堅調な米国雇用統計により来月の利上げは確実か?
日本時間の昨夜、米国労働省から7月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+157千人増と、市場の事前コンセンサスだった+190千人の増加という予想を下回った一方で、失業率は前月から▲0.1%ポイント上低下して3.9%という低い水準を続けています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事の最初の5パラを引用すると以下の通りです。
Economy added disappointing 157,000 jobs in July but unemployment fell to 3.9%
Hiring slowed in July as employers added 157,000 jobs in a possible sign that worker shortages and widening U.S. trade spats are starting to damp employment gains.
The unemployment rate fell from 4% to 3.9%, close to its 18-year low, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg expected 192,000 payroll gains.
As a result of the low unemployment rate, more businesses are struggling to find workers, especially with the economy growing at the fastest pace in three years in the April-June period. Yet monthly job growth has averaged more than 200,000 this year, up from 182,000 in 2017, in part because the worker-friendly labor market has drawn in more Americans on the sidelines. That also has kept unemployment from falling more quickly.
But many economists believe that shadow labor supply will soon run thin, tempering job growth and pushing unemployment lower.
長くなりましたが、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは下の通りです。上のパネルは非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門、下のパネルは失業率です。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

USA Today の記事のタイトルが "disappointing 157,000 jobs" としているように、やや物足りない雇用増だったんですが、7月統計に先立つ5月が+244千人増から+268千人像に、また、6月が+213千人増から+248千人増に、それぞれ情報修正されていますから、3か月くらいでならしてみれば、各月で軽く+200千人増となりますから、米国の雇用は十分に堅調と考えるべきです。7月の雇用増が市場の事前コンセンサスを下回ってやや小幅にとどまった理由として、労働市場が完全雇用に近づいて企業が求人をかけても応募者が十分に集まらない、とさえウワサされています。米国連邦準備制度理事会(FED)では、つい先日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを見送りつつも、"The Committee expects that further gradual increases in the target range for the federal funds rate will be consistent with sustained expansion of economic activity" とステートメントに明記しており、今回くらいの雇用増の減速では利上げを見送るとは考えられず、9月25-26日に開催される次回FOMCで利上げが実施されるのはほぼ確実と見られます。例えば、Wall Street Journal の記事のタイトルは "July Jobs Report Likely to Keep Fed on Track for Next Rate Increase" だったりします。ただし、先行きリスクがないわけではなく、 に突入する気配が気がかりであることはいうまでもありません。

最後に、時間当たり賃金の前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。ならして見て、じわじわと上昇率を高め、7月は前年同月比で+2.7%の上昇を見せています。日本だけでなく、米国でも賃金がなかなか伸びない構造になってしまったといわれつつも、日本と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているわけですから、当然に利上げで対応すべきなのはいうまでもありません。
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