徐々に上昇幅を拡大する企業向けサービス物価(SPPI)!
本日、日銀から9月の企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPI上昇率は+0.9%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.8%と、上昇幅は前月から大きな変化ないものの、徐々に上昇幅を拡大しつつ推移しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
9月の企業向けサービス価格指数、前年比0.9%上昇 広告が寄与
日銀が26日発表した9月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.8で、前年同月比0.9%上昇した。前年比での上昇は51カ月連続。0.9%は6カ月ぶりの大きさで前月比0.1ポイント拡大した。新聞、テレビ、ネット、雑誌のすべての広告が上昇に転じ指数全体を押し上げた。前月比でも0.1%上昇し、2カ月ぶりに伸びた。
特に上昇への寄与度が高かった新聞広告では住宅や自動車の出稿が増えた。「企業収益は好調で株価も高水準にあるが、企業の広告出稿意欲は依然として低く、伸びたのは一時的」(調査統計局)とみている。サービス全体としては「価格改定期ではないため小動きだが、人手不足の宅配便や土木建築サービスでは上昇傾向が続いている」(同)という。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは90品目、下落は22品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は68品目で、8月の確報値(49品目)から19品目増えた。上昇から下落を引いた差の68品目は消費税を除いたベースでは10年平均となった11年1月以降で過去最高だった。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

SPPIの前年同月比で見て、7月の+0.6%、8月+0.8%から9月+0.9%と徐々に上昇率を高めましたが、引用した記事にもある通り、上昇幅が拡大した中で大きい寄与を示しているのは広告です。前年比寄与度前月差で見て、広告全体で+0.12%とほぼ総合指数の押し上げに匹敵する寄与度を示していますが、特に、新聞広告が+0.04%、次いでテレビ広告が+0.03%、加えて、インターネット広告も+0.02%の寄与となっています。私の直観としては、広告は需給要因で動きの大きい項目となっており、プラスにせよ、マイナスにせよ、寄与度としては絶対値が大きい印象があります。引用した記事にもある通り、統計作成を担当している日銀では「一時的」と見ているようですが、8月から9月にかけてのSPPI統計ではプラスで出たわけですし、最近では需給要因を反映してプラス寄与となる月が増えている印象です。広告分類の前年同月比上昇率も8月▲0.8%のマイナスから、9月には+1.0%のプラスに転じています。SPPIのウェイトで約⅓(より正確には1000分の335)を占める諸サービスのうちで前年同月比上昇率で見て比較的高い伸びを示している項目として、土木建築サービス+4.9%、警備+3.1%、職業紹介サービス+2.3%、労働者派遣サービス+1.6%などが上げられますが、人手不足が原因で高い上昇率を示していると考えてよさそうです。エコノミストの中には、人口動態を考慮すれば人手不足は長期化するとの見通しも少なくなく、物価上昇や賃上げに結びつくんではないかと私は期待しています。
本日の経済財政諮問会議では、「経済・財政一体改革」などとともに、「賃金・可処分所得の継続的な改善・拡大について」が議題として取り上げられています。賃上げに関する民間議員提案は、労使交渉の当事者である榊原経団連会長を除く3名から提出されており、引き続き、政府が賃金引き上げに何らかの影響力を及ぼそうとする姿勢が見られます。私は今『スティグリッツのラーニング・ソサイエティ 生産性を上昇させる社会』を読んでいるんですが、市場の効率性を重視して政府介入を排する経済学から、賃上げも含めて、何らかの政府の介入による市場の方向付けを許容する経済学に、徐々に主流派経済学が方向転換しつつあるんではないかと感じ始めています。
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