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2018年4月 2日 (月)

日銀短観は総じて企業マインドの高さを示すも先行き不透明感も!

本日、日銀から3月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは昨年2017年12月調査から▲2ポイント低下して+24を記録し、本年度2018年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比▲0.7%の減少と日銀短観としてはかなり高いところから始まっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

日銀短観、2年ぶり悪化 原材料高・人手不足で見通しも慎重
日銀が2日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス24だった。前回2017年12月調査(プラス26)から2ポイント悪化した。悪化は2016年3月調査以来、8四半期ぶりとなる。原材料価格の高騰や金融市場の混乱が響いた。鉄鋼や非鉄金属などの悪化が目立った。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。3月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス25も下回った。回答期間は2月26日~3月30日で、回収基準日は3月12日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス20と悪化する見通し。市場予想の中央値(プラス22)も下回った。米国の保護主義的な通商政策や株安・円高などを背景に慎重な見通しが多かった。
18年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=109円66銭。17年度の実績見通しは110円67銭だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス23と前回を2ポイント下回った。悪化は16年9月調査以来、6四半期ぶり。人手不足が響いた。3カ月先のDIは3ポイント悪化のプラス20だった。
中小企業は製造業が横ばいのプラス15、非製造業は1ポイント改善のプラス10だった。先行きはいずれも悪化を見込む。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス22となり、前回(マイナス19)から低下した。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、26年ぶりのマイナス幅となった。
18年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比2.3%増と、市場予想の中央値(0.6%増)を上回った。
大企業・製造業の販売価格DIはプラス4と前回のプラス1から上昇した。販売価格判断DIは、販売価格が「上昇」と答えた企業の割合から「下落」と答えた企業の割合を差し引いたもの。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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繰り返しになりますが、日銀短観のヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは昨年12月調査の+26から▲2ポイント悪化して+24を示し、先行きについてはさらに▲4ポイント低下する見込みとなっています。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは大企業製造業で+25でしたので、わずかに下振れました。12月調査から3月調査にかけての変化幅を見て、大企業製造業で業況判断DIが大きく低下したのは化学と鉄鋼であり、ともに▲9ポイントの低下幅を記録しました。ただし、機械類でははん用機械はむしろ+7ポイント、そして、生産用機械は+8ポイント、とそれぞれ改善を示しており、先行きの低下幅もともに▲1ポイントにとどまっています。また、我が国リーディング産業のひとつである自動車も+2の改善です。ですから、大企業の中で、素材業種は12月調査から3月にかけて▲5ポイントの悪化を示し、さらに先行きは▲8ポイントの低下を見込む一方で、組立業種は12月から3月までの悪化が▲1ポイントにとどまり、先行きも▲2ポイントの悪化しか見込まれていません。不動産以外は総じて悪化した非製造業とはかなり異なる特徴を見せていると見られ、その背景には円高や国際的な貿易戦争のおそれ、さらに、株価の下落による全般的なマインド悪化に加えて、国際商品市況における商品価格の上昇を忘れるべきではないと私は考えています。ただ、国際商品市況の上昇は中国をはじめとする新興国の景気拡大とコインの裏表の観もあり、評価が難しいところです。最後に、得体の知れない地政学的な北朝鮮リスクは、米朝首脳会談の設定により、かなりの程度に和らいだものと私は考えています。総じて見て、一部に「景気の変調」を主張する見方もある中で、単なる表現上の問題かもしれませんが、「景気変調」とまではいわないとしても、景気循環の中で景気のステージが成熟化しつつあり、その意味で、モメンタムが低下していることは事実だろうと感じています。加えて、国際的な貿易戦争や米国の金融政策動向など、先行き不透明感も生じ始めています。ただ、中小企業と中堅企業の非製造業の業況判断DIが、小幅ながら改善を続けていますので、国内での景気拡大の波及が続いていることを示唆しており、大企業レベルから中小企業まで景気回復・拡大を波及させるために、もう少し景気拡大局面を継続させる必要がありそうな気がします。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。特に、雇用人員については規模の小さい中堅企業・中小企業の方が大企業より採用の厳しさがうかがわれ、人手不足幅のマイナスが大きくなっています。新卒採用計画は3月調査では実施されていませんが、各種報道によれば、就活は売り手市場が続くようです。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2018年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で異例の▲0.7%減という高い水準で始まっています。昨年度2017年度の設備投資計画は、前回12月調査よりもやや下方修正されたものの、3月調査の実績見込みでは+4.0%増となっており、その2017年度が▲1.3%で3月調査をスタートさせていることを考えると、日銀短観の設備投資計画は、統計のクセとして、3月調査はほぼほぼ必ず前年度比マイナスで始まり、12月調査でピークを迎え、結局、6月調査ないし9月調査の結果あたりで着地する、という実績になるような気がするんですが、人手不足や企業業績も考慮に入れて、今年度2018年度の設備投資は期待してよさそうです。

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