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2018年8月18日 (土)

今週の読書はやや抑え気味に計5冊!

今週の読書は、やや抑え気味に、経済所や小説も含めて、計5冊、以下の通りです。来週も少し抑える予定です。

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まず、福田慎一[編]『検証アベノミクス「新三本の矢」』(東京大学出版会) です。編者はマクロ経済を専門とする東大経済学部教授であり、すでに退職した吉川教授とともにマクロ経済分析の第一人者といえます。ただ、福田教授の場合は、もともとのオリジナルのアベノミクスの三本の矢に対しては批判的な見方を展開していて、本書で取り上げている新三本の矢については、その意味ではやや肯定的な取り上げ方ではないかという気もします。どうして新三本の矢が福田教授の評価を得たかというと、要するに、福田教授の好きな構造改革に近いからです。すなわち、名目GDP600兆円の強い経済はさて置き、希望出生率1.8を目指す子育て支援、さらに、介護離職ゼロを目指す社会保障改革については、かなり構造改革の色彩が強くなる、という見方なんだろうと思います。私はオリジナルの三本の矢、特に最初の矢である金融政策を高く評価しており、かなり方向性が違います。成長戦略などの構造改革は潜在成長率を高めることにより、少し前までの日本経済に漂っていた閉塞感の打破に役立つと、素直に考える向きは少なくありませんが、現状の人手不足経済の中でどこまで有効でしょうか。私には疑問のほうが大きく感じられます。

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次に、W. チャン・キム & レネ・モボルニュ『ブルー・オーシャン・シフト』(ダイヤモンド社) です。かなり前にこの著者から『ブルー・オーシャン戦略』という本が出されていますが、その実践編、というか、続編であることは明らかです。コモディティ品で溢れて、血に泥の競争を繰り広げているレッド・オーシャンから、独自製品や新たな市場開拓による競争のないブルー・オーシャンへのシフトを眼目にしているわけですが、基本的に、ブルー・オーシャンを開拓できる企業はとても限られていると私は見ていて、ハッキリいって、本書のお題目は非現実的です。当然ながら、本書を読んだ経営幹部がすべてブルー・オーシャンにシフトできる、と考えるのは控えめに言ってもバカげています。本書のようなサクセス・ストーリーに着目したケーススタディを展開しているような経営本を読むにつけ、その反対側で数百倍、数千倍の失敗例が山を成しているという事実を忘れるべきではありません。むしろ、うまくブルー・オーシャンにシフトした例と失敗した例を並べて分析するほうが役立ちそうな気もします。現自社社会の経営幹部にとって、ほとんど何の役にも立たない本ではないか、と私は考えています。すなわち、実際の企業経営で活用するというよりも、むしろ、シミュレーションゲームのシナリオの基にする方ががまだ本書の使い道がありそうな気がします。4次元ポケットから取り出したドラえもんの道具で経営改革を進めましょう、と主張しているに近いという受け止めです。

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次に、ニック・トーマン & マシュー・ディクソン & リック・デリシ『おもてなし幻想』(実業之日本社) です。タイトルだけを見れば、我が国のおもてなしについて批判しているような見方が成り立つんですが、広い意味でそうつながらないでもないものの、本書で主として強調しているのは、カスタマーサービスを強化しても、顧客のロイヤリティは飽和点がかなり低く、カスタマーサービスの限界生産性はすぐにゼロに達する、従って、別の観点から顧客のロイヤリティを維持ないし引き上げる努力が必要、という議論を長々と展開しています。ですから、BtoBにせよ、BtoCにせよ、顧客と直接接するカスタマーサービス部門、ないし、日本的な表現をすればクレーム処理部門のお仕事に焦点が当てられており、それ以外の製造や研究開発や、もちろん、経理や人事と行った管理部門などはまったく関係がありません。そして、カスタマーサービスとして、顧客に積極的に働きかけるよりも、むしろ、顧客自身が選択を可能にするようなシステムが推奨されています。例えば、クレームとか何らかの問い合わせなどにおいては、オペレータによる電話対応ではなく、webサイトにおける決定樹などに基づくソリューションの提供などです。ただ、私自身の評価として、こういったカスタマーサービスは、日本のおもてなしが典型で、プライシングに失敗しているんではないか、という気がしています。レベルの高いおもてなしであれば、それ相応の料金をちょうだいすべきであり、無料で提供すれば効用が高まるのは当然ですから、評価も得やすくなります。顧客にどこまで評価されるかに従った価格付を放棄して無料ないし割に合わない低価格でサービスを提供しているんではないか、と私は疑っているわけです。我が国のデフレの一員である可能性も排除しません。

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次に、バラク・クシュナー『ラーメンの歴史学』(明石書店) です。英語の原題は Slurp! であり、音を立ててすすって食べる、くらいの意味かと思います。邦訳タイトル通りに、ラーメンに大きな焦点を当てつつも、日本の食文化を幅広く取り上げており、それも、家庭における食文化ではなく、外食の食文化です。ですから、実質的に、日本で料理屋などが広く普及し始めたのが江戸期のそれも徳川吉宗将軍くらいからではないかといわれていますので、それほど長い歴史をたどるわけではありません。しかも、我が国の食文化の場合、諸外国からの影響をかなり強く受けており、中国や朝鮮は言うに及ばず、てんぷらはもちろん、明治期以降のカレー、そして、本書で焦点をあてている昭和期以降くらいのラーメンもかなり外来文化の色彩を有していることは明らかでしょう。ただ、てんぷら、刺し身、寿司といった食文化の中のハイカルチャーに対して、おそらく、カレーやラーメンは、牛丼などとともにサブカルの位置を占めますから、中国由来のラーメンを取り上げるのであれば、インド由来のカレーについてももっと着目して欲しかった気もします。でも、外食のラーメンとともに、家庭食のインスタント・ラーメンに着目したのは秀逸な視点だと私は受け止めています。

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最後に、戸谷友則『宇宙の「果て」になにがあるのか』(講談社ブルーバックス) です。著者は、どちらかといえば、理論物理の専門家ですが、宇宙の果てについてかなり専門的な議論を紹介しています。もちろん、空間的な宇宙の果てだけでなく、時間的なビッグバンの始まる前の宇宙についても十分に考慮されています。それにしても、私のようなエコノミストの目から見て、100年経っても何らゆるぎを見せないアインシュタインの相対性理論というのは、とてつもなく立派な理論構造をしているのであろうと想像され、同時に、実証の結果に支えられていることも想像され、経済学なんぞという貧素な科学と対比するにつけ、物理学の学問体系の広さと堅牢さに驚くばかりです。そして、その相対性理論と量子理論に基づく現代宇宙論が本書では展開されています。ただ、ダークマターとダークエネルギーのいい加減さ、不透明さ、アドホックさについては、まだまだ物理学にして解明すべき課題が多く残されている、と感じてしまいました。

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