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2018年7月31日 (火)

5位6位対戦はまず阪神がボロ負けして最下位転落に一歩近づく!!

  RHE
阪  神010100000 270
中  日00301030x 7130

中日との最下位決定戦第1戦は阪神がまず敗戦でした。右バッターを並べた打線は左投手を打てず、先発岩貞投手が簡単に崩れた後、今年は負けパターンのリリーフ陣に組み込まれた桑原投手が今日も決定的な失点をしています。点差以上に勝負がハッキリしていた気がします。連敗すると最下位転落なんでしょうか?

明日は、
がんばれタイガース!

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2か月連続で減産の鉱工業生産指数(IIP)と改善続く雇用統計と消費者態度指数!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数 (IIP) が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から消費者態度指数が、それぞれ公表されています。鉱工業生産指数(IIP)と雇用統計は6月の統計であり、消費者態度指数だけは6月の統計です。鉱工業生産指数(IIP)は季節調整済みの系列で前月から▲2.1%の減産を示し、失業率は前月から▲0.2%ポイント上昇したものの、依然として2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率は前月からさらに0.02ポイント上昇して1.62倍と、これまた、高い倍率を示しています。また、消費者態度指数は前月から▲0.2ポイント低下して43.5を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の鉱工業生産、前月比2.1%低下 半導体製造装置の生産後ずれ
経済産業省が31日発表した6月の鉱工業生産指数(2010年=100、季節調整済み、速報値)は前月に比べて2.1%低下し、102.2だった。低下は2カ月連続。半導体製造装置などを含む「はん用・生産用・業務用機械工業」が大きく低下した。
QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.4%低下)を下回った。経産省がまとめた6月の先行き試算値(0.1%低下)も大幅に下回った。
生産指数は15業種のうち12業種が前月から低下した。「はん用・生産用・業務用機械工業」は、フラットパネルディスプレーの製造装置などで、納期が後ずれとなり生産が低下したという。
半面、上昇は3業種だった。半導体を含む「電子部品・デバイス工業」が上昇した。農林中金総合研究所の南武志主席研究員は「半導体市場は今後も一定の伸びは続くが、昨年からの大幅な拡大は一服した」と指摘していた。
経産省は6月の生産の基調判断を「緩やかな持ち直し」に据え置いた。
出荷指数は前月比0.2%低下の101.3だった。在庫指数は1.8%低下の111.5、在庫率指数は2.4%上昇の116.6だった。
同時に発表した、メーカーの先行き予測をまとめた7月の製造工業生産予測指数は前月比2.7%の上昇となった。
経産省は「一部メーカーの生産計画は西日本豪雨の影響をまだ織り込みきれていない。一般的には下振れする可能性もありうる」として、先行きを慎重に見ている。
8月の予測指数は3.8%上昇だった。
6月の有効求人倍率1.62倍、0.02ポイント上昇 44年ぶり高水準続く
厚生労働省が31日発表した6月の有効求人倍率(季節調整値)は1.62倍で、前月から0.02ポイント上昇した。44年ぶりの高水準が続く。人手不足から正社員の求人が増えた。総務省が発表した6月の完全失業率は2.4%で0.2ポイント上昇した。良い条件を求めて転職する人が増えた結果で、雇用情勢は改善基調を維持している。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に、企業から何件の求人があるかを示す。6月は求職者が減る一方、求人数は増えた。有効求人倍率が1.6倍に達したのは2カ月連続。1974年1月以来だ。
求人倍率が高くなるほど、求職者は仕事を見つけやすく、企業は採用が難しくなる。新規求人は建設業や医療・福祉、製造業などで増えた。
企業は人手不足から待遇の良い正社員の採用を増やしている。6月の正社員有効求人倍率は1.13倍で0.03ポイント上昇し、過去最高を更新した。
失業率の上昇は4カ月ぶり。自己都合による離職(季節調整値)が7万人増えた影響が大きい。総務省は「人手不足を背景により良い条件を求める人が増えている」と分析している。
完全失業者数は168万人。前年同月に比べ24万人減った。
7月の消費者態度指数、2カ月連続低下 西日本豪雨など響く
内閣府が31日発表した7月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数は前月比0.2ポイント低下の43.5だった。低下は2カ月連続。「暮らし向き」などの指標が悪化した。内閣府は消費者心理の基調判断を「弱含んでいる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標を項目別にみると、「暮らし向き」が41.6と0.3ポイント低下した。生鮮野菜や生活必需品の値上げが消費者心理を冷やした。中国・四国地方など豪雨被害が大きかった地域で悪化が目立った。「雇用環境」と「耐久消費財の買い時判断」の指標も低下した。
一方で「収入の増え方」の指標は上昇した。改善は5カ月ぶり。消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は43.1と0.1ポイント低下した。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.2ポイント低い81.5%だった。「低下する」は0.2ポイント高い3.5%、「変わらない」は0.1ポイント低い12.5%だった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と回答すればゼロになる。
調査基準日は7月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は6064世帯、回答率は72.2%だった。

とても長くなってしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上は2010年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下のパネルは輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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鉱工業生産は5月に続いて6月も2か月連続の減産となりました。もともと、6月の生産について製造工業生産予測調査で見ると、5月統計公表時には▲0.8%の減産で、6月統計公表時でも+0.4%とわずかな増産に止まると見込まれていて、直近の日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも▲0.4%の減産でしたから、減産である点についてはまあいいとしても、▲2.1%の減産幅は少し驚きだったかもしれません。業種別では、はん用・生産用・業務用機械工業や医薬品を除く化学工業の減少が目立っています。引用した記事にもある通り、はん用・生産用・業務用機械工業ではフラットパネルディスプレーの製造装置などで納期が後ズレしたようです。また、品目別では半導体製造装置などが減少に寄与しているんですが、半導体製造装置は6月輸出においても減少しており、外需の停滞もしくは供給制約の可能性があると受け止めています。先行きについては、製造工業生産予測調査で7月が+2.7%、8月が+3.8%のぞれぞれ増産と見込まれていますが、下振れしやすい指標ですので、7月で+0.2%程度の増産との試算が示されています。6月統計の2か月連続かつ単月でも大きな落ち込みに対して、ややリバウンドが小さいんではないかという気がしないでもありません。公表された指標が多いので、在庫循環図は示しませんが、第1象限で45度線をを越えたり越えなかったりしたあたりでウロウロしています。かなり景気局面が成熟していることも事実であろうと考えています。

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続いて、雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影をつけた期間は景気後退期です。失業率がやや上昇したものの、2%台半ばくらいまで上下する可能性は十分あると私は考えており、統計的にも、自己都合による離職が増えた影響が大きく、引用した記事にもある通り、「人手不足を背景により良い条件を求める人が増えている」ことが失業率上昇の一因である可能性が高いと受け止めています。また、グラフにはありませんが、正社員の有効求人倍率も1.13倍と1倍を超えて推移しており、雇用はいよいよ完全雇用に近づいており、いくらなんでも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼしますから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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最後に、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。消費者態度指数を構成するコンポーネントを前月差でみると、「収入の増え方」が+0.4ポイント上昇したものの、「耐久消費財の買い時判断」が▲0.7ポイント、「暮らし向き」が▲0.3ポイント、「雇用環境」が▲0.3ポイント、それぞれ低下となっています。最近半年余りの動向でも、直近のピークは昨年2017年11月から今年2018年1月の3か月連続で44.6で横ばいを示した後、最近時点まで緩やかに低下傾向にあるように見えます。直近の消費者マインドの低下については、西日本豪雨といった災害の影響も反映しているんでしょうが、統計作成官庁の内閣府では基調判断を「弱含んでいる」で据え置いています。

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2018年7月30日 (月)

商業販売統計の小売販売額は8か月連続で前値実績を上回る!

本日、経済産業省から5月の商業販売統計が公表されています。ヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.8%増の11兆7750億円を、また、季節調整済みの系列の前月比は+1.5%増をそれぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の小売販売額、前年比1.8%増 判断は据え置き
経済産業省が30日発表した商業動態統計(速報)によると、6月の小売販売額は前年同月比1.8%増の11兆7750億円だった。前年実績を上回るのは8カ月連続。経産省は小売業の基調判断を「横ばい傾向にある」で据え置いた。
業種別では燃料小売業が16.7%増と伸びが目立った。原油高を背景に石油製品の価格が上昇した。飲食料品小売業は1.5%増。畜産品や総菜の売り上げが好調だった。
一方、自動車小売業は5.1%減だった。普通車や小型車の販売が振るわなかった。織物・衣服・身の回り品小売業は2.1%減。中旬に気温が一時低下し、夏物衣料の販売が伸び悩んだ。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で2.1%増の1兆6030億円だった。既存店ベースは1.5%増だった。コンビニエンスストアの販売額は2.5%増の9978億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、商業販売統計のグラフは以下の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は景気後退期です。

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繰り返しになりますが、小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.8%増を、また、季節調整済みの系列の前月比は+1.5%増を、それぞれ記録していますので、ヘッドラインの6月全国消費者物価指数上昇率+0.7%を軽く上回って、もちろん、カバレッジが大きく異なるとはいえ、実質消費の方もプラスであったのであろうと考えられます。ただし、前年同月比でもっとも大きく伸びているのが燃料小売業の+16.7%ですから、エネルギー価格高騰の影響は明らかです。他には、電機製品などが含まれる機械器具小売業が+5.4%、医薬品・化粧品小売業が+3.9%を示しており、他方、自動車小売業は5か月連続の前年割れとなっており、前年比で▲5.1%となりました。また、グラフやテーブルはありませんが、四半期ベースの季節調整済み指数の前期比を見ると、今年2018年1~3月期は天候不順による野菜価格の上昇などもあって消費は振るわず、前期比▲0.6%とマイナスを記録しましたが、4~6月期は+0.5%とリバウンドを示しており、来週8月10日に公表される4~6月期GDP統計、いわゆる1次QEにはこういった数字が反映されるものと考えています。

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2018年7月29日 (日)

終盤に中谷選手の2本のタイムリーでヤクルトを突き放して神宮では1勝1敗!!

  RHE
阪  神300100015 10112
ヤクルト200020000 4102

先発メッセンジャー投手の調子がイマイチで打撃戦となりましたが、終盤に中谷選手の2本のタイムリーでヤクルトを突き放して勝利でした。これで神宮球場では一昨日と合わせて1勝1敗のタイで、東京ヤクルトの連勝は止めたんですが、なかなか借金が返せません。

次の中日戦は、
がんばれタイガース!

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2018年7月28日 (土)

今週の読書はいろいろ読んで計6冊!

今日はどうも台風で1日中雨らしく、することもなく読書にいそしんでおります。午後から、ひょっとしたら、いつものようにプールに行って泳いで来るかもしれません。今週の読書はいろいろとバラエティ豊かに以下の通りの計6冊です。今日は自転車で図書館を回るのはムリなので、明日の午後からでも出かけられれば、やっぱり、来週の読書に向けて5~6冊ばかり借りてこようと計画しています。

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まず、トム・ヴァンダービルト『好き嫌い』(早川書房) です。著者はジャーナリスト、というか、サイエンス・ライターであって、研究者ではありません。行動経済学にも関連して、好みや好き嫌いについてのエッセイです。結局のところ、トートロジーの循環論法でしかないんですが、人間というのは関心あるものに目が行ったり聞こえてしまったりで、そのように認識の内側に入ったものに関心が向く、ということなんだろうという気がします。特に、合理的なホモ・エコノミカスを前提とするような伝統的な経済学では好みの問題は説明できない、としか考えません。というか、そこで思考停止します。ただ、特に生産的とも思えない芸術の好き嫌い、例えば、私の父親はいわゆるクラシック音楽のドイツ・ロマン派が好きでしたが、私はモダン・ジャズが好きです。ただ、高校生や大学生のころはコルトレーンのサックスが特に好きだったんですが、寄る年並みとともに、もっと静かなピアノ・トリオの演奏が好きになりました。もっとも、私はサックスは吹けませんが、ピアノは習っていたことがありますので、当然の好みの変化かもしれません。そして、私自身でも不思議なのが、阪神タイガースに対する好みの問題です。昨夜も東京ヤクルトにボロ負けしたにもかかわらず、タイガースへの愛情だけは一向に衰える気配がありません。まったく、不思議なことです。

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次に、康永秀生『健康の経済学』(中央経済社) です。著者は東大医学部教授であり、本書の表題を私のようなエコノミストの視点からではなく、医者の視点から解明しようと試みています。高齢化が進む日本の経済社会において、いかにして医療費の増加を抑制するか、という観点から議論が進められています。ということで、最終章で、結論として、質を犠牲にするか、費用を犠牲にするか、アクセスを犠牲にするか、の3択を著者は提案しています。医療費抑制が本書の眼目なんですから、2番めの費用を犠牲にして、多額の財政リソースをつぎ込む選択肢はもともとあり得ません。ですから、医療の質を犠牲にするか、現在のフリーアクセスを放棄してアクセスを犠牲にするか、という2択になります。そして、著者は医学研究者らしく医学の進歩を止めて質を犠牲にすることなく、アクセスを制限して英国型の医療を提案します。私はエコノミストとして、やや逆説的ではありますが、もうここまで平均寿命が伸びたんですから、医学の進歩も停滞させていいんでないかという気がして、質を犠牲にするのも一案ではないかと考えています。私のようなシロートから見ても利幅の大きな老人向け医療よりも、小児科とか子供や若年者向けの医療の充実や質の向上を目指すティッピング・ポイントに差しかかっている気がしてなりません。その意味で、本書の結論のひとつで明確に間違っているのは、子供向け医療費の無料化が子育て費用の軽減を通じて有効な少子化対策になる点を見逃していることです。「医療費無料」にのみ過剰に反応している気がしてなりません。

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次に、朝日新聞取材班『権力の「背信」』(朝日新聞出版) です。合せて「モリカケ」と称された森友学園と加計学園に関する報道ないしスクープの現場をメイキング調で明らかにしたノンフィクションです。森友学園の国有地取得に関する不透明な手続き、さらに、加計学園の獣医学部創設にまつわる総理の意向とその忖度のあり方、そういった行政の中立性や透明性に関する疑念を生じかねないスキャンダルについて朝日新聞記者が、どのような取材活動を行い、国民にメディアを通じて伝えたかを跡付けています。第1部で森友学園を取り上げ、第2部で加計学園に焦点を当てていますが、さまざまな報道がなされた上で、もちろん、内閣支持率への影響もあったこととは思いますが、結局のところ、本書にもある通り、昨年の総選挙では現政権に圧倒的な信任が示されたわけですし、それを影響力絶大とはいえ個人の「排除」発言ですべてを論じるのもムリがあるような気がします。また、森友学園と加計学園で結果として前者が学校理事長夫妻の逮捕とか、学校開設の断念とかで終ったのに対して、後者が今年4月に獣医学部を創設し、それなりの倍率の入試で学生を集めてスタートを切ったのと、かなり差が大きいように私は受け止めているんですが、この差が何から生じたのか、個別に2つの事案を取り上げるだけでなく、総合的な評価も示して欲しかった気がします。でも、極めて緊迫感や臨場感あふれるルポで、400ページ余りでかなり小さい文字のボリュームにもかかわらず、一気に読ませる迫真のリポートです。今年一番の読書でした。

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次に、キャシー・オニール『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』(インターシフト) です。著者は数学の博士号を持つデータ・サイエンティストです。上の表紙画像に見られるように、英語の原題は Weapon of Math Destruction であり、普通は、"Math" の部分に "Mass" が入って、「大量破壊兵器」と日本語に訳されるわけです。ということで、数学的なモデルの普遍性、例えば、三児の母親である著者が夕飯の献立を考える、といった実に実践的な人間行動においても数学的なモデルが背景にあるということを本書では解説しつつ、そういった数学モデルが経済的な効率性にのみ奉仕し、正当性とか、倫理性を放棄している現状を批判的に議論しています。そして、こういった数学モデルを用いたスコアの測定、例えば、オンライン広告の極めて倫理観の欠如した売り込み、就職の時の適正スコアに対する疑問、サブプライム・バブル崩壊時にも疑問視されたクレジット・スコアの適正さに対する疑問、などなどを実に理論的に取り上げ、現在のAIを活用し、ビッグデータを取り込んだデータ解析のあり方を批判的に取り上げています。ただ、視点としては理解できるものの、現状分析としては、その通りなのかもしれませんが、そういった憂慮すべき現状に対する処方箋が物足りない気がします。でも、マルクス主義的に考えると、そこがまさに資本主義の限界なのかもしれません。でも、そこで思考停止するのも問題のような気がします。

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次に、マーチン・ファン・クレフェルト『新時代「戦争論」』(原書房) です。著者はオランダ生まれで、イスラエルの歴史研究者です。こういった戦争論や兵法でいえば、中国の孫子やクラウゼヴィッツによる『戦争論』が有名なんですが、本書の英語タイトルは More on War であり、クラウゼヴィッツを強く強く意識しているようです。というのは、最後の解説でも示されている通り、クラウゼヴィッツ『戦争論』のドイツ語のタイトルは Vom Kriege であり、英語に直訳すると On War ということになります。本書はそれに More をつけているわけです。ということで、孫子やクラウゼヴィッツには、なぜか、海戦が取り上げられていない点や、あるいは、その後の技術的な進歩による宇宙戦やサイバー戦はいうに及ばず、大量破壊兵器が実戦で使われるようになったり、また、戦争を開始する主体が国王という君主から議会という国民の代表、さらに、国連決議に基づく戦闘行為といった変遷を遂げた現在までの新しい時代における戦争について論じています。もちろん、私は専門外もいいところなんですが、従来説である「戦争は政治や外交の延長」という見方が必ずしも成り立たない現在の戦争について、要するに、戦争プロパーについて戦略のみならず兵站まで含めた戦争に焦点を当てています。孫子やクラウゼヴィッツに代わる新たなスタンダード、とまでは決して思いませんが、私のようなシロートにもなかなかタメになりそうな気がします。

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最後に、渡淳二[編著]『ビールの科学』(講談社ブルーバックス) です。数年前の同名のブルーバックスをカラー版として豪華に再編集したものだそうで、かなりの程度にアップデートもされているようです。編著者をはじめとして、サッポロビールの面々が本書の製作に当たっています。ブルーバックスですから、かなり理系の本です。大昔に食物科の女子大生の友人から聞いたようなお話だと感じてしまいました。なお、我が家では、上の倅は私以上に酒飲みなんですが、20歳過ぎの大学生ということもあって、ビールなんぞの低アルコール酒よりは、より男っぽい、というか、何というか、スピリッツ系のウィスキーなどを好む一方で、私は酒が強くもないので、もっぱらナイター観戦のお供のビールで済ませています。阪神が弱いのでビールもおいしくないんですが、私は違いの判らない男ですので、本書で詳細に解説されているようなビールと発泡酒と第3のビールについては、少なくとも味の違いは判りかねます。もっぱら値段の違いで買い別けています。ただ、本書ではビールの本場ドイツには着目しているものの、圧倒的な消費量を誇る米国のビール事情が少し足りないような気がします。私が米国連邦準備制度理事会(FED)のリサーチ・アシスタントをしていた1980年代終わりころには、すでにクアーズがロッキーを超えていて、高所得層はクアーズ、低所得層はバドワイザーといった雰囲気がありました。また、ちょうど発売が始まったのか、輸出が始まったのか、米国でキリンの一番搾りが飲み始められたころで、「キリン・イチバン」と称されていて、「イチバン」がそのまま英語化していたような気がします。ジャズを聴きに行くと、ピアニストのハロルド・メイバーンが「イチバン・メイバーン」と紹介されていたのを思い出します。

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2018年7月27日 (金)

シェアリング・エコノミーの市場規模やいかに?

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最近拡大を示しているシェアリング・エコノミーの市場規模を内閣府経済社会総合研究所が推計しています。新聞各紙にも広く取り上げられていたように記憶しています。スペースのシェアはいわゆる民泊であり、airbnbなどのマッチングによるものですし、上のテーブルにはありませんが、世界的にはUberなどによる移動のシェア、すなわち、ライドシェアもあるものの、我が国の現状では白タク規制により除外されているようです。他方、我が国独自のモノのシェア、すなわち、メルカリなどは中古品売買がほとんどですから、GDP統計には含まれません。でも、約5,000億円という規模はあくまでSNA上の生産額であり、GDPのような付加価値ということになれば中間投入を差し引く必要があるため、さらにこの5,000億円から規模が小さくなるんでしょうが、2016年時点とはいえ少し小さいかな、という気がしないでもありません。いずれにせよ、エコノミストの目から見ても、シェアリング・エコノミーは注目の分野であることは間違いありません。

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2018年7月26日 (木)

広島にボロ負けしてウル虎の夏が終わり長期ロードに出発!!

  RHE
広  島500101020 9150
阪  神001000020 371

先発藤浪投手が背信の初回5失点で、広島にボロ負けでした。これで黄ユニのウル虎の夏が終わり、長期ロードに出発して、明日から神宮やナゴドを転戦します。広島の独走に手を貸しただけの3連戦でした。

ヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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6月統計で企業向けサービス物価(SPPI)上昇率+1.2%は25年振りの高さを記録!

本日、日銀から6月の企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。前月からさらに上昇幅を拡大して+1.2%を記録しています。プラスの上昇は60か月、すなわち、ちょうど5年になります。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の企業向けサービス価格、前年比1.2%上昇 約25年ぶりの伸び率
日銀が26日に発表した6月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は104.8と、前年同月比で1.2%上昇した。消費増税の影響を受けた時期を除くと、1993年1月以来、約25年ぶりの高い伸び率だった。幅広い産業で、人手不足による人件費の上昇を価格に転嫁する動きが広がった。
土木建築サービスや労働者派遣サービスなどで、人件費の上昇を価格に転嫁する動きが目立った。上昇は60カ月連続。
指数は前月比では0.2%上昇した。製造業などからの受注増により、ソフトウエア開発で値上げが進んだ。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは75品目、下落は32品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は43品目で前月の45品目からは縮小した。

いつもながら、簡潔によく取りまとめられた記事だという気がします。企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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今年4月以降の統計を見て、私は年度替わりのタイミングで各企業が上手に価格引き上げ交渉を終えた、と実感していたんですが、その後も本日公表の6月統計までジワジワと上昇幅を拡大し、とうとう+1.2%に達しました。引用した記事にもある通り、消費増税の影響を受けた時期を除くと、バブル崩壊から少し経った1993年1月以来四半世紀振りの高い伸び率を記録したことになります。大分類・小分類で見ると、人手不足を主因として、相変わらず、運輸・郵便が前年比で+2.2%の上昇を示しており、その中で、特に上昇率が高いというわけではないんですが、いかにも人手不足の影響を受けていそうな分類としては、道路貨物輸送が+3.6%の上昇となっています。また、景気に敏感な広告の上昇率は5月統計のマイナスから6月にはゼロを記録しています。同じく、低金利の影響を受けやすいリース・レンタルも今年2018年3月からマイナスが3か月続いていましたが、6月統計ではゼロとなっています。

私の単なる感想に近いんですが、今日発表の企業向けサービス物価指数 (SPPI) や先日公表された企業物価 (PPI) は、いわゆる B to B の取引であり、B to C の消費者物価 (CPI) よりも人手不足を主因とする価格転嫁を受け入れやすいようです。

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2018年7月25日 (水)

リクルートジョブズによるアルバイト・パートと派遣スタッフの賃金動向やいかに?

来週の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる非正規雇用の時給調査、すなわち、アルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の6月の調査結果を見ておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の6月度平均時給は前年同月より+1.9%、+19円増加の1,031円となり、職種別では、「販売・サービス系」、「製造・物流・清掃系」、「専門職系」など、全職種で前年同月比プラスとなり、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアでプラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、一時期は前年同月比マイナスを記録する月もありましたが、最近では2017年9月からプラスを続けていて、6月は+18円、+1.1%増の1,638円に達しています。最近では、人材確保のために正社員の求人も増加し、正社員有効求人倍率が1倍を超えているんですが、ご同様に、非正規雇用の求人も堅調と考えてよさそうです。

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2018年7月24日 (火)

米中貿易戦争の経済的影響やいかに?

米中の貿易戦争について、大和総研から2本ほどリポートが明らかにされています。6月21日付けの「米中通商戦争はそんなに悪い話なのか?」と7月20日付けの「続・米中通商戦争のインパクト試算」です。結論としては、日本経済へのマイナスの影響は決して大きくない、ということで、特に、続編では国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し改定見通し」と比較して、国際機関の影響分析は大き過ぎる、と指摘しています。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、「米中通商戦争はそんなに悪い話なのか?」から 関税の影響試算 (総括版) を引用すると上の通りです。「米中財政支出なし」、すなわち、関税によって増加した政府収入を政府支出として還元しないケースでGDPへの影響で見ると、米国経済へのマイナス・インパクトが▲0.06%、中国が▲0.10%なのに対して、我が国へはわずかに▲0.01%にしか過ぎません。関税によって増加した政府収入を政府支出として還元するケースでは、我が国への影響はほぼほぼありません。なお、大和総研のマクロ・モデルの概要については、関税率の上昇が相対的な国際競争力を変動させる結果として輸出入を変動させると同時に、輸入物価の上昇に伴う実質可処分所得の減少を通じて個人消費に下押し圧力をもたらし、結果として落ち込んだ国内生産に応じて設備投資も抑制される構造となっている、と紹介されています。

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続いて、「続・米中通商戦争のインパクト試算」から 各関税措置が貿易コストと世界経済に与える影響試算一覧 の表を引用すると上の通りです。経済協力開発機構(OECD)と国際通貨基金(IMF)といった国際機関の試算結果が示されています。極めて重大な結果を示していると私は考えるんですが、リポートによれば、大和総研は今回の米中関税引き上げに伴う世界の貿易コストの上昇率を0.26%と試算している一方で、国際機関による試算の前提は10%の貿易コスト上昇となっており、この貿易コスト上昇に関する前提の差が結果の差につながっている、とリポートでは指摘しています。もっとも、リポートでも指摘していますが、IMFがG-20に向けて明らかにした G-20 Surveillance Note では、少し修正して、"Tariffs on their own have a smaller effect on global GDP, with a maximum loss of about 0.1 percent relative to the baseline." と、世界GDPへの影響は最大でも▲0.1%と試算しています。

メゾスコピックに見て、個別には影響の大きい産業や業界、あるいは、地域があるのかもしれませんが、大騒ぎしている割には、マクロの世界経済や日本経済への影響は小さいのかもしれません。

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2018年7月23日 (月)

猛暑の経済効果とその反動やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、第一生命経済研から7月17日に「日本経済にも厳しい猛暑」と題して、猛暑の一時的特需とその後の反動減について取りまとめたリポートが明らかにされています。図表を引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、猛暑に当たる時期の一般的な猛暑効果としては、リポートには「過去の猛暑で恩恵を受けた業界」が上の通り示されており、本文中でも、飲料関連需要の高まりやビアガーデン等の盛況が考えられるとし、コンビニをはじめ、小売業界の売上高も猛暑効果で季節商材の動きが活発化することについても期待が示されています。また、外食売上高以外にも、飲料や家電向けを中心にダンボールの販売量も増加が予想され、ドリンク剤やスキンケアの売上好調により製薬関連でも猛暑は追い風となると考えられます。乳製品やアイスクリームの好調推移が期待される乳業関連も猛暑効果は大きく、化粧品関連でも季節商材の好調が目立つところです。逆に、ガス関連は猛暑で需要が減り、医療用医薬品はお年寄りの通院が遠のくこと等により猛暑がマイナスに作用する可能性もある、と指摘しています。
そして、リポートでは、気温も含めた消費関数と輸入関数が推計されており、7~9月期の日照時間が+10%増加すると家計消費支出が+0.39%程度押し上げられ、また、気温に換算すれば、平均気温が+1℃上昇すると、同時期の家計消費支出を約+2,884億円(+0.5%)押し上げる、との試算結果が示されています。

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ただし、猛暑効果の反動もあるとして、リポートには「記録的猛暑後はマイナス成長のジンクス」のグラフが上の通り示されており、本文中でも、猛暑効果により売上を伸ばす財・サービスは暑さを凌ぐためにやむなく出費するものが多く、したがって、今年も猛暑効果で夏に過剰な出費がなされれば、秋口以降は家計が節約モードに入ることが予想されるため、秋以降は注意が必要、と指摘しています。

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2018年7月22日 (日)

猛虎打線が乱れ打ちで横浜投手陣を圧倒!!

  RHE
阪  神122012210 11140
横  浜100001014 780

ホームランが飛び交い、猛虎打線が横浜投手陣を圧倒して勝利でした。先発メッセンジャー投手も10勝目を上げましたが、リリーフ陣がピリっとしませんでした。まあ、勝ちは勝ちです。次はいよいよ、広島を甲子園に迎えての3連戦です。打線は上向きです。

広島の独走を許さず、3連勝目指して、
がんばれタイガース!

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どこまで続く猛暑なのか?

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上の画像は、今週の天気予報です。日本気象協会のサイトから引用しています。タイトルは「今週の天気 記録的な猛暑 底知れぬ暑い夏」だそうです。先週はものすごい猛暑でした。まだまだ続くみたいで、年齢相応に体力の落ちている私なんぞはひとたまりもありません。

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2018年7月21日 (土)

横浜を倒したロサリオ選手の連続ホームランはいよいよお目覚めのサインか?

  RHE
阪  神015010000 7101
横  浜020001200 5111

3回のビッグイニングを生かして、特に、ロサリオ選手の2ホーマーで横浜に逆転勝ちでした。先発岩貞投手も久々の勝ち星でしたが、後半はリリーフ陣が危ういリレーながらも何とか逃げ切りました。ロサリオ選手の連続ホームランはお目覚めのサインなのか、はたまた単なる出合い頭なのか、明日の試合も目が離せません。久し振りに阪神が勝った試合を見た気がします。

明日も、
がんばれタイガース!

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今週の読書は経済書中心に計7冊!

今週もまずまずよく読んで、経済書中心に以下の7冊です。

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まず、嶋中雄二『第3の超景気』(日本経済新聞出版社) です。著者は民間金融機関である三菱UFJモルガンスタンレー証券の景気循環研究所の所長を務めるリフレ派のエコノミストであり、私と同じく景気循環学会の会員だったりもします。本書では、名目設備投資がGDPに占める割合の偏差をバンドパス・フィルターを通すことにより景気循環のサイクルを抽出する手法を取っています。すなわち、univariate なアプローチであり、ある意味で、どマクロな方法論ですから、右派の経済学、例えば、リアル・ビジネス・サイクル(RBC)で論じられているように、経済主体の最適化行動といったマイクロな基礎付けはまったく考慮されていません。その上で、キチンの短期循環、ジュグラーの中期循環、クズネッツの長期循環、コンドラチェフの超長期循環の複合循環を論じています。すなわち、これらすべての4サイクルがそろって上向くゴールデン・サイクル、短期ないし中期循環のうちのひとつが欠けながらも長期及び超長期循環とともに3サイクルが上向くシルバー・サイクル、長期と超長期の2サイクルが上向くブロンズ・サイクル、といったふうです。そして、通常は政府の景気循環日付は短期のサイクルで見ていたりするんですが、著者は長期と超長期のサイクルを重視し、この2つの複合循環であるブロンズ・サイクルこそが短期と中期の景気循環を超越した存在として、本書のタイトルである超景気と呼べるものと位置づけ、直近では2011年を大底に超景気が始まり、その景気のピークが足元の2017~18年に到来し、いったん2021~22年に厳しい景気後退期に見舞われるものの、2024~25年には再び次のの好景気がやってくると予測しています。また、補論で人口動態を超える景気サイクルのパワーを論じています。とても大胆な分析と予測であり、なかなか興味深い読書でした。

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次に、ジェレミー・リフキン『スマート・ジャパンへの提言』(NHK出版) です。著者は2016年1月23日付けの読書感想文でも取り上げた『限界費用ゼロ社会』の著者でもあり、こういった分野の権威とも目されています。本書は来日した際のインタビューなどを中心に、我が国への『限界費用ゼロ社会』の適用について議論を展開していますが、もちろん、日本への我田引水に満ちています。我が国経済社会は高度な技術を持つとともに、インフラも整っていて、第3次産業革命への備えはバッチリ、ということになっていますが、別稿ではインフラの整っていない途上国でもリープ・フロッグのように次の段階にすっ飛ばすことが出来るので、インフラの整った先進国よりも第3次産業革命に進みやすい、なんて議論もあったりします。やじ馬的に、とても参考になるのは、小谷真生子がインタビューした「いまの産業革命は第3次なのか、第4次なのか?」と題するコラムです。ダボス会議を主催する世界経済フォーラムのシュワブ教授の第3次産業革命が累積して行って速やかに第4次産業革命にいたる、という、まるで、我が国戦前の講座派のような歴史観を真っ向から否定し、現在のデジタル化の進展が第3次産業革命であり、最後の産業革命である、といい切っています。なかなかの見識だという気がします。

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次に、ナイアル・キシテイニー『若い読者のための経済学史』(すばる舎) です。著者は英国のエコノミスト、ジャーナリストだそうで、本書は上の表紙画像に見られるように、Yale University Press Little Histories の1冊です。タイトル通りに、経済学史をひも解いているわけですが、古典古代の哲学者による経済学的な要素の検討から始まって、アダム・スミスによって古典経済学が樹立される前夜の重商主義や重農主義の経済学、そして、スミスによる古典派経済学の開闢とリカードらによるその完成、加えて、これ他の古典派経済学を基礎としつつも、階級闘争理論も加味したマルクス経済学、もちろん、その後の新古典派経済学から現代経済学への流れも的確に解説されています。私の専門分野に引きつけて論じれば、ノーベル経済学賞を授賞されたルイス教授やセン教授の令名があらたかなんでしょうが、開発経済学についても大いに取り上げられています。少なくとも、私が在学していたころの京都大学経済学部には開発経済学の授業はなかったように記憶していますので、新たな学問分野なのかもしれません。繰り返しになりますが、マルクス経済学までを視野に収めた極めて幅広い経済学の歴史を収録しています。そして、タイトルに沿って、かなり平易に解説を加えています。ひょっとしたら、かなりレベルの高い進学校の高校生なら読みこなすかもしれません。同時に、経済学にそれなりの素養あるビジネスマンでも物足りない思いをさせることもありません。

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次に、山口真一『炎上とクチコミの経済学』(朝日新聞出版) です。著者は国際大学の経済学研究者で、ブリニョルフソンらの研究に基づいて、消費者余剰の計測を行った論文を私も読んだことがあります。本書ではネット上のいわゆる「炎上」について数量的な分析を加えて、炎上とクチコミという「ネット上での情報発信」の実態を明らかにすることを目的にしています。例えば、炎上参加者には「年収が高い」「主任・係長クラス以上」が多い、とか、また、炎上の参加者はネット利用者のわずか0.5%であり、ネット世論は社会の意見を反映してはいるわけではない、といった主張を展開しています。さらに、炎上を早期に小規模で食い止めたり、あるいは、逆方向に利用したりした実例を豊富に取り上げ、炎上を過度に恐れずに、ビジネスでソーシャルメディアを最大活用する方法について論じています。同時に、第4章で「炎上対策マニュアル」を示し、最後の第5章でフェイクニュースの拡散とか、最近のネットの話題を解説しています。私は個人でしかSNSを利用しておらず、ビジネスでソーシャルメディアを活用するような役割は担っていませんが、そういう立場になくても、例えば、最終的には炎上にはメディアで取り上げられるケースが多いなど、それなりに参考になるネット事情に関する情報だという気がします。

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次に、山本芳明『漱石の家計簿』(教育評論社) です。著者は学習院大学の文学研究者だそうですが、夏目漱石が一時期つけていた家計簿や印税に関する資料などを参照しながら、漱石の家計事情や作品への影響などにつき、漱石の生存中と死後に分けて論じています。すなわち、文学者、というか、明治期の作家がかなり経済的に恵まれない境遇にあった一方で、漱石は英国留学を経験した上に教職について十分なお給料をもらっていたり、あるいは、教員を辞めた後には朝日新聞のお抱え作家として、さらにいいお給料を取っていた月給取りだったんですが、それでも、明治大正期の格差の極めて大きな経済社会では、三菱や三井といった大財閥のとんでもない金持ちがいて、漱石もその時期の清貧に甘んじる文学者・作家らしく金持ちを批判する姿勢を示していたわけです。特に、漱石が金持ちを嫌った背景として、報酬は労力に見合って支払われるべきであり、投資などの「金が金を産む」システムを嫌ったという倫理的側面が強調されていたりもします。ただ、夏目家の家計の実際は妻の鏡子が握っていて、漱石個人は小遣いをもらって使っていたようで、大正バブル期で株でかなりもうけたとか、漱石の死後には人造真珠会社に手を出してスッカラカンになってしまったとか、いろいろな漱石文学とは違った観点からの論考が明らかにされています。本書でも指摘されているように、『吾輩は猫である』とか、『坊ちゃん』で読み取れる漱石の文学は明るくのんきでユーモアたっぷり、といったところかもしれませんが、その背景にはしっかりと定期的なそれなりの収入があった、という点も忘れるべきではないのかもしれません。

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次に、辻村深月『青空と逃げる』(中央公論新社) です。著者はご存じ今年の本屋大賞受賞『かがみの孤城』の著者であり、私も大好きな作家のひとりです。本作は読売新聞連載を単行本に取りまとめており、ストーリーとしては、日本各地を逃避行する母子、子どもは小学5年生の男子、の2人の物語です。小学5年生の男の子の両親は劇団員のいわば職場結婚で、母親は劇団を辞めて、パート勤務はしているものの、ほぼほぼ専業主婦となっていて、父親がまだ劇団の俳優をしているんですが、その売れない劇団員の父親が有名女優の運転する自動車に同乗して事故にあい、ヤバい筋もからんだ有名女優のプロダクションから逃げ回ります。高知、瀬戸内海の家島、別府、仙台、そして、北海道で父親と再会を果たします。いろんな要素が盛り込まれている上に、母親の1人称の語り、小学5年生男子の子供の語り、はたまた、3人称での語りと、各節ごとに極めてテクニックを弄しているような気もしますし、読みこなすのにムリはありませんが、ホントに深く読むことが出来るのはそれ相応の読み手でないと難しい気もします。でも、私のように、この作家のファンなら読んでおくべきでしょう。

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最後に、葉室麟『青嵐の坂』(角川書店) です。昨年亡くなった人気時代小説作家の扇野藩シリーズの最新刊です。というか、作者が亡くなっていますので、事実上、4巻目の本作はこのシリーズの最終巻といえます。扇野藩シリーズは江戸時代の譜代大名で京大坂の上方と江戸の間のどこかにある扇野藩を舞台に、重臣たちがお家騒動を繰り広げる、私の考える典型的な時代小説なんですが、本作では城下の家事を起因として財政がひっ迫する扇野藩の立て直しのために藩札発行を目指す中老とその上位者である家老との確執を取り扱っています。私はこの扇野藩シリーズの中では、赤穂浪士の討ち入りを絡めた第2話の『はだれ雪』が好きだったりする一方で、この第4話『青嵐の坂』は特にいい出来とも思えませんが、扇野藩シリーズの第2話である『散り椿』が今秋封切りで映画化されていますので、読んでおいて損はないかもしれません。

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2018年7月20日 (金)

18か月連続のプラスを記録した消費者物価(CPI)上昇率の先行きやいかに?

本日、総務省統計局から6月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。前年同月比上昇率でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月からやや上昇幅を拡大し+0.8%を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の全国消費者物価、0.8%上昇 エネルギー高が影響
総務省が20日発表した6月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.0と前年同月比0.8%上昇した。上昇は18カ月連続。原油高によるエネルギー価格の上昇が影響した。ただ、エネルギー以外の品目は上昇幅が限られ、物価上昇の勢いは鈍化している。
生鮮食品を除く総合では、全体の52.2%にあたる273品目が上昇した。ガソリン価格や都市ガス代が上昇した。ただ5月に比べると上昇品目数は減少した。
下落は183品目だった。安売り規制による価格上昇の効果が一巡し、ビールなど酒類が下落した。横ばいは67品目だった。
生鮮食品を含む総合は100.9と0.7%上昇した。まぐろなど生鮮魚介類が値上がりした。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは100.9と前年同月比0.2%の上昇にとどまった。診療代や外国パック旅行費は上昇したものの、通信料が下落した。NTTドコモが5月に新たな携帯電話料金プランを導入したため。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIが前月比で0.1%低下した。物価上昇の勢いは一段と鈍化している。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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ということで、国際商品市況における石油価格の上昇を受けたCPIの上昇幅拡大であり、引用した記事にもある通り、エネルギーを除けば物価上昇は限定的と私も考えています。上のグラフに反映されている私の独自計算による寄与度では、6月のコアCPI上昇率+0.8%のうちエネルギー寄与度が+0.56%と7割を占めます。生鮮食品を除く食料が+0.18%ですので、この食料とエネルギーの除く総合で定義されるコアコアCPIの上昇率は、上のグラフでは赤い折れ線グラフでプロットしてあるところ、ほぼほぼゼロにまで低下しています。ただ、このブログでは旧来の食料とエネルギーを除く総合でコアコアCPIを定義していますが、最近の統計局の定義では、「生鮮食品及びエネルギーを除く総合」となっているようですので、来月あたりからは、このブログでも変更いたしたいと予定しています。脱線してしまいましたが、物価上昇率に話を戻すと、日銀の企業向けサービス物価(SPPI)を見ている限りでは、年度替わりの4月に価格改定がスムーズに進んだような印象だったんですが、この46月期の消費者物価(CPI)を見ると、そうでもない気がします。B to B では価格転嫁がそれなりに理解されるものの、B to C ではまだ消費者の財布のひもは堅い、といったところなのかもしれません。
繰り返しになるものの、石油をはじめとするエネルギー価格に牽引された物価上昇であり、CPIのフレーム外ながら、日銀の企業物価(PPI)や企業向けサービス物価(SPPI)の輸入物価や素原材料からジワジワと中間財や最終財に、そして、消費者物価に波及が見られるものの、コストプッシュの物価上昇で実体経済への影響が懸念される上に、政府のデフレ脱却はともかく、日銀の2%の物価目標からはほど遠く、ホントに石油価格からの波及によるコストプッシュだけで物価が上昇するのがデフレ脱却といえるのかどうか、やや疑問に感じないでもありませんが、いまさら「いいインフレ」と「悪いインフレ」を区別するのも気が引けています。

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2018年7月19日 (木)

2か月振りに黒字を記録した貿易統計の評価やいかに?

本日、財務省から6月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比+6.7%増の7兆524億円、輸入額も+2.5%増の6兆3310億円、差引き貿易収支は+7214億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易収支2カ月ぶり黒字 6月7214億円、中国輸出好調
1-6月は5期連続黒字

財務省が19日発表した6月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は7214億円の黒字だった。黒字は2カ月ぶりで黒字額は66.5%増加した。QUICKがまとめた市場予想の中央値(5342億円の黒字)を上回った。輸出入ともに増加したが、中国向けの好調を背景に輸出の伸びが上回った。
輸出額は前年同月比6.7%増の7兆524億円だった。19カ月連続で増加した。中国向けの原動機や半導体等電子部品が伸びた。
輸入額は2.5%増の6兆3310億円。原油高を背景に中東から原粗油が増加した。原油の円建て輸入単価は45.0%上昇した。南アフリカから非鉄金属の輸入が伸びたことも寄与した。
6月の為替レート(税関長公示レートの平均値)は1ドル=109.86円。前年同月に比べて0.9%円高・ドル安に振れた。
対米国の貿易収支は5903億円の黒字で、黒字額は0.5%増加した。増加は2カ月ぶり。輸出入ともに減少したが、輸入減の影響が上回った。対米輸出の減少は17カ月ぶりとなる。
同時に発表した2018年1~6月の貿易収支は6067億円の黒字だった。黒字は半期ベースで5期連続だが、エネルギー関連の輸入増が響き、黒字額は前年同期比39.9%減少した。
輸出額は6.2%増の40兆1305億円で、上半期としては08年以来の高水準となった。自動車や半導体等製造装置が伸びた。輸入額は7.5%増の39兆5238億円。原粗油や液化天然ガス(LNG)が増加した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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上のグラフを見ても、例えば、下のパネルの季節調整済み系列で見ても、最近時点ではかなりグラフがギザギザになっており、細かな変動があることが読み取れます。特に、輸入額については国際商品市況の変動に連動している可能性が高いと私は受け止めています。ただ、大雑把に見て、輸入額は国際商品市況の上昇とともに緩やかに増加を示している一方で、輸出はかなり横ばいに近くなっています。その輸入の増加傾向についても、もっとも直近で利用可能な6月統計で、原油及び粗油の輸入額は季節調整していない原系列の前年同月比で+20.2%の増加を見せているものの、数量ベースでは逆に▲17.1%の減少を示しており、輸入については、製品輸入は別かもしれませんが、特にエネルギーや非鉄金属などの素原材料の動向については、国際商品市況における価格動向に伴う名目値の変動であり、数量ベースでは大きな変動ではない、というか、むしろ原油及び粗油については価格と数量が逆に動く場合すらある、ということが出来ます。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。OECD先行指数に基づく海外の需要動向を見ると、中国では上り坂、先進国の集まりであるOECD加盟国では下り坂となっています。2017年のデータに基づいて極めて大雑把にいって、アジアへの輸出が年間43兆円、そのうち中国向けが15兆円、先進国が北米の16兆円と西欧の9兆円を合わせて25兆円ですから、最近時点での貿易収支を見る限り、上向きの中国需要動向と伸び悩む先進国需要がその時々によって我が国輸出に影響を及ぼしている、ということになります。もちろん、中長期的には米国を起点とする貿易制限的な通商政策、いよいよ始まりそうな貿易戦争のゆくえも気にかかるところです。

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2018年7月18日 (水)

なすすべなくジャイアンツに3タテされる!!

  RHE
読  売300000020 5110
阪  神000000003 390

上位の広島や巨人を追いかけるどころではなく、ジャイアンツに3タテされてしまいました。オールスターが終わって後半戦が始まっても、まったく阪神打線の貧打は変わらず、ゲームが完全に決まってから最終回に打ち始めたものの、どうなるものでもありませんでした。ひたすら、9回の攻撃が次につながるよう期待します。

次の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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OECD "The Long View: Scenarios for the World Economy to 2060" に見る超長期世界経済シナリオやいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、7月12日に経済協力開発機構(OECD)から "The Long View: Scenarios for the World Economy to 2060" (OECD Economic Policy Papers No.22) と題する超長期世界経済シナリオが公表されています。キチンとした参照文献としての表示は以下の通りです。もちろん、pdfの全文リポートもアップロードされています。

現時点での3%台半ばの成長率は徐々に低下して、特に、中国の世界経済の成長への寄与が縮小し、2060年には2%強に達する見込みですが、先進国とインド+中国といった新興国の成長への寄与のバランスが、ある意味で、よくなる、というか、イーブンに近づいたりもします。図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポート p.8 から Figure 1. The baseline scenario in a snapshot のうちの地域別と生産要素別のそれぞれの寄与度をプロットしています。すべてベースライン・シナリオなんですが、上のパネルから明らかな通り、世界経済の成長率は現在の+3%台半ばから2060年ころには+2%強にゆっくりと低下して行きますが、先進国の集まりであるOECD加盟国やインドの寄与度は、それほど大きく低下しない一方で、中国の寄与度が大きく低下するのが読み取れます。加えて、下のパネルからは、労働者1人当たりの資本装備率や労働の効率性については大きな変化ないものの、インプット側の労働投入の寄与が2040年ころからマイナスに転じるのが見て取れます。

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次に、上のグラフはリポート p.14 から Figure 3. Trend real GDP per capita growth, per cent のうちのOECDとBRICSのそれぞれの寄与度をプロットしています。縦軸のスケールが異なるので注意が必要で、すべてベースライン・シナリオなんですが、基本は世界経済の成長率と同じで、インプット側の労働の寄与が小さくなってマイナス化する一方で、資本装備率と労働の効率性による成長が続くんですが、後者の寄与の方が大きくなっています。テーブルの引用はしませんが、国別で潜在的な1人当たりGDPの伸び率は p.15 Table 1. The sources of potential real GDP per capita growth in the baseline scenario で示されています。2018~30年と2030~60年の2期間という極めて大雑把な括りながら、日本に着目すると、両方の期間で日本の潜在的な1人当たりGDPの伸び率はそれぞれ+1.4%と+1.8%であり、そのうちの労働の効率性の寄与が+1.1%と+1.4%、資本装備率の寄与は+0.2%と+0.7%、労働の効率性と資本装備率を足すと1人当たりGDPの伸び率を超えますので、人口減少、というか、労働投入の減少がマイナス寄与しているわけです。

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第1章の導入部と第2章でのベースライン・シナリオの提示を受けて、第3章から第6章の4章をかけて代替シナリオが分析されていて、第6章では自由貿易の重要性を論じているんですが、 上のグラフはリポート p.45 Figure 26. Impact of rising trade protectionism on world trend real GDP per capita を引用しています。いずれもベースライン・シナリオと比較していて、上のパネルが成長率の差、下がGDP水準の差です。貿易自由化が逆戻りして1990年の平均的な輸入関税に戻ると、世界全体の平均で長期的な1人当たりGDPが▲14%押し下げられ、もっとも大きな影響を受ける国々では▲15~20%下がる、と試算されています。また、第6章以外については、第3章では新興国の組織改革をはじめとする構造改革、第4章では先進国の生活水準と構造改革、第5章ではOECD加盟国における財政のサステイナビリティ、がそれぞれ取り上げられています。グラフは引用しませんが、第3章 p.23 Figure 6. Impact of governance reform, convergence in educational attainment and import tariff reductions on real GDP per capita in the BRIICS - decomposition by component では、こういったグラフのタイトルに当たる改革がなされれば、2060年時点でBRICS各国の1人当たりGDPがベースライン・シナリオに比べて+30~50%の上振れとなる、なんて結果が示されていたりします。

2060年をひとつのターゲットにした超長期シナリオの分析ということで、2060年といえば、もしも私が生きていると仮定すれば100歳を超えており、個人としてはこれらの結果を目にすることはかなり困難なところなんですが、それでも、エコノミストとしては興味あるところです。

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2018年7月17日 (火)

打線が5安打に抑えられてなすすべなくジャイアンツに連敗!!

  RHE
読  売000400000 491
阪  神000020000 250

打線が抑え込まれてジャイアンツに完敗でした。わずかに5安打、6回以降はエラーに見える1ヒットでは勝てません。4安打のうちの3安打を5回に集中して、何とか2点をもぎ取ったのは評価できるにせよ、投手陣からすれば4点を失えば即敗戦、ということなんですからストレスは大きい気がします。ともかく、解説の川藤さんのいうように、ストライクを見逃してはボールをムリに振りに行く、の悪循環だったように見受けました。1軍に上げたロサリオ選手の出番もなく、最終回9回ツーアウトからの盛り上がりが明日につながるよう期待します。

明日の才木投手に大いに期待して、
がんばれタイガース!

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国際通貨基金「世界経済見通し改訂見通し」 IMF World Economic Outlook Update やいかに?

日本時間の昨夜、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改訂見通し」IMF World Economic Outlook Update, 2018 July が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。リポートの副題は Less Even Expansion, Rising Trade Tensions となっていて、貿易戦争が前面に押し出されていたりします。それほど注目されていなくても、国際機関のリポートを取り上げるのはこのブログの特徴のひとつですので、簡単に見ておきたいと思います。

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IMF のブログサイトから引用した成長率の総括表は上の通りです。世界経済の成長率は2018~19年ともに+3.9%が予想されており、4月時点から変更ありません。ただ、我が国については、発射台の1~3月期の成長率が低かったものですから、2018年の成長率については▲0.2%の下方修正で+1.0%を見込み、2019年は消費増税もあって+0.9%とさらに低い成長を予想しています。
加えて、同じブログサイトから、いくつか印象的な点を引用すると、まず、先行きリスクとしては、世界経済の成長にとって短期的に最も大きな脅威となるのは、現在の貿易摩擦が激化するリスクであり、貿易摩擦が激化すると、センチメントや資産価格、投資に負の影響が生じる、"the risk that current trade tensions escalate further - with adverse effects on confidence, asset prices, and investment - is the greatest near-term threat to global growth." と指摘しています。そして、モデルから、現在脅しに使われている貿易政策が実際に実行され、その結果企業のセンチメントが悪化した場合、世界のGDPは2020年までに現在の予測値を0.5%下回る可能性が示唆されている、"Our modeling suggests that if current trade policy threats are realized and business confidence falls as a result, global output could be about 0.5 percent below current projections by 2020." との試算結果も示しています。

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2018年7月16日 (月)

すべてに後手を踏んでジャイアンツに逆転負け!!

  RHE
読  売000020020 460
阪  神100000020 392

1回の攻撃を別にすれば、すべてに後手を踏んでジャイアンツに逆転負けでした。まあ、あのまま1点で逃げ切れとは、いかなメッセンジャー投手でも厳しいところ、中盤に逆転されてからはまったく後手に回って、右打者は外角のボールを振りに振って抑え込まれ、負けパターンの継投では失点しました。

明日の岩田投手はどこまで期待していいのやら、
がんばれタイガース!

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猛暑の3連休を何とか乗り切る!!

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猛暑の3連休でした。上の画像は気象協会のサイトから引用していますが、タイトルは「39度超え! 今季1番の危険な暑さ」だったりします。「凍死」という言葉があって、「熱死」とか、「署死」という言葉がないように、私は寒さで死ぬことがあっても、暑さで死ぬことはないだろう、くらいに以前は考えていましたが、考えを改める必要がありそうです。
ゴールデン・ウィークを明けたころから、自転車のペダルを漕ぐとキシキシ音がするようになり、梅雨が明けたらチェーンに油を差そうと考えていましたが、思いっきり早くに梅雨が明けてしまい、結局、予定通りに3連休初日の土曜日になってしまいました。でも、せっかく油を差したのに3日でそれほど自転車には乗ることもなく、プールで泳いだり、涼しい屋内で読書したりして過ごす時間が長かったような気もします。今夜はこれから缶ビールを傾けてナイターをテレビ観戦です。

がんばれタイガース!

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帝国データバンク「保護貿易に対する企業の意識調査」の結果やいかに?

7月12日付けで、帝国データバンクから「保護貿易に対する企業の意識調査」の結果が明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果の概要を5点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 企業の56.9%が日本全体にとって「自由貿易」が望ましいとする一方、国内産業保護を含む「保護貿易」が望ましいとする企業は9.9%にとどまる。他方、自社の属する業界にとっては「自由貿易」が望ましいが43.0%に低下、「保護貿易」は13.1%に上昇
  2. 保護貿易主義による政策が世界的な広がりをみせた場合、自社の業績に「マイナスの影響」があるは28.7%、「プラスの影響」は2.5%にとどまる。また、「どちらともいえない」は38.5%、「影響はない」は12.7%だった
  3. 現在までに、保護貿易主義の高まりについて対応策を実施している企業は0.5%。「対応を検討中」(4.4%)と合わせても、何らかの対応を実施・検討している企業は4.9%にとどまる
  4. 実施・検討している対応策では、「情報収集・分析の強化」が57.0%でトップ。次いで、「仕入先企業の見直し」(32.0%)、「販売計画の見直し」(28.8%)、「自社の商品やサービスの種類・内容の見直し」(26.9%)、「生産計画の見直し」(20.8%)が続く
  5. 「生産計画の見直し」を行っている企業が主に実施・検討している内容は「国内生産の拡大」が30.6%。「販売計画の見直し」では「国内向け販売の拡大」が46.3%。生産・販売計画の見直しは「国内」の拡大を図る傾向

ま、常識的な結果ではないでしょうか。日本経済全体について考えると自由貿易が望ましい一方で、自社業界については保護貿易が望ましい割合がチョッピリ上がり、保護所議が広がるとマイナスの影響がプラスを大きく上回る、従って、国内生産や国内販売の拡大を目指す、ということなんだろうと思います。最後に、リポートから 自社業績への影響 のグラフを以下に引用しておきます。

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米国でのトランプ大統領の当選や欧州各国でのポピュリズムの台頭など、内向きで通商制限的な政策が志向されてきており、実際に米国では関税率が引き上げられ、さらに、その対象国における報復措置の発動が懸念されるなど、保護主義的で通商制限的な政策が着々と実施され、貿易戦争につながる恐れが高まっています。我が国産業界でも何らかの対応が進むのかもしれません。

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2018年7月15日 (日)

東京商工リサーチによる「役員報酬1億円以上開示企業」調査の結果やいかに?

一昨日の7月13日に東京商工リサーチから2018年3月期決算における「役員報酬1億円以上開示企業」調査の結果が明らかにされています。人様の懐具合なのかもしれませんが、とても興味深くて、図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、東京商工リサーチのサイトから役員報酬1億円以上開示企業のグラフを引用すると上の通りです。役員報酬額1億円以上の個別開示は2010年3月期から開始されていますが、2018年3月期では企業数は240社、人数は538人に上り、社数は前年を17社、人数は前年を72人それぞれ上回り、役員報酬1億円以上の社数・人数とも過去最高を更新しています。

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まず、東京商工リサーチのサイトから2018年3月期役員報酬額ランキングのテーブルを引用すると上の通りです。役員報酬の最高額はソニーの平井一夫前社長(現会長)の27億1,300万円で、前年より17億9,900万円増加、歴代5位の報酬額でした。報酬内訳は、基本報酬2億4,400万円、業績連動報酬6億4,700万円、ストックオプション4億900万円(付与数20万株)のほか、2018年4月の社長退任に伴う株式退職金11億8,200万円があります。私のようなサラリーマンには驚くばかりの金額です。続いて、2位はソフトバンクグループのロナルド・フィッシャー副会長で20億1,500万円(前年24億2,700万円)、3位は同社マルセロ・クラウレCOOで13億8,200万円(前年開示なし)、4位は同社ラジーブ・ミスラ副社長で12億3,400万円(前年開示なし)と、ソフトバンクグループの3人が名を連ね、5位は武田薬品工業のクリストフウェバー社長の12億1,700万円(前年10億4,800万円)でした。ソニーの平井会長を除いて、上位5人のうち4人は外国人役員が占めています。私には関係のない世界なんだろうという気がします。

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2018年7月14日 (土)

今週の読書は話題の『大英帝国の歴史』など計7冊!

今週は経済書らしい経済書はなく、ファーガソン教授の人気のTVシリーズを書籍化した『大英帝国の歴史』を中心とした読書でした。以下の7冊です。来週こそは4~5冊にペースダウンする予定です。

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まず、ニーアル・ファーガソン『大英帝国の歴史』上下(中央公論新社) です。人気の歴史学ないし経済史学の研究者による2003年放送のTVシリーズの書籍化です。出版も2003年となっていて、TVシリーズ全6回を6章として本書の上下巻に収録しています。上巻の方がやや厚くて「膨張への軌跡」と副題があり、下巻のサブタイトルは「絶頂から凋落へ」となっています。私の方で少し誤解があったんですが、本書はあくまで大英帝国の帝国主義的な海外政策、特に植民地政策や貿易政策などを歴史的に跡付ける研究成果ないしは教養シリーズであり、国内的な産業の発展、すなわち、この時期はいわゆる産業革命に当たる時期を含んでいるものの、ソチラの方への関心はほとんど本書では示されていません。邦訳者あとがきの最後で、日本語タイトルは出版社のご意向ということが明らかにされており、邦訳者は少し抵抗したのかもしれないと勝手に邪推しています。それはともかく、もっぱら、帝国の諸外国に対する対応ぶりに焦点が当てられていて、その際の中心は北米とインドであり、ここでもアジア軽視、というか、例えば、アヘン戦争やシンガポール開発などにはそれほど重点は置かれていません。でも、さすがに、最盛期には太陽没することなき大帝国であった大英帝国の歴史を振り返った重厚な歴史書に仕上がっています。著者のスコットランド人としてのアイデンティティが強調されている部分も見受けられますし、特に、自由と民主主義の価値観を世界に広める上で大英帝国が果たした役割がポジティブに強調されています。また、奴隷制度に関する強く批判的な立場が貫かれています。現在の米国の帝国としての方向性を考える上でも大英帝国の歴史は参考になるかもしれません。

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次に、イアン・ブレマー『対立の世紀』(日本経済新聞出版社) です。著者はご存じ、よく知られた地政学情報の会社ユーラシア・グループを率いています。私はこの著者の本はかなり読んでいるんではないかと思います。本書では、Gゼロ時代に英国のBREXITや米国のトランプ大統領当選、さらに、大陸欧州のいくつかの国でのポピュリズムの台頭を念頭に、邦訳タイトルで「対決」とされていますが、US vs THEM、すなわち、われわれ対彼ら、との対比を設定し、THEMないし彼らを典型的にはイスラム教徒の移民になぞらえて排外的な傾向を見せるポピュリズムを対象にした議論を展開しています。そして、著者のひとつの解決策として提示されるのが、政治や哲学の面からはポピュリスト政治家の主張のような壁を作るのではなく、社会契約の書き換えを目指す方向であり、経済的にはベーシック・インカムの導入です。とても興味深い結論です。安全保障上の本来の集団安全保障とは、世界各国がブロック化せずに国連の下にすべての国が同じ安全保障体制に加われば戦争への抑止力になる、というものではなかったかと、大学で習ったような気がしますが、経済的にベーシック・インカムですべての人を公務員にしてしまえばいい、というのは秀逸な議論ではないかと思ってしまいました。

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次に、ピーター・チャップマン『バナナのグローバル・ヒストリー』(ミネルヴァ書房) です。20世紀初頭から1970~80年代にかけて、ほぼ活動を終息させるユナイテッド・フルーツの活動をグローバル化の視点からリポートしています。典型的には、米国の多国籍企業が中米を舞台に企業活動のためには政権の転覆をはじめとする非合法活動や謀略活動にも手を染めかねない、という活動実態を描き出しています。ユナイテッド・フルーツの基本は中米におけるバナナのプランテーションなんですが、当然ながら、米国内での宣伝活動も含まれており、我が国でよく見かけるフィリピンや台湾のバナナとは違うのかもしれません。ユナイテッド・フルーツのブランドはチキータ、そして、本書で登場するライバル社はドールとデルモンテです。ユナイテッド・フルーツの活動だけではなく、IT&Tが関係したチリのアジェンデ政権に対するピノチェット将軍のクーデタ、イランのパーレビ国王の擁立などもチラリと触れられています。その昔の英国の東インド会社を思わせるような悪逆非道な活動が戦後の20世紀で行われていたのは驚くばかりです。

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次に、青木理『情報隠蔽国家』(河出書房新社) です。著者は共同通信出身のジャーナリストであり、本書は『サンデー毎日』に掲載された記事やコラムなどを収録しています。また、平凡社新書で出版された『日本会議の正体』は私も読んでいます。ということで、権力への対抗軸のひとつとしてのジャーナリズムやメディアの存在意義を感じさせる力作です。主として、私の専門外である安全保障政策やインテリジェンス活動に焦点を当てていますが、本書のタイトルは必ずしも内容を的確に反映していない恨みもあります。私はかなり本書の議論に賛同する部分が少なくないんですが、それでも、2点だけ疑問を呈しておきたいと思います。すなわち、メディアについては権力に迎合するタイプの報道をしているものが少なくないという点と、その背景となっている役所の記者クラブ制度、特にその昔の排他的なクラブ制度については、私は常日ごろから疑問を感じています。メディアのジャーナリストでこれだけ意識高い報道がありながら、それでも現政権が高支持率を維持しているのはなぜなのか、そのあたりも興味あるところです。

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次に、ドン・ロス『経済理論と認知科学』(学文社) です。著者は南アフリカ出身の英国の経済哲学者であり、本書ではミロウスキーの Machine Dreams などを基本として議論を進め、意識、志向性、エージェンシー、セルフ、行動、などなど、生身の人間のこういった経済活動についえ、経済学はこれらをどのように捉えるべきなのか、本書では、伝統的な経済理論の歴史と認知科学の最新の知見に基づいて、両者を結びつける正しい経済学のあり方を探求しています。経済学とはその昔から、人間が登場しないといわれており、生身の人間の経済活動、あるいは選択行動などに関しては、最近の行動経済学や実験経済学などで、伝統的な経済学が前提として来た合理的な経済人の過程を満たさない限定合理性とかが明らかにされつつあり、そういった新たな経済学に哲学的基礎を与えると同時に、認知科学に基づいて合理性を前提とする伝統的な経済学について考え直す、というかなり学際的な試みを展開しています。完全な学術書であり、数式がないにもかかわらず横書きをしていたりしますし、本書で展開されている議論の中身も高度なものがあります。一般のビジネスマン向けとは思えません。

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最後に、河合薫『残念な職場』(PHP新書) です。冒頭の印象的な警句が、日本の会社やオフィスの「現場は一流、経営は三流」というもので、経営サイドの「残念な経営者」や「残念なオフィス」が数多くのケーススタディから明らかにされています。私はキャリアの公務員ながら、いわゆる民間企業でいうところの経営レベルまでは出世しませんでしたので、部分的には判る気もします。特に、著者の関心分野なのか、女性活用については鋭い見方がしばしば提示されています。

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2018年7月13日 (金)

帝国データバンクによる「人手不足倒産」の動向調査の結果やいかに?

今週月曜日の7月9日に、帝国データバンクから今年上半期の「人手不足倒産」の動向調査の結果が明らかにされています。pdfの全文リポートもアップされており、失業率が大きく低下するとともに、有効求人倍率が上昇し、正社員の有効求人倍率も1倍を超えて推移するなど、労働市場の需給は逼迫し人で不足が深刻になる中、極めて興味深い結果が示されています。まず、リポートから調査結果(要旨)を5点引用すると以下の通りです。

調査結果(要旨)
  1. 2018年上半期(1~6月)の「人手不足倒産」は70件発生し、負債総額は106億7700万円となった。件数は3年連続で前年同期を上回り、調査開始(2013年1月)以降、半期ベースで最多となり、年間合計で初めて100件を超えた2017年(106件)を上回る勢いとなった
  2. 負債規模別件数を見ると、「1億円未満」が38件と過半を占め、前年同期(19件)の2倍に
  3. 業種別件数を見ると、「サービス業」が前年同期比26.7%の増加で、最多の19件を占めた
  4. 業種細分類別の5年半累計件数では、「道路貨物運送」が29件(2018年上半期は7件、前年同期4件)で最多。以下、「老人福祉事業」は26件、「木造建築工事」は23件、「受託開発ソフトウエア」は19件と続いた
  5. 都道府県別の5年間累計では、「東京都」が55件(うち2018年上半期は9件、前年同期5件)と突出している

以下のように、私の興味の範囲ながら、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは人手不足倒産の件数の推移を示しています。2013~15年の3年間は、大雑把に、上半期30件台で年間を通じて70件程度だったんですが、107件を記録した2017年から増加を示して、今年2018年上半期は半期の1~6月で70件に達しています。これらの負債総額は106億7700万円に上り、件数としては半期ごとに前年同期を上回るような勢いです。

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次に、上のグラフは2013年から直近2018年上半期までの5年半累計での倒産件数の上位業種です。細分類になっているようです。通常の産業別では、5年半累計の最多は建設業の139件(構成比33.3%)であり、これに続くのがサービス業123件(29.5%)となり、この2業種で全体の62.8%を占めています。より細かくは上のグラフの通りであり、道路貨物運送29件、老人福祉事業26件、木造建築工事23件、などとなっています。世間一般でいわれている実感通りの結果ではないかと私は受け止めています。

私はエコノミストですので、必ずしも技術には詳しくなく、世間でいわれているようなAIやロボットの活用がどこまで人で不足の労働力を代替できるのか、よく判っていませんが、経済的に冷たく考えれば、人口減少社会の我が国において、ますます希少性を増す労働力を効率的に用いることが出来ず、従って、労働力に対してそれなりの待遇を持って雇用することが出来なければ、そういった企業は、カギカッコ付きながら「非効率」とみなされて市場から退出することとなります。そのすべてではないにしても、その一端がこの調査結果に現れているように私は感じています。

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2018年7月12日 (木)

JTBによる「2018年夏休みの旅行動向」やいかに?

ちょうど1週間前の先週木曜日7月5日にJTBから「2018年夏休みの旅行動向」が明らかにされています。海の日の前日7月15日から8月31日が対象期間です。海外旅行人数は前年比+4.1%増の283万人と過去最高が見込まれる一方で、国内旅行人数は前年並みと予想され、ボーナスは増加も旅行への支出は控えめで、国内は家族で帰省、海外はハワイ・近場アジアが人気、との結果です。
JTBのリポートから2018年夏休みの旅行人数、旅行平均費用、旅行消費額の推計を取りまとめた(表1)を引用すると以下の通りです。

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この夏休みの旅行動向に関する調査は、1969年に調査を開始して以来、50回目だそうです。ご参考まで。

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2018年7月11日 (水)

前月統計からの反動減が思ったほどでもない機械受注と石油価格に連れて上昇する企業物価(PPI)!

本日、内閣府から5月の機械受注が、また、日銀から6月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列で見て前月比▲3.7%減の9,079億円を記録しており、他方、企業物価(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+2.8%と前月から上昇幅を拡大しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の機械受注3.7%減 2カ月ぶり減少
内閣府が11日発表した5月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶、電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.7%減の9079億円だった。減少は2カ月ぶり。4月にあった造船業からの内燃機関の大型案件の受注がなくなった反動が出た。
内閣府は基調判断を「持ち直している」で据え置いた。
5月の受注額は製造業が1.3%増の4538億円だった。水準としては2008年6月以来の高水準だった。
17業種のうち、5業種が増加した。「化学工業」からの化学機械や風水力機械の受注が増え、受注額は14年7月以来の高水準だった。「電気機械」から、電子計算機などの受注も多かった。
非製造業は0.2%増の4787億円だった。増加は5カ月連続。「建設業」から建設機械の注文が増加した。「運輸業・郵便業」から鉄道車両や道路車両の受注も増えた。
前年同月比での「船舶、電力を除く民需」の受注額(原数値)は16.5%増だった。
「統計上、季節調整は需要者別で行っているため、全体の季節調整値とは一致しない」(内閣府)という。
4~6月期の「船舶、電力を除く民需」の季節調整値の見通しは前期比7.1%増となっている。
6月の企業物価指数、前年比2.8%上昇 原油価格の上昇で
日銀が11日発表した6月の国内企業物価指数(2015年=100)は101.3で前年同月比2.8%上昇した。前年実績を上回るのは18カ月連続。上昇率は5月の確報値(2.7%上昇)から拡大した。原油価格の上昇を背景に石油・石炭製品が値上がりし、全体を押し上げた。前月比では0.2%上昇した。
米国が5月に発表したイランへの経済制裁の再開を背景に原油高が進み、ガソリンや軽油の価格が上昇した。中国の環境規制を受け、化学製品の価格も上昇した。
円ベースの輸出物価は前年同月比で3.5%上昇した。前月比では0.1%上昇した。輸入物価は前年同月比で10.5%上昇した。前月比では1.8%上昇した。
企業物価指数は企業同士で売買するモノの物価動向を示す。公表している744品目のうち前年比で上昇したのは403品目、下落したのは260品目だった。上昇品目と下落品目の差は143と5月(確報値)の131品目から増えた。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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まず、船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注について、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスが前月比▲5.7%減でしたので、実績が▲3.7%減とはいえ、決して悲観する見方が広がったわけではありません。加えて、記事にもあるように、もともと4~6月期の見通しは前期比+7.1%増と集計されていて、実は、私はかなり高い伸びなもので実現できるかどうか疑問だったんですが、ひょっとしたら達成できそうな雰囲気もあります。先行指標となる外需も、上のグラフに見られる通り、堅調に推移しています。地合いは強く機械受注は堅調と見ているエコノミストも多そうです。先行きについては、東京オリンピック・パラリンピックの2020年に向けて設備投資の緩やかな増加が見込まれますが、加えて、人手不足に対応した合理化・省力化投資の増加が想定される一方で、中長期的には、供給制約がどこまで深刻化するか、また、米国に端を発する貿易戦争の様相を呈してきた貿易制限的な通商制約の世界的な高まりが我が国の輸出を通じて、ご個まで機械受注に影響を及ぼすか、おそらく、それなりのネガティブなインパクトあるものと思われますが、にわかには測り難いものがあります。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、下は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、PPIのうち国内物価の前月比上昇率+0.2%に対する寄与として、石油・石炭製品が+0.15%と圧倒的な大きさを占め、続いて、電力・都市ガス・水道の+0.03%、非鉄金属と化学製品も同じく+0.03%を示すなど、典型的に、エネルギー価格や国際商品市況の上昇に起因した物価上昇と私は受け止めています。ただ、先月の統計公表時には、石油価格は5月の中下旬がピークの可能性があると指摘したんですが、私の見方が間違っていたようで、まだもう少し石油価格は上昇しそうです。私は中国の景気回復の足取りがそこまで、というか、国際商品市況における石油価格をここまで押し上げるだけの伸びを見せるとは思わなかったんですが、中国をはじめとする新興国の景気回復以外の要因で石油価格が上昇しているように思えてなりません。そして、我が国の物価動向は金融政策動向よりもエネルギー価格に敏感に反応しているようです。

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2018年7月10日 (火)

東洋経済オンラインによる「環境・社会・ガバナンス」重視企業ランキングやいかに?

先週の木曜日7月5日付けで東洋経済オンラインから「環境・社会・ガバナンス」重視企業ランキングの結果が明らかにされています。その頭文字を取ってESGとも略称される分野を重視している企業のランキングで、先行き伸びしろが大きいかもしれない、とマーケットなどで見なされているところです。ということで、以下のテーブルは東洋経済オンラインのサイトから引用しています。

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2018年7月 9日 (月)

ようやく下げ止まりに向かう景気ウオッチャーと黒字の続く経常収支!

本日、内閣府から6月の景気ウォッチャーが、また、財務省から5月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+1.0ポイント上昇して48.1を、先行き判断DIも+0.8ポイント上昇して50.0を、それぞれ記録し、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+1兆9383億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

6月の街角景気、現状指数が2カ月ぶり上昇 家計動向が改善
内閣府が9日発表した6月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は48.1と、前の月から1.0ポイント上昇(改善)した。上昇は2カ月ぶり。家計動向関連が改善した。
内閣府は「緩やかな回復基調が続いているもののの、一服感がみられる」と基調判断を据え置いた。
現状判断指数を部門別にみると、家計動向が46.9と前の月から1.7ポイント上昇した。住宅展示場への来場者が増えたとみられ、住宅関連が改善した。「映像家電の売り上げは大型インチを中心に伸びている」(四国の家電量販店)といい、小売り関連も上昇した。
一方、企業動向は49.2と前の月から0.9ポイント低下した。部品が調達できないなど供給制約が厳しく、一般機械業、輸送用機械業などが悪化した。「原油高騰で利益が圧迫されている」(北陸の輸送業)との見方も根強い。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は50.0で前の月から0.8ポイント上昇した。上昇は2カ月ぶり。家計動向と企業動向が改善した。
家計動向は1.3ポイント改善の49.7だった。猛暑で、飲料や季節家電の販売が伸びるとの期待が強い。「今年は暑くなるとの長期予報もあり、エアコンや冷蔵庫に前年とは違う売り上げが期待される」(東海の家電量販店)。企業動向も、新車販売の増加への期待から製造業を中心に改善した。
半面、雇用動向は2.9ポイント低下の51.8だった。人手不足の厳しさを指摘する声が目立つ。
今回の調査では、近畿地方を中心に6月におきた大阪北部地震の影響を指摘するコメントが増えた。現状判断では「地震以降、来客数が減少している」(近畿の一般レストラン)などのコメントがあった。ただ、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は前月比1.1ポイント上昇し、改善幅は全国を上回った。
5月の経常黒字、11年ぶり高水準 第1次所得収支は過去最高
財務省が9日発表した5月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は1兆9383億円の黒字だった。黒字は47カ月連続。黒字額は前年同月に比べて14.5%拡大し、5月としては2007年(2兆1242億円の黒字)以来11年ぶりの高水準となった。第1次所得収支が単月としての最高額を記録した。
海外企業から受け取る配当金や債券の利子を示す第1次所得収支は2兆3980億円の黒字だった。黒字額は23.2%拡大し、比較可能な1985年以降では単月ベースとして最高だった。海外子会社から受け取る配当金など直接投資収益が大きく伸びた。
輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は423億円の黒字。輸送収支の赤字幅拡大が響き、黒字額は縮小した。一方で訪日外国人の増加を背景に旅行収支は2113億円の黒字となった。
貿易収支は3038億円の赤字(前年同月は1084億円の赤字)だった。輸入額は13.7%増の6兆6271億円だった。原油高を背景に原粗油の輸入が増えた。輸出額は10.6%増の6兆3232億円。自動車や半導体等製造装置が好調だった。

いつもながら、よく取りまとめられた記事だという気がします。でも、とても長くなってしまいました。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウオッチャーは、昨年2017年10~12月期を直近のピークに、今年2018年1~3月期の景気の踊り場を背景に低下を続けていたんですが、6月になってようやく家計や雇用を主たるエンジンとして下げ止まりつつある印象を私は受けています。6月統計については、企業動向関連は製造業・非製造業ともに前月から低下を示しましたが、他方、家計動向関連のうちの高r関連や住宅関連の上昇から、指数全体は上向いています。ただし、引用した記事にもある通り、統計作成官庁である内閣府では基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」で据え置いています。マインドが下げ止まりから上向きに転ずるかどうかも、もう少し見極める必要がある、ということなのだろうと受け止めています。また、最近の自然災害、すなわち、大阪北部地震や直近の豪雨災害などの影響は、インバウンドへのインパクトも含めて、まだ十分には織り込まれておらず、関東甲信の早い梅雨明けについても同様の感触を私は持っています。いくつかの景気判断理由を見ても、今夏の天候を前提条件に上げている意見も見受けられ、景気は天気の影響が大きく、物価は国際商品市況の影響下にある、といったところなのかもしれません。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。上のグラフを見ても明らかな通り、5月の経常収支の大きな特徴のひとつは貿易収支の黒字が大きく縮小した点です。引用した記事には季節調整していない原系列の統計で貿易収支は赤字と出ていますが、季節調整済みの統計でも5月の貿易収支は黒字ながら大きく縮小しています。基本的には、国際商品市況における石油価格の値上がりに起因すると考えていますが、原粗油については季節調整済みの系列は公表されていないので、季節調整していない原系列の前年同月比で見ると、原粗油の輸入額は1,514億円に上り前年比は+28.7%増なんですが、数量はわずかに+0.4%の伸びにとどまっています。その差は価格上昇ということになります。いずれにせよ、我が国が長期に景気回復・拡大を続けているのも輸入増加の要因のひとつであり、決して悲観視する必要はないものと私は受け止めています。

 【2018年4月判断】前回との比較【2018年7月判断】
北海道緩やかに回復している緩やかに回復している
東北緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
北陸拡大している拡大している
関東甲信越緩やかに拡大している緩やかに拡大している
東海拡大している拡大している
近畿安定したペースで緩やかに拡大している一部に地震の影響がみられるものの、緩やかに拡大している
中国緩やかに拡大している緩やかに拡大している
四国回復している回復している
九州・沖縄しっかりとした足取りで、緩やかに拡大しているしっかりとした足取りで、緩やかに拡大している

最後に、日銀支店長会議で明らかにされた「さくらリポート」は上の通りです。各地域の景気判断はなぜか前回からすべて横ばいです。ご参考まで。

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2018年7月 8日 (日)

好投の先発岩貞投手がエラーの1点に泣く!!

  RHE
横  浜001000000 140
阪  神000000000 051

久し振りにしっかりとテレビ観戦しましたが、好投していた先発岩貞投手がエラーの1点に泣き横浜に敗戦でした。しかも、先発の岩貞投手を5回で早々に諦め、能見投手、藤川投手、桑原投手、ドリス投手と惜しげもなく勝ちパターンのリリーフ陣をつぎ込みましたが、横浜投手陣に阪神打線が5安打に抑え込まれて完封リレーされてしまいました。

オールスター明けの巨人戦は、
がんばれタイガース!

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先週の読書は経済書を中心に計7冊!

先週も経済書を中心によく読んで、以下の通りの計7冊です。ただし、今週は少しペースダウンします。昨日、どこかの新聞の書評で見たファーガソン『大英帝国の歴史』上下を読む予定です。

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まず、小林慶一郎[編著]『財政破綻後』(日本経済新聞出版社) です。本書の基礎となった研究分析は東京財団による「財政危機時の政府の対応プラン」(2013年7月)なんだと思うんですが、家計資産残高と政府債務残高の多寡や経常収支の赤字化などについて、危機発生のトリガーと想定されるシナリオを分析した部分がなくなっていて、むしろ、無条件に政府の財政破綻が近づいているような印象がないでもありません。ただ、シルバー・デモクラシーによる高齢者向け施策の過剰な「充実」が財政破綻の引き金になる可能性は増しているとの認識は共有します。トリアージと称したプライオリティ付けが目を引きますが、私の目から見て、統合政府化で日銀の国債買い入れが債務残高とどう関係するかは、やや疑問が残りました。私は日銀が国債を買い入れれば償還の必要がなくなる、というか、償還が形だけになって、その金額が遅かれ早かれ国庫に返納されると考えているんですが、そうではないというのが本書の主張です。よく判りません。財政破綻すれば、既得権益がゼロベースに戻るので、年金や医療・介護などの社会保障の新たな制度設計が重要という指摘は、従来からコッソリと囁かれてきた点ですが、ここまで表に出して主張すると影響力がありそうです。最後に、本書で考えられている程度の財政破綻後の対応策は、とっくに財務省は持っているような気が私はするんですが、いかがなもんでしょうか。

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次に、スティーヴ・キーン『次なる金融危機』(岩波書店) です。私はなじみなかったんですが、著者はオーストラリア出身の英国をホームグラウンドとする経済学者であり、カオス理論を応用して、金融危機が起こるプロセスのシミュレーションに成功したといわれています。特に、民間債務残高の危険度を指標とした予測モデルから導出されるいくつかのグラフィックスはなかなか見応えがあります。もとも、カオス理論でどこまで金融危機の発生が予測できるかは議論の残るところであり、少なくとも、本書で主張するように、利潤最大化を超えて投資を行い資本ストックが積み上がり、その後のストック調整が大規模かつ長期にわたるのは、事実としてそうなっているのは現実経済を見れば明らかな通りに理解できるが、そのカオス理論に基づく根拠が私には不明でした。どうしてそうなるのか、カオス理論で解明できたとは到底思えません。これは、利益最大化を超えて投資するという行為について、利益最大化が何らかの矛盾を持っていると考えざるを得ないと私は予想しているんですが、バブル期に過大にに投資したり、デフレ期に過少な投資しかしなかったりとする投資家心理の問題なのか、それとも、利益最大化の合理性が失われているのか、本質的な疑問に答えてくれていない恨みはあります。

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次に、ルチル・シャルマ『シャルマの未来予測』(東洋経済) です。著者はインド出身でモルガン・スタンレーの市場エコノミストです。私は同じ著者の前著である『ブレイクアウト・ネーションズ』は読んでいないんですが、よく似た内容であり、著者はBRICsやVISTAの台頭を予見したといわれていますので、それほど理論的ではなく、市場エコノミストの直感的な、というか、経験則的な見方で、人口構成・政治サイクル・格差などの本書でいう10の観点から先行きを大胆に予測しています。ということで、モロなネタバレなんですが、成長する国は、日本、アメリカ、メキシコ、アルゼンチン、フィリピン、インドネシア、インド、パキスタン、バングラディシュ、ドイツ、ルーマニア、ケニアで、現状維持は、コロンビア、イギリス、イタリア、スペイン、沈む国は、中国、韓国、台湾、タイ、マレーシア、オーストラリア、ロシア、フランス、トルコ、中東諸国、南アフリカ、ナイジェリア、などとされています。日本についてはアベノミクスの貢献が明記されています。

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次に、丸山俊一『欲望の資本主義 2』(東洋経済) です。前シリーズの『欲望の資本主義』の続巻なんですが、いずれもNHK「欲望の資本主義」制作班によるノベライズです。ですから、基本は対談を文字に書き起こしたわけであって、放送をバッチリと見ていた、聞いていた視聴者には必要ない本なのかもしれませんし、逆に、本で読むならテレビ番組を見る必要はないのかもしれません。副題が「闇の力が目覚める時」とされていて、ややマルクス主義的な考え方がこの「闇の力」に相当するような記述も見られ、私はやや不愉快でした。コンピュータの進化やAIの登場などを細かに主張しながらも、大筋の議論が出来ていない印象があり、細かな表現でテレビ・ラジオ的には映えるのかもしれませんが、ホントに資本主義の今後の方向性を議論する題材にはなりそうもありません。

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次に、ジャック・ペレッティ『世界を変えた14の密約』(文藝春秋) です。邦訳タイトルは英語の原題とかなり違っており、上の画像の帯にあるような「企業間の密約」により世界の動向が決められているかのような本の内容ではありません。14の中身について出版社のサイトから引用すると、「現金の消滅」、「熾烈な格差」、「ダイエット基準」、「買い替え強制の罠」、「フェイクニュースの氾濫」、「投機リスク」、「租税回避のカラクリ」、「薬漬け」、「改革されない働き方」、「新自由主義の誕生」、「企業の政府支配」、「AIに酷使される未来」、「知性の取引」、「21世紀のインフラ」、ということになります。著者はイタリア系英国人のジャーナリストであり、本書の内容はBBCにて映像化されて反響を呼んだようです。14項目がそのまま章立てになっているわけですが、やや内容や視点にバラツキがあるものの、14項目を見るだけでも十分にリベラルで左派的な視点であることは想像されようかと思います。英国の現状だけでなくごろーばる化の進む現在では我が国にもそのまま当てはまるポイントが少なくないと受け止めています。

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次に、西岡壱誠『東大読書』(東洋経済) です。今さらながら、なんですが、私はキャリアの国家公務員であり、東大卒業生の比率が異常に高いオフィスに勤務していますし、日曜日のTBSテレビで東大王なるクイズ番組を見ることがあったりして、それなりに東大生の優秀性は理解しているつもりです。本書では明記されていないんですが、著者の出身高校は宝仙学園とネットでウワサされています。この出身校については私には確認のしようがありませんし、ネットでは疑問が呈されていたりするんですが、ただ、読書を効率よくしっかりと実りあるものにするという点から、本書の中身は秀逸だと思います。少なくとも、読書についてはそれなりに準備すべきという点は忘れるべきではありません。もっとも、本書では読書をものすごく狭い意味でとらえており、少なくとも、教科書をはじめとする学術書や教養書や実用書などに限定しているような気がして、文芸書や小説は本書ではスコープに入っていないようです。その上、私はもっとも読書の内容を濃くするためにはノートを取るべきであると考えており、例えば、大昔に公務員試験の準備や対策をしていたころに、経済学のミクロ・マクロの教科書を読んで取ったノートが我が家にはまだ残っていたりするんですが、本書では付箋で代用されていて、やや中途半端な気がします。それなりにタメになるとはいえ、やや物足りない気もします。加えて、副題が『「読む力」と「地頭力」がいっきに身につく』とされているところ、後者の「地頭力」については何の言及もないような気がしてなりません。これも残念な点です。

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最後に、我孫子武丸『怪盗不思議紳士』(角川書店) です。作者はご存じ新本格派のミステリ作家で京都大学のミステリ研究会出身です。綾辻行人や法月綸太郎や麻耶雄嵩などと同じ系統なわけです。でも、本書の舞台は終戦間もない東京です。戦災孤児の草野瑞樹は上野の闇市での事件をきっかけに探偵の九条響太郎の助手になり、警察にも頼りにされる名探偵・九条響太郎は「不思議紳士」と名乗る怪盗と対決したりします。ということで、江戸川乱歩の少年探偵シリーズをそっくりそのまま、明智小五郎を九条響太郎に、その助手の小林少年を草野瑞樹に、さらに、怪盗20面相を不思議紳士に、それぞれ置き換えているわけですが、とても新たな趣向も取り入れられています。まず、わけも判らず、占領軍の高級将校が事件に介入してきます。もちろん、警視庁の刑事なんぞよりはよっぽどエラそうに捜査を指揮したりします。そして、名探偵・九条響太郎が早々に死んでしまい、その身代わりを立てて少年助手が身代わり探偵を操る、となります。怪盗のサイドでも、本来の「不思議紳士」は怪盗20面相と同じで、殺人はおろか人を傷つけることも忌避する性向があるんですが、最初の事件では被害者の一家皆殺しをしたりします。新本格らしい謎解きではないんですが、それなりに楽しめる作品です。

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2018年7月 7日 (土)

米国雇用統計に見る堅調な雇用は貿易戦争でどうなるか?

日本時間の昨夜、米国労働省から6月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+213千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人の増加という予想を上回った一方で、失業率は前月から0.2%ポイント上昇したものの4.0%という低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事の最初の7パラを引用すると以下の通りです。

June jobs report: U.S. economy adds 213,000 jobs but unemployment rises to 4%
Employment growth was strong for a second consecutive month in June as the economy added 213,000 jobs despite worker shortages and mounting U.S. trade tensions.
The unemployment rate, which is calculated from a separate survey, rose from an 18-year low of 3.8% to 4% as 600,000 Americans, including many discouraged workers on the sidelines, streamed into a favorable job market, the Labor Department said Friday.
Economists expected 195,000 payroll gains, according to a Bloomberg survey.
Many experts have expected job gains to slow because the low employment rate is making it harder for firms to find workers. Also, President Donald Trump has slapped tariffs on imports that have provoked tit-for-tat countermeasures by other countries in an escalating trade war that's starting to unnerve U.S. corporations.
But before Friday's report, monthly additions have averaged about 200,000 this year. And Goldman Sachs says the tight labor market tends to boost hiring in June as companies aggressively target students and graduates.
Average hourly earnings increased 5 cents to $26.98, keeping the annual increase unchanged at 2.7 percent. Pay hikes haven't picked up as much as anticipated in light of the historically low jobless rate, but economists expect annual gains to reach 3 percent by the end of the year.
An acceleration in pay increases could prompt the Federal Reserve to raise interest rates more sharply to head off a spike in inflation. The unchanged 2.7 percent rise in June helps keep the Fed on a gradual path of rate hikes.

長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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繰り返しになりますが、6月の雇用は前月から+213千人増加し、5月の+244千人増と合わせて2か月連続で+200千人増を超え、最近3か月の4~6月の月平均で+200千人増を超えています。失業率は前月からやや上昇して4.0%を記録しましたが、引き続き低水準にあり、米国連邦準備制度理事会(FED)では年内にも3%台半ばにまで低下する可能性が取り沙汰されていると報じられています。要するに、目先のスコープでは米国の雇用は極めて堅調であり、雇用が悪化する見込みは議論されていません。ですから、現時点では今年から来年にかけて年間3回程度の利上げペースが見込まれていて、現状では雇用統計から利上げペースに変更を加える可能性はないと考えるべきですが、他方、貿易戦争と呼ばれるような輸入制限や関税率引き上げなどの通商制限的な政策が導入されれば、目先は米国内での生産が増加することから雇用がさらに拡大する可能性はあるものの、諸外国からの報復措置も考慮すれば、雇用への中長期的な影響は不透明と考えるべきです。

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最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、6月は前年同月比で+2.6%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、+2%の物価目標を上回る賃金上昇が続いているわけですから、そろそろ金融政策で対応すべき段階であると考えるのが妥当かもしれません。

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2018年7月 6日 (金)

6年半の景気拡大を示す景気動向指数とようやく賃金上昇が始まった毎月勤労統計!

本日、内閣府から景気動向指数が、また、厚生労働省から毎月勤労統計が、それぞれ公表されています。いずれも5月の統計です。景気動向指数のうち、CI先行指数は前月比+0.7ポイント上昇して106.9を、CI一致指数は▲1.4ポイント下降して116.1を、それぞれ記録しています。また、毎月勤労統計のうち、名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+2.1%増の27万5443円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

5月の景気一致指数、4カ月ぶり低下 輸送機器関連など悪化
内閣府が6日発表した5月の景気動向指数(CI、2010年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.4ポイント低下の116.1となった。低下は4カ月ぶり。市場予想の中央値(1.4ポイント低下)と一致した。輸送機械の生産や出荷が軟調だったことが響いた。
指数を構成する9系列のうち、速報段階で算出対象となる6系列が指数を押し下げた。前月まで好調だった輸送機器の動きが鈍り、鉱工業生産指数などが落ち込んだ。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「改善を示している」に据え置いた。同表現は20カ月連続。
数カ月後の景気を示す先行指標は0.7ポイント上昇の106.9となり、2カ月連続で上昇した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は1.5ポイント上昇の118.8だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。
実質賃金1.3%増 5月、1年10カ月ぶり高水準
厚生労働省が6日発表した5月の毎月勤労統計(速報値、従業員5人以上)によると、物価変動の影響を除いた実質賃金は前年同月から1.3%増えた。1年10カ月ぶりの高水準だ。人手不足で人材の確保が難しいなか、つなぎ留めるために給与を引き上げている。
名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は2.1%増の27万5443円。伸び率は14年11カ月ぶりの高水準となった。内訳をみると、基本給にあたる所定内給与は1.5%増え24万4175円となった。残業代など所定外給与は1.6%増、ボーナスなど特別に支払われた給与は14.6%増加した。
賃金が上昇したのは、名目賃金のなかで比重の高い基本給が増えているためだ。厚労省は「特に正社員で基本給が引き上げられている」と指摘する。5月に入り、ベースアップによる賃上げなどが寄与したとみられる。
春季労使交渉による賃上げの効果が浸透するのは6~7月になる。連合の集計によると、賃上げを要求した企業の労使妥結は5月末の時点で約8割。妥結時期に応じて7月ごろまでに賃金に反映される見込みだ。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計を並べると長くなってしまいました。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は、毎月勤労統計のグラフとも共通して、景気後退期を示しています。

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景気動向指数について、CI一致指数を中心に見ると、今年1月に前月差▲3.9ポイント下降してドカンと落ちた後、2~4月は前月からプラスを続けた後、5月は前月差でマイナスとなりました。5月統計については、耐久消費財出荷指数、投資財出荷指数(除輸送機械)、商業販売額(小売業)(前年同月比)、鉱工業用生産財出荷指数がこの順で大きなマイナス寄与を示しました。7か月後方移動平均の前月差は今年2018年に入ってからプラスとマイナスが交互に出現しており、偶数月がプラスで奇数月がマイナスとなっています。特に、今年2018年1~3月期は景気の踊り場で、やや軟調な経済指標が続いたわけですが、4月からはそれなりの景気回復軌道に復したように私は感じていたんですが、まだもう少し時間が景気回復軌道への回帰にはかかりそうな気もしますし、同時に、景気拡大局面が長期に継続して自律的な景気の成熟化の段階に差しかかっているのかもしれません。もちろん、貿易戦争のとば口に立ったかのような海外経済の先行きも気にかかるところです。いずれにせよ、機械的に求められる基調判断は20か月連続の「改善」で据え置かれており、4月まで景気拡大が続いているとすれば、2012年11月を谷とする現在の景気拡張期間は66か月、すなわち、5年半に達したことになります。

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続いて、毎月勤労統計のグラフは上の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。いずれも、影をつけた期間は景気後退期です。上のグラフのうちでも、一番上のパネルの所定外労働時間は鉱工業生産の動向と整合的です。引用した記事にもあるように、毎月勤労統計で注目すべきは、最近では、賃金なわけですが、季節調整していない原系列の統計の賃金指数で見て、今年に入ってからかなり力強く前年比プラスを続けているのは事実ですし、今年2018年3月に続いて5月にも+2%の上昇率に達しています。上のグラフの中でも、賃金に関する2枚のパネルは、昨年後半あたりから増加幅が大きくなっていることが読み取れると思います。日本経済がデフレを脱して物価が上昇し始め、それにつれて賃金も増加を始めることにより、いわゆる経済の好循環の中で解決されるんだと私は認識しているんですが、いかんせん、ものすごく長いタイムラグを持っているようで、なかなかそういった経済の好循環が目に見える形で明らかにならない恨みはあります。

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2018年7月 5日 (木)

シェアリング志向が強いのはどういう人々か?

先週6月25日付けで、ニッセイ基礎研から「シェアリング志向が強いのは誰?」というタイトルでリポートが明らかにされています。pdf の全文リポートもアップロードされています。シェアリング・エコノミーは考え方にもよりますが、従来の伝統的サービスの低価格帯を担い、いわば、「節約志向」の賜物とも考えられているところ、どうも、シェアリング志向が強そうなのは我が家のような家計かもしれないと考え始めています。私のお仕事の方でも、日本経済学会の春季大会の特別セッションにて、「シェアリング・エコノミー計測の論点」と題して学会発表をしてきたところですので、それなりに接点もあり、グラフを引用して簡単に取り上げておきたいと思います。

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上のグラフは、リポートから 図表4 職業別に見た「中古・シェア」志向の強さ を引用しています。見れば明らかな通り、「中古・シェア」志向の強さは男女とも学生が1位、公務員が2位、という結果が示されています。我が家は、女房は別にして、大阪に下宿している下の倅も含めて、私と倅2人は公務員と学生です。まあ、学生は職業というよりも、年代的な属性もあって「中古・シェア」志向が強い可能性はありますが、リポートでは、学生は「できるだけネット」や「中古品でも気にしない」が、また、公務員は「中古品でも気にしない」が、それぞれ「中古・シェア」志向の強さにつながっていると分析しています。ただし、学生と公務員では「中古品でも気にしない」背景は異なるとし、学生はネット購買を好み、ネットの口コミなど多くの情報を見た上で中古品でも気にしない一方で、公務員は堅実・慎重な消費態度から中古品でも気にしない、との見方を示しています。他方、我が家にもいる専業主婦については、家計の節約意識などからか、できるだけレンタルやシェアを利用する意識がやや高いものの、ネットの個人間売買には抵抗が強い、との解釈です。
1万人を対象にした調査結果を基にした分析だそうですので、それなりの代表性は期待できるものの、もちろん、我が家にピッタリと当てはまるかどうかは別問題です。いずれにせよ、なかなか興味深い結果だと受け止めています。

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2018年7月 4日 (水)

終盤に中日をうっちゃって逆転勝ち!!

  RHE
中  日013000001 571
阪  神00030102x 6112

あんまりよく見ていなかったんですが、4点差を終盤にひっくり返して中日に逆転勝ちでした。先発の藤浪投手がフォアボールを連発しながらも、何とか4点に抑え、また、リリーフ陣もしっかりと抑えて逆転につなげました。8回の逆転劇では目立たなかったんですが、藤川俊介選手の盗塁が効いた気がします。

明日も、
がんばれタイガース!

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我が国家計の資産分布は先進各国で比べて不平等なのか?

経済協力開発機構(OECD)から、先月6月21日付けで以下の学術論文が公表されています。

Balestra, Carlotta and Richard Tonkin (2018) "Inequalities in household wealth across OECD countries: Evidence from the OECD Wealth Distribution Database," OECD Statistics Working Papers 2018/01, OECD, June 2018

要するに、OECDの資産分布データベースを基に、加盟各国の家計資産の分布の不平等の度合いをリポートしています。一応、学術論文なんでしょうが、小難しい計量経済学の手法で分析を加えたというよりは、データベースから記述統計を抜き出したリポートに近いと私は受け止めています。OECDのデータベースを中心に置きながら、クレディ・スイスの Credit Suisse Global Wealth Report とか、World Inequality Report との比較も試みています。グラフを引用しつつ、国際比較で我が国の家計資産の不平等の度合いが先進各国と比較してどの程度かを簡単に見ておきたいと思います。

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まず、上のグラフは、ペーパーの p.10 Figure 2.1. Mean net wealth per household and per person を引用しています。家計当たりの純資産残高でソートしてあり、ルクセンブルク、米国、英国の順となっていて、我が国における家計当たりの純資産残高はOECD加盟国27か国中の9番目であり、加盟国平均よりやや多くなっています。日本経済もやや落ちぶれたとはいえ、まだまだ資産残高では平均より上位につけています。

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次に、上のテーブルは、ペーパーの p.15 Table 2.1. Selected indicators of the distribution of household net wealth を引用しています。ボトム40%のシェアやボトム60%のシェアの起きさで我が国を上回る国はいくつかありますが、逆に、トップ10%のシェア、トップ5%のシェア、トップ1%のシェア、の3項目で見ると、OECD加盟国中で我が国家計はかなり資産分布が平等に見えます。トップ家計のシェアが我が国より低いのはスロバキアくらいで、同等なのもギリシアくらいです。このテーブルの次のページに Table 2.2. Top wealth shares across different international databases も示されていて、クレディ・スイスのデータベースによる比較も利用可能なんですが、いずれにせよ、我が国の家計資産の集中度は先進各国の中で比較してそれほど高くない、という結果が明らかにされています。

通常のエコノミストの感覚でいえば、フローの所得の不平等が積み上がって、このリポートに示されているようなストックの資産の不平等が出来上がるわけですから、フローの所得よりもストックの資産の不平等のほうがより不平等の度合いが大きいと考えるべきです。従って、本リポートの記述統計から、我が国のフローの所得の不平等の度合いは、ストックの資産の不平等とともに、歴史的に見て最近時点で格差や不平等はかなり高まってきている可能性は否定できないものの、繰り返しになりますが、他の先進各国と横断的に比較すれば、高齢化が進んでいる割にはそれほど我が国家計資産の不平等は大きくない、といえるのではないかと私は受け止めています。

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2018年7月 3日 (火)

先発メッセンジャー投手が大きく崩れて中日に大敗!!

  RHE
中  日400015000 10132
阪  神100101002 5122

あんまりよく見ていなかったんですが、先発メッセンジャー投手が崩れて中日に大敗でした。先発の大黒柱がここまで打ち込まれては、現在の阪神打線の力からして勝ち目はありません。でも、4番に座った陽川選手が様になってきた気がします。

明日は、
がんばれタイガース!

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カルチュア・コンビニエンス・クラブによる『読書に関するアンケート調査』の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、6月21日付けでカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)から「読書に関するアンケート調査」の結果が明らかにされています。13~22歳の子供を持つ親に聞いた結果だそうで、我が家の子供達は19歳と21歳ですので、私は対象者の資格があるんではないかと考えていたりします。ということで、まず、調査結果のダイジェストをカルチュア・コンビニエンス・クラブのサイトから5点引用すると以下の通りです。

読書に関するアンケート調査ダイジェスト
  • "親子の日"に子どもへ贈りたいものは、モノ消費よりもコト消費が1位に
    1位「レストランなどでの食事」 2位「衣服・くつ」 3位「書籍」
    中学生の子どもへ贈りたいものは1位「書籍」
  • 書籍を月に1冊以上読む人は4割
    書籍を手に入れる場所 1位「書店」 2位「ネット通販」 3位「図書館で借りる」
  • 子どもへ本を贈りたい人は4割、贈りたい本の1位は「君たちはどう生きるか」
  • 学生時代に親から本を贈られたことがある人は1割 ※小学生時代を除く
    親から本を贈られた時の気持ちは?「うれしかった」「楽しめた」「学べた」
  • 理想の親子だと思う有名人
    1位「高橋英樹さん・高橋真麻さん」 2位「関根勤さん・関根麻里さん」
    3位「三浦友和さん・山口百恵さん・三浦祐太朗さん・三浦貴大さん」

なお、やや不親切だったかもしれませんが、上のダイジェストの冒頭にある「親子の日」とは、7月の第4日曜日を指しており、2003年から始まった記念日、というか、運動のようなものらしく、その日に本を贈る、というアンケートの趣旨なのかもしれません。よく判りません。まあ、この調査結果について、私の興味の範囲で、グラフを引用しつつ自分の読書にも引き付けて簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、カルチュア・コンビニエンス・クラブのサイトから、「あなたは普段書籍を読みますか。」の問いに対する回答を引用すると上のグラフの通りです。30%近い大人が本を読まないと回答しているのには驚きます。私の読書量は毎月15~20冊くらい、年間200冊前後ではないかと思います。たぶん、というか、かなり確実に読書量は多い方だろうと自覚しています。

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次に、カルチュア・コンビニエンス・クラブのサイトから、「あなたは普段本をどこで手に入れますか。」の問いに対する回答を引用すると上のグラフの通りです。常識的に本屋さんか、インターネットで買う、というカンジなんでしょうが、もう還暦を迎えて人生経験長く、本があまり帰っている我が家に置く場所もない私は、年間200冊の読書のうち、買い求めるのは10冊くらいで、残り190冊くらいは、すべて図書館で借りています。最近では話題のダン・ブラウン『オリジン』上下を買いました。三浦しをん『ののはな通信』を買おうかどうしようかと、激しく悩んでいるところです。

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2018年7月 2日 (月)

本日公表の6月調査の日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から6月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは3月調査から▲3ポイント低下して+21を記録した一方で、本年度2018年度の設備投資計画は全規模全産業が前年度比+7.9%の増加と3月調査の▲0.7%減から大きく上方修正されました。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

景況感、大企業製造業2期連続の悪化 非製造業は改善
日銀が2日発表した6月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス21だった。前回3月調査のプラス24から3ポイント悪化した。悪化は2四半期連続となる。2期連続の悪化は2012年12月調査以来5年半ぶり。人件費や資材価格の上昇によるコスト高が景況感を下押しした。石油・石炭製品や木材・木製品、自動車などの悪化が目立った。
業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。6月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス22を下回った。回答期間は5月29日~6月29日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス21と横ばいの見通し。市場予想の中央値(プラス20)を上回った。米国と主要国との貿易摩擦に対する懸念が一部に聞かれ、先行き見通しの重荷になった。
18年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=107円26銭と、実勢レートより円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス24と前回を1ポイント上回った。3カ月先のDIは3ポイント悪化のプラス21だった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス21となり、前回(マイナス22)から低下幅が縮まった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもの。
18年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比13.6%増と、市場予想の中央値(9.3%増)を上回った。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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日銀短観のヘッドラインは大企業製造業の業況判断DIですから、6月調査の短観は企業マインドが悪化した、ということになりますが、他方、大企業非製造業の業況判断DIはわずかながら上向いていますので、全体としての判断は難しいt頃です。しかも、DIの方向性だけでなく、水準まで考え合わせると、現時点ではかなりの高水準にあり、大企業だけでなく中堅企業と中小企業の製造業・非製造業も業況判断DIがプラスを示していますので、決して景況が悪いというわけではなく、水準として景況はいいながらも、方向として悪化に向かっている、という段階なわけです。私の解釈としては、国内経済がかなり好調な一方で、世界経済が米中貿易戦争の開始前夜の様相を呈して来て、従って、輸出への依存の差が製造業と非製造業の景況感の分かれ目に当たっている可能性があります。好調な国内経済を対象としている製造業と不透明感残る世界経済への輸出に一部なりとも依存する製造業の差が業況マインドに出ている可能性があると思います。加えて、国際商品市況における石油や一次産品価格の上昇のため、製造業の業況感が悪化している面もあります。もちろん、長期に拡大を続けた我が国の景気が成熟化し、非製造業よりはやや先行性ある製造業で景況感の悪化が見え始めた、ということも十分考えられます。これは3月調査の短観が公表された時点でも指摘していた点です。いずれにせよ、現時点で、私は決定的な見方が出来かねています。私以外でも、解釈を試みようとしているエコノミストの元来の見方、例えば、楽観派とか悲観派とか、の見方が色濃く出そうな気もします。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。特に、雇用人員については規模の小さい中堅企業・中小企業の方が大企業より採用の厳しさがうかがわれ、人手不足幅のマイナスが大きくなっています。新卒採用計画は3月調査では実施されていませんが、各種報道によれば、就活は売り手市場が続くようです。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2018年度の全規模全産業の設備投資計画は3月調査で異例の▲0.7%減という高い水準で始まった後、6月調査では+7.9%増に大きく上方改定されています。上のグラフを見ても判る通り、6月調査の設備投資計画はこのところはせいぜい+4%増くらいでしたので、今年2018年度の設備投資計画はかなり高い伸びを見込んでいると考えるべきであり、特に、引用した記事にもある通り、大企業に限れば大企業全産業で前年度比+13.6%増と、2ケタ増を見込んでいます。もともと、企業の手元にあるキャッシュフローは潤沢な上に、失業率が2%台前半まで低下した人手不足へ対応した合理化・省力化投資需要の高まり、加えて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを視野に入れ、今年度2018年度の設備投資は期待してよさそうです。

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2018年7月 1日 (日)

2回のワンチャンスをモノにし最後はヒヤヒヤで逃げ切りヤクルトに連勝!!

  RHE
阪  神060000000 671
ヤクルト012000002 591

5時プレーボールを忘れずテレビ観戦を始めると、2回のビッグイニングをものにしてヤクルトに連勝でした。その後は、サッパリ打てなかったんですが、7回から継投に入り、最終回はヒヤヒヤながら何とか逃げ切りました。新戦力のナバーロ選手は3番外野手でフル出場しましたが、ノーヒットに終わり、評価はビミョーなところです。それにしても、5時試合開始というのはプレ金やゆう活を意識してのことなんでしょうか。私はどちらも評価していませんので、やや疑問に感じます。

次の中日戦も、
がんばれタイガース!

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