大きく悪化した景気ウォッチャーと黒字が続く経常収支!
本日、内閣府から昨年2018年12月の景気ウォッチャーが、また、財務省から同じく昨年2018年11月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から前月差▲3.0ポイント低下の48.0を記録した一方で、先行き判断DIは▲3.7ポイント低下の48.5となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+7572億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
12月の街角景気、先行き指数2カ月ぶり悪化 基調判断を下方修正
内閣府が11日発表した2018年12月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は48.0と、前の月から3.0ポイント低下(悪化)した。悪化は3カ月ぶり。2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.5と、前の月から3.7ポイント低下した。昨年末の株価下落や世界経済の先行き不透明感が景気実感に反映された。
内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」に下方修正した。基調判断の下方修正は2018年5月以来7カ月ぶり。
現状判断指数を部門別にみると家計動向が3.0ポイント低下、企業動向が2.7ポイント低下、雇用が3.5ポイント低下といずれも悪化した。家計動向では「忘年会シーズンにもかかわらず夜は週末以外はどちらかといえば振るわない。週末も例年より悪い」(北陸のタクシー運転手)といった声が聞かれた。企業動向でも12月中に住宅ローン減税の拡充などが発表されたことで住宅関連に様子見の動きが見られるといった声があった。
先行き判断指数の部門別も、家計動向、企業動向、雇用とも低下した。株価下落で「国内富裕層の動きが鈍くなる」(南関東の百貨店)などの声があった。住宅関連でも株価下落により資産効果が失われることを懸念する声があった。企業動向では世界情勢の不透明感や人手不足などを懸念する声が多い。
内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる」とし、先行きについて「海外情勢や金融資本市場の動向等に対する懸念がみられる」とした。
経常黒字、11月43.5%減 貿易収支が赤字に転じる
財務省が11日発表した2018年11月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は7572億円の黒字だった。黒字は53カ月連続だが、黒字額は前年同月に比べて43.5%縮小した。黒字額が前年同月比で減少するのは5カ月連続。原油高による輸入増を背景に貿易収支が赤字に転じたことが響いた。
海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支は1兆4388億円の黒字だった。海外子会社から受け取る配当金など直接投資収益が伸び、黒字額は8.2%増加した。
輸送や旅行といった取引の収支を示すサービス収支は121億円の黒字だった。輸送収支の赤字額拡大が響き、黒字額は前年同月の189億円に比べて縮小した。一方、旅行収支は訪日外国人の増加を背景に1723億円の黒字と11月としての過去最高を記録した。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5591億円の赤字(前年同月は1991億円の黒字)だった。原油価格の上昇で原粗油や液化天然ガス(LNG)の輸入が増加し、輸入額が全体で13.5%増加した。船舶や有機化合物など輸出も全体で1.9%伸びたが、輸入の増加が上回った。
なるべく短めの記事を選んだつもりなんですが、それでも2つの統計を並べるとやたらと長くなりました。いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、景気ウォッチャーのグラフは以下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。
景気ウォッチャーについては、現状判断DIが3か月ぶりに悪化し、統計作成官庁である内閣府では「緩やかな回復基調が続いているものの、一服感がみられる。先行きについては、(以下略)」と下線部の一服感を加えて、景気判断は半ノッチの下方修正と私は受け止めています。「景気判断理由集」をパラパラと読むと、消費の弱さが目につきますし、衣料のように暖冬を理由に上げている場合もある一方で、株価下落や景気全般の悪化などのマクロ経済動向も上げられています。先行きでは、米中貿易摩擦とともに10月の消費税率の引き上げも懸念材料となっているように私は感じました。今週火曜日に公表された消費者態度指数が需要サイドの消費者マインドであるのに対して、景気ウォッチャーは供給サイドの消費者マインドを指標ですから、いわゆる「消費者の財布のひもが固い」といった趣旨の表現が「理由集」にいくつか散見されています。
続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。まず、上のグラフから明らかな通り、2017年102~12月期くらいを直近のピークにして経常収支の黒字幅はジワジワと縮小を見せていましたが、季節調整済の系列では11月の経常収支は黒字幅が拡大しました。しかし、これも上のグラフの黒い部分の積み上げ棒グラフで示された貿易収支は赤字のままですので、赤い棒グラフの1次所得収支が黒字を拡大させており、要するに、ドル金利が上昇しているわけです。先行きについては、原油価格の低下に伴う輸入額の減少と先進国や中国の経済停滞に起因する輸出額の減少とが同時に施行しており、いかにも景気が停滞しているような縮小均衡っぽい動きの中で、どちらの縮小効果が大きいか、ということになります。
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