4-6月期GDP統計1次QEはプラス成長に回帰し年率+1.9%の高い伸び!
本日、内閣府から昨年2018年4~6月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.5%、年率では+1.9%を記録しました。マイナス成長だった1~3月期から2四半期振りのプラス成長でリバウンド効果もあって、かなり高い成長率でした。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
2期ぶりプラス成長 4~6月GDP1.9%増、内需が拡大
内閣府が10日発表した4~6月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%増、年率換算では1.9%増だった。プラスは2四半期ぶり。1~3月期は年率換算で0.9%減だった。個人消費や設備投資など内需が拡大した。
QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.3%増で、年率では1.3%増だった。
生活実感に近い名目GDP成長率は前期比0.4%増、年率では1.7%増だった。名目も2四半期ぶりにプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.6%分の押し上げ、外需の寄与度は0.1%分のマイナスだった。項目別にみると、個人消費が0.7%増と、2四半期ぶりにプラスだった。天候不順や生鮮野菜の高騰で1~3月期に落ち込んだ反動が出た。
輸出は0.2%増、輸入は1.0%増だった。米国と欧州連合(EU)向けが伸びた。国内需要が伸び、輸入量が増加した。
設備投資は1.3%増と、7四半期連続でプラスだった。省力化投資や研究開発など企業の設備投資需要が高まった。
住宅投資は2.7%減。貸家着工の低迷が響いた。公共投資は0.1%減。民間在庫の寄与度は0.0%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.1%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.5%のプラスだった。
ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、内閣府のリンク先からお願いします。
です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした需要項目 | 2017/4-6 | 2017/7-9 | 2017/10-12 | 2018/1-3 | 2018/4-6 |
国内総生産GDP | +0.5 | +0.6 | +0.2 | ▲0.2 | +0.5 |
民間消費 | +0.8 | ▲0.7 | +0.3 | ▲0.2 | +0.7 |
民間住宅 | +1.3 | ▲1.3 | ▲3.0 | ▲2.3 | ▲2.7 |
民間設備 | +0.5 | +1.2 | +0.8 | +0.5 | +1.3 |
民間在庫 * | (▲0.1) | (+0.4) | (+0.1) | (▲0.2) | (+0.0) |
公的需要 | +1.4 | ▲0.5 | ▲0.1 | ▲0.1 | +0.2 |
内需寄与度 * | (+0.1) | (+0.2) | (+0.9) | (+0.0) | (+0.1) |
外需寄与度 * | (▲0.3) | (+0.6) | (▲0.1) | (+0.1) | (▲0.1) |
輸出 | +0.2 | +2.1 | +2.1 | +0.6 | +0.2 |
輸入 | +1.9 | ▲1.5 | +3.3 | +0.2 | +1.0 |
国内総所得 (GDI) | +0.7 | +0.6 | ▲0.0 | ▲0.5 | +0.4 |
国民総所得 (GNI) | +0.6 | +0.8 | ▲0.0 | ▲0.7 | +0.7 |
名目GDP | +0.8 | +0.8 | +0.3 | ▲0.4 | +0.4 |
雇用者報酬 (実質) | +0.5 | +0.7 | ▲0.2 | +1.2 | +1.9 |
GDPデフレータ | ▲0.3 | +0.1 | +0.1 | +0.5 | +0.1 |
内需デフレータ | +0.4 | +0.5 | +0.6 | +0.9 | +0.5 |
上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された2018年4~6月期の最新データでは、前期比成長率がプラスに回帰し、赤い消費と水色の設備投資がプラスの寄与を叩き出している一方で、黒の外需(純輸出)がマイナス寄与となっているのが見て取れます。

ということで、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも前期比年率による予想レンジは+0.5~+2.5%となっており、かなり予測の上限に近い印象です。ただし、1~3月期と4~6月期をならして年半期ベースで考えると、2017年下半期から2018年上半期への前期比成長率は+0.1%にしか過ぎず、4~6月期の高成長はリバウンドの要素が強いとすれば、我が国経済が踊り場局面から脱して潜在成長率水準に回帰した、とまではいえない可能性もあります。ただ、住宅投資こそマイナスを続けているものの、消費は力強くリバウンドしてプラスを記録し、設備投資も伸びを続けているわけですから、2017年10~12月期から3四半期に渡ってゼロ近傍の寄与度を続けている外需に代わって内需主導の成長が実現できていることも事実です。

上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。内需主導の成長を裏付けているのは設備投資とともに消費なわけですが、上のグラフに見られる通り、その背景には順調な増加を続ける雇用者報酬があります。インバウンド消費も順調な拡大を続けているものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大局面は終了に向かっている印象ですし、国内労働市場の人手不足に伴う正規雇用の増加や賃金上昇により、雇用者報酬が順調に伸びを示しています。人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加圧力となっており、内需主導の成長をバックアップしていると考えるべきです。
先行きの成長についても、米中間の貿易戦争に代表されるような通商摩擦がリスクとして上げられるものの、日本経済は緩やかな拡大基調を継続するものと私は期待しています。なお、最後に、本日日銀から公表された企業物価 (PPI) については、国際商品市況における石油価格の上昇を受けて、ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率が+3%を超えたんですが、諸般の事情により今夜のブログでは割愛します。悪しからず。
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