大きく減少した機械受注と着実な上昇を続ける景気ウォッチャーと黒字が拡大する経常収支!
本日、内閣府から9月の機械受注が、また、同じく内閣府から10月の景気ウォッチャーが、さらに、財務省から9月の経常収支が、それぞれ公表されています。機械受注では変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比前月比▲8.1%減の8105億円を記録し、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.9ポイント上昇して52.2を、先行き判断DIは+3.9ポイントも大きく上昇して54.9を、それぞれ示し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆2712億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
9月の機械受注8.1%減、製造業が反動減、非製造業も低調
内閣府が9日発表した9月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標とされる「船舶・電力除く民需」の受注額(季節調整値)は、前月と比べ8.1%減の8105億円と3カ月ぶりに減少した。製造業が前月の大幅増の反動で減少したほか、非製造業も低調だった。ただ、内閣府は基調判断を「持ち直しの動きがみられる」に据え置いた。
製造業は5.1%減の3921億円だった。前月に堅調だった食品製造業を中心に減少が目立ち、全体の重荷になった。汎用・生産用機械は運搬用機械や工作機械が減少した。
非製造業は11.1%減の4329億円だった。4カ月ぶりに前月を下回った。金融業・保険業のネットワークやシステム関連機器の受注が低調で、国内の鉄道車両の受注も一服した。
10~12月期の見通しは前期比3.5%減となった。7~9月期にスマートフォン向けなどが堅調だった半導体製造装置を中心に、製造業で慎重な見方が出た。非製造業は9月に大きく落ち込んだものの、建設業などで持ち直しの期待があるという。10~12月期の業種別の見通しは、製造業が9.4%減、非製造業が0.9%増だった。
10月の街角景気、現状判断指数が2カ月連続改善 好業績支え
内閣府が9日発表した10月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前月比0.9ポイント上昇の52.2と2カ月連続で改善し、2014年3月以来の高さとなった。国内企業の堅調な業績推移を受けて企業動向が大幅に上向き、雇用も一段と上昇した。先行きも楽観的な見方が目立ち、内閣府は基調判断を「着実に持ち直している」で据え置いた。
部門別にみると企業動向が4.1ポイント改善し56.4、雇用は3.3ポイント改善し60.3と、それぞれ上昇した。半面、家計動向は台風の影響などで0.5ポイント低下の49.6とやや弱含んだ。
街角では企業動向について「取引先から売り上げ減少等のマイナス要因を聞くことがない」(九州の金融業)など、業績改善を指摘する声が多かった。「北米向け多目的スポーツ車(SUV)の輸出が好調」(北関東の輸送用機械器具製造業)など、良好な外需も意識された。雇用は「求人数の増加が顕著で、正社員求人も増加している」(九州の職業安定所)との指摘があった。小幅に下げた家計動向では台風の影響で客足が鈍化したとの声があった。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は3.9ポイント上昇の54.9。台風の悪影響の一巡や株高による富裕層の消費拡大が、百貨店など小売り関連の見通し改善につながった。家計関連が4.2ポイント上昇の54.4となるなど、企業動向、雇用を含む3指標がそろって上昇した。
9月の経常収支、2兆2712億円の黒字 9月として10年ぶり黒字幅
財務省が9日発表した9月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆2712億円の黒字だった。黒字は39カ月連続で、前年同月に比べて4069億円黒字額が拡大した。黒字額は9月としては2007年(2兆8814億円)以来10年ぶりの高水準だった。貿易黒字の拡大や第1次所得収支の大幅黒字が寄与した。
貿易収支は8522億円の黒字と前年同月に比べて黒字額が1850億円拡大した。原動機や半導体電子部品の好調で輸出が14.4%伸びた。原粗油や石炭などエネルギー関連の増加で輸入も12.7%伸びたが、輸出が上回った。
第1次所得収支は1兆7025億円の黒字と、黒字幅が1925億円拡大した。円安を背景に海外子会社から受け取る配当金が増えた。
サービス収支は758億円の赤字と、赤字幅が171億円縮小した。訪日外国人の増加を背景に旅行収支が1002億円の黒字と9月としての過去最高を記録。知的財産権使用料の受け取りが増加したことも寄与した。
同時に発表した17年度上半期(4~9月)の経常収支は11兆5339億円の黒字だった。前年同期に比べて黒字額が1兆2094億円拡大し、同期間としては07年度(12兆4816億円の黒字)以来の高水準だった。貿易収支は2兆6869億円の黒字、第1次所得収支は10兆3823億円の黒字だった。旅行収支は8429億円の黒字と半期ベースで過去最高となった。
いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。でもさすがに、統計に関する記事を3本も並べると、とても長くなってしまいました。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

コア機械受注については、季節調整済みの系列の前月比で見て、7月+8.0%増、8月+3.4%増を受けての反動減もあって9月統計では▲8.1%減と落ち込みましたが、季節調整済みの四半期系列でならして見ると、前期比で今年に入ってからは1~3月期▲1.4%減、4~6月期▲4.7%減の後、7~9月期は+4.7%増を記録したものの、10~12月期の見通しは▲3.5%減と見込まれており、10~12月期は特に製造業で大きく落ち込む見通しとなっています。9月統計の実績と10~12月期の見通しを受けて、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府は基調判断を「持ち直しの動き」で据え置いています。先月に「足踏み」から「持ち直しの動き」へと明確に1ノッチ引き上げたところなので、なかなか難しいところですが、少なくとも統計を素直に見る限り、また、上のグラフを単純に見れば、それほど上向く気配もなく、ならせば2015年くらいから横ばいなんではないか、と私は受け止めています。ただし、足元や目先ではなく来年度以降について考えると、全体として業種横断的に、労働需給のひっ迫を背景とした合理化・省力化投資が見込まれる一方で、業種別には、製造業では更新投資とともに、維持・補修に関する投資が期待されるものの、能力増強に対する投資意欲は高くないように見受けられ、本格的な設備投資の増加には、輸出も含めて、さらなる需要の盛り上がりが必要であり、他方、非製造業ではインバウンド消費への対応や2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けたインフラ整備向けの投資が増加すると見込まれます。ですから、決して先行きについて悲観はしているわけではないんですが、足元から目先の年内くらいは一進一退の動きが続くんではないかと私は見込んでいます。ただ、グラフは示しませんが、四半期データが利用可能となり、達成率も明らかにされましたが、7~9月期のコア機械受注の達成率は約100%であり、エコノミストの経験則である90%ラインを割るような局面ではありません。ご参考まで。

続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。供給サイドの典型的なマインド指標である景気ウォッチャーですが、かなり高い水準を続けており、この好調なマインドが景気の回復・拡大を支えている面もあります。ただ、私の直観的な観察結果として、2015年中くらいまでは景気ウォッチャーにおいて家計部門と企業部門の差は大きくなかったんですが、昨年2016年に入ってから家計部門と企業部門で差がつき始め、この2017年10月統計ではかなり差が拡大したんではないかと懸念しています。すなわち、6か月ごとくらいに現状判断DIを見ていくと、2年前の2015年10月時点では家計動向関連50.6に対して、企業動向関連49.4だったんですが、1年半前の2016年4月には家計38.7、企業43.2と逆転し、1年前の2016年10月には家計46.6と企業50.4にともに改善を示しつつ、差も縮小したんですが、直近の2017年10月統計では家計49.6と企業56.4と大きな差がついてしまいました。街角景気はかなり正確で、私の直観でも現在のいざなぎ超え確実の景気拡大は家計部門ではなく企業部門が牽引しています。企業行政はかなり好調で内部留保は積み上がっているんですが、賃金で家計に還元して消費の原資として購買力をつけたり、あるいは、設備投資により企業間や産業間で好調な企業業績がスピルオーバーしたりしてはいないように見受けられます。家計にとっては、景気ウォッチャーの第3のコンポーネントである雇用関連が、2017年10月には現状判断DIがとうとう60に乗せるほどの好調なのが救いなんですが、囚人のジレンマのように各企業がひたすら内部留保を溜め込むばかりで、賃金にも、設備投資にもスピルオーバーを試みない現状をどのように打破するかが、景気回復・拡大をさらに息の長いものとするために考えなければならないのかもしれません。

最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。引用した記事にもある通り、貿易黒字と1次所得収支の黒字が大きくなっています。円安に伴って円建て額が膨らんだことに加え、引用した記事にもある通り、インバウンド消費により旅行収支につれてサービス収支が改善しています。震災や国際商品市況における石油価格の上昇などから、経常収支は赤字化したり、あるいは、黒字幅が大きく縮小していましたが、すっかり震災前の水準に戻ったように見受けられます。ただし、米国のトランプ大統領はすでに日本を離れましたが、かつての勢いある経済を擁していた日本でしたら対外摩擦になりかねないほどの黒字を積み上げている気がします。7~9月期のGDP統計は来週水曜日11月15日の公表ですが、おそらく、7~9月期における経常収支のGDP比は4%を超えているんではないかと思います。サブプライム・バブル期末期の2007年ころの+5%近い水準には達しませんが、1990年代半ばの当時の米国クリントン政権期に日米包括協議に引っ張り出された私としては、やや気にかかるところです。
| 固定リンク
コメント