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2017年10月14日 (土)

今週の読書は経済書から小説までいろいろ読んで計7冊!

今週の読書は、なかなかにして重厚な経済学及び国際政治学の古典的な名著をはじめとして、以下の通り計7冊です。がんばって読んでしまいました。

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まず、オリバー E. ウィリアムソン『ガバナンスの機構』(ミネルヴァ書房) です。著者はノーベル経済学賞を授与された世界でもトップクラスの経済学者であり、専門分野はコース教授らと同じ取引費用の経済学です。本書は、 『市場と企業組織』と『資本主義の経済制度』に続く3部作の3冊目の完結編であり、英語の原題は The Mechanism of Governance であり、邦訳書のタイトルはほぼ直訳です。原書は1998年の出版ですから、20年近くを経て邦訳されたことになります。本書の冒頭でも指摘されている通り、取引費用の経済学は広い意味での制度学派に属しており、その意味で、同じくノーベル経済学賞を受賞した経済史のノース教授らとも共通する部分があります。そして、いわゆる主流派の経済学の合理性では説明できないながら、広く経済活動で観察される事実を説明することを眼目としています。少なくとも、経済史における不均等な経済発展は主流派の超のつくような合理性を前提とすれば、まったく理解不能である点は明らかでしょう。その昔は、合理的な主流派経済学で説明できないような経済的活動については、独占とか、本書では指摘されていませんが、外部経済などに起因する例外的な現象であるとされていましたが、現在では、今年のノーベル経済学賞を受賞したセイラー教授の専門分野である行動経済学や実験経済学にも見られるように、個人の合理性には限界があり、この限定合理性の元での現象であるとか、ウィリアムソン教授やコース教授の取引費用の観点から、一見して非合理的な経済活動も合理性あるとする見方が広がって来ています。ということで、本書では取引費用から始まって、ガバナンスについて論じているのはタイトルから容易に理解されるところです。しかしながら、本書のレベルは相当に高く、おそらく、大学院レベルのテキストであり、大学院のレベルにもよりますが、大学院博士後期課程で取り上げられても不思議ではないレベルです。それなりのお値段でボリュームもあり、そう多くはありませんが、モデルの展開に数式を用いている部分もあります。書店で手に取って立ち読みした後で、買うか買わないかを決めるべきですが、読まなくても書棚に飾っておく、という考え方も成り立ちそうな気がします。だたし、最終第14章はそれほど必要とも思いませんでした。

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次に、フィリップ・コトラー/ヘルマワン・カルタジャヤ/イワン・セティアワン『コトラーのマーケティング 4.0』(朝日新聞出版) です。著者のうちのコトラー教授はノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院の研究者であり、私でも知っているほどのマーケティング論の権威です。英語の原題は Marketing 4.0 であり、邦訳のタイトルはほぼそのままです。今年2017年の出版です。私は専門外なので知らなかったんですが、コトラー教授によれば、マーケティング1.0は製造者の生産主導のマーケティングであり、2.0は顧客中心、3.0は人間中心とマーケティングが進歩して来て、本書で論じられる4.0はデジタル経済におけるマーケティングです。ただし、本書でも明記されている通り、従来からの伝統的なマーケティングが消滅するわけではなく、併存するという考えのようです。もちろん、インターネットの発達とそれへのアクセスの拡大、さらに、情報を受け取るだけでなく発信する消費者の割合の飛躍的増大からマーケティング4.0への進歩が跡付けられています。といっても、私の想像ですが、おそらく、グーテンベルクの活版印刷が登場した際も、あるいは、ラジオやテレビが普及した際も、それをマーケティングと呼ぶかどうかはともかくとして、こういった新たなメディアの登場や普及によりマーケティングが大きく変化したんではないかという気がします。基本的に、経済学では市場とは情報に基づいて商品やサービスが取引される場であると理解されており、その意味で、市場で利用可能な情報が多ければ多いほど市場は効率的になるような気がします。ただ、それに関して2点だけ本書を離れて私の感想を書き留めれば、まず、本書では注目されていないフェイク・ニュースの問題があります。消費者のレビューにこれを当てはめれば、日本語でいうところの「やらせ」になり、いくつか問題が生じたことは記憶に新しいところです。こういったフェイクな情報とマーケティングの関係はどうなっているのでしょうか。フェイクな情報は市場の中で自然と淘汰されるのか、そうでないのか。私はとても気にかかります。こういったコトラー教授なんかの権威筋のマーケティング論の本を読むにつけ、今年のノーベル経済学賞を受賞したセイラー教授らの行動経済学や行動経済学における意思決定論は、おそらく、企業が市場でしのぎを削っているマーケティングにはかなわないような気がします。理論的な実験経済学や行動経済学よりも、理論化はされていないかもしれませんが、市場の場で鍛えられた実践的なマーケティングの方が、よっぽど的確に選択や意思決定を明らかにしているような気がします。いかがでしょうか。

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次に、フランソワ・シェネ『不当な債務』(作品社) です。著者はフランスのパリ第13大学の研究者であり、同時に、社会活動にも積極的に取り組み、近年では反資本主義新党NPAの活動に携わり、トービン税の実現を求める社会運動団体ATTACの学術顧問も務めているそうです。フランス語の原題は Les Dettes Illégitimes であり、邦訳のタイトルはほぼそのままです。2011年の出版です。ということで、私の目から見て、フランス国内で主流のマルクス主義経済学的な観点である蓄積論からの債務へのアプローチであり、同時に、ケインズ経済学的な観点も取り入れて、マイクロな経済主体の経済活動をマクロ経済への拡張ないしアグリゲートする際の合成の誤謬についても債務問題に適応しています。特に、この観点を日本経済に当てはめる場合、資本蓄積が先進諸国の中でももっともブルータル、というか、プリミティブに実行されており、かなりあからさまな賃金引き下げ、あるいは、よりソフィスティケートされた形である非正規雇用の拡大という形で、先進国の中でも特に労働分配率の低下が激しく、その分が実に合理的に資本蓄積に回されているわけです。最近時点での企業活動の活発さと家計部門の消費の落ち込みを対比させるまでもありません。その上で、かつての高度成長期から現在まで、債務構造が大きく変化してきているわけです。別の経済学的な用語を用いると貯蓄投資バランスということになりますが、高度成長期や、そこまでさかのぼらないまでも、バブル経済前で日本経済が健全だったころは、家計が貯蓄超過主体であり、家計の貯蓄を企業の投資の回していたわけですが、現在では、「無借金経営」の名の下に、企業はむしろ貯蓄超過主体となっており、一昔前でいえば月賦、現在ではローンを組んで、あるいは、クレジットカードによる支払いで、家計が債務を負った形での消費が進んでいるわけです。教育すら奨学金という過大な債務を学生に負わせる形になって、卒業後の雇用に歪みを生じていることは明らかです。加えて、政府債務についても、銀行やその他の金融機関、あるいは、民間企業を救済するための債務を生じている場合が多いのも事実です。こういった債務をいかにして解消するか、貯蓄と債務のあり方について、資本蓄積の過程から分析しています。かなり抽象度が高くて難しいです。私は一応、京都大学経済学部の学生だったころに『資本論』全3巻を読んでいますが、それでも、理解がはかどらない部分が少なくありませんでした。

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次に、秋元千明『戦略の地政学』(ウェッジ) です。著者は長らくNHKをホームグラウンドとして活動してきたジャーナリストです。アカデミックなバックグラウンドは明確ではありませんが、実際の外交や安全保障に関する情報には強いのかもしれません。本書では、最初の方で歴史的な戦略論、すなわち、マッキンダーのランドパワーとシーパワーの特徴やハートランドの重要性の強調、さらに、スパイクマンのリムランドからハートランドを取り囲む戦略論、マハンのシーパワー重視の戦略論、ナチスの戦略論を支えたハウスホファーなどなど、まったく専門外の私でも少しくらいなら聞いたことがあると感じさせるような導入を経て、最近の世界情勢を地政学的な観点から著者なりに解釈を試みようとしています。その基本的な考え方は、日本はシーパワーの国であり、その点から米英と連合を組み、特に、米国と同盟関係にあるのは安全保障の観点からは理由のあることである、ということについては、本書の著者以外も合意できる点かもしれません。その上で、第8章冒頭にあるように、著者は現在の安倍政権を安全保障に関する考え方が地政学に立脚しているとして大いに評価しています。吉田ドクトリンとして米国に安全保障政策を委ねて、日本は経済復興に重点を置く、という戦後の基本路線を敷いた吉田総理以来の地政学的な基本を共有していると指摘しています。その上で、やや外交辞令にようにも聞こえますが、米国をハブにしつつ、大昔のように日英同盟も模索するような視点も見られます。ただ、本書では明確に指摘していませんが、民主党政権下で米国との同盟重視から中国に方向を変更しようと模索した挙句、結局、虻蜂取らずというか、中国も袖にしてメチャクチャな反日暴動や日中対立の激化を招いた経験から、羹に懲りて膾を吹くような態度は判らないでもないものの、米国が世界の警察官を降りる現状では視点を大きく変えて、米国との同盟をチャラにする仮定での我が国の安全保障政策も、あるいは、そろそろ考える段階に達したのかもしれません。もちろん、その場合は、米国に指揮権を委ねている自衛隊の軍事行動の自律性というものも考慮する必要があります。私は専門外のシロートですので簡単にいってのけてしまうんですが、難しい問題なのかもしれません。

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次に、佐藤究『Ank: a mirroring ape』(講談社) です。私はこの作者の作品読んだのは、前作の江戸川乱歩賞受賞作『QJKJQ』が初めてで、この作品が2作目なんですが、当然の進歩がうかがえて、この作品の方が面白く読めました。前作はデニス・ルヘインの『シャッター・アイランド』の焼き直しのような気がして、どうも、オリジナリティが感じられなかったものの、本作は、おそらく、パニック小説に分類されて、高嶋哲夫の作品などと並べて評価されるような気がしますが、作品の出来としてはともかく、オリジナリティにあふれていたような気がします。以下、ネタバレを含みます。未読の方は自己責任でお願いします。ということで、要するに、アフリカで保護されたチンパンジーが「京都ムーンウォッチャーズ・プロジェクト」、通称KMWPなる霊長類の研究所、これは我が母校の京大の霊長類研究所とは違って、天才的なAIの研究家で大富豪となったシンガポール人によって設立された民間の研究機関ですが、そのKMWPに収容され、ふとしたきっかけで警告音を発してしまい、その警告音がヒトを含む霊長類を同種の生物の殺戮へと向かわせる、というものです。ただ、主人公の霊長類研究者とキーパーソンの1人であるシャガという若者など、鏡像認識の特殊な要因により軽微な影響もしくはほとんど影響を受けないヒトもおり、主人公がそのチンパンジーを始末する、というものです。警告音に対する遺伝子的な対応の違い、鏡像認識と警告音によって引き起こされるパニック現象との関係、さらに、シンガポール人大富豪がAI研究を手終いして霊長類研究に乗り換えた理由、などなど、とてもプロットがよく考えられている上に、タイトルとなっているankと名付けられたチンパンジーの警告音が引き起こすパニックの描写がとても印象的かつリアルで、さすがに作者の筆力をうかがわせる作品です。舞台を京都に設定したのも、霊長類研究とパニックが生じた際の人口や街の規模、さらには、外国人観光客の存在などの観点から、とても適切だった気がします。ただ、難点をいえば、現在から約10年後の2026年10月に舞台が設定されているんですが、AIとか霊長類研究とかの、かなりの程度に最新の科学研究を盛り込みながら、ソマートフォンとか、SNSとか、動画のアップロードとか、現状の技術水準からまったく進歩していないような気もします。このあたりは作者の科学的な素養にもよりますし、限界かもしれませんが、ここまで進歩内なら現時点の2017年でいいんじゃないの、という気もします。でもいずれにせよ、この作者の次の作品が楽しみです。

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最後に、サミュエル・ハンチントン『文明の衝突』上下(集英社文庫) です。著者は米国を代表する国際政治学者だった研究者であり、2008年に亡くなっています。英語の原題は The Clash of Civilizations and the Remaking of World Order であり、邦訳タイトルは必ずしも正確ではなく、原題の前半部分だけを抜き出している印象です。英語の原点も邦訳もいずれも1998年の出版です。何を思ったか、集英社文庫から今年2017年8月に文庫版として出版されましたので、私は初めて読んでみました。よく知られた通り、第2章で文明を8つにカテゴライズしています。すなわち、中華文明、日本文明、ヒンドゥー文明、イスラム文明、西欧文明、東方正教会文明、ラテンアメリカ文明、アフリカ文明です。その上で、これらの文明と文明が接する断層線=フォルト・ラインでの紛争が激化しやすいと指摘しています。さらに、1998年の出版ですから冷戦はとっくに終わっており、以前は脅威とされていた共産主義勢力の次に出現した新たな世界秩序において、もっとも深刻な脅威は主要文明の相互作用によって引き起こされる文明の衝突である、と結論しています。このあたりまでは、あまりにも有名な本ですので、読まなくても知っている人も少なくないような気がします。もちろん、西欧文明=西洋文明中心の分析なんですが、エコノミストとしては西洋文明が覇権を握ったバックグラウンドとしての産業革命をまったく無視しているのが最大の難点のひとつだろうと感じています。専門外であるエコノミストの私ごときがこの個人ブログという貧弱なメディアで語るのはこれくらいにして、あとは、もっと著名な評論やサイトがいっぱいありますから、google ででも検索することをオススメします。何よりも、実際に読んでみるのが一番のような気もします。

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コメント

最後の本は、私も持っています。ハードカバー本で、大方の本を捨てた後も本棚に飾ってあります。この本の索引にあったトインビーの「歴史の研究」も読みかけのまま、本棚に眠ってます。

投稿: kincyan | 2017年10月14日 (土) 14時27分

そうですよね。
私の専門分野では、サムエルソンの『経済学』とか、他の分野でも、本棚に飾っておく本は必要だと思います。ただし、歴史関係でブローデルの『地中海』なんぞは、本棚でそれなりのスペースを飾れるんですが、お値段の点でやや難があるような気もします。

投稿: ポケモンおとうさん | 2017年10月14日 (土) 22時27分

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