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2017年12月16日 (土)

今週の読書は学術書に教養書や専門書を合わせて計7冊!

今週も、またまた、しっかりと内容も高度ならボリュームもあるという経済学の学術書、教養書や専門書を合わせて、小説抜きで計7冊でした。知り合いのエコノミストから、どうしてそんなに読書が進むのか、という質問を受けたりするんですが、第1に、図書館で借りていていますので、金銭的な負担はごく少なくなっています。第2に、やっぱり、睡眠時間を削って読書に当てているような気がします。今年の新語・流行語に「睡眠負債」というのがありましたが、大いに思い当たるフシがあります。年末年始休みはタップリ寝たいと思います。

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まず、神林龍『正規の世界・非正規の世界』(慶應義塾大学出版会) です。著者は一橋大学の准教授であり、専門はマイクロな労働経済学です。出版社からしても、400ページをかなり超えるボリュームからしても、それなりに高度な計量経済学的な手法を用いた分析であることからしても、本書は完全な学術書と考えるべきであり、とてもキャッチーなタイトルながら、一般のビジネスパーソンにはやや敷居が高いかもしれません。ということを前提に、本書で主張されている正規と非正規に関する結論を、あえて誤解を恐れずに短く表現すると、少なくとも、本書でスコープとしている2007年までのデータに基づく限り、正規から非正規にシフトしているわけではなく、18~54歳に限ったコアな労働力人口に占める正規の割合は45%から50%近くで1980年代から大きな変化ないことを考えると、繰り返しになりますが、マクロの労働力で見て正規から非正規にシフトしたわけではなく、自営業というインフォーマル・セクターから非正規にシフトしたと考えるべきである、ということになります。実は、本書でも指摘している通り、我が国の労働経済学では自営業というインフォーマル・セクターを無視してきたことは確かであり、第3部で分析されているように、日本の自営業が1980年代初頭ですら労働力の25%超を占め、さらに、2015年くらいまで一貫してそのシェアを低下させてきたのは、私もほのかに認識していたとはいうものの、ほとんど初見に近い見方であるといわざるを得ません。2015年時点でほぼほぼ他の先進国と同じ10%くらいのシェアに低下しましたので、今後の動向については先進国と似た動きをする可能性もありますが、少なくとも、個人のパーソナル・ヒストリーというマイクロなレベルではなく、マクロなレベルで正規から非正規にシフトしたのではなく、自営業から非正規にシフトした、というのはデータを見る限り、かなり真実に近いと私は受け止めました。さらに、リーマン・ショック後に注目された派遣労働者についても、せいぜいが100万人から150万人のレンジであって、6000万人を超える我が国の就業者から見れば、決してシェアは高くない、というのも事実であろうと思います。加えて、過去の慣行とまで見なされるようになった日本的雇用慣行、すなわち、長期雇用、年功賃金、企業内組合、についても、第3の労働組合がいまだに企業内組合であるのは、組織率が大きく低下した点を別にすれば、おそらく誰にでも観察される事実であろうとは思いますが、長期雇用や年功賃金も必ずしも崩壊したわけではなく、コアな正規雇用者にはまだまだ残存している可能性も本書は示唆しています(p.147)。そうかもしれません。というか、それだけに、政府でモデル世帯のように見なされている夫婦と子供2人で専業主婦、というか片働きの世帯というのは、大きく社絵を落としながらも、まだ、モデル的な世帯形態としては有効性がいくぶんなりともあるのかもしれません。そして、現在、使用者側から強く主張されている解雇規制の在り方については、本書でも指摘されているように、日本では米国などと比較して、ボーナスのシステムなどがあって賃金の柔軟性が高く、ケインズ経済学で仮定される賃金の下方硬直性が低いことから、解雇をひとつの極端な方法とする量的な調整の必要性が低かったのが一因と考えています。すなわち、現在の労働規制緩和を進めてしまうと、賃金調整の柔軟性が高く、しかもその上、量的な調整の柔軟性も高い、という何でもありのオールマイティーな労働調整の権利を使用者側に与えかねない不安が私にはあります。いかがなもんでしょうか。最後に、とても有益な読書だったんですが、2点だけ指摘しておきたいと思います。第1は、先ほどの正規と非正規のシフトについては、私も慎重に書きましたが、2007年までのデータに基づいた結論ではないかという気がします。リーマン・ショックとその後の Great Recession を経て、この結論がそのまま通じるのかどうか、データの利用可能性とともに再検証が必要かもしれません。第2は、p.164で、2007年データでは有期契約の方が無期契約よりも時間賃金が高い要因として、プロフェッショナルな契約社員が増加している点を上げていますが、違う要素も含まれていると思います。すなわち、景気変動による調整要員であるがゆえに、サブプライム・バブル崩壊直前の好況期には、それなりのプレミアムを上乗せした賃金が必要とされた可能性があると私は考えています。

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次に、島澤諭『シルバー民主主義の政治経済学』(日本経済新聞出版社) です。著者はシンクタンクのエコノミストであり、世代間不平等について、いくつか論考も発表しているようです。本書では、計量的な手法により、中位投票者モデルに基づいて、いわゆるシルバー民主主義にはなっていない、すなわち、中位有権者の高齢化の進行が、社会保障支出における高齢者VS現役世代の比率を上昇させているかどうかを検定した結果、実証的には注意年齢の係数が有意にマイナス、逆符号となるとの結果を示しつつ、でも、シルバー優遇は生じている、との結論を取っています。そして、シルバー民主主義が否定される代わりに、というか、何というか、現役世代と引退世代が結託して将来世代からの移転を受けている、要するに、財政赤字が問題である、との結論に飛びついています。計量的に中位投票者モデルに基づいてシルバー民主主義が否定されるのは、私としても、実証分析の結果ですのでそうだろうとは思うんですが、いきなり、財政赤字悪者論に飛躍し、財政赤字は財政的な幼児虐待とする結論は理解できません。しかも、財政赤字に対しては、本書では説得的な対応策が示されているとはいいがたい気もします。私自身は、シルバー民主主義ないしシルバー優遇は、民主主義の生物学的な限界であり、誠に情けない結論ながら、解決策らしきものは見いだせていません。せいぜい、楽観的に高齢者の利他的な動機に訴えるとか、間接民主主義の下で、本書でも注目している「民意」を政治家が歪める、くらいしか考えつかず、何ら説得的な解決策でないのは理解しているつもりです。でも、本書では真っ向から民意を反映するのがいい政治のように評価しているような気もします。しかし、少なくとも、英米における2016年の国民投票の結果、すなわち、BREXITとトランプ大統領の当選については、国民投票で結果が示されてしまえば、もうどうしようもありませんが、間接民主主義では、民意から遮断された政策決定が可能な気もします。もちろん、それはよくないという、何らかの価値判断はあり得ると思います。ということで、かつて、私が読んだ本で田原総一朗『頭のない鯨』というのがあって、その昔は、選挙で当選した代議士の要求であっても、当時の大蔵省の主計局が査定で予算を削ってしまえば政策として実現しない場合もある、として、間接民主主義下での民意と政策の遮断を論じていたような気がしますが、それにしても、現在ではそういった大蔵省=頭がなくなった日本経済という巨大な鯨が漂流している、というイメージかもしれません。ともかく、本書のように最後に財政赤字が悪い、と結論すれば、世代間不平等は財政赤字解消により縮小するかどうかは、基本的に独立事象であって関係ないと考えるべきですので、本書の重要なテーマであるシルバー民主主義や世代間不平等の議論はかなり歪められかねないと危惧しています。それよりも、必ずしも定量的な評価でなくてもいいので、国民=主権者が年齢を重ねる、すなわち、老いる場合に選好関数にどのような変化が現れるか、といったもっと大きなテーマも考えて欲しい気がします。

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次に、クレイトン M. クリステンセンほか『ジョブ理論』(ハーパーコリンズ・ジャパン) です。著者はクリステンセン教授以外にも何人かコンサルタント会社の幹部などが名を連ねているんですが割愛します。クリステンセン教授については、破壊的イノベーションに関する理論などで著名なハーバード・ビジネス・スクールの研究者です。本書の英語の原題は Competing against Luck であり、2016年の出版です。邦訳タイトルに「ジョブ」という単語を入れていますが、英語の原タイトルにはありませんし、雇用や労働などとは関係なく、イノベーションの源泉として「ジョブ」という言葉を定義し直しています。ジョブの定義やジョブ理論の概要は本書ではp.58本書でから始まります。簡潔に要約すると、頻出する表現として job to be done というのがあり、要するに、顧客が成し遂げたい必要な作業の本質、ということになろうかという気がします。その意味で、「ジョブを雇用(hire)する」という表現を使っています。なお、本書ではジョブとニーズを違うと強調していますが、私のようなシロートには重なり合うところが好きうなくないような気がします。誰の表現か忘れましたが、顧客はドリルが欲しいんではなく、穴を開けたいのである、といった趣旨かと私は受け止めました。本書の表現に即していえば、イノベーションの成否を分けるのは、地域と人口動態で分類した顧客データ、すなわち、東京在住の30歳台男性の消費の特徴とか、この層はあの層と類似性が高いとか、顧客の68%が商品Bより商品Aを好むなど、や、市場分析、スプレッドシートに表れる数字ではなく、鍵は「顧客の片づけたいジョブ(用事・仕事)」である、ということになります。そうでなければ、英語の原題にあるように、行き当たりばったりで運まかせのイノベーションになってしまう、ということなんだろうと思います。行き当たりばったりのイノベーションのほかにやや批判的な見方をされているものがいくつかあり、例えば、ビッグデータは顧客が誰かは教えてくれても、なぜ買うのかは教えてくれない、とか、同じ文脈で、相関関係ではなく因果関係が重要であり、同時に、数値化できない因果関係にこそ、成功するイノベーションの鍵があるとか、高齢者向けの紙オムツの例を出して、自社製品も他社製品も買っていない無消費の層を取り込む必要性、などに目を向けるべきと強調しています。本書で取り上げられている成功例は、主として、大企業であってニッチを埋めたスタートアップではありません。すなわち、イケア、ゼネラルモーターズ(GM)のオンスター、サザンニューハンプシャー大学の通信講座、プロクター&ギャンブル(P&G)、エアビーアンドビー、アマゾンなどなどです。そして、その意味で、本書の手法はいわゆるエピソード分析であり、データ分析ではありません。本書の最後の方にはその言い訳があり、イノベーションについてのデータ分析の偏りを批判していますが、私には同様の疑問があり、エピソード分析では常に成功例しか表面に現れず、水面下に沈んだ失敗例についても興味あります。キチンと、失敗例の原因も明らかにされていれば、それなりに、エピソード分析も意味ありそうな気もしますが、少なくとも本書には見られません。そこは残念に感じました。

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次に、 オーウェン・ジョーンズ『チャヴ 弱者を敵視する社会』(海と月社) です。著者は英国の評論家であり、かなり若い人です。英語の原題は CHAVS です。タイトルは、Councile Housed and Violent の頭文字を取ったもので、直訳すれば「公営住宅に住み、暴力的」ということになります。低所得の労働者階級に対する蔑称です。本書は、一言で表現すれば、サッチャー政権以降の新自由主義的な経済政策の下で、労働者階級 working class がいかに崩壊し、マルクス主義的な用語を用いれば、ルンペン・プロレタリアートに近くなったか、についてジャーナリスト的な筆致を持って跡付けています。このブログでも、『ヒルビリー・エレジー』、『アメリカを動かす「ホワイト・ワーキング・クラス」という人々』、『われらの子ども』などで、米国における同じような労働者階級の現状については取り上げて来ましたが、本書では英国における労働者階級の現状にスポットを当てています。米国における新自由主義的な経済政策運営は1981年のレーガン政権からなんですが、英国では1979年のサッチャー政権からです。標準的なエコノミストの理解とは少しズレがあるかもしれませんが、本書の主張では、いずれも、新自由主義的な経済政策により自国通貨が増価して製造業の空洞化を招くとともに、労働組合などに対する厳しい対決姿勢やあからさまな弾圧により、中流階級が就いていたメインストリームの製造業の decent job が失われ、本書の表現では、コールセンターの電話対応やそれこそスーパーのレジ打ちや清掃作業のような職しか残らなくなったとしています。そして、CHAV がさらに低所得の生活保護受給者をバッシングし、移民を敵視し、社会保障給付が削られていくばかりになり、メディアでは貧しい人々を野生動物のように観察し、さらし者にしている現状、そこに、日本でも一時流行った「自己責任」という言葉で福祉をさらに削減し、低所得者を貶めて弱者を蔑む風潮を助長している社会について考えようとしています。しかし、残念ながら、いかにして包括的な経済政策が必要か、あるいは、そういった経済政策はどういうものか、については十分な議論がありません。というか、そこまで論考が及んでいません。マルクス主義は救いにはならないんでしょうか。かつての労働組合活動のような団結した運動が消滅させられ、社会が分断され、それが差別につながり、底辺への競争や貧困の罠が社会のいろんなところに見られる中、先ほど上げた米国に関する本で要約されているような現実や本書でフォーカスしている英国の現状は、ひょっとしたら、日本の未来かもしれません。私自身は現在のアベノミクスは新自由主義的というよりも、『この経済政策が民主主義を救う』で主張されていた通り、かなりリベラル、あるいは、左翼的といっていい経済政策運営をしているように受け止めていますが、日本の将来を考える上でも重要な1冊だという気がします。

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次に、柳田辰雄[編著]『揺らぐ国際システムの中の日本』(東信堂) です。編者の柳田教授は開発経済学も含めて、経済学に軸足を置きつつ学際的な領域の研究を展開している東大教授です。奥付けの著者略歴にあるように、今世紀に入ってからJICA専門家としてインドネシア財務省に派遣されており、国家開発企画庁に派遣されていた私と任期が重なっており、私も何度かジャカルタでお会いした記憶があります。ということで、著者とタイトルにも引かれて読んでみましたが、かなり期待外れでした。本の内容としては、経済学を含めて学際的というよりは、システマティックでもなくバラバラに寄せ集めた内容と考えるべきです。2部構成となっており、第1部で国際システムの理論、第2部で国際システムの制度がタイトルとなっています。でも、特に第2部は通貨制度、貿易制度、などなど、単発で連携なく各分野の解説が並べられています。そのレベルも、偏差値が高い高校ないしは偏差値が低い大学の初学年といったところのような気がします。その昔に私が出向していた大学であれば、副読本くらいの扱いではないかという気がします。入ったばかりの1年生であっても、教員がついて授業で開設するようなレベルではなく、ヒマを見つけては自分で独習する素材ではないかという気がします。ただ、各章が短く記述されてコンパクトであり、エッセンスを手軽に理解する、というか、深い理解を求めるよりも、学際的と称して幅広く、広く浅い基礎知識を得るにはいいのかもしれません。本書の読書に対して、大きな期待は禁物です。今週の読書の中で、というか、最近にない一番のハズレでした。

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次に、岩間優希『PANA通信社と戦後日本』(人文書院) です。聞きなれない通信社名ですが、戦後1949年に「アジアの、アジア人による、アジアのための通信社」として宋徳和により香港で設立され、その後、時事通信に吸収され、今では時事通信フォトの社名になっている通信社で、設立資金がタイガーバームの創業家から出たという逸話もあるそうですが、判然とはしません。現在の業務内容からしてもフォトジャーナリズムを中心とする通信社であったことが判るんではないでしょうか。著者はジャーナリズム論を専門とする研究者ですが、学術書というカンジではなく、一般向けの教養書としてスラスラと読むことも出来ます。各章ごとに中心に据えられている人物がいて、第1章ではフォトジャーナリストの岡村昭彦にスポットが当てられています。ベトナム戦争取材による写真が有名で、その後、米国のライフ誌にも寄稿していたりして、それなりの知名度があるように思います。第2章は設立者の宋徳和からPANA通信社を任された元報道カメラマン・近藤幹雄による経営努力、また、第3章はPANA通信社を傘下に収めて「太平洋ニューズ圏」を夢見た当時の時事通信社社長であった長谷川才次の野望にスポットが当てられています。なお、岡村昭彦は経営合理化を進めた近藤社長と袂を分かってPANA通信社を離れています。しかし、読ませどころは日本国憲法制定にも影響を与えたといわれる創業者の宋徳和の生涯を描く第4章、それから、損がポールが日本軍政下で「昭南市」と称されたころに日本語教育を受けた東南アジア総局長・陳加昌を扱った第5章であろうと思います。決して日本人中心のPANA通信社史観ではなく、香港やシンガポールといった華人中心ながらも、それなりに日本を離れたアジアの大都市にフォーカスしたジャーナリズム論が活写されています。また、決して、本格的に取り上げられているわけではありませんが、我が国やアジアのジャーナリズムに大きな影響を及ぼした連合通信の消長なども興味あるところです。日本以外は華人社会中心ながら、アジアとは何か、アジアに根差したジャーナリズムとは何か、もちろん、本書ではオリンピックのメダリストを報じるのではなく、地元選手の活躍や成績を中心に報じる、という意味での地域性もあり得る可能性を示唆しつつ、本書はなかなか興味深いテーマを追っている気がします。私には専門外のテーマですので以下の日経新聞や朝日新聞の書評もご参考です。

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最後に、尾形聡彦『乱流のホワイトハウス』(岩波書店) です。著者は朝日新聞のジャーナリストであり、ホワイトハウスのブリーフィングにも出席した経験があるらしいです。ジャーナリストの舘賀から米国も前にオバマ政権と現在のトランプ政権を対比させ、トランプ政権の行く末や日本の対応のあり方なども論じています。やや一方的な印象を持ったのは、現在のトランプ政権のロシア疑惑について、オバマ政権末期に捜査が開始された、というのはまだいいとしても、ニクソン政権期のウォーターゲート事件との類似を指摘して、トランプ米国大統領の弾劾の可能性まで示唆するのは、対立政党の幹部であればまだしも、ジャーナリストとしてはやや行き過ぎた気がしなくもありませんでした。また、第2章のホワイトハウスにおける取材のインナーサークルに関する自慢話は、なかなか面白かったんですが、これだけを読んで、著者がそれなりの高齢に達している印象を持ったところ、奥付けのプロファイルを見てまだ40代だというので少しびっくりしました。ただ、ジャーナリズム論というか、取材の実態をかんがみるに、日本では公式の記者会見場での質疑もさることながら、個人的なコネクションによる裏ブリーフのような場での情報収集も重視されるのに対して、米国、特にホワイトハウスなんだろうと思いますが、公式の記者会見場でのやり取りに緊張感を持って臨み、そこでキチンとした質問をして回答を得る重要性が強調されており、まさか、この著者が裏の情報収集ルートにアクセスを持っていなかったとは思えませんから、日米の表と裏の使い分けの違いはそうなんだろうという気がしました。私自身のオバマ政権とトランプ政権に対する評価としては、本書の著者の見方にかなり近く、オバマ政権の時の国際的にオープンかつリベラルな政策の方を強く支持していますので、その政策的な対比についても本書の見方には共感できるものがありました。ただ、オバマ政権下での安全保障政策でもっとも注目すべきであるのは、私はごく初期のプラハでのスピーチであり、全文をこのブログに引用したほどですが、本書での位置づけはそれほどでもなく、やや、不満に思わないでもありません。でも、それなまだ私の専門外なので許容範囲としても、オープンでリベラルなオバマ政権と現在のトランプ政権で、もっとも大きな対比をなすのは移民政策ではなく通商政策だと私は考えています。その意味で、TPPから脱退、というか、署名前でしたので、TPPに不参加を表明したトランプ政権の政策につき、本書で何らの言及がなかったのには失望しました。

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2017年12月15日 (金)

日銀短観に見る企業マインドはまさに満月の欠けたるところもなし!

本日、日銀から12月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査から+3ポイント改善して+25を記録し、本年度2017年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比+6.3%増と上方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月日銀短観、大企業・製造業DIは5期連続改善 06年以来11年ぶり高水準
日銀が15日発表した12月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス25だった。前回9月調査(プラス22)から3ポイント改善し、2006年12月(プラス25)以来11年ぶりの高水準となった。改善は5四半期連続。好調な輸出が続く自動車関連や商品市況の回復による化学や鉄鋼・非鉄金属関連の景況感の改善が指数を押し上げた。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。12月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス24を上回った。回答期間は11月14日~12月14日で、回収基準日は11月29日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス19と伸び悩む見通し。市場予想の中央値(プラス22)を下回った。海外の政治・経済情勢の不透明感などから先行きの見方は慎重だった。
17年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=110円18銭と、実勢レートより円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス23と前回と同じだった。消費は上向きつつあるが、天候不順による対個人サービスの業況感悪化や労働需給逼迫に伴う人件費の上昇などが重荷となり伸び悩んだ。3カ月先のDIは3ポイント悪化のプラス20だった。
中小企業は製造業が5ポイント改善のプラス15、非製造業は1ポイント改善のプラス9だった。先行きはいずれも悪化した。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス19となり、前回(マイナス18)から低下した。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、1992年3月(マイナス24)以来のマイナス幅となった。
17年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比7.4%増と、市場予想の中央値(7.6%増)を下回った。9月調査(7.7%増)からは増加幅が縮小した。
大企業・製造業の販売価格判断DIはプラス1と、前回(ゼロ)から1ポイント上昇。プラスとなるのは2008年9月(プラス11)以来9年ぶり。販売価格判断DIは販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは9月調査からさらに+3ポイント改善して+25に達し、大企業非製造業については9月調査から変化なかったものの、中堅企業・中小企業では製造業・非製造業ともに業況判断DIは改善を示しています。ただ、満月が欠けて行くはじまりであるように、先行きについては産業別に見ても、規模別に見ても、かなり慎重な見方が広がっています。株価などであれば、「高所恐怖症」と呼ばれる場合もあるようです。大企業レベルの製造業と非製造業で業況感の変化方向にビミョーな違いが出た背景としては、為替の円安方向への振れと世界経済の順調な回復・拡大がさらに広がりを見せている点に求められるんではないか、と私は考えています。非製造業については、特に、7~9月期のGDP統計に典型的に現れているように、ならして見れば何ともいえないものの、足元では好調な世界経済に対比させると、我が国の内需に勢いを欠いているのも事実ですし、人手不足が影を落としやすいのも非製造業かもしれません。
先行きについては、やや慎重な見方が広がっているものの、決して悲観する必要はない、と私は受け止めています。先行きのリスクで景況感に影を落としているのは、まず第1に、わけの判らない北朝鮮リスクです。北東アジアの地政学リスクについては、何とも予想できません。第2には米国の先行きリスクです。トランプ政権の政策方向の見極めが困難であることに加え、米国連邦準備制度理事会(FED)が本格的な利上げ局面に入り、さらにイエレン議長が退任しますので、今までにない局面を迎える可能性に懸念する向きもあるかもしれません。第3には、新興国の景気拡大と裏腹な現象ながら、石油をはじめとする資源価格の上昇です。昨日、帝国データバンクが「2018年の景気見通しに対する企業の意識調査」の結果を明らかにしているところ、やはり、先行きのリスクとして、人手不足、原油や資源価格の上昇、地政学リスクなどが上げられています。このリポートについては、来週にでも詳細は日を改めて通り上げる予定です。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。特に、雇用人員については規模の小さい中堅企業・中小企業の方が大企業より採用の厳しさがうかがわれ、人手不足幅のマイナスが大きくなっています。新卒採用計画の調査項目は省略しましたが、就活は売り手市場が続くようです。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2017年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で異例の▲1.3%減という高い水準で始まったんですが、6月調査で+2.9%増、9月調査で+4.6%、12月調査で+6.3%と順調に上積みされています。上のグラフに見る通りです。日銀短観の設備投資計画は、統計のクセとして、3月調査はほぼほぼ必ず前年度比マイナスで始まり、12月調査でピークを迎え、結局、6月調査ないし9月調査の結果あたりで着地する、という実績になるような気がするんですが、人手不足や企業業績を考え合わせると、今年度の設備投資は期待してよさそうです。

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2017年12月14日 (木)

絶好調の企業マインドを示唆する日銀短観予想の取りまとめ!

明日12月15日の公表を前に、シンクタンクや金融機関などから12月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2017年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、その設備投資計画に着目しています。ただし、三菱総研だけは設備投資計画の予想を出していませんので適当です。それ以外は一部にとても長くなってしまいました。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
9月調査 (最近)+22
+23
<+4.6%>
n.a.
日本総研+23
+24
<+5.1%>
先行き、企業収益が堅調を維持するもとで、設備投資は持ち直しの動きが続く見通し。もっとも、人口減少下で国内の成長見通しが高まりにくいなか、生産能力を積極的に増強する動きは限定的。海外情勢にも不透明感が残るなか、機械投資を中心とした製造業の設備投資の力強い回復は期待しにくく、持ち直しペースは緩慢にとどまる見通し。
大和総研+22
+24
<+5.4%>
2017年度の設備投資計画(全規模全産業、含む土地、ソフトウェアと研究開発投資額は含まない)は前年度比+5.4%と、前回の9月短観(同+4.6%)から上方修正されると予想した。12月日銀短観の設備投資計画には、中小企業を中心に上方修正されるという「統計上のクセ」がある。今回は、高水準の企業収益が設備投資に対してプラスの影響を及ぼす一方で、設備稼働率が伸び悩んでいることなどを踏まえ、例年の修正パターン並みの結果になると想定した。総じてみると、短観で見る日本企業の設備投資計画は底堅い内容だと評価している。
みずほ総研+23
+23
<+5.7%>
2017年度設備投資計画(全規模・全産業)は前年比+5.7%増と、9月調査(同+4.6%)から上方修正を見込む。
製造業については、海外経済の回復やITサイクルの改善を背景に、主に半導体関連の設備投資が押し上げに寄与し、9月調査から前年比プラス幅が拡大すると予想している。ただし、設備メーカーの生産能力が需要の伸びに追いつかないことから、上方修正は小幅なものに留まるとみている。非製造業についても、オリンピックやインバウンド対応投資の継続がプラスとなるだろう。
ニッセイ基礎研+23
+24
<+5.9%>
2017年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年比5.9%増と前回調査時点の4.6%増から上方修正されると予想。例年12月調査では、中小企業を中心に計画が固まってくることで上方修正される傾向が強い。また、企業収益が好調な水準を維持していることから投資余力は十分であること、人手不足を受けて一部で省力化投資が活発化していることなどから、実勢としても堅調と言える計画になりそうだ。
ただし、事業環境の先行き不透明感が強いことや、企業の期待成長率が低迷していることが投資の抑制に働くだろう。設備投資計画は底固いものの、収益改善の割にはやや物足りない水準との評価に留まりそうだ。
第一生命経済研+23
+23
<大企業製造業+11.7%>
<大企業非製造業+4.7%>
マクロの経済動向では、景気拡大が成熟化して、設備投資の拡大へと展開している。リーマンショック以前に比べると設備投資の勢いは弱いという印象を拭えないが、短観ベースでは着実に投資は増えている。特に、中小企業では12月調査でさらに改善ペースを強める可能性がある。大企業・製造業は、すでに2桁の伸びをつけており、季節的な修正でプラス幅が小さくなってもなお2桁は維持されるだろう。経済データの中で設備投資の伸びには上振れの期待があるので、短観がそうした期待に応えられるであろうか。
また、設備判断DIでも、ここにきて不足感が強まっていれば、潜在的な投資ニーズが強まっている証拠になる。人手不足に連動して設備ニーズ、省力化ニーズが増えるという見方もある。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+24
+24
<大企業全産業+7.0%>
足元までの設備投資は持ち直し基調にある。今後も国内外の需要が持ち直していることに加え、企業の手元資金が潤沢であることや、人手不足感が強まる中で機械への投資の重要度が増すことが、国内の設備投資を押し上げるだろう。もっとも、将来に向けて国内需要の急速な拡大は見込めず、生産拠点を新興国などの消費地に近づける動きは変わらない。為替円安が定着しても、生産を国内に移管する動きは少ないだろう。
三菱総研+24
+24
<n.a.>
業況判断DI(大企業・全産業)は、+24%ポイント(9月調査から1%ポイント上昇)と、5期連続での業況改善を予想する。海外需要の持ち直しを背景に、製造業を中心とする改善を見込む。
富士通総研+23
+24
<+4.8%>
2017年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年度比4.8%と、9月調査から上方修正されると見込まれる。好調な企業収益が投資を支えており、設備投資の先行指標である機械受注、一致指標である資本財総供給とも、緩やかな増加基調を維持している。人手不足の深刻化により、省力化投資に対する企業の意欲はより一層高まっている。これに関連して、物流効率化のための投資も活発化している。さらに、IoT関連の投資需要の高まりも顕著になっている。大企業を中心に、設備投資計画は過去の平均を上回って推移しており、12月調査もその傾向が続くと予想される。中小企業も例年並みに上方修正されると見込まれる。

見れば分かると思いますが、大企業の製造業・非製造業の業況判断DI、さらに、全規模全産業の2017年度設備投資計画の前年度比です。設備投資計画は土地を含みソフトウェアを除くベースです。9月調査の短観と比較して、景況感に関しては、ほぼ横ばい圏内の動きが予想されているように見受けられますが、景況感が低下するという見方はないようです。少し前まで、というか、今年半ばくらいまで、北朝鮮を含む海外要因の不透明さに対する見方次第で、景況感の下振れの可能性もなくはなかったんですが、引き続き、北朝鮮の核やミサイルの問題は解決されていないものの、フランス大統領選挙の結果のマクロン大統領の誕生やドイツ総選挙でメルケル現首相の与党勝利で、昨年のようなBREXITやトランプ大統領勝利などの想定外の結果に対する懸念はかなり払拭されたんではないか、と私は受け止めています。繰り返しになりますが、あとは北朝鮮情勢が大きな比重を占める、ということではないかという気がします。いずれにせよ、北朝鮮情勢だけはエコノミストには予測不能です。その意味で、設備投資も同様の懸念あるものの、少なくとも国内経済要因だけは投資増の方向かという気がします。すなわち、好調な企業業績による資金的な余裕と人手不足による省力化や合理化投資の必要性が設備投資を下支えすることは確実です。
最後に、下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから全規模全産業の設備投資計画を引用しています。

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2017年12月13日 (水)

前月から伸びを示した機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から10月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比前月比+5.0%増の8509億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

機械受注5.0%増 10月、2カ月ぶりプラス
内閣府が13日発表した10月の機械受注統計によると、民間企業の設備投資の先行指標となる「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比5.0%増の8509億円となった。2カ月ぶりに増加し、製造業を中心に人手不足を補う省力化投資が活発なことを示した。
QUICKが算出する市場関係者による事前予測の中心値(3.0%増)を上回った。内閣府は「持ち直しの動きがみられる」との基調判断を前月から据え置いた。
製造業は前月比7.4%増と2カ月ぶりに増えた。17業種中12業種でプラスだった。発注者別では電気機械(20.2%増)やはん用・生産用機械(9.9%増)などの増加が目立つ。世界経済の回復を背景に、スマートフォン向けの半導体製造装置のほか、産業用ロボットへの投資が好調に推移している。外需は前月比4.9%増だった。
非製造業も前月比1.1%増と2カ月ぶりにプラス。運輸業・郵便業が26.2%増と大きく伸びた。大型の道路車両の受注があったという。卸売業・小売業からの受注も堅調だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注で前月比+3.0%でしたので、これを上回って、まずまず堅調な伸びを示したと受け止めています。ただし、記事には人手不足大作のような表現がありますが、製造業で堅調な一方で、非製造業ではそうでもないわけですので、やや疑問が残ります。少し詳しく業種別に10月の統計を見ると、製造業については、化学工業で前月比+82.1%増、あるいは、石油製品・石炭製品でも+88.9%増といった資源関連の素材業種のほか、情報通信機械の+53.9%増とか電気機械の+20.2%増などの加工業種まで、幅広い業種で増加を示している一方で、船舶と電力を除く非製造業では、引用した記事にもある通り、大型発注のあった運輸業・郵便業の+26.2%増のほかは、卸売業・小売業の+10.0%増くらいで、しかも、製造業が9月前月比▲5.1%減を上回る10月+7.4%増なのに対して、非製造業は9月▲11.1%減に及ばない10月+1.1%増ですので、明らかに製造業中心の受注増と考えるべきです。月次で変動の激しい統計ですので、もっとならしてみるべきかもしれませんが、少なくとも10月統計に関しては、国内要因の人手不足に起因した省力化・合理化投資よりも、新興国を始めとする世界経済の回復・拡大に基づく我が国からの輸出の増加に対応した投資増が中心であった、と考えるべきであろうと私は受け止めています。今後については、世界経済の先行きリスクが米国の利上げで不透明であると考えるべきでしょうし、国内の人で不足に対応する投資が、もしも10月統計に示されたように不活発と仮定すれば、あくまで総仮定すれば、ということですが、先行きの機械受注や設備投資は横ばいないし増加であるとしても緩やかな増加になる可能性が高い、と私は予想しています。ただし、繰り返しになりますが、変動の激しい統計ですので、単月での評価には限界があり、もう少しならして見る必要はあります。

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2017年12月12日 (火)

11月の企業物価(PPI)上昇率はさらにプラス幅を拡大!

本日、日銀から11月の企業物価 (PPI) が公表されています。ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月統計からやや上昇幅を拡大して+3.5%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の企業物価指数、前年比3.5%上昇、9年ぶり伸び率
日銀が12日に発表した11月の企業物価指数(2015年=100)は99.8で前年同月比3.5%上昇した。上昇は11カ月連続。上昇率は市場予想の中央値である3.3%を上回った。消費増税の影響を除くと08年10月(4.5%)以来、約9年ぶりの大きさとなった。
前月比では0.4%上昇した。品目別では、ガソリンや軽油といった石油・石炭製品が指数の上昇にもっとも寄与した。世界的な景気拡大や産油国による減産を背景にした国際原油相場の上昇が押し上げた。
農林水産物も上昇した。黒潮が大きく南に離れる「大蛇行」の発生による不漁で、シラス干しの価格が大幅に上昇。鍋用需要の高まりで牛肉や鶏卵も値上がりした。原油相場の強含みで化学製品も上昇した。
円ベースの輸出物価は前月比で0.2%上昇、前年同月比では6.8%上昇したが、上昇率は10月(それぞれ1.7%、9.7%)を下回った。中国の景気改善などを背景にした国際相場の上昇を受け、鉄くずや銅地金など金属・同製品が上昇した。普通乗用車など輸送用機器は下落した。
企業物価指数は企業間で売買するモノの価格動向を示す。公表している744品目のうち、前年同月比で上昇したのは387品目、下落は248品目となった。下落品目と上昇品目の差は139品目で、10月(確報値)の125品目から拡大した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業物価(PPI)上昇率のグラフは以下の通りです。上のパネルから順に、上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは+3.3%の上昇が予想されており、実績値の+3.5%の上昇はレンジの上限となりますので、国際商品市況における石油価格次第とはいえ、かなり高めの上昇率だった気がします。国内企業物価(PPI)の前年同月比上昇率をもう少し詳しく見ると、中国をはじめとする新興国の景気拡大に伴うとみられるエネルギーなどの上昇率が高い印象で、例えば、石油・石炭製品が+19.0%の上昇、非鉄金属が+17.2%の上昇、電力・都市ガス・水道が+10.2%の上昇、さらに、ウェイトは小さいながら、スクラップ類は+34.4%の上昇などを記録しています。ただ、輸入物価の中の原油について最近時点での前年同月比上昇率を見ると、9月+24.8%、10月+36.7%、直近の11月+19.8%などとなっており、もちろん、国際商品市況の動向次第ながら、あるいは、為替相場と合わせ技で考えた円建ての原油価格はそろそろピークアウトする可能性もあります。ただ、需要段階別の下のパネルのグラフでは、見た目は判然としないんですが、素原材料と中間財については前年同月比の上昇率が10月をピークに11月にはわずかにプラス幅を縮小している一方で、最終財については11月も依然としてまだ上昇幅が拡大しており、川上の石油価格がピークアウトした後でも川下の最終財に向けた価格上昇の波及は進むのかもしれません。

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2017年12月11日 (月)

法人企業景気予測調査に見る企業マインドはさらに改善を示す!

本日、財務省から10~12月期の法人企業景気予測調査が、それぞれ公表されています。ヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は7~9月期の+5.1の後、10~12月期にはを+6.2記録し、先行きについては、来年2018年1~3月期は+5.2に、また、4~6月期は+0.5と、それぞれプラスを維持すると見通されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業景況感2期連続プラス 10-12月
財務省と内閣府が11日発表した10~12月期の法人企業景気予測調査によると、大企業の景況感を示す景況判断指数(BSI)はプラス6.2だった。国内外における景気回復を背景に、2四半期続けてプラスとなった。財務省は企業の景況感について「緩やかな回復基調が続いている」とし、前回調査から判断を据え置いた。
指数は自社の景況が前期に比べ「上昇」したとの回答割合から「下降」の割合を引いた値。調査基準日は11月15日で、資本金1千万円以上の企業1万2948社から回答を得た。
製造業はプラス9.7だった。原材料高を理由に国内向け商品の販売価格を引き上げた食料品製造業の景況感が改善した。新型車が好調な自動車・同付属品、車やスマートフォン向けの半導体部品の需要増が続く情報通信機械器具も堅調だった。
非製造業はプラス4.5だった。原油価格の上昇を受け販売価格が上昇した商社などの景況感が改善した。
中堅企業はプラス5.3、中小企業はマイナス2.3で、ともに前回調査よりも指数は上昇した。中小企業の製造業はプラス2.0と、消費税率引き上げ前の駆け込み需要があった2014年1~3月期以来の高水準だった。
大企業による景況感の18年1~3月期の見通しは5.2、18年4~6月期は0.5とプラスを維持するものの、慎重に見る向きが多い。一方で19年3月期の設備投資見通しについて、増加すると答えた企業の割合は21.4%と、12年10~12月期に調査を開始して以来過去最高となった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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企業活動については、ハードデータの売上げや利益といった企業収益の部分が昨年年央から後半くらいに底を打ち、マインドのソフトデータについても昨年2016年10~12月期くらいから改善を示して来ていると受け止めています。そして、足元の今年2017年10~12月期について少し詳しく景況判断指数(BSI)を見ると、かなり広範な企業にマインド改善の動きが広がっているように見受けられます。すなわち、製造業・非製造業の極めて粗いながらも業種別と、大企業・中堅企業・中小企業の規模別の2☓3の6つのセルで考えて、非製造業中堅企業でわずかに7☓9月期から悪化を示したほかは、すべて改善を示しています。その非製造業中堅企業についても10~12月期のBSIの水準は+3.0とプラス圏内ですし、先ほどのセルの中でまだ水面下のマイナスは非製造業中小企業の▲3.2だけとなっています。景況感以外のBSIについては、引き続き、雇用に関する従業員数判断BSIで人手不足が明らかとなっています。すなわち、今年2017年12月末時点で、大企業が過剰に対する不足超19.5、同じく、中堅企業32.6、中小企業29.5となっていて、採用しやすい大企業よりも中堅・中小企業で人手不足感が広がっているように見受けられます。最後に、私が注目している設備投資計画は、2017年度で前年度比+3.4%増と、前回調査の+3.9%増から下方修正されましたが、引用した記事にもある通り、少なくとも大企業レベルでは来年度2018年度の設備投資を増加させると回答した企業は21.4%ととても高い比率に上っています。人手不足にも対応して、設備投資も増加する方向にあるようです。

今週金曜日の12月15日には企業マインドに関する重要な指標である日銀短観12月調査の結果が明らかにされます。ほとんどのシンクタンクから日銀短観予想が明らかにされています。現在取りまとめ中で、極めて大雑把に、景況感はわずかながらも改善を示し、設備投資計画は12月調査においては統計のクセとして、というか、その範囲くらいで上方修正される結果が多くなっているような印象です。また、日を改めて取り上げたいと思います。

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2017年12月10日 (日)

母校の恩師を偲ぶ会で京都に行く!

今年9月に母校の恩師が亡くなり、昨日土曜日12月9日に京都大学法経第7教室にて恩師を偲ぶ会が開かれ、朝早くの新幹線に乗って京都に行って来ました。御年満84歳だったそうですから、私なんぞは天寿をまっとうされた大往生、と思っていたんですが、そういった贈る言葉は聞かれませんでした。まだまだ長生きして欲しかった、という声が多かったような気がします。

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写真は上から順に、まず、京大のシンボルたる時計台です。やっぱり、上の倅の大学の時計台より立派な気がします。偲ぶ会の壇上に飾られた恩師の写真です。とてもにこやかです。最後は、みんなで三校ボート部の歌である「琵琶湖周航の歌」を6番まで熱唱しました。場所を京大キャンパスから先生宅に移動して、蔵書の一部です。歴史の先生ですので、こういった本が1万7千冊あるらしいです。蔵書の形見分けとして私がちょうだいした3冊、『藤沢周平未刊行初期短篇』(文藝春秋)、ポオ『黒猫・黄金蟲』(新潮文庫)、『河上肇評論集』(岩波文庫)です。河上教授は京都大学経済学部の学部祭に河上祭として名を留めている大先生です。『貧乏物語』が有名なんですが、目についた本書をちょうだいしました。最後に、京大前にあった自転車ナビラインだそうです。東京都下の自転車ナビマークとは名称もマークのデザインも違っています。県警ごとに違っていたりするんでしょうか。

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先週の読書はまずまず充実の経済書など計6冊!

先週はいろいろあって、昨日のブログに米国雇用統計が割り込んで読書日は1日長めだった影響もあり、また、昨日から今日にかけて母校の京都大学を往復した新幹線でのヒマ潰し読書もありで、経済書も多くて計6冊。以下の通りです。

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まず、井伊雅子ほか[編]『現代経済学の潮流 2017』(東洋経済) です。最近時点における日本経済学会の春季及び秋季の年次総会における会長講演や特別報告、さらに、パネル討論を収録した学会公式刊行物です。もう20年も発行されていて、私は今まで読もうとしなかったんですが、なぜ、急に読む気になったかというと、来年春季大会のパネル討論に参加することになりそうだからです。なかなかに光栄なことだという気もしますが、どうして今まで読もうとしなかったかというと、ハッキリいって余りに高度であるからというのが第1の理由です。判りにくい例ながら、私は少し前までフツーにゴルフをプレーしますが、トップクラスの男子ゴルファーのプレーを見ても、何の参考にもなりません。それと似たようなもんです。第2に、データや分析が細かくなり過ぎた印象もあります。STAP細胞ではありませんが、科学的な見地からはブラックボックスではなく再現可能性という見方も重要です。個票を用いた実証分析は、私もミンサー型の賃金関数を推計したりした経験もありますが、もちろん、インチキの可能性を主張するつもりはないものの、外部の人の再現可能性が極めて限られるような気がします。第3に、本書の最終章で展開されているようなエビデンス・ベースの政策立案はとても重要なことであり、政策効果を出来る限り定量的に「見える化」することは必要なんですが、その定量的に「見える化」した結果を評価する評価関数のようなもの、それがどのようなものかは私にはまだ実感ないものの、そういった評価関数のようなものの開発が立ち遅れているような気がします。まあ、定量的な「見える化」が先行するのは理解できます。そうでなければ、評価関数も出来ませんから、そこは理解するんですが、まったく評価関数の理論的な展開ないままに進んでいる現状には、少し疑問に思わないでもありません。こういった理由から、今まで最新の経済理論に触れることなくダラダラと過ごしてきたんですが、やっぱり、定年退職を前に急に思い立って勉強を始めてもダメだという気がしてきました。短時間でしょうから、パネル討論を乗り切ることを第一義に考えたいと思います。

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次に、高島正憲『経済成長の日本史』(名古屋大学出版会) です。著者は東大社研のポスドク研究者であり、出版社からも理解できる通り、かなり純粋な学術書と考えるべきです。といいつつも、実は、私は京都大学経済学部の学生のころは西洋経済史のゼミに所属していましたので、私にとってはそれなりに馴染みのある分野です。しかし、本書では著者はアンガス・マディソン教授の向こうを張って、超長期の日本経済のGDPを推計しています。古代といえる730年からの推計です。というのも、マディソン推計は、さすがに、そこまで訴求しておらず、しかも、日本の場合はベンチマークがかなり粗くなっていて、本書のような研究も存在価値あるといえます。本書は3部構成を取っており、第1部では農業生産を推計し、第2部では人口の推移を推計し、最後の第3部では農業以外の生産を推計するとともに、GDPとして体系的に推計を進めています。人口データも推計していますので、1人当りのGDPが求められる結果となっています。いずれにせよ、マディソン推計でも、中世以前については、いわゆる生存最低ラインといわれる1人当りGDPで年間400ドル、これは米ドルではなく1990年価格のゲアリー・ケイミス国際ドル単位なんですが、その年間400ドルの生存最低限を少し上回る水準で、かなり恣意的な推計になっている恐れも感じられます。本書によす推計では、マディソン推計をやや上回る1人当りGDPげ推計されている一方で、ポメランツ教授のいう大分岐については、日英間で1人当りGDPを見る限り、かなり早い時期から分岐が生じていた可能性が示唆されています。ただ、本書では延々と根拠とし得る古文書の計数を紐解きつつ、数量的な積み上げによる推計を、方法論とともに詳細に展開しているわけで、私の求めるものは本書の方法論では完全にスコープの外になってしまうんですが、その推計されたGDPの背景となる経済社会の動向についてはまったく無視されています。すなわち、飢饉でGDPが大きく減少したとか、農地の開墾が進んで農業生産が伸びたとか、もちろん、経済史上の大きな論点であるイングランドにおいて産業革命が始まった謎も解明されません。でも、それはそれで、こういった数量的な把握に基づく経済史の研究も重要であろうということは理解すべきです。

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次に、中島真志『アフター・ビットコイン』(新潮社) です。著者は、日銀から大学の研究者に転じていて、要するにそれくらいの年齢だということかと思います。本書の内容を簡単に取りまとめると、ビットコインはもう終わった過去のことだが、ビットコインの記録方式であるブッロク・チェーン=分散型台帳技術は金融にとどまらず、いろいろな分野で大きな変化をもたらす、ということかと思います。ビットコインについては、私もそろそろブームが終了し、終焉の時期を迎えている気はしますが、なくなりはしないと思います。何らかの新機軸が現れた場合、何らかの合法的あるいは非合法的な「お得感」により普及の基礎が与えられる場合があります。家庭用ビデオの場合はポルノでしたし、Airbnbのような民泊の場合は税逃れだった気がします。ビットコインについてはシルクロードのようなご禁制品の売買とか、もっと大がかりにはマネー・ロンダリングだったわけで、現在、ビデオでポルノ以外も見るように、ビットコインでの支払い方法は何らかの形で残ることとは思いますが、現行の現金による支払方法に取って代わることはなかろうと私も思います。他方、ブロック・チェーンは確かにうまく使えばさらに応用可能な気もします。他方で、私は技術的な内容について詳しくないながら、経済社会的な検討が本書では不十分な気もします。要するに、やや楽観的に明るいブロック・チェーンの未来を提示するだけで、その陰の部分に対しては目を閉じさせる内容化という気がします。すなわち、現在の銀行をはじめとする金融仲介機能を基にしたビジネス・モデルが、大げさにいえば、一気に崩壊する可能性を無視している気がします。ブロック・チェーンを用いれば海外送金の手数料などが安くできる、ということは、金融仲介機関の生産性がやたらと上がる、逆から見て、現在の規模の経営体は不要になる可能性が高い、と覚悟すべきです。おそらく、暗黙の裡に著者はブロック・チェーンを用いた金融仲介は現状の銀行などの機関が行うことを想定しているように見受けられますが、それによって銀行は生き残るかもしれませんが、企業規模は大きく縮小する可能性があることは忘れるべきではありません。ドラマの『陸王』などの池井戸作品に登場する一部の日本の銀行マンは、融資などで目利きではないような描かれ方をしていますが、そういったビジネス・モデルが一気に崩壊する可能性もあるわけです。

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次に、鯨岡仁『日銀と政治』(朝日新聞出版) です。作者はいわゆる新聞記者で、日経新聞や朝日新聞、また、分野も政治部や経済部など幅広いご活躍のようです。本書では、1990年代日本経済のバブル経済の崩壊やデフレに入ったあたりから最近時点までをスコープに、特に1998年の日銀法改正からの時期を重視して、経済統計ではなくジャーナリストらしく取材を基にした日銀と政治との関係をあぶり出そうと試みています。日銀の記者クラブ在籍経験があるようですから、いくぶんなりとも、日銀理論に親しみを覚える、というか、極端な場合は洗脳まがいの影響を受けているのではないかと恐れながら読み進んだんですが、さすがにそんなことはなく、もうそんなジャーナリストやエコノミストは一握りなんだろうと思います。ということで、私のように金融政策の部外者ながら、決して、無関係ではない官庁エコノミストからすれば、それなりに興味深い内幕者だという気がします。金融政策、というか、中央銀行の独立という考え方については、先進国ではほぼほぼ確立したと受け止められていますが、物価に責任を持つ中央銀行の金融政策は、当然にして、国民生活と深い関わりを持つわけですので、国民の選好からは逃れることは出来ないと考えるべきです。すなわち、中央銀行の独立というのは、独裁政権におけるものではなく、民主主義下の独立であり、選挙によって表明された国民の選好に無関係ではあり得ません。その意味で、中央銀行の独立を支えるのはその正しい政策決定・遂行であり、白川総裁のころまでの旧来の日銀理論に凝り固まって、国民生活を無視して政策の裁量性だけを尊重させ続けた日銀は独立するに値しない存在だったと私は考えています。そして、2012年12月の総選挙の争点であったように、物価目標を明らかに国民が選んだのですから、政策目標はそれで決まりなわけです。しかし、苦しいところは、現在の副総裁の岩田教授がその昔に主張していた批判は、それはそれで正しかったと私は考えていますが、他方、岩田副総裁も含む執行部で実行している金融政策によっても、サッパリ、物価は上がらず、まったくインフレ目標が達成されない点です。白い日銀理論ではなく、黒い日銀理論でもなく、第3の政策が必要なんでしょうか。私はリフレ派として現在の黒い日銀の政策が正しいと考え続けているだけに、やや当惑しているというのが正直なところです。このままでは日銀が国債をすべて買い切っても物価が上がらないのではないかと大きく心配しています。最後に、300ページの少し前あたりから、現在の黒田総裁以下の日銀執行部を選任する際の候補者が個人名で上げられていて、その個々人について、何がどうだから適任とか、ダメ、とかが余りにもあからさまに記述されています。私は少しびっくりしてしまいました。綿密な取材に基づくものでしょうから、その真実性について疑問を差し挟むことは控えますが、現任の日銀執行部人事であり、もう少し時間を置くとかの配慮はできなかったものでしょうか?

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次に、ジャック・アタリ『2030年ジャック・アタリの未来予測』(プレジデント社) です。著者はフランスの生んだ鬼才であり、トランプ米国大統領の誕生を予言し、マクロン仏大統領を政界に押し上げた、ともいわれています。本書のフランス語の原題は Vivement après-demain であり、訳者あとがきのよれば、「明後日を生き生きと」という意味だそうです。2016年の出版です。ということで、タイトル通りに2030年の予想です。書かれた時点から考えると、約15年後の予想なわけで、著者が1943年生まれだそうですから、80代も後半に達していて、著者ご本人の2030年時点での生死は何ともいえないところかという気がします。それはともかく、国家の運営から個人の生き方まで、かなり破天荒な中身、つまり、ご高齢者の放談に属する内容も含めて、かなり面白かったと受け止めています。まあ、要するに、15年後には何でもアリということなんだろうと思います。2030年ですから、カーツワイルの予言する2045年のシンギュラリティのかなり前なんですが、私が感じた大きな本書の特徴のひとつは、AIやロボットによる労働の代替を含めて、かなり大きなイノベーションを予言している点だという気がします。しかし、その上で、人口動態=高齢化、地球環境問題や特に水資源不足、経済の停滞、経済的不平等の進行、金融システムの脆弱性問題、果ては、民主主義の後退からカルトと原理主義の台頭、さらに、怒りや激怒をモチーフ新たな世界規模の戦争までを可能性として予言しています。これだけ悲観的な予想をいっぱい並べたら、ひょっとしたら、どれかが当たるかもしれない、と現実主義者で正直な人なら感じてしまうかもしれません。ただし、最後の第4章では生死観まで取り上げて、一気に宗教家のような言説を展開し、私のような単純な読者を煙に巻こうかということなんだろうか、とよからぬ想像すら働かせてしまいます。たしかに、いろいろと悲観的な予言を並べる一方で、それを最終章ではひっくり返して見せ、アタリ一流の「未来は変えられる」みたいな、特に根拠ない楽観論を展開し、悲観論と楽観論のバランスを取る、というよりは、最初に書いた通りに、何でもアリな未来をご高齢者の放談めいて書き連ねているような気もします。おそらく、読者によって、そのポジションによって受け取り方が違う気がします。どうとでも読める未来の予言です。

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最後に、木村泰司『西洋美術史』(ダイヤモンド社) です。著者は、美術評論家なのか、西洋美術史家なのか、私にはよく判りません。米国カリフォルニア大学バークレー校で美術史学士号を取得の後、ロンドンにてサザビーズの美術教養講座にて WORKS OF ART を修了したとされていますが、専門外にてよく判りません。本書は4部構成となっており、第1部では古典古代のギリシア・ローマ時代から始まって、宗教の発生や神がいかにして生まれたかについて美術との関係を探り、どうして裸体が彫刻に残されたのかについてなどを開設しています。第2部ではキリスト教の影響の下で、欧州における絵画の発展を跡付けています。ルネッサンスからの文芸復興、そして、カラバッジオが登場し絵画の世界に革命を興します。第3部では絶対王政期からナポレオン期のフランスに着目し、イタリアからフランスに美術の中心がどうして移ったのかを考察しています。そして、第4部では産業革命により文化的な後進国であったイングランドないし英国において美術的な反撃がどのようになされたか、印象派が受け入れられなかった理由、米国マネーが美術界発展に寄与した波形、などなどにつき論を進めています。常識的に知っている内容も少なくないんですが、系統的に取りまとめてくれているのは有り難い限りです。芸術分野としては、ランガーなどの説に従えば、絵画や彫刻などの本書の守備範囲である美術のほか、ノーベル賞の対象にもなっている文学、いうまでもなく音楽、そして、舞踏の4分野が想定されています。どうしても鑑賞に時間がかかる音楽や文学と違って、美術は考えようによっては一瞬で鑑賞が終わりますから、それだけ延々と蘊蓄を傾ける時間があるともいえます。本書で一貫して主張している、感性で見るのではなく、理性で読む美術を身につけるのも国際はビジネスマンの嗜みかもしれません。

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2017年12月 9日 (土)

米国雇用統計は堅調な雇用の伸びを示し来週の利上げは確定か?

本日、米国労働省から11月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+228千人増と、市場の事前コンセンサスだった+200千人弱くらいの増加という予想を超えて、先々月の雇用統計に大きな影響を与えたハリケーンの影響からも完全に脱して正常化を示しています。他方、失業率は前月と同じ4.1%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、長くなるのを覚悟の上で、Los Angeles Times のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

Beating expectations, U.S employers add 228,000 jobs; unemployment rate stays 4.1%
In the latest indication that the U.S. economy remains on solid footing, employers in the U.S. added a robust 228,000 new jobs last month and the nation's unemployment rate held steady at a 17-year low of 4.1%.
The Labor Department's report Friday cements expectations that the Federal Reserve will nudge up interest rates next week, and could set the stage for a quickening of rate hikes next year, especially if the Republican tax cuts take effect and add fuel to short-term economic activity.
Average wage gains picked up slightly in November from the prior month, but nonetheless remained at a mediocre 2.5% annual rate of increase seen in recent years — despite hopes that the tightening labor market would generate faster pay increases.
Job growth in November exceeded forecasts from many analysts who were looking for an increase averaging about 195,000. Manufacturing had another strong month of hiring, as did business and professional services. The construction industry and healthcare services also had a good month. Retailers added a middling amount of jobs.
Last month's payroll gains followed an increase of 244,000 jobs in October. Both months' numbers were likely inflated somewhat, making up for job growth that had plunged in September because of the hurricanes in Texas and Florida.
With the November statistics, monthly job growth has averaged 170,000 the last three months and 174,000 for all of this year. That is down from the 187,000 average gains per month in 2016, but still a healthy rate of growth that, if it continues, will likely pull more people into the labor force and push down the jobless rate.

長くなりましたが、金融政策動向も含めて、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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米国の非農業部門雇用者数は、9月のハリケーンの影響で少し撹乱されましたが、先月の統計でジャンプし、今月の統計ではほぼほぼ正常化したんではないかと見られています。繰り返しになりますが、市場の事前コンセンサスでは+195千人増くらいを予想していたようなんですが、これを上回った雇用の堅調さが示されています。従って、来週12~13日に開催される米国連邦準備制度理事会(FED)の公開市場委員会(FOMC)では利上げが実施されることがほぼ確実となりました。9月のFOMCでは2018年中も3回の利上げが示唆されていましたが、引用した記事にもある通り、議会で共和党が進めている法人減税がさらなる景気拡大効果を発揮するようであれば、利上げのペースが速まる可能性もあります。ただ、来年2月に退任するイエレン議長の後任のパウエル新議長は、物価動向次第では利上げペースを緩やかにすることも視野に入れているといわれており、いろいろな条件次第で米国の利上げペースは左右されそうです。

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最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、底ばい状態を脱して少し上向きに転じつつも、もう一段の加速が見られないと考えられてきて、引用した記事でも "mediocre" と表現されているところですが、それでも、11月は前年同月比で+2.5%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、物価上昇を上回る賃金上昇が続いているわけですから、生産性の向上で賃金上昇を吸収して物価にそのまま波及させるには至っていないとはいえ、金融政策の発動が必要とされる場面なのかもしれません。

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2017年12月 8日 (金)

堅調な成長を示す2次QEとついでながらの景気ウォッチャーと毎月勤労統計と経常収支!

本日、内閣府から7~9月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.6%、年率では+2.5%を記録しました。1次QEから設備投資を中心に上方修正されたことから、潜在成長率をかなり超えた高成長といえます。ただ、4~6月期と違って内需の寄与よりも外需の寄与が大きい成長となっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

GDP年率2.5%増に上方修正 7-9月改定値、設備投資・在庫が寄与
内閣府が8日発表した2017年7~9月期の国内総生産(GDP)改定値の伸び率は物価変動を除いた実質で前期比0.6%増、年率換算では2.5%増と、速報値(前期比0.3%増、年率1.4%増)から上方修正した。設備投資の上振れや原材料在庫の増加が寄与した。QUICKが4日時点でまとめた民間予測の中央値(前期比0.4%増、年率1.5%増)を上回った。
実質成長率は7四半期連続の増加。内閣府は「景気の緩やかな拡張が続いている」(経済社会総合研究所)と指摘した。
設備投資は前期比1.1%増と、速報値の0.2%増を大幅に上回った。1日発表の法人企業統計で、宿泊などサービス業に加え金融機関などで投資が伸び、改定値の上方修正に貢献した。民間在庫の寄与度は0.4%と、速報値(0.2%)を上回った。石油化学関連の原材料や鋼材といった資材在庫の積み増しが目立ったようだ。
このほかの内需項目は、個人消費が速報値と同じ前期比0.5%減、住宅投資が1.0%減(同0.9%減)、公共投資が2.4%減(同2.5%減)だった。
輸出は前期比1.5%増と速報値と同じで、輸出から輸入を差し引いた外需の実質GDP改定値への寄与度もプラス0.5ポイントと速報値から変わらなかった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増(速報値は0.6%増)、年率で3.2%増(2.5%増)となった。総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは速報値と同じ前年同期比プラス0.1だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2016/7-92016/10-122017/1-32017/4-62017/7-9
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.2+0.3+0.4+0.7+0.3+0.6
民間消費+0.4+0.1+0.4+0.9▲0.5▲0.5
民間住宅+3.0+0.2+0.9+1.3▲0.9▲1.0
民間設備▲0.2+1.5+0.2+1.2+0.2+1.1
民間在庫 *(▲0.5)(▲0.1)(▲0.1)(▲0.0)(+0.2)(+0.4)
公的需要+0.4▲0.7+0.2+1.1▲0.6▲0.5
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.0)(+0.3)(+1.0)(▲0.2)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.3)(+0.3)(+0.1)(▲0.2)(+0.5)(+0.5)
輸出+2.1+3.0+1.9▲0.1+1.5+1.5
輸入+0.1+1.3+1.3+1.5▲1.6▲1.6
国内総所得 (GDI)+0.5+0.0+0.2▲0.1+0.4+0.7
国民総所得 (GNI)▲0.1+0.1+0.2+0.9+0.6+0.8
名目GDP▲0.1+0.5+0.1+0.8+0.6+0.8
雇用者報酬+1.1▲0.3+0.2+1.0+0.5+0.7
GDPデフレータ▲0.1▲0.1▲0.9▲0.4+0.1+0.1
内需デフレータ▲0.8▲0.4▲0.0+0.3+0.5+0.5

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された7~9月期の最新データでは、前期比成長率が7四半期連続でプラスを示し、黒い外需(純輸出)と灰色の在庫が大きなプラスの寄与を、赤い消費がマイナスを、それぞれ示しているのが見て取れます。

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ということで、引用した記事にもありますし、一昨日の1次QE予想でも取り上げましたが、7~9月期2次QEでは1次QEから小幅上昇改定が予想されていたところ、統計が公表されてみると、かなり大幅な上方改定となりました。季節調整済みの前期比で見て、設備投資が1次QEの+0.2%増から2次QEでは+1.1%増に大きく上方改定されましたので、設備投資の寄与だけで+0.2%の成長率押し上げがなされたことになります。加えて、在庫の寄与がやはり1次QEから2次QEに向けて+0.2%の上方改定でしたので、国内需要の寄与度が1次QEの▲0.2%から2次QEでは+0.1%に+0.3%ポイントのスイングを見せました。他方、外需項目の輸出と輸入は伸び率も寄与度も1次QEから2次QEへの変更はほとんどありませんでした。基本的には、1次QEから景気判断として変更すべきポイントはないと私は受け止めており、引き続き、少し目先の先行きも含めて、日本経済は緩やかな回復ないし拡大を続けているものと考えるべきです。ただ、上方修正の大きな需要項目である設備投資と在庫をもう少し詳しく見ると、形態別固定資本形成のうち、特に季節調整済みの系列の前期比で見て伸びが大きかったのは、建物・構築物と輸送機械を除くその他の機械設備等が+1.1%、さらに、知的財産生産物が+0.8%となっています。新たに設備投資に加えられるようになったR&D やソフトウェアなど知的財産生産物への投資が増加しているのが見て取れます。さらに、在庫がプラスに上振れしたのは、評価の難しいところかもしれません。単純には、前向きの営業姿勢であり、売上げの増加に対応した在庫増だと見なすことも出来ますが、意図せざる在庫増の可能性も否定できません。ただ、GDPへの寄与度+0.4%を示した在庫変動を詳細に見ると、原材料在庫が+0.2%、仕掛品在庫が+0.0%、製品在庫と流通品在庫がともに+0.1%となっていて、消費の減退に対応した売れ残りではなさそうな気もします。
なお、1次QE公表の際にも同じことを書いたように記憶していますが、現在のアベノミクスを批判しようという意図があれば、4~6月期の消費をはじめとする内需主導成長が7~9月期には続かずに外需主導になった、と批判すればいいわけですし、逆に、アベノミクスを擁護しようとすれば、4~6月期と7~9月期をならして見れば順調な成長経路に乗っている、ということになるんではないかという気がします。ですから、何とでも評価できそうです。しかし、特にボリュームの観点から注目すべき消費についてもう少し詳しく見ると、1人当たりの統計で見て賃金上昇が見られないものの、正規雇用をはじめとして量的な雇用の増加があることから、マイクロな個人単位の賃上げなくてもマクロな雇用者所得の増加は観察されており、決して消費者マインドは悪くないことも考え合わせると、天候要因ほかの特殊要因がなくなれば消費は回復するものと考えています。何度か繰り返しましたが、消費が停滞しているのは所得が伸びていないのが原因であり、年金制度などの将来不安ではないと私は考えています。ただし、消費を財別にさらに詳細に見ると、耐久財消費が7~9月期には前期比でマイナスに転じていて、消費増税やエコカー減税、家電エコポイントなどで攪乱された耐久消費財の買い替えサイクルの復活が早くも終了した可能性を示唆する見方も出ています。今後の動向が気がかりです。

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最後に、GDP統計以外の政府経済指標に目を転ずると、内閣府から11月の景気ウォッチャーが、また、厚生労働省から10月の毎月勤労統計が、さらに、財務省から10月の経常収支が、本日、それぞれ公表されています。いつものグラフは上の通りであり、上のパネルから順に、景気ウォッチャーの現状判断DIと先行き判断DI、毎月勤労統計の賃金のうち季節調整していない原系列の前年同月比上昇率と季節調整済みの系列、最後は経常収支の棒グラフとその内訳の積上げ棒グラフです。各統計のヘッドラインだけ簡単に取りまとめると、景気ウォッチャーの11月の現状判断DIは、季節調整済みの系列で見て前月差+2.9ポイント上昇の55.1とさらに上昇を続けています。毎月勤労統計の実質賃金指数のうち現金給与総額は、季節調整していない原系列で見て前年同月比で+0.2%の増加を示しています。経常収支は季節調整していない原系列の統計で2兆1764億円の黒字を計上し、黒字は40か月連続を記録しています。

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2017年12月 7日 (木)

景気動向指数に見る現在の景気拡大はいざなぎ景気を越えて戦後最長に迫るか?

本日、内閣府から10月の景気動向指数が公表されています。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比▲0.4ポイント下降して106.1を、CI一致指数は+0.3ポイント上昇して116.5を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数0.3ポイント改善 10月も「改善」
内閣府が7日発表した10月の景気動向指数(2010年=100、CI)によると、景気の現状を示す一致指数は前月より0.3ポイント上がり、116.5となった。2カ月ぶりに上昇した。内閣府は一致指数からみた基調判断は「改善を示している」として据え置いた。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出し、月ごとの景気変動の大きさやテンポを示す。
一致指数を構成する指標で、前月と比較できる7つの指標のうち、4つが改善した。有効求人倍率の改善が全体を大きく押し上げたほか、卸売業の商業販売額も堅調だった。生産は自動車部品や半導体が増えた。
数カ月先の情勢を示す先行指数は0.4ポイント低下の106.1となった。低下は2カ月連続。最終需要財在庫率指数など企業の在庫を示す指標が悪化した。台風の影響で客足が悪く、消費者態度指数も悪化した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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CI一致指数に対する寄与度で大きかった項目をあげると、プラス寄与では有効求人倍率(除学卒)、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)、生産指数(鉱工業)が上げられており、逆にマイナス寄与では商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数、耐久消費財出荷指数となっています。CI先行指数のマイナス寄与では鉱工業用生産財在庫率指数と最終需要財在庫率指数の絶対とが大きくなっています。CI先行指数こそ下降しましたが、3か月後方移動平均は5か月連続の上昇を示していますし、CI一致地数・先行指数とも7か月後方移動平均は、何と、ともに15か月連続で上昇しています。少なくとも、10月より前に景気の山があったとは考えられませんから、現在の景気拡大は59か月に及ぶことになり、高度成長期のいざなぎ景気を超えたことは明らかであろうと私は受け止めています。なお、いざなぎ景気は1965年11月から1970年7月まで57か月間続いています。また、戦後最長の景気拡大期間は米国のサブプライム・バブルに対応した期間であり、2002年1月を景気の底とし、2002年2月から2008年2月の山まで73か月間続いており、単純に計算すれば、さ来年2019年1月まで現在の景気拡大が続けば74か月に達するので、これを抜くこととなります。「来年の話をすると、鬼が笑う」とはよくいったもので、やや気の早いお話かもしれません。

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2017年12月 6日 (水)

明後日公表予定の7-9月期GDP統計2次QEの予想やいかに?

先週金曜日の法人企業統計などで、ほぼ必要な統計が出そろい、明後日の12月8日に7~9月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の10~12月期から先の景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に取り上げているシンクタンクはみずほ総研だけだったものの、第一生命経済研でも先行きについては軽く取り上げられていました。しかしながら、何分、2次QEですので、2~3ページのアッサリしたリポートも多く、法人企業統計のついでに2次QEがくっついているのもあります。いずれにせよ、より詳細な情報にご興味ある向きは一番左列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE+0.3%
(+1.4%)
n.a.
日本総研+0.4%
(+1.5%)
7~9月期の実質GDP(2次QE)は、公共投資、設備投資は大きく変わらないものの、在庫変動が小幅上方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率+1.5%(前期比+0.4%)と1次QE(前期比年率+1.4%、前期比+0.3%)から小幅上方修正される見込み。
大和総研+0.4%
(+1.6%)
7-9月期GDP二次速報(12月8日公表予定)では、実質GDP成長率が前期比年+1.6%(一次速報: 同+1.4%)と、一次速報から上方修正されると予想する。
みずほ総研+0.5%
(+1.9%)
10~12月期以降を展望すると、海外経済の回復を背景に輸出の増勢が続くとともに、内需も再び増加基調に復することで、日本経済は緩やかな回復基調を維持するとみている。項目別にみると、輸出は、データセンター向け半導体需要の堅調さに加えて、新型iPhone向けの部品供給が押し上げ要因となるだろう。また、米国のハリケーン被害からの復興需要が、自動車輸出などの上振れにつながる可能性もある。設備投資は、五輪関係や都市再開発関連の案件が進捗すること、人手不足の深刻化を背景に省力化・効率化投資の積み増しが見込まれることから、回復基調に復するだろう。個人消費については、株高などを背景に消費者マインドが改善していること、生鮮食品の価格が10月に入ってから落ち着いてきたことなどがプラスに働くだろう。天候要因による振れを伴いつつも、個人消費は緩やかに増加するとみられる。
海外のリスク要因に目を向けると、中国では、金融市場・住宅市場引締め策の影響などを巡って依然不確実性が高く、景気の下振れリスクとして引き続き注意が必要だ。また、北朝鮮を巡る地政学リスクは長期化が見込まれるため、今後の米朝間の動きには目を配る必要があろう。
ニッセイ基礎研+0.4%
(+1.5%)
12/8公表予定の17年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.4%(前期比年率1.5%)となり、1次速報の前期比0.3%(前期比年率1.4%)から若干上方修正されると予測する。
第一生命経済研+0.4%
(+1.5%)
一応上方修正ではあるが、修正幅は僅かなものにとどまるとみられ、1次速報から景気認識の修正を迫るような内容にはならないだろう。個人消費が落ち込む一方、外需が成長率を押し上げて潜在成長率を上回る成長を確保という構図にも変化はない。基本的には、4-6月期の「個人消費が大きく増加、輸出が足踏み」という動きの反動が出たものと思われ、4-6月期と7-9月期は均してみた方が良い。基調としてみれば景気は着実な回復傾向にあると判断できる。
先行きについても、世界経済の回復を背景に輸出の増加傾向が続くことに加え、企業収益の増加を受けて設備投資も増加が期待できる。景気を取り巻く環境は良好であり、景気は今後も着実な改善を続ける可能性が高い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+0.3%
(+1.3%)
12月8日に内閣府から公表される2017年7~9月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比+0.3%(年率換算+1.3%)と1次速報値の同+0.3%(同+1.4%)からわずかに下方修正される見込みである。
三菱総研+0.3%
(+1.1%)
2017年7-9月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.3%(年率+1.1%)と、1次速報値(同+0.3%(年率+1.4%))から小幅下方修正を予測する。

ということで、三菱系のシンクタンク2社を例外として、取り上げたすべての機関が2次QEでは1次QEから上方修正されると予想しています。ただ、下方修正の三菱系シンクタンク2社も含めて、2次QEですので修正幅は極めて小幅です。大雑把に+1%台半ばから後半の成長率であり、前期比年率で見て、取り上げた機関のレンジでは最低でも三菱総研の+1.1%であり、+2%近い成長率予想を示す機関もあります。ですから、少なくとも、我が国の潜在成長率は超えたまずまずの高成長と私は受け止めています。しかも、サンプルは少ないものの、足元の10~12月期以降も順調な我が国経済の回復・拡大を見込んでいます。世界経済の回復・拡大とともに輸出が増加を続けるでしょうし、耐久消費財買い替えサイクルの正常化から消費も緩やかに増加する気配を見せ始めていますし、さすがにそろそろ人手不足や企業収益を背景に設備投資も増加の勢いを増すんではないかと期待していますから、我が国の景気を取り巻く環境は引き続き改善を示していると考えるべきです。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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2017年12月 5日 (火)

SMBCコンサルティングによる今年2017年ヒット商品番付やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の11月30日にSMBCコンサルティングから今年2017年ヒット商品番付が明らかにされています。

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上の番付画像は、SMBCコンサルティングのサイトから引用しています。
東西の横綱はSNSからのヒット商品であり、大関もゲーム機とスマホですから、まあ、それなりにハイテク製品といえます。小結もそうです。でも、さすがに前頭に入るとローテク製品も少なくなく、我が職場で一時的に流行ったハンドスピナーなどもそうかもしれません。青色食品の中に、スペインから輸入されている青ワインgikも含まれるような気がするんですが、なぜかスペイン語なのに「ジク」と読ませています。スペイン語であれば「ヒク」ではないかと思いますが、いずれにせよ、私はそれほどお酒はたしなまないですし、かなりお高いワインなので手が出ずにいます。私が飲むのは主として外交官として滞在したチリのワインです。私が駐在していたころから日本への輸出が始まったと記憶しています。そのころは高級品も試飲させていただきましたが、今飲むのはボトル1本で数百円ほどのワインが中心です。

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2017年12月 4日 (月)

消費者態度指数に見る消費者マインドは11月統計でさらに改善を示す!

本日、内閣府から11月の消費者態度指数が公表されています。前月から+0.4ポイント上昇し44.9を記録しています。統計作成官庁の内閣府では基調判断を「持ち直している」で据え置いています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の消費者心理、0.4ポイント改善 内閣府調査
内閣府が4日発表した11月の消費動向調査によると、消費者の心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は44.9となり、前月を0.4ポイント上回った。3カ月連続で改善しており、東京五輪開催が決まった2013年9月以来、4年2カ月ぶりの高さだ。株高による資産増や雇用環境の改善を好感した消費者が多く、心理の改善につながった。
消費者態度指数は「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」の4項目について、今後半年間に良くなるかどうかを聞いて算出する。調査基準日は11月15日だった。内閣府は基調判断を「持ち直している」として、前月から据え置いた。
11月は指数を構成する4項目全てが上昇した。目立ったのは雇用と収入に関する項目で「収入の増え方」が0.5ポイント上昇して43.0だったほか、「雇用環境」が0.6ポイント上昇し49.3だった。意識調査と同時に調べている「資産価値」は46.8と前月から1.4ポイント上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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最新月11月の動向を前月差でみると、「雇用環境」が+0.6ポイント上昇し49.3、「収入の増え方」が+0.5ポイント上昇し43.0、「耐久消費財の買い時判断」が+0.4ポイント上昇し44.0、「暮らし向き」が+0.2ポイント上昇し43.2となっています。雇用と収入が平均以上に改善した一方で、ここは理解に苦しむところなんですが、暮らし向きが平均より改善幅が小さくなっています。ひとつのあり得る解釈としては、仕事や収入はよくなっているものの、物価が上昇して暮しは厳しい、というものですが、現状の消費者物価では、特に生鮮食品を含めたヘッドライン物価の上昇率はそれほど高くなく、統計と実感の差がどこからか出ているようで、やや不思議な気がします。
基調判断は「持ち直し」で据え置かれていますが、私自身は、現状の堅調な消費者マインドは半分くらいは株高で支えられていると考えています。ですから、株価が不安定、というか、もしもサステイナブルでなければ、ひょっとしたら、いくぶんなりとも消費者マインドも影響を受ける可能性があるものと覚悟しておく必要あるかもしれません。でも、このマインドをもって、年末ボーナスがそれなりに出れば、年末商戦はそれなりの売行きになるものと期待しています。

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2017年12月 3日 (日)

今年の新語・流行語大賞は「インスタ映え」と「忖度」!

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さる12月1日に今年の新語・流行語大賞の発表があり、「インスタ映え」と「忖度」に大賞が授賞されました。まあ、大方の予想通りではないでしょうか。私は「ポストトゥルース」がいいと思ったんですが、「ポスト真実」ではなく、「フェイクニュース」の方がトップテンに入っています。また、今年、私の職場では、ハンドスピナーがちょっとした人気だったんですが、トップテン入りは逃しました。やっぱり、ハンドスピナーはおもちゃであって、新語・流行語ではなさそうな気がします。

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2017年12月 2日 (土)

今週の読書は一部に読み飛ばした本もあって計8冊!

今週は、なぜか、大量に借りてしまって、純粋な経済書のようなものは少ないんですが、社会学的あるいは社会科学的な観点から経済を見たものが何点かあります。その他、専門外のノンフィクションとかエッセイは読み飛ばしてしまったものも含まれています。以下の通り計8冊です。もっとも、8冊とはいっても、新書と文庫で3冊に上りますから、新刊の単行本ベースでは5冊、ということになるのかもしれません。いずれにせよ、来週は少しペースダウンする予定ですが、米国経済統計のために営業日ならぬ読書日が1日多そうですので、それなりに読むかもしれません。

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まず、ライアン・エイヴェント『デジタルエコノミーはいかにして道を誤るか』(東洋経済) です。著者は米国生まれながら英国「エコノミスト誌」の編集者であるジャーナリストです。英語の原題は Wealth of Humans であり、アダム・スミスの『国富論』のもじりのつもりかもしれません。2016年の出版です。邦訳タイトルで気になったのは、著者は決してデジタルエコノミーが道を誤る、とは主張していない点です。ただ、かなり希少性を低下せて来た高等教育などの教育投資ではなく、振舞い方の総体としてのソーシャル・キャピタルのソフトな役割を重視し、また、デジタルエコミーの必然的な帰結かどうかは別の議論としても、格差や不平等の拡大がもたらされる、とは主張しているような気がします。スキル偏向型の技術進歩の結果として、ITを活用するごく一部のエリートは豊かになるが、ITで代替される圧倒的多数の労働者は豊かにならない、どころか、職を失う可能性まであるわけです。そのための一方策として、ベーシックインカムにチラリと言及されています。ジャーナリストらしく、取材の結果も含めて現状分析から要因を分解し、各種の懸念材料を並べた後で、最後に、将来展望という4部構成を取っています。特に印象的なのは、高等教育はもちろん、職業訓練なども含めて、いわゆる人的資本をフォーマルに形成する「教育」の役割については、かなり著者が懐疑的な点です。従来から、マシンとの競争に際しては人的資本の蓄積が提唱される場合が多かったんですが、まあ、コトここに来てはムダということなのかもしれません。そうではなく、マナーに近い印象を受けたソーシャルキャピタルを振舞い型の総体として定義し直し、そういった生産現場に必ずしも直結しない人間らしい社会的な振舞いの方を重視します。格差や不平等についても、ベーシックインカムを除けば、政府による分配の役割が必ずしも明確ではなく、なんだか、いろんな意味において、「気持ちの持ちよう」といわれて、私は肩透かしを食ったような気になってしまいました。

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次に、リチャード・サスカインド/ダニエル・サスカインド『プロフェッショナルの未来』(朝日新聞出版) です。著者は2人とも英国の研究者であり、専門分野は社会科学のようで、経済学というよりは社会学の方が近そうな気がします。同じ苗字なんですが、父と倅だそうです。英語の原題は The Future of the Professions であり、邦訳タイトルはほぼ直訳です。2015年の出版です。Professions は本文中では「専門家」あるいは「専門職」と訳されており、前者は個人を指す場合、後者はその集合体という形で使い分けられています。具体的な職業としては、多くの場合に資格の必要な士職業、すなわち、医師、弁護士、会計士・税理士、あるいはこういった資格を持つコンサルタント、さらに、宗教指導者や建築家も時により包含されています。要するに、外科医がメスを振るうといった例外はあるものの、専門的知識の中から何らかのソリューションを与えてくれる職業なんですが、決して相対で済ませる必要性はなく、往々にしてオンラインの向こう側にいる人工知能で代替できそうな職業、といえるかもしれません。そして、いわゆるIT化の進行、人工知能やロボット技術の実用化、ビッグデータの活用やIoTの進行などの技術的な進展の中で、こういった専門家の職業がどういう方向に進むのか、あるいは、進むべきか、といった分析を加えています。第1部で事実関係の観察結果を取りまとめ、第2部ではその理論的な背景を探り、第3部では将来展望について土地上げています。ただし、これらの専門家の職業分野では、経済学でいうところの「スーパースター経済学」が成立しそうな分野であり、先の図書の感想文でも取り上げた通り、格差や不平等の激化が避けられないように感じるんですが、本書ではそういった格差や不平等の視点はありません。実に、淡々と実際の専門家の仕事、というか、業務遂行のあり方について思考を巡らせ、その成果の受取りたる所得の格差などは視野に入っていないようです。専門家の仕事の実用性に重きを置いた分析といえます。結論としては、伝統的な専門職は解体され、多くの専門家がより高いパフォーマンスを発揮する人工知能などのマシンやシステムに置き換えられる未来は回避出来ない、と示唆されています。でも、それが悲観すべき事態であるかどうかは別の問題、とも解釈できるような気がします。

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次に、 トッド E. ファインバーグ/ジョン M. マラット『意識の進化的起源』(勁草書房) です。著者は米国の研究者であり、精神医学と解剖学が専門分野です。英語の原題は The Ancient Origin of Consciousness であり、含意は p.282 の訳者あとがきに記されています。2016年の出版です。ということで、童話やアニメなどで昆虫や動物が擬人化されて、人類と同じような意識をもって、しかも、おしゃべりや何やでコミュニケーションを取る、というのがありましたが、逆に、キリスト教的な世界などでは人類と動物は魂のあり方を主たる要因として峻別されていて、ダーウィン的な進化論ですらNGという原理主義的なキリスト教の世界観もあるらしいので、何とも、本書のテーマは私には興味深いところです。そして、結論としては、意識はおろか、感覚、例えば痛覚については、かなり進化した脊椎動物である魚類すら持っていない可能性が高い一方で、人類の発生以前の段階の生物ですら、進化の過程で意識を持つに至った可能性も同時に明らかにされています。邦訳の副題にもなっているカンブリア爆発による生物の多様化から、それまでの濾過食に加えて、捕食者と被食者が別れるようになり、特に後者の被食者が何らかの感覚を研ぎ澄まして捕食されないように進化を遂げる必要が大きくなったわけで、レンズ眼の獲得による視覚から、あるいは、聴覚や嗅覚などから危険を察知するようになり、ひいては意識の形成につながった、というか、意識を持てるような進化を遂げた、ということになります。それが、いつであるのか、どの種からなのか、については化石を見ても明らかではないような気がしますが、私のようなシロートでは理解できないような研究方法があるんだろうという気がします。私はキリスト教徒ではありませんが、意識というのはヒトしか持っていないと長らく直観的に理解して来たんですが、生物、というか、動物については意識の観点ではかなり平等性が高く、我々ヒトから見てかなり下等な動物でも意識を持ちうる可能性が、シロートながらほのかに理解できた気がします。でも、最初の方に提示された通り、意識の存在については「われ思う、ゆえに、われあり」といった哲学的なアプローチも可能だと思います。

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次に、レベッカ・ソルニット『ウォークス』(左右社) です。著者は米国西海岸在住で環境、政治、芸術など幅広く著述活動をしているライターです。取材記者の経験はないのかもしれませんが、ジャーナリストに近い活動と私は受け止めています。英語の原題は Wanderlust であり、歩くことに限ったわけでもなく、旅行一般に関する渇望感のような受け止めなんですが、確かに内容的には邦訳タイトルの方がいいように感じました。2000年の出版です。20年近くを経過しても内容的に陳腐化していないのかもしれませんが、付加すべきポイントはありそうな気もします。ノンフィクションというよりは、何らかの著者の思い入れも含めたエッセイではなかろうかと思います。本書は500ページを超えますし、この前に取り上げた専門外の『意識の進化的起源』とともに、かなり速読、というか、読み飛ばした本だった気がします。ということで、要するに、歩くことに関するエッセイです。英語の原題のように、移動を含めた旅行などではなく、「歩く」ということですので、旅行のような距離を必要とする移動を伴うものばかりではなく、幅広い観点から考察を加えています。まず、第一歩の第1部は思索がテーマだったりします。私の知り合いでも、考え事をする時は狭い範囲ながらも歩き回って思索を巡らす友人がいたりしますが、まあ、ハッキリいってオフィス勤務には向きませんし、思索のケースでも歩くこととは必ずしも連動しない人の方が多数派という気もします。さらに、第2部では庭園や原野といった場所を特定し、第3部では明示的に章のタイトルになっているのはパリだけですが、都市を歩くことに主眼を置き、最後の第4部ではこのエッセイ全体をコンクルードしています。エッセイですので、冒頭はルソー、さらにワーズワースとか、歩くことにまつわる文芸者の話題も豊富に取り上げられています。もちろん、著者の生まれ育った米国サンフランシスコをはじめとし、章タイトルにもなっているパリ、ベルリン、さらにいくつかのラテンアメリカの都市、最後にラスベガス、などなど各地の歩く人々にも焦点が当てられています。ただ、そういった歩く人々のバックグラウンドについては、かなり著者の恣意的な思い入れを込めて想像を膨らませている気がします。出版社のサイトには、書評を掲載したメディアの一覧があります。それなりの注目書なのかもしれません。

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次に、周防柳『蘇我の娘の古事記』(角川春樹事務所) です。作者は売り出し中の小説家です。この作品はこの作者の2作目の時代小説なんですが、1作目は「古今和歌集」の成立をテーマに、六歌仙を題材にした『逢坂の六人』であり、最近、文庫化されています。私もこの作者の作品の中では唯一読んでいたりします。ということで、本作品がこの作者の2作目の時代小説であり、中大兄皇子と中臣鎌足が蘇我蝦夷・入鹿親子を亡ぼした乙巳の変から天武天皇が大海人皇子のころに大友皇子を追放した壬申の乱までを描く古代史を題材にした時代小説です。だけでは何のことか判らないでしょうが、タイトルになっている我が国で初めて編纂された国史のひとつである『古事記』を口述した稗田阿礼の謎を追っています。小説として、主人公は渡来人の一族である船氏の長の船恵尺・山鳥の親子なんですが、その恵尺の子であり、山鳥の妹である盲目のコダマが稗田阿礼に同定されています。しかし、このコダマの生まれは決して明かしてはならない秘密であり、そのために最後の方で船山鳥は壬申の乱で命を落とします。う#xFF5E;ん、このコダマの出自だけは、小説の醍醐味を左右するネタバレになってしまうので書けないんですが、何とも、作者の素晴らしい発想の賜物だろうという気がします。蘇我入鹿の亡霊がコダマの命を助けるシーンもありますが、決して、ファンタジーではなく徹頭徹尾リアルな現実政治の中で『古事記』の伝承を位置づけています。各章の終わりの数ページだけ軽くグレーに色付けされた用紙に『古事記』に収録されている神話が語られる場面が挿入されています。これも印象的な作りになっています。私は時代小説はかなり好きで、主として江戸時代の侍を主人公に、封建時代の世襲の主の揺るぎない地位を背景に、家老などの執政官が思う存分にお家騒動を繰り広げる、というパターンがお決まりのものと考えてきましたが、この作者のように中世を飛び越えて古代に題材を取った時代小説もアリなのか、という気になっています。とてもオススメの時代小説です。

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次に、大竹文雄『競争社会の歩き方』(中公新書) です。著者は大阪大学をホームグラウンドとする経済学者であり、専門分野は労働経済学などのマイクロな分野です。その意味では、京都大学を退官した橘木先生と同じ分野といえるんですが、橘木先生がかなりリベラルというか、ゼロ成長まで含めて、現政権に批判的な論陣を張っているのに対して、大竹先生は現状肯定的な論を唱えている気がします。ということで、著者のあとがきにもある通り、過去2作の中公新書でも標準的な経済学に関するエッセイを取りまとめていて、それなりにためにもなれば、売れてもいるんですが、本書でも、必ずしもタイトル通りに競争に関するエッセイばかりではなく、幅広く経済学の現時点における到達点を踏まえて、できる範囲で難しくならず、しかも定量的な観測結果を中心に最新の経済学の研究成果を取りまとめています。私のように定年間際ですっかり不勉強になっているエコノミストには、こういったサーベイ論文のような平易な新書は有り難い限りといえます。ただ1点だけ注意を喚起しておくと、中身ではそれほど触れられてもいないんですが、タイトルにもなっている競争について、あるいは、最初のトピックにもなっているチケット転売問題について、私なりにコメントしておきたいと思います。すなわち、本書では、独占については芥川賞受賞の『火花』に関して、チラリと触れられているだけですが、競争の反対側は程度の差はあれ、独占だという点は忘れるべきではありません。身近なニュースで接するところでは学生の就職戦線がそうであり、昨今は人手不足で学生の売り手市場といわれますが、学生サイドで独占が発生していて、企業サイドで学生獲得の競争をしているわけです。チケット転売問題でも、高い価格で転売されるということは、超過需要が生じているのだから、チケット価格を引き上げて需要曲線に沿った需要量の低下により需給のマッチングが可能、ということで、それはそれで経済学の観点からは正しく、チケット価格を引き上げるということは、実は独占の超過利潤を取りに行く合理的な経済行動なわけですが、逆に、限界費用に基づく価格付けを行うのも経済厚生の観点からは合理性あると考えるべきです。そして、前者の独占による超過利潤を実現する高価格付けが、実に、新自由主義的な右派の経済学であり、後者の限界費用に基づく低価格付がリベラルな左派の経済学に近い、と考えるべきです。そして、本書の著者は前者の立場の経済学者であり、私は後者の左派のエコノミストなんだろうと思っています。

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最後に、文庫本2冊で、恩田陸ほか『2030年の旅』(中公文庫) 及び湊かなえほか『猫が見ていた』(文春文庫) です。タイトルから明らかな通り、『2030年の旅』は10年余り後の世界を展望した短編集であり、『猫が見ていた』は猫にまつわる短編集です。どちらも執筆陣が豪華、というか、私好みなんですが、収録作品を一応上げておくと、『2030年の旅』については、恩田陸「逍遙」、瀬名秀明「144C」、小路幸也「里帰りはUFOで」、支倉凍砂「AI情表現」、山内マリコ「五十歳」、宗田理「神さまがやってきた」、喜多喜久「革命のメソッド - 2030年のMr.キュリー」、坂口恭平「エッセイ 自殺者ゼロの国」の8編、すなわち、小説7本とエッセイ1本となっています。次に、『猫が見ていた』については、湊かなえ「マロンの話」、有栖川有栖「エア・キャット」、柚月裕子「泣く猫」、北村薫「『100万回生きたねこ』は絶望の書か」、井上荒野「凶暴な気分」、東山彰良「黒い白猫」、加納朋子「3べんまわってニャンと鳴く」の7本の短編で、解説代わりに「猫と本を巡る旅 オールタイム猫小説傑作選」が最後に置かれていますが、これはかなり内容的に怪しいと私は受け止めています。特に印象的な1篇ずつを選ぶと、『2030年の旅』では、過疎化が深刻な町をスリーフィンガーという企業が開発して、日本で一番インフラ整備された町へと変貌を遂げるという「里帰りはUFOで」が面白かったですが、先進IT企業とは、Googleの自動運転車のように、何でもやるんだろうというのがよく実感できましたし、失礼ながら、現時点での技術の先をそのまま一直線に伸ばしたような想像しやすいテクノロジーでしたので、難しさは感じませんでした。『猫が見ていた』では、作家アリスのシリーズの「エア・キャット」で、ル・ポールの財布の予言マジックのように、火村が被害者宅の本棚の漱石の『三四郎』を手に取ったら事件直前の時刻のレシートが出て来て、書店からの帰り道にある監視カメラの映像から犯人がすぐに捕まった、というストーリーなんですが、どうして『三四郎』なんだろうかという小さな謎に挑みます。なかなかの短編ミステリです。

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2017年12月 1日 (金)

高い収益力示す法人企業統計と人手不足強まる雇用統計とプラス幅を拡大する消費者物価(CPI)上昇率!

本日、財務省から今年2017年7~9月期の法人企業統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI)が、それぞれ公表されています。雇用統計と消費者物価は10月の統計です。まず、法人企業統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は4期連続の増収で前年同期比+4.8%増の338兆6999億円、経常利益も5期連続の増益で+5.5%増の17兆8928億円、設備投資は製造業で+1.4%増、非製造業で+5.9%増となり、非製造業が牽引する形で、全産業では+4.2%増の10兆7920億円を記録しています。また、雇用統計では失業率が2.8%といずれも前月と同じ水準を示す一方で、有効求人倍率は1.55倍とさらに上昇し、生鮮食品を除く総合で定義されるコア消費者物価(コアCPI)の前年同月比上昇率は+0.8%と上昇幅を拡大して10か月連続のプラスとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7-9月設備投資4.2%増、宿泊など非製造業で伸び
財務省が1日発表した2017年7~9月期の法人企業統計によると、全産業(資本金1千万円以上、金融機関を除く)の設備投資は前年同期比で4.2%増となった。4四半期連続で前年を上回った。非製造業でサービス業などの投資が増えたほか、製造業でも生産能力を引き上げる動きが相次いだ。売上高や経常利益も前年同期をそれぞれ上回った。
設備投資は非製造業で5.9%増となった。訪日客の需要を見込み、宿泊業でホテルや娯楽施設への投資が増えた。製造業も1.4%増。スマートフォン関連などで生産能力を引き上げる動きが出て電気機械の投資が増え、2四半期ぶりに増加に転じた。
経常利益は5.5%増の17兆8928億円だった。製造業が44%増と大きく伸びた。自動車など輸送用機械が押し上げた。非製造業は9.5%の減少と、5四半期ぶりに前年を下回った。サービス業で、受取利息などが大幅に増えた前年の反動が出た。
売上高は4.8%増の338兆6999億円。製造業は3.9%増、非製造業は5.2%増とともに上向きだった。企業の増産投資を背景に、製造業では生産用機械が好調だった。非製造業では卸売業・小売業が上昇に寄与した。
今回の法人企業統計の結果を反映し、内閣府は8日に7~9月期の国内総生産(GDP)の改定値を公表する。
11月15日公表の速報段階では、季節調整済みの実質GDPが前期比年率換算で1.4%増だった。ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査室長は「法人企業統計の設備投資が予想よりも強い結果で、GDPは上方修正される可能性が出てきた」と予測する。
求人43年9カ月ぶり高水準、10月1.55倍
人手不足が一段と強まっている。厚生労働省が1日発表した10月の有効求人倍率(季節調整値)は1.55倍で、9月より0.03ポイント上がった。高度経済成長期の1974年1月以来、43年9カ月ぶりの水準となった。景気回復に人口減少が重なり、働く意思があれば職に就ける完全雇用の状態だ。消費の回復ペースは緩やかで、消費者物価指数は前年同月比0.8%上昇だった。
有効求人倍率は、全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は1.03倍だった。前月より0.01ポイント上昇し、統計をとり始めた2004年以降の最高を更新した。
新規求人数は前年同月比7.1%増。業種別にみると、スマートフォン(スマホ)関連が好調な製造業が最も増え、12.8%増だった。慢性的な働き手不足に直面する医療・福祉(7.9%)や情報通信業(9.3%)も伸びが大きかった。
企業の求人に対して実際に職に就いた人の割合を示す充足率(季節調整値)は14.7%だった。インターネットで企業の採用サイトに直接求職するといった場合を含まないが、「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算になる。
総務省が同日発表した10月の完全失業率は、9月と同じ2.8%。求人があっても職種や勤務地など条件で折り合わずに起きる「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。3%割れは「完全雇用」状態にあるといえる。
失業のリスクは低くなっているものの、消費の回復力は弱い。総務省が同日発表した10月の家計調査によると、2人以上世帯の1世帯当たり消費支出は28万2872円だった。物価変動の影響を除いた実質で前年同月と同じだった。
教育費や携帯電話の通信料は増えたが、台風の影響で国内外のパック旅行費など教養娯楽が7%落ち込んだ。所得は緩やかに改善しているが、将来不安などによる節約志向も根強く残っている。
物価上昇も勢いを欠いている。10月の消費者物価指数(CPI)は値動きの激しい生鮮食品を除く総合で、前年同月比0.8%上昇したが、主因のエネルギーを除くと、伸び率は0.2%にとどまった。
10月の全国消費者物価、0.8%上昇 エネルギー関連が押し上げ
総務省が1日発表した10月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.6と、前年同月比0.8%上昇した。プラスは10カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.8%上昇だった。9月は0.7%上昇だった。電気代やガス代、石油製品などエネルギー関連が指数を押し上げた。
生鮮食品を除く総合では全体の56.2%にあたる294品目が上昇し、171品目が下落した。横ばいは58品目だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合では101.0と前月比0.2%上昇した。安売り規制の影響でビールなど酒類が上昇した。医療費の自己負担額引き上げで、診療代も上昇した。
生鮮食品を含む総合は100.6と0.2%上昇した。9月(0.7%上昇)に比べて伸び率が縮小した。レタスなど一部の生鮮野菜が昨年に急騰した反動で下落したことが響いた。
併せて発表した東京都区部の11月のCPI(中旬速報値、15年=100)は生鮮食品を除く総合が100.3と前年同月比0.6%上昇した。上昇は5カ月連続。電気代などエネルギー関連が押し上げた。生鮮食品を含む総合は100.6と0.3%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、いくつもの統計を一挙に並べると、とても長くなってしまいました。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、いわゆる「失われた10年」の期間である1990年代のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整していない原系列の統計ながら、7~9月期の売上高経常利益率は製造業が7.0%、非製造業が3.6%を記録しています。国内経済も着実に回復・拡大を示しているものの、円安に加えて世界経済が国内経済を上回る拡大を見せていることから、製造業が非製造業よりも高い収益力を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については昨年2016年年央くらいを底に、昨年2016年後半から明らかに上向きに転じ、今年2017年4~6月期から7~9月期の年央くらいもこの流れが継続していることが確認できたと思います。ただ、設備投資については、まだ伸びが本格化していない印象です。季節調整済みの系列で見て、全産業ベースの設備投資は7~9月期に前期比で+1.0%増でしたが、製造業で+0.5%増、非製造業で+1.3%増を示しており、利益率が高い製造業の方で投資の伸び率が低いのは、人手不足の影響が非製造業においてより大きい点に加え、海外へ投資が漏出している可能性が示唆されていると私は受け止めています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけはグングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善のひとつである賃上げ、もちろん、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。また、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、さらなる法人税引き下げなどによる企業活動活性化がどこまで必要なのかは疑問ですし、企業が国内での設備投資や賃上げに慎重姿勢を示しているのであれば、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間はいずれも景気後退期です。失業率も有効求人倍率も前月と同じながら、かなりタイトな労働需給を示しています。加えて、グラフは示しませんが、正社員の有効求人倍率も前月からさらに上昇して1.03倍と高い水準にあります。ただし、繰り返しこのブログで指摘している通り、まだ賃金が上昇する局面には入っておらず、賃金が上がらないという意味で、まだ完全雇用には達していない、と私は考えています。要するに、まだ遊休労働力のスラックがあるということで、グラフは示しませんが、性別年齢別に考えると、高齢男性と中年女性が労働供給の中心となっています。もっとも、定量的な評価は困難ながら、そのスラックもそろそろ底をつく時期が迫っているんではないかと思います。特に、採用しやすい大企業に比べて、中小企業では人手不足がいっそう深刻化する可能性もあります。さらに、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規職員が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用水準ではないかと私は考えています。

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続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIのそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いがビミョーに私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。ということで、単純に見ると、コアCPI上昇率は6月+0.4%から7月+0.5%、8~9月+0.7%、10月+0.8%と徐々に上昇幅の拡大を続けており、加えて、全国の先行指標となる東京都区部でもコアCPI上昇率が全国から4か月遅れて今年2017年5月にプラスに転じ+0.1%を記録した後、10~11月の+0.6%まで順調にプラス幅を拡大しています。しかし、先行きの消費者物価(CPI)上昇率を考える場合、要因として2点考慮する必要があり、ひとつは国内の需給ギャップと賃金動向です。現時点で、これらはともに、物価を上昇させる方向にあると考えるべきです。文句なしです。ただし、もうひとつは国際商品市況における石油価格です。これは、新興国経済が中国を含めてかなり堅調に回復を示している一方で、相場が下げに向かうとの見方もまだ根強く残っています。上の消費者物価のグラフにおいて、私の計算に従えば、寄与度分解した積上げ棒グラフの黄色のエネルギーの寄与度は、コアCPI+0.8%のうちの+0.62%に達しています。この部分が縮小に向かえば、コアCPI上昇率のプラス幅も風前の灯と化す可能性もあります。相場だけに私には何とも先行きは判りかねますが、今後の動向が注目されます。

最後に、法人企業統計に戻ると、引用した記事にもある通り、この統計公表をもって、来週12月8日に内閣府から7~9月期のGDP統計2次QEが公表される予定となっています。シンクタンクなどの2次QE予想は日を改めて取りまとめる予定ですが、直観的には設備投資が上方修正される分、2次QEでは成長率が上振れするんだろうという気はします。

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