ブリニョルフソン教授らによる機械翻訳 AI による経済効果の研究成果やいかに?
8月20日の週に、全米経済研究所 (NBER) からブリニョルフソン教授らによる機械翻訳 AI による経済効果研究のワーキングペーパー "Does Machine Translation Affect International Trade? Evidence from a Large Digital Platform" が明らかにされています。引用文献を詳細に記すと以下の通りです。
人工知能のうち、機械翻訳 (Machine Translation) によって、どれだけの経済効果があったか、について定量的な分析結果を示しています。どのような分析をしたかというと、eBay に導入された eMT (eBay Machine Translation) がどれだけ米国の輸出を増加させたかについて差の差 (DiD) 分析を実施し、ラテンアメリカへの米国の輸出を17.5%増加させた、と結論しています。以下で簡単にグラフを引用しつつ取り上げておきたいと思います。

まず、機械翻訳が導入された前後のラテンアメリカとその他地域への eBay を通じた米国からの輸出の推移です。直観的なグラフの印象として、機械翻訳導入前には大きな差はなかった一方で、機械翻訳を導入してから、その他地域向けに比較してラテンアメリカ向けの eBay を通じた輸出が順調に増加しているのが見て取れます。このラテンアメリカ向け輸出の増加が機械翻訳の効果であった可能性がうかがえます。

同時に、これも状況証拠なんですが、上のグラフは輸出品目のタイトルの文字数による増加割合をみています。機械翻訳の効果がより大きいのは、短いタイトルではなく長いタイトルの可能性があるわけで、そのことがグラフから実感できるのではないかと思います。私自身は南米はチリで外交官をした経験がありますので、スペイン語をそれなりに理解し、英語とスペイン語の両方でよく似た単語の場合とまったく異なる場合を知っていますが、当然ながら、短いタイトルだと英語のままで理解できても長いタイトルの輸出品だと、もっとしっかりと確認する必要があるわけで、機械翻訳の効果がより大きくなるとの仮説はもっともだと受け止めています。
もちろん、学術論文ですから、グラフのシェイプだけで判断しているわけではなく、繰り返しになりますが、差の差 (DiD) 分析により定量的な把握を試みています。詳細には、冒頭に引用先のリンクを置いておきましたので、ご興味ある向きは論文を読んでみるのも一案かもしれません。
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