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2018年6月30日 (土)

今週の読書は話題のダン・ブラウン『オリジン』を含めて計8冊!

いよいよ昨日で関東甲信が梅雨明けし、自転車で図書館を回るには暑いながらもお天気が安定した季節を迎えました。ということで、話題のダン・ブラウン『オリジン』上下を含めて、今週は以下の8冊とまたまた大量に読みました。数が多いので、少し簡単に取りまとめています。

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まず、トーマス・セドラチェク & オリヴァー・タンツァー『資本主義の精神分析』(東洋経済) です。NHK特集の「欲望の資本主義」でもそうだったんですが、この著者の要諦は借金をしてまで成長を追求する必要はない、ということなんではないかという気がします。あまりにも経済学の見方から外れすぎていて、これなら何を言っても可、という気もします。

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次に、内田樹[編]『人口減少社会の未来学』(文藝春秋) です。かなり大量の著者人を集めた論文集なんですが、左派的な拡大均衡を目指す志向もあれば、右派的な財政圧縮を求める声もあったりで、まとまりの悪さが目立っています。本としての一貫した視点や主張はほぼないに等しいんではないかと受け止めています。

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次に、岡部恭宜[編著]『青年海外協力隊は何をもたらしたか』(ミネルヴァ書房) です。逆に、本書については本としての主張は極めて明確で、青年海外協力隊(JOCV)は有益であり、事業仕分けにより予算削減の憂き目を見るのは困る、ということに尽きます。JOCVの受け入れサイドの意見がまったく取り入れられていないのも大きな特徴のひとつです。

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次に、ダン・ブラウン『オリジン』上下(角川書店) です。ご存じ宗教象徴学者ラングドン教授シリーズ最新作です。今回の舞台はスペインです。コンピュータ科学者が人類、というか地球生命の起源と行く末についてプレゼンしていたんですが、その場で暗殺され、そのプレゼンの続きの動画のパスワードをラングドン教授が謎解きをする、その謎解きに、従来通りのボンド・ガールならぬラングドン・ガールとともに、ウィンストンという名のAIが協力する、というストーリーです。謎解きも、地球生命の起源と行く末も、どちらも、やや物足りませんでしたが、AIの退場は鮮やかでした。一気に読ませるスリリングな作品です。

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次に、麻耶雄嵩『友達以上探偵未満』(角川書店) です。著者の出身地である三重県伊賀の里にある工場を舞台に、JK探偵が殺人事件を解決します。新本格派の著者らしく、論理的に犯人を追いつめます。なお、伊賀は忍者の里であると同時に、その忍者でもあったといわれている俳聖松尾芭蕉の出身地でもありますので、俳句が頻出します。なかなかの作品です。

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最後に、文芸第三出版部[編]『謎の館へようこそ 白』『謎の館へようこそ 黒』(講談社) です。新本格30周年を記念するアンソロジーです。収録作品を以下に列挙すると、『白』は東川篤哉「陽奇館(仮)の密室」、一肇「銀とクスノキ~青髭館殺人事件~」、古野まほろ「文化会館の殺人 - Dのディスパリシオン」、青崎有吾「噤ヶ森の硝子屋敷」、周木律「煙突館の実験的殺人」、澤村伊智「わたしのミステリーパレス」、そして、『黒』ははやみねかおる「思い出の館のショウシツ」、恩田陸「麦の海に浮かぶ檻」、高田崇史「QED ~ortus~ -鬼神の社-」、綾崎隼「時の館のエトワール」、白井智之「首無館の殺人」、井上真偽「囚人館の惨劇」、となっています。

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2018年6月29日 (金)

関東甲信が梅雨明けする!

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本日、6月29日に関東甲信が梅雨明けしたらしいです。
沖縄と奄美に次いでの梅雨明けで、九州や近畿などをすっ飛ばしての梅雨明けです。6月中の梅雨明けは観測史上初だそうです。上の画像は、日本気象協会のサイトから引用しています。

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小幅減産の鉱工業生産指数(IIP)とほぼ完全雇用を示す雇用統計と弱含み続く消費者態度指数!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP) が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。鉱工業生産指数(IIP)と雇用統計は5月の統計であり、消費者態度指数だけは6月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で前月から▲0.2%の減産を示し、失業率は前月からさらに▲0.3%ポイント低下して1992年以来の2.2%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月から0.01ポイント上昇して1.60倍と、これまた1974年以来の高い倍率を示しています。また、消費者態度指数は前月から▲0.Ⅰポイント低下して43.7を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の鉱工業生産、半導体関連が小幅上昇 市場「需要は依然弱い」
経済産業省が29日発表した5月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は104.4で前月比0.2%低下したが、市場の注目度の高い半導体関連(電子部品・デバイス工業)は前月比3.4%増(前年同月比3.2%増)と小幅に上昇した。
モス型半導体集積回路(メモリ)やアクティブ型液晶素子(大型)などの生産増が寄与した。経済産業省によると「海外向けの輸出が伸びた」という。
もっとも市場では「世界的に需要が弱い状況は依然変わっていない」(SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミスト)との指摘もある。電子部品・デバイス工業は4月が5.7%と大きな低下だったため、「小幅に戻しただけ」(同)との見方だ。
在庫も積み上がっている。5月の生産者在庫率(季節調整値)は前月比5.4%上昇の144.1となった。高水準の在庫はこの先の生産の重しになる。6月の製造工業生産予測指数は1.2%の低下を見込んでいる。
求人倍率44年ぶり高水準 5月1.60倍、正社員は最高
厚生労働省が29日発表した5月の有効求人倍率(季節調整値)は1.60倍で、前月から0.01ポイント上昇し44年4カ月ぶりの高水準となった。うち正社員は過去最高を更新した。総務省が29日発表した5月の完全失業率(季節調整値)は2.2%と、25年7カ月ぶりの低水準。働く意思のある人なら働ける「完全雇用」の状況が続いている。
有効求人倍率は、全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率(季節調整値)は1.10倍で、前の月から0.01ポイント上昇し、過去最高となった。企業が優秀な人材を厚待遇で囲い込むため、正社員採用を増やしていることが背景にある。
新規求人は96万2465人で、前年同月比5.5%増えた。産業別では製造業(9.2%増)や建設業(8.8%増)で伸びが目立った。厚労省は生産が緩やかに回復し、人手を確保する動きが広がっていると指摘している。
求人に対して実際に職に就いた人の比率を示す充足率(季節調整値)は14.7%となり、4月と比べて0.4ポイント上昇した。企業の採用効率は改善したが「7人雇おうとしても採用できるのは1人」という計算になる。
総務省が29日公表した5月の労働力調査によると、完全失業率(季節調整値)は2.2%で、4月から0.3ポイント下がった。失業者が減り、就業者数が比較可能な1953年以降で最多の6698万人となり、失業率を押し下げた。男性の正規雇用が増えるなどした影響が大きい。
完全失業率は働きたいのに職がなく求職活動をしている人の比率。求人があっても勤務地など条件が合わない「ミスマッチ失業率」は3%程度とされる。2017年初めから3%以下の「完全雇用」状態が続いている。
6月の消費者態度指数、2カ月ぶり低下 暮らし向きなど悪化
内閣府が29日発表した6月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.1ポイント低下の43.7だった。低下は2カ月ぶり。「暮らし向き」などの指標が悪化した。内閣府は消費者心理の基調判断は「弱含んでいる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標を項目別にみると、「暮らし向き」が41.9と0.2ポイント低下した。一部日用品などの値上げが消費者心理を冷やした。「収入の増え方」と「耐久消費財の買い時判断」も悪化した。
一方で、雇用情勢の改善を背景に「雇用環境」は48.3と0.1ポイント上昇した。消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は前月と比べて0.1ポイント低い43.2だった。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.4ポイント低い81.7%だった。「低下する」は0.1ポイント高い3.3%、「変わらない」は0.2ポイント高い12.6%だった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は6月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は5987世帯、回答率は71.3%だった。

とても長くなってしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上は2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下のパネルは輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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生産については、5月統計では▲0.2%と4か月振りの減産となりましたが、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、▲1%を超える減産幅が予想されていましたし、製造工業生産予測調査では6月+0.4%、7月+0.8%の増産が見込まれていますので、製造工業生産予測調査の上振れバイアスを考慮するとしても、決して悲観すべき内容ではないと私は受け止めています。加えて、1~3月期には天候不順などもあって、生産も▲1.3%の減産を記録しましたが、4~6月期には、6月の製造工業生産予測指数の結果に含まれる予測誤差を含めても前期比+2%前後の増産に転じる計算になります。ただ、グラフは示していませんが、在庫調整には進展が見られていません。というのは、生産は前月比▲0.2%の減産にとどまっていますが、出荷が▲1.6%減を記録しているからです。輸送機械工業、はん用・生産用・業務用機械工業で出荷が低下しており、結果的に、鉄鋼業、輸送機械工業、電子部品・デバイス工業などで在庫が増加していると報告されています。特に、電子部品・デバイス工業では先行き在庫調整の圧力がかかる可能性があります。単純に生産の傾向だけでは評価し切れない部分です。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。失業率がとうとう2%そこそこに低下して来ています。グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も1.10倍と1倍を超えて推移しており、雇用はいよいよ完全雇用に近づいており、いくらなんでも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、2%台前半の失業率が続くかどうかは不明であり、2%台半ばくらいまで上下する可能性は十分あります。賃金については、、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。しかしながら、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼしますから、マクロの所得だけでなく個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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さらに、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。消費者態度指数を構成するコンポーネントを前月差でみると、「暮らし向き」が▲0.2ポイントの低下、「収入の増え方」が▲0.2ポイントの低下、「耐久消費財の買い時判断」が▲0.1ポイントの低下の一方、「雇用環境」が+0.1ポイントの上昇を示しています。賃金上昇が鈍くて「収入の増え方」が前月差マイナスを示した一方で、「雇用環境」はプラスであり、5月の雇用統計とも整合的です。統計作成官庁の内閣府では基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。

鉱工業生産から見る限り、1~3月期はGDP統計でもマイナス成長でしたが、4~6月期にはプラス成長に回帰しそうです。これで賃上げが加われば、さらにいいセン行くんではないかという気がします。

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2018年6月28日 (木)

復活なった岩田投手の好投で横浜を3タテし能見投手が100勝達成!!

  RHE
阪  神000200001 382
横  浜100000100 252

競った試合を相手エラーでものにしましたが、何といっても、圧巻は岩田投手の復活勝利でした。6回途中まで1失点でした。ただ、中継ぎ陣は藤川投手がイニングまたぎで失点するなど、100勝を達成した能見投手以外は、リリーフ投手はバテバテに見えます。でも、広島の仇を横浜で討って3タテに仕留めました。

次のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

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商業販売統計の小売販売額は7か月連続で前値実績を上回る!

本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.6%増の11兆8370億円を、また、季節調整済みの系列の前月比は▲1.7%減を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の小売販売額、前年比0.6%増 判断は据え置き
経済産業省が28日発表した商業動態統計(速報)によると、5月の小売販売額は前年同月比0.6%増の11兆8370億円だった。前年実績を上回るのは7カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「横ばい傾向にある」で据え置いた。
業種別では、燃料小売業が13.4%増と伸びが目立った。石油製品の価格上昇が要因。飲食料品小売業は0.8%増。肉類や総菜が好調だった。
一方、自動車小売業は2.8%減だった。普通車や小型車の販売が振るわなかった。織物・衣服・身の回り品小売業は4.1%減少した。5月上旬の天候不順で夏物衣服が伸び悩んだ。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で1.4%減の1兆5664億円だった。既存店ベースは2.0%減だった。コンビニエンスストアの販売額は0.1%増の9979億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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小売販売額については、季節調整していない原系列で見て昨年2017年11月から7か月連続の前年比プラスを記録していますが、多くのエコノミストが注目している季節調整済みの系列については、今年2018年に入ってから1~3月期には悪天候に起因する生鮮食品の値上がりなどにより足踏み状態にあった一方で、4月には前月比で+1.3%増を記録し、4~6月期の四半期はいいスタートを切った、と先月のブログに書いたんですが、5月が▲1.7%減ですから、元の木阿弥です。ですから、原系列の前年比プラスにもかかわらず、季節調整済み系列の統計も見て、統計作成官庁である経済産業省でも基調判断は「横ばい傾向」で据え置いています。特に、季節調整済みの系列の前月比で見て、5月の悪天候で衣類の販売が振るわず、織物・衣服・身の回り品小売業が前月比▲3.4%減を記録し、4月に前月比+5.3%増を見せた自動車小売業も5月は▲1.1%減と落ち込みました。国際商品市況における石油価格の上昇に伴って燃料小売業が前月比+1.6%とプラスになったほかは、軒並み前月比マイナスとなりました。
参考情報ながら、この商業販売統計ではサービスの比重が極めて低くなっていますので、本日公表の統計からは情報を得られませんが、5月のゴールデンウィークの天候条件、すなわち、雨と低温については、どこまでサービス消費に影響を及ぼしているか、また、6月中旬の大阪府北部地震の影響など、トピック的にはややサービス消費にはネガな要素が目につき、私は気にしているところです。

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2018年6月27日 (水)

終盤の猛打で横浜に大勝し藤浪投手が今季2勝目!!

  RHE
阪  神300300127 16170
横  浜005000010 6112

中盤までは、なかなかの見応えある撃ち合いの試合展開でしたが、終盤の阪神の猛打で横浜に先勝でした。5回5失点と、内容的にはともかく、藤浪投手は今季2勝目を上げました。打線は上向きながら、中継ぎ陣は最近の岩崎投手や今夜の桑原投手を見てもバテバテもいいところで、少し休ませてやりたい気がします。

明日も、
がんばれタイガース!

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6月調査の日銀短観予想やいかに?

来週7月2日の公表を前に、シンクタンクや金融機関などから6月調査の日銀短観予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って、大企業製造業と非製造業の業況判断DIと全規模全産業の設備投資計画を取りまとめると下の表の通りです。設備投資計画は今年度2018年度です。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、今回の日銀短観予想については、今年度2018年度の設備投資計画に着目しています。一部にとても長くなってしまいました。どうでもいいことながら、前回まで設備投資計画の予想を出していなかった三菱総研が、今回からページ数も倍増の2ページとして設備投資計画の予想も出すようになりました。私のような利用者サイドでは結構なことなんですが、一部のエコノミストが酷使されているのかもしれません。いつもの通り、より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、html の富士通総研以外は、pdf 形式のリポートが別タブで開くか、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあってリポートが読めるかもしれません。

機関名大企業製造業
大企業非製造業
<設備投資計画>
ヘッドライン
3月調査 (最近)+24
+23
<▲0.7>
n.a.
日本総研+23
+23
<+4.5%>
2018年度の設備投資額は、全規模・全産業ベースで前年度比+4.5%と、前回調査対比+5.0%の上方修正を予想。キャッシュフローが潤沢ななか、既存設備の維持・更新投資、人手不足を背景とした合理化・省力化投資を中心に、設備投資需要も引き続き堅調。とりわけ、中小企業・製造業では、6月時点としては異例のプラス計画となるなど、設備投資に対する前向き姿勢が鮮明に。
大和総研+22
+23
<+2.9>
2018年度の設備投資計画(全規模全産業、含む土地、ソフトウェアと研究開発投資額は含まない)は前年度比+2.9%と、前回の3月日銀短観(同▲0.7%)から上方修正されると予想した。6月日銀短観の設備投資計画には、中小企業を中心に上方修正されるという「統計上のクセ」がある。今回は、高水準の企業収益が設備投資に対して引き続きプラスに作用する一方で、2018年に入ってからのグロ―バル金融市場の動揺や米中貿易摩擦の激化、さらには人件費などのコスト上昇を背景とする先行きの業績不透明感が重石となり、概ね例年の修正パターン並みの結果になると想定した。前年度比や修正パターンを総じてみると、6月日銀短観で見る日本企業の設備投資計画は堅調な内容になると想定する。
みずほ総研+22
+23
<+5.1%>
2018年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年度比+5.1%と、3月調査(▲0.7%)から上方修正され、例年よりも高めの伸びを予想する。
製造業については、海外経済の回復に伴い老朽設備を切り替える更新投資が見込まれるほか、IoT化や人手不足などを背景に、半導体製造装置や産業用ロボットへの設備投資意欲も高まるとみられる。非製造業については、製造業と同様に人手不足を背景とした自動化・省力化投資需要が高まっていることに加え、オリンピックに向けた建設投資やインバウンド対応投資が引き続き行われていくだろう。
ニッセイ基礎研+22
+24
<+4.2%>
2018年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年比4.2%増と予想(前回調査時点では前年比0.7%減)。例年6月調査では、計画が固まってくることで大幅に上方修正される傾向が極めて強い。また、最近の設備投資関連指標は、良好な企業収益を受けた投資余力の改善や人手不足に伴う省力化投資などが追い風となり、概ね改善を示していることから、実勢としても底堅い投資スタンスが維持されていると見込まれる。従って、前回調査に続いて例年と比べて高めの伸び率が示されるだろう。
なお、貿易摩擦への懸念は設備投資計画の抑制要因になり得るが、事態は未だ流動的であり、今のところ計画への影響は限定的と見ている。
第一生命経済研+20
+21
<大企業製造業+13.8%>
2018年度の設備投資は、3月調査の時点から底堅かった。大企業・非製造業は例年3月はマイナス計画なのに、3月は0.8%増であった。このプラス幅は、6月はより拡大するだろう。大企業・製造業は、元々2桁の伸びになる傾向があり、今回もその流れを引き継ぐとみられる。中小企業も、製造業がより好調となるだろう。
マクロの設備投資は、1-3月に少し弱めとなったが、相対的には企業のキャッシュフローが安定して増える中で、その一定部分が振り向けられるかたちになるだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング+23
+24
<大企業全産業+9.7%>
2018年度の大企業の設備投資計画は、製造業では前年比+16.0%、非製造業では同+6.0%と、増加計画がさらに上方修正される見込みである。いずれもこの時期に年度の設備投資計画が確定することから上方修正される傾向があるが、それを勘案しても上積み額が大きい。製造業では、人手不足への対応や生産性向上のための投資に対するニーズが強く、足元でも機械受注が増加している。非製造業でも、人手不足への対応のための情報化投資の増加や、東京オリンピック関連需要の高まりが押上げ要因になっていると考えられる。
中小企業については、製造業は前年比+5.0%、非製造業が同-20.0%と、ともに上方修正が見込まれる。例年、計画は調査を経るごとに上方修正される傾向があるが、製造業の計画が6月調査時点でプラスとなるのは、前年の水準が低く、アベノミクスへの期待が高まった2013年度以来である。非製造業は例年並みのペースで上方修正されるであろう。
三菱総研+23
+23
<+4.2%>
2018年度の設備投資計画(全規模・全産業)は、前年比+4.2%と予測する。生産性向上を目的とする情報化関連投資に加え、老朽化する設備の維持・更新投資、人手不足の深刻化を背景とする自動化・省力化投資などへのニーズの高まりが、企業の設備投資計画の押し上げ要因となろう。
富士通総研+22
+22
<+3.7%>
2018年度の設備投資計画(全規模・全産業)は前年度比3.7%と、3月調査から上方修正されると見込まれる。高水準の企業収益が投資を支えており、設備投資の先行指標である機械受注、一致指標である資本財総供給とも、緩やかな増加基調を維持している。景気拡大長期化に伴い、能力増強投資が行われているほか、人手不足を補う省力化投資に対する企業の意欲も衰えていない。また、IoT関連の投資拡大も顕著になっている。2018年度の設備投資計画は、大企業を中心に3月調査で過去の平均を上回る水準からスタートしたが、6月調査もその傾向が続くと予想される。中小企業も例年並みに上方修正されると見込まれる。

ということで、多くの機関が企業マインドの低下を予測しています。そして、大企業に限ってなのかもしれませんが、非製造業よりも製造業の低下幅の方がより大きい、というのも緩やかながらコンセンサスがありそうです。大企業レベルでは非製造業の景況感の低下は見られない、むしろ上向く可能性すら示唆されているように私は受け止めています。大企業製造業の景況感の低下幅もそれほぼ大きいわけでもなく、どこまで悲観的な受止めをするかは、むしろ、受け止める方のスタンスを反映している部分も考慮すべきかもしれないと思うくらいです。そして、私の注目する設備投資については、ほぼほぼ一致して6月調査で大きく上方修正されると見ています。特に、大企業製造業では2ケタ増が見込まれており、短観の統計のクセとして6月調査での上方改定がありますが、例年並み、もしくは、例年を超える上方改定を見込む期間が多くなっています。
下の画像はニッセイ基礎研のリポートから全規模全産業の設備投資計画のグラフを引用しています。

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2018年6月26日 (火)

企業向けサービス物価 (SPPI) は先月に続き+1%の上昇!

本日、日銀から5月の企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。前月と同じ上昇幅を維持しつつ+1.0%を記録しています。プラスの上昇は59か月、すなわち、5年近くになります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の企業向けサービス価格、1.0%上昇人件費上昇や原油高が波及
日銀が26日発表した5月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は104.6と、前年同月比で1.0%上昇した。上昇は59カ月連続。設計などの土木建築サービスと外航貨物輸送を中心に、人手不足や原油高に伴うコスト増を取引価格に転嫁する動きが強まった。
製造業の設備投資意欲の高まりでソフトウエア開発の受託料金も上昇した。このほか化粧品メーカーや旅行会社の出稿増で新聞広告の価格も上がった。
一方で指数は前月比では0.1%下落した。ホテルの新規開業による供給増で宿泊サービスの価格が下落したことが響いた。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは80品目、下落は33品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は47品目で前月の53品目から縮小した。

簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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先月のSPPI公表の時点でも指摘したんですが、4月速報では前年同月比上昇率が+0.9%で、4月確報になって+1.0%、さらに、今日公表の5月速報も同じく+1.0%ですから、制度的な要因として、年度初めの4月にいくつかの値上げが実行されたことが容易に想像できます。さらに、4月速報時点で前年同月比マイナスを記録した広告、さらに、前年比保合いだった情報通信が4月確報でプラスに転じています。ただ、リース・レンタルだけは4月確報でもマイナスのままです。ということで、繰り返しになりますが、4月の年度初めの時点で価格改定が進んだことが読み取れ、背景として、デフレ・マインドの払拭が進んだ可能性が高いのではないか、と私はとても好意的に受け止めています。引き続き、5月も+1.0%の上昇率を記録し、特に、運輸・郵便は石油価格の上昇も相まって前年同月比+2.3%と高い上昇率となっています。ただ、景気に敏感な広告が4月速報に続いて5月速報でも前年同月比▲0.6%を記録していますが、来月の確報でどのように改定されるか、また、好調な滑り出しを見せたワールドカップ・サッカーに一部なりとも連動する広告の価格動向についても、来月の統計公表時に確認したいと思います。

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2018年6月25日 (月)

今年の株主総会集中日は今週木曜日の6月28日!

東証から、3月期決算会社株主総会情報が明らかにされており、今年の株主総会集中日は6月28日で30.9%と、昨年2017年の29.6%かややや反転しています。東証のサイトからグラフを引用すると、以下の通りです。

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集中度のピークだった1995年の96.2%から20年余りかけて徐々に低下を示してきましたが、大和総研のリポート「株主総会集中率の低下に限界感」などによれば、30%程度が低下の限度ではないか、と議論されています。ご参考まで。

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2018年6月24日 (日)

結局、広島に3タテされて単独最下位に陥落!!

  RHE
広  島100005005 11100
阪  神000102300 691

一度は追いつきながらも、結局、広島に3タテされて単独最下位に陥落でした。打線でいえば、終盤の満塁のチャンスを逃しまくった阪神に対して、ヒーローインタビューに立った4番がグランドスラムをかっ飛ばした広島との差なんだろうという気がします。いよいよ、阪神暗黒時代の幕開けか?

次の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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2018年6月23日 (土)

実力の差を見せつけられてホームラン攻勢の広島に大敗!!

  RHE
広  島200013014 11130
阪  神000000300 370

実力の差を見せつけられて広島に大差で連敗でした。打撃陣が相変わらずサッパリ打てないのは見慣れた光景なんですが、今日は投手陣も序盤から失点した上に2ケタ安打の2ケタ四球を献上し、終盤も止めどなく失点を繰り返し、なすすべなくワンサイドゲームでした。カープの独走をタイガースがアシストするのは避けてほしいものです。

明日は3タテ阻止のため、
がんばれタイガース!

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今週の読書はいろいろ読んで計7冊!!

今週は経済書や専門書・教養書は大した読書ではなかったんですが、小説とエッセイについてはとても好きな作家さんの作品を読んで満足のいく読書でした。

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まず、神津多可思『「デフレ論」の誤謬』(日本経済新聞出版社) です。著者は日銀OBであり、典型的にリフレ派の経済学を否定して旧来の日銀理論にしがみついています。ですから、本書の唯一の主張は需要の構造の変化のスピードに供給がついていけていない、という1点なんですが、少し考えれば理解できるように、需要に供給がついていけないのであれば、デフレではなくボトルネック・インフレが生じるはずであり、まったく、私には理解できません。加えて、必ずしも明記されているわけではありませんが、要するに、複合的な要因で持ってデフレに陥っていること、さらに、デフレの何が悪いといわんばかりのマイルド・デフレ肯定論ですから、繰り返しになりますが、旧来の破綻した日銀理論を振り回しているだけであり、特段の見るべき内容はありません。デフレの本質は物価の持続的な下落であり、従って、今日買うよりも明日買う方がおトクなわけですが、それに対する本質的な議論はなされていません。理論的にも実証的にも破綻した大昔の議論を展開しているとしか思えません。ムダな読書だった気がします。

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次に、アーサー R. クローバー『チャイナ・エコノミー』(白桃書房) です。著者は中国在住の英国人エコノミストではないかと思うんですが、確信はありません。極めて包括的に中国経済を論じている一方で、よく見かけるたぐいの中国共産党の決定文書の引用とか、制度論に深入りするとかの傾向が一切なく、私のような中国経済のシロートにもとても判りやすい解説書となっています。特に私の目を引いたのは、第5章であり、国営企業を含む企業に対する見方です。さらに特定すれば、中国企業の成長が資本主義的なイノベーションに基づいているか、それとも、資本と労働を大量に投入することによる要素投入型の成長か、という点に関しては、強く後者であることが示唆されています。その流れの中で第9章のルイス転換点の議論を読むべきです。ただ、ルイス転換点については、私もエレガントに数式を解いたペーパーを書いたりしましたが、現在の我が国の労働市場において賃金が上昇しないこともルイス転換点で説明する向きもあり、おそらく、中国のような人口超大国では数十年のスパンで持って分析する必要がありそうな気がします。ひょっとしたら、中国経済に詳しい向きには物足りないのかもしれませんが、なかなかオススメな1冊です。

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次に、セス・スティーヴンズ=ダヴィドウィッツ『誰もが嘘をついている』(光文社) です。著者はニューヨーク・タイムズにコラムなどを寄稿する研究者であり、前職ではグーグルのチーフエコノミストであるハル・ヴァリアン教授らと研究をしていたということのようです。特に、大きな影響を受けたのは10年近く前に出版されたレヴィット教授らの『ヤバい経済学』であると明記しています。ということで、博士号も持ったビッグデータ研究のデータサイエンティストと考えてよさそうで、必ずしもポリティカル・コレクトネスに合致しないかもしれないものの、ビッグデータから明らかになる人間の本性のようなものを本書では議論しています。そして、そのビッグデータはグーグル検索から得ています。そして、人間の本性を明らかにする以外で、データサイエンス的に興味深かったのはビッグデータの使い道です。例えば、統計学的に標本の平均は母集団に一致することなどはハナから明らかなんですが、ですから、どマクロ的に平均値を出すのにビッグデータを使うのは意味ありません。ビッグデータはもっと細かいセグメント化されたグループの特徴をあぶり出すのに使うべきだと主張しています。地域別の特徴とか、年齢階級別の特徴とか、ということです。データを使えば、いろんな事が判る、という点では『ヤバい経済学』の続編ともいえそうです。

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次に、中野雅至『没落するキャリア官僚』(明石書店) です。著者は、地方公務員・国家公務員から研究者に転じたようです。私もその一員であるキャリア官僚に関する分析です。キャリア官僚に関する定義はいろいろありますが、広義には最上位の採用試験合格者であり、狭義には採用時の事務次官資格者です。本書は、キャリア官僚を「エリート」として対象にしていますので、大きな違いはないかもしれません。本書では、バブル崩壊後のキャリア官僚について没落の始まりとみなしているんですが、もう少し分析が欲しかった気がします。要するに、経済が成長しなくなって、それまで既得権を保証しつつ経済成長の果実を分配することにより官僚がパワーを奮っていたものが、その成長の果実が消滅したことが没落につながった、ということなのかもしれません。さらに、官界の周辺事情がやや狭く考えられていて、政官関係で私が不思議に感じている選挙制度との関係には行き届いていません。すなわち、中選挙区制度下では与党政治家が複数名当選しなければならないことから、いわゆる族議員として専門領域を持ち、それが政官関係に影響を及ぼしていたのが明らかなんですが、そういった政治家=国会議員の専門性が低下しつつある現在、典型例は税調なんでしょうが、それでも専門性高い官僚が政治家に対して専門性で優位に立てないのは不思議な気がします。終章近い6~7章で右傾化やポピュリズムとの関係を考察していますが、感心しません。

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次に、吉田修一『ウォーターゲーム』(幻冬舎) です。著者はご存じ売れっ子の小説家であり、本書はアジアネット(AN)通信の産業スパイを主人公とするシリーズです。このシリーズは既刊に『太陽は動かない』と『森は知っている』があるらしいんですが、私は前者を読んだ記憶があります。ひょっとしたら、後者も読んだかもしれません。記憶はあいまいです。本書はタイトルから想像される通り、水資源を巡る産業スパイの暗躍をテーマとしています。欧州の水メジャー企業による我が国水資源の制圧などなど、です。そして、水資源を巡る本筋とは別に、シリーズ第2段『森は知っている』でかなり明らかにされているようなんですが、AN通信の産業スパイの訓練とかその前段階のリクルートの秘密について、『森は知っている』未読の私は初めて知りました。そして、そのルートからドロップ・アウトした人物が水メジャーの一角に食い込んだりしています。また、水メジャーの暗躍をすっぱ抜くのが九州のローカル新聞の女性記者だったりするのはなかなか凝った作りになっていますが、長崎出身の著者らしいともいえます。ラストの終わり方がさすがといえます。どうでもいいことながら、相変わらず、謎の女性アヤコが「ルパン3世」の峰不二子のイメージのように私には思えて仕方ありません。

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次に、川上未映子『ウィステリアと三人の女たち』(新潮社) です。久し振りの川上作品短編集です。私はこの作家を極めて高く評価していて、今年こそノーベル文学賞は持ち越しと発表されていますが、我が国で村上春樹に次いでノーベル文学賞に近い作家ではないかと考えています。表題作はとても暗い雰囲気で、「死」を濃厚に感じさせる作品でもありますから、好き嫌いはあるかもしれません。しかも、いわゆる純文学であって、エンタメ作品ではありませんから、起承転結を期待する読者にはややハードルが高い気もします。でも、尋常でないくらいの表現力の豊かさや、何ともいえずに「透明感」ある文体など、文学としても水準の高さを読み取れる読者であれば、この作者のいいところが随所に感じられます。私は5月末の産経新聞のインタビューを見て借りて読む気になったんですが、そのインタビューの最後は「次はまた、まったく違う文体で、一番長い話を書くつもりです」と結ばれています。次回作もとても楽しみです。

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最後に、三浦しをん『ビロウな話で恐縮です日記』(新潮文庫) です。私は三浦しをんの小説やエッセイはかなり読んでいて、この作品も読んだような気になっていたんですが、ブログを遡って確かめると読書感想文の記録がなく、文庫本で出版されたのを機に読んでみました。三浦しをんのエッセイは太田出版で単行本が出て、新潮文庫に収録されるというパターンが多く、本書もそうです。そして、私はついつい対象的なもので、酒井順子のエッセイと三浦しをんを比べてしまうんですが、いかにも優等生が下調べよくリポートを取りまとめたような酒井順子のエッセイに比べて、三浦しをんのエッセイは生活実感が丸出しで、特に本書などでは少女マンガのBLモノに話題が集中しています。まほろ駅前シリーズのバックグラウンドがよく理解できるエッセイです。ただ、好き嫌いはあるかもしれません。

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2018年6月22日 (金)

エネルギー価格の上昇により消費者物価 (CPI) 上昇率は17か月連続でプラスを記録!

本日、総務省統計局から5月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。前年同月比上昇率でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月と同じ+0.7%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の全国消費者物価0.7%上昇 伸び幅は横ばい
総務省が22日発表した5月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.0と前年同月比0.7%上昇した。原油高でガソリン価格や電気代が上昇したものの、携帯電話の通信料などが下落し、上昇幅は前月比で横ばいにとどまった。
生鮮食品を除く総合では、全体の53.7%にあたる281品目(4月は282品目)が上昇し、178品目が下落した。横ばいは64品目だった。上昇は17カ月連続となったものの、上昇の勢いは鈍い。
生鮮食品を含む総合は101.0と0.7%上昇した。まぐろやたこなど生鮮魚介類が値上がりした。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは101.1と前年同月比0.3%上昇した。人件費などの上昇で、回転ずしや焼き肉など外食代が上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、コアCPIの前年同月比上昇率で+0.7%でしたので、ジャストミートし市場に何らサプライズはありませんでした。今年2018年2月にコアCPI上昇率が+1.0%に達してから、ジワジワと上昇幅が縮小し、4~5月には+0.7%にまで達しています。ですから、1~3月期には天候条件にともなう生鮮食品の価格上昇もあった一方で、現時点では一時ほどは物価上昇の痛みのようなものは家計は感じていない可能性もあり、消費に対しては家計の過度の節約志向の緩和を通じてプラスの効果を及ぼす可能性が十分ある、と私は考えています。ただ、同時に、日銀のインフレ目標である2%からはかなり遠いという実感もあります。

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5月のコアCPI上昇率+0.7%は、あくまでマクロのレベルの話であり、家計の直面する物価の実感とはやや差がある可能性も私は感じ始めています。すなわち、上のグラフは上のパネルから順に、一番上が基礎的・選択的支出別消費者物価上昇率、そして、下の2枚は購入頻度別消費者物価上昇率なんですが、真ん中のパネルが月間1回程度以上と未満、一番下のパネルが頻繁(年間15回以上)とまれ(年間0.5回未満)のそれぞれのグラフです。見れば明らかなんですが、2017年以降くらいの最近時点では、選択的支出よりも基礎的支出の上昇率が高く、購入頻度の高い品目の方が上昇率が高くなっています。ですから、家計が実際に直面する買い物の際の物価上昇率の実感はマクロ+0.7%上昇より高い可能性が十分あります。それにしては、賃金上昇が物足りませんので、マクロの物価上昇が生鮮食品価格の高騰の落ち着きなど含めて、物価上昇率が低下し始めたにしては、家計の消費への効果がマクロの物価上昇率の落ち着きほどには現れない可能性も否定できません。日銀の物価目標に達しない現状も良し悪しかもしれません。

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2018年6月21日 (木)

ドラ1ルーキー馬場投手の好投を生かせずオリックスと引き分けて交流戦終了!!

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 十一十二 RHE
オリックス010000020000 392
阪  神000002001000 370

終盤からもつれた試合になりましたが、ドラ1ルーキー馬場投手が6回1失点と好投しながら、オリックスと引き分けに終わりました。打つ方は糸井選手が大車輪の活躍でしたが、12イニングズの攻撃でヤケに内野安打の多い7安打では物足りません。いずれにせよ、交流戦はこれにて終了し、6勝11敗1引き分けと5つの負け越しに終わり、阪神はパ・リーグの最下位を独走し監督交代まであった楽天に次ぐブービーでした。

明日からの広島戦は、
がんばれタイガース!

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楽天コミュニケーションズによる「民泊運営事業者向け意識調査結果」やいかに?

先週金曜日の6月15日から、都道府県への届け出を義務付け、年間180日以内との規定を盛り込んだ住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行されていますが、6月13日付けで楽天コミュニケーションズから「民泊運営事業者向け意識調査結果」が明らかにされています。事業者向けのアンケート調査ということで、サンプル数が300と極めて少なく誤差が大きそうな気もしますが、注目のシェアリング・エコノミーの主要分野ですので、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、楽天コミュニケーションズのサイトから 今後、運営物件数を増やしたいか の結果を引用しています。「大幅に増やす」と「増やす」という回答は合わせて47.3%となり、民泊物件オーナーの半数近くが運営拡大を予定していることが明らかとなっています。6月15日付けの日経新聞のサイトでは、「民泊市場、低調の船出」と題して、Airbnb のサイトのリスティング民泊登録物件数が62千件から25千件に大きく減少した、なんぞと報じられていたりするんですが、「減らす」と「大幅に減らす」は合わせても10%しかありません。まさか、と思いますが、いわゆる「ヤミ民泊」に流れたりするんでしょうか。

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次に、上のグラフは、楽天コミュニケーションズのサイトから 180日を超える場合の活用方法 の結果を引用しています。見れば明らかな通り、ウィークリーマンション、スペース、マンスリーマンション、として貸し出しをするというのが大きな割合を占めています。ほかに、民泊運営におけるオーナーの不安として、「騒音問題など近隣とのトラブル」、「鍵の受け渡し」などが上げられていますが、これらは、楽天コミュニケーションズの「あんしんステイIoT」のサービスを売り込むための宣伝文句だという気がします。インターネット上の無料の情報はかなりの程度に宣伝を含むものだということを改めて実感しました。

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2018年6月20日 (水)

ゴールドマン・サックスの予想するワールドカップ・サッカー優勝チームやいかに?

ワールドカップ2018ロシア大会が開幕し、昨夜は我が日本代表がコロンビアに快勝して興奮冷めやらぬところですが、いくつかの報道でも取り上げられている通り、人工知能 AI を用いたゴールドマン・サックスによるワールドカップ・サッカー優勝チームの予想 The World Cup and Economics 2018 が話題になっています。AI を用いて100万回のシミュレーションを行ったという触れ込みで、以下に引用したテーブルのように、ブラジルの優勝確率 18.5%、フランス11.3%、ドイツ 10.7%、ポルトガル9.4%、スペイン 8.2% などと予想しています。ちなみに、我が日本の優勝確率はわずかに 0.4% とはじき出されていおり、さらに、予選リーグ H 組で日本は0勝1引き分け2敗でセネガルとともに予選敗退と予想されていますが、すでにコロンビアを破って勝ち点3を上げており、ゴールドマン・サックスの予想は綻びを見せています。

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実は、前回2014年ブラジル大会の際にも、ゴールドマン・サックスは同じように The World Cup and Economics 2014 において、AI ではなく統計モデルからブラジルの優勝確率 48.5% という圧倒的な数字を明らかにしていましたが、結果は優勝確率 11.4% と3番手につけたドイツが優勝しました。さて、どこまで当てに出来ますことやら。一応、「経済評論のブログ」に分類しておきます。

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2018年6月19日 (火)

大阪北部地震の震度6弱の地域に企業は3万8,322社 (東京商工リサーチ調べ) !

昨日2018年6月18日付けの東京商工リサートのサイトによれば、大阪北部地震により震度6弱が観測された大阪市北区、高槻市、枚方市、茨木市、箕面市に企業は3万8,322社が存在しており、産業別の内訳は以下の通りです。これも同じサイトから引用しています。

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これだけでは、全国平均と比較した特徴は不明なんですが、大阪市北区は大阪高裁や地裁があり、法律事務所や司法書士事務所が多い、といわれています。また、東京商工リサートのサイトでは、「個人企業まで含めた資本金1億円未満の中小・零細企業は3万7,755社(同98.5%)に達する」ことを明らかにしています。中小・零細企業は、大企業ほど外部ショックに耐久力がないケースが少なくないと考えられ、東京商工リサーチでも「外的要因への対応力も弱い」と指摘しています。

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2018年6月18日 (月)

赤字を記録した5月の貿易統計は原油高の影響か?

本日、財務省から5月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+8.1%増の6兆3233億円、輸入額も+14.0%増の6兆9016億円、差引き貿易収支は▲5783億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の貿易収支、3カ月ぶり赤字 原油高などで
財務省が18日発表した5月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5783億円の赤字だった。赤字は3カ月ぶり。前年同月に比べて赤字額は2.8倍になった。輸出入ともに増加したが、原油高などを背景に輸入の伸びが上回った。
輸入額は14.0%増の6兆9016億円だった。2カ月連続で増加し、5月としては過去最高となった。原油価格の上昇を受けて原粗油が増加。航空機類や医薬品といった品目の伸びも寄与した。
輸入額を国・地域別でみると、米国、欧州連合(EU)、アジア、中国がそれぞれ5月としての最高額を記録した。原粗油の輸入額は前年同月比28.6%増の6794億円。円建ての輸入通関単価は28.1%上昇した。
輸出額は8.1%増の6兆3233億円。18カ月連続で増加した。自動車や半導体等製造装置の増加がけん引した。
5月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=109.08円。前年同月に比べて2.1%円高・ドル安方向に振れた。
対米国の貿易収支は3407億円の黒字で黒字額は17.3%減少した。減少は2カ月ぶり。対EUは1238億円の赤字、対アジアは3459億円の黒字、対中国は2802億円の赤字だった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見ても判る通り、今年に入ってから、輸出額と輸入額がかなり近接して来ており、従って、貿易収支は黒字になったり、赤字になったりと、決して、従来のように黒字一辺倒とか、赤字一辺倒という形にはなっていません。そして、下のパネルの季節調整済み系列のグラフを見る限り、赤い折れ線の輸入額の伸びが続いている一方で、青い折れ線の輸出額が伸び悩んでいることが貿易収支の動向に寄与していることは明らかです。輸入の増加が続いているのは国際商品市況における石油価格の上昇が要因となっており、例えば、もっとも直近で利用可能な5月統計で、原油及び粗油の輸入額は季節調整していない原系列の前年同月比で+28.6%の増加を見せているものの、数量の伸びはわずかに+0.4%にしか過ぎません。大部分が国際商品市況における石油価格動向に伴う名目値の変動であり、数量ベースでは大きな変動ではない、ということが出来ます。ただし、引用した記事にもある通り、ジワジワと円高が進行しており、輸出入に対する為替の影響が出始めている可能性も否定できません。

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ということで、輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。輸出については、今年になってから中華圏の春節効果により大きな変動があった後、OECD先行指数に基づく海外の需要動向を見ると、中国では上り坂、OECD加盟国では下り坂となっています。5月の貿易統計については、4月に船舶の大型案件があった反動を指摘するエコノミストもいますが、2017年のデータに基づいて極めて大雑把にいって、アジアへの輸出が年間43兆円、そのうち中国向けが15兆円、先進国が北米の16兆円と西欧の9兆円を合わせて25兆円ですから、最近時点での貿易収支を見る限り、上向きの中国需要動向と伸び悩む先進国需要がその時々によって我が国輸出に影響を及ぼしている、ということになります。もちろん、中長期的には米国を起点とする貿易制限的な通商政策の方向性も気にかかるところです。

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大阪の地震やいかに?

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今朝8時少し前に大阪府北部を震源とする地震がありました。上の画像は日本気象協会の地震情報のサイトから引用しています。
我が家の下の倅は今春から大阪に下宿していますし、世話を焼いてくれている叔母も大阪にいます。安否を確認したところ、ともに特段の被害や不便はない、とのことで安心しました。
でも、亡くなった方もおられますし、被害にあわれた方々にお見舞い申し上げます。

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2018年6月17日 (日)

まったくいいところなく楽天にボロ負け!!

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  RHE
阪  神000000000 043
楽  天02024000x 8121

ピッチャーも、バッターも、ついでに守備や走塁まで、まったくいいところなく楽天にボロ負けでした。まあ、こういう試合もあります。明日お休みの後、甲子園主催ゲームの交流戦2試合がまだ残っています。がんばりましょう。

次のロッテ戦とその次のオリックス戦も、
がんばれタイガース!

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米朝首脳会談に関する海外論調やいかに?

世紀の米朝首脳会談が6月12日に開催されて、私も専門外ながらそれなりに注目していたんですが、いくつか海外論調を集めてみました。あくまで、自分自身の覚書のためながら、ご参考まで。

まったくのついでながら、Wall Street Journal のサイトが報じたG7サミットでのトランプ米国大統領の安倍総理に対する暴言は以下の通りです。報じられた記事の関連するパラだけ引用しています。

The U.S. president jarred some with blunt observations. At one point, Mr. Trump brought up migration as a big problem for Europe and then told Mr. Abe, "Shinzo, you don't have this problem, but I can send you 25 million Mexicans and you'll be out of office very soon," according to the senior EU official who was in the room. A sense of irritation with Mr. Trump could be felt, "but everyone tried to be rational and calm," the person said.

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2018年6月16日 (土)

楽天エースの則本投手を最終回に攻略して楽天に連勝!!

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  RHE
阪  神000000002 290
楽  天000000010 180

帰宅すると、9回ウラツーアウトで走者は1塁と2塁にいて、マウンド上はクローザーの藤川投手が仁王立ちでした。まったく得点シーンは見ていないんですが、楽天エースの則本投手を最終回に攻略して連勝でした。先発岩貞投手が終盤まで踏ん張り、8回に失点したものの、9回には則本投手を攻めて土壇場でうっちゃり、最終回は復活したクローザー藤川投手が走者を出しつつもゼロで締めました。

明日の楽天戦も3タテ目指して、
がんばれタイガース!

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今週の読書は新書の5冊を含めて大量9冊!!!

今週は先週のプラットフォームに関する一連の経済書の続きをはじめ、一挙に9冊読みました。昨日のご寄贈本を含めると10冊に上ります。新書が半分の5冊を占めるとはいえ、日本経済学会春季大会が開催された神戸への往復新幹線も含めて、よく読んだものだと自分でも感心しています。

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まず、アンドリュー・マカフィー & エリック・ブリニョルフソン『プラットフォームの経済学』(日経BP社) です。著者は米国MITの研究者であり、前作は『ザ・セカンド・マシン・エイジ』であり、ムーアの法則に基づく指数関数的なコンピュータの高性能化や経済のデジタル化が、19世紀の第1次機械時代に匹敵する衝撃を社会にもたらす、と論じられたわけですが、本書では第1部でマシンを、第2部でプラットフォームを、第3部でクラウドとコアの3つに焦点を合わせており、本書のタイトルはかなりミスリーディングです。というのも、商店としてあげた3つの潮流のうち、実は、第2部のプラットフォームはもっとも軽く扱われているからです。かなり容易に想像される通り、第1部のマシン編では当然のようにAIやロボットが取り上げられ、第2部のプラットフォーム編ではAmazonやFacebookやGoogleなどのネット企業のビジネスについて分析され、第3部のクラウド編では資金やアイデアのクラウド・ソーシング活用の現状がフォーカスされます。先行きにかなりのバリエーションがあって、必ずしも確定的な方向性を提示できないのは理解しないでもないんですが、研究者ですのでもう少し今後の方向を提示してほしかった気がします。ジャーナリスト的にいろんな事実を羅列するにとどまっているのは少し残念です。

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次に、外山文子・日下渉・伊賀司・見市建[編著]『21世紀東南アジアの強権政治』(明石書店) です。東南アジアのいわゆるASEAN創設時の5か国のうち、シンガポールを除くタイ、フィリピン、マレーシア、インドネシアの4か国におけるストロングマン時代のリーダーを概観しています。タイについてはタクシン-インラックの兄妹政権におけるポピュリスト的な傾向の政治、フィリピンの義賊ドゥテルテ政権、マレーシアのナジブ政権、インドネシアのジョコ大統領です。このうち、マレーシアのナジブ首相については、何と、90歳超のマハティール首相が政権に返り咲いています。東南アジアの民主化についてはフィリピンのマルコス大統領の追放がもっとも先駆けていましたが、いまではドゥテルテ大統領が麻薬追放などで人権虫の非合法活動を容認するような「規律」を展開しています。ただ、ドゥテルテ大統領については、ダバオ市長のころのアンパトゥアン一家に対抗する上で、少し勘違いした、という点もありそうな気がします。また、インドネシアのジョコ大統領は私の考えでは決してストロングマンではないと考えるべきです。いずれにせよ、例えば四国4県の知事さんの共通項があるとは限らないように、東南アジアを一色で染めようとする試みは無謀だという気がします。

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次に、クリストフ・ボヌイユ & ジャン=バティスト・フレソズ『人新世とは何か』(青土社) です。著者2人はフランスの国立科学研究センターの研究員であり、同時に、社会科学高等研究院でも教えていると著者紹介にあります。本書では、人新世 Anthropocène を18世紀半ばの蒸気機関の発明から現在までと提唱し、環境や資源などの有限性を基に、サステイナブルではない人間生活について、必ずしもタイトルと落ちに地質学的な分析ではなく、かなりの程度に社会科学的な研究成果が明らかにされています。その意味で第3部がメインになることは明らかなんですが、熱の発生、戦争を含む死の累積、爆食の実態、環境破壊、などなどが取り上げられ、現在の生産と消費のあり方のままでは、地球が気候や環境をはじめとして、決して、サステイナブルではない現状と悲観的な先行き見通しをこれでもかと並べています。著者2人の主張も判らなくもないんですが、先行きの技術革新を含めて、私はもう少し楽観的です。

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次に、新書5冊を一挙に、橋本健二『新・日本の階級社会』(講談社現代新書)、吉川徹『日本の分断』(光文社新書)、野口功一著『シェアリングエコノミーまるわかり』(日経文庫)、新戸雅章著『江戸の科学者』(平凡社新書)、太田肇『「ネコ型」人間の時代』(平凡社新書) の5冊です。上の2冊は我が国の格差社会について分析を加えています。格差はもはや階級に転じたとの主張や大学進学を境目に乗り越えられない分断が社会に生まれた、との見方が示されています。私の従来からの主張通りに、格差や貧困に対する「自己責任論」が粉砕されています。3つ目はAirbnbやUberなどのシェアリング・エコノミーについての概説書です。仕事の関係もあって少し読んでみましたが、まあ、私のように研究対象にしているエコノミストからすれば、参考程度の内容ではないかという気がします。4冊目の新書では、江戸の科学者について、人口に膾炙した平賀源内や和算学者の関孝和をはじめとして、さまざまな分野の科学者が紹介され、江戸末期には当時の西洋先進国に遜色ない陣容であった点が強調されています。最後は、イヌ型人間とネコ型人間が対比され、標準的な小品種大量生産の近代工業社会ではイヌ型人間が有利であった一方で、情報化社会が進展しデータやノウハウの重要性が高まった現代はネコ型人間の時代を迎えた可能性が示唆されています。

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最後に、綾辻行人ほか『7人の名探偵』(講談社ノベルス) です。どこからカウントするのか、私にはイマイチ不明なのですが、帯にある通り、昨年2017年が新本格ミステリ30周年であったことを記念するアンソロジです。我が母校の京大ミス研の3人を中心に、7つの短編を収録しています。すなわち、麻耶雄嵩「水曜日と金曜日が嫌い - 大鏡家殺人事件 -」、山口雅也「毒饅頭怖い 推理の一問題」、我孫子武丸「プロジェクト: シャーロック」、有栖川有栖「船長が死んだ夜」、法月綸太郎「あべこべの遺書」、歌野晶午「天才少年の見た夢は」、綾辻行人「仮題・ぬえの密室」で、最後の綾辻作品だけはミステリかもしれませんが、エッセイとして仕上がっています。少なくとも、タイトルに異議ありで、綾辻作品には名探偵は登場しません。いずれも読み応えある短編ミステリです。なお、出版社である講談社の「新本格30周年記念企画」のサイトには本書のほか、『謎の館へようこそ 白』と『謎の館へようこそ 黒』、さらに、『名探偵傑作短編集 御手洗潔篇』、『名探偵傑作短編集 法月綸太郎篇』、『名探偵傑作短編集 火村英生篇』などが紹介されています。ご参考まで。

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2018年6月15日 (金)

藤浪投手復活の確かな手応えで楽天に完勝!!

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  RHE
阪  神000002101 480
楽  天000000000 050

藤浪投手の力投で楽天に完勝でした。7回途中まで4安打無失点で今季初勝利です。ヒーローインタビューでも殊勝な発言が目立ちました。リリーフ投手人もていねいなピッチングで完封リレーを完成させました。打線も少しずつ得点が上がるようになってきており、糸原選手や藤川俊介選手のバッティングが目に付きました。

明日の楽天戦も、
がんばれタイガース!

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ご寄贈いただいた『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房) を読む!

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とても久し振りに図書をご寄贈いただきました。ブレイディみかこ×松尾匡×北田暁大『そろそろ左派は<経済>を語ろう』(亜紀書房) です。私個人のブログなんぞはとても貧弱なメディアなんですが、図書をご寄贈いただいた折には、義理堅く読書感想文をアップすることにしております。当然です。
まず、私自身については、官庁エコノミストにして左派、という独特の立ち位置にあり、少なくとも左派であることを隠そうとはしていません。例えば、もう定年に達しようという年齢なんですが、そもそもの採用面接でのアピール・ポイントとして、「大学においては経済学の古典をそれなりに読んだと自負している。スミス『国富論』、リカード『経済学と課税の原理』、マルクス『資本論』全3巻、ケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』などである。」と、堂々とマルクス『資本論』を読んだことを明らかにした上で経済官庁に採用されたりしています。まあ、その後、立身出世とは縁遠い人生を送ったことも事実ではあります。
ということで、本書の関連としては、著者のおひとりである松尾教授の『この経済政策が民主主義を救う』(大月書店) をほぼ2年前の2016年5月28日の読書感想文で取り上げ、「ジャカルタから2003年に帰国して以来、ここ十数年で読んだうちの最高の経済書でした。まさに、私が考える経済政策の要諦を余すところなく指摘してくれている気がします。」と極めて高く評価しています。その折にも指摘したところですが、痛みを伴う構造調整による景気拡大でなければ「ホンモノ」ではなく、金融緩和による「まやかし」の成長は歪みをもたらし、加えて、財政赤字を累増させるような拡張的財政政策なんてとんでもないことで、逆に増税で財政再建を進め、デフレや円高を容認して、それらに耐えるように構造改革を進めるべし、といったウルトラ右派的かつ新自由主義的な経済政策観が幅を利かせる一方で、現在のアベノミクスの基礎をなしているリフレ派な、かつケインジアンな政策に対する世間一般の理解が進まないことを私自身はとても憂慮しています。そして、こういった私の懸念を払拭するために強力なサポートが本書でも得られるととても喜んでいます。
北田教授の社会学的な視点などの専門外の部分は別にして、そういった100点満点の本書であることを前提に、ご寄贈に応えるために、今後のご出版のご参考として私見をいくつか書き加えると、国際経済の視点をもう少し盛り込んだ経済政策論が欲しい気がします。というのも、本書で指摘されている通り、右派は内向きであり、左派は外向き、というのはその通りで、私はそれをナショナリストとインターナショナリストと呼んだりもするわけですが、米国や欧州におけるポピュリズムの台頭も横目で見据えつつ、本書では移民に対する左派的な promotive な見方が示されている一方で、自由貿易に対する見解はまったく見受けられません。私は、移民政策も同じなんですが、自由貿易についても、基本は条件付き賛成です。すなわち、移民にせよ、自由貿易にせよ、国民経済全体としてはプラスのインパクトがある一方で、平たい表現をすれば、損をする集団もあれば、得をする集団もあるわけで、その得をする集団の経済的厚生増加の一部を、たとえ期間限定であっても、損をする集団に補償することが必要です。その分配政策なしで無条件に、まあ、誤解を招きそうな表現かもしれませんが、いわば「弱肉強食」に近い形で、移民や貿易の自由化を進めるのは、私は大いに疑問を持っています。例えば、実証なしの直観的な議論ですが、高度な技能を持った移民は大企業に有利にはたらく一方で、低賃金な移民は中小零細企業で活用できそうな気がしますし、レシプロカルに自由貿易を進めると仮定すれば、メリッツ教授らの新々貿易理論の示す通り、大雑把に大企業ではないかと想像される国際競争力ある産業に有利なことはいうまでもなく、逆に、国際競争力ない産業や途上国の低賃金労働に支えられた製品と競合する産業には不利であり、後者は極めて大雑把に、大企業も含まれているかもしれないものの、中小企業も少なくないような気がします。もうひとつは、現在の日本経済の景気観です。左派は多くの場合、景気が悪くて賃金が上がらず、失業が蔓延している、といった否定的な景気観を表明することがあり、本書でもそのラインが踏襲されているような気がします。日本経済の現状は、景気局面について、左派はどう考えているのか、失業率が大きく低下しながら賃金が上がらない、あるいは、労働分配率が低下を続けるのはなぜかのか、そして、それはどのように経済政策で対応すればいいのか、とても重要なポイントのように私は受け止めています。特に、現在の安倍政権のアベノミクスを左派的な視点から高く評価しつつも、他方で、党派的な見地からか、何なのか、本書でも踏襲されている「実績が上がっておらず、景気が悪い」と、一見すれば矛盾するような結論を示されると、私のような左派でありながらも頭の回転の鈍い人間には、なかなか左派の語る経済に関する理解がはかどらないような気がします。最後の方は少し筆が滑りましたが、以上の2点はいずれも本書を批判するわけではありません。あくまで、今後のご出版のご参考です。失礼いたしました。
いずれにせよ、過去何度かの選挙結果を見れば、国民がアベノミクスの経済政策をかなりの程度に支持していることは明らかです。メディアなどで見受けるオピニオン・リーダーらの経済実感と違って、国民の経済観や景気観は決して悪くないんだろうと、少なくとも選挙結果からはうかがえます。もちろん、森友・加計問題の解明や安全保障政策の議論、さらに、憲法改正に対する意見表明などはとても大事ですが、日々の生活を抱えた国民の支持を得られるような経済政策の提示は、いずれの政党党派においても極めて重要な課題であり、その昔の米国大統領選挙で当時のクリントン候補の掲げた "It's the economy, stupid." は今でも忘れるべきではないポイントだと私は考えています。

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2018年6月14日 (木)

実力の違いを見せつけられて日本ハムに連敗!!

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  RHE
阪  神000000021 3111
日本ハム10001243x 11130

実力の違いを見せつけられて日本ハムに連敗でした。昨シーズンはあれほど安定感あった秋山投手が守備の乱れもあって8失点し、打線は相変わらず、先頭打者が出塁しても、塁上をにぎわせても、最後は決定打なく得点が上がらず、11安打で3得点にとどまりました。得点差がそのまま実力の違いを反映しているような気がします。

明日の楽天戦は藤浪投手に期待して、
がんばれタイガース!

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博報堂生活総研「家族30年変化」調査結果の第1弾夫婦の力関係の変化やいかに?

6月11日に博報堂生活総研から「家族30年変化」調査の結果として第1弾の夫婦の力関係の変化が明らかにされています。まあ、ブログのタイトルですから「いかに?」としてしまったんですが、リポートの副題は「妻は強く、夫は弱くなった30年」とされており、夫婦間の力関係はこの30年で明らかに夫から妻にシフトしています。わざわざ調査するまでもないという気もしますが、簡単に図表を引用しつつ取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、博報堂生活総研のリポートから、この30年間における 家庭の総合的な決定権 の推移をプロットしています。30年前の1988年は「主に夫」が72.4%で、「主に妻」が10.1%だったんですが、今年2018年には「主に夫」が38.7%に低下する一方で、「主に妻」が30.3%に上昇しています。ついでながら、グラフの引用は控えますが、年代別では「妻が30代以下」の夫婦で、今回2018年調査ではじめて「妻 > 夫」の逆転が生じ、「主に妻」が36.0%に対し、「主に夫」が33.3%を記録しています。ほかに、家庭の事柄の決定権として、妻が働きに出ることの決定権、親と同居することの決定権、子どもの名前の決定権、子どもを何人生むかの決定権、夫の友人・知人を家へ招くことの決定権、妻の友人・知人を家へ招くことの決定権がりぽーとされており、また、理想の夫婦像と現実の夫婦像のそれぞれについて、亭主関白/友達夫婦/カカア天下の構成比の30年間の推移、さらに、夫婦の依存意識などについての結果が報告されています。調査結果はとてもリアルで現実感あふれるものとなっていると感じるのは私だけではないような気がします。

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2018年6月13日 (水)

ルーズベルト・ゲームながら4回の大量失点が響いて日本ハムに惜敗!!

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  RHE
阪  神000300202 7160
日本ハム00161000x 8100

7-8 のルーズベルト・ゲームながら日本ハムに惜敗でした。打線は16安打の7得点とそれなりに活発で、最終回も追い上げたんですが、いかんせん、4回の大量6失点が取り返せませんでした。先発の小野投手は早々に見切った一方で、あとワンアウトとはいえ、尾仲投手が4連打されて特大ホームランを浴びるまで引っ張るとは、投手交代が遅れたとしか思えません。打線に復活に兆しが見えたのが明るいポイントで、最終回の追い上げが明日につながることを期待します。

明日は、
がんばれタイガース!

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マクロミルによる「新社会人の意識調査 (2018年)」の結果やいかに?

毎年、新入社員の意識調査についてはいくつか参照しているんですが、マクロミルの「新社会人の意識調査 (2018年)」について、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、マクロミルのサイトからTOPICSを5点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 新社会人の59%が、"第1希望"に就職。過去11年間で最高
  • 就職先へのイメージ、入社前と「ギャップがあった」44%。ギャップの内容で最多が「残業が多い」
  • 3割超が、"就職先がブラック企業ではないか"と感じたこと「あり」
  • 管理職以上の役職志望率、新社会人全体では62%。男性は79%、女性は45%
  • 理想の職場を各ランキングの1位から再現! 社長「内村光良」、上司・先輩「城島茂」、同期「大谷翔平」、後輩「神木隆之介」
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いくつかマクロミルのサイトから図表を引用すると、上の折れ線グラフは 第1希望への就職率 をプロットしています。一昨年2016年の50.5%や昨年2017年の50.0%から、今年2018年は58.5%に大きくジャンプしています。リーマン・ショック直前の2008年よりも高い水準です。ここ何年か就活は人手不足の売り手市場といわれてきましたが、特に今年2018年は第1志望への就職率にそれが現れているようです。

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次に、マクロミルのサイトから 就職先に対する、入社前のイメージとギャップ内容 上位5位 を引用すると上のグラフの通りです。「残業が多い」で28.7%、次いで、「仕事がつまらない」と「給与が少ない」がともに25.3%、「有給休暇が取得しづらい」20.7%、「研修内容が不十分」19.5%と続いています。

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次に、マクロミルのサイトから 勤め先が「ブラック企業ではないか」と感じた経験の有無 のグラフを引用すると上の通りです。最近2年間、すなわち、2017-18年で社会的関心の高まりとともに30%を超えるようになっています。

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2018年6月12日 (火)

堅調な企業マインドを反映する法人企業景気予測調査と石油価格につられて上昇幅を拡大した企業物価!

本日、財務省から4~6月期の法人企業景気予測調査が、また、日銀から5月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。法人企業景気予測調査のヘッドラインとなる大企業全産業の景況感判断指数(BSI)は1~3月期の+3.3の後、4~6月期には▲2.0とマイナスを記録していますが、先行きについては、7~9月期は+6.9に、また、10~12月期は+7.9と、それぞれプラスに戻ってそのプラス幅を拡大すると見通されており、他方、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+2.7%でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4-6月の大企業景況感、マイナス2.0 7-9月はプラス6.9
財務省と内閣府が12日発表した法人企業景気予測調査によると、4~6月期の大企業全産業の景況判断指数(BSI)はマイナス2.0だった。マイナスは4四半期ぶり。前回調査の1~3月期はプラス3.3だった。
先行き7~9月期の見通しはプラス6.9となった。4~6月期は大企業のうち、製造業がマイナス3.2で、非製造業はマイナス1.4だった。中小企業の全産業はマイナス10.6だった。
2018年度の設備投資見通しは前年度比5.4%増だった。設備投資見通しは前回調査では6.5%減となっていた。
景況判断指数は「上昇」と答えた企業と「下降」と答えた企業の割合の差から算出する。
5月の企業物価指数、前年比2.7%上昇 原油高が押し上げ
日銀が12日発表した5月の国内企業物価指数(2015年=100)は101.1で前年同月比2.7%上昇した。前年実績を上回るのは17カ月連続。上昇率は4月の確報値(2.1%上昇)から拡大し、1月以来の高水準だった。原油価格の上昇を背景に石油・石炭製品が値上がりし、全体を押し上げた。前月比では0.6%上昇した。
原油高で電力・都市ガス・水道のほか、化学製品の価格も上昇した。アルミニウム価格の上昇でアルミニウム合金など非鉄金属の価格も上昇した。
円ベースの輸出物価は前年同月比で2.4%上昇した。前月比では1.1%上昇した。輸入物価は前年同月比で6.5%上昇した。前月比では2.7%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは401品目、下落したのは254品目だった。上昇品目と下落品目の差は147と4月(確報値)の124品目から増えた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業景気予測調査のうち大企業の景況判断BSIのグラフは以下の通りです。重なって少し見にくいかもしれませんが、赤と水色の折れ線の色分けは凡例の通り、濃い赤のラインが実績で、水色のラインが先行き予測です。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、繰り返しになりますが、統計のヘッドラインとなる景況判断BSIについては、4~6月期には▲2.0とマイナスを記録しました。前回調査から4~6月期にはプラス幅を大きく縮小させる元の予想されていましたし、先行きについては、7~9月期は+6.9に、また、10~12月期は+7.9と、それぞれプラスに戻ってそのプラス幅を拡大すると見通されているわけですので、ハードデータ的に1~3月期の景気が冴えなかったのがマインドのソフトデータに反映されたのではないかと私は受け止めています。その他のマインドデータで興味あるところは、まず、6月末の時点における雇用に関しては不足超が大企業で18.8%、中堅企業が33.1%、中小企業が29.5%となっており、製造業と非製造業の差は大きくありませんが、規模別には中堅・中小企業が大企業に比べて採用に苦労しているのが読み取れます。また、設備投資計画については、全規模全産業でソフトウェアを含み土地を除くベースで、前回調査では今年2018年度は▲6.5%減と見込まれていたところ、今回調査では投資計画が固まって来たのか、+5.4%増に大きく上方修正されています。ほとんどが製造業のプラスで、非製造業は昨年並みという計画となっています。7月に入れば6月調査の日銀短観が明らかになりますが、引き続き、年度後半にかけて企業マインドは堅調と考えてよさそうです。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、PPIのヘッドラインとなる国内物価は前年同月比上昇率で見て、4月確報の+2.1%から5月速報では+2.7%と上昇幅を拡大しています。3月4月と国内物価上昇率は+2.1%が続き、基本的に、為替が円高に振れた影響と私は考えていたんですが、5月については逆に円安の進行と国際商品市況における石油価格上昇の影響が大きいと考えるべきです。季節調整していない前月比上昇率で見ても、国内物価のうち上昇幅が大きいのは、ガソリンなどの石油・石炭製品+0.28%、電力・都市ガス・水道とキシレンなどの化学製品の+0.10%となっています。また、国内物価以外でも石油価格の影響の強い輸入物価上昇率は円ベースの前年同月比で見て、3月+1.7%、4月+5.0%のぞれぞれ上昇から、5月には+6.5%までプラス幅を拡大しています。もっとも、円安も石油価格上昇も足元では5月中下旬には反転の兆しを見せており、金融政策動向よりもよっぽど物価への影響力の強い石油価格の動向には目が離せません。

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2018年6月11日 (月)

大きく増加した4月の機械受注をどう見るか?

本日、内閣府から4月の機械受注が公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比+10.1%増の9431億円を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の機械受注10.1%増、9年10カ月ぶり高水準 基調判断は上方修正
内閣府が11日発表した4月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比10.1%増の9431億円だった。製造業の受注が大きく増え、リーマン・ショック前の2008年6月以来の高水準となった。
内閣府は基調判断を「持ち直している」に上方修正した。上方修正は17年8月以来。
4月の受注額は、製造業が22.7%増の4479億円だった。17業種のうち、13業種が増加した。前月の大幅減の反動に加え、内燃機関の受注などがあった造船業が大きく増えた。クレーンや金属加工機械の受注が増え、「はん用・生産用機械」は分類が始まった11年4月以来で過去最高となった。「自動車・同付属品」も08年3月以来の高水準だった。
非製造業は0.4%増の4778億円だった。電力業や情報サービス業が増加した半面、3月に受注が増えた反動で、「運輸業・郵便業」や「建設業」は減った。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は9.6%増だった。
4~6月期の「船舶、電力を除く民需」の季節調整値の見通しは前期比7.1%増となっている。

いつものグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、コア機械受注が前月比+10.1%増の9431億円でしたので、上のグラフを見ても6か月後方移動平均のトレンドが上向いているようにも見受けられますし、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「持ち直しの動きがみられる」から「持ち直している」に半ノッチ引き上げています。受注額としては、引用した記事にもある通り、リーマン・ショック前の2008年6月以来の高水準を記録しています。先月の統計公表時に4~6月期の見通しは前期比+7.1%の増加だったんですが、4月のコア機械受注の受注額水準は1~3月期を+8.0%上回っていますから、かなり高い受注水準であることは明らかでし、そもそも、1~3月期のコア機械受注は前期比で+3.3%増でしたので、4~6月期も続けて前期比での増加になる可能性は高いと私は受け止めています。基本的には、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控えて、人手不足が非製造業を中心に広範に観察され、省力化投資需要は引き続き機械受注を押し上げる方向にあり、製造業も能力増強投資はともかく、設備投資をかなり抑えてきた期間が長くなり、更新投資の需要も見込めることから、こういった設備投資需要を背景に機械受注は、足元から目先、緩やかな増加基調を続けると私は期待しています。ただし、今週末のG7でも明らかになったように、米国の通商政策がかなり保護主義に傾く可能性があり、少し長い目で見ると米国通商政策リスクは無視できないと考えるべきです。

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2018年6月10日 (日)

日本経済学会春季大会にて学会発表!!

昨日から今日にかけて、神戸の兵庫県立大学で開催されていた日本経済学会の春季大会に出席していました。役所がスポンサーになっている特別セッションがあるんですが、そこで研究成果を学会発表してくるようにとの出張でした。昨年も同じようなこの6月上旬の時期に、国際開発学会で我が国高度成長期に経済計画の果たした役割について研究成果を発表した記憶がありますが、2年連続でなぜか神戸に来て研究成果を学会発表したことになります。私は専門分野の開発経済関係で学会には3つ入っているんですが、この週末に行った日本経済学会は、まあ、我が国を代表する経済学関係の学会ですので、役所が、いわば法人会員のように加盟していて、私個人は入っていません。研究成果を発表するとともに、パネルディスカッションにも参加してきました。それにしても、昨日神戸についてその足で午後から学会発表をしたんですが、ホテルにチェックインしてニュースを見ると新幹線で刃物を振り回しての殺傷事件が発生しており、今日の帰りの新幹線に乗るのが少し怖い気もしましたが、さすがに立て続けにそういった物騒な事件は起こらず、先ほど無事に帰宅しました。
以下は学会発表とパネルディスカッションの写真です。

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2018年6月 9日 (土)

今週の読書は経済書などいろいろあって計7冊!

本日、6月9日の土曜日は別途の予定があり、極めて異例ながら、未明の早い時間帯に読書感想文のブログをアップしておきます。経済書をはじめとして、フリードマンの最新作にして最後の著書と示唆されている『遅刻してくれて、ありがとう』を含め、以下の7冊です。

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まず、太田康夫『没落の東京マーケット』(日本経済新聞出版社) です。著者は日経新聞のジャーナリストであり、本書に代表されるように、金融セクターに強いんではないかと想像しています。我が国の金融市場のアジア、ひいては世界におけるプレゼンスが1990年前後のバブル期から大きく低下している事実を取り上げています。そして、その原因のひとつとして日銀による緩和的な金融政策運営を上げ、規制緩和なども進んでいない現状を批判していたりします。確かに、著者の主張は私にも判らないでもないんですが、では、金融市場でそれ相応の金利を復活させて金融機関の利益が上がるようにするのが、果たして国民経済にとっていい金融政策なのか、といわれると大いに疑問です。金融政策は金融機関の健全な経営や運営もマンデートのひとつなんでしょうが、国民経済を犠牲にしてまで特定業界の利益を図るとすれば別問題で、私は大いに疑問です。そもそも、エコノミストの中には金融産業が我が国の比較優位であるかどうかを疑問視する意見もありますし、比較優位にないからこそ、本書でいうところの「没落」する産業なのに、どこまで政策リソースをつぎ込むかは見方が分かれるといわざるを得ません。著者ご自身が取材の対象としていて、おそらくは、知り合いも多いと考えられる業界の支援策をどこまで優先順位高いと考えるかは、ジャーナリストとしての資質にもかかわる可能性すらあります。

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次に、デヴィッド S. エヴァンス & リチャード・シュマレンジー『最新プラットフォーム戦略』(朝日新聞出版) とニコラス L. ジョンソン『プラットフォーム革命』(英治出版) です。一方向への直線的な経済活動を行う伝統的な企業と異なり、ITC技術の進展に裏付けられたデジタル・エコノミーの発達とともにマルチサイドのプラットフォーム企業の活動の場が整備されて来ています。もちろん、中小企業金融などで、その昔からマルチサイドなプラットフォーム企業、あるいは、そういった経済活動は決して存在しなわけではありませんでしたが、民泊などのシェアリング・エコノミーやアマゾン、グーグル、マイクロソフト、アリババ、フェイスブック、ツイッターなどはプラットフォームを顧客に対し提供し、顧客同士がつながるビジネスを展開しています。ここで取り上げる2冊のうち、『最新プラットフォーム戦略』の方がやや理論的な側面が強く、『プラットフォーム革命』はビジネスの実務的な側面が強いといえます。私は開発経済学を施文とするエコノミストとして、『最新プラットフォーム戦略』で取り上げられているケニアのMペサの成功などがとても参考になりました。ただ、『プラットフォーム革命』でも、3~4章あたりではかなり理論的な解説を加えており、5章からの実務的なケーススタディと少し趣きが異なります。『最新プラットフォーム戦略』では、Rochet and Tirole (2003) "Platform Competition in Two-sided Markets" の理論がキチンと解説されています。なお、同じように「プラットフォーム」というバズワードをタイトルに含むマカフィー & ブリニョルフソン『プラットフォームの経済学』(日経BP社) も手元に届きましたので、来週の読書感想文で取り上げたいと思います。

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次に、元村有希子『科学のミカタ』(毎日新聞出版) です。著者は毎日新聞のジャーナリストであり、科学環境部長を務めています。章別に、「こころときめきするもの」とか、「すさまじきもの」とかの、『枕草子』の引用をタイトルにしており、物理、化学、生物をはじめとする自然科学を広くカバーしつつ、さらに、宇宙、医療、気象、などなど、親しみやすいテーマで取り上げています。教育学部出身ながら教員免許は「国語」ということで、必ずしも専門知識のない一般読者にも判りやすく解説を加えています。私は第Ⅱ章 すさまじきもの が印象的でした。気候変動や生物多様性の問題など、今後の地球に対する科学的なリスクが取り上げられています。最終章の医療分野の尊厳死や再生医療などは科学的にできることと社会的に受け入れられることの違いがキチンと表現されていたような気がします。さすがに、ジャーナリストらしく読みやすい文章で、スラスラと一気に読めます。ただ、それだけに、頭に残りにくいような気がしたのは私だけかもしれません。

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次に、トーマス・フリードマン『遅刻してくれて、ありがとう』上下(日本経済新聞出版社) です。著書はご存じの通りの「ニューヨーク・タイムズ」のジャーナリストであり、世界的なベストセラーとなった『レクサスとオリーブの木』や『フラット化する世界』の著者でもあります。本書では、現代を「加速の時代」と位置づけ、そのバックグラウンドにはICT技術の中でも、いわゆるムーアの法則に則った指数的なハードウェアの高集積化、さらにこれに伴うソフトウェアも高度化高速化しています。グーグルのマップリデュースからハドゥープといったソフトウェアがまさにそれに当たります。他方で、著者は『孤独なボウリング』的なコミュニティの崩壊には同意せず、特に第12章以降では著者が生まれ育ったミネソタ州のユダヤ人の比率の高いコミュニティへの回帰を希望を持って楽観的に示唆しています。ただ、ICT技術の発展と対をなすグローバル化の進展で、もはや、中スキルで高所得といった職はなくなったことも事実として受け入れています。本書のタイトルは、宣伝文句にあるように、今までの常識が通用しない世界に入りつつある、ということと、同時に、少し立ち止まって遅刻した相手を待つ間にでも思考のための一時停止が必要、という二重の意味を込めているようです。伏見威蕃の訳であり、クルーグマン教授の著書の翻訳で有名な山形浩郎や少し前にクイーンの国別シリーズの新訳を上梓した越前敏弥などとともに、私のもっとも信頼する翻訳者の1人です。

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最後に、スティーブン・スローマン & フィリップ・ファーンバック『知ってるつもり』(早川書房) です。心理学とマーケティングのそれぞれの認知科学の学際領域の専門家2人が共著者となっています。何を論じているかでどちらの著者が書いているのかがよく判ったりします。幅広くいろんなテーマについて認知の問題を論じているいんですが、特に秀逸だったのは認知の観点から民主主義のあり方を論じた第9章、そして、賢さについて論じている第10~12章です。ポピュリズムの議論を待たずとも、直接民主主義は代議制の間接民主主義よりも望ましい制度とは私にはとても思えなかったんですが、本書の著者たちも同じ考えのようで心強かったです。また、少し前に人間と動物の賢さについて生物学的な観点から論じたフランス・ドゥ・ヴァール『動物の賢さがわかるほど人間は賢いのか』を昨年2017年11月4日に取り上げましたが、同じような問題意識が共有されているような気がしました。難をいえば、いわゆるボケ老人の認知症についても何らかの言及が欲しかった気がしますが、何かが判ったようで判らない、認知の不思議さに触れた気がします。

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2018年6月 8日 (金)

1-3月期GDP統計2次QEは1次QEからほぼ修正なし!

本日、内閣府から今年2018年1~3月期のGDP統計2次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は▲0.2%、年率では▲0.6%と、9四半期振りのマイナス成長でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月期のGDP改定値、年率0.6%減 個人消費が低調
内閣府が8日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.2%減、年率換算で0.6%減だった。速報値(前期比0.2%減、年率0.6%減)と同じだった。民間企業の設備投資が上振れた半面、個人消費が下方修正された。
マイナス成長となるのは9四半期ぶり。物価変動の影響を加味し、生活実感に近い名目GDPは前期比0.4%減(速報値は0.4%減)、年率は1.6%減(同1.5%減)だった。
設備投資は実質で前期比0.3%増と、速報段階の0.1%減から上振れした。半導体や半導体製造装置用部品の増産投資が活発だったうえ、オフィスビルや商業施設といった非製造業の投資も増え、金融機関・非金融法人のいずれも速報段階の想定から増加した。財務省の法人企業統計での実績値を反映した。
民間在庫は速報値ではGDPを0.1ポイント押し下げていたが、改定値では0.2ポイントの押し下げとなった。原材料在庫が減ったため。
このほか実質GDPの項目別をみると、個人消費は前期比0.1%減と速報段階(0.0%減)から下方修正された。公共投資(0.1%減)も下方修正された半面、住宅投資(1.8%減)は上方修正された。
実質GDPの増減への寄与度をみると、内需はマイナス0.2ポイント、輸出から輸入を差し引いた外需はプラス0.1ポイントといずれも速報値と変わらなかった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは、前年同期比プラス0.5%(速報値はプラス0.5%)だった。
同時に発表した2017年度のGDP改定値は、実質で前年比1.6%増(速報値は1.5%増)だった。名目では同1.7%増(同1.6%増)だった。
1~3月期のGDP改定値の発表を受け、茂木敏充経済財政・再生相は8日の閣議後の記者会見で「景気は緩やかに回復しているとの見方に変わりはない」と述べた。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2017/1-32017/4-62017/7-92017/10-122018/1-3
1次QE2次QE
国内総生産 (GDP)+0.7+0.5+0.5+0.3▲0.2▲0.2
民間消費+0.6+0.7▲0.7+0.3▲0.0▲0.1
民間住宅+1.1+0.9▲1.6▲2.7▲2.1▲1.8
民間設備+0.4+0.9+1.0+0.7▲0.1+0.3
民間在庫 *(+0.1)(▲0.1)(+0.4)(+0.2)(▲0.1)(▲0.2)
公的需要+0.3+1.3▲0.5▲0.0+0.0+0.0
内需寄与度 *(+0.6)(+0.8)(▲0.0)(+0.4)(▲0.2)(▲0.2)
外需寄与度 *(+0.1)(▲0.3)(+0.5)(▲0.1)(+0.1)(+0.1)
輸出+2.1▲0.1+2.0+2.2+0.6+0.6
輸入+1.6+1.8▲1.3+3.1+0.3+0.3
国内総所得 (GDI)+0.1+0.7+0.6▲0.1▲0.5▲0.5
国民総所得 (GNI)+0.5+0.7+0.7▲0.1▲0.7▲0.6
名目GDP+0.1+0.9+0.8+0.2▲0.4▲0.4
雇用者報酬▲0.1+1.1+0.5▲0.2+0.7+0.7
GDPデフレータ▲0.8▲0.3+0.1+0.1+0.5+0.5
内需デフレータ+0.0+0.4+0.5+0.6+0.9+0.9

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2018年1~3月期の最新データでは、前期比成長率が9四半期振りのマイナスを示し、黒の外需(純輸出)と水色の設備投資がプラスの寄与を記録している一方で、灰色の在庫がマイナス寄与となっているのが見て取れます。

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まず、2次QEですし、1次QEから大きな変更はなかったわけですから、少なくともポジティブもネガティブもサプライズはありませんでした。要するに、9四半期振りのマイナス成長という事実は変わりなかったわけですが、中身も大きな変更はないものの、大雑把にいえば、1次QEから2次QEへの修正は、設備投資が上振れして、在庫投資が下振れして、両者でキャンセルアウトした、ということですので、仕上がりの数字に変更ない一方で、中身はむしろよくなった、と私は受け止めています。すなわち、設備投資は2016年7~9月期を直近のボトムとして6四半期連続でプラスのの伸びを示しており、人手不足に伴う省力化投資や更新投資などの最近のエピソードとも整合的です。同時に、在庫投資のマイナスは成長率に対してこそマイナス寄与ですが、在庫調整の進展により先行きの健全な成長を準備しているともいえます。加えて、月曜日の2次QE予想でも明記しましたが、1~3月期の一時的な停滞を脱して、足元の4~6月期から緩やかながら景気回復軌道に回帰することが見込まれていますので、このマイナス成長を悲観する必要はないものと私は受け止めています。その昔に少し流行った表現をすれば、「過去の数字」ということになるかもしれません。ただし、昨年2017年10~12月期の2次QEを取り上げた際に指摘した通り、設備投資という企業部門が好調を維持している一方で、消費や住宅投資といった家計部門の停滞が明らかとなっており、好景気の果実が企業部門に独占されて家計部門に及んでいないのが実感なき成長の大きな原因であると私は考えています。

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最後に、本日、内閣府から5月の景気ウォッチャーが、また、財務省から4月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲1.9ポイント低下して47.1を、先行き判断DIも▲0.9ポイント低下して49.2を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆8451億円の黒字を計上しています。いつものグラフだけ、上の通り示しておきます。

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2018年6月 7日 (木)

久々スタメンの鳥谷選手の決勝打で連敗脱出!!

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  RHE
オリックス000001000 170
阪  神00100100x 270

久々にスタメンに復帰した鳥谷選手でしたが、いきなり結果を出してツーベースをかっ飛ばし、鳥谷選手の決勝打で連敗脱出でした。秋山投手も7回1失点と好投してくれて、関西ダービーは1勝1敗となりました。私の勝手な希望ながら、鳥谷選手のスタメンは続けてほしい気がします。

明日からの千葉ロッテ戦は、
がんばれタイガース!

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4月の景気動向指数で景気拡大は65か月に達したか?

本日、内閣府から4月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月比+1.1ポイント上昇して105.6を、CI一致指数は+1.7ポイント上昇して117.7を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景気一致指数1.7ポイント改善 4月、自動車が好調
内閣府が7日発表した4月の景気動向指数(CI、2010年=100、速報値)は景気の現状を示す一致指数が117.7と前月比で1.7ポイント上昇した。上昇は3カ月連続で、14年9月(1.8)以来、3年7カ月ぶりの上昇幅となった。自動車の生産や出荷が好調だった。基調判断は「改善を示している」で据え置いた。
CIを構成する指標で前月と比較可能な7項目のうち6項目がプラス方向に寄与した。寄与度が高かったのが耐久消費財出荷で、軽自動車や小型自動車が国内向けに増えた。鉱工業生産も自動車など輸送用機械が国内外向けに好調だった。
数カ月先の情勢を示す先行指数は1.1ポイント上昇し105.6だった。2カ月ぶりに前月を上回った。自動車を中心に出荷が増えたことを背景に、最終需要財在庫率指数など企業の在庫を示す指標がプラスに寄与した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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明日公表予定の1~3月期GDP統計2次QEもそうなんですが、今年2018年1~3月期は日本経済がやや踊り場的な軽い停滞局面にあった一方で、天候条件などの経済外要因も含めて、4月からはいろんな経済指標がかなり上向いて、景気が回復基調に戻ったことが実感されているんですが、CI一致指数でも統計的にその点が確認されたと私は受け止めています。引用した記事にもある通り、6系列がプラスを示しているんですが、特に、プラスの寄与度の大きい順に耐久消費財出荷額指数、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売学(卸売業)(前年号月比)などが+0.3を超える寄与を示しています。これも引用した記事にある通り、3年7か月ぶりの上昇幅だそうです。当然ながら、統計作成官庁である内閣府の基調判断は「改善」で据え置かれています。基調判断の「改善」も19か月連続だそうです。どうでもいいことかもしれませんが、4月まで景気拡大が続いているとすれば、2012年11月を谷とする現在の景気拡大は65か月に達したことになります。

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2018年6月 6日 (水)

パートタイムから一般労働者へのシフトを反映する毎月勤労統計!

本日、厚生労働省から4月の毎月勤労統計が公表されています。名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+0.8%増の27万7272円を示していますが、物価上昇を差し引いた実質賃金は前年同月比で保合いとなりました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の名目賃金、前年比0.8%増 増加は9カ月連続 毎月勤労統計
厚生労働省が6日発表した4月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、4月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比0.8%増の27万7272円だった。増加は9カ月連続。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.2%増。残業代など所定外給与は1.9%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は9.8%減だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は横ばい。名目賃金は増加したものの、消費者物価指数(持ち家の帰属家賃を除く総合)が上昇したため実質的な賃金は変わらなかった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は1.4%増の1121円。パートタイム労働者比率は0.37ポイント低い29.95%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは以下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。

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上のグラフのうちでも、一番上のパネルの所定外労働時間は4月統計については鉱工業生産の動向とは必ずしも整合的ではなく、やや謎です。しかしながら、引用した記事にもあるように、毎月勤労統計で注目すべきは、最近では、賃金なわけですが、季節調整していない原系列の統計の賃金指数で3月に実質賃金が前年同月比で+0.7%増と昨年2017年11月以来の上昇を見せた後、最新の4月統計では前年から保合いとなりました。実質賃金は現金給与総額指数を帰属家賃を除く消費者物価(CPI)でデフレートしていますが、今年2018年1月に前年同月比で▲0.6%減、2月にも▲0.8%減を記録したのは、1~3月期の1次QEで消費がわずかとかいえマイナスをつけた要因のひとつと考えるべきです。ただ、生活実感に近い名目賃金は昨年2017年7月を唯一の例外として、一昨年2016年年央6月以来かなり長くに渡って前年比プラスを続けているのは事実ですし、日本経済がデフレを脱して物価が上昇し始め、それにつれて賃金も増加を始めることにより、いわゆる経済の好循環の中で解決されるんだと私は認識しているんですが、いかんせん、ものすごく長いタイムラグを持っているようで、なかなかそういった経済の好循環が目に見える形で明らかにならない恨みはあります。ただ、従来からこのブログで主張している通り、非正規雇用から正規雇用への流れが生じ始めている点が、最近の毎月勤労統計で得られたとすれば、2月以降の速報段階で、パートタイム労働者比率が前年同月との差で▲0.30ポイント以上のかつてない大きさで低下していることです。もっとも、確報段階で小幅のプラスに修正されるのでほとんど意味はないんですが、それ以前は速報段階からプラスでしたので、やや雰囲気は変わりつつあるような気もしますし、何といっても、非正規雇用から正規雇用へのシフトは給与水準の上昇とともに安定ももたらし、消費の増加に大きく寄与することは明らかです。

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2018年6月 5日 (火)

NTTレゾナントによる「プロ野球速報のPV数からみる注目球団ランキング」やいかに?

NTTレゾナントでは運営する「gooニュース」で提供しているプロ野球速報の各試合のページビュー数(PV)の情報から、「プロ野球速報のPV数からみる注目球団ランキング」を5月28日に明らかにしています。我が阪神タイガースのセントラル・リーグの結果は以下の通りです。

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本日の試合が始まる前の段階で、何と、阪神はこれだけ交流戦で負け続けているにもかかわらずセリーグで3位をキープしています。でも、私は見逃しましたが、今夜のオリックスとの関西ダービー第1戦も哀しくも負けたようですし、今年の阪神が人気ないのはよく判る気がします。

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2018年6月 4日 (月)

下方改定か、上方改定か、2次QE予想やいかに?

先週木曜日6月1日の法人企業統計をはじめとして、ほぼ必要な統計が出そろい、今週金曜日の6月8日に昨年2018年1~3月期GDP速報2次QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる2次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の4~6月期から2018年の景気動向を重視して拾おうとしています。しかしながら、何分、2次QEですので、法人企業統計のオマケの扱いだったりして、明示的に先行き経済を取り上げているシンクタンクはみずほ総研と伊藤忠経済研だけでした。この2機関のリポートだけは長めに引用しています。他機関のリポートについてもより詳細な情報にご興味ある向きは一番左列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
内閣府1次QE▲0.2%
(▲0.6%)
n.a.
日本総研▲0.2%
(▲0.7%)
1~3月期の実質GDP(2次QE)は、設備投資は上方修正となる一方、公共投資、在庫変動は下方修正となる見込み。その結果、成長率は前期比年率▲0.7%(前期比▲0.2%)と1次QE(前期比年率▲0.6%、前期比▲0.2%)から小幅下方修正される見込み。
大和総研▲0.1%
(▲0.3%)
1-3月期GDP二次速報(6月8日公表予定)では、実質GDP 成長率が前期比年率▲0.3%(一次速報: 同▲0.6%)と、一次速報から僅かに上方修正されると予想する。基礎統計の直近値の反映により公共投資がマイナスに転じる一方、需要側統計の法人企業統計の結果を受けて、設備投資は上方修正されて前期比横ばいになる見込みだ。
みずほ総研▲0.2%
(▲0.7%)
発表された4月の各種経済指標をみると、4~6月期の景気は緩やかな回復基調に復する期待が高まる結果となった。実質小売販売(モズ保総研による試算値)は、生鮮食品価格の高騰一服などにより大きく増加した。失業率や有効求人倍率などの雇用関連指標も総じて良好な状態を維持しており、個人消費は今後、回復に向かう可能性が高い。外需をみると、4月の輸出数量指数は自動車を中心に4カ月ぶりの上昇に転じた。世界経済が回復傾向を辿る中で、輸出も堅調さを取り戻すだろう。
ニッセイ基礎研+0.1%
(+0.2%)
6/8公表予定の18年1-3月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比0.1%(前期比年率0.2%)となり、1次速報の前期比▲0.2%(前期比年率▲0.6%)から上方修正されると予測する。設備投資、民間在庫変動、民間消費、公的固定資本形成がいずれも上方修正されるだろう。
第一生命経済研▲0.0%
(▲0.1%)
6月8日に内閣府から公表される2018年1-3月期実質GDP(2次速報)を前期比年率▲0.1%(前期比▲0.0%)と予想する。設備投資の上方修正を主因として、GDP成長率は1次速報の前期比年率▲0.6%から上方修正されるだろう。
伊藤忠経済研▲0.0%
(▲0.1%)
この修正の通り上方修正されたとしても、1~3月期のGDPは概ね横ばいにとどまり、景気が2018年に入り一旦踊り場を迎えたという判断は変わらない。そのため、潜在成長率とされる年率+1.1%程度をも当然に下回り、日本経済はデフレ脱却に向けて足踏みしたことになる。
そして、3月以降は輸出や個人消費の関連指標が改善し、設備投資も先行指標が拡大の継続を示唆していることから、景気は再び拡大に向かい、足元ではデフレ脱却に向けた歩みを再開しているという判断を変える必要もないだろう。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.1%
(▲0.4%)
6月8日に内閣府から公表される2018年1~3月期の実質GDP成長率(2次速報値)は、前期比▲0.1%(年率換算▲0.4%)と1次速報値の同▲0.2%(同▲0.6%)からわずかに上方修正されるが、マイナス成長自体に変更はない見込みである。景気回復が続く中においても、一時的にスピード調整の動きが入ったことが改めて示されるであろう。
三菱総研+0.0%
(+0.1%)
2018年1-3月期の実質GDP成長率は、季調済前期比+0.0%(年率+0.1%)と、1次速報値(同▲0.2%(年率▲0.6%))から上方修正を予測する。

私自身はエコノミストとして、法人企業統計その他の情報から、1~3月期2次QEは上方改定されると考えています。しかし、プラス成長にまで達するくらいの上方改定か、それとも、マイナス成長のままの上方改定かについては自信がありません。直観的にも判りません。また、上のテーブルを見ても、シンクタンクの間でも見方は分かれているようです。ただ、1次QEから改定幅は大きくなく、ほぼ横ばいのゼロ成長であろう、という点についてはエコノミストの間でも緩やかなコンセンサスがありそうです。なお、もしもマイナス成長であれば、2015年10~12月期以来となり、9四半期ぶりです。8四半期、丸々2年間もプラス成長が継続し、みずほ総研や伊藤忠経済研の見方のように、4~6月期の景気は緩やかな回復基調に復する期待が大きいとすれば、やっぱり、日本経済は決して悪くないと考えるべきです。
最後に、下のグラフはみずほ総研のリポートから引用しています。

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2018年6月 3日 (日)

先週の読書は経済書・経営書を中心に大量8冊!!

ここ何週か経済書の比率が少ないように感じてきましたが、先週の読書はどど~んと経済書や経営書を大量に読みました。以下の8冊です。昨日のうちに自転車で近くの図書館をいくつか回り、今週も大量に読みそうな予感です。

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まず、 カール・シャピロ + ハル・ヴァリアン『情報経済の鉄則』(日経BPクラシックス) です。クラシックスのシリーズ名通り、前世紀の終わり、1998年だか、99年だかに出版された本です。さすがに、現時点で読み返すと、ロータス1-2-3が出て来たりして、ややふるさは感じられるんですが、「ネットワーク外部性」とか、「規模の経済」とか、「勝者総取り」とか、「ロックイン」などは情報経済で今でも有効な分析の視点だという気はします。クラシックス=古典と銘打たれていても、そこは『国富論』や『資本論』なんぞとは違うわけですから、出版された時点の制約を十分に意識して、読みこなせば役立つんではないかという気がします。

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次に、森健・日戸浩之・[監修]此本臣吾『デジタル資本主義』(東洋経済) です。野村総研が取りまとめたデジタル経済分析の第1弾であり、3部作として出版される予定と明記してあります。最終的には、GDPではない新しい指標の構築について議論する、ということのようですので、それなりの試算も示されることともいます。基本的な出発点は、日本経済におけるGDPの成長がほぼ停止したにもかかわらず、それなりに豊かな経済社会を提供しているのは、GDPに計上されない消費者余剰が大きいからではないか、という疑問から始まっていて、私の現時点での研究課題にかなり近いと思います。

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次に、竹中平蔵・大竹文雄『経済学は役に立ちますか?』(東京書籍) です。著者2人の対談です。何ともいえずに、その昔の用語を使えば、とても市場原理主義的な香りがしてしまいます。大竹教授の専門分野ですから、半ばくらいに「働き方改革」のお話が出てくるんですが、この話題について私が常に不満に思っているところで、要するに、企業サイドの利点しか思いつかないようで、「働き方改革」ではなく「働かせ方改革」であることが明らかです。働く労働者の権利や待遇についてはまったく考慮されていません。どこまで適切かは自信がありませんが、マルクス主義的な観点でいえば、末期の状態を迎えた資本主義において企業がいかに労働者をさらに搾取するかを助ける法律ではないのか、という疑いが払拭されません。

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次に、佐藤将之『アマゾンのすごいルール』(宝島社) です。2000年のアマゾン日本法人立ち上げから15年間勤務したアマゾニアン経験者によるアマゾンのすごいところを詰め込んでいます。ただ、私が疑問に思うのは「顧客優先第一主義」はどこの企業でもそれなりに浸透しているんですが、その逆もアマゾンはすごい点は忘れるべきではありません。すなわち、私の友人が少し前に酒の席で言っていたんですが、アマゾンは納入業者と配送業者から利益を得ており、さらに、倉庫の非正規社員を低賃金で雇っており、これも利益の源泉となっている、という説もこれありで、私は本書にかかれていない納入業者・配送業者・倉庫番の非正規社員についても実態を知りたいと思います。まさに、外資系企業だからできたことであり、日本企業ではこういった利益の上げ方は難しいんだろうと思います。なお、上に取り上げた『トマト缶の黒い真実』の著者であるジャン=バティスト・マレはフランスのアマゾン配送センターに臨時工として勤務したルポをものにしています。ただし、邦訳は出版されていないような気がします。

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次に、安岡孝司『企業不正の研究』(日経BP社) です。いくつかの最近起きた企業の不正事案のケーススタディを第1部で展開し、第2部でもう少し一般化したリスク・マネジメントに関する問題点のQ&Aを示しています。かなり幅広く企業不正を考えているようですが、本書にもあるように、経営トップの指示による不正事案、例えば、その昔の山一証券や最近の東芝の粉飾決算については、企業内部では防ぎようがないような気もします。それをいかにして経済社会への影響をミニマイズするかの観点は、本書では持ち合わせていないような気がして残念です。会社が消滅するくらいのインパクトを持った企業不正事案、山一證券の粉飾ですとか、雪印の事件を取り上げていない恨みはあります。それから、本書で俎上に載せている企業不正やリスク・マネジメントなどの経営学の分野については、ケーススタディがメインで、それらに共通する一般法則のようなものの抽出は難しそうな気がします。たくさんのリンゴが落ちるところを観察しつつも、それぞれに異なる原因で落ちているような気が私はしますし、万有引力の法則の発見に至るには私は力不足です。

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次に、ヨハン・ノルベリ『進歩』(晶文社) です。その昔の2011年1月29日付けの読書感想文のブログで取り上げているマット・リドレー『繁栄』と同じような趣旨で、邦訳の山形浩郎があとがきで書いている通り、100年くらいの長いスパンで括った場合、ほぼほぼ常に現在は過去よりもいい状態にある、ということなんだろうと思います。ただ、リドレー『繁栄』の方がイノベーションを基本に先行きの明るい方向性を強調していたのに対し、本書では過去を振り返った歴史書の側面が強そうな気がします。

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次に、ジャン=バティスト・マレ『トマト缶の黒い真実』(太田出版) です。著者はフランス出身のジャーナリストであり、我が国での邦訳書出版は初めてのようですが、フランスのアマゾン配送センターに臨時工として勤務したルポをものにしていたりします。本書では、トマトのピューレを題材にしてグローバル化された世界経済における食品流通の問題点を浮き彫りにしようと試みています。すなわち、例えば、中国で3倍に濃縮されたトマト・ピューレをイタリアに持ち込んで2倍濃縮にしただけで「イタリア産」の表示で世界に流通するとか、その生産・流通過程における劣悪な労働環境やマフィアの介在、などなどを明らかにしています。身近な隣国として中国の暗躍が目につくのは私だけではなさそうな気がします。

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最後に、藤井青銅『「日本の伝統」の正体』(柏書房) です。現時点で、我が国の「伝統」と考えられていて、古くから連綿と続いているように受け止められているしきたりや風習や生活慣行や文化について、必ずしも古くからの歴史があるとは限らない、という視点から考え直したものであり、実は、ここ100年くらいで発見あるいは発明された「伝統」がかなりあり、そういったものを集めて解説しています。エッセイストの酒井順子の作品のように、なかなかよく下調べが行き届いている気がします。まあ、一見すると、どうでもいいような知識の詰め合わせかもしれませんが、「何かおかしい」と思えるようなリテラシーを身につけるにはいいように思います。

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榎田投手キャリアハイの5勝目おめでとう!!

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  RHE
阪  神000003020 563
西  武20002600x 1081

1時試合開始というのを知らずに6回の攻防から見始めましたが、西武にボロ負けでした。藤浪投手は次を期待できると私は受け止めましたが、違う評価もあり得るんでしょうね。今の阪神の監督・コーチ陣の用兵は私にはまったく理解できません。西武にトレードされた榎田投手のナイスピッチングが印象的でした。職場環境が変わって好結果がもたらされたのかもしれませんが、そういった選手は阪神にはまだまだいっぱいいそうな気もします。でも、監督とコーチの人事、というか職場環境の方を変えてみるのも一案かもしれません。勝てそうな雰囲気すらしないワンサイドゲームでした。

関西ダービーのオリックス戦は、
がんばれタイガース!

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2018年6月 2日 (土)

市場予想を上回る堅調な米国雇用統計は追加利上げを確定か?

日本時間の昨夜、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+223千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人の増加という予想を上回り、失業率も前月からさらに0.1%ポイント低下して3.8%という低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の7パラだけ引用すると以下の通りです。

Unemployment rate falls to 3.8% as employers add 223,000 jobs in May
U.S. hiring rebounded in May after two months of lackluster gains as employers added 223,00 jobs and the labor market continued to defy widespread worker shortages and global economic troubles.
The unemployment rate fell from 3.9% to 3.8%, a new 18-year low, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 190,000 job gains.
President Trump suggested the report would be strong early this morning. At 7:21 a.m., he tweeted, "Looking forward to seeing the employment numbers at 8:30 this morning." Normally a president doesn't foreshadow the totals so as not to affect financial markets.
Snowstorms and cold weather curtailed job growth in both March and April, according to Goldman Sachs. Milder temperatures were expected to bolster hiring in May.
Economists said another tepid showing could indicate that the low unemployment rate is making it even harder for employers to find workers. Also, political turmoil in Italy has roiled markets and is likely to modestly dampen economic growth in the euro area, according to Nomura. Economists thought manufacturers that depend on overseas sales could pull back on hiring in response to both the weakness abroad and U.S. trade fights with other nations.
The strong performance eases those concerns and likely solidifies another Federal Reserve interest hike in mid-June.

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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我が国の失業率も2.5%まで低下しましたが、米国の失業率が4%を割り込むとは私は少し前まで想像もしていませんでした。非農業部門雇用者の増加も+200千人を超え、やや低迷した3月155千人増、4月+159千人増から再び堅調な回復軌道に戻ったように見受けられます。特に、4月は寒冷な気象条件に雇用が伸び悩んだ面がありましたので、夏に向かって天候要因も剥落し、これも堅調な消費に支えられた消費、ヘルスケア、建設などが雇用を牽引しました。3.8%まで低下した失業率は2000年4月以来、18年振りの水準まで下がってきており、米国連邦準備制度理事会(FED)では4%台半ばをひとつの目安としてきましたので、現状の労働市場はかなり逼迫感があると見ているようです。従って、6月12~13日に開催される予定の連邦公開市場委員会(FOMC)において、追加利上げが決定されるのはほぼ確実と私は見込んでいます。今後の金融政策動向の注目点は利上げのペースなんですが、3月のFOMCでは2018年に3回の利上げのシナリオが中心となることが明らかにされていますが、3月に1回、そして6月にももう1回ということになれば、年半ばで3回のうちの2回の利上げを実行することとなります。計算としては合っているともいえますが、米国景気の動向によっては、年4回という可能性も否定できません。まあ、可能性は小さいような気もしますが、少なくとも、当面は金融政策は引き締め方向で進められる、ということでしょう。

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最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、5月は前年同月比で+2.6%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、+2%の物価目標を上回る賃金上昇が続いているわけですから、そろそろ金融政策で対応すべき段階であると考えるのが妥当かもしれません。

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2018年6月 1日 (金)

堅調な企業活動を反映する法人企業統計!

本日、財務省から1~3月期の法人企業統計が公表されています。統計のヘッドラインは、季節調整していない原系列の統計で、売上高は6四半期連続の増収で前年同期比+3.2%増の361兆7780億円、経常利益も7四半期連続の増益で+0.2%増の20兆1652億円、設備投資はソフトウェアを含むベースで製造業が+2.8%増、非製造業が+3.6%増となり、製造業と非製造業がともに伸びを示し、全産業では+3.4%増の14兆7720億円を記録しています。一般に内部留保と呼ばれる利益剰余金は前年同期比+11.2%増の417兆2895億円に積み上っています。GDP統計の基礎となる季節調整済みの系列の設備投資は前期比▲0.0%の横ばいとなっています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

設備投資3.4%増 1~3月、半導体関連が堅調、法人企業統計
財務省が1日発表した2018年1~3月期の法人企業統計によると、全産業(資本金1千万円以上、金融機関を除く)の設備投資は前年同期比3.4%増となった。プラスは6四半期連続。半導体関連を中心に製造業が生産能力を引き上げた。経常利益は円高の影響で製造業が減益だったが、売上高は堅調だった。
製造業の設備投資は2.8%増で、最も上昇に寄与した業種は情報通信機械だった。半導体や半導体製造装置向け部品を増産する動きが相次ぎ、29.9%増えた。
非製造業は3.6%増だった。運輸業・郵便業が11.3%増で、船舶の更新や鉄道関連施設の建設増が寄与したほか、不動産業もオフィスビルや商業施設の開発増で22.6%増だった。
経常利益は0.2%増の20兆1652億円。7期連続で伸び、1~3月期としては過去最高だった。けん引したのは非製造業で5.0%増えた。商社を含む卸売業・小売業は資源価格の上昇で販売価格が上がったほか、海外子会社から受け取る配当が増えた。一方、製造業は8.5%減だった。円高の影響で輸送用機械などの輸出企業の利幅が縮小した。
売上高は3.2%増の361兆7780億円と6期連続の増収だった。製造業は1.4%増で、生産用機械や輸送用機械が海外向けを中心に伸びた。非製造業は卸売業・小売業などが好調で、3.9%増だった。
今回の法人企業統計の結果は、8日に発表がある1~3月の国内総生産(GDP)改定値の設備投資に反映される。速報値では、実質で前期比0.1%減と6四半期ぶりにマイナスだった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、法人企業統計のヘッドラインに当たる売上げと経常利益と設備投資をプロットしたのが下のグラフです。色分けは凡例の通りです。ただし、グラフは季節調整済みの系列をプロットしています。季節調整していない原系列で記述された引用記事と少し印象が異なるかもしれません。影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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上のグラフのうちの上のパネルに示されたように、売上高についてはサブプライム・バブル崩壊前はいうに及ばず、いわゆる「失われた10年」の期間である1990年代のピークすら超えられていませんが、経常利益についてはすでにリーマン・ショック前の水準を軽くクリアしており、我が国企業の収益力は史上最強のレベルに達しています。季節調整済みの系列で見て、1~3月期には国内経済がやや停滞を示したため、売上高の伸びは+0.2%と低い伸び率となりましたが、経常利益は前期比+1.7%増を示しています。従来からのこのブログでお示ししている私の主張ですが、我が国の企業活動については一昨年2016年年央くらいを底に明らかに上向きに転じ、昨年2017年は年間を通じてこの流れが継続していることが確認できたと思います。また、設備投資についても徐々に伸びが本格化して来た印象です。これも季節調整済みの系列で見て、全産業ベースの設備投資は1~3月期に▲0.0%減ながら、ほぼ横ばいでした。GDP成長率がマイナスとなったことに象徴的なように国内経済が停滞していたにしては、それなりの投資が行われたんではないかと私は受け止めています。

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続いて、上のグラフは私の方で擬似的に試算した労働分配率及び設備投資とキャッシュフローの比率、さらに、利益剰余金をプロットしています。労働分配率は分子が人件費、分母は経常利益と人件費と減価償却費の和です。特別損益は無視しています。また、キャッシュフローは法人に対する実効税率を50%と仮置きして経常利益の半分と減価償却費の和でキャッシュフローを算出した上で、このキャッシュフローを分母に、分子はいうまでもなく設備投資そのものです。この2つについては、季節変動をならすために後方4四半期の移動平均を合わせて示しています。利益剰余金は統計からそのまま取っています。ということで、上の2つのパネルでは、太線の移動平均のトレンドで見て、労働分配率はグラフにある1980年代半ば以降で歴史的に経験したことのない水準まで低下しましたし、キャッシュフローとの比率で見た設備投資は50%台後半で停滞が続いており、これまた、法人企業統計のデータが利用可能な期間ではほぼ最低の水準です。他方、いわゆる内部留保に当たる利益剰余金だけは、2017年7~9月期に少し足踏みを見せたものの、グングンと増加を示しています。これらのグラフに示された財務状況から考えれば、まだまだ雇用の質的な改善の重要なポイントである賃上げ、あるいは、設備投資も大いに可能な企業の財務内容ではないか、と私は期待しています。ですから、経済政策の観点から見て、企業活動がここまで回復ないし拡大している中で、企業の余剰キャッシュを雇用者や広く国民に還元する政策が要請される段階に達しつつある可能性を指摘しておきたいと思います。

最後に、本日の法人企業統計を基に、いわゆる2次QEが来週金曜日の6月8日に内閣府から公表される予定となっています。私の直感的な印象ながら、成長率は2次QEで上方修正される可能性が高いと受け止めています。しかしながら、1次QEの前期比▲0.2%のマイナス成長からプラス成長に転ずるかどうかはビミョーなところだという気がします。

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