市場予想を上回る堅調な米国雇用統計は追加利上げを確定か?
日本時間の昨夜、米国労働省から5月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+223千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人の増加という予想を上回り、失業率も前月からさらに0.1%ポイント低下して3.8%という低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を最初の7パラだけ引用すると以下の通りです。
Unemployment rate falls to 3.8% as employers add 223,000 jobs in May
U.S. hiring rebounded in May after two months of lackluster gains as employers added 223,00 jobs and the labor market continued to defy widespread worker shortages and global economic troubles.
The unemployment rate fell from 3.9% to 3.8%, a new 18-year low, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 190,000 job gains.
President Trump suggested the report would be strong early this morning. At 7:21 a.m., he tweeted, "Looking forward to seeing the employment numbers at 8:30 this morning." Normally a president doesn't foreshadow the totals so as not to affect financial markets.
Snowstorms and cold weather curtailed job growth in both March and April, according to Goldman Sachs. Milder temperatures were expected to bolster hiring in May.
Economists said another tepid showing could indicate that the low unemployment rate is making it even harder for employers to find workers. Also, political turmoil in Italy has roiled markets and is likely to modestly dampen economic growth in the euro area, according to Nomura. Economists thought manufacturers that depend on overseas sales could pull back on hiring in response to both the weakness abroad and U.S. trade fights with other nations.
The strong performance eases those concerns and likely solidifies another Federal Reserve interest hike in mid-June.
長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。
我が国の失業率も2.5%まで低下しましたが、米国の失業率が4%を割り込むとは私は少し前まで想像もしていませんでした。非農業部門雇用者の増加も+200千人を超え、やや低迷した3月155千人増、4月+159千人増から再び堅調な回復軌道に戻ったように見受けられます。特に、4月は寒冷な気象条件に雇用が伸び悩んだ面がありましたので、夏に向かって天候要因も剥落し、これも堅調な消費に支えられた消費、ヘルスケア、建設などが雇用を牽引しました。3.8%まで低下した失業率は2000年4月以来、18年振りの水準まで下がってきており、米国連邦準備制度理事会(FED)では4%台半ばをひとつの目安としてきましたので、現状の労働市場はかなり逼迫感があると見ているようです。従って、6月12~13日に開催される予定の連邦公開市場委員会(FOMC)において、追加利上げが決定されるのはほぼ確実と私は見込んでいます。今後の金融政策動向の注目点は利上げのペースなんですが、3月のFOMCでは2018年に3回の利上げのシナリオが中心となることが明らかにされていますが、3月に1回、そして6月にももう1回ということになれば、年半ばで3回のうちの2回の利上げを実行することとなります。計算としては合っているともいえますが、米国景気の動向によっては、年4回という可能性も否定できません。まあ、可能性は小さいような気もしますが、少なくとも、当面は金融政策は引き締め方向で進められる、ということでしょう。
最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、5月は前年同月比で+2.6%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、+2%の物価目標を上回る賃金上昇が続いているわけですから、そろそろ金融政策で対応すべき段階であると考えるのが妥当かもしれません。
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