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2019年1月31日 (木)

球春到来、プロ野球が明日からキャンプイン!!

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いよいよ球春到来。
明日からプロ野球12球団がキャンプインします。我が阪神タイガースは沖縄宜野座で始動です。昨年はリーグ最下位と落ちるところまで落ちましたし、今年の年明け早々に原口選手のがん闘病のニュースも伝えられました。他方で、矢野新監督には特段の感想はないものの、新加入の外国人スラッガーであるマルテ内野手やジョンソン投手などがどこまで活躍してくれるか、とても楽しみでもある一方で、ここ数年の外国人選手の実績を考慮すると不安もあります。ドラフト新加入も含めて、若手はどこまで伸びているんでしょうか。タイガース・ファンのご同輩とともに、私も微力ながら精一杯応援したいと思います。
なお、上の画像は我が家で購読している朝日新聞のサイトから引用しています。

今年こそ優勝目指して、
がんばれタイガース!

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12月の鉱工業生産指数(IIP)は小幅に減産!

本日、経済産業省から昨年2018年12月の鉱工業生産指数(IIP)が公表されています。いずれも11月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.1%の減産を示しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

18年12月の鉱工業生産、0.1%低下 輸出向け不振など響く
経済産業省が31日発表した2018年12月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比0.1%低下の104.7だった。一部業種で輸出向けが振るわなかった。低下は2カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.3%低下)は上回った。
経産省は生産の基調判断を「緩やかな持ち直し」で維持した。
業種別では、15業種中6業種で低下した。半導体製造装置、フラットパネル・ディスプレイ製造装置などの生産用機械工業が低下したほか、半導体メモリー、カメラやスマートフォン(スマホ)に組み込む撮影用の素子などの電子部品・デバイス工業が低下した。化粧水や乳液などの化学工業も振るわなかった。
出荷指数は0.3%上昇の103.6と2カ月ぶりに上昇した。自動車、一般用蒸気タービンなどが寄与した。
在庫指数は1.0%上昇の102.4だった。電気・情報通信機械工業など10業種が上昇した。
製造工業生産予測調査によると、1月は0.1%低下、2月は2.6%の上昇だった。1月は乗用車など輸送機械工業の低下が見込まれている。
同時に発表した18年10~12月期の鉱工業生産指数は7~9月期比で1.9%増の105.1だった。7~9月期の災害による影響の反動などが寄与した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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昨年2018年12月の鉱工業生産は、11月に続いて2か月連続の減産を示しました。引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲0.4%の減産を見込んでいましたので、これに比べると減産幅は小さいということになりますが、製造工業生産予測調査によれば今年2019年1月も▲0.1%の減産が予想されていますので、3か月連続で減産の可能性が高くなっています。ただ、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を「緩やかに持ち直している」で据え置いています。でも、このブログで少し前から指摘している通り、2月上旬の来週は中華圏では春節の大型連休ですから生産統計がかく乱される恐れがあり、場合によっては2月生産も減産となる可能性があります。他方、2018年10~12月期の四半期ベースでは10月統計で+2.9%の大きな増産により、いわゆるゲタをはいた形になって、前期比で+1.9%の増産を記録しています。12月統計に戻ると、業種別では、汎用・業務用機械工業や自動車工業や電気・情報通信機械工業が前月比で増産を示した一方で、生産用機械工業や化学工業(除く無機・有機化学工業・医薬品)や電子部品・デバイス工業が減産となっています。海外要因としては米中間の貿易摩擦があり、国内景気も力強さに欠ける中で、生産はやや頭打ちとなっていますが、少なくとも、ダボス会議で示された国際通貨基金「世界経済見通し改定」でも、世界経済の成長率は従来予測よりは低下する可能性が高いながら、それでも+3%台半ばの堅調な成長が続くと見込まれており、世界経済の成長を背景に、先行きの我が国の生産は緩やかな増産に回帰するものと考えるべきです。

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12月のデータが利用可能となり、四半期データが更新されましたので、上にある通り、在庫循環図を書いてみました。久し振りだという気がします。上向きピンクの矢印の2013年1~3月期から始まって、直近の2018年10~12月期の上向き黄緑矢印まで、ほぼほぼ1周半の回転を見せていて、直近四半期である2018年10~12月期にはカーテシアン座標の第1象限に戻りました。内閣府のサイトにアップされている月例経済報告の付属資料に従えば、上のグラフの赤い点線で示した45度線が景気循環の転換点であり、現在のように第1象限のラインを左上から右下に越え、さらに第4象限に突っ込むと、「意図せざる在庫増」から「在庫調整・在庫減らし局面」に入ったと見なされて、景気の山を越えた可能性が示唆されます。この在庫循環図から考えるまでもなく、景気の現状は拡張局面の後半戦に入っていることは明らかであろうと私は考えています。そして、たぶん、あくまでたぶんですが、景気拡大の前半期と考えているエコノミストはとても少ない一方で、後半期に入っていると考えるエコノミストは、私も含めて、それなりにいそうな気もします。

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2019年1月30日 (水)

4か月連続で悪化を示す消費者態度指数とプラスが続く商業販売統計!

本日、内閣府から1月の消費者態度指数が、また、経済産業省から昨年2018年12月の商業販売統計が、それぞれ公表されています。消費者態度指数は前月から▲0.8ポイント低下して41.9を記録し、まだ反転の兆しも見えず4か月連続で悪化しています。商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.3%増の14兆1260億円、季節調整済み指数の前月比は+0.9%増を示しています。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

消費者態度指数、4カ月連続悪化 1月
内閣府が30日発表した1月の消費動向調査で、消費者心理を表す消費者態度指数(2人以上世帯、季節調整値)は41.9と、前月から0.8ポイント低下した。低下は4カ月連続。基調判断は「弱い動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する「暮らし向き」「収入の増え方」「雇用環境」「耐久消費財の買い時判断」のすべての指標が悪化した。世界経済の先行きが不透明なことを受け、消費に慎重になりつつあるとみられる。
18年の小売販売額1.7%増、2年連続増加 石油製品の価格上昇で
経済産業省が30日発表した商業動態統計(速報)によると、2018年の小売業販売額は前年比1.7%増の144兆9620億円だった。2年連続で前年実績を上回った。原油高による石油製品の価格上昇が販売額を押し上げた。
大型小売店の販売額は、百貨店とスーパーの合計で19兆5998億円と前年と横ばいだった。コンビニエンスストアの販売額は11兆9780億円と2.0%増だった。
18年12月単月の小売業販売額は14兆1260億円と前年同月比1.3%増加した。自動車小売業は軽自動車や輸入車の販売が好調で3.7%増えた。燃料小売業は石油製品の価格上昇で4.2%増えた。経産省は小売業の基調判断を「緩やかに持ち直している」に据え置いた。
12月の百貨店とスーパーの合計は0.5%減の2兆825億円で、既存店ベースでは1.0%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.8%増の1兆566億円だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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消費者態度指数を構成するコンポーネントを前月差でみると、すべての項目で前月2018年12月から低下を示しており、「雇用環境」が#x25B2;1.5ポイント低下、「耐久消費財の買い時判断」が#x25B2;1.1ポイント低下、「暮らし向き」が#x25B2;0.5ポイント低下、「収入の増え方」が#x25B2;0.3ポイント低下、とそれぞれなっています。特に「雇用環境」の低下幅が大きくなっています。なお、消費者態度指数の直近のピークは2017年11月から2018年1月まで3か月連続で記録した44.6なんですが、この1年間、すなわち、2018年1月から直近で統計の利用可能な2019年1月までの1年間12か月の指数の水準の差をコンポーネントごとに累積で見ると、「雇用環境」が#x25B2;5.2ポイント低下、「暮らし向き」が#x25B2;2.3ポイント低下、「耐久消費財の買い時判断」が#x25B2;1.9ポイント低下、「収入の増え方」が#x25B2;1.4ポイント低下、となります。やや不思議なんですが、「雇用環境」が最も低下幅大きいながら、「収入の増え方」の以下幅は小さくなっています。雇用者報酬以外の収入となれば、株で収入アップの人が多いのかもしれませんが、やや謎です。消費者マインドがこれだけ悪化しているにもかかわらず、その中でも収入に関するマインドがそれほど悪化してないということで、消費が底堅く推移している可能性もあります。そして、消費者態度指数全体を見ると、2018年1月から7月の前半6か月累積で#x25B2;1.1ポイント低下した一方で、2018年7月から2019年1月の後半6か月で#x25B2;1.6ポイント低下ですから、足元の直近時点に向けて消費者マインドの悪化がやや加速しているのも事実です。私自身は、単純に、このまま景気後退に入るとは考えていませんし、少なくとも、10月からの消費税率引き上げ前には駆け込み需要が発生するのは明らかです。もちろん、駆け込み需要の反動減からの動向が懸念されるところ、かなり手厚い負担軽減措置が取られているので、決して悲観はしていませんが、消費税率の引き上げが消費やひいては景気動向のかく乱要因であることは確かです。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのまま、それぞれプロットしています。影を付けた期間は消費者態度指数のグラフと同じく景気後退期です。ということで、小売販売額については、ヘッドラインの季節調整していない原系列の統計での前年同月比ではプラスを1年超で続けているものの、これは名目の売り上げであり、昨年2018年12月統計で+0.7%に達しているコア消費者物価(CPI)上昇率を考え合わせれば、+1.3%の小売業販売額の伸びの半分は物価上昇によるもの、という感じがしなくもなく、逆に、今後、国際商品市況における石油価格の低下とともに物価上昇率が低下し始めると、小売売上額も同時に増加率が減速しそうな気もします。加えて、今年2019年10月の消費税率の引き上げが消費のかく乱要因であることは確実です。消費税率引き上げ直前の駆け込み需要とその後の反動減の大きさは、財政政策をはじめとして各種の、というか手厚過ぎるくらいの措置が講じられているとはいえ、何とも予想しがたいところです。

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2019年1月29日 (火)

リクルートジョブズによる12月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

今週金曜日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる非正規雇用の時給調査、すなわち、昨年2018年12月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を簡単に見ておきたいと思います。

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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の12月度平均時給は前年同月より+2.7%、28円増加の1,058円となり、2006年1月の調査開始以来3か月連続で過去最高を更新しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+47円、増減率+4.4%)、「製造・物流・清掃系」(+33円、+3.3%)、 「販売・サービス系」(+31円、+3.1%) 、「フード系」(+22円、+2.2%)など全職種で前年同月比プラス、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比・前月比ともプラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、直近の2018年9~10月は前年同月比でマイナスを続けたものの、11月統計では前年同月比プラスに転じて、12月統計でも前年同月より14円増加、増減率+0.9%を示しています。職種別に詳しく見ると、「営業・販売・サービス系」(前年同月比増減額▲7円、増減率▲0.5%)で前年同月から減少したものの、ほかの4職種はすべて増加を示しており、「医療介護・教育系」(+37円、+2.5%)、「オフィスワーク系」(+31円、+2.0%)、「IT・技術系」(+28円、+1.3%) 、「クリエイティブ系」(+8円、+0.4%)となっています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣の非正規職員の雇用も堅調と私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。

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2019年1月28日 (月)

企業向けサービス価格指数(SPPI)は引き続き+1%超の上昇率が続く!

本日、日銀から昨年2018年12月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て前月からややプラス幅を縮小しつつも7か月連続の+1%以上の+1.1%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

18年12月の企業向けサービス価格、前年比1.1%上昇 広告の伸びが縮小
日銀が28日発表した2018年12月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は105.4と、前年同月比1.1%上昇した。上昇は66カ月連続。ただ、伸び率は11月確報から0.1ポイント低下した。クリスマス商戦向けのテレビ広告などが前年に比べ弱く、広告がプラス幅を縮めた。原油価格の下落などで運輸・郵便がプラス幅を縮めたことも伸び率を鈍化させた。
人手不足を背景とした人件費の上昇圧力は引き続き強い。18年通年の前年比の伸び率は1.0%と5年連続のプラスだった。今後も高めの伸びが続くかについて、日銀は「今春の賃金交渉の行方や多くのサービス価格改定が行われる4月以降の動きに注目したい」(調査統計局)としている。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは83品目、下落は25品目で、上昇から下落を引いた差は58品目となり、差し引きでのプラスは25カ月連続だった。
12月速報値の公表にあたり、日銀は再集計された毎月勤労統計を反映した。「毎月勤労統計の再集計値が企業向けサービス価格指数に与える影響は全体としてみれば極めて小さく軽微」(調査統計局)という。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は昨年2018年6月から12月統計まで7か月連続で+1%に達しています。その直前の5月の+0.9%の前の4月も+1.0%でしたので、今年度に入ってから、ほぼほぼ+1%に達する水準をキープしていることになります。ただし、消費者物価指数(CPI)ほどではないにしても、SPPIについても、やっぱり、ある程度、エネルギー価格の動向に依存して決まる点は否定できません。ただ、CPIよりはSPPIの方がより人手不足による賃金動向に敏感であろうことは容易に想像できます。本日公表の昨年2018年12月統計について少し詳しく見ると、前年同月比で見て、運輸・郵便は11月統計の+2.2%から12月には+1.9%に縮小しましたが、これは明らかにエネルギー価格の影響が現れていると考えるべきであり、先行きにおいても、国際商品市況における石油価格の下落とともに上昇幅は縮小するものと私は予想しています。加えて、引用した記事にもある通り、12月統計で上昇幅を縮小したのが景気に敏感な広告です。11月の+2.7%から12月には+0.1%に大きく低下しています。特に、テレビ広告とインターネット広告は11月のプラスから12月にはマイナスに転じています。最後に、相変わらず、人手不足の影響は、土木建築サービス+3.3%、警備+3.8%、労働者派遣サービス+2.7%などのを含む大類別でいえば諸サービス+1.3%に現れています。 これも引用した記事に見られる通り、4月の価格改定や春闘などにおける賃金交渉の動向が先行き物価にどのような影響を及ぼすか注目です。

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2019年1月27日 (日)

関東は冬晴れの晴天続きで空気はカラカラに乾燥!

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昨日今日と北西の季節風が強いお天気でした。昨日は、自転車で川越街道を北西に進もうとすると、ものすごい風の強さを実感しました。夜のテレビで大坂なおみ選手の全豪お^ぷん結晶ごのインタビューを見て、メルボルンは暑いんだと改めて気付かされてしまいました。東京、というか、関東はいいお天気が続き、空気は乾燥してカラカラです。最初の画像は日本気象協会のサイトから引用しています。

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2019年1月26日 (土)

今週の読書は経済書や教養書など計6冊の通常ペース!

今週の読書は貧困論や不平等論などの専門家であるアトキンソン教授の経済書をはじめとして、ほかにも経済書・ビジネス書や教養書など計6冊の通常ペースです。ただし、小説は読んでいません。今週はすでに図書館回りを終えており、私の好きな小説家の吉田修一の最新作など、これまた、通常ペースで数冊を借りてきています。

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まず、アンソニー B. アトキンソン『福祉国家論』(晃洋書房) です。著者は英国の経済学者であり、不平等論や貧困論などの碩学です。2017年に物故しています。本書の英語の原題は Incomes and the Welfare State であり、1995年の出版です。まず、1995年の出版であり、かつ、講演などのスピーチから起こした原稿が少なからず含まれているのには驚きますが、必ずしも現時点で無効な議論があるわけでもなく、十分な一般性を持って受け入れられる結論が提示されていると考えられます。もちろん、1942年ノベヴァレジ報告から50年とか、現下の大問題はロシアや東欧の資本主義への移行問題、などと書かれていると、ついつい読書意欲が削がれる思いをするわけでうが、それでも、所得の不平等や貧困問題、さらに、福祉国家論などは今でも十分に通用する議論が展開されています。特に、日本語タイトルに凝縮されている福祉国家論については、福地国家のさまざまな政策が市場経済に決していい影響を及ぼさない、例えば、失業給付が自然失業率を高めるとか、最低賃金の上昇が失業を生み出すとか、賦課方式の年金が資本蓄積を低下させるとか、といった右派エコノミストからの理論的かつ実証的な論考に対して、それでも著者は福祉国家を擁護する論陣を張っています。ただ、論文や講演録の寄せ集めというイメージはぬぐえず、精粗まちまちの議論が展開されています。英国と欧州を大賞にした論考であり、米国ですら参考程度の扱いであり、我が日本はまったく分析の対象外である点も残念です。3部構成となっていて、第Ⅱ部の失業分析ではモデルを数式で表現して解析的に分析している一方で、延々と言葉で説明を繰り返している部分も少なくありません。ただ、ユニバーサルな給付を重視し、ターゲティング政策については批判的である点については、私の見方と一致します。最後に、この著者の本であれば、本書よりも、やっぱり、『21世紀の不平等』の方がオススメです。私のこのブログの読書感想文では、ちょうど3年前の2016年1月30日に取り上げています。ご参考まで。最後の最後に、どうでもいいことながら、上の表紙画像に見える4人はどういった方々なんでしょうか。

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次に、清水勝彦『機会損失』(東洋経済) です。著者は慶應義塾大学ビジネススクールの教授であり、今までにも経営書を何冊か出版しています。私も読んだような記憶がありますが、ちゃんと覚えているのは『あなたの会社が理不尽な理由』くらいです。本書は機会損失とのタイトルですが、あくまでキーワードとしての機会損失であり、機会損失そのものを深く掘り下げているわけではなく、経営戦略一般を広く浅く取り上げています。ついつい見過ごされがちな機会費用なんですが、経営学では、何かの決定を行うに際して、トレードオフのように犠牲になるもう一方の損失、ないしコストを指します。希少性高い、すなわち、平たくいえば、限りある経営資源を何に投入するか、を決めれば、その経営資源を投入しなかった先が他方に残るわけですから、それが機会損失となります。ですから、ホントのネットのリターンは、実行するプロジェクトのリターンから断念したプロジェクトのリターンを差し引いた額になるわけで、経済学では「限界的」という用語を用いると思いますが、本書では登場しません。そして、本書でも強調しているように、マイナスを回避するバイアスが強いプロスペクト理論からして、チャンスをみすみす逃す経営も大いにありそうです。本書では、捨てられない、止められないでズルズルと経営資源をつぎ込むプロジェクトを続けるコストを「エスカレーション・オブ・コミットメント」と呼んでいますが、経済学ではあからさまに「ゾンビ」といったりもします。ただ、本書では、このエスカレーション・オブ・コミットメントなり、ゾンビなりに対応する概念として、早く止めすぎる機会損失も指摘していますが、これはどちらも機会損失になるとはいうものの、結果論といわれてもしようがないような気もします。もっとも、私が地方大学に出向した際に感じたところですが、経済学よりも経営学の方が格段に実務に近いですから、経営学の方が結果論、というか、結果に執着する傾向は強そうな印象を持った記憶があります。でも、何につけ、上下・左右どちらでも言い逃れられるのが経済学や経営学の弱点でもあり、いいところかもしれません。最後に、オポチュニティ・コストとは、経済学では「機会費用」の用語が一般的なんですが、経営学では「機会損失」になるのか、とミョーなところに感心したりもしました。

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次に、ジャコモ・コルネオ『よりよき世界へ』(岩波書店) です。著者はイタリア出身で、現在はベルリン自由大学教授で公共経済学科長を務めています。ドイツ語の原題は Bessere Welt であり、日本語タイトルはほぼほぼ直訳のようです。2014年の出版です。本書で著者は、資本主義の浪費、不公正、疎外の3点として上げており、第1章のプロローグと第12章のエピローグでは父と娘の会話として問題意識の発見と取りまとめに当たっています。本書では、資本主義の特徴として生産手段の私有制と市場による資源配分と所得分配を前提とし、古典古代の哲学者であるプラトンの「国家」や中世トマス・モアの「ユートピア」から始まって、クロポトキンの無政府共産主義、もちろん、マルクス-エンゲルスの社会主義と共産主義、ステークホルダーによる株式市場社会主義などさまざまな代替的システムとともに、資本主義下での改良策としてのベーシックインカムなどを考慮の対象として、いろんな思考実験をしています。あるいは、ネタバレっぽいんですが、特徴的な結論だけを簡単に取りまとめると、資本主義の定義とされた生産手段の私有制と市場による配分と分配に対立するものとして、生産手段の国有ないし公有と計画経済を特徴とするマルクス的な社会主義については、生産手段の公有は否定され、計画経済もスコアが低くなっています。他の代替システムはもっとスコアが低いんですが、少なくとも、繰り返しになりますが、生産手段の国有ないし公有は明確に否定的で、しかも、株式会社社会主義においても企業活動の目的は利潤の最大化とすべき、と結論していますので、現行の資本主義と大きく異ならないシステムが、やっぱり、推奨されるような雰囲気があります。その代わり、資源配分は市場メカニズムが効率的であるとしても、所得分配の改善のため、ベーシックインカムと中央ないし地方政府が運営するソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)が推奨されています。ただ、本書の最初の方では経済システムと民主主義について、それなりの考慮がなされていたにもかかわらず、真ん中あたりから忘れられた印象があり、そのために冒頭の3点目の疎外の問題がほとんど取り上げられていないと見たのは、私だけでしょうか。最近時点で欧米におけるポピュリズムの問題がクローズアップされてきており、本書の執筆時点を考慮すると重点ではなかった可能性もあるとはいえ、ある意味で残念です。

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次に、アニー・デューク『確率思考』(日経BP社) です。著者は米国人で、プロのポーカー・プレーヤーとして400万ドルを稼いだと豪語し、現在は引退してコンサル活動をしているということです。英語の原題は Thinking in Bets であり、昨年2018年の出版です。日本語タイトルは、むしろ、原題を活かせば「賭け型思考」というカンジなんではないかという気がします。賭けの大きな特徴は2つあって、ひとつは本書でも強調されていますが、ザロサムであるという点です。阪神-巨人戦で阪神が勝てば巨人は負けなわけです。もうひとつは、本書では明示的には示されていませんが、大数の法則が必ずしも成り立たない小数の試行結果だということです。サイコロの目が出る事前確率はそれぞれに⅙なんですが、事後的には、出た目そのものの確率が1である一方で、出なかった目はゼロなわけです。ですから、本書でも明らかにされているように、確率20%の結果が実現することもあるわけですが、それで賭けの勝負するのは決して賢明ではない、ということになります。ただ、人間は自分に都合よく考えるバイアスがあり、成功は自分の能力やスキルに起因し、失敗は運が悪かった、と考える傾向がありますから、オープンに他者の目を取り入れて、客観的な判断を下し、説明責任を全うする必要があります。経済学では、その昔のシカゴ大学ナイト教授のように、確率が判っているリスクと判らない不確実性を区別しますが、大数の法則を無視する、というか、大数の法則に達しない段階での意思決定をせねばならないギャンブル的な思考では、その区別はありません。ということで、カーネンマン教授らのプロスペクト理論も登場すれば、セイラー教授の名は出なかったような気もしますが、実験経済学的な思考もふんだんに盛り込まれており、「意思決定はギャンブルである」というフォーマルにはみんながなかなか認めたがらない事実に関して、あけっぴろげに論じています。本書では明示的に示してはいませんが、「結婚の意思決定はギャンブルである」というのは、多くの既婚者が身にしみて感じていることではないでしょうか。

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次に、大野哲弥『通信の世紀』(新潮選書) です。著者はKDD(国際電信電話株式会社)のご出身のようです。通信について、暗号通信とともに、19世紀半ばの明治維新期から20世紀いっぱいくらいまでのインターネット時代を概観しています。通信の戦略的な面とともに、技術的なテクノロジーも判りやすく解説を加えています。明治維新から、いわゆる列強の帝国主義時代に通信が技術的にも大いに進歩し、例えば、岩倉使節団が米国サンフランシスコに到着したとの第一報は、米国を西海岸から東海岸に横断して、大西洋を渡って欧州経由で長崎にもたらされるまで1日かかったが、長崎から東京まで10日を要した、などは通信の技術的進歩をよく表しているような気がします。暗号については、日米開戦間際の最後通牒の受け渡しが取り上げられていて、14分割の電報をタイピストを使わずに書記官がタイプして野村大使がハル米国国務長官に渡したのが真珠湾攻撃開始後だった、という失態ですが、現在では私のような下っ端管理職でもパソコンが机にあって、キーボードを使ったタイピングに慣れている時代と違い、おエラい外交官がタイプするのは時間がかかったのは理解できるところです。分割電報が全部そろうまで何もしないというのはとてもお役所的で、私も、図書館で借りた本を返却する際、すべてそろうまで平然と突っ立ったままで、何もしない図書館アルバイトが多いのは実感で知っています。まあ、図書館が指定管理者制度になって、図書館員の質が大きく下がったのは周知の事実ではあります。戦後は、同軸ケーブルと衛星通信が高度成長を支え、サービスとしては、電報からテレックス、さらに電話に通信の主流が移り変わり、今ではインターネットによる通信が大きな割合を締めているのは周知の事実であろうと思います。本書では必ずしも定量的に明らかではないんですが、通信トラフィックも劇的に増加しているのは確実です。通信の内容も、電報にせよ、テレックスにせよ、電話にせよ、長らくテキストだったのが、電話から音声になり、インターネット時代は画像ないし今では動画になっています。ついつい、KDDの社史の方に流れて、そういったあたりをカバーしきれなかったのが本書の弱点かもしれません。

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最後に、井手英策『幸福の増税論』(岩波新書) です。著者は慶應義塾大学の経済学の研究者であり、専門は財政学や公共経済学です。従来から、増税に対する我が国国民の意識として、政府の歳出に対する信頼感が薄く、社会保障でユニバーサルに国民に給付されるのではなく、公共投資を通じて国民に還元される「土建国家」であるために、その財源として徴収される税金に対する忌避感覚が強い、と主張していて、私も大いに合意していたんですが、本書ではかなりトーンが違ってきている気がします。というのは、日本のリベラルの価値観を自由、公正、連帯の3点に凝縮し、国民全員に利益となるベーシック・サービスによるニーズの見たしあいを重視し、それを公共財として提供する財源としての税金を増税することに力点を置いています。その上で、累進課税による従来型の所得再分配ではなく、繰り返しになりますが、ベーシック・サービスの供給という、何とも、実態のハッキリしない財政需要を想定します。すなわり、p.83の表現を借りれば、「社会のメンバーに共通するニーズを探しだし、そのために必要となる財源をいなで負担しあう道を模索しなければならない」ということになります。私はそこまでして財政支出を拡大し、そして、その財源を増徴する必要は感じません。ムリに財政をユニバーサルにし、財政支出をして国民の連帯や絆の手段とするのは政策割当を間違っているとしか感じられません。国民間の連帯強化には財政政策ではなく、別の政策が割り当てられるべきです。担税感をして国民の連帯感情の基礎にするのは私は同意できません。本書では、消費税の負担軽減措置については否定的な見方を示しており、私が同意する部分も決して小さくはないんですが、少し従来からは違う方向に舵を切った気がしてなりません。

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2019年1月25日 (金)

マクロミルによる花粉症対策のアンケート調査結果やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、先週1月15日にマクロミルから花粉症対策のアンケート調査結果が明らかにされています。例年花粉症に悩まされている私もそろそろ対策を始めようと考えていたところなので、ついつい目に入ってしまいました。まず、マクロミルのサイトから調査結果のTOPICSを3点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • スギ花粉対策、3~4割が飛散前から対策開始
  • 今年、対策を強化する人の理由は「2019年の花粉飛散量が多そう」。強化するものは「マスク」が1位
  • スギ花粉対策の平均予算は4,550円

なかなか的確に取りまとめられている印象です。何となく、週末前の気軽な雰囲気で、いつもの通り、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、マクロミルのサイトから 2019年のスギ花粉症対策を始めるタイミング のグラフを引用すると上の通りです。昨年2018年12月12日に明らかにされている日本気象協会の「2019年 春の花粉飛散予測 (第2報)」によれば、今シーズンの花粉の飛散は広い範囲で前シーズンより少なめだが、例年よりやや多い、とのことで、早いエリアでは2月中旬からスギ花粉の飛散が開始すると見込まれています。俗にいうように、建国記念日からゴールデンウィークまで、というカンジかもしれません。花粉症対策については、上のグラフで明らかなように、各エリアにおいても3割から4割弱の人が2月前半以前からスギ花粉症対策を始めると回答しています。グラフは引用しませんが、別の質問の回答から、スギ花粉飛散シーズンにあらわれる花粉症の症状は、多い順に「鼻水」93%、「くしゃみ」87%、「眼のかゆみ」83%で、もっともつらい症状は、上位から「鼻水」41%、「鼻づまり」23%、「眼のかゆみ」21%の順となっています。

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次に、今シーズンは昨年よりも花粉症対策を「強化する」という人は17%いるようなんですが、その中身について、マクロミルのサイトから 強化する花粉症対策 上位5位 のグラフを引用すると上の通りです。まあ、考えられる選択肢は限定されるんですが、やっぱり、マスクが直接的に効きそうな気もします。アンケート結果では、スギ花粉対策の平均予算は4,550円と締めくくっています。こういったアンケート結果に接すると、いよいよ今年も花粉シーズンの幕開けか、という気がして身が引き締まる思いです。

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2019年1月24日 (木)

オクスファムのリポート Public good or private wealth? やいかに?

ダボス会議が開幕し、いろんな個人や団体などからプレゼンが行われていますが、私が注目したのは昨年10月に日本法人を解散したオクスファムのプレゼンです。リポートとして Public good or private wealth? と題してアップロードされています。エンドノートの注を入れて100ページを超え、注なしでも70ページを超えますので、すべてを読みこなしたわけではありませんが、リポートの冒頭では、現在の政策のうちでも税制が不公平感あるとして、消費税などで国民から税収を徴収しては法人税引き下げの財源としている、といった主張の基礎となるグラフを引用しておきたいと思います。

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まず、リポート p.13 Figure 1: The breakdown of tax revenues を引用すると上の通りです。税収全体に占める比率で見て、法人税収が11%、資産税がわずかに4%、それに対して所得税や給与税や消費税が大きな割合を占めているのが見て取れます。そして、軽課されている資産税から溜め込んだ富裕層の資産がオフショアに7.6兆ドルある、といったところです。確かに、課税理論として、海外逃避というか、逃げ足の早い資産や資本は止むなく軽課にとどめ、重課されても海外に逃げられない労働などから徴税する、というのは理由がないわけではないんでしょうが、それでも理不尽なものを感じるのは私だけではないと思います。

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次に、リポート p.22 Figure 2: Tax revenue change 2007–2015 (%GDP) を引用すると上の通りです。そして、最近10年近くにおける課税措置の結果として、法人税は負担軽減が図られ、給与課税や消費税などの家計への課税負担が強化されています。今年2019年10月からは我が国でも、まさにこの通りの消費税率引き上げが実施されます。2014年4月の8%への消費税率引き上げでは大きな消費へのショックがあり、いまだにデフレから脱却できていません。今年の10%への消費税率引き上げでは、果たして、個人消費はどうなるんでしょうか?

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2019年1月23日 (水)

貿易赤字続く貿易統計とまたまた物価見通しを引き下げた日銀「展望リポート」

本日、財務省から昨年2018年12月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲3.8%減の7兆240億円、輸入額は+1.9%増の7兆793億円、差引き貿易収支は▲553億円の赤字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

18年12月の貿易収支、3カ月連続赤字 中国向け輸出が大幅減
財務省が23日発表した2018年12月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は553億円の赤字だった。赤字は3カ月連続。中国向け輸出が大幅に落ち込んだうえ、液化天然ガス(LNG)などの輸入が増加した。
輸出額は前年同月比3.8%減の7兆240億円だった。減少は3カ月ぶり。減少率は16年10月(10.3%減)以来の大きさだった。中国向け半導体等製造装置や通信機が大幅減となり、中国向け輸出は7.0%減と3カ月ぶりに減少した。
輸入額は1.9%増の7兆793億円。9カ月連続で増加した。オーストラリアからのLNGや米国からの航空機類が伸びた。一方、中国からの輸入は6.4%減と6カ月ぶりに減少した。
対米国の貿易収支は5678億円の黒字で黒字額は6カ月連続で減少した。輸出は1.6%増、輸入は23.9%増だった。
18年12月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=113円12銭。前年同月に比べて0.6%円安・ドル高に振れた。
併せて発表した2018年の貿易収支は1兆2033億円の赤字だった。通年ベースの貿易赤字は3年ぶり。輸出入ともに増加したが、原油価格の上昇を背景に輸入の増加が上回った。輸出入ともに比較可能な1979年以降で過去2番目の高水準だった。
輸出額は前年比4.1%増の81兆4866億円だった。増加は2年連続。アラブ首長国連邦(UAE)向け自動車や中国向け原動機が伸びた。輸入額は9.7%増の82兆6899億円と2年連続で増加した。サウジアラビアからの原粗油やオーストラリアからのLNGが増加した。
対米国の貿易収支は6兆4548億円の黒字だった。黒字額は8.1%減と2年ぶりに減少した。輸出額は2.3%増、輸入額は11.4%増加した。
対アジアの貿易収支は5兆5446億円の黒字で黒字額は5.9%減少した。輸出額と輸入額はともに過去最大だった。対中国の貿易収支は3兆2843億円の赤字で、3年連続で赤字幅を縮小した。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは▲295億円の貿易赤字でしたので、3か月連続の貿易赤字そのものは大きなサプライズではありません。輸入のサイドでピークは過ぎたとはいえ、国際商品市況における石油価格の動向から原油や天然ガスなどの輸入額が大きく膨らんでいることは確かです。他方で、現下の景気情勢とは少し齟齬あるながら、景気が停滞に向かっている先進国への輸出が厳守し、他方で、景気が上向いている中国への輸出が減少を示しています。このあたりはマイクロに分析する必要あるものの、現時点ではマクロ・エコノミストにはパズルですが、エコノミストの間ではアジア向けで半導体製造装置などの輸出減少が全体を下押ししたとの見方もあります。また、メディアの報道では季節調整していない原系列の統計で見ていますから、3か月連続の貿易赤字ということになっていますが、上のグラフにも見られるように、よりトレンドに沿った季節調整済の系列では昨年2018年は後半7月から12月まで6か月連続の赤字を示しています。国際商品市況における石油価格の動向に整合的に、10月のピークまで輸入額が増加を続けた一方で、輸出が横ばい傾向を示しています。昨日の国際通貨基金(IMF)のリポートにも示されている通り、これは傾向としては世界的な景気動向にほぼ整合的だと私は受け止めています。

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輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、現時点での謎は中国の景気が上向いているにもかかわらず、我が国からの輸出が減少を続けている点です。上野グラフにも見られる通り、OECDの先行指数から見て、中国の景気は上昇に転じつつあるように見えるんですが、我が国の輸出は一向に上向く気配もありません。年が明けて、1~2月には中華圏の春節が2月5日ですから、貿易統計は大きく撹乱される可能性があり、さらに先行きトレンドが見えにくくなるような気もします。

  実質GDP消費者物価指数
(除く生鮮食品)
 
消費税率引き上げ・
教育無償化政策の
影響を除くケース
 2018年度+0.9~+1.0
<+0.9>
+0.8~+0.9
<+0.8>
 10月時点の見通し+1.3~+1.5
<+1.4>
+0.9~+1.0
<+0.9>
 2019年度+0.7~+1.0
<+0.9>
+1.0~+1.3
<+1.1>
+0.8~+1.1
<+0.9>
 10月時点の見通し+0.8~+0.9
<+0.8>
+1.5~+1.7
<+1.6>
+1.3~+1.5
<+1.4>
 2020年度+0.7~+1.0
<+1.0>
+1.3~+1.5
<+1.5>
+1.2~+1.4
<+1.4>
 10月時点の見通し+0.6~+0.9
<+0.8>
+1.5~+1.7
<+1.6>
+1.4~+1.6
<+1.5>

昨日から開催されていた日銀金融政策決定会合が終了し、「展望リポート」で政策委員の大勢見通しが公表されています。来年度2019年度の生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)上昇率見通しは、原油価格下落の影響が主因ながら、消費税率引き上げと今回から加えた教育無償化政策の影響を除き+0.9%と前回2018年10月時点から▲0.5%ポイントト引き下げられている上に、「リスクバランスをみると、経済・物価ともに下振れリスクの方が大きい」と指摘し、もう一段の下振れの可能性も示唆しています。

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2019年1月22日 (火)

国際通貨基金(IMF)の「世界経済見通し改定」やいかに?

本日から世界経済フォーラムによるダボス会議が始まりましたが、昨年と同じように、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」 World Economic Outlook Update, January 2019 が公表されています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、成長率の総括表をIMFのブログ・サイトから引用すると以下の通りです。

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見れば明らかなんですが、昨秋2018年10月時点の見通しから全般的に成長率については下方修正されています。今年2019年の世界経済の成長率は昨年10月時点の見通しから▲0.2%ポイント下方改定されて+3.5%と見込まれている上に、来年2020年に前回見通しから▲0.1%ポイント下方修正されて+3.6%と予測されています。
米中間の貿易摩擦に起因するリスクはまだ小さいと見込まれている一方で、欧州経済の減速の影響が大きくなっています。特に、輸出市場をはじめとしてドイツ自動車産業の下振れとイタリアの国債を含む金融リスクがクローズアップされています。日本については、2019-20年ともに10月時点から+0.2%ポイントの上方修正がなされており、2019年+1.1%成長、2020年+0.5%成長がそれぞれ見込まれています。この情報修正は、"This revision mainly reflects additional fiscal support to the economy this year, including measures to mitigate the effects of the planned consumption tax rate increase in October 2019." ということで、消費税率引き上げの影響緩和のための財政措置に起因するということです。また、米中間の貿易摩擦が注目される一方で、新興国に目を転ずると、貿易摩擦が続くならば中国では成長の減速が予想よりも急速に進む可能性が指摘されています。全般的に先行きについては、合意なきBREXITなどの下方リスクが強調されている印象です。2008年のリーマン・ショックの時点よりも政策選択の幅が狭まっているともリポートで指摘しており、景気後退に陥るリスクを回避できるかが注目ではなかろうかという気がします。

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2019年1月21日 (月)

明日から始まるダボス会議を前に The Global Risks Report 2019 やいかに?

明日の1月22日からダボス会議が始まります。その主催団体である世界経済フォーラムから、1月15日付けで「グローバル・リスク報告書 2018」The Global Risks Report 2019 が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。

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いつもの通り、上のグラフの縦軸は Impactであり、横軸は Likelihood です。散布図ですから、インプリシットに横軸が縦軸を決めるという関数形ではありません。大雑把に、右上に位置するイベントほど、発生する確率が高くダメージも大きい、という意味だと私は理解しています。その意味で、青でプロットされている経済的なリスク要因はかなり後景に退いたように見えます。私の解釈に基づいて、右上に位置しているトップスリーはすべて環境リスクであり、Extreme weather events、Failure of climate-change mitigation and adaptation、Natural disasters となっているように見えます。ブルーの経済的リスクでは Asset bubbles in a major economy、Fiscal crises あたりか、という気がしますが、生じる確率もダメージもまあ平均レベルと私は受け止めています。

ダボス会議の場で、国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し改定」World Economic Outlook Update が公表されています。日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年1月20日 (日)

ユーラシア・グループによる2019年のトップリスクやいかに?

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とても旧聞に属する話題ながら、1月7日にイアン・ブレマー率いるユーラシア・グループから2019年のトップリスク10項目が明らかにされています。今どきのことですから、詳細な内容のpdfの全文リポートもアップされています。上の表紙画像の左下にも見えるんですが、専門外ですので、とりあえず、10項目だけ羅列しておきます。

  1. Bad seeds
  2. US-China
  3. Cyber gloves off
  4. European populism
  5. The US at home
  6. Innovation winter
  7. Coalition of the unwilling
  8. Mexico
  9. Ukraine
  10. Nigeria

番外で Brexit が置かれ、例年通りに Red herrings もあったりします。さらに、明日の1月22日からダボス会議が開催され、世界経済フォーラムから「グローバル・リスク報告書」が明らかにされています。日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年1月19日 (土)

今週の読書は経済書からミステリまで通常ペースで計6冊!

今週もそれなりにボリュームある読書が多かったような気がしますが、冊数的には通常通りの数冊ということで以下の6冊です。これから自転車で近隣図書館を回りますが、来週も数冊くらいの読書になりそうな予感です。

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まず、玄田有史[編]『30代の働く地図』(岩波書店) です。編者は東京大学の研究者であり、幸福学などでも有名ですが、本来のホームグラウンドは労働経済学です。本書は全労済協会が主催した研究会に集まった研究者や実務家の論文を編者が取りまとめています。回答のあるナビゲーションではなく、自ら選ぶ地図をイメージしてタイトルとした、ということのようです。編者が冒頭と締めくくりを担当しているほか、各チャプターごとの著者は研究会の委員さんではなかろうかと想像しています。労働や雇用に関しては、私のようなマクロ経済の観点よりもむしろ、マイクロな選択の問題と考えるエコノミストも少なくありませんし、まあ、毎月勤労統計のような信頼感薄いマクロ労働統計ではなく、マイクロな雇用や労働の分野の方がデータが豊富で、フォーマルな定量分析も盛んです。加えて、経済学だけではなく労使関係ですから法学の分析も必要ですし、実務面からの分析も可能で、本書でも労働組合幹部の執筆するチャプターがあったりもします。高度成長期に成立した新卒一括採用の下での長期雇用、年功賃金、企業内組合という日本的な雇用慣行は、現時点でも、あるいは、高度成長期でも、雇用者の多数を占めていた時期はないんですが、それなりにモデルとしての有用性があったと私は考えている一方で、21世紀に入って大きくモデルとしての第1次アプローチの有用性が崩れていることも事実です。ただ、雇用の柔軟性が必要といわれているとしても、柔軟性が増せば定義的に反対側で安定性が損なわれるわけですし、同時に賃金水準も切り下げられることは経験上明らかです。高度成長期に成立した我が国の労働慣行は、性別役割分担とも関係して、男性正規社員が長期雇用下で無限定に長時間労働する一方で、女性が専業主婦として家計を仕切って男性を支える、というものでした。それが、大きく崩れてきているわけで、本書でも指摘しているように、単に長時間労働の是正にとどまらない抜本的な働き方改革が必要となっています。最後に、本書の対象とする30代は子育て世代であり、かつ、中堅として職場の中核的な働き手なんですが、同時に、本書で取り上げている通り、転職や独立、あるいは、兼職や副業を考えて、自分のキャリアを見直す時期でもあります。私のような60歳超と違って、別の意味で、岐路に立っているともいえます。多くの若い現役世代に参考になる議論を展開してほしい気もしますし、他方で、私のような引退世代の介護との両立についても議論が必要だとも思います。

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次に、川野祐司『キャッシュレス経済』(文眞堂) です。著者は東洋大学の研究者です。タイトル通り、北欧を先進国として欧米だけでなく中国やケニアなど世界で進行中の経済のキャッシュレス化について、現状と展望と可能な範囲で歴史的な背景などを解説しています。ただ、時折、著者の独自の見方が紹介されている部分があり、明確に歩者の意見として提示されているので好感は持てるんですが、やや私の感覚とはズレがあったりもしました。特に、我が国経済のキャッシュレス化については、ソニーのFELICAなどを見ても明らかなとおり、技術的には世界に後れを取ってはいないものの、実際の波及面であまりに数多過ぎる提供主体があって普及面の問題がある、というのは、私の実感と少し違う気もしました。それは別として、オンライン化の推進力として、製造業と同じ理屈を銀行に当てはめ、要するに人件費削減と業務のスピードアップの要請に基づいたキャッシュレス化、という理由を上げています。私はその通りだと思うんですが、少し、デジタル化とキャッシュレス化の混同が見られるような気もしました。特に、ビットコインの記録上の中核技術であるブロック・チェーンについて、アナログでも実現可能というのは、私もそういえばそうなんだと初めて気づいた次第ですが、帳簿上のシンボリックなお金の動きとそれをサポートするデジタル技術については、もう少し詳しく解説してもらえば金融政策上のインプリケーションも出てきそうな気がします。典型的には、キャッシュレス化やデジタル化で、いわゆるナローバンキングに特化する金融機関も出そうな気がする一方で、預金と信用に基礎を置く信用乗数の大きさにどのようなインパクトを及ぼすのか、といった点です。また、私はこういった金融の関係は専門外なんですが、技術革新の進歩の速度が極めて速くなった先の展望を見越すと、本書の賞味期限がどれくらいあるのかは不案内です。読むとすれば、早めに読むのが吉かもしれません。

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次に、ジョン・キーガン『情報と戦争』(中央公論新社) です。著者は、長らく英国サンドハースト王立陸軍士官学校で戦史の教官を務め、2012年に他界しています。英語の原題は Intelligence in War であり、2003年の出版です。最後の邦訳者あとがきにもありますが、本書では厳密には区別されていないながら、英語の intelligence と information について、後者に「生情報」を当てて、前者は「情報」ないしカタカナで「インテリジェンス」と訳し分けているようです。そして、タイトルとは裏腹に、本書に一貫して流れているのは、戦争で勝つために情報収集やその分析は役立つが、戦争遂行のための戦略の立案や物理的な戦闘力がより重要である、という点に尽きます。情報線と関連して、太平洋戦争時のミッドウェイ海戦が上げられて、典型的に情報が勝敗を決した鍵となる戦闘と見なされているようですが、本書では情報とともに、偶然とか、運とか、ツキといった要素にも着目しています。そして、物理的な戦闘力の重要性に関しては、ナチスのクレタ島侵攻をケーススタディのひとつに取り上げ、どのように事前の情報収集が万全で十分であっても、迎え撃つ方の戦闘力が不足していればどうにもならない例、として扱っています。もちろん、情報収集は戦争や戦闘行為に限らないわけで、経営戦略策定の際に無重要な要素となりますが、クレタ島のケースは、例えていえば、売れる商品をリサーチで十分に把握していたとしても、工場の生産能力やロジスティックな配送能力が追いつかなければ十分な売上には結びつかない、といったカンジかもしれません。私も公務員として在外公館の海外勤務を経験しているわけですから、経済的な要素が極めて強いとはいえ、情報収集活動はしたことがあり、しかも、私が大昔に奉職を始めた役所は総合国力の測定を組織のミッションのひとつにしていましたので、情報収集の重要性は理解しているつもりですが、物理的な対応能力も同様に重要である点は本書の指摘する通りだと考えます。

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次に、マーティン・エドワーズ『探偵小説の黄金時代』(国書刊行会) です。著者は英国のミステリ作家・評論家であり、約20冊の長編や50編以上の短編を発表し、自らの作品で英国推理作家協会(CWA)の最優秀短編賞を受賞したほか、多数のアンソロジーを編纂したことがあると紹介されています。上の表紙画像に見られる通り、本書の英語の原題は The Golden Age of Murder であり、2015年の出版です。ということで、主として英国における探偵作家の親睦団体=ディテクション・クラブが発足した1930年前後くらいのの、いわゆる戦間期におけるミステリの黄金時代を歴史的に跡付けたノンフィクションです。ディテクション・クラブ発足当時の会長はチェスタトンであり、女性作家のセイヤーズやクリスティーも会員として集まっており、繰り返しになりますが、このクラブの歴史と作家たちの交流、なぞ解きのフェアプレイの遵守を誓う入会儀式の詳細、会員のリレー長篇出版などの活動、もちろん、知られざる私生活における興味津々のゴシップまで、豊富なエピソードを収録しています。ただ、注意すべき点が2点あり、英国中心のミステリ作家の歴史であり、日本人には気づきにくい英米の違いなどは無視されていると考えるべき、というか、米国の事情は、わけあって英国に移住したカーを唯一の例外として、クイーンやヴァン・ダインなどの名がチラリと登場するくらいで、ほとんど本書のスコープの範囲外となっています。もう1点は、本書の英語の原題を見れば理解できる通り、直訳すれば「殺人の黄金時代」であり、小説の中の事件だけでなく、広く社会を騒がせた殺人事件にも、まあ、一部には小説のモチーフとなったという意味においてであっても、注目されています。ロンドンの「切り裂きジャック」なんぞは日本でも人口に膾炙していますが、私のような不勉強な読者には心当たりのない事件も少なくありません。本書が対象としている時期は、1929年からの大不況の時期を含んでおり、それなりに犯罪も発生したのだろうと想像されます。現在のミステリの隆盛に話題がつながる最終章まで、圧倒的なボリュームで堪能させられます。A5版の大きさに加えて2段組みで製本されており、写真も含めた図版も豪華に、とても読み応えあふれる力作です。私は図書館で借りましたが、たとえA5版2段組みの400ページ余りを読み切れる自信ない場合であっても、蔵書として本棚に飾るのも一案ではないでしょうか。

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次に、渡辺順子『世界のビジネスエリートが身につける教養としてのワイン』(ダイヤモンド社) です。著者は、フランスへのワイン留学を経て、大手オークション会社であるクリスティーズのワイン部門に入社し、NYクリスティーズでアジア人初のワインスペシャリストとして活躍した経験をお持ちだそうです。ということで、タイトルから明らかな通り、ワインに関してビジネス・エリートに解説をしているわけで、私の良いなビジネス・エリートでも何でもない人間は関係なさそうな気もしますが、実は、私も安物のワインは飲んだりもします。1990年代前半の3年間を南米はチリの日本大使館で外交官として過ごし、ちょうどそのころからチリのワインを日本に輸出する事業が始まったこともあり、今でもチリ・ワインは週に何度か飲んだりしています。その名も「サンティアゴ」のメルローなどです。もちろん、ワインに限らず、「飲みニケーション」という雑な言葉がある通り、お酒は飲んで楽しんでコミュニケーションを取るツールとして認識されているのは日本だけではありません。ですから、ほかのお酒、すなわち、ビールや日本酒や焼酎やウィスキーやブランデーなどなど、なんでも飲んでコミュニケーションが取れるとは私は思うんですが、やはり、ビンテージ物のワインにはかないません。また、お酒以外で、私も少し前に『西洋美術史』を読みましたが、絵画・彫刻などの美術を見ながらのコミュニケーションは大きな限界がありそうな気がしますし、クラシックなどの音楽をコンサートで聞きながらではおしゃべりできませんし、文学作品ではあまりに広がりがあって一致点が見出しにくそうな気がします。本書では、欧州と地中海沿岸を中心に、ワインの歴史を振り返るとともに、第1部ではフランスはボルドー5大シャトーやロマネ・コンティ、アンリジャイエなど、第2部ではイタリアを中心に食事とのマリアージュを見て、第3部では米奥などのニューワールドのワインを概観し、さらに、ワインへの投資や関連するビジネスを取り上げています。高校の社会科のように、産地やシャトーやブランド名を暗記するのも目的とするなら、とても味気ない読書になりかねませんが、テーマがテーマだけに楽しく読めればラッキーかな、という気がします。

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最後に、宇佐美まこと『聖者が街にやって来た』(幻冬舎) です。売出し中の女性ミステリ作家で、最近、もっとも話題になった『骨を弔う』を読んだばかりですが、その『骨を弔う』がもっともできがいいといわれていたにもかかわらず、私はあまりにも作り過ぎていて不自然な気がしたんですが、本作品の方がその意味ではより現実味を増したエンタメ作品という気もします。相変わらずプロットがややお粗末で、突っ込みどころが多いんですが、それなりのレベルの作品には仕上がっているような気がします。被害者が5人に上る殺人事件ですから、もっと登場人物がいていいような気がするんですが、この作者はどうもキャラの設定に難があるようで、多人数の登場人物が描き切れないのかもしれません。例えば、本作品でいえば、お花屋さんの3人の女性のキャラが極めて似通っています。店主親子は、まあ、親子ですので性格的にも似通っていていいようにも受け取られるんでしょうが、店主の娘とアルバイト女性のキャラに差異が感じられません。半グレのグループの構成員もほとんど違いが感じられず、仕方ないので体のサイズや外見で区別するしかないような有り様です。もう少していねいに人物の造形やキャラ設定をすれば作品に深みが出そうな気がします。なかなかの力作だけに少し惜しい気がします。もう少しこの作者の作品を23作読んで、もっと読み続けるかどうかを考えたいと思います。今の段階ではギリギリ合格点か、という気もしますが、ファンになるほどではない、というカンジでしょうか。

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2019年1月18日 (金)

2年間プラスを続けた消費者物価指数(CPI)上昇率の先行きやいかに?

本日、総務省統計局から昨年2018年12月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から上昇幅を縮小して+0.7%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

18年12月の全国消費者物価、0.7%上昇 石油製品の寄与度縮小
総務省が18日発表した2018年12月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は生鮮食品を除く総合が101.4と前年同月比0.7%上昇した。上昇は24カ月連続。11月(0.9%上昇)に比べて伸び率が鈍化し、5月(0.7%上昇)以来の水準にとどまった。エネルギー関連項目が押し上げに寄与したが、原油安を背景にガソリンなど石油製品の寄与度が前月に比べて低下した。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.8%上昇だった。生鮮食品を除く総合を季節調整して前月と比べると0.1%下落した。生鮮食品を除く総合では全体の52%にあたる272品目が上昇した。下落は180品目、横ばいは71品目だった。総務省は「緩やかな上昇傾向で推移している」との見方を示した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は101.3と前年同月比0.3%上昇した。欧州やアジア向けの外国パック旅行費が上昇した。外食など生鮮食品を除く食料も押し上げに寄与した。
生鮮食品を含む総合は101.5と0.3%上昇した。伸び率は11月(0.8%上昇)に比べて縮小し、17年10月(0.2%上昇)以来の水準だった。レタスやホウレンソウなどの生鮮野菜が昨年に高騰した反動で大幅に下落した。
併せて発表した2018年平均の全国CPIは生鮮食品を除く総合が101.0と前年比0.9%上昇した。上昇は2年連続。エネルギー関連項目の上昇がけん引した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合は0.4%上昇、生鮮食品を含む総合は1.0%上昇した。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率で見て、昨年2018年9~10月には+1.0%に達したんですが、先月統計の11月は+0.9%に上昇幅が縮小し、12月統計ではさらに上昇幅が縮小して+0.7%を記録しています。引用した記事にもある通り、国際商品市況においてほぼ11月をピークとする石油価格の動向に従った変化であると私も考えています。11月統計では石油製品の寄与が+0.37あった一方で、12月統計では+0.17%まで低下しており、その差▲0.20%がそのままコアCPI上昇率に現れた形になっています。ただ、同じエネルギーでも電気代は、同じ寄与度で見て、11月統計の+0.19%から12月には+0.22%とわずかにプラスの寄与を高めており、国際商品市況における石油価格が反映されるタイミングのラグが際立っているものの、現状の石油価格と為替水準が続けば、今年2019年春から年央にかけて、ゆるやかにコアCPI上昇率は+0.5%程度くらいまで上昇幅を縮小させるものと私は予想しています。さらに、昨年10~11月頃が石油価格のピークと仮定すれば、1年後くらいにあたる今年2019年10~12月期のいずれかの時期にコアCPI上昇率はゼロないしマイナスになる可能性も否定できません。いずれにせよ、昨夕の共同通信の配信で「日銀、物価見通し引き下げへ 19年度、1.0%前後に」と題する記事が各メディアにいっせいにキャリーされましたが、先行きの物価上昇率は鈍化する方向であるのは多くのエコノミストの一致した見方ではなかろうかと私は受け止めています。

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2019年1月17日 (木)

マクロミルによる「2019年 新成人に関する定点調査」の結果やいかに?

とても旧聞に属する話題ながら、マクロミルから1月8日に「2019年 新成人に関する定点調査」の結果が明らかにされています。いくつかのメディアで、最近何年か、新成人の間で「日本の未来は明るい」と考える比率がジワジワと上昇している点を取り上げていたような気がします。まず、マクロミルのサイトから5点のTOPICSを引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 日本の未来は「明るい」37%、「暗い」63%。
    明るい理由は「東京オリンピック」「大阪万博」「景気回復」、暗い理由は「少子高齢化」「政治問題」など
  • "国民年金制度" を信頼できる41%。緩やかな上昇傾向
  • スマホ所有率、「iPhone」は65%、「Android」は31%。その差は2倍以上
  • SNS利用率、「Instagram」が躍進し3年で2.4倍に
  • 活躍を期待する2019年新成人ランキング。1位「橋本環奈」、2位「広瀬すず」、3位「平野歩夢」

ということで、毎年の定点観測ですから、今年も簡単に取り上げておきたいと思います。下のグラフは、マクロミルのサイトから「日本の未来は明るいと思う」と題する画像を引用しています。

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日本の未来について、「明るいと思う」と答えた人は37%、「暗いと思う」と答えた人は63%だったそうで、いずれも「どちらかといえば」を含んでいます。グラフを見れば明らかな通り、2014年調査で少し連続性が疑問に感じますが、2014年の不連続点以前の20%周辺の水準から、2014年以降の30%超の水準にジャンプしたことは確かなように見えます。理由はよく判りませんが、現在の若者に関する古市説が当てはまる可能性もありそうな気がします。また、3点目のデジタル端末の所有率に関して、2013年から所有率が上昇し続けている「iPhone」は、とうとう、今年「ノートパソコン」を追い抜き、初めて1位となりました。パソコンを別にしたスマートフォンという観点では、2016年に「iPhone」が「Android」を追い抜き、以降その差は年々広がっており、今年、「iPhone」の所有率は65%で、「Android」31%の2倍以上となっています。

さて、我が家の下の倅も昨年8月の20歳の誕生日を迎え今年が成人式なんですが、大阪の下宿生活はいかがなもんなんでしょうか?

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2019年1月16日 (水)

前月比横ばいで足踏み続く機械受注と上昇率が大きく縮小した企業物価(PPI)!

本日、内閣府から昨年2018年11月の機械受注が、また、日銀からこれも昨年2018年12月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て、前月比▲0.0%減の8,631億円を示しています。また、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.5%と前月の+3.0%から上昇率が大きく縮小したものの、引き続き、高い上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の機械受注、2カ月ぶりマイナス 0.02%減
内閣府が16日発表した2018年11月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比0.02%減の8631億円だった。減少は2カ月ぶり。「水準でみると、必ずしも悪いわけではない」(内閣府)とするものの、QUICKがまとめた民間予測の中央値(3.1%増)を下回った。
内閣府は基調判断を「持ち直しの動きに足踏みがみられる」に据え置いた。「戻りが弱かった10月と同じような動きで、表現を変えるまでには至らなかった。まさに足踏み」(内閣府)という。
11月の製造業の受注額は6.4%減の3957億円だった。減少は2カ月ぶり。17業種のうち9業種が減少した。その他製造業で合成樹脂加工機械などの受注が減ったほか、非鉄金属で原子力原動機が、造船業で内燃機関などの受注が減った。
非製造業は2カ月連続で増加し、2.5%増の4650億円だった。運輸業・郵便業や情報サービス業で電子計算機等の受注が増えた。前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.8%増だった。
11月の受注総額は8.3%増の2兆8506億円。外需の受注額が18.5%増の1兆2649億円と大きく増えた。化学機械や船舶、鉄道車両などの大型案件がみられた。官公需は26.8%減(2649億円)だった。10月に防衛省向け船舶の大型案件があった反動が出たという。
12月企業物価、1.5%上昇、原油下落で伸び縮小
日銀が16日発表した2018年12月の国内企業物価指数(速報値、15年平均=100)は101.5と、前年同月比で1.5%上昇した。前年実績を24カ月連続で上回ったが、伸び率は11月確報値から0.8ポイント縮小した。原油価格の下落や米中貿易摩擦に伴う商品市況悪化で伸びが鈍っている。
企業物価指数は出荷や卸売り段階で取引される製品価格を調べて指数化したもの。品目別ではガソリンなどの石油・石炭製品が前年同月比4.7%上昇したものの、11月確報の14.2%から伸び率が大幅に縮小した。
非鉄金属は米中貿易摩擦の影響で銅やアルミニウムなどの価格が下がって4.1%下落した。下落幅は11月から0.5ポイント拡大した。18年平均の企業物価は前年比2.6%上昇と2年連続で上昇した。日銀は「今後も原油価格の動向に左右される展開が続く」(調査統計局)としている。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは、季節調整済のコア機械受注の前月比で見て+3.1%増でしたから、ほぼほぼ前月から横ばいという結果はこれを下回ったことになります。業種別では、製造業で減少した一方で、船舶と電力を除く非製造業で増加を示しています。コア機械受注は季節調整済みの系列の前月比で見て、9月に▲18.3%減と大きく落ち込んだ後、10月の戻りが+7.6%増とやや物足りない感があり、11月統計でもほぼ前月比横這いでしたから、まさに足踏みということなのかもしれません。ただ、上のグラフのうちの上のパネルに見られる通り、後方6か月移動平均のトレンドで見て、方向性として足踏みの右肩下がりであるのは明らかですが、受注の水準としてはまだかなり高いレベルにあることも忘れるべきではありません。平たい言葉を使えば、統計の対象となっている工場の稼働水準はまだかなり高いといえますし、受注元企業の設備投資意欲も先細りかもしれませんが、まだそれなりの水準をキープしている感触です。もっとも、先々月の9月統計公表時に明らかにされた2018年10~12月期見通しでは、四半期ベースでのコア機械受注は前期比+3.6%増の28003.5億円が見込まれていましたから、月次ベースでは9300億円を軽く上回るレベルに比較すると、11月実績の8631億円はかなり低い水準である、との見方も成り立ちます。また、先行きについては、私は先行指標としての外需を参考にしているんですが、2018年10月+15.5%増、11月+18.5%増と、上のグラフの下のパネルに見られる通りジャンプしています。米中間の貿易摩擦の動向が気にかかりますが、外需は堅調のように見える一方で、内需はオリンピック・パラリンピック需要のピークアウトと10月からの消費税率引き上げで年央からは景気動向は不透明です。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、また、一番下は企業物価指数のうちの円建て輸入物価の原油の指数そのものと前年同月比上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。企業物価指数(PPI)のヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率で見て、7~10月は+3.0%を続けていましたが、先月統計の11月が+2.3%と上昇幅を縮小し、直近の12月統計ではとうとう+1.5%まで上昇幅が半減してしまいました。季節調整していない前月比で国内物価は11月から12月にかけて前月比で▲0.6%の下落を示しましたが、品目別の寄与度で見てガソリンや軽油などの石油・石炭製品が▲0.5%と大きな部分を占めますし、PPIのうちの輸入物価は同じ前月比で▲3.4%下落し、同じく寄与度で石油・石炭・天然ガスが▲3.11%に上ります。上のグラフのうちの一番下のパネルに円建て輸入物価のうちの原油を取り上げていますが、まだ前年同月比ではプラスですが、前年同月比上昇率では昨年年央2018年7月にピークアウトし、指数の水準でも昨年2018年11月にピークアウトしたんではないかと私は見ています。私だけでなく、日銀当局も物価は石油価格の動向に左右されることは認めているようです。

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2019年1月15日 (火)

先週と今週の経済指標に関する雑感

私はいくつかのシンクタンクのエコノミスト、特にマクロを担当するエコノミストと交流があった時期もあり、シンクタンクのサイトは定期的に拝見しているんですが、いくつか興味深いリポートがありましたので、簡単に取り上げておきたいと思います。

まず、第一生命経済研のサイトに先週の景気動向指数を取り上げたリポートがあり、私の見方と同じで、3か月後方移動平均の動向から最短で12月統計で基調判断が上方修正されて「改善」に戻る可能性を指摘しつつ、最後の結論として「基調判断が上方修正されるかどうかは五分五分」と指摘しています。私の見方にほぼほぼ一致しているような気がしました。

次に、大和総研が昨年2018年12月26日付けで「AIを活用した経済指標予測の公表について」と題したお知らせをアップしていて、人工知能(AI)を活用した経済指標予測モデルを開発したので、エコノミストによる予測業務をこれに置き換えると表明しています。実際に予測を出す指標は、機械受注(船舶・電力を除く民需、いわゆるコア機械受注)、失業率、有効求人倍率(一般職業紹介状況)、国内企業物価指数(企業物価指数)、第三次産業活動指数の5指標とされています。早速、先週1月11日に明日公表予定の機械受注など、AI経済指標予想として以下の通り明らかにされています。

AI経済指標予想
  • 【コア機械受注】(11月)前月比0.5%、前月実績同7.6%、発表日1月16日
  • 【国内企業物価指数】(12月)前月比-0.5%、前月実績同-0.3%、発表日1月16日
  • 【第3次産業活動指数】(11月)前月比-0.8%、前月実績同1.9%、発表日1月16日

第3次産業活動指数は遅行指標なので、私はあまり興味ないんですが、明日の機械受注と企業物価の公表がとても楽しみです。

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2019年1月14日 (月)

ニッセイ基礎研リポート「GW10連休は景気にプラスか? マイナスか?」を読む

今日は本年最初の3連休最終日なんですが、先週金曜日の1月11日にニッセイ基礎研から「GW10連休は景気にプラスか? マイナスか?」と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、ニッセイ基礎研のサイトからリポートの要旨のうち3点目だけを引用すると以下の通りです。

要旨
GWが10連休となったことにより、祝日数は4月が1日、5月が2日増えることになった。4/30~5/1が平日だった場合と比べると、鉱工業生産指数が▲0.95%、第3次産業活動指数が▲0.34%、全産業活動指数が▲0.41%押し下げられる。2019年4、5月の全産業活動指数の落ち込みをGDPに換算すると、2019年4-6月期の実質GDPは▲5,267億円(▲0.4%)減少する。

ということで、以下のグラフが示されています。

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このリポートの要旨の1点目でも「祝日が増えることによって、旅行業界を中心に景気の押し上げ効果が期待されているが、製造業では工場の稼働日数が減ることで生産量が抑制されることも懸念される。」と指摘しているように、ごく単純にいって、お休みが増えれば需要が増加する一方で供給は減少する、ということになります。短期的には、作り置きして在庫が可能な財貨は、ひょっとしたら、需要に応じて消費が増加する可能性がある一方で、在庫のできないサービスについては需要に応じた生産ができない可能性もあります。もちろん、長期休暇後には反動が生じる可能性も否定できません。供給面からはお休みが増えれば供給は単純に減ります。
しかし、長期的に歴史をさらに長い目で見ると、おそらく、日米をはじめとする先進国においては、我が国の高度成長期が典型ですが、終戦直後から1970年代前半くらいまでは需要が旺盛で、作れば売れる、すなわち、供給がGDPを決めていた面が強い一方で、1980年代くらいから現時点までは、生産力が大いに増強されて消費がかなりの程度に飽和しつつあり、需要が生産をけん引してGDPを決める、という側面が強くなったように私は考えています。短期的なGW10連休ならニッセイ基礎研のリポートが正しくてGDPにはマイナスのインパクトを生じる可能性が高いと私自身も考えますが、より長い目で見ると、働き方改革によるワークライフ・バランスの改善とか、より需要を喚起する休日の増加の視点も忘れるべきではありません。

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2019年1月13日 (日)

今日と明日のお天気の話題!

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きのう12日の雪やみぞれで東京の無降水継続記録は19日間で終わりましたが、明けて今日から早くも空気は乾燥してきているそうです。上の画像は、日本気象協会のサイトから引用しています。
もちろん、お天気がいいわけですから、明日の成人の日は全国的に晴れるとの予報です。これも、日本気象協会の別の記事では「あす14日 新成人を祝う晴天に」と予想されています。我が家では、大阪に下宿している下の倅が昨年の誕生日で20歳となり、明日が成人式なんですが、大阪の方で祝うんでしょうか。私はよく判りません。

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2019年1月12日 (土)

今週の読書は経済書にエンタメ小説まで加えて計6冊!

先週の読書感想文からほぼ通常通りの週数冊のペースに早くも戻り、今週も以下の6冊です。経済書はもちろんありますし、新本格派の京大ミス研出身の我孫子武丸による小説もあります。今日はすでに自転車で図書館を回り終えていますが、来週も数冊の読書が楽しめそうです。

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まず、 コンスタンツェ・クルツ & フランク・リーガー『無人化と労働の未来』(岩波書店) です。著者2人はいわゆるホワイトハットハッカーらしく、情報に強い印象です。本書は原書の全訳ではなく、いくつかの章を省略した抄訳となっています。副題は「インダストリー4.0の現場を行く」と題されていて、世界に先駆けて「第4次産業革命」を打ち出して、AIをはじめとするソフトウェアに加えて、ロボットとネットワーク化による製造現場の変革を進めてきたドイツを舞台に、主食のひとつであるパンが出来上がるまでを跡づけます。すなわち、農場で小麦が栽培されて収穫されるまでの機械化の進展を見つつ、農業機械の製造現場も振り返り、ロジスティックスで穀物の運輸、もちろん、パンの製造やその後の製品の流通など、第1部でパンが出来るのを跡づけた後、第2部で労働の未来の考察に進み、まず、話題の自動運転から始まります。結論としては、馬車がトラックに取って代わられた歴史的な例などを参照します。しかし、本書のドイツ語原初の出版は2013年であり、5年前という技術的な進歩の激しい分野では致命的な遅れがあります。もちろん、技術に関する哲学的な考察で有用なものは本書からも決して少なくなく汲み取れるんですが、それにしても、土台となる技術的な発展段階が5年前では見方にバイアスも避けられません。そのあたりは、5年前の技術水準に依拠して書かれている点を忘れず読み進むことが必要です。最後に、この書評ブログでは著者とともに、翻訳書の場合は原語の原題もお示しするんですが、わざわざ、最後に回したのは、ドイツ語原題が Arbeitsfrei となっていて、Arbeits と Frei の間にパワー=力を意味する macht を入れると、とても意味深長、というか、やや使うのはためらわれる場合もありそうです。すなわち、「都市の空気は自由にする」= Stadtluft Macht Frei をもじって、ドイツ人作家ロレンツ・ディーフェンバッハがこれを小説のタイトルとして Arbeits Macht Frei として用いた後、20世紀になってワイマール共和国期に失業対策として実施された公共事業に対しての表現として用いられ、何と、ナチス政権下ではこの表現をアウシュビッツをはじめとする多くの強制収容所の門に記しています。著者をはじめとして多くの教養あるドイツ人や、おそらく、日本人ながら翻訳者には判っていると私は想像しているんですが、私には謎ながら、何らかの意図があるのかもしれません。

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次に、藤井聡『「10%消費税」が日本経済を破壊する』(晶文社) です。著者は、京都大学の工学部教授であり、最近まで内閣官房参与として安倍内閣のブレーンを務めてきた研究者です。タイトルからも理解できる通り、本書では今年10月の消費税率の10%への引き上げに強く反対する論陣を張っています。かなり経済学的には怪しい論拠がいっぱいで、レーガノミクスで税率を引き下げれば税収が増加するというラッファー・カーブというのがあり、当時のブッシュ副大統領が voodoo economics と呼んだシロモノで、大いにそれを思い起こさせる内容もあったりしますが、直感的には理解しやすいと思いますし、例えば、アベノミクスも同じで、最近の税制の変更により法人税を減税して、その分を消費税で徴収している、という主張はその通りです。ただ、1989年の消費税導入時はインフレだったのでOKだが、1997年の税率を5%に引き上げたのはデフレ圧力を強めた、というのは必ずしも私は同意できませんし、本書で大きく批判されている2014年の消費増税についても、タイミングは私自身は正しかった、と考えています。もっとも、今年の税率引き上げについては、私もタイミングについて疑問に感じる一方で、短期的にはともかく、中長期的には消費税率は引き上げざるを得ない、そうしないと政府財政のリスクが大きくなる可能性が高い、と私は考えています。著者は政府財政の破綻は将来に渡ってもないと考えているようですが、私は現実問題として何らかの市場の反応次第では、政府財政が破綻することはあり得ると考えています。実際に何が起こるかといえば、いわゆるキャピタル・フライト、すなわち、資本逃避で海外に資産を移し替える富裕層が増加し、そのために為替が急激に円安になる一方で、外貨が不足して市場介入も限界があるため、輸入ができなくなる、というルートです。そのリスクを抑制するためには政府財政の健全化は避けて通れません。他方で、本書ではスコープ外なんですが、シムズ教授らの物価水準の財政理論(Fiscal Theory of the Price Level:FTPL)もあり、経済学の曖昧さが露呈している気もします。悩ましいところです。

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次に、西部忠[編著]『地域通貨によるコミュニティ・ドック』(専修大学出版局) です。編著者は北海道大学から専修大学に転じた経済学の研究者で、本書は主として北海道の地域コミュニティで実践された地域通貨事業から、ブラジルの実践例も含めて、地域のコミュニティの維持強化を分析しています。特に、ダンカン・ワッツ教授のスモール・ワールド理論などにおけるネットワーク分析はとても特徴的であると私は考えています。専門外ですので、詳しく解説はできませんが、地域通貨が何らかのノードのハブとなる団体、例えば、商店街連合会とか環境NPOとかから、地域住民や商店主にどのような広がりを持っているかは、コミュニティ維持強化の観点からの分析に、あるいは、適しているのかもしれないと実感しました。ただ、地域通貨の経済効果は、本書のスコープ外かもしれませんが、おそらくありきたりのものとなろうかという気がします。というのも、要するに、プレミア付きの地域通貨は財政政策による所得移転であろうと考えますし、あるいは、部分的にはマネーサプライの増加に代替する可能性もあります。さらに、プレミア付きの地域通貨を回収する際に手数料を徴収して、元の通貨価値で回収するのであれば、例えば本書に例に即していえば、500円の現金で525ポイントの地域通貨を発行して、回収する際には5%の手数料を徴収して525ポイントの地域通貨を500円で買い取ることにすれば、典型的にグレシャムの法則、すなわち、「悪貨は良貨を駆逐する」が働いて、通貨の流通速度が大きく増します。その点は本書でも確認されています。ただ、繰り返しになりますが、通常の財政金融政策の観点からの地域通貨の分析ではなく、地域コミュニティの維持強化の方策としての分析は、今後の地域分析のツールとして目新しい気がします。まあ、一応、地域経済研究の論文をものにしているものの、単に私の勉強不足なだけで、ほかにも同様の研究成果はいっぱいあるのかもしれません。

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次に、デイビッド・サックス『アナログの逆襲』(インターシフト) です。著者はカナダ在住のジャーナリストであり、上の表紙画像に見られる通り、英語の原題は The Revenge of Analog ですから、邦訳タイトルはそのままです。2016年の出版となっています。本書はモノの第1部と発想の第2部の2部構成で、第1部ではレコード、メモ帳、フィルム、ボードゲーム、プリントが、第2部ではリアル店舗、仕事、教育が、それぞれ取り上げられています。今までのアナログ礼賛は、単に、デジタルの現時点から昔を懐かしがるノスタルジーだけだったような気がしますが、本書はかつてのアナログから一度デジタルに進化した後、再びアナログに戻る動きを活写しています。これは今までになかった視点かもしれません。ただ、アナログ≃オフライン、かつ、デジタル≃オンライン、とも読めます。というのも、本書ではしばしば「テクノロジー」という言葉が出てきますが、テクノロジーとして考えれば、どこまでさかのぼるのか、という問題があるからで、自動車は問題なくアナログなんですが、馬車までさかのぼる必要があるのかどうか、は本書では否定的な雰囲気があります。レコードとCDではそれほど違いはないのかもしれませんが、デジタルのオンラインではかなりの程度に独立した個人として対応する必要がある一方で、アナログのオフラインではより社会性のある対応が求められる、特にゲームなんぞはそういう気がします。ただし、本書に限らないのですが、最近のオンライン技術やデジタル技術については、1990年台のインターネットの普及のころからそうですが、私のような経済を専門とするエコノミストには製造やサービス提供の場での生産性向上に用いられるよりも、典型的にはゲームのような娯楽で用いられるケースが増えているような気がします。ですから、乗馬が実用的な輸送手段としては街中から消え去って、どこかの乗馬クラブで趣味として生き残っているように、アナログもどこかで趣味として生き残る可能性は大いにありますが、生産の場でのメインストリームとして復活するのは難しそうな気もします。

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次に、我孫子武丸『凛の弦音』(光文社) です。作者は、ご存じの通り、綾辻行人や法月綸太郎と同じく、わが母校の京大ミス研出身のミステリ作家であり、本書は『ジャイロ』に連載されていたものを単行本化した小説です。高校生の女子弓道部員を主人公にその1年生から2年生にかけての連作短編、なのか、長編なのか、ややあいまいなところです。ただ、新本格派のミステリの要素はそれほど強くなく、最初の短編では殺人事件も起き、主人公の女子高校生がなぞ解きをしますが、むしろ、周囲の人々との関係を描きつつ、主人公の成長を跡づける青春小説といえます。実は、ミステリとともに私の好きな小説のジャンルだったりします。7章構成ですが、繰り返しになるものの、最初の第1章に殺人事件が起こり、ほかにも、1年生の新入部員の突然の退部の真相解明とか、高価な竹弓の紛失の謎解きなどもある一方で、放送新聞部の男子部員が主人公にピッタリとくっついて動画に収録したり、新任の女性教諭の弓道指導に対する疑問と理解の進展、同じ高校弓道部の同級生や先輩の部長との人間関係、さらには、ライバル校の花形選手との関係などなど、色んな要素がてんこ盛りなんですが、ただ、弓道に対する考え方については私には理解できないものがありました。本書でも主人公が独白しているように、戦国時代には戦闘の中で実用的に殺人を行う技だった弓の技術が、剣と同じように、徳川期の天下泰平の世の中になって、殺人技術というよりは精神的な要素を強めて、あるいは、形の美しさを極めたりもして、スポーツの要素も取り入れた弓道に変化発展する中で、それが生活の糧をもたらさないにもかかわらず、どのように人生の形成や人間的な成長に必要とされるのか、難しい問題ではないかと思います。ちょうど、お正月休みに「ホビット」3部作のDVDを見て、エルフの戦士が弓を活用しまくっていましたし、人間が龍を倒すのにも矢を使ったわけですから、何となく弓の活用も頭に残っていましたが、道を極めるという意味での弓道の青春物語は面白くもあり、同時に難解でもありました。

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最後に、高嶋哲夫『官邸襲撃』(PHP研究所) です。著者はエンタメ小説の売れっ子作家であり、私は著者の専門分野である核や原子力関係の本や自然災害のパニック本などを何冊か読んだ記憶があります。本書は、タイトル通りに、総理大臣官邸が謎のテロ組織に襲撃され、女性首相の警護に当たっていた女性SPの活躍により制圧する、というものです。もちろん、テロは制圧されます。ただ、日本国内の動機だけでなく、というよりも、テロの目的なむしろ米国にあり、米国国務長官が官邸に滞在している折を狙っての襲撃と設定されています。そして、ご本人も知らないような米国大統領の縁続きの女性が人質になったり、グリシャムの「ペリカン文書」にインスパイアされたとしか思えない文書の公開要求があったりと、いろいろな読ませどころがありますが、こういった書物にありがちな設定ながら、女性総理が官邸で人質になった後、お飾りで優柔不断で、いかにも旧来タイプの政治家であった副総理が一皮むけて立派な決断をしたり、米国と日本で判断のビミョーなズレがあったり、映画の「ダイハード」よろしく不死身の主人公が縦横無尽に活躍したりと、こういったあたりはややありきたりな気もします。私のオフィスからほど近い官邸がテロ組織に襲撃されるというのは、確かに実感としてムチャな気もしますし、著者の専門分野の原子力や自然災害のパニック本よりも、リアリティに欠けるように感じられますが、私自身がもうすぐ定年退官ながら公務員として総理大臣官邸を身近に感じられるだけに、それなりに面白く読めた気もします。私のようにこの作者のファンであれば読んでおいて損はないと思います。また、もしも映画化されれば、主人公の女優さん次第で私は見に行くかもしれません。

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2019年1月11日 (金)

大きく悪化した景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から昨年2018年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から同じく昨年2018年11月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から前月差▲3.0ポイント低下の48.0を記録した一方で、先行き判断DIは▲3.7ポイント低下の48.5となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+7572億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の街角景気、先行き指数2カ月ぶり悪化 基調判断を下方修正
内閣府が11日発表した2018年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は48.0と、前の月から3.0ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.5と、前の月から3.7ポイント低下した。昨年末の株価下落や世界経済の先行き不透明感が景気実感に反映された。
内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」に下方修正した。基調判断の下方修正は2018年5月以来7カ月ぶり。
現状判断指数を部門別にみると家計動向が3.0ポイント低下、企業動向が2.7ポイント低下、雇用が3.5ポイント低下といずれも悪化した。家計動向では「忘年会シーズンにもかかわらず夜は週末以外はどちらかといえば振るわない。週末も例年より悪い」(北陸のタクシー運転手)といった声が聞かれた。企業動向でも12月中に住宅ローン減税の拡充などが発表されたことで住宅関連に様子見の動きが見られるといった声があった。
先行き判断指数の部門別も、家計動向、企業動向、雇用とも低下した。株価下落で「国内富裕層の動きが鈍くなる」(南関東の百貨店)などの声があった。住宅関連でも株価下落により資産効果が失われることを懸念する声があった。企業動向では世界情勢の不透明感や人手不足などを懸念する声が多い。
内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とし、先行きについて「海外情勢や金融資本市場の動向等に対する懸念がみられる」とした。
経常黒字、11月43.5%減 貿易収支が赤字に転じる
財務省が11日発表した2018年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は7572億円の黒字だった。黒字は53カ月連続だが、黒字額は前年同月に比べて43.5%縮小した。黒字額が前年同月比で減少するのは5カ月連続。原油高による輸入増を背景に貿易収支が赤字に転じたことが響いた。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は1兆4388億円の黒字だった。海外子会社から受け取る配当金など直接投資収益が伸び、黒字額は8.2%増加した。
輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は121億円の黒字だった。輸送収支の赤字額拡大が響き、黒字額は前年同月の189億円に比べて縮小した。一方、旅行収支は訪日外国人の増加を背景に1723億円の黒字と11月としての過去最高を記録した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5591億円の赤字(前年同月は1991億円の黒字)だった。原油価格の上昇で原粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入が増加し、輸入額が全体で13.5%増加した。船舶や有機化合物など輸出も全体で1.9%伸びたが、輸入の増加が上回った。

なるべく短めの記事を選んだつもりなんですが、それでも2つの統計を並べるとやたらと長くなりました。いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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景気ウォッチャーについては、現状判断DIが3か月ぶりに悪化し、統計作成官庁である内閣府では「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、(以下略)」と下線部の一服感を加えて、景気判断は半ノッチの下方修正と私は受け止めています。「景気判断理由集」をパラパラと読むと、消費の弱さが目につきますし、衣料のように暖冬を理由に上げている場合もある一方で、株価下落や景気全般の悪化などのマクロ経済動向も上げられています。先行きでは、米中貿易摩擦とともに10月の消費税率の引き上げも懸念材料となっているように私は感じました。今週火曜日に公表された消費者態度指数が需要サイドの消費者マインドであるのに対して、景気ウォッチャーは供給サイドの消費者マインドを指標ですから、いわゆる「消費者の財布のひもが固い」といった趣旨の表現が「理由集」にいくつか散見されています。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。まず、上のグラフから明らかな通り、2017年102~12月期くらいを直近のピークにして経常収支の黒字幅はジワジワと縮小を見せていましたが、季節調整済の系列では11月の経常収支は黒字幅が拡大しました。しかし、これも上のグラフの黒い部分の積み上げ棒グラフで示された貿易収支は赤字のままですので、赤い棒グラフの1次所得収支が黒字を拡大させており、要するに、ドル金利が上昇しているわけです。先行きについては、原油価格の低下に伴う輸入額の減少と先進国や中国の経済停滞に起因する輸出額の減少とが同時に施行しており、いかにも景気が停滞しているような縮小均衡っぽい動きの中で、どちらの縮小効果が大きいか、ということになります。

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2019年1月10日 (木)

足踏み続く景気動向指数と日銀「さくらリポート」やいかに?

本日、内閣府から昨年2018年11月の景気動向指数が公表されています。CI先行指数は前月差▲0.3ポイント下降して99.3を、CI一致指数も▲1.9ポイント下降して103.0を、それぞれ記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

11月の景気一致指数、2カ月ぶり低下 10月の大幅上昇の反動
内閣府が10日発表した2018年11月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比1.9ポイント低下の103.0だった。低下は2カ月ぶり。9月は台風などの災害で生産や出荷が落ち込んだが、10月は挽回生産などで前月比で大幅な上昇となっていた。11月は「10月の反動が出た」とみている。
内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断を「足踏みを示している」に据え置いた。一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象になる7系列すべてが指数のマイナスに影響した。
鉱工業用生産財出荷指数や生産指数(鉱工業)などのマイナスが目立った。10月に大きく上向いた鉄鋼や電子部品などが11月は反動で落ち込んだ。商業販売額も振るわなかった。内閣府は「9月から自然災害の影響で振れが大きくなっていたが、今後は落ち着いていくだろう」としている。
数カ月後の景気を示す先行指数は0.3ポイント低下の99.3と2カ月ぶりに低下した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は0.4ポイント上昇の104.0だった。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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景気動向指数、特に、CI一致指数は鉱工業生産指数(IIP)との連動性が高いのは従来から指摘している通りですが、最近の動向については、9月には自然災害に起因する供給制約や物流の停滞などから下降を示した後、10月にはその9月の落ち込みからの復旧が見られて大きくジャンプしたんですが、11月指数はまたまたその反動により下降を示しています。引用した記事にもある通り、CI一致指数に用いられている7系列がすべてマイナスを記録しています。すなわち、寄与度の順で見て、鉱工業用生産財出荷指数▲0.59、投資財出荷指数(除輸送機械)▲0.41、商業販売額(卸売業)(前年同月比)▲0.33、商業販売額(小売業)(前年同月比)▲0.29、生産指数(鉱工業)▲0.21などとなっています。そして、統計作成官庁である内閣府の基調判断は「足踏み」で据え置きとなっているんですが、上方改定されると仮定すれば1ノッチ上の景気判断は「拡大」ですから、3か月連続で3か月後方移動平均がプラスに転じなければなりません。10~11月は2か月連続で3か月後方移動平均がプラスを示していて、もしも、これまた仮定のお話ですが、12月統計で3か月後方移動平均がプラスを付ければ、基調判断は「拡大」に戻る可能性があります。そうなれば、いままでも、何回か、このブログでお示ししたように、現在の景気拡大局面が今年2019年1月まで継続すれば、米国のサブプライム・バブルに対応する戦後最長の景気拡大期間72か月を超える計算です。あるいは、このまま足踏みが続いたり、むしろ、景気悪化の方向に動く可能性もないわけではないと私は考えており、いずれにせよ、現時点で利用可能な情報だけからは、確たる判断を下すことは私には出来ません。

最後に、日銀から「さくらリポート」が公表されています。全国9地域のうち、北海道と中国地方の2地域の景気判断を前回の2018年10月調査から引き上げた一方で、ほかの7地域は据え置かれています。なお、全地域の景気判断に「拡大」あるいは「回復」の表現が入っていたりします。以下の通りです。

 【2018年10月判断】前回との比較【2019年1月判断】
北海道基調としては緩やかに回復しているものの、北海道胆振東部地震の影響による下押し圧力がみられている基調としては緩やかに回復しており、北海道胆振東部地震の影響による下押し圧力は緩和を続けている
東北緩やかな回復を続けている緩やかな回復を続けている
北陸拡大している拡大している
関東甲信越緩やかに拡大している緩やかに拡大している
東海拡大している拡大している
近畿台風21号による経済活動面への影響がみられるものの、緩やかに拡大している緩やかな拡大を続けている
中国平成30年7月豪雨によりダメージを受けたものの、社会インフラの復旧等に伴い、豪雨の影響が低減する中で、基調としては緩やかに拡大している緩やかに拡大している
四国回復している回復している
九州・沖縄しっかりとした足取りで、緩やかに拡大しているしっかりとした足取りで、緩やかに拡大している

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2019年1月 9日 (水)

統計として疑問あるも毎月勤労統計から何が読み取れるか?

本日、厚生労働省から昨年2018年11月の毎月勤労統計が公表されています。従来からのサンプル・バイアスとともに、調査上の不手際もあって、統計としては大いに信頼性を損ねたんですが、足元では同一ベースで統計を作成しているとのことです。統計のヘッドラインとなる名目賃金は季節調整していない原数値の前年同月比で+2.0%増の28万3607円に上昇しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

18年11月の名目賃金、前年比2.0%増 増加は16カ月連続、毎月勤労統計
厚生労働省が9日発表した2018年11月の毎月勤労統計調査(速報、従業員5人以上)によると、11月の名目賃金にあたる1人あたりの現金給与総額は前年同月比2.0%増の28万3607円だった。増加は16カ月連続。基本給の増加が続いた。
内訳をみると、基本給にあたる所定内給与が1.6%増の24万4981円だった。残業代など所定外給与は1.1%増。ボーナスなど特別に支払われた給与は9.7%増だった。物価変動の影響を除いた実質賃金は1.1%増だった。
パートタイム労働者の時間あたり給与は1.7%増の1134円。パートタイム労働者比率は0.31ポイント低下の30.71%だった。厚労省は賃金動向について「基調としては緩やかに増加している」との判断を据え置いた。
毎月勤労統計は、一部の対象について調査手法が規定と異なっていたことが明らかになっている。厚労省は原因について「調査中」とするとともに、11月分については「調査手法は変えていない」としている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、毎月勤労統計のグラフは下の通りです。上から順に、1番上のパネルは製造業の所定外労働時間指数の季節調整済み系列を、次の2番目のパネルは調査産業計の賃金、すなわち、現金給与総額ときまって支給する給与のそれぞれの季節調整していない原系列の前年同月比を、3番目のパネルはこれらの季節調整済み指数をそのまま、そして、1番下のパネルはいわゆるフルタイムの一般労働者とパートタイム労働者の就業形態別の原系列の雇用の前年同月比の伸び率の推移を、それぞれプロットしています。

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引用した記事の最後のパラにも見られる通り、何分、統計としての信頼性が著しく毀損した統計ですので簡単に我が国雇用の方向性だけコメントしておきたいと思います。まず、景気に敏感な所定外労働時間については、ほぼ生産とシンクロして増減していおり、全体として、2014年の消費税率引き上げ後はほぼ横ばいで推移しています。消費増税が経済の停滞をもたらした点は疑いありません。賃金については、かなり完全雇用に近い労働市場動向のため、最近時点でようやく本格的な上昇が始まったと考えてよさそうです。しかし、まだ前年同月比で+1%を少し上回ったところであり、消費者物価(CPI)の上昇率を十分に上回る段階には達していません。その意味で、消費拡大には力不足の気がします。最後に、完全雇用に近いとはいえ、まだ、フルタイムよりもパートの伸びが高い状況であり、正社員の有効求人倍率が1倍を超えているとはいえ、より安定した雇用の実現がまだ課題といえます。半年余り先の消費税率引き上げに向けて、まだ雇用の拡大が十分かどうか、私は自信が持てないところです。

最後にどうでもいいことながら、私もその昔に統計局の担当課長として、毎月の統計公表の記者会見をやっていた経験があるんですが、今日の毎月勤労統計の公表会見なんて、ホントに針のむしろもかくや、というカンジだったのではないかと勝手に想像しています。

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2019年1月 8日 (火)

2年1か月振りの低水準まで低下した消費者態度指数をどう見るか?

本日、内閣府から昨年2018年12月の消費者態度指数が公表されています。季節調整済の系列で見て前月から▲0.2ポイント低下して42.7を記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

12月の消費者態度指数、2年1カ月ぶり低水準 食品価格上昇
内閣府が8日発表した2018年12月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比0.2ポイント低下の42.7と3カ月連続で低下した。指数は16年11月以来、2年1カ月ぶりの低水準だった。内閣府は基調判断を「弱い動きがみられる」に据え置いた。
指数を構成する意識指標を項目別にみると、「暮らし向き」が0.2ポイント低下し40.6と4カ月連続で低下した。冷凍食品などの価格やエネルギー価格が上昇しているほか、世界経済の先行き懸念が影響した。「収入の増え方」は0.1ポイント低下の41.7、雇用環境は0.8ポイント低下の45.8だった。一方、「耐久消費財の買い時判断」は0.4ポイント上昇の42.8だった。
消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は、株式相場の下落を反映し40.9と前月から1.7ポイント低下した。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比1.3ポイント低い83.2%だった。「低下する」は0.3ポイント高い4.0%、「変わらない」は1.0ポイント高い10.8%だった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は12月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は6309世帯、回答率は75.1%だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、例月に比べてとても長い記事に仕上げています。続いて、消費者態度指数のグラフは以下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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消費者態度指数を構成するコンポーネントを前月差でみると、「耐久消費財の買い時判断」は+0.4ポイント上昇したものの、「雇用環境」が▲0.8ポイント、「暮らし向き」が▲0.2ポイント、「収入の増え方」が▲0.1ポイント、それぞれ低下となっています。特に、人手不足が雇用統計などで明らかであるにもかかわらず、雇用環境に関するマインドが大きく低下した点は気がかりです。引用した記事によれば、統計作成官庁である内閣府ではエネルギーや食品の価格上昇に対する消費者の懸念を要因として上げているようですが、消費者態度指数のコンポーネントではなく外数ながら、「資産価値」に関する意識指標は前月差で▲1.7ポイント低下していますので、米国発の株価をはじめとする金融資産価格の乱高下、というか、不安定な金融市場動向が消費者マインドに影響を及ぼしている可能性があるんではないか、と私は考えています。また、これも、引用した記事にある通り、消費者態度指数の2018年12月の水準である42.7は、2016年11月に記録した41.0から2年1か月振りの低い水準なんですが、DIですので水準で見るのは必ずしも適切ではなく、むしろ、2017年11月から2018年1月の3か月連続で記録した44.6を直近のピークにして、ほぼほぼ1年に渡って下がり続けている方向性が、今後、どこまで続くのかを見る必要があります。おそらく、供給サイドのマインドである景気ウォッチャーは今年10月からの消費税率の引き上げ直前の駆け込み需要のころには上昇する可能性が高いと私は考えている一方で、需要サイドのマインド指標である消費者態度指数は、ひょっとしたら、下がり続ける可能性も否定できませんし、もちろん、景気ウォッチャーも消費者態度指数も10月の消費税率引き上げ以降は大きく低下することは確実です。賃上げが十分でないことからマインドだけで消費を牽引するのはサステイナビリティに欠けると、従来からこのブログで主張していましたが、財政的なサポートが手厚いとはいえ、消費税率引き上げを半年余り先に控えて、消費の動向が懸念されます。

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2019年1月 7日 (月)

@nifty なんでも調査団による「和服についてのアンケート・ランキング」やいかに?

先週金曜日1月4日付けで、@nifty なんでも調査団による「和服についてのアンケート・ランキング」が明らかにされています。いかにも、正月の1月は和服を着る機会が最も高そうな気がするんですが、私もこの10年以上に渡って和服は着用していません。いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、@nifty なんでも調査団のサイトから 和服を着る機会のランキング のグラフを引用すると上の通りです。圧倒的なトップの「和服を着る機会は無い」を別にすれば、いわゆる冠婚葬祭の折りであり、結婚式とか、成人式とか、葬式・法事などが上位につけている気がします。結婚式で和服を着て以来の25年近くで私が和服を着た機会は、その結婚式を別にしてわずかに3度であり、夏祭りに浴衣を着たのと、茶道の初釜と、ジャカルタから帰国直後の正月の初詣で一家4人そろって日本帰国のムードを高めた際だけです。なお、男女別のランキングで女性の方が男性より高いのは理解できるところですが、例外的に男性の方が女性より比率の高い「旅行先 (旅館など)」については、私が勝手に推測する限り、旅先の備え付けの寝間着代わりの浴衣だったりするんでしょうか。温泉旅館ではありがちな気もします。別の問いで、浴衣、作務衣・甚平を含めて、持っている和服の数を質問していますが、男性で60.6%、女性でも25.1%が和服を持っていないと回答していますので、レンタルという手もあるにはあるものの、旅館の寝間着代わりの浴衣であれば、和服を持っていなくても着る機会はあるのだろうという気はします。

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次に、@nifty なんでも調査団のサイトから この1年以内に和服を着た回数 のグラフを引用すると上の通りです。男女ともにこの1年では和服を着ていない、ゼロ回という回答が圧倒的なんですhが、なぜか、この1年に限っては男性で和服を着た比率の方が女性よりも高くなっています。大きな謎なんですが、和服を着た意識ある男性の回答率が高かったのかもしれません。繰り返しになりますが、私も結婚式で紋付き羽織り袴を着用に及んでから、25年近くで結婚式を含めて4回、含めないと3回、すなわち、ならせば和服を着るのは数年に1度に過ぎません。まあ、平均的なのか、という気もします。

@nifty なんでも調査団では、これらのほかに、和服の似合う芸能人とか、和服のイメージなどのランキングも示していますが、いろいろあって割愛します。

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2019年1月 6日 (日)

今日は小寒で寒の入り、いよいよ本格的な冬の寒さ到来か?

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今日1月6日は24節季のひとつである小寒です。別名では寒の入りとも呼ばれています。
上のテーブルは日本気象協会のサイトから引用しているんですが、週半ばの9~10日は、かなり気温が下がって寒そうですが、その後は3連休にかけて気温が上がる予報となっています。さらに次の週末である1月19~20日にセンター試験が予定されていますが、我が家の倅どもはそういった時期を過ぎてしまいましたので、私はほぼほぼ無関心です。それよりも、年も明けて定年退官後の職探しを本格的に始めたいと思います。もう遅かったりするんでしょうか?
それにしても、「真冬並み」という表現が見受けられますが、1月から2月にかけてのこの時期が冬本番だと私は考えているんですが、日本気象協会では真冬はいつごろと見なしているんでしょうか。やや不思議です。

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2019年1月 5日 (土)

今週の読書は通常通りに計5冊!

今週は年末年始休みだったんですが、ついつい通常通りの読書をこなしてしまいました。他方、サンソムの「チューダー王朝弁護士シャードレイク」のシリーズもそこそこ年末年始に読んだりもしました。それは別にして、経済書などは以下の計5冊です。

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まず、横山和輝『日本史で学ぶ経済学』(東洋経済) です。著者は名古屋市立大学の研究者であり、専門は経済史です。本書は7章から成っており、前半の基礎編は3章、貨幣、インセンティブ、株式会社で、後半の応用編の4章は銀行危機、取引コスト、プラットフォーム、教育という構成です。ノッケからビットコインなどの仮想通貨と中世日本の宋銭の輸入の同一性について、あるいは、織田信長などの楽市楽座にプラットフォームをなぞらえたりと、かなり強引な立論を組み立てていたりしますし、第2章で「インセンティブ」を刺激と訳してしまっていて、通常の誘引と違うと感じたりしていますが、そのあたりの学術的な正確性を少し無視すれば、それなりに教養あふれる経済書、という気がしないでもありません。歴史を振り返ると、いくつかの経済制度などについては合理的な制度設計をすれば、自然と近代ないし現代的な経済学の応用に落ち着くといえますから、前近代的な不合理性を取り除き、近代合理主義の要素を取り入れれば、そのままに経済合理性が実現できる可能性が大きいと私は考えています。ですから、本書のように、無理やりにこじつけなくても、織田信長のように時代を画する政治家や大岡忠相のような能吏であれば、そこは自然と経済合理性と軌を一にする判断ができるのではないかというわけです。どこかの企業のように粉飾決算を急いだり、あるいは、それがもとで倒産したりするのは、何らかの不合理的な企業行動、経済活動の累積がありそうな気がします。その素材として歴史を持ち出すのは、秀逸というと大げさかもしれませんが、それなりに人口に膾炙していて一般大衆に馴染みある判りやすい比喩や暗喩を用いた本書のような解説本は、繰り返しになりますが、学術的な正確性を大目に見た上で、それなりに有益な読書だという気がします。ただ、歴史を題材に経済学を解説しているのか、逆に、経済学を基に歴史を概観しているのか、やや不分明な気もしたりします。

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次に、ジャック・アタリ『海の歴史』(プレジデント社) です。著者はご存じ、フランスを代表する文化人であり、世界的な知性でもあり、最近では現在のマクロン大統領を見出したことでも注目されています。私の記憶する限り、もともとがミッテラン大統領のころに影響力を持ち始めたんではないかと考えられますから、それなりに左翼的な思考が中心となっています。本書でも触れられている通り、マハンの『海上権力史論』の焼き直しではあるんですが、典型的な会場帝国の英米に比較して、独仏は陸上帝国であり、ロシアや中国はもっとそうですから、本書でも、数回に渡ってフランスは海上制覇を逃していると反省をしています。その観点は基本的に地政学的であり、戦争や安全保障に源流がありそうですが、同時に、海の経済的な側面も見逃してはいません。まず、海洋資源採掘の産業である漁業についてはチョッピリ取り上げられているだけです。そして、大きな比重が置かれているのは貨物と情報の伝達ないし輸送です。確かに、石油をはじめとするエネルギーや小麦などの穀物は船で海上輸送するのに圧倒的な優位があります。従って、本書でもコンテナ輸送と海底ケーブルの敷設にスポットが当てられています。前半⅓くらいは、本書のタイトルと同じで海の世界史をひも解き、それから後の後半、特に最後は海のさらなる活用と保護に関して、著者なりのいくつかの提言めいたリストで終わっていますが、ハッキリいって、とってもありきたりで何度も聞いたような事項が並べられているだけであり、この著者でなければ、多くの人は読み飛ばすような気がします。私はアタリの最新刊、ということで借りて読みましたが、それほどの内容ではありません。期待外れともいえますが、こんなもん、という気もします。読むとしても、大きな期待は禁物でしょう。

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次に、辛島デイヴィッド『Haruki Murakamiを読んでいるときに我々が読んでいる者たち』(みすず書房) です。著者は早大の文学研究者であり、村上春樹文学が専門なんでしょうか。かなりの程度に学術書的な内容なんですが、タイトルからして私は少し誤解していました。つまり、その昔に『1Q84』でヤナーチェクの「シンフォニエッタ」が注目されたように、文学では何らかの典故が見られるわけですから、b村上文学でコッソリと引用されたり、やや変形させて引用されていたり、もちろん、文学だけでなく音楽や美術などで村上作品で直接でなくとも触れられているような文学以外の他のジャンルの芸術などについて分析している学術書、というよりも、教養書のようなものを想像していましたが、違います。本書では、1080年代半ばのバブル経済初期に村上作品を英訳して米国に売り込もうと試み、結果的には、それに成功してノーベル文学賞候補にまで村上春樹をビッグにした出版社や翻訳家や編集者について取り上げています。すなわち、我が国文学のビッグスリーである谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫、あるいは、安部公房を加えてビッグフォーに次ぐ村上を米国出版界に押し出そうとしたわけです。私のように母語で村上作品を読める読者には関係なさそうな気もしますし、それなりに舞台裏や黒子を表に出す作業ですから、どこまで期待していいのかは議論の分かれるところかもしれません。ただ、まだ現役の作家であり、作品を出し続けているわけで、それなりに、同時代人としてインタビューながら村上作品を米国市場に出すための翻訳や編集や出版の実態を現時点で明らかにしておくことは学術的には意味ありそうな気もします。他方で、ほとんどの典拠がインタビューですから、話者と聴取者の双方により脚色・潤色されたり、歪められたりした可能性もやや懸念されます。

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次に、M.R. オコナー『絶滅できない動物たち』(ダイヤモンド社) です。著者はジャーナリストであり、『ニューヨーカー』、『アトランティック』、『ウォール・ストリート・ジャーナル』、『フォーリン・ポリシー』などに寄稿した経験を持っているようです。英語の原題は Ressurection Science であり、直訳すれば「復活の科学」とでもなるんでしょうか。2015年の出版です。ということで、人類に起因した絶滅に瀕した生物をどのようにすればいいのか、遺伝子レベルで復活させるのか、それとも、動物園などにおける「飼育」のレベルではなく、いわゆる生物界におけるニッチを探して自然界に再生させるまでする必要があるのか、などなど、絶滅種やその危惧種に対する議論を取りまとめています。タンザニアのカエルやアフリカのサイ、いろんな本で見受けられるアメリカのリョコウバト、あるいは、思い切ってネアンデルタール人まで、さまざまな種が取り上げられています。かつて、ダイヤモンド教授の一連の書籍を読んだ際に、どの本だったかは忘れましたが、生物の多様性について飛行機のリベットになぞらえられてあり、どれかひとつが失われることによるバランスの議論がなされていたように記憶しています。私は遺伝子レベルで生物多様性を論じることに大きな意味は見いだせず、生物界のバランスの中で失われて仕方ない生物種もあるような気がしますが、他方で、リョコウバトのように人類の勝手な行動により失われる種については惜しいような気もします。経済学はモデルの美しさから物理学に親近感を覚え、歴史的な進歩を生物学的進化になぞらえて、やっぱり、生物学に親近感を覚えるんですが、生物学と経済学は物理学と違って、ともにやたらと多数の変数を含むモデルですから、モデルの数学的な分析だけからでは予測の正確性に欠ける場合があります。本書でも指摘されているように、気候変動と生物進化の関係も解き明かされつつあり、なかなか興味不快問題ながら解決の難しさも感じてしまいました。

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最後に、古市憲寿『平成くん、さようなら』(文藝春秋) です。著者は話題の社会学者であり、若者文化の分析で若くして名を成しています。第160回芥川賞候補に上げられています。なお、タイトルの「平成」は今年2019年4月限りで終わる年号ではなく、その年号の登場とともに生を受けた人物名であり、「ひとなり」とよむようです(p.7)。そして、やや年齢違いながら、著者ご本人や落合陽一などになぞらえられているような気もします。でも、この作品がフィクションの小説ですので、そのあたりは確実ではありません。そして、その主人公は著者の造形らしく、合理的でクールな人柄で、例えば、意図して合理性を失う行為である飲酒を忌避したりします。しかも、平静を代表する人物であるだけでなく、学術的な成果もあってテレビのコメンテータなどでも活躍して金銭的な不自由なく、漫画家の霊場としてビッグコンテンツ管理で、これまた金銭的な不自由ない女性と同棲しつつも、性的な接触を嫌ったりもします。そして、ここからが問題なのですが、この作品がとても小説的で現実と異なっているのは、日本で安楽死が合法化されているだけでなく、かなりの安楽死先進国となっている点であり、平成くんが安楽死を希望している、ということです。同棲しているパートナーは平成くんに安楽死を思いとどまらせようといろいろなことをします。それがストーリーを形成しているわけですが、時間の進みとともに、平成くんが安楽死を希望している理由、あるいは理由の一端が明らかにされたりしますが、ラストの数ページを読む限り、平成くんは安楽死したのではないか、と思わせる締めくくりなんだろうと私は受け止めています。今上天皇の退位と年号としての平成の終了に関しては、大きなリンクはないと考えるべきです。

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2019年1月 3日 (木)

正月3日目はまったりと過ごす!!

年が明けてからは、今日こそ少し北風が強かったものの、穏やかでいいお正月のお天気が続きました。私は疲労が蓄積していたのか、今日も11時過ぎまで寝坊して、睡眠十分というところです。寝て食べて、読書とDVD鑑賞で過ごしたお正月でした。明日の御用始めは出勤予定です。

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2019年1月 2日 (水)

正月2日目はDVDを見てゆったりと過ごす!!

昨日の元旦に続いて、今日も穏やかでいいお天気です。
実は、大晦日から3日続けてDVDで「ホビット」3部作、すなわち、「思いがけない冒険」、「竜に奪われた王国」、「決戦のゆくえ」を3日連続で鑑賞しました。ご存じ、原作は J.R.R. トールキン、監督はピーター・ジャクソン、主演はマーティン・フリーマンです。どうでもいいことながら、12月30日の「思い出のマーニー」から数えれば4日連続だったりします。下の倅にも確認したんですが、第1作の「思いがけない冒険」は5年くらい前に下の倅と2人でロードショーを近くのシネコンに見に行った記憶があります。でも、「竜に奪われた王国」と「決戦のゆくえ」は初めて見ました。昨年のお正月は「シン・ゴジラ」を見たように記憶していて、この年末年始に見たのもいずれも素晴らしい映画ばかりでしたが、どうも、今年は子供向け映画ばかり見ているような気がしてきました。

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2019年1月 1日 (火)

近所の神社に初詣に行く!!

改めまして、
あけましておめでとうございます!

穏やかないいお正月です。近くの神社に初詣に行きました。我が家は数年前まで一家そろって初詣に出かけていたんですが、すでに上の倅は3月に大学を卒業して4月には就職する予定ですし、下の倅ですら大学に入学し20歳に達して大阪で下宿生活を送っています。ですので今や、一家バラバラで初詣に出かけています。私がひとりで向かったのは、近くの氏神様なんでしょうが、天神系の名称ではないかと想像しています。行きは昨年買い求めた破魔矢を持ってお焚きあげにお供えし、帰りは新しい破魔矢を買い求めていますので、行きも帰りも往復とも破魔矢を持っての初詣でした。おみくじは末吉でした。
下の写真は初詣に行った我が家の近くの神社です。

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あけましておめでとうございます!!

あけましておめでとうございます!

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新しい年2019年がつい先ほど数分前に明けました。毎年元旦には、エコノミストの端くれとして、日本と世界の経済が上向き、国民生活が豊かになることを祈念していましたが、今年は残すところ3か月で公務員も定年退官ですので、国民とお国のためにがんばってお仕事をする一方で、家族と自分のためにも職探しに励みたいと思います。なお、どうでもいいことながら、先ほど終わった紅白歌合戦は松田聖子の「切手のないおくりもの」が圧勝だった気がします。
それでは、そろそろ寝ます。おやすみなさい。

なお、上の画像はART BANKのサイトから借用しています。

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