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2017年11月27日 (月)

企業向けサービス物価(SPPI)上昇率は+1%に達しないか?

本日、日銀から10月の企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。ヘッドラインSPPIの前年同月比上昇率は+0.8%、国際運輸を除くコアSPPIも+0.7%と、上昇幅は前月から大きな変化なく、引き続き、+1%近いプラスで推移しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

10月の企業向けサービス価格、前年比0.8%上昇 輸送費上昇が寄与
日銀が27日発表した10月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は104.0で、前年同月比0.8%上昇した。前年比の上昇は52カ月連続。前月比でも0.2%の上昇と2カ月連続の上昇となった。人手不足に伴う人件費の上昇や燃料高で、宅配便など道路貨物輸送関連の価格が上昇した。
トラック運転手の不足によるコスト増の転嫁が進む宅配便などの価格の上昇幅が拡大している。廃棄物処理などでも人件費の上昇が価格に反映されているという。「今後は物流費の上昇が、消費者向けの財やサービスの価格上昇に波及する可能性がある」(調査統計局)という。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象の147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは79品目、下落は30品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は49品目で、9月の確報値(67品目)から18品目減った。物流関連の価格上昇の一方で、広告関連の価格などは低迷している。「高い収益の割に、企業の広告出稿の動きは弱い」(調査統計局)といい、業種ごとの価格動向には濃淡があるようだ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、SPPI上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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サービス物価については人件費の占める比重が高く、賃金との連動性もそれだけ大きくなっていると私は考えて来たんですが、今年に入ってから前年同月比で+1%に近い上昇率を示しながらも、それ以上には達しなかったのは、逆から見て、それだけ賃金上昇が進んでいない、ということなんだろうと受け止めています。
景気敏感指標である広告が前年同月比への寄与度で▲0.14%を示しているほか、運輸・郵便は同じく寄与度ベースで+0.03%となっています。社会的にも話題になったアマゾンとヤマト運輸との価格交渉などで、人手不足に対応した輸送価格改定が部分的ながらも実施されそうですが、公式発表資料に加えて取材に基づく記事を読む限り、それが10月統計にはジワジワと波及しつつあるような印象です。しかし、それでも1%にも達しない上昇率ですから、現在の日本企業の設備投資や賃上げや広告などの行動パターンを考慮すれば、このあたりが限界なのかもしれません。
ただ、我が国の物価上昇率で+2%に達しない場合、それでも、もし諸外国が通常の国際基準のように+2%のインフレ目標を達成すると仮定すれば、購買力平価的に考えると円高方向の圧力がかかる可能性があります。雇用者への賃金はコストであるとしか企業には認識されていないのかもしれませんが、雇用者にとって賃金は同時に消費の源泉となる所得を形成するわけですし、然るべき水準の賃上げを行って国内経済を活性化させるだけでなく、為替の増価を防止する観点からも賃上げが望まれるところです。かつて賃金を倍増した米国フォードの例もあったそうですが、日本企業にはこういった観点に基づく最適化行動はムリで、あくまで、他社の賃上げを期待しつつ自社の賃上げを抑えるという囚人のジレンマに陥るタイプの合理性の持ち主なんでしょうか?

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