2018年に入ってともに+1%近い上昇率を続ける消費者物価(CPI)と企業向けサービス物価(SPPI)!
本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI)が、また、日銀から企業向けサービス物価指数 (SPPI)が、それぞれ公表されています。いずれも1月の統計です。どちらも前年同月比上昇率でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月と同じ+0.9%を、また、SPPI上昇率は前月からやや上昇幅を縮小して+0.7%を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
1月の全国消費者物価0.9%上昇 エネルギーが押し上げ
総務省が23日発表した1月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、値動きの大きな生鮮食品を除く総合指数が100.4と前年同月比0.9%上昇した。プラスは13カ月連続。QUICKがまとめた市場予想の中央値(0.8%上昇)を上回った。電気代や石油製品などエネルギー品目が押し上げた。17年12月は0.9%上昇だった。
生鮮食品を除く総合では、全体の58.5%にあたる306品目が上昇し、165品目が下落した。横ばいは52品目だった。生鮮食品を除く総合指数を季節調整した前月比でみると0.2%上昇だった。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は100.7と前年同月比0.4%上昇した。安売り規制の影響でビールなど酒類が上昇した。婦人用コートなど衣服及び履物も押し上げに寄与した。
生鮮食品を含む総合は101.3と1.4%上昇した。消費増税の影響を除くと2014年7月(1.4%上昇)以来の高水準だった。天候不順や不漁でレタス、ミカン、マグロなどが高騰し、指数を押し上げた。
政府が進める統計改革の一環で、総務省は全国CPIの公表を今回から1週間早めた。調査項目として「格安スマホ通信料」「SIMフリー端末」「加熱式たばこ」の3点を加えた。総務省統計局は新品目に「価格は安定しており、指数への影響は限定的」との見方を示した。
1月の企業向けサービス価格、前年比0.7%上昇 テレビ広告が堅調
日銀が23日発表した1月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は103.7で、前年同月比で0.7%上昇した。テレビ広告が堅調だった。人手不足を背景にソフトウエア開発や土木建築サービスの価格も上昇した。前月比では0.6%下落した。
テレビ広告は年始にあった人気の映画の放送が寄与した。前年と比較して積極化した仮想通貨の広告も価格上昇につながった。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは80品目、下落は31品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は49品目だった。
宅配便など道路貨物輸送関連の価格は伸び悩んだ。ただ「これまでの値上げ幅が落ち着いてきたものの、上昇トレンドは変わっていない」(調査統計局)という。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、やや長くなってしまいました。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

昨年2017年12月統計に続いて、今年2018年1月もコアCPI上昇率は+0.9%を記録し、エコノミストの間では早ければ2月にも+1%に達し、場合によってはデフレ脱却宣言も遠くない、との憶測が飛び交っていますが、それでも日銀のインフレ目標の+2%にはほど遠く、しかも、エネルギー価格に伴う物価上昇ですから、コスト・プッシュの要因が強く働いていると考えられ、どこまでが順調な景気回復・拡大に基づくディマンド・プルなのかは疑問が残ります。私は決して「悪い物価上昇とよい物価上昇」を区別しようと思いませんが、少しくらいは考えてみる必要もありそうです。すなわち、石油価格などのエネルギー価格の上昇に牽引された物価上昇では、実質所得の減少につながる場合があると考えるべきですが、逆に、同じコスト・プッシュでも石油価格をはじめとするエネルギー価格ではなく、賃上げによる賃金に起因する物価上昇であれば、所得の増加が伴うので物価上昇による実質所得の低下は小幅で済むのはいうまでもありません。いずれにせよ、賃上げ動向次第で政府がデフレ脱却宣言を発する可能性があることは可能性なしとしません。

エネルギー価格に牽引された物価上昇ということで、少し違う角度から消費者物価上昇率を考えてみたのが上のグラフです。いずれも前年同月比の上昇率で、上のパネルは購入頻度別に見た物価上昇率、月1回程度以上と未満のそれそれの上昇率であり、下のパネルは基礎的・選択的支出別の物価上昇率です。なお、基礎的支出と選択的支出の定義については、ホンワカと理解できるところですが、「消費者物価指数のしくみと見方」pp.35-36 で解説されています。ということで、グラフから明らかな通り、頻度高く購入する品目、また、基礎的な支出に当てる必需品の物価上昇率が最近時点で高く、しかも、ここ2~3か月で急上昇を示していることから、どうも国民一般には物価上昇が実感としては統計以上に感じられている可能性があるんではないかと懸念しています。

最後に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)と国際運輸を除くコアSPPIの上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。SPPIとPPIの上昇率の目盛りが左右に分かれていますので注意が必要です。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、SPPIも引き続き堅調な推移を見せています。特に、1月には景気動向と密接な関係を持つと考えられる広告が、前年同月比で+1.4%の上昇、前年比寄与度前月差でも大きな寄与を示しています。引き続き、人手不足を背景として企業向けサービス物価もプラスを続けそうです。
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