米国雇用統計はやや鈍化するも堅調な雇用の伸びを示し利上げをサポートするか?
日本時間の昨夜、米国労働省から8月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数の増加幅は+156千人増となった一方で、失業率は前月から+0.1%ポイント上がって4.4%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、Los Angeles Times のサイトから最初の5パラだけ記事を引用すると以下の通りです。
U.S. employers add 156,000 jobs in August; unemployment rate edges up to 4.4%
August was a good month for blue-collar jobs, but hiring on the whole tailed off from earlier in the summer and there was no indication of an upturn in wage growth, which has been missing in the nation's long economic recovery.
Despite solid gains in manufacturing, construction and mining, U.S. job growth overall last month fell short of economists' expectations and recent trends. Employers added 156,000 net new jobs, a slowdown from payroll increases of 189,000 in July and 210,000 in June, the Labor Department said Friday.
The nation's unemployment rate ticked back up to 4.4%, from 4.3% in July. Average hourly earnings barely rose, and the typical number of hours worked per week slipped a fraction last month.
Economists cautioned against reading too much into one's month data, especially coming in a summer when seasonal factors are more tricky for statisticians to filter out.
Job creation last month was still more than enough to absorb the growth in the working-age population. The unemployment figure remains just shy of a 16-year low, and the economy this summer entered its ninth year of expansion.
長くなりましたが、金融政策動向も含めて、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

米国の雇用については、8月統計の非農業部門雇用者の増加幅に関する市場の事前コンセンサスは+180千人くらいと見込まれていたところ、この水準は下回り、また、前月7月実績の+189千人増には達しませんでしたが、+150千人増を上回って+156千人増はまずまず堅調と私は受け止めています。特に、製造業が3か月連続で雇用を増加させているのが目につきます。すなわち、6月+21千人増、7月+26千人増、8月+36千人増で、3か月連続増加だけでなく、その増加幅が拡大したりしています。トランプ米国大統領が特に重視しているセクターではあるものの、特段の政策的な対応がなされていると思えないところ、どうなっているんでしょうか。金融政策に関しては、米国の報道を私が見ている限りで、+100千人増ならOKといったラインをイエレン連邦準備制度理事会(FED)議長ご本人が発言しているようですし、この9月19~20日に次回の米国連邦公開市場委員会(FOMC)が開催される際には、量的緩和により米国債などを大量に買い入れ、バランスシートが大きく膨張しているところ、リーマン・ショック後の金融危機対応の金融政策運営からの脱却を目指してバランスシートの圧縮を議論する可能性がFED幹部などから示唆されています。今年は25ベーシスの利上げが年間3回と想定されてきましたが、3月と6月に2度の利上げが行われた後、3度目はあるとすれば12月と私は考えていて注目しているところです。先日公表されたばかりの4~6月期の成長率は+3.0%と、かなり高い伸びを示した一方で、日本や欧州とも共通して、物価がやや伸び悩みを見せています。私は米国内の報道しか見ていませんが、物価動向から利上げを疑問視する味方がある一方で、一部の商業用不動産価格の上昇がバブルの兆しとみなされていたりして利上げをサポートする意見も見受けます。FOMCの前にFEDが市場とどのような対話を交わすのか、私は大いに注目しています。

ということで、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じた印象ながら、もう一段の加速が見られません。ただ、一時の日本や欧州のように底割れしてデフレに陥ることはほぼなくなりましたが、日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったのかもしれません。
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