2018年10-12月期GDP速報1次QE予想は潜在成長率近傍の物足りない実質成長率か?
先々週の各種政府統計など、ほぼ必要な統計が出そろい、明後日の2月14日に昨年2018年10~12月期GDP速報1QEが内閣府より公表される予定となっています。すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。可能な範囲で、足元の1~3月期以降の景気動向を重視して拾おうとしています。明示的に先行き経済を取り上げているシンクタンクは決して多くありませんでした。その中で、大和総研とみずほ総研は長めに、ほかのシンクタンクもそれなりに、それぞれ引用してあります。特に大和総研は需要項目別に先行き見通しがあるんですが、取りあえず、個人消費だけを引用してあります。いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。
機関名 | 実質GDP成長率 (前期比年率) | ヘッドライン |
日本総研 | +0.4% (+1.4%) | 当面を展望すると、外需の不透明感は残存するものの、良好な雇用・所得環境のもと、内需主導の景気回復が持続し、潜在成長率並みの成長を確保する見通し。もっとも、米中貿易摩擦の動向次第では、株価下落を通じた消費への下押しや、企業マインドの悪化を受けた設備投資の下振れなどが起こる可能性もあり、留意が必要。 |
大和総研 | +0.2% (+0.7%) | 先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。当面、鍵を握るのはエネルギー価格の動向と消費増税をめぐる各種の対策となりそうだ。 まず、個人消費は一進一退が続くとみている。これまで、労働需給のタイト化に伴う名目賃金上昇の効果は物価高により相殺されてきたが、11月以降原油価格が大きく下落したことで、足下では実質賃金も上昇している。ただし、人手不足に伴う賃金上昇を賃金カーブのフラット化や残業削減によって企業が相殺することにより、名目賃金の上昇ペースが鈍る可能性には注意が必要だ。 また、2019年10月に予定されている消費増税に関しては、各種経済対策の実施により駆け込み需要・反動減はいくらか緩和される見込みである。ただし、施策の一つであるポイント還元策(案)が、制度終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減を生じさせる点には留意しておく必要がある。 |
みずほ総研 | +0.4% (+1.4%) | 1~3月期以降については、海外経済の減速に伴う輸出の伸び鈍化などを受け、力強さに欠ける展開が続くと予想する。 個人消費は労働需給のひっ迫とそれに伴う賃上げ率の高まりが押し上げ要因となり、底堅い推移が続くだろう。設備投資は、高水準の企業収益や人手不足による合理化・省力化投資が引き続き下支えになるものの、製造業を中心にストック調整圧力が徐々に高まるとみられるため、緩やかな伸びに留まる公算だ。輸出は、中国経済を中心に海外経済の減速がしばらく続くほか、これまでの輸出のけん引役であったIT需要が既にピークアウトしていることから、伸びが鈍化していくとみている。 リスク要因としては、貿易摩擦の激化に注意が必要だ。既に一部の企業で設備投資を先送りする動きが出はじめているが、米中間の貿易摩擦が更に高まった場合、輸出の更なる低下や設備投資の減速を通じ、景気が下押しされる可能性がある。 |
ニッセイ基礎研 | +0.3% (+1.3%) | 2018年10-12月期は前期比年率1%程度とされる潜在成長率を上回るプラス成長となったが、自然災害の影響で大幅マイナス成長となった7-9月期の後としては物足りない伸びにとどまった。景気は実勢として弱めの動きとなっており、年明け以降も停滞色の強い状況が続く公算が大きい。海外経済の減速に伴う輸出の失速を起点として景気が後退局面入りするリスクはここにきて高まっている。 |
第一生命経済研 | +0.3% (+1.2%) | 景気が足元で後退局面に陥っている、あるいは今後陥る可能性が高いとは思わない。回復か後退かで分けるのならば、依然として回復局面という判断になるだろう。ただ、18年の景気の足取りが筆者の当初の想定をかなり下回ったことは確かであり、足元では「減速」よりも「踊り場」や「足踏み」といった表現の方が似合う景気状況にあるように見える。 |
伊藤忠経済研 | +0.9% (+3.5%) | 10~12月期の実質GDP成長率は前期比+0.9%(年率+3.5%)の高い伸びを予想。ただ、災害被害によって落ち込んだ前期の反動という面が大きく、均して見れば潜在成長率を下回る緩やかな拡大にとどまる。デフレ脱却への道のりは遠い。 |
三菱UFJリサーチ&コンサルティング | +0.2% (+0.9%) | 2018年10~12月期の実質GDP成長率は、自然災害発生による一時的な下押し圧力が剥落したことに加え、国内需要が底堅さを維持していることからプラス成長を回復したと予想される。ただし、輸入の増加によって外需寄与度が比較的大きめなマイナスとなるため、伸び率は前期比+0.2%(年率換算+0.9%)と、前期がマイナス成長だったことを勘案すると小幅の伸びにとどまる。 |
三菱総研 | +0.1% (+0.3%) | 2018年10-12月期の実質GDPは、季節調整済前期比+0.1%(年率+0.3%)と、2四半期ぶりのプラス成長を予測する。7-9月期に相次いだ自然災害からの回復は見られたものの、外需環境の悪化が重石となり、小幅のプラス成長にとどまったとみられる。 |
突飛にもっとも大きな成長率を予想している伊藤忠経済研とその逆の三菱総研を除けば、概ね年率換算で+1%前後と潜在成長率近傍の予想が多くなっている印象です。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでも年率で+1.2%が中央値となっています。2018年1~3月期のマイナス成長の後の4~6月期は年率+2.7%の高成長でしたから、それに比べれば、10~12月期の+1%の潜在成長率近傍というのはやや物足りない気もします。ただ、4~6月期も外需はマイナス寄与だったんですが、国際商品市況の石油価格がほぼほぼピークでしたから、私の直感でも10~12月期の外需のマイナス寄与は4~6月期よりも大きいと想像しています。いずれにせよ、10~12月期は消費と設備投資が伸びた一方で、海外要因が足を引っ張って、内需主導の成長ながら高成長ではない、というのが緩やかなコンセンサスのような気がします。なお、上のテーブルのヘッドラインのうち、ニッセイ基礎研の「景気が後退局面入りするリスクはここにきて高まっている」というのと、第一生命経済研の「景気が足元で後退局面に陥っている、あるいは今後陥る可能性が高いとは思わない」というのは一見相反するように見えますが、私は同じ意味なんだろうと受け止めています。
下のグラフはニッセイ基礎研のリポートから実質GDP成長率の推移を引用しています。
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