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2018年8月24日 (金)

引き続きプラスを続ける消費者物価(CPI)と企業向けサービス物価(SPPI)!

本日、総務省統計局から消費者物価指数 (CPI) が、また、日銀から企業向けサービス物価指数 (SPPI)が公表されています。いずれも7月の統計です。前年同月比上昇率でみて、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPI上昇率は前月と同じ+0.8%を記録しており、SPPI上昇率も前月と同じ+1.1%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

7月の全国消費者物価、0.8%上昇 食品やガソリンの上昇が影響
総務省が24日発表した7月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が100.9と前年同月比0.8%上昇した。上昇は19カ月連続。乳製品や飲食店向けビールなど食品のほか、ガソリンの上昇が押し上げた。
生鮮食品を除く総合では、全体の51.4%にあたる269品目が上昇した。原油高を受け、エネルギー関連品目が上昇した。
下落は187品目だった。NTTドコモの料金プランの見直しで、携帯電話の通信料が下落した。一部の家電も値下がりした。横ばいは67品目だった。
生鮮食品を含む総合は101.0と0.9%上昇した。6月から7月にかけての天候不順できゅうりやキャベツなど生鮮野菜が値上がりした。世界的な需要拡大を映したたこの価格上昇も目立った。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは100.9と前年同月比0.3%上昇した。宿泊料のほか、授業料など教育費の上昇が影響した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合のCPIは前月比で0.1%上昇した。
7月の企業向けサービス価格、前年比1.1%上昇 人件費の上昇などで
日銀が24日発表した7月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は104.9で、前年同月比1.1%の上昇となった。伸び率は6月から横ばいだったが、消費増税の影響を受けた時期を除くと、6月に続いて1993年3月以来、約25年ぶりの高い水準となる。幅広い産業で、人手不足による人件費の上昇を価格に転嫁する動きが続いた。上昇は61カ月連続。
土木建築サービス、プラントエンジニアリング、労働者派遣サービスなどで高い伸びが続いた。指数上昇に寄与したのは運輸・郵便だった。国際航空貨物輸送が、一部路線の運休による需給逼迫のほか、燃油サーチャージの上昇もあって前年同月比19.7%上昇した。一方、宿泊サービスは西日本豪雨や大阪府北部地震の影響で上昇率が鈍化した。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは80品目、下落は29品目だった。上昇から下落の品目を引いた差は51品目で、前月の48品目から拡大した。差し引きでのプラスは20カ月連続となる。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、コアCPIの前年同月比上昇率で+0.9%でしたので、小幅に下回りましたが、大きく外れはしませんでした。企業物価については輸入物価と国内物価が国際商品市況における石油価格の上昇の影響などから、やや上昇幅を拡大し、7月の企業物価のうち国内物価の前年同月比上昇率が+3%を超える一方で、消費者物価(CPI)の上昇ペースは加速せず、デフレ脱却はまだしも、日銀のインフレ目標である+2%とは差があります。ということで、マクロの物価上昇は引き続き力強さに欠けるんですが、最近、多くのエコノミストが注目しているのは来年2019年10月の消費税率引き上げに際しての個別品目のマイクロな物価動向、中でも、政府の影響下にある公共料金のうちの携帯電話通信料の引き下げと教育費の無料化の動向です。前者の携帯電話通信料は全国のウェイトが1万分の215、東京でも177あります。他方、生鮮食品のウェイトが396ですから、菅官房長官の発言にあったように、携帯電話通信料が4割引き下げられると、全国コアCPIの上昇率を▲1%近く引き下げる効果があり、現在のプラスの上昇率は吹っ飛んでしまいます。加えて、教育の無償化については、幼児教育・保育及び大学など高等教育のそれぞれの無償化、さらに、私立高等学校授業料の実質無償化、といった教育無償化が消費税率引き上げの2019年10月から翌2020年4月にかけて実施されることが議論されています。制度的に複雑な実施となり、例えば、大学など高等教育の無償化については対象が住民税非課税世帯に限定されたり、私立高校の授業料が実質無償化されるのは年収590万円未満世帯に限定されたりするので、計算は複雑で教育のうちの授業料等の228のウェイトに相当する料金がすべてゼロになるわけではありませんが、知り合いのエコノミストのいくつかの試算を見ている限りでは、やっぱり、全国コアCPIの上昇率を▲0.5%近く引き下げる効果が示されており、合せて▲1.2~1.4%くらいの引き下げ効果が見込まれています。国際商品市況における石油価格上昇の追い風に乗っても、なお、+1%に届くか届かないかのコアCPI上昇率しかない現状で、これらの引き下げ効果を生ずる制度改革が実施されるとすれば、日銀のインフレ目標達成がまたまた遠のくことになるような気がします。

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次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。これまた、CPIと同じで石油閣下うの上昇に連動するような形で運輸・郵便が前年同月比上昇率で+2.4%、景気に敏感な広告も+0.4%などが前年同月比寄与度の前月差で見てもSPPIの上昇をけん引している印象です。他にも、引用した記事にある通り、土木建築サービス、プラントエンジニアリング、労働者派遣サービスなどが人手不足を背景に高い上昇率を示しています。

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