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2019年1月 5日 (土)

今週の読書は通常通りに計5冊!

今週は年末年始休みだったんですが、ついつい通常通りの読書をこなしてしまいました。他方、サンソムの「チューダー王朝弁護士シャードレイク」のシリーズもそこそこ年末年始に読んだりもしました。それは別にして、経済書などは以下の計5冊です。

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まず、横山和輝『日本史で学ぶ経済学』(東洋経済) です。著者は名古屋市立大学の研究者であり、専門は経済史です。本書は7章から成っており、前半の基礎編は3章、貨幣、インセンティブ、株式会社で、後半の応用編の4章は銀行危機、取引コスト、プラットフォーム、教育という構成です。ノッケからビットコインなどの仮想通貨と中世日本の宋銭の輸入の同一性について、あるいは、織田信長などの楽市楽座にプラットフォームをなぞらえたりと、かなり強引な立論を組み立てていたりしますし、第2章で「インセンティブ」を刺激と訳してしまっていて、通常の誘引と違うと感じたりしていますが、そのあたりの学術的な正確性を少し無視すれば、それなりに教養あふれる経済書、という気がしないでもありません。歴史を振り返ると、いくつかの経済制度などについては合理的な制度設計をすれば、自然と近代ないし現代的な経済学の応用に落ち着くといえますから、前近代的な不合理性を取り除き、近代合理主義の要素を取り入れれば、そのままに経済合理性が実現できる可能性が大きいと私は考えています。ですから、本書のように、無理やりにこじつけなくても、織田信長のように時代を画する政治家や大岡忠相のような能吏であれば、そこは自然と経済合理性と軌を一にする判断ができるのではないかというわけです。どこかの企業のように粉飾決算を急いだり、あるいは、それがもとで倒産したりするのは、何らかの不合理的な企業行動、経済活動の累積がありそうな気がします。その素材として歴史を持ち出すのは、秀逸というと大げさかもしれませんが、それなりに人口に膾炙していて一般大衆に馴染みある判りやすい比喩や暗喩を用いた本書のような解説本は、繰り返しになりますが、学術的な正確性を大目に見た上で、それなりに有益な読書だという気がします。ただ、歴史を題材に経済学を解説しているのか、逆に、経済学を基に歴史を概観しているのか、やや不分明な気もしたりします。

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次に、ジャック・アタリ『海の歴史』(プレジデント社) です。著者はご存じ、フランスを代表する文化人であり、世界的な知性でもあり、最近では現在のマクロン大統領を見出したことでも注目されています。私の記憶する限り、もともとがミッテラン大統領のころに影響力を持ち始めたんではないかと考えられますから、それなりに左翼的な思考が中心となっています。本書でも触れられている通り、マハンの『海上権力史論』の焼き直しではあるんですが、典型的な会場帝国の英米に比較して、独仏は陸上帝国であり、ロシアや中国はもっとそうですから、本書でも、数回に渡ってフランスは海上制覇を逃していると反省をしています。その観点は基本的に地政学的であり、戦争や安全保障に源流がありそうですが、同時に、海の経済的な側面も見逃してはいません。まず、海洋資源採掘の産業である漁業についてはチョッピリ取り上げられているだけです。そして、大きな比重が置かれているのは貨物と情報の伝達ないし輸送です。確かに、石油をはじめとするエネルギーや小麦などの穀物は船で海上輸送するのに圧倒的な優位があります。従って、本書でもコンテナ輸送と海底ケーブルの敷設にスポットが当てられています。前半⅓くらいは、本書のタイトルと同じで海の世界史をひも解き、それから後の後半、特に最後は海のさらなる活用と保護に関して、著者なりのいくつかの提言めいたリストで終わっていますが、ハッキリいって、とってもありきたりで何度も聞いたような事項が並べられているだけであり、この著者でなければ、多くの人は読み飛ばすような気がします。私はアタリの最新刊、ということで借りて読みましたが、それほどの内容ではありません。期待外れともいえますが、こんなもん、という気もします。読むとしても、大きな期待は禁物でしょう。

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次に、辛島デイヴィッド『Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち』(みすず書房) です。著者は早大の文学研究者であり、村上春樹文学が専門なんでしょうか。かなりの程度に学術書的な内容なんですが、タイトルからして私は少し誤解していました。つまり、その昔に『1Q84』でヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が注目されたように、文学では何らかの典故が見られるわけですから、b村上文学でコッソリと引用されたり、やや変形させて引用されていたり、もちろん、文学だけでなく音楽や美術などで村上作品で直接でなくとも触れられているような文学以外の他のジャンルの芸術などについて分析している学術書、というよりも、教養書のようなものを想像していましたが、違います。本書では、1080年代半ばのバブル経済初期に村上作品を英訳して米国に売り込もうと試み、結果的には、それに成功してノーベル文学賞候補にまで村上春樹をビッグにした出版社や翻訳家や編集者について取り上げています。すなわち、我が国文学のビッグスリーである谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、あるいは、安部公房を加えてビッグフォーに次ぐ村上を米国出版界に押し出そうとしたわけです。私のように母語で村上作品を読める読者には関係なさそうな気もしますし、それなりに舞台裏や黒子を表に出す作業ですから、どこまで期待していいのかは議論の分かれるところかもしれません。ただ、まだ現役の作家であり、作品を出し続けているわけで、それなりに、同時代人としてインタビューながら村上作品を米国市場に出すための翻訳や編集や出版の実態を現時点で明らかにしておくことは学術的には意味ありそうな気もします。他方で、ほとんどの典拠がインタビューですから、話者と聴取者の双方により脚色・潤色されたり、歪められたりした可能性もやや懸念されます。

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次に、M.R. オコナー『絶滅できない動物たち』(ダイヤモンド社) です。著者はジャーナリストであり、『ニューヨーカー』、『アトランティック』、『ウォール・ストリート・ジャーナル』、『フォーリン・ポリシー』などに寄稿した経験を持っているようです。英語の原題は Ressurection Science であり、直訳すれば「復活の科学」とでもなるんでしょうか。2015年の出版です。ということで、人類に起因した絶滅に瀕した生物をどのようにすればいいのか、遺伝子レベルで復活させるのか、それとも、動物園などにおける「飼育」のレベルではなく、いわゆる生物界におけるニッチを探して自然界に再生させるまでする必要があるのか、などなど、絶滅種やその危惧種に対する議論を取りまとめています。タンザニアのカエルやアフリカのサイ、いろんな本で見受けられるアメリカのリョコウバト、あるいは、思い切ってネアンデルタール人まで、さまざまな種が取り上げられています。かつて、ダイヤモンド教授の一連の書籍を読んだ際に、どの本だったかは忘れましたが、生物の多様性について飛行機のリベットになぞらえられてあり、どれかひとつが失われることによるバランスの議論がなされていたように記憶しています。私は遺伝子レベルで生物多様性を論じることに大きな意味は見いだせず、生物界のバランスの中で失われて仕方ない生物種もあるような気がしますが、他方で、リョコウバトのように人類の勝手な行動により失われる種については惜しいような気もします。経済学はモデルの美しさから物理学に親近感を覚え、歴史的な進歩を生物学的進化になぞらえて、やっぱり、生物学に親近感を覚えるんですが、生物学と経済学は物理学と違って、ともにやたらと多数の変数を含むモデルですから、モデルの数学的な分析だけからでは予測の正確性に欠ける場合があります。本書でも指摘されているように、気候変動と生物進化の関係も解き明かされつつあり、なかなか興味不快問題ながら解決の難しさも感じてしまいました。

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最後に、古市憲寿『平成くん、さようなら』(文藝春秋) です。著者は話題の社会学者であり、若者文化の分析で若くして名を成しています。第160回芥川賞候補に上げられています。なお、タイトルの「平成」は今年2019年4月限りで終わる年号ではなく、その年号の登場とともに生を受けた人物名であり、「ひとなり」とよむようです(p.7)。そして、やや年齢違いながら、著者ご本人や落合陽一などになぞらえられているような気もします。でも、この作品がフィクションの小説ですので、そのあたりは確実ではありません。そして、その主人公は著者の造形らしく、合理的でクールな人柄で、例えば、意図して合理性を失う行為である飲酒を忌避したりします。しかも、平静を代表する人物であるだけでなく、学術的な成果もあってテレビのコメンテータなどでも活躍して金銭的な不自由なく、漫画家の霊場としてビッグコンテンツ管理で、これまた金銭的な不自由ない女性と同棲しつつも、性的な接触を嫌ったりもします。そして、ここからが問題なのですが、この作品がとても小説的で現実と異なっているのは、日本で安楽死が合法化されているだけでなく、かなりの安楽死先進国となっている点であり、平成くんが安楽死を希望している、ということです。同棲しているパートナーは平成くんに安楽死を思いとどまらせようといろいろなことをします。それがストーリーを形成しているわけですが、時間の進みとともに、平成くんが安楽死を希望している理由、あるいは理由の一端が明らかにされたりしますが、ラストの数ページを読む限り、平成くんは安楽死したのではないか、と思わせる締めくくりなんだろうと私は受け止めています。今上天皇の退位と年号としての平成の終了に関しては、大きなリンクはないと考えるべきです。

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