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2018年12月22日 (土)

今週の読書は『宮部みゆき全一冊』や経済書をはじめ計7冊!!!

今週も、経済学や経営書を含めて計7冊、以下の通りです。来週金曜日を本年最後の開館日として、図書館は年末年始休みに入るところが多いような気がします。年末年始は少しDVDを見たり、文庫本を読んでのんびり過ごそうと予定しています。

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まず、ダン・アリエリー & ジェフ・クライスラー『アリエリー教授の「行動経済学」入門 お金篇』(早川書房) です。著者のうちアリエリー教授は実験経済学を専門とする研究者であり、もうひとりのクライスラーは弁護士の資格持つコメディアンだそうです。英語の原題は Dollars and Sense であり、2017年の出版です。タイトルからもお金にまつわる話が多いとされているようですが、中身はそれほどお金の話ばかりではなく、行動経済学一般の入門書となっています。ただ、こういったアリエリー教授の行動経済学の入門書は、類書も含めて、私も数冊読みましたが、どれも同工異曲であって、ツベルスキー・カーネマンのプロスペクト理論を基に、いくつか最近の実験経済学らしい実験結果を盛り込みつつも、よく似た内容が多くて、そろそろおなかがいっぱいになりそうな気がします。すなわち、相対性に幻惑されたセール価格の魅力、心の会計としてお金を分類して無駄遣いを抑制する心理、出費の痛みを軽減して支出させるマーケティング手法、アンカリングによるバイアスの発生、モノだけでなく経験も含めた所有に基づく授かり効果や損失回避、公正の実現と労力、マシュマロ・テストのような自制心の涵養、価格を過度に重視する製品ラインナップの幻惑、などなど、私のような行動経済学は専門外とはいえ、それでも何冊かのこういった本を読んでいれば、今までに見たことのありそうなトピックが満載です。私の方から、本書で取り上げられていない公正と効率のトピックをひとつ上げると、マクドナルドのマニュアルにはフォーク型の1列の行列ではなく、パラレルな平行型のレジごとに並ぶ行列を取ります。1列に順番で並ぶと、行列の先頭からレジに行くまでの時間が無駄を生じることとなり、効率を重視するとレジごとに平行で並ぶ行列が推奨される一方で、フォーク型に並ぶのはお店に着いた準晩が注文する順番と一致するわけですから公正の観点からは受け入れやすい気もします。本書では労力を費やして公正を達成する心理が取り上げられていますが、こういった効率と公正がトレード・オフの関係にある場合も少なくないわけで、本書では取り上げられていないながら、行動経済学はマンネリではなく、さらに発展の可能性があると私は評価しています。

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次に、田中靖浩『会計の世界史』(日本経済新聞出版社) です。著者は公認会計士事務所の所長であり、研究者ではなく実務の一線でご活躍のようです。本書は3部構成となっており、第1部では中世イタリアで発生した複式簿記にスポットを当て、イタリアからオランダに簿記が普及し、自分のビジネスがどうなっているかを自分で解明する、というか、お金の観点から把握する試みとして、その歴史が跡づけられます。第2部では英国から米国の大西洋を挟んだアングロサクソンの国で、ルールに則って投資家に対して情報を開示する手段としての財務会計として発展する会計が描き出されます。そして、最後の第3部では米国を舞台にビジネス展開の基礎となる情報を提供する管理会計の発達に着目します。単に、会計や経済の同行だけでなく、絵画や音楽といったハイカルチャーやポップカルチャーの動向も合わせて歴史的に跡づけながら、会計と経済社会、さらに文化も包括的に解明しようと試みています。そして、私の見る限り、かなりの程度にこの試みは成功しているんではないかという気がします。あるいは、マルクス主義的な下部構造と上部構造というのはいいセン行っているのかもしれません。オランダのチューリップ・バブルや英仏両国を巻き込んだ南海会社事件などのバブルも興味深く取り上げられています。全体として、初学者にも配慮された入門編の趣きを持って、会計の観点から西洋先進国の経済社会の歴史を解明しようと試みた本書なんですが、「会計史」を標榜するからには、中世イタリアでかなりの程度に自然発生的に始まった複式簿記のごく初期の歴史にまったく触れていないのはとても大きな欠落ではないかと私は考えています。タイプライタのキーの並びと同じで、複式簿記の開始に当たっても、何らかのエピソードがあるんではないかと私は想像しているんですが、会計史の観点から複式簿記誕生秘話のようなものが冒頭に置かれていれば、もっと印象がよくなったんではないか、という気がします。

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次に、マーク・リラ『リベラル再生宣言』(早川書房) です。著者は、もちろん、リベラルな政治史の研究者であり、米国コロンビア大学教授です。英語の原題は The Once and Future Liberal であり、2017年の出版です。軽く想像される通り、2016年の米国大統領選挙でトランプ大統領の当選を受けてのリベラルの側からの反省の書といえます。一言で言うと、2016年米国大統領選でのリベラルの敗因は、アイデンティティ・リベラリズムによる特定のグループへの特別の配慮を上から目線で恣意的に決定する市民視点の欠落である、と本書では指摘しています。それを、1930年代からのルーズベルト大統領によるニューディールに始まる時期、1980年代からのレーガン大統領による右派反動の政治期、そして、2016年のトランプ当選で新たなポピュリズム期、の3期に分けて論じています。先行きについては、第3部でリベラルが選挙で勝って巻き返すために、著者は市民の立場を強調しています。ただ、私には「市民」あるいは「市民の立場」という概念は大きな疑問です。というのは、市民の構成要員によるからです。米国では150年前の南北戦争後も、おそらく、1960-70年代くらいまで黒人は市民の構成要素ではなかったのではないでしょうか。さらに、その前の時代では女性は市民ではなかった可能性が高いと私は考えていますし、21世紀の現代でも、例えば、イスラム教徒の移民は市民に入れてもらえない場合がありそうな気がします。2008年の米国大統領選の際の当時の現職だったオバマ大統領に対する執拗な批判もその観点ではなかったでしょうか。ですから、私は従来から指摘しているように、リベラルないし左派というのは進歩主義で測るべきと考えています。私は圧倒的に進歩史観であり、多少のジグザグはあっても、生産性は伸び続け、そのため、財やサービスの希少性は低下し、従って、価格は低下し、その昔は金持ちしか利用可能性がなかった財やサービスが広く一般に開放される、という未来を思い描いています。その前の段階では市場において希少性に従った配分がなされるわけですから、それが平等の観点から不都合であれば、再分配を政府が行う必要があるわけです。それすら必要なく、市場に従った配分の下で決定され、平等性には配慮されていないままですから、自由を重視する右派と平等、あるいは、平等を実現するために進歩を旗印にする左派あるいはリベラル、という視点が重要ではないか、と専門がいながら私は考えています。

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次に、リチャード・ブリビエスカス『男たちよ、ウエストが気になり始めたら、進化論に訊け!』(インターシフト) です。著者は、米国イェール大学の人類学や進化生物学の研究者であり、上の表紙画像に見られる通り、英語の原題は Hoe Men Age であり、2016年の出版です。ということで、人類学と生物学の学際的な研究成果、ということであれば、とても聞こえはいいんですが、私の目から見て、進化論的な適応と経済社会的な適応がゴッチャになっている印象で、どこまで区別出来るのか出来ないのか、あるいは、本書のように渾然一体として論じるのが正しいのか、私には判りかねますが、少し疑問に思わないでもありません。加えて、確かに、WEIRD=West; Educated; Rich; and Democraric な男性の老化を論じているわけですが、女性との違いが小さすぎるような気がします。本書で強調されている免疫力の男女差がひいては寿命の差につながる可能性はまだしも、特に、日本語タイトルにしてしまったウェストのサイズは男女ともに年齢とともに太るわけであり、程度差はあるかもしれませんが、年齢とともにウェスト周りが太るのは男女間で方向は同じであるような気がします。そして、結局のところ最後は、オキシトシンとか、テストステロンとかのホルモン、というか、脳内分泌物質に行き着くわけで、それはそれでOKだと私は考えるんですが、同じか別か、進化論的・生物学的な適応や自然選択と経済社会的な適応について、さらに両者のインタラクティブな関係やフィードバックについて、また、男女の性差についても、もう少し掘り下げた議論が欲しかった気がします。最後に、p.127 図4-1 の出展論文の著者なんですが、Kunert とありますが、ウムラウトが付く Künert だと思います。少子化の関係で、私のような専門外のエコノミストでも見た記憶があり、編集の方にはもっと正確を期して欲しいと思います。

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次に、赤上裕幸『「もしもあの時」の社会学』(筑摩選書) です。2016年にオックスフォード辞書でポスト・トゥルースが選ばれて以来、フェイク・ニュースをはじめとして、真実ではない「なにか」をターゲットにした論考が少なくありませんが、本書では1997年出版のニーアル・ファーガソン教授の「仮想歴史」を題材にして、反実歴史、すなわち、事実として確定した過去に歴史に対して、そうでない反事実の歴史を仮定してその後の歴史の同行や流れを考察した社会学、というか、私のは歴史学にしか見えませんが、そういった人文科学分野の学問について紹介しています。典型的に反事実を考えるには戦争の勝者と敗者を逆にすればいいわけで、我が国のSF文学でも半村良の一連のシリーズや第2時世界大戦で日独が英米に勝利する仮定で歴史の流れを考えるSFに近い文学もあります。ただ、本書を読む限り、歴史の流れについての基礎的な認識が私と違っている気がします。すなわち、マルクス主義的な唯物史観に近い私は歴史の流れは、生産性の向上という流れが貫徹しており、基本的に進歩史観ですから、典型的には、コロンブスが米大陸を発見しなかったとしても、結局、誰かが発見していたであろうし、歴史の分岐以降、永遠に離れることはない、と考えているのに対して、本書の歴史観はどうもハッキリしません。私のようなホイッグ的なマルクス主義的な歴史観では、反事実な歴史の分岐があったとしても、例えば、第2時世界大戦で日独枢軸国側が勝利していたとしても、歴史はカギカッコ付きながら「修復」され、結局、自由と民主主義が勝利する方向に変わりなく、やや寄り道するとしても、世界は進歩を止めることはない、ということになります。その基礎となるのは経済の生産性であり、物的な生産性が高まれば、経済学的な希少性が低下し、そのため、価格が低下して、かつてはごく少数の人、すなわち金持ちしか利用可能性がなかった財・サービスでも多くの人に利用可能性が開け、必要に応じて配分されるシステム=共産主義が実現される、それも、血なまぐさい革命なしに経済の生産性向上がそれを実現する、ということになっており、その意味で、私の進歩史観はとても単純で判りやすいんですが、本書の歴史観は私にはやや不可解であった気がします。

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次に、ロバート H. ラティフ『フューチャー・ウォー』(新潮社) です。著者は米国空軍を少将まで務めて退役したエンジニアであり、英語の原題はそのまま Future War となっていて、2017年の出版です。日本語タイトルの副題が『米軍は戦争に勝てるのか?』となっていますし、宣伝文句ながらAIが戦争や戦闘行為をどのように変えるのか、といった視点が強調されていたりしますが、まあ、そういった私のような一般大衆が興味を持ちそうな論点も含めて、極めて幅広くかつバランスよく論じています。ただ、主要な論点は2点に絞られ、すなわち、兵器の技術的進歩と人間あるいは先頭の先頭に立つ可能性あるロボットなどの倫理性です。前者については、「サイバー攻撃」なんて言葉が広まっていますし、伝統的な戦闘行為だけでなく、電力や水道などのライフラインに対するサイバー・アタックも私のような専門外の一般大衆ですら想像できるような世の中になっています。20世紀半ばから現在まで飛行機が空軍の創設に導いたように、兵器の技術的進歩が軍事組織の再編成を伴いつつ進んでいます。核兵器の開発はその最たるものといえます。今週になって、米国のトランプ大統領が宇宙軍 (Space Force) の創設を明らかにしましたが、これも技術的な裏打ちあってこそのことではないでしょうか。もうひとつの倫理性については、時代の進歩とともに国際法も倫理面を重視するように進歩していることは確かなんですが、本書の用語を用いれば、国際法の縛りを受けない「国家未満」のグループがテロ行為に及ぶケースが増えており、なかなか終息の兆しもありません。ただし、本書のように戦闘行為ではなく、戦争を全面に押し出せば、戦争で倫理を問うのは私には無益なことに見えます。つまり、戦争そのものが倫理性に欠けるからです。例えば、銃に実弾を装填して人間に狙いを定めて引き金を引けば、戦争状態ではないという意味で、通常であれば明らかに殺人を試みた行為として、何らかの法律で裁かれる可能性がありますが、戦争においては敵兵に対して銃をぶっ放すのは、もちろん、その結果として死亡させるのも明らかに免責されます。そのような非倫理的な戦争において、捕虜の扱いとか、毒ガス使用などを倫理や道徳の観点からいくら論じても、かなり無益な行為のように私には思えるんですが、いかがでしょうか。

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最後に、宮部みゆき『宮部みゆき全一冊』(新潮社) です。昨年だか、今年だかに、作家活動30年を迎えた人気作家の未収録短編やインタビュー、書評を含むエッセイを幅広く収録するとともに、何と、ご本人による『ソロモンの偽証』の朗読CDも付属しています。私が借りた図書館は、もちろん、CDごと貸してくれました。確か、昨年の『この世の春』が30年記念の出版だったように記憶していますが、時代小説だったので、私のはあまりピンと来ませんでした。というのも、私はこの作者の作品は、もちろん、広範に読んでいるんですが、どうしても時代小説は後回しになって、現代ものが中心です。そして、宮部みゆきの最高傑作ということになると、直木賞受賞の『理由』や山本周五郎賞受賞の『火車』などが上げられる場合が多いんですが、倒叙ミステリながら私は『模倣犯』を推すことが多いような気もします。ただ、やっぱり、『模倣犯』を超えるとすれば、『ソロモンの偽証』も最高傑作の候補になろうか、という気もします。ということで、最高傑作が何かということはさて置いて、本書では、今までバラバラだったインタビューや鼎談などのナラティブを一挙に読めるという意味で貴重な存在ではないかと受け止めています。まだ、CD-ROMは聞いていませんので、何ともいえませんが、年末年始休みに聞いてみるのも楽しみです。

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