要因になるとみられる。個人消費については、耐久消費財が持ち直していること、雇用情勢の改善や株価の堅調な推移などを背景に消費者マインドが回復していることがプラスに働くだろう。
ニッセイ基礎研+0.6%
(+2.4%)
実質GDPが前期比0.6%(前期比年率2.4%)となり、1次速報の前期比1.0%(前期比年率4.0%)から大幅に下方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.7%
(+2.9%)
GDP成長率は明確な下方修正が見込まれるとはいえ、それでも年率+3%近い伸びであり、かなりの高成長であることは変わらない。また、設備投資も大幅下方修正ではあるものの、前期比でプラスは確保できそうだ。景気は好調に推移しているという評価を変える必要はないだろう。内容をみても、これまで景気を主導してきた外需がマイナス寄与になる一方で、個人消費を中心にした内需が牽引する形での高成長が実現しているという構図に変化はないものとみられる。
先行きについても、世界経済の回復を背景に輸出の増加傾向が続くことに加え、企業収益の増加を受けて設備投資も増加が期待できる。個人消費も基調としては緩やかな持ち直しが見込めるだろう。景気を取り巻く環境は良好であり、先行きも景気は着実な改善を続ける可能性が高い。
伊藤忠経済研+0.7%
(+2.7%)
2017年4~6月期の実質GDP成長率は前期比+0.7%(年率+2.7%)へ大きく下方修正されると予想。設備投資が大幅に、個人消費も若干下方修正される見込み。それでも国内民間需要主導の景気拡大という姿は変わらないが、持続性を確保するためには人件費の上昇加速が必要。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所+0.8%
(+3.1%)
実質GDP成長率が1次速報の前期比年率4.0%から同3.1%に下方修正されると予想する。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.8%
(+3.2%)
2017年4~6月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.8%(年率換算+3.2%)と1次速報値の同+1.0%(同+4.0%)から下方修正される見込みである。
三菱総研+0.5%
(+2.0%)
2017年4-6月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.5%(年率+2.0%)と、1次速報値(同+1.0%(年率+4.0%))から下方修正を予測する。

ということで、取り上げたすべての機関が1次QEでは1次QEから下方修正されると予想しています。大雑把に+3%前後の成長率であり、前期比年率で見て、取り上げた機関のレンジでは最低でも三菱総研の+2.0%であり、+3%を超える予想を示す機関も少なくありません。ですから、少なくとも、我が国の潜在成長率は十分に超えた高成長といえます。しかも、上のテーブルにはサマリーしか示していませんが、輸出主導ではなく、消費を中心とする内需が牽引する成長といえます。設備投資も1次QEから大きく伸び率が下方修正されそうですが、前期比でプラスが予想されています。ですから、典型的には、第一生命経済研の評価が私はもっとも当たっていると思います。先行きについても、消費が4-6月期ほどの伸びを続けるとは思えませんが、世界経済の回復・拡大とともに輸出が増加を続けるでしょうし、さすがにそろそろ人手不足や企業収益を背景に設備投資も増加の勢いを増すんではないかと期待していますから、我が国の景気を取り巻く環境は改善を示していると考えるべきです。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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2017年9月 4日 (月)

インテージによる「全国ふるさと名物5000産品 1万人の知名度調査」の結果やいかに?

8月も終わって夏休みの季節も過ぎ、我が家には大学受験生がいるので、特に夏休みで出かけることもありませんでしたが、オフィスではいくつか郷土土産が楽しめたりしました。ということで、やや旧聞に属する話題ながら、インテージから8月9日付けで「全国ふるさと名物5000産品 1万人の知名度調査」の結果が明らかにされています。下のテーブルの通りです。

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テーブルを見れば明らかなんですが、全国知名度ランキングは、1位が「白い恋人」、2位「生八ツ橋」、3位「ちんすこう」となっており、4位「八ツ橋」を含めて3年連続で同じ順位であり、圧倒的に認知されているようです。私が大学に出向した長崎のカステラなんぞも全国的に知名度が高そうな気がするんですが、トップテンには入っていません。なお、やや変わったことろで、地元の県内における知名度と全国知名度のギャップに関しても調査が実施されており、秋田県「金萬」が2年連続でもっともギャップが大きいという結果になっています。県内知名度91.0%に対して、全国8.1%ですから、知名度ギャップが82.9%ポイントに達しています。それから、2位は福井県「越のルビー」でギャップは81.9%ポイント、3位の徳島県「金長まんじゅう」も81.3%ポイントのギャップがあり、80%ポイントのギャップがあるのはこの3産品だけだったりします。京都出身の私もこの3つは知りませんでした。そのほか、男性の間ではお酒の知名度が高く、女性ではスイーツの知名度が高い、との、いかにもありそうな結果なども示されています。

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2017年9月 3日 (日)

新加入のメンドーサ投手の続投が裏目で中日に負け!

  RHE
中  日000200200 491
阪  神000011000 271

新戦力のメンドーサ投手を続投させ中日打線につかまり敗戦でした。これだけリリーフ陣が豊富なんですから、ちょっと、引っ張り過ぎという気もしました。広島がヤクルトに負けるとは思えませんし、横浜は巨人を下していましたし、何としても勝っておかねばならない試合だったんですが、継投ミス、というか、継投をしないミスで死に体の中日に負けてしまいました。打線も新4番の大山選手がノーヒットに終わっての2得点は大いに物足りませんでした。

広島戦は3連勝目指して、
がんばれタイガース!

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先週の読書はかなりオーバーペースで経済書など計8冊!

先週の読書は、米国雇用統計が土曜日に割って入って、読書日で1日多かった一方で、ケインズものが冒頭に2冊並んでいますが、やっぱりマクロ経済学や開発経済学などの専門かつ好きな分野の読書が多かったものですから、かなりオーバーペースで8冊に達しました。以下の通りです。今週はもう少しペースダウンしたいと思っています。でも、直木賞の佐藤正午『月の満ち欠け』とか、昨日付けの日経新聞の書評欄で取り上げられていた東大社研の大湾教授の『日本の人事を科学する』なんぞが借りられたりしたもんですから、やっぱり、かなりのボリュームを読んでしまうかもしれません。

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次に、大瀧雅之・加藤晋[編]『ケインズとその時代を読む』(東京学出版会) です。著者はチャプターごとに大量にいたりするんですが、大雑把に、東大社研と日本政策投資銀行設備投資研究所とのコラボとなっているように受け止めています。例えば、政策投資銀行のサイトでは本書が研究成果として取り上げられていたりします。4部構成を取っており、第Ⅰ部 第一次世界大戦の帰結と全体主義勃興の危機 では、J.M.ケインズ『平和の経済的帰結』、J.M.ケインズ『条約の改正』とケインズ自身の2冊の後、E.H.カー『危機の二十年』とF.A.ハイエク『隷従への道』が取り上げられています。ハイエクの著作については、ケインズと比較対照される形で注目される場合もあるんですが、本書では西欧リベラルの同じグループの中に属し、やや左派と右派の違いだけ、といったトーンで並べられています。ただ、ケインズに着目した本ですので、ハイエクが後景に退いている印象はあります。当然です。第Ⅱ部 理論の展開 では、T.B.ヴェブレン『企業の理論』、A.C.ピグー『厚生経済学』、L.ロビンズ『経済学の本質と意義』がケインズ『一般理論』前史として、そして、J.M.ケインズ『雇用・利子および貨幣の一般理論』から始まって、R.F.カーン『ケインズ「一般理論」の形成過程』、A.P.ラーナー『調整の経済学』、J.E.ミード『理性的急進主義者の経済政策』が『一般理論』と並んで紹介されています。『一般理論』前史のピグーについては、古典派経済学から脱して、何らかの経済的厚生を高めるための政府の介入に道を開いた、と評価されています。続く第Ⅲ部 1930年代の世界と日本 では世界的なファシズムの台頭と日本に着目し、J.M.ケインズ『世界恐慌と英米における諸政策1931~39年の諸活動』、高橋亀吉・森垣淑『昭和金融恐慌史』、石橋湛山『石橋湛山評論集』が取り上げられており、どうでもいいことながら、現在のリフレ派エコノミストの先達となった昭和初期の我が国エコノミストを取り上げながら、現在のリフレ派経済学を否定して、財政赤字削減をサラッと主張しているチャプターの著者もいて、少し笑ってしまいました。最後の第Ⅳ部 ケインズの同時代人 では、J.M.ケインズ『人物評伝』、フランク・ラムジーのいくつかの論文と著書、E.H.カーのソ連史研究が取り上げられています。ご本人のケインズを別にすれば、複数のチャプターで取り上げられているのはカーだけなんですが、リアリストの立場から国際政治における権力=パワーを軍事力、経済力、合意形成力の3要素から論じており、私のようなシロートにもなかなか参考になります。また、ソ連型の経済が崩壊した現時点からでは理解が進まないものの、中央集権的な指令型の計画経済という面ではなく、男女間を含めて平等の実現、自由と民主主義の新しい形、などなど、本来のマルクス主義的な社会主義の明るい未来に憧れていた20世紀前半期の西欧の雰囲気がよく伝わります。各チャプターの最後に参考文献が数冊明示されています。唯一疑問なのは、シュンペーターがまったく取り上げられていない点です。ハイエクも含めて、いわゆるブルームズベリー・グループやケンブリッジ・サーカス以外のエコノミスト・文化人も取り上げているんですが、なぜか、シュンペーターだけは無視されている印象です。ケインズと立派な同時代人だと思うんですが、理由はよく判りません。

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次に、根井雅弘『ケインズを読み直す』(白水社) です。著者は私の母校である京都大学経済学部の研究者であり、入門書をはじめとして何冊かの著作があると記憶しています。私の在学中は木崎先生が教えていた経済学史の担当ではないかと思います。ご出身大学が早大ですので、若田部先生と同じコースかもしれません。ということで、タイトル通りに、ケインズの足跡をたどったケインズ経済学の入門書です。通常の理解の通りに、ケインズ卿については卓越した経済理論家であるとともに、同時に政治的なアジテータでもあり、また、国内外を問わずに国際金融などの制度論に立脚した実務にも精通していた、ということになります。ケインズ卿については最初に取り上げられるべき『平和の経済的帰結』が第1次世界大戦後のドイツ賠償問題ですから、ケンブリッジ大学卒業後のキャリアはインド省で始めたとしても、エコノミストとしての活動は割合と地味なドイツ経済の分析から賠償能力を積み上げ、それを英国内外にパンフレットとして明らかにする、という活動でした。同時に、金本位制への復帰に際しての平価の設定、さらに、その後、第2次世界大戦では英国の戦費調達のために米国を説き伏せたり、戦後は現在IMFと世銀で結実した国際金融体制の整備に努力しましたが、実際には英国のケインズ案は、ことごとく米国のホワイト案に凌駕されつつも、重要な骨格はいくつか残した、という結論ではないでしょうか。その後、実際にケインズ経済学が実践され花開いたのはケインズの死後であり、国としても1960年代のケネディ政権以降の米国なんですが、この実務的なケインズ革命について本書では終章で「『未完』に終わった」と結論しています。すなわち、1970年代に入ってのインフレ高進からケインズ経済学への不審が高まり、特に、決定的だったのは、ノーベル経済学賞も受賞したシカゴ大学のルーカス教授によるケインズ反革命であり、貨幣数量説の装いを新たにしたマネタリズムなどとともに、先進国の経済政策のシーンからケインズ経済学をかなりの程度に駆逐した、との印象かもしれません。しかし、私の印象ながら、今はもう死語となった「混合経済」、すなわち、古典派的な自由放任経済を終えて、経済政策が積極的に雇用の拡大、完全雇用を目指す体制を整え、戦後の社会福祉を重視して国民の経済厚生を政府が積極的に支援するような経済政策運営に舵を切ったのは、何といってもケインズ経済学の功績です。ケインズ卿の意図したような政策運営にはならず、右派的・古典派的な経済学の巻き返しに何度も遭遇したという意味では、確かに、ケインズ革命は未完かもしれませんが、私のような官庁エコノミストの目から見て、政府が何とか経済成長を加速し雇用を増大させるという方向で国民の経済的厚生の向上に努めるようになったのはケインズ経済学を基礎とする政策論の功績であると考えます。

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次に、森田朗[監修]/国立社会保障・人口問題研究所[編]『日本の人口動向とこれからの社会』(東京大学出版会) です。著者人はまさに国立社会保障・人口問題研究所の研究者で固めていて、専門家がズラリと並んでいます。出版社から判断しても、学術書と考えるべきですが、最後の方の第12章のシミュレーションなどの方法論のごく一部を除いて、人口問題ですから少子高齢化以外の何物でもなく、それなりに理解ははかどりやすいんではないかと思います。ただし、研究所の攻勢からして、社会保障や財政との関係をホンの少しだけチラリと論じているほかは、ほぼほぼ人口問題をそれ単独でユニラテラルに論じていますので、逆に判りにくい気もします。フランスのアナール派やジャレド・ダイアモンド教授のように病原菌と論じてみたり、あるいは、地理学と関連付けたりといった工夫は見られません。ひたすら過去のトレンドから投影された未来を垣間見ようと努力している様子がうかがえます。経済はかなりの程度に循環するんですが、人口動態はかなりの程度にトレンドに沿って動きます。もっとも、第Ⅱ部のライフコースの議論では、ヒトの個体たる人口だけでなく、社会的な構成要素のもっとも小さい単位である家族のあり方、さらに、人口高齢化に従って高齢者に有利な政策選択が行われがちなバイアス、などなどについても取り上げていますし、第Ⅲ部では日本に限らずシンガポールや韓国、台湾などのアジア諸国における猛烈な高齢化の進展についても解き明かそうと試みています。まあ、私の個人的な感想では、マルサス的な人口問題は人口と農地や耕地の比率が人口を養う上でやや厳しいアジアにこそ当てはまる可能性が高いんではないか、という気がしますし、従って、中国の一人っ子政策をはじめとして、シンガポールなどでも厳しい人口抑制作を採用していた歴史があるのも理解できるところです。日本もそうかもしれません。そういったアジアからの移民が欧米で黄禍論を引き起こしたりしたわけなのかもしれません。ただ、日本の場合はマクロとしての人口の総数ではなく、子供や若年者に厳しく、高齢者に甘い政策を意図的に取り続けてきましたので、中国やシンガポールなどとともに、明らかに政策的に人口の高齢化、さらに、人口減少がもたらされている点は見逃すべきではありません。せも、そういった議論を国立の研究所が展開するのも難しい、という点についても、公務員として理解していたりします。最後に、私も大学教員として出向中に書いた紀要論文「子ども手当に関するノート: 世代間格差是正の視点から」でも引用した Lutz et. al. (2006) による Low-Fertility Trap Hypothesis に関する論文が複数のチャプターで引用されていました。私は紀要論文で p.175 の Chart 1 を引用した記憶があります。

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次に、マイケル・ルイス『かくて行動経済学は生まれり』(文藝春秋) です。昨日付けの日経新聞の書評欄で取り上げられていました。著者はノンフィクション・ライターであり、特に売れたのは『マネー・ボール』ではないでしょうか。映画化もされましたし、私も読んでいたりします。本書の英語の原題は The Undoing Project であり、邦訳書の p.348 で「事実取り消しプロジェクト」と訳されています。2017年の出版です。ということで、その『マネー・ボール』に関する書評から行動経済学に関する関心が芽生えたようで、本書では主としてトヴェルスキー&カーネマンを中心に据えて行動経済学の歴史を、特に黎明期の歴史をひも解いています。記憶の不確かさ、あるいは、記憶の操作可能性から始まって、判断や意思決定の際の心理的アルゴリズムの解明、そして最後は有名なプロスペクト理論の発見のきっかけや平易な解説を展開しています。その前段として、トヴェルスキー教授も、カーネマン教授も、どちらもユダヤ人ですから、ナチスによるホロコーストにも触れていますし、中東戦争の記述もかなり生々しく感じられます。また、特にセンセーショナルな書き方ではなく、エコノミストであれば誰もが知っている一般的な事実ではありますが、トヴェルスキー教授の攻撃的だが水際立った知性とカーネマン教授の重厚だが慎重かつ少し進みの遅い知性を比較していて、さらに、愛煙家であり1日2箱の煙草を灰にしたカーネマン教授が生き残ってノーベル賞を授賞された一方で、嫌煙家であったトヴェルスキー教授が悪性腫瘍で早くに亡くなった事実も、それほど対比を鮮明にさせることなく淡々と跡付けています。そして、2人の心理学的な発見が、まず、医学に応用され、その次に経済学で注目され、結果的に、カーネマン教授がノーベル経済学賞を受賞したわけです。終章のタイトルが「そして行動経済学は生まれた」とされていて、ある米国ハーバード大学教授の言葉として、「心理学者は経済学者のことを不道徳だと思い、経済学者は心理学者のことをばかだと思っている」というフレーズを引用しています。最後は、カーネマン教授にノーベル委員会からと思しき電話がかかる場面で終っていますので、セイラー教授らによるその後の行動経済学の発展は、それほど重視されていません。まあ、経済学史の本ではないんですから、そうなのかもしれません。私自身は何らかの理論や実証で功績あった経済学者の生まれや育ちや性格などについては、それほど大きな興味あるわけではありませんが、映画にもなった『ビューティフル・マインド』のナッシュ教授の生涯などとともに、経済学に多くの人々の関心を引きつける効果がある、という意味で、こういった本の効用も十分評価しているつもりです。

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次に、ショーン B. キャロル『セレンゲティ・ルール』(紀伊國屋書店) です。著者はウィスコンシン大学マディソン校の進化生物学の研究者ですが、本書は進化生物学の本ではなく、むしろ、生物多様性に関する食物連鎖・栄養カスケードに関する理論と実践に関して、ポピュラー・サイエンスとして取りまとめられています。舞台はアフリカはタンザニアにあるセレンゲティ国立公園です。タンザニアの北部、ケニアとの国境に近い地域で、従って、ビクトリア湖のすぐそばに位置する哺乳類の多様性に富む地域です。世界遺産に指定されています。そして、本書の第Ⅲ部第6-7章において、本書のタイトルであるセレンゲティ・ルールを6点に渡って取りまとめて提示しています。専門外のシロートである私なりの解釈なんですが、一般的に食物連鎖と呼ばれている流れを本書では栄養カスケードと称していて、要するに、ネコ科の肉食獣がシカなどの草食獣を捕食し、そして、草食獣は草木を食べる、という構造です。そして、本書では二重否定の構造を持ち込みます。すなわち、イエローストーンでヘラジカが増えすぎた場合、日本でもよくありますが、シカやイノシシが増えて農作物が被害にあうケースでは、日本ではヒトが猟銃をもってイノシシなどを直接に駆除する一方で、イエローストーンではシカを捕食するオオカミを放った、という例が紹介されていて、そうすると、当然に、オオカミはヘラジカの一種であるエルクを捕食しますから、エルクそのものが個体数を減少させる一方で、エルクが食べつくしていたポプラの成長が促進される、という2段階目の効果が発現します。これを本書では二重否定と呼んでいます。そして、本書のもうひとつの特徴は、こういったオオカミエルクとポプラといったマクロの連鎖、もちろん、地球規模のマクロではないにしても、日本でいえば都道府県くらいの大きさの地域のマクロの栄養カスケードや生態系に見られる現象を、何と、マイクロのレベルのガンになぞらえている点です。物理学などでマクロの宇宙論とマイクロの原子や分子に関する理論に類似点を見出す方法論も見かけたりしますし、生物学でも生物の集団であるマクロとマイクロな個体にそういった類似点を例示しることもあり得るんでしょうし、何よりも、それなりにポピュラー・サイエンスとして私のようなシロートの一般大衆の理解を促進もするんでしょうが、私の目から見て、少なくともマクロの生態系の攪乱をマイクロな生物個体や遺伝子レベルのガンに例えるのは、ややムリがあるような気もします。少なくとも、エコノミストの世界では合成の誤謬があり、マイクロな世界を足し上げて行ってもマクロな世界にはなりません、というか、ならない場合があります。たっだ、エコノミストの目から見て興味深かったのは、マルサス的な『人口論』の世界が密度依存調整により否定されていることです。p.204 あたりです。マルサス的なくらい将来像は技術革新により克服される、というのが私のような平凡なエコノミストの一般的理解ですが、そもそも、個体密度が増加すれば個体数の増加率はマイナスに転化する、というのは、それはそれとしてあり得ることですし、生物学的に明らかにされていることは、とても参考になりました。

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次に、又吉直樹『劇場』(新潮社) です。話題の作者の芥川賞受賞後第2作目の小説です。東京を舞台に演劇人である主人公の永田と、永田の恋人の沙希、さらに、中学のころから永田とともに演劇を続けてきた野原、さらに、永田・野原の劇団からスピンアウトしてライターとしても一定の成功を収めた青山という女性、さらにさらにで、別の注目劇団を主宰する小峰などなど、かなり限られた登場人物なんですが、永田と沙希の愛の行方がストーリーの中心となります。なお、永田・野原のコンビは関西人で、この作者の前作「火花」と同じで関西弁でしゃべります。そして、主人公である永田の行動のターニング・ポイントとなる感情は嫉妬です。嫉妬が怒りに転じて、そして人間関係が壊れて行くような気がします。「本音と建前」という言葉がありますが、決して本音を隠してうわべだけの建前で人間関係を築いて、大人の付き合いを進めるのが上品だとは決して思いませんが、本音をさらけ出して人間性の底の底まで理解し合えないというのも、少し問題ではなかろうかという気もします。その意味で、本書の主人公の男女関係、劇団や演劇関係者との人間関係については、私も理解できる部分と理解を超えている部分があります。ただ、前作と違って嫉妬というテーマがかなり露骨に現れていて、その分、決して上品ではない可能性もあるものの、作者の魂の叫び、とまではいわないまでも、誠に正直に書き綴っている気もします。何かのメディアで報じられていましたが、「火花」よりもこの作品の方を先に書き始めていた、という情報もあり、ある意味で、作者の第1作のようでもあり、言葉は悪いかもしれませんが、第1作目のつたなさのようなものが感じられるかもしれません。また、純文学ですから、文体や表現力はかなり上質といえますが、ストーリーを追うものではありません。主人公である20代の男女間の恋愛の進行はかなりつまらない、と感じる読者も多そうな気がします。

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次に、タンクレード・ヴォワチュリエ『貧困の発明』(早川書房) です。私はよく知らないんですが、作者はフランスのエコノミストであり、小説家だそうです。私はフランス語には決して詳しくないんですが、スペルは Voituriez であり、もしも、最後が z で Voiturier であれば、英語でいえば Valet Parking の意味であり、私はフランスはパリしか知りませんが、パリ市内でも何度か見たことがあります。ということは別にして、本書はあくまでフィクションの長編小説であり、ピケティ教授が「今までに読んだいちばん可笑しな小説」と評価したと出版社のサイトでは紹介されています。フランス語の原題は L'Invention de la Pauvreté であり、邦訳タイトルはそのまま直訳されています。タイトル通りに貧困をテーマにしていますが、先進国内の貧困ではなく、途上国の貧困、あるいは、経済開発を主題にしています。主人公は世銀チーフエコノミストにして、国連事務総長の特別顧問でもあるプリンストン大学教授のロドニーです。誠に僭越ながら、私と専門を同じくする開発経済学者です。ここまでの肩書からは、ノーベル経済学賞も受賞したスティグリッツ教授が強く連想されるんですが、そうでもないようです。フィクションのフィクションたるところです。でも、国連事務総長ドン・リーは韓国人の設定で、そのモデルは、明らかに、前国連事務総長の潘基文ではないでしょうか。そのほか、国連、世銀、国際通貨基金(IMF)、また、組織ではなく会議名ですが、ABCDE会議など、ほぼほぼ実在の名称をそのまま流用している印象です。エロ・グロ・ナンセンスの部分は別にして、開発経済学を専門分野のひとつとする私から見ても、確かに開発経済学にはいくつかの考え方があり、『エコノミスト 南の貧困と闘う』の著者であるイースタリー教授のように市場メカニズムを活用して、途上国の国民のインセンティブに基づく行動に期待するエコノミストもいれば、サックス教授に代表されるように、先進国からの開発援助などを活用しつつ、公的部門も関与した形でのビッグ・プッシュを重視する開発経済学者もいっぱいいます。実は、私は後者の考え方に近かったりします。冒頭のバレー・パーキングは別にしても、開発経済学のいくつかの考え方を背景知識として持って読めば、さらにこの小説が楽しめるかもしれません。あるいは、私のように、少しだけ不愉快さが増すかもしれません。

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最後に、水野和夫『閉じてゆく帝国と逆説の21世紀経済』(集英社新書) です。著者は証券会社のエコノミストから学会に入り、埼玉大学から法政大学教授に転じているようです。ということで、相変わらず、独特の長期的な歴史観を披露しているんですが、ヒストリアンとしてその歴史の底流に流れる法則性が感じられずに、私はいつも戸惑っています。従来と同じように、1970年代のルイス的な二重経済の消滅と石油ショックなどにより、我が国を含めて戦後先進諸国の高度成長が終了し、1970年代からゆっくりと時間をかけて低成長と低金利に象徴されるように資本主義が終焉する、そして、中世的な停滞の定常状態の時代が来る、というのが著者の見立てです。ただ、資本主義の勃興については大航海時代のイノベーションにより、世界が広がり英蘭が覇権を掌握した、ということに本書でもなっているんですが、それがなぜなのか、そして、成長率や金利が低下して資本主義が終焉するのはなぜなのか、加えて、産業革命の位置づけについてもほとんど無視されており、私には疑問だらけです。資本主義が終焉して中世的な定常状態に戻る、という史観ですから、基本的には循環史観だと思うんですが、おそらく、著者の歴史学に関する素養からして、そういった歴史観の確立があるのかどうか疑問であり、歴史的な事実を跡付けて、室町幕府の後は戦国時代になって、全国統一を果たした織豊政権から徳川が江戸幕府を確立する、それはなぜなのか、よく判らないながら、そうなのだ、といっているに等しい気もします。蒐集=コレクションについては、その基礎となっている生産活動について何も見識がないので、どこかで湧き出た蒐集対象品を持ち出す、という以外の感触はありません。基本的に私の歴史観はマルクス主義に近いんですが、ほぼほぼ一直線に生産力が増加するという単純な歴史観で、その生産力の桎梏となる生産システムが革新される、場合によっては土地や生産手段=資本の所有制度の変更も歴史を動かす原動力になる、という意味で、ノース教授らの制度学派にも近いかもしれない、受け止めていますが、この著者の歴史観はまったく理解できません。その上、閉じたvs開いた、資本主義、帝国などの用語がかなり感覚的に、そして、キチンと定義されずに並べられていて、もう少し読者の理解を助ける工夫も欲しい気がします。

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2017年9月 2日 (土)

ホームラン攻勢で中日を撃破し5連勝!

  RHE
中  日002000000 270
阪  神13110111x 9120

ホームラン攻勢で中日を撃破し5連勝でした。坂本捕手や大山選手をはじめ、4ホーマーの乱れ打ちでした。能見投手も6回2失点のQSでしたし、大差がついて接戦の勝ちパターンのリリーフ陣3投手を温存できました。1安打ながら着実にヒットを積み重ねる鳥谷選手も、2000本安打へのカウントダウンは止まりません。

明日は3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計はやや鈍化するも堅調な雇用の伸びを示し利上げをサポートするか?

日本時間の昨夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+156千人増となった一方で、失業率は前月から+0.1%ポイント上がって4.4%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の5パラだけ記事を引用すると以下の通りです。

U.S. employers add 156,000 jobs in August; unemployment rate edges up to 4.4%
August was a good month for blue-collar jobs, but hiring on the whole tailed off from earlier in the summer and there was no indication of an upturn in wage growth, which has been missing in the nation's long economic recovery.
Despite solid gains in manufacturing, construction and mining, U.S. job growth overall last month fell short of economists' expectations and recent trends. Employers added 156,000 net new jobs, a slowdown from payroll increases of 189,000 in July and 210,000 in June, the Labor Department said Friday.
The nation's unemployment rate ticked back up to 4.4%, from 4.3% in July. Average hourly earnings barely rose, and the typical number of hours worked per week slipped a fraction last month.
Economists cautioned against reading too much into one's month data, especially coming in a summer when seasonal factors are more tricky for statisticians to filter out.
Job creation last month was still more than enough to absorb the growth in the working-age population. The unemployment figure remains just shy of a 16-year low, and the economy this summer entered its ninth year of expansion.

長くなりましたが、金融政策動向も含めて、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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米国の雇用については、8月統計の非農業部門雇用者の増加幅に関する市場の事前コンセンサスは+180千人くらいと見込まれていたところ、この水準は下回り、また、前月7月実績の+189千人増には達しませんでしたが、+150千人増を上回って+156千人増はまずまず堅調と私は受け止めています。特に、製造業が3か月連続で雇用を増加させているのが目につきます。すなわち、6月+21千人増、7月+26千人増、8月+36千人増で、3か月連続増加だけでなく、その増加幅が拡大したりしています。トランプ米国大統領が特に重視しているセクターではあるものの、特段の政策的な対応がなされていると思えないところ、どうなっているんでしょうか。金融政策に関しては、米国の報道を私が見ている限りで、+100千人増ならOKといったラインをイエレン連邦準備制度理事会(FED)議長ご本人が発言しているようですし、この9月19~20日に次回の米国連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される際には、量的緩和により米国債などを大量に買い入れ、バランスシートが大きく膨張しているところ、リーマン・ショック後の金融危機対応の金融政策運営からの脱却を目指してバランスシートの圧縮を議論する可能性がFED幹部などから示唆されています。今年は25ベーシスの利上げが年間3回と想定されてきましたが、3月と6月に2度の利上げが行われた後、3度目はあるとすれば12月と私は考えていて注目しているところです。先日公表されたばかりの4~6月期の成長率は+3.0%と、かなり高い伸びを示した一方で、日本や欧州とも共通して、物価がやや伸び悩みを見せています。私は米国内の報道しか見ていませんが、物価動向から利上げを疑問視する味方がある一方で、一部の商業用不動産価格の上昇がバブルの兆しとみなされていたりして利上げをサポートする意見も見受けます。FOMCの前にFEDが市場とどのような対話を交わすのか、私は大いに注目しています。

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ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じた印象ながら、もう一段の加速が見られません。ただ、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなりましたが、日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったのかもしれません。

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2017年9月 1日 (金)

法人企業統計に見る企業の収益力はほぼ史上最高も賃上げや設備投資は低調!

本日、財務省から今年2017年4~6月期の法人企業統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で、売上高は3期連続の増収で前年同期比+6.7%増の327兆9184億円、経常利益も4期連続の増益で+22.6%増の22兆3900億円でした。また、設備投資は製造業で▲7.6%減、非製造業で+6.9%増となり、非製造業が牽引する形で、全産業では+1.5%増の9兆4506億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4~6月期設備投資1.5%増、前期比では鈍化 法人企業統計
財務省が1日発表した2017年4~6月期の法人企業統計によると、金融業・保険業を除く全産業の設備投資は前年同期比1.5%増の9兆4506億円だった。プラスは3四半期連続。サービス業や物品賃貸業の増加が自動車や情報通信関連の減少を補った。ただ国内総生産(GDP)改定値を算出する基礎となる「ソフトウエアを除く全産業」の設備投資額は季節調整済みの前期比で2.8%と3四半期ぶりに減り、直前と比べた設備投資は鈍化傾向となった。
設備投資の前年同期比の動向を産業別にみると、非製造業は6.9%増えた。訪日外国客の流入を背景に、サービス関連の宿泊設備への投資が伸び、娯楽施設も堅調だった。レンタカーやカーリースといった物品仲介業で車両購入が増えたのも寄与した。通信回線の敷設も貢献した。
季節調整済み前期比で設備投資額が2.8%減となった「ソフトウエアを除く全産業」の内訳は製造業が5.4%減、非製造業が1.4%減だった。製造業では新型車向け増産投資が1~3月期に大きかった反動が出た。通信業では半導体や素材関連の投資が一服し、企業の設備投資は全体でみれば直前の四半期と比べると一巡感が出ている。
全産業ベースの経常利益は前年同期比で22.6%増の22兆3900億円と、統計をさかのぼれる1960年度以降で最高となった。増加は4四半期連続。製造業が46.4%増と3四半期連続、非製造業が12.0%増と4四半期連続のプラスとなった。原油価格の上昇で商社など卸売業が好調だったほか、新規出店を続けた小売りも伸びた。財務総合政策研究所は「堅調な世界経済を背景に、企業業績はゆるやかな回復基調をたどっている」と指摘している。
売上高は6.7%増の327兆9184億円と3四半期連続の増加で、非製造業が7.4%増、製造業が4.8%増となった。
同統計は資本金1000万円以上の企業収益や収益動向を集計。今回の17年4~6月期の結果は、内閣府が8日発表する同期間のGDP改定値に反映される。

やや長いものの、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、いわゆる「失われた10年」の期間である1990年代のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整していない原系列の統計ながら、4~6月期の売上高経常利益率は製造業が8.8%、非製造業が6.0%と、1~3月期をともに上回り、加えて、国内経済もそれなりに堅調に回復・拡大を示しているものの、世界経済のいっそうの拡大や円安を受けて、製造業が非製造業よりも高い収益力を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については昨年2016年年央くらいを底に、昨年2016年後半から明らかに上向きに転じ、今年2017年1~3月期から4~6月期にかけてもこの流れが継続していることが確認できたと思います。ただ、設備投資については、同様に、2016年年央を底に上向きに転じていたんですが、今年2017年4~6月期にはマイナスに転じました。季節調整済みの系列で見て、全産業ベースの設備投資は4~6月期に前期比で▲2.8%減でしたが、製造業で▲5.4%減、非製造業で▲1.4%減を示しており、利益率が高い製造業の方で投資がより大きく減少しているのは、海外へ投資が漏出している可能性が示唆されていると私は受け止めています。また、引用した記事にもある通り、この法人企業統計の公表をもって、来週9月8日に内閣府から4~6月期のGDP統計2次QEが公表される予定となっています。シンクタンクなどの2次QE予想は日を改めて取りまとめる予定です。直観的には設備投資が下方修正される分、2次QEでは成長率が下振れするんだろうという気はします。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出しています。このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。また、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、さらなる法人税引き下げなどによる企業活動活性化がどこまで必要なのかは疑問ですし、企業が国内での設備投資や賃上げに慎重姿勢を示しているのであれば、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

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最後に、法人企業統計を離れて、内閣府から公表された8月の消費者態度指数のいつものグラフは上の通りです。統計作成官庁である内閣府では、基調判断を「持ち直している」から「ほぼ横ばいとなっている」に下方修正しています。

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