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2018年7月 8日 (日)

先週の読書は経済書を中心に計7冊!

先週も経済書を中心によく読んで、以下の通りの計7冊です。ただし、今週は少しペースダウンします。昨日、どこかの新聞の書評で見たファーガソン『大英帝国の歴史』上下を読む予定です。

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まず、小林慶一郎[編著]『財政破綻後』(日本経済新聞出版社) です。本書の基礎となった研究分析は東京財団による「財政危機時の政府の対応プラン」(2013年7月)なんだと思うんですが、家計資産残高と政府債務残高の多寡や経常収支の赤字化などについて、危機発生のトリガーと想定されるシナリオを分析した部分がなくなっていて、むしろ、無条件に政府の財政破綻が近づいているような印象がないでもありません。ただ、シルバー・デモクラシーによる高齢者向け施策の過剰な「充実」が財政破綻の引き金になる可能性は増しているとの認識は共有します。トリアージと称したプライオリティ付けが目を引きますが、私の目から見て、統合政府化で日銀の国債買い入れが債務残高とどう関係するかは、やや疑問が残りました。私は日銀が国債を買い入れれば償還の必要がなくなる、というか、償還が形だけになって、その金額が遅かれ早かれ国庫に返納されると考えているんですが、そうではないというのが本書の主張です。よく判りません。財政破綻すれば、既得権益がゼロベースに戻るので、年金や医療・介護などの社会保障の新たな制度設計が重要という指摘は、従来からコッソリと囁かれてきた点ですが、ここまで表に出して主張すると影響力がありそうです。最後に、本書で考えられている程度の財政破綻後の対応策は、とっくに財務省は持っているような気が私はするんですが、いかがなもんでしょうか。

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次に、スティーヴ・キーン『次なる金融危機』(岩波書店) です。私はなじみなかったんですが、著者はオーストラリア出身の英国をホームグラウンドとする経済学者であり、カオス理論を応用して、金融危機が起こるプロセスのシミュレーションに成功したといわれています。特に、民間債務残高の危険度を指標とした予測モデルから導出されるいくつかのグラフィックスはなかなか見応えがあります。もとも、カオス理論でどこまで金融危機の発生が予測できるかは議論の残るところであり、少なくとも、本書で主張するように、利潤最大化を超えて投資を行い資本ストックが積み上がり、その後のストック調整が大規模かつ長期にわたるのは、事実としてそうなっているのは現実経済を見れば明らかな通りに理解できるが、そのカオス理論に基づく根拠が私には不明でした。どうしてそうなるのか、カオス理論で解明できたとは到底思えません。これは、利益最大化を超えて投資するという行為について、利益最大化が何らかの矛盾を持っていると考えざるを得ないと私は予想しているんですが、バブル期に過大にに投資したり、デフレ期に過少な投資しかしなかったりとする投資家心理の問題なのか、それとも、利益最大化の合理性が失われているのか、本質的な疑問に答えてくれていない恨みはあります。

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次に、ルチル・シャルマ『シャルマの未来予測』(東洋経済) です。著者はインド出身でモルガン・スタンレーの市場エコノミストです。私は同じ著者の前著である『ブレイクアウト・ネーションズ』は読んでいないんですが、よく似た内容であり、著者はBRICsやVISTAの台頭を予見したといわれていますので、それほど理論的ではなく、市場エコノミストの直感的な、というか、経験則的な見方で、人口構成・政治サイクル・格差などの本書でいう10の観点から先行きを大胆に予測しています。ということで、モロなネタバレなんですが、成長する国は、日本、アメリカ、メキシコ、アルゼンチン、フィリピン、インドネシア、インド、パキスタン、バングラディシュ、ドイツ、ルーマニア、ケニアで、現状維持は、コロンビア、イギリス、イタリア、スペイン、沈む国は、中国、韓国、台湾、タイ、マレーシア、オーストラリア、ロシア、フランス、トルコ、中東諸国、南アフリカ、ナイジェリア、などとされています。日本についてはアベノミクスの貢献が明記されています。

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次に、丸山俊一『欲望の資本主義 2』(東洋経済) です。前シリーズの『欲望の資本主義』の続巻なんですが、いずれもNHK「欲望の資本主義」制作班によるノベライズです。ですから、基本は対談を文字に書き起こしたわけであって、放送をバッチリと見ていた、聞いていた視聴者には必要ない本なのかもしれませんし、逆に、本で読むならテレビ番組を見る必要はないのかもしれません。副題が「闇の力が目覚める時」とされていて、ややマルクス主義的な考え方がこの「闇の力」に相当するような記述も見られ、私はやや不愉快でした。コンピュータの進化やAIの登場などを細かに主張しながらも、大筋の議論が出来ていない印象があり、細かな表現でテレビ・ラジオ的には映えるのかもしれませんが、ホントに資本主義の今後の方向性を議論する題材にはなりそうもありません。

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次に、ジャック・ペレッティ『世界を変えた14の密約』(文藝春秋) です。邦訳タイトルは英語の原題とかなり違っており、上の画像の帯にあるような「企業間の密約」により世界の動向が決められているかのような本の内容ではありません。14の中身について出版社のサイトから引用すると、「現金の消滅」、「熾烈な格差」、「ダイエット基準」、「買い替え強制の罠」、「フェイクニュースの氾濫」、「投機リスク」、「租税回避のカラクリ」、「薬漬け」、「改革されない働き方」、「新自由主義の誕生」、「企業の政府支配」、「AIに酷使される未来」、「知性の取引」、「21世紀のインフラ」、ということになります。著者はイタリア系英国人のジャーナリストであり、本書の内容はBBCにて映像化されて反響を呼んだようです。14項目がそのまま章立てになっているわけですが、やや内容や視点にバラツキがあるものの、14項目を見るだけでも十分にリベラルで左派的な視点であることは想像されようかと思います。英国の現状だけでなくごろーばる化の進む現在では我が国にもそのまま当てはまるポイントが少なくないと受け止めています。

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次に、西岡壱誠『東大読書』(東洋経済) です。今さらながら、なんですが、私はキャリアの国家公務員であり、東大卒業生の比率が異常に高いオフィスに勤務していますし、日曜日のTBSテレビで東大王なるクイズ番組を見ることがあったりして、それなりに東大生の優秀性は理解しているつもりです。本書では明記されていないんですが、著者の出身高校は宝仙学園とネットでウワサされています。この出身校については私には確認のしようがありませんし、ネットでは疑問が呈されていたりするんですが、ただ、読書を効率よくしっかりと実りあるものにするという点から、本書の中身は秀逸だと思います。少なくとも、読書についてはそれなりに準備すべきという点は忘れるべきではありません。もっとも、本書では読書をものすごく狭い意味でとらえており、少なくとも、教科書をはじめとする学術書や教養書や実用書などに限定しているような気がして、文芸書や小説は本書ではスコープに入っていないようです。その上、私はもっとも読書の内容を濃くするためにはノートを取るべきであると考えており、例えば、大昔に公務員試験の準備や対策をしていたころに、経済学のミクロ・マクロの教科書を読んで取ったノートが我が家にはまだ残っていたりするんですが、本書では付箋で代用されていて、やや中途半端な気がします。それなりにタメになるとはいえ、やや物足りない気もします。加えて、副題が『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく』とされているところ、後者の「地頭力」については何の言及もないような気がしてなりません。これも残念な点です。

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最後に、我孫子武丸『怪盗不思議紳士』(角川書店) です。作者はご存じ新本格派のミステリ作家で京都大学のミステリ研究会出身です。綾辻行人や法月綸太郎や麻耶雄嵩などと同じ系統なわけです。でも、本書の舞台は終戦間もない東京です。戦災孤児の草野瑞樹は上野の闇市での事件をきっかけに探偵の九条響太郎の助手になり、警察にも頼りにされる名探偵・九条響太郎は「不思議紳士」と名乗る怪盗と対決したりします。ということで、江戸川乱歩の少年探偵シリーズをそっくりそのまま、明智小五郎を九条響太郎に、その助手の小林少年を草野瑞樹に、さらに、怪盗20面相を不思議紳士に、それぞれ置き換えているわけですが、とても新たな趣向も取り入れられています。まず、わけも判らず、占領軍の高級将校が事件に介入してきます。もちろん、警視庁の刑事なんぞよりはよっぽどエラそうに捜査を指揮したりします。そして、名探偵・九条響太郎が早々に死んでしまい、その身代わりを立てて少年助手が身代わり探偵を操る、となります。怪盗のサイドでも、本来の「不思議紳士」は怪盗20面相と同じで、殺人はおろか人を傷つけることも忌避する性向があるんですが、最初の事件では被害者の一家皆殺しをしたりします。新本格らしい謎解きではないんですが、それなりに楽しめる作品です。

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