大きな減産となった鉱工業生産指数(IIP)とやや停滞を示す商業販売統計!
本日、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP)と商業販売統計が、それぞれ公表されています。いずれも1月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で前月から▲6.6%の減産を示し、商業販売統計のうちのヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.6%増の11兆7700億円を、また、季節調整済みの系列の前月比は▲1.8%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
鉱工業生産1月6.6%低下 4カ月ぶりマイナス
経済産業省が28日発表した1月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は99.5と、前月に比べ6.6%低下した。低下は4カ月ぶり。自動車や土木建設機械などの生産が振るわなかった。経産省は基調判断を「持ち直している」から「緩やかな持ち直し」に引き下げた。
生産指数はQUICKがまとめた民間予測の中央値(4.0%低下)も下回った。低下幅は東日本大震災が起きた2011年3月(16.5%低下)以来の大きさ。基調判断の引き下げは、15年8月に前月の「一進一退」から「弱含み」にして以来、2年5カ月ぶりとなる。
全15業種のすべてで前月比マイナスだった。低下が目立ったのは輸送機械工業で14.1%低下した。北米での自動車販売の鈍化などを背景に乗用車や自動車部品の生産が落ち込んだ。汎用・生産用・業務用機械工業も7.8%低下。ショベル系掘削機械や金属工作機械などが振るわなかった。
出荷指数は5.6%低下の98.3だった。在庫指数は0.6%低下の108.8。在庫率指数は3.0%上昇の113.8だった。
メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査では2月が9.0%上昇、3月は2.7%低下だった。
1月の小売販売額、前年比1.6%増 3カ月連続プラス
経済産業省が28日発表した商業動態統計(速報)によると、1月の小売業販売額は前年同月比1.6%増の11兆7700億円だった。前年実績を上回るのは3カ月連続。原油高で石油製品の価格が上昇。天候不順による野菜の値上がりも影響した。経産省は小売業の基調判断を「緩やかに持ち直している」で据え置いた。
業種別では、燃料小売業が11.2%増と伸びが目立った。飲食料品小売業も2.0%増えた。一方、自動車小売業は0.3%減少。新型車の投入が一巡し、18カ月ぶりに前年割れとなった。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で1兆6828億円と前年同月に比べ0.5%増えた。既存店ベースも0.5%増だった。
コンビニエンスストアの販売額は9323億円と1.8%伸びた。加熱式タバコやプリペイドカードが好調だった。
やや長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上は2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下のパネルは輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは中央値で▲4.0%の減産、予測レンジの下限でも▲5.3%の減産でしたので、その下限を突き抜けた大きなマイナスと受け止めています。ただ、製造工業生産予測調査では2月が+9.0%の増産と見込んでおり、実績ではやや下振れしがちな指標である上に、3月が▲2.7%の減産と見込まれているとはいえ、短期に1月減産のかなりの部分を取り戻す、という計算が成り立ちます。いずれにせよ、引用した記事では注目していませんが、中華圏の春節が2月16日に当たったカレンダー要因が生産の大きな振れに影響を及ぼしているようです。私が役所の仕事を始めた1980年代前半にはほぼほぼ考えられなかったことですが、中国をはじめとする中華圏経済がプレゼンスを高めている結果であることは間違いありません。ですから、2月生産の実績を見てみたい気が私はするんですが、統計作成官庁の経済産業省では気が早いというか、何というか、基調判断を「持ち直し」から「緩やかな持ち直し」に引き下げています。ただ、繰り返しになりますが、私は2月の統計も見たい気がします。というのも、1月統計では生産▲6.6%の減産、出荷も▲5.6%の低下を示しているうち、この生産と出荷に共通して、業種別では輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業、電子部品・デバイス工業が低下業種に上げられている一方で、2月の製造工業生産予測調査では、はん用・生産用・業務用機械工業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業が、やや並びが異なるとはいえ、上げられており、1~2月をならして見れば、統計公表のたびに経済実態の見方をアタフタと変更する必要はない可能性も否定できません。もちろん、直観的には1~3月期に生産はマイナスをつけそうな気もします。

続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。ということで、小売販売額は前年同月比で+1.6%増ながら、消費者物価が生鮮食品を除くコアCPIで+0.9%、ヘッドラインで+1.4%、持ち家の帰属家賃を除く総合で+1.7%のそれぞれ上昇を示していますから、実質値への変換は家計調査と違ってバスケットのウェイトが違うので簡単ではないものの、ほぼゼロくらいの感じで私は受け止めています。東京でも積雪が見られた天候要因のほかに、生鮮食品の値上がりによる実質所得の低下や伸び悩みが下押し要因となったと私は考えています。ただ、基調としては緩やかな回復・拡大が続いていて、先行きも引き続き緩やかな回復・拡大が継続するものと私は見込んでいます。春闘で政府の目論見通りに3%賃上げがなされれば、消費はさらに回復・拡大を続けると見込まれますが、賃上げ率がこれに達しない可能性も大いにあります。消費のさらなる増加のためには賃上げによる所得のサポートが欠かせませんし、賃上げは生鮮食品などの価格の上昇を埋め合わせ、さらに、デフレ脱却につながるわけですから、ある程度の賃上げの実現が待たれるところです。
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