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2019年4月30日 (火)

秋山投手の好投とかみ合った打線で広島に快勝!!!

  RHE
広  島000000030 351
阪  神11010032x 8110

秋山投手の好投に加えて、ほぼほぼ完璧な試合運びで広島に快勝でした。投げては先発秋山投手が7回3安打無失点の好投を見せ、2番手の島本投手が出会い頭のスリーランを食らったものの、安定感十分で危なげないピッチング・スタッフの充実ぶりを見た気がします。打っては序盤は小刻みに得点を上げ、ルーキーの活躍もあって、終盤7~8回にも追加点ダメ押しと広島を突き放しました。ただ、新外国人のマルテ選手の実力がまだ発揮されていない恨みはあります。

明日も、
がんばれタイガース!

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帝国データバンク「『平成』産業構造変遷調査」やいかに?

昨日に続いて平成を振り返るシリーズで、4月22日付けで帝国データバンクから明らかにされた「『平成』産業構造変遷調査」を取り上げたいと思います。というか、簡単にまとめると、平成30年間における日本の産業変遷では、全9業種のうち構成比が拡大したのは「建設業」、「小売業」、「運輸・通信業」、「サービス業」の4業種であり、縮小したのは「製造業」、「卸売業」、「不動産業」、「農林水産業」、「鉱業」の5業種となっています。特に、もっとも大きく伸長したのは、「広告・調査・情報サービス業」であり、平成元年のシェア1.6%から平成30年には4.9%に、3.3%ポイント拡大しています。下のグラフは、pdfの全文リポートから引用した平成30年間の各産業・構成比推移です。

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2019年4月29日 (月)

統計局「統計が語る平成のあゆみ」から何を読み取るべきか?

先週4月26日付けで、総務省統計局の統計トピックスで「統計が語る平成のあゆみ」と題する記事が掲載されています。もちろん、pdfの詳細なリポートもアップされています。人口やライフスタイルなども興味あるところなんですが、ここはひとつ、雇用・労働と経済に絞ってグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、雇用・労働に関しては、量的に、平成に入ってから失業率が大きく上昇した後、平成最終年近くには、逆に、平成初期のバブル経済期並みに低下したことなんですが、それは次のグラフで取り上げるとして、質的には非正規雇用の拡大を指摘する必要があります。上のグラフでは、赤い折れ線グラフが非正規雇用の比率を示しており、平成元年には19.1%だったのが、平成30年には38.2%と比率で見て倍増しています。女性、特に、主婦層が働きやすいようにとのパートタイム労働が大きく拡大して、あるいは、労働者派遣が解禁されて、いずれも非正規雇用の増大につながりました。基本的に、正規雇用とは、第1にパートタイムでなくフルタイム、第2に有期でなく定年までの期限の定めない雇用で、第3に派遣ではなく直接の雇用、とされていますが、この3条件のいずれかから外れる非正規雇用が平成の30年間で大きく拡大しました。実は、私も3月末で定年退職し、今は週休3日といえば聞こえはいいんですが、逆から見て週4日のパートタイム労働に従事していたりします。

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次に、順番が逆になりましたが、労働・雇用の平成30年間の大きな特徴は、失業率の高まりと低下の循環です。上のグラフは年齢階層別の失業率をプロットしています。総平均は黒い太線で示されています。平成初期はバブル経済でもあり、失業率は2%そこそこだったんですが、バブルの崩壊とともに失業率が5%超まで上昇し、その後、米国のサブプライム・バブルとともに低下した後、そのサブプライム・バブル崩壊で再び5%超まで上がった後、平成終盤の現時点では、またまた2%台半ばまで低下しています。これはデモグラフィックな労働力人口の減少に伴う現象であって、決して景気の拡大に起因するわけではありませんが、そこは「鶏と卵」であって、失業率の低下とともに経済が活況を示すという波及経路もアリだという気がします。

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次に、何といっても平成経済の最大の特徴は今まで先進国経済が経験したことのなかった持続的な物価の下落という意味でのデフレです。上のグラフは消費者物価上昇率の推移をプロットしているんですが、真ん中あたりの平成13~24年にかけてのデフレの時代では臙脂色の耐久消費財価格が下落していたのが見て取れます。ただ、これは次のグラフの賃金との相関関係を忘れるべきではありません。

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ということで、最後に、賃金の推移です。これも見れば明らかなんですが、今から10年近く前の平成23年にボトムとなっています。それから、直近の平成30年まで数年をかけて10%ほど戻しています。ただ、これは最初のグラフに戻って、非正規雇用の割合の高まりと賃金の低下が相関していることは忘れるべきではありません。当然のように、パートタイム労働者はフルタイムより賃金が低いわけです。平成の30年間はいくつかの内外のバブル崩壊はもちろんですが、非正規雇用の拡大が日本経済を大きく劣化させた点を忘れるべきではありません、というのが私の結論です。

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2019年4月28日 (日)

ラッキーセブンに糸井選手の決勝打で中日を振り切る!!!

  RHE
阪  神010100200 4101
中  日001010000 2111

競った試合ながら、ラッキーセブンの糸井選手の決勝打で中日を振り切りました。先発岩貞投手もよく投げ、序盤から見ごたえあるシーソーゲームの投手戦で、セットアッパーのジョンソン投手も安定していた一方で、最終回のドリス投手のピッチングはやや不安定でしたが、何とか逃げ切りました。

明日も、
がんばれタイガース!

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ご寄贈いただいたバルファキス『黒い匣』(明石書店)の読書感想文など!

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2日続けての読書感想文で、ヤニス・バルファキス『黒い匣』(明石書店) です。ご寄贈いただきました。栞には「訳者 謹呈」とあり、訳者のうちのどなたかからちょうだいしたものと思いますが、本書の訳者は私の独断では、People's Economic Policy で意見ホウメイしていらっしゃる先生方が多いのかな、と感じています。少なくとも、訳者代表で訳者解説を書いている立命館大学の松尾匡教授と本書の訳者筆頭の朴勝俊教授は両方に重なっています。
前置きが長くなりましたが、本書の著者のバルファキス教授はゲーム論を専門とするエコノミストであり、とても申し訳ないながら、本書よりもむしろダイヤモンド社から出版されている『父が娘に語る 美しく、深く、壮大で、とんでもなくわかりやすい経済の話。』で有名だという気がします。そして、本書との関係でいえば、財政破綻後のギリシアに成立したチプラス首相のシリザ政権で財務相を務め、国際通貨基金(IMF)、欧州共同体(EU)、欧州中央銀行(ECB)のトロイカとの交渉に当たっています。
さらに、読書感想文に入る前の私の研究業績の自慢話ですが、長崎大学経済学部に日本経済論担当教授として出向していた時に、私は財政関係やギリシアの財政破綻に関して、いかの紀要論文を取りまとめています。繰り返しになりますが、自慢話です。


まだまだ続く自慢話ですが、私はこういった財政学に関する紀要論文を取りまとめていますので、大学出向中に財政学担当の准教授の教授昇進を審査する資格審査委員会に名を連ねたりしました。資格審査委員会を選任した教授会で私は居眠りしていて、自分が選ばれたのを知らなかったりしましたが、それな別のお話で自慢にはなりません。
ようやく、読書感想文の本論に入ります。本書ではバルファキス教授の本領発揮で、リベラルで左派的な経済学では何を目指すかが明確に示されています。すなわち、財政破綻した政府が、メチャクチャに限定された財政リソースを使って支払いをすべき対象は、果たして、トロイカや先進各国にあるギリシア国債を有する銀行なのか、あるいは、ギリシア国内の年金生活者や社会保障給付を受けている恵まれない市民なのか、ということです。著者が交渉に当たったトロイカ担当官は前者に対する支払いを優先し、ギリシア国内の貧困層への支払いを劣後させます。果たして、それが正しい経済政策なのか、答えは明らかだろうと思います。そして、トロイカの担当官は4%の経済成長と4%のプライマリ・バランス黒字をギリシアに命じますが、この2つは激しいトレードオフがあり両立は極めて困難です。後者の財政黒字を達成するためには、財政支出の切り詰めか税収の大幅増が必要ですが、そんなことをすれば成長が犠牲になります。確かに、2009~10年ころは放漫財政のギリシア政府をバッシングする雰囲気が国際社会では強く、ギリシアの財政政策は借金返済にはまだまだ生ぬるい、という論調が強かったのも事実です。先ほど引用した私の2番めの紀要論文「ギリシアにおける財政危機に関するノート」ではこういった論調に反論しており、2010~11年の2年間で「GDP7%の財政調整は、極めて大きな額に上る」とし、「野心的」と評価しています(ともに、p.175)。つまり、当時の「生ぬるい」との論調に迎合することはせず、基本的な規模感は本書のバルファキス教授と同じと受け止めています。

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何らかの流動性不足に陥って、IMFなどの国際機関からの借り入れに頼り、厳しいコンディショナリティを課された国においては、IMFは常に怨嗟の的であり蛇蝎のごとくに嫌われています。ということで、私のもうひとつの体験はジャカルタにあります。すなわち、上の画像では、アジア通貨危機の際に外貨不足に陥ってIMFからのクレジットに頼ったインドネシアの当時のスハルト大統領がIMFのカムドゥッシュ専務理事が見下ろすもとでLOI (Letter of Intent) に署名しています。本書で、MOU (Memorandum of Understanding) と称されているモノと同じだと思います。そして、本書では登場しないものの、スティグリッツ教授などが指摘するごとく、こういったワシントン・コンセンサスが正しいとは、私はとても考えられません。私の従来の主張ですが、国際機関の代表者は、例えば、IMFの専務理事などのように加盟国による投票で選ばれるとはいえ、民主主義的な選出過程によって選ばれる主権国家の政府代表を上回る権力を行使するのは、民主主義と資本主義の不整合ないし矛盾によるものです。民主主義はあくまで基本的人権に基づく1人1票の選挙で決定しますが、資本主義は株主総会的な購買力による加重平均で決定します。この矛盾が解消されるのは、現在の資本主義を何らかの方法で改良するしかありません。

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本書では、緊縮財政に対する反論が主要な通奏低音をなしていますが、その意味で、本書の訳者である松尾教授や朴教授らの『「反緊縮!」宣言』(亜紀書房) にも私は大いに期待しています。およそ1ト月後の5月23日の発売と聞き及んでいます。官庁エコノミストであったころから、私は自分を左派であると位置づけてきており、金融政策も同じですが、財政政策に関しては左派が拡大のバラマキ大いに結構に対して、右派は緊縮であり、左派はハト派であり、右派はタカ派です。そして、これも私の従来からの指摘ですが、現在の我が国安倍政権は政治的外交的には極めて右派的なんですが、経済政策についてはとても左派的です。さらに、ついでに、我が国の政治的な左派は経済的には緊縮財政や財政均衡を目指しているかの如き志向があり、とても右派的です。私の目には不思議に映ります。もっとも、私のもうひとつの経済政策に関する左右両派に関する視点、すなわち、右派は供給サイド重視で左派は需要サイド重視、というのは、我が国の現状に当てはまる気もします。

最後の最後に、還暦を過ぎたエコノミストのたわ言かもしれませんが、本書の著者であるバルファキス教授のような左派エコノミストにして政治の実践家、ということでは、京都出身の私は昔の蜷川虎三知事を思い出します。我が母校である京都大学経済学部の教授にして、京都府知事を7期務めた大先輩です。

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2019年4月27日 (土)

今週の読書は経済書や『左派ポピュリズムのために』をはじめ計8冊!

今週は、以下に9冊リストアップしていますが、読んだのは実は8冊です。最初に置いたのは、ご寄贈いただきましたのでフォントも大きくして宣伝に努めております。今週の読書は経済書に加えて左派応援書もあります。経済成長懐疑的なタイトルの本もありますが、中身はジャーナリストらしくキチンと整理されたもので、闇雲に反経済学的な内容では決してありません。今日から10連休という人も多いような気がしますが、私は特に遠距離の外出はしませんし、読書感想文は定例の土曜日に限らず随時アップし、いつも通りに、読書とスイミングに励みたいと思います。ブログに取り上げる予定の経済指標の公表は米国雇用統計くらいのもので、日本国内の経済指標公表は少しの間お休みです。

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まず、ヤニス・バルファキス『黒い匣』(明石書店) です。しかしながら、ご寄贈いただいたのですが、先月末の定年退職前に私が在籍していた役所の研究所にお届けいただき、私の手元に来るまで少しタイムラグがありましたので、誠に恥ずかしながら、読み始めたものの読み終わっていません。2段組みで600ページ近いボリュームですので、かなりの読書量を誇る私でも時間がかかっています。今日から始まる長いゴールデン・ウィーク中には何としても読み終えて、貴重なご寄贈本ですので単独にて取り上げたいと予定しています。それほど時間はかからないつもりですので、今しばらくお待ち下さい。

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まず、クリス・ヒューズ『1%の富裕層のお金でみんなが幸せになる方法』(プレジデント社) です。本書の英語の原題は First Shot であり、2018年の出版です。著者のクリス・ヒューズは、何といっても、ハーバード大学に進学しマーク・ザッカーバーグのルームメイトとなり、ファイスブックの共同創業者から億万長者となったことで米国でも有名であり、次いで、その巨万の富を足がかりに、2008年の米大統領選でオバマ陣営のネット戦略を指揮したり、リベラル系の老舗雑誌を買収して経営に乗り出したりしています。本書は、基本的には、著者の半生を綴った自伝なんだろうと思いますが、アメリカの堅実な中流家庭に育った努力型の秀才と自称しつつ、自身の半生を振り返っていて、恒例の方の自伝のように自慢めいた部分がなくはないものの、自身の半生で、あるいは、米国の経済社会で、反省あるいは修正すべきポイントもいくつか提示されています。例えば、ですが、ザッカーバーグのルームメイトという運の良し悪しが、ファースト・ショットとして、何世代も継承されるような格差を生む「勝者総取り社会」に疑問を感じ始めます。フェイスブックの株式公開により巨万の富を得た点は、宝くじに当たったようなものだと自覚しています。ほとんどの米国人はこういった幸運に恵まれず、自動車事故や入院などのための緊急出費も捻出できないのに、他方で、幸運を持って億万長者になれる、それはそれで、米国的なサクセスストーリーなのかもしれませんが、そんなことが可能になる社会は何かが歪んでいると考えています。私はこれも健全な思考だと受け止めています。そして、著者自らの富と経験を注ぎ込んで、米国ではなく、サックス教授らと発展途上国における経済開発の実践に取り組んだりしています。それらの結果として、解決策が年収5万ドル未満層への保証所得にあるとの結論に至っていますが、同時に、所得制限なしのユニバーサルなベーシックインカムには否定的です。その原点は職業的な天命のようなものにあるんではないか、とうかがわせる記述がいくつかあったりします。私自身は、著者の主張するような「負の所得税」まがいの保証所得ではなく、ユニバーサルなベーシックインカムが正解だと考えています。というのは、著者は職を持って働いて、何らかの賃金、というか、所得を得ることの重要性を指摘しているわけですが、それは取りも直さず資本主義的な経済活動への参加を促しているわけです。私は、必ずしも経済活動でなくても、例えば、無償のボランティアなどの社会参加活動でもOKだと考えています。もちろん、私のような考えには、現在も存在する生活保護を悪用するような反社会的組織のようなものがつけ込むスキがあったりするわけですが、所得を得られる敬愛活動だけでなく、必ずしも金銭的な報酬を目的とせず、広く社会参加活動を重視すれば、やっぱり、ユニバーサルなベーシックインカムの方がより優れた制度ではないでしょうか?

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次に、デイヴィッド・ピリング『幻想の経済成長』(早川書房) です。著者は Financial Times をホームグラウンドとする英国のジャーナリストであり、東京支局長の経験もあります。英語の原題は The Growth Delusion であり、2018年の出版です。ジャーナリストらしく、GDP/GNPがクズネッツ教授により開発された歴史なんぞをひも解きつつ、GDPないし経済統計の正確性や計測すべきポイントなどを明らかにした上で、経済政策の目指すべきポイントについての議論を展開しています。類書では、経済統計のメインをなすGDPについて否定したり、あるいは、エネルギーや環境とのサステイナビリティの観点からゼロ成長を推奨したりといった、私のようなエコノミストの目から見てメチャメチャな経済成長否定論ではなく、GDPの統計としての把握のあり方と現在の経済活動とのズレ、あるいは、GDP出は買った経済規模と国民の幸福感のズレ、などを正面から議論の対象にしています。まず、本書では自身がなかったのか、明記していませんが、スミスの『国富論』では経済社会における富とは製造業だけが生み出せるものであり、サービスはまったく無視されていた点は重要です。20世紀に入ってクズネッツ的なGDP/GNPではサービスは当然に経済活動に含まれて、生産高に算入されるわけですが、本書でいえば、第5章に明記されているように、インターネットの普及に伴って、一部のサービスが専門業者の生産から家計で生産するようになって、GDP/GNP統計に反映されなくなったのは事実です。例えば、従来でしたら旅行代理店に行って宿の手配をしていたところ、家や職場からインターネット経由でホテルの予約ができるようになっています。また、Airbnb や Uber などのシェアリング・サービスの普及もGDP/GNPの観点からは成長率の押し下げ要因となる可能性があります。ただ、これらが国民生活の幸福度や利便性の観点からマイナスかというと、そんなことは決してありません。逆に、選択肢の増加などによって幸福度にはプラスの影響すらありえます。こういった観点からインターネットやモバイル機器を使いこなす若者の幸福観を論じたのが、日本でいえが古市憲寿だったりするわけです。こういった統計としての限界、というか、GDP/GNP統計が開始された時代から経済モデルが明らかに変化したわけですから、新しい統計が必要なわけで、統計家かエコノミストがサボっているのか、あるいは、能力が不足しているのか、新しい指標がまだ出来ていないわけです。そこで、ブータン的な幸福度指標が注目されたりするわけですが、本書でも疑問を呈しています。主観的な幸福度を政策目標にすることについては私はハッキリ反対です。極めて極端な主張かもしれませんが、健康状態が悪くて寿命が短くても、消費生活が貧しくても、識字率が低くても、薬物により主観的な幸福度が高ければOK、ということになりかねないからです。ですから、主観的な幸福度あるいはエウダイモニアではなく、客観的な生活の利便性や豊かさ指標のようなものを国民の合意により形成する必要があると私は考えています。健康指標、文化指標、もちろん、経済指標などの組み合わせからなる総合的な社会指標の統計が必要ではないでしょうか?

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次に、伊藤元重『百貨店の進化』(日本経済新聞出版社) です。著者は我が国を代表するマクロ経済分野や国際経済学の権威の1人です。なぜに、百貨店についての本を書いているのかは不思議な気もしますが、百貨店協会創設50週年で20年前に百貨店の本を書いているようですし、私の記憶でも『吉野家の経済学』の共著者だったように覚えていますから、こういった経営的な分野もお得意なのかもしれません。ということで、バブル崩壊直後の1991年に売上のピークを迎えて、その後はいわゆるジリ貧状態にあり、売上げだけを見れば、百貨店よりもコンビニの方が伸びているわけながら、百貨店の草分けともいえる三越をはじめとして、いわゆる老舗のお店が少なくない、というのも百貨店業界だったりするわけで、著者も、100年継続する企業であるからには、それなりに時代の変化への対応力があるんではないか、と示唆しています。確かに、アマゾンや楽天などのネット通販に加えて、メルカリなどのネットを通じた中古品販売も急成長しており、ジリ貧の百貨店業界とは好対照をなしている一方で、アマゾンがリアルの実店舗の展開を始めたりしているのも事実です。もちろん、これだけ外国人観光客の訪日が増加してる中で、インバウンド消費の恩恵に預かれるのは、ネット通販ではなく実店舗、特にドラッグストアと百貨店であると私も聞いたことがあります。逆に、成長著しいアジアをはじめとする海外展開も必要です。我が家が今世紀初頭にジャカルタで3年間暮らした折にも、ジャカルタにあるそごうですとか、シンガポールの高島屋に足を運んだ記憶があります。我が家のジャカルタ生活から20年近くが経過し、インターネットの普及や発達とともに消費者が利用可能な情報は飛躍的に増加しており、消費者の選択の幅も広がっている一方で、消費の実店舗の場合、いまだに集積に一定のメリットがありますから、レストランのように隔絶した世界にある一軒家のレストランでの消費は別にして、物販の消費の場合は集積した百貨店やショッピングモールに利便性が認められるのも忘れるべきではありません。アパレル製品、特に、婦人服と一蓮托生で成長を享受してきた百貨店の歴史はその通りなんでしょうが、高齢化と人口減少が進めば消費のパイは確実に減少を続けます。その小さくなる一方のパイの奪い合いの中で、本書にはない視点ながら、「働き方改革」の進行する中で、個人消費者相手に休日が少なく営業時間が長い百貨店が、どのような経営戦略を持って成長を図る、あるいは、地盤沈下を食い止めるのか、私自身は百貨店は大好きですし、それほど買い物はしないまでも、モノではなくコトを消費する場として重要だと考えていますから、これからの合従連衡の業界集約とともに、本書のタイトル通りの「百貨店の進化」に期待しています。

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次に、シャンタル・ムフ『左派ポピュリズムのために』(明石書店) です。著者はベルギー出身で現在は英国ウェストミンスター大学の研究者です。英語の原題は For a Left Populism であり、邦訳タイトルはほぼほぼ直訳といえます。2018年の出版です。私は少し前まで、県庁エコノミストにして左派、というビミョーな立ち位置にあったんですが、そのころから、立命館大学の松尾匡教授のご著書などを読むにつけ、かなり硬直的と言うか、教条的な左派の訴えに対して、もっと国民の幅広い層から指示されるような経済政策を提示すべき、と考えてきたところで、本書は、経済学ではなく政治学的なアプローチながら、基本は同じような発想に基づいているような気がします。ということで、極めて正しくも、戦後の政治経済史について、本書では1970年代までの経済が順調に成長してきた時代について、福祉国家の拡大、労働運動の前進、完全雇用の政治的保証といったケインズ的な経済政策に支えられたものと捉え、そのケインズ主義的な経済政策が1970年代の2度に渡る石油危機でインフレが進む中での景気後退というスタグフレーションにより終焉し、新自由主義的な経済政策が取って代わった、と理解しています。すなわち、本書の著者のホームグラウンドでいえば英国保守党のサッチャー政権であり、本書では登場しませんが、米国ではレーガン政権なわけです。我が国では中曽根内閣といえるかもしれません。そして、英国のサッチャー政権の炭鉱ストに対する態度は、これまた、本書には登場しませんが、米国レーガン政権の航空管制官ストに対する姿勢と基本的な同じなわけです。そして、こういった新自由主義的な経済政策を背景に、企業活動が野放しに利潤追求を行い、そして、経済格差が拡大したわけです。しかしながら、2007~08年の Great Recession の中で、大銀行は政府から資本注入を受けて救済される一方で、教育や社会福祉といった政府支出は大いに削減され、不景気による失業の増大も相まって、国民生活は急速に悪化を示したわけですから、新自由主義的な経済政策も破綻した、と考えるべきです。そして、2016年の英国のBREXIT国民投票や米国大統領選挙でのトランプ大統領の出現、あついは、フランス大統領選挙での国民戦線の躍進をはじめとする大陸欧州でのポピュリスト政党の支持拡大などにより、ケインズ的な福祉国家、新自由主義に続く第3の段階が始まったわけです。そして、本書では、ポスト構造主義とマルクス主義をブリッジする理論的な政治学のフレームワークを提供しようと試みています。それが、ラディカル・デモクラシー、あるいは、本書の著者の表現を借りれば、民主主義の根源化、ということになります。これだけを見ると、日本社会に即せば講座派的な二段階革命論に近い気がして、私は好感を持ちました。民主主義は1人1票という完全平等論に基づいていますが、資本主義は購買力、すなわち、手持ちの利用可能な貨幣量によってウェイト付された平等観です。ですから、資本主義をラディカルに民主主義化することが必要で、それは社会主義革命に先立つわけです。二段階革命論の正当性といえます。ただ、経済学に基づく経済政策も実践的かつ経験的な面が大きいんですが、政治学というよりも、本書のターゲットは政治的な運動論でしょうから、経済学よりもさらに実践的かつ経験的な結果を出すことが求められます。ですから、今後の左派政党による実践を待ちたいと思います。

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次に、ヘレン・トムスン『9つの脳の不思議な物語』(文藝春秋) です。著者は医学部出身ながら医者ではなく、英国のジャーナリスト・サイエンスライターです。英語の原題は Unthinkable であり、2018年の出版です。単純なものであれば、命令にも必ず従ってしまう「ジャンパー」と呼ばれる人々がいる、というウワサのような情報からお話が始まり、最後もそれで締めくくられます。その中で、邦訳タイトルにあるように、人間の脳に関する9つの奇妙な症例について、その症状を呈しているご本人や周囲の人に対するインタビューなどを通じて明らかにしようと試みています。本書でも何度か言及されているように、オリバー・サックスの著書のような趣きがあります。ということで、それが第1章から第9章まで並んでいて、具体的に章タイトルを上げると、第1章 完璧な記憶を操る、第2章 脳内地図の喪失、第3章 オーラが見える男、第4章 何が性格を決めるのか?、第5章 脳内iPodが止まらない、第6章 狼化妄想症という病、第7章 この記憶も身体も私じゃない、第8章 ある日、自分がゾンビになったら、第9章 人の痛みを肌で感じる、となります。古典古代から、人間らしい心や知能の働きは頭の脳ではなく、心臓に宿ると考えられていましたが、現在では脳の働きとされていることは広く知られている通りであり、同時に謎の多い分野でもあります。各省全部を取り上げるわけにもいきませんが、例えば、第1章では生後9か月から、日々の完全な記憶がとどめられている症例であり、逆にいえば、忘れるということの意味も同時に問うています。第2章では自分の家で迷子になっておトイレにも行けないような症例、一般的には方向音痴と称される例の極端なものが取り上げられます。もちろん、逆に、『博士が愛した数式』のように、極端な短期しか記憶がとどめられない例も取り上げられています。こういった脳の働きにおけるいくつかの症例を取り上げつつ、必ずしも、以上と成城の議論には深入りしていませんが、やや関心も向けつつ、議論を進めています。私の関心が向いたひとつの例は第4章で、特に、育った環境の異なる双子についても、かなりの性格の一致が見られる、というものです。それだけを取り上げると、性格は環境ではなく遺伝子で決まる、と結論しそうになりますし、私の実体験としても、我が家の倅2人の兄弟について見るにつけ、遺伝子の働きは偉大だと感じずにはいられませんが、その遺伝子がどのように受け継がれるかについては少し疑問も残ります。また、何らかの問題行動、反社会的な行動、あるいは、ハッキリと犯罪行為があった場合などについては、本人の意思や判断の免罪を主張するようで、違和感もあります。すなわち、およそ地球上で最高の治世を持つと考えられる霊長類の人類にして、単なる遺伝子の運び手であるとすれば、いったい、自分とは何なのか、最後の究極の疑問に突き当たる気もします。

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次に、有栖川有栖『こうして誰もいなくなった』(角川書店) です。作者の作家デビュー30周年を記念して、平成最後にいろいろと、というか、ハッキリいって、脈絡なく、作者ご自身の単行本未収録作品を集めています。「有栖川作品の見本市」というのが宣伝文句ですし、上の表紙画像にその雑多な雰囲気が見られると私は考えています。この雰囲気は、先週の4月20日付けの読書感想文で取り上げた山内マリコの『あたしたちよくやってる』と似ているんですが、『こうして誰もいなくなった』は小説のみを収録していて、エッセイなどは含んでいません。作者ご本人の前口上にもあるように、ファンタジー、ホラー、本格ミステリがグラデーションをなすように並べられているようで、発表順といった編年体とかではありません。ただ、未収録作品集だけに、作者のシリーズに登場する江神二郎とか、火村英生といったおなじみの名探偵は登場しません。まあ、仕方ないんでしょう。収録作品は以下の14編で、最後の本書タイトルと同じ表題作は短編というよりも、独立した単行本として発行されてもおかしくないような内容の本格ミステリで、後述の通り、クリスティ作品『そして誰もいなくなった』を下敷きにしていますが、結末は大きく違っています。ということで前口上が長くなりましたが、収録作品は、「館の一夜」、「線路の国のアリス」、「名探偵Q氏のオフ」、「まぶしい名前」、「妖術師」、「怪獣の夢」、「劇的な幕切れ」、「出口を探して」、「未来人F」、「盗まれた恋文」、「本と謎の日々」、「謎のアナウンス」、「矢」、「こうして誰もいなくなった」となっています。なお、あとがきに作者ご本人から、かなり詳しい解説が提供されていますので、立ち読みの範囲でもかなりの情報を得ることが出来そうな気がします。なお、作者ご自身の単行本に未収録とはいえ、何らかのアンソロジーに収録されている作品も多く、逆に、ラジオ番組の朗読用原稿なので今まで活字になっていない作品もありますが、私は4話が既読でした。収録順に、「線路の国のアリス」は推理作家協会編集のアンソロジー『殺意の隘路』にて、また、「劇的な幕切れ」はアミの会(仮)編集のアンソロジー『毒殺協奏曲』にて、「未来人F」は『みんなの少年探偵団 2』にて、「本と謎の日々」は『大崎梢リクエスト! 本屋さんのアンソロジー』にて、それぞれ読んだ記憶があります。特に、「劇的な幕切れ」が収録されている『毒殺協奏曲』は、つい今月の4月7日付けの読書感想文で取り上げています。でも、やっぱり、もっとも印象的なのは表題作の「こうして誰もいなくなった」です。130ページ余りの本書の中でも最大のボリュームですし、クリスティ作品と同じく通信の途絶した孤島での連続殺人事件です。不勉強な私にはお初の登場で、響・フェデリコ・航という奇抜な名探偵が登場します。同じ京都系の新本格ミステリ作家である麻耶雄嵩作品のメルカトル鮎に少しネーミングが似ていて、事件解決に邁進します。江神二郎とか、火村英生と同列に論ずるべき名探偵ではないかもしれませんが、密かにシリーズ化することを期待している読者もいそうな気がします。私は江神二郎と火村英生の2人で十分です。ひょっとしたら、火村英生だけでも十分かもしれません。

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次に、佐々木閑『大乗仏教』(NHK出版新書) です。著者は京都にある花園大学の仏教学科の研究者であり、仏教に対するかなり柔軟なお考えの持ち主と私は見ました。青年と講師の間の問答形式に基づく講義の形で議論が進み、最後の補講で『大乗起信論』パッチワーク説が明らかにされます。仏教は、本書では別の用語を用いていますが、いわゆる小乗仏教と大乗仏教に分かれて、後者が北伝仏教と呼ばれるように、中国や我が国に入って来ています。それなりのボリュームの信徒数を誇る世界の3大宗教たる仏教をわずかに2分類するのはムリがあり、キリスト教をカトリックとプロテスタントとギリシア正教の3分類するくらいの粗っぽさだという気がしますが、その大乗仏教が護持する経典であるお経についての解説書と考えても本書は成り立つような気がします。そして、本書の著者の論を待つまでもなく、仏教は釈迦の提唱した原始仏教から、本書の副題である「ブッダの教えはどこへ向かうのか」の通り、かなり大きく変容しており、それはそれで宗教として民衆の役に立っている、というのが本書の著者の議論だと私は受け止めています。大乗仏教も小乗仏教以上に釈迦の唱えた原始仏教から離れているのも事実だろうと思います。本来は、輪廻転生の中で釈迦やブッダに出会って菩薩となり、仏教的な修行を始め自らもブッダになることを目指すのが仏教的な道なんでしょうが、私の信奉する浄土真宗や浄土宗などは単に「南無阿弥陀仏」と念仏を唱えるだけで輪廻転生から解脱して極楽浄土に生まれかわれる、とする教義ですし、本書でも座禅を中心教義、というか、中心となる修行と考える禅宗は修行の宗教といえます。そして、禅宗は中国発祥であり、インド発祥ではなく、釈迦の始めた原始仏教から直接に派生したものではありません。まあお、それをいい出せば、大乗仏教がすべてそうなんでしょうが、その仏教の多様性こそが中国や日本で受け入れられたひとつの要因ながら、逆に、日本の仏教はヒンズー教に極めて近いと著者は主張し、それゆえに、仏教が創始されたインドにおいて仏教がヒンズー教に取って代わられたゆえんである、とも指摘します。このあたりは私にはよく理解できませんでした。でも、釈迦やブッダに出会って仏教に覚醒し、菩薩として修行を始める、というのが、釈迦やブッダに代わって真実の書であるお経に出会うことに変容し、それ故に、お経に対する「南無妙法蓮華経」というお題目が日蓮宗の信徒に広まったのも、この年齢に達して初めて知りました。私はすべての日本人が仏教徒ではないことは理解しているつもりですが、日本の文化や風俗の中にかなりの程度に仏教的な、釈迦の提唱した原始仏教ではないにしても、日本的に変容した仏教がベースになっている部分もあり、本書の値打ちはそれなりに高いと受け止めました。

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最後に、アガサ・クリスティ『ミス・マープルと13の謎』(創元推理文庫) です。火曜日クラブの延長戦なのか、始まりなのか、いわゆる安楽椅子探偵のミス・マープルの13の事件に渡る謎解きが楽しめます。100年近い、というか、90年前に原作がアガサ・クリスティによって書かれ、60年ほど前に邦訳書が出版されているそうですが、創元推理文庫創刊60周年記念による新訳刊行だそうです。大昔に読んだ記憶がないでもないんですが、クイーンの国別シリーズ、コチラは角川文庫からの新約とともに、やっぱり、文章が読みやすくてスンナリと頭に入ってくるような気がします。収録されている短編は、「<火曜の夜>クラブ」、「アシュタルテの祠」、「消えた金塊」、「舗道の血痕」、「動機対機会」、「聖ペテロの指の跡」、「青いゼラニウム」、「コンパニオンの女」、「四人の容疑者」、「クリスマスの悲劇」、「死のハーブ」、「バンガローの事件」、「水死した娘」の13話であり、最後の作品だけは夜に語られたものではなく、スコットランドヤードの元警視総監であるヘンリー・クリザリング卿にミス・マープルが犯人名を書いたメモを託して、ヘンリー卿が地元警察の捜査に同行したりします。まあ、短編ですから、とてもアッサリとミス・マープルが謎を解き明かしてしまうのは、やや物足りないと感じる読者もいるかもしれませんが、謎の中身は割と殺人事件も少なくなく、さすがのクリスティ作になるミステリだと感じさせます。

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2019年4月26日 (金)

基調判断が下方修正された鉱工業生産指数(IIP)と小売業販売が底堅い商業販売統計と完全雇用に近づく雇用統計!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、それぞれ公表されています。いずれも3月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から▲0.9%の減産を示し、また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+1.0%増の12兆7960億円、季節調整済み指数の前月比は+0.2%増を記録しています。失業率は前月から+0.2%ポイント上昇したものの2.5%と低い水準にあり、有効求人倍率も前月と同じ1.63倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。まず、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

3月の鉱工業生産、0.9%低下 在庫指数は基準年15年以来最高
経済産業省が26日発表した3月の鉱工業生産指数(2015年=100、季節調整済み、速報値)は前月比0.9%低下の101.9だった。低下は2カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.1%減少)を下回った。在庫指数は1.6%上昇の104.0と基準年となる2015年以降では最高となった。
経産省は生産の基調判断は「生産は足踏みをしている」から「生産はこのところ弱含み」に下方修正した。「弱含み」という表現は15年8月以来。
業種別では、15業種中7業種で低下した。自動車工業が3.4%減少、半導体製造装置などを含む生産用機械工業が6.7%減少して全体を下押しした。中国経済の減速による輸出減が影響した。
一方、半導体メモリーなど電子部品・デバイス工業は5.8%増加した。汎用・業務用機械工業や無機・有機化学工業も増加した。
出荷指数は0.6%低下の101.6と2カ月ぶりに低下した。自動車工業、生産用機械工業、金属製品工業など9業種で低下した。
在庫指数について経産省は「やや積み上がっている印象」と話した。15業種中12業種で上昇した。
1~3月期の生産指数は前の期比2.6%低下の102.3だった。低下幅は消費税増税直後の14年4~6月期(2.9%低下)以来の大きさだった。
製造工業生産予測調査によると、4月は2.7%上昇、5月は3.6%の上昇だった。4月は3月に減少した輸送機械工業、生産用機械工業が反動で上昇する見通し。5月は輸送機械工業、電気・情報通信機械工業などが上昇する見込み。経産省は「企業は増産していく強気の見通しだ」と説明した。
同予測は下振れしやすく、経産省が予測誤差を除去した先行きの試算は4月は0.5%低下だった。
3月の小売販売額、1.0%増 機械・自動車販売が堅調
経済産業省が26日発表した3月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比1.0%増の12兆7960億円だった。経産省は小売業の基調判断を「一進一退の小売業販売」に据え置いた。
業種別で見ると、スマートフォンや洗濯機、冷蔵庫などの売れ行きが好調で、機械器具小売業が5.5%増だった。新型車の販売も堅調で、自動車小売業は2.3%増となった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が1.0%増の1兆6552億円だった。既存店ベースでは0.6%増だった。コンビニエンスストアの販売額は1.6%増の1兆126億円だった。
正社員の求人倍率、最高の1.13倍 18年度
厚生労働省が26日発表した2018年度の有効求人倍率は、正社員が1.13倍と集計を始めた05年度以降で最高だった。2年連続で求人が求職を上回り、人手不足を背景にした求人増が正社員に広がっていることが鮮明になった。パートタイマーなどを含めた全体でも1.62倍と9年連続で上昇し、高度経済成長期の1973年度以来45年ぶりの高水準となった。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人1人に何件の求人があるかを示す。3月は正社員が前月比0.01ポイント上昇の1.16倍(季節調整値)となり、2カ月連続で過去最高を更新した。パートタイマーなどを含む全体では1.63倍(同)で横ばいだった。
総務省が同日発表した18年度の完全失業率は17年度比0.3ポイント改善し2.4%だった。1992年度以来26年ぶりの低水準で、失業率が3%を下回る「完全雇用」の状態が続いている。完全失業者数は同17万人減の166万人。就業者数は同115万人増の6681万人だった。
ただ、足元の求人には足踏みも見られる。3月の新規求人数は前年同月比6.0%減少。サービス業や製造業を中心に、全ての産業で求人が減った。厚労省では前年同月に大型の求人があった影響なども含め「今後を注視したい」としている。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、さすがに、数多くの統計を並べるとやたらと長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスによれば、わずかながら減産が見込まれていましたので、その減産幅を超える低下を記録し、統計作成官庁である経済産業省では生産の基調判断を「足踏み」から「このところ弱含み」に下方修正しています。製造工業生産予測調査は4月+2.7%、5月+3.6%のそれぞれ増産を示していますが、上方バイアスを考慮した4月の試算値は▲0.5%の減産とされています。また、3月統計が利用可能となりましたが、1~3月期の生産は前期比▲2.6%の大幅な低下となっています。3月統計では、電子部品・デバイス工業、汎用・業務用機械工業、無機・有機化学工業などで上昇が見られましたが、自動車工業、生産用機械工業、金属製品工業などでは減産でした。基本的には、中国やアジアをはじめとする海外経済の低迷に起因する輸出の伸び悩みから生産が影響を受けているものと考えるべきですが、特に、我が国のリーディング・インダストリーである自動車については3月の国内新車販売台数の減少なども要因と考えられます。また、私には生産現場の実情はよく判らないんですが、4月から5月にかけて、というか、明日から始まる10連休による生産の一時的な供給サイドからの停滞は、どこまで製造工業生産予測調査に織り込まれているんでしょうか。上方バイアスが強いとはいえ、やや4~5月の増産の数字が10連休があるにしては大き過ぎると感じるのは、私だけなんでしょうか。4月は連休向けに在庫積み増しがあるとしても、特に、5月の予想は業種別で見てもほとんどが増産を見込んでいて、やや疑問です。もちろん、中国経済はインフラ投資をてこに、底入れに向かっているとの見方もありますので、生産は年央ころからゆっくりと回復に回帰する可能性は十分あると私は予想しています。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は鉱工業生産指数(IIP)のグラフと同じく景気後退期です。ということで、生産が減産を続けているにしては、消費は底堅いと私は受け止めています。しかしながら、1月の落ち込みからの回復はまだ物足りないところもあり、統計作成官庁である経済産業省では小売業販売についてはの基調判断を「一進一退」としています。電機製品を含むカテゴリーである機械器具小売業が前年同月比で+5.5%増を示したほか、注目の自動車販売は前年同月比ではまだプラスを続けていますが、3月の新車販売が減少したわけで、季節調整済の系列では自動車は前月比マイナスとなっています。今週月曜日4月22日に取り上げたように、今夏のボーナスは伸び悩むんではないかと予想されており、消費拡大につながるだけの力強さはないかもしれません。いずれにせよ、10月の消費税率引き上げが、そろそろ、視野に入り始めることから、駆け込み需要は日用品が多くを占めるとはいえ、大物消費のかく乱要因となる可能性は否定できません。

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続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2.5%を記録し、有効求人倍率も1.63倍と高い水準にあります。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月から上昇して1.16倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却に重要な影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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2019年4月25日 (木)

ルーキー近本選手の起死回生のスリーランで横浜を3タテ!!!

  RHE
阪  神200000003 590
横  浜000101100 371

敗色濃厚な9回ツーアウトから、ルーキー近本選手の起死回生のスリーランで横浜を3タテの巻でした。先発岩田投手はしっかりとQSを果たし、粘り強いピッチングで6回2失点に抑えながら、ソロ3発で逆転され瀬戸際まで追い込まれての勝利でした。3失点なら負け試合を覚悟しなければならないほどの貧打線で、横浜のクローザー山崎投手からのレフトポール際への逆転スリーランは値打ちがありました。
それにしても、ジャイアンツに3タテされた後に、横浜を3タテしても、素直には喜べないような気がします。

次の中日戦も、
がんばれタイガース!

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日銀「展望リポート」における成長率と物価の見通しやいかに?

昨日から開催されていた日銀の政策委員会・金融政策決定会合は本日午後終了し、「当面の金融政策運営について」および「経済・物価情勢の展望 (2019年4月)」が公表されています。前者では、フォワードガイダンスについて、これまで「当分の間」としていた現在の超低金利政策の継続について「当分の間、少なくとも 2020年春頃まで」に変更した点が注目され、また、後者では、2021年度までの政策委員の大勢見通しが明らかにされています。今夜は、ごく簡単に「展望リポート」の経済見通しのテーブルを、以下の通り、引用しておきます。

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見れば明らかなんですが、一応、概観しておくと、成長率見通しは2019年度を+0.8%、2020年度を+0.9%と見込み、1月時点からそれぞれ▲0.1%ポイントずつ引き下げており、2021年度は+1.2%と見通しています。今年度と来年度の成長率見通しは、今年2019年10月の消費税率引き上げにもかかわらず、昨年度2018年度の実績見込みから大きく低下しないという形になっていますが、むしろ、2018年度の成長率が潜在成長率を下回っているからであろうと私は受け止めています。物価については、生鮮食品を除く消費者物価指数(CPI)の上昇率見通しを、2019年度は+1.1%、2020年度は+1.4%と見込み、2020年度は1月時点から▲0.1%ポイント引き下げており、2021年度も+1.6%と、相変わらず、物価安定の目標である+2%には達しない、との見通しを示しています。実は、「当面の金融政策運営について」を詳しく見ると、もっともハト派色が強いと見なされている原田委員と片岡委員がそろって反対票を投じている議案があり、物価目標に届かないのであれば、さらなる金融緩和の必要性がある、との意思表示ではないかとも見受けられます。

脚注3にありますので、あるいは繰り返しになるかもしれませんが、上のテーブルのもっとも右の列である「消費税率引き上げ・教育無償化政策の影響を除くケース」については、消費税率引き上げにより2019年度と2020年度の消費者物価への直接的な影響をそれぞれ+0.5%ポイント、すなわち、2年度分を合わせて+1.0%ポイントと、また、教育無償化政策の影響は2019年度に▲0.3%ポイント、2020年度に▲0.4%ポイントと、機械的に算出している旨が明記されています。携帯電話料金の引き下げは政策効果ではない、ということなのだろうと私は受け止めています。

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2019年4月24日 (水)

相変わらず打線は打てないながらも投手陣がよく抑えて横浜に連勝!

  RHE
阪  神001001001 380
横  浜000001000 161

相変わらず打線は得点能力ありませんが、投手陣がよく抑えて横浜に連勝でした。才木投手の今季初勝利、誠にめでたい限りですが、1点に抑えないと勝てないようであれば、投手陣にもストレスがかかります。開幕戦の1-2番に座った近本選手と木浪選手はそれなりに使われていますが、今季は不動の4番に座った大山選手、それに中谷選手と今日ホームランの陽川選手など、右の大砲候補の覚醒を期待します。

明日も、
がんばれタイガース!

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社名に令和を冠した企業は4月10日時点で30社誕生!!

とても旧聞に属する話題かもしれませんが、東京商工リサーチから300万社余りのデータベースの中で、4月10日までに新年号である「令和」を冠した企業が30社誕生した、との調査結果が4月11日付けで明らかにされています。これら30社のうち、新設法人は12社、従来の社名を変更したのは18社だそうで、都道府県別では、トップは福岡県の5社、以下、東京都4社、埼玉県、広島県、佐賀県が各2社と続き、その他15道府県で各1社となるようです。産業分類別ではサービス業がもっとも多くて13社に上り、以下のグラフの通りです。

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もっとも、昨日4月23日付けの読売新聞では「社名に『令和』続々、27都道府県で58社誕生」というニュースも見かけました。民事法務協会の登記情報提供サービスを検索したようです。これからさらに社数が増加し、情報はアップデートされていくんだろうと思います。

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2019年4月23日 (火)

企業向けサービス価格指数(SPPI)は3月統計でも人手不足で+1%超の上昇率!

本日、日銀から3月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て10か月連続の+1%以上の+1.1%を示しています。1.1%は前月と同じ上昇率で、64か月連続の前年同月比プラスを記録しています。まず、時事通信のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

企業サービス価格、1.2%上昇=18年度
日銀が23日発表した2018年度の企業向けサービス価格指数(速報値、10年平均=100)は、前年度比1.2%上昇の105.1だった。プラスは6年連続で、消費税増税の影響を除けば、1992年度以来26年ぶりの高い伸び率。人手不足が各種サービスの値上げにつながった。
項目別では、人件費高騰で道路貨物輸送が3.4%、燃料高により外航貨物輸送が11.1%それぞれ上昇した。このほか、労働者派遣サービス、土木建築サービス、警備がいずれも2~3%台の上昇となり、労働力不足が深刻な業種で大きく伸びた。

いつもの日経新聞がニュースとして取り上げていなかったので、時事通信のサイトから引用しました。年度の統計だけに着目して、3月統計には何も触れていませんが、まあ、こんなもんでしょう。続いて、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は昨年2018年6月から今年2019年2月統計まで10か月連続で+1%に達しています。その直前の5月の+0.9%の前の4月も+1.0%でしたので、昨年度2018年度の12か月間、ほぼほぼ+1%に達する水準をキープしていたことになります。加えて、6年近い69か月連続でプラスを維持ています。また、国際運輸を除くコアSPPIも3月統計では前年同月比で+1.1%の上昇を示しています。先月統計から3月統計にかけての差が大きかったのは、テレビ広告などの広告が+0.12%の前年比寄与度前月差があり、リース・レンタルが+0.04%、土木建築サービスなどの諸サービスが+0.03%などとなっており、景気に敏感な広告と人手不足に敏感な諸サービスなどが目立っています。他方で、石油価格に連動する面が大きいとみられる運輸・郵便は前月からのプラス幅は縮小し、前年比寄与度前月差は▲0.02%のマイナスを記録しています。しかし、運輸・郵便も2月統計から3月統計にかけての差はマイナスなんですが、3月統計でも前年同月比そのものは+2.0%の上昇を示しており、ここでも人手不足の影響が見られると考えるべきです。というのは、極めて大雑把な概観ですが、一般的な人手不足もさることながら、資格や免許が必要で専門性が高く短期の労働供給増が難しい職種、あるいは、何らかの労働条件の厳しい職種における人手不足がその業種のサービス価格を押し上げている印象があり、運輸・郵便などは前者に相当します。もっとも、前者の資格・免許必要な職種は短期にはゼロサムに近い一方で、後者については労働条件のひとつである賃金引き上げで労働需要を満たすことができる可能性があるわけです。ただ、景気に敏感な広告は3月統計こそ前年同月比で+2.7%と、サービス価格の押し上げ要因となりましたが、2月統計では+1.0%でしたし、テレビ広告は2~3月には2か月連続して前年同月比マイナスを記録しています。いずれにせよ、4月統計で年度替わりの価格改定動向にも注目したいと私は考えています。

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2019年4月22日 (月)

今夏のボーナスは増えるのか?

先週までに、例年のシンクタンク4社から2019年夏季ボーナスの予想が出そろいました。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、ネット上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると以下のテーブルの通りです。ヘッドラインは私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しましたが、公務員のボーナスは制度的な要因ですので、景気に敏感な民間ボーナスに関するものが中心です。可能な範囲で、消費との関係を中心に取り上げています。より詳細な情報にご興味ある向きは左側の機関名にリンクを張ってあります。リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、あるいは、ダウンロード出来ると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちに Acrobat Reader がインストールしてあって、別タブでリポートが読めるかもしれません。なお、「公務員」区分について、みずほ総研の公務員ボーナスだけは地方と国家の両方の公務員の、しかも、全職員ベースなのに対して、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングでは国家公務員の組合員ベースの予想、と聞き及んでおり、ベースが違っている可能性があります。注意が必要です。

機関名民間企業
(伸び率)
国家公務員
(伸び率)
ヘッドライン
日本総研39.0万円
(+0.7%)
68.1万円
(+4.3%)
伸び率は前年を下回る見込み。背景には、2018年度下期の企業収益の低迷。経常利益は、2018年10~12月期にかけて2四半期連続の減益に。企業マインド悪化も賞与の伸び鈍化に作用。6割以上の大企業が今夏の賞与水準を決定する時期に当たる年明けから春先にかけて、中国経済の失速懸念、日米貿易摩擦への不安など、景気先行き不透明感が急速に台頭。結果、賞与のベースとなる月例給、支給月数ともに引き上げに慎重な動きが広がり、賞与引き上げの足かせに。
ただし、賞与が減少する事態は回避される見込み。この背景として、①これまでの賞与引き上げが緩やかで、労働分配率が低水準にとどまっていること、②売上高が増加傾向を維持するなか、減益は、秋口にかけての原油高による一時的なコスト増によるところが大きかったこと、の2点が指摘可能。
第一生命経済研(▲0.8%)n.a.夏のボーナスの増加が期待できないことは、今後の個人消費にとって痛手だ。加えて、春闘でのベースアップが昨年を下回る上昇率にとどまったとみられることから、所定内給与も昨年から伸びが鈍化する可能性が高い。物価の鈍化が今後見込まれることは下支えになるものの、19 年度の実質賃金の伸びは僅かなものにとどまるだろう。所得の改善が限定的ななか、個人消費は先行きも緩やかな増加にとどまる可能性が高い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング39.0万円
(+0.8%)
68.8万円
(+5.5%)
労働需給が極めてタイトな状況にあるが、内外景気の先行き不透明感が強まる中で、企業業績の拡大に一服感が出ている。このため、増加基調は維持されるものの、伸び率は昨年の前年比+4.2%からは大幅に鈍化するであろう。
雇用者数の増加が続いており、ボーナスが支給される事業所で働く労働者の数も増加が見込まれる。夏のボーナスの支給労働者割合は81.5%と前年と同水準にとどまるものの、雇用者数の増加を反映し、支給労働者数は4139万人(前年比+1.6%)に増加しよう。また、ボーナスの支給総額は16.2兆円(前年比+2.4%)に増加する見通しである。伸びが鈍るとはいえ、支給総額の増加傾向が維持されることは、消費税率の引き上げを控えた個人消費にとっては下支え材料となろう。
みずほ総研39.0万円
(+0.8%)
73.2万円
(+4.1%)
民間企業・公務員を合わせた夏季ボーナスの支給総額は、前年比+2.9%(前年: 同+4.4%)と前年から伸びが縮小するものの、4年連続の増加となるだろう。
こうしたボーナス支給総額の増加による家計の所得環境の改善は、個人消費の当面の下支え材料となることが予想される。ただし、世界経済の減速や不安定な金融市場動向を受けて、昨年来、消費者マインドが悪化している点には注意が必要だ。2019年10月には消費増税が予定されており、消費者マインドの更なる下振れも懸念される。こうした状況下、夏のボーナス支給額は堅調に拡大するが、消費の押し上げ効果という点では限定的なものにとどまる可能性が高い。

ということで、上のテーブルを見ても明らかな通り、夏季ボーナスは増えたとしても、ごくわずかな伸びであり、業績に従って減少する可能性を指摘するシンクタンクもあります。すなわち、日本総研と三菱リサーチ&コンサルティングとみずほ総研の3機関は、1人当たりで見て+1%に満たないながらも前年の夏季ボーナスから増えると予想しているのに対して、第一生命経済研はこれも▲1%に達しないながらも、減少する可能性を示唆しています。低い伸びに止まるとしても、減少するとしても、いずれも、世界経済の減速に起因する最近の企業業績の低迷ないし悪化がその要因として上げられています。果たして、ボーナスが増えて消費を下支えするのか、それとも減って消費にダメージとなるのか、私自身は直感的に企業業績要因と人手不足要因を考えあわせると、わずかながらも前年比プラス、と希望的観測も含めて予想していますが、何とも予想の難しいところかもしれません。
下のグラフは日本総研のリポートから引用しています。

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2019年4月21日 (日)

甲子園でもジャイアンツに歯が立たず3タテされる!!!

  RHE
読  売000100101 370
阪  神000000000 063

平成最後のジャイアンツ戦も、3タテで終わりました。ジャイアンツ戦6連敗です。やっぱり、打線が打てません。7回2失点で負け投手になった西投手が哀れでなりません。広島が本来の調子を取り戻して4連勝で、阪神は昨年の定位置だった最下位に落ち着いてしまいました。今シーズンも2年連続で最下位なんですかね?

次の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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2019年4月20日 (土)

今シーズンもはやジャイアンツには勝てないのか?

  RHE
読  売020000000 261
阪  神000000000 040

実力の差はいかんともしがたく競り負け、ジャイアンツ戦5連敗の巻でした。昨夜は、何から何までジャイアンツにはかないませんでしたが、今日の敗因は、序盤に失点する先発投手も問題ながら、やっぱり、打線の責任なんでしょうね。広島が本来の力を発揮し始めれば、阪神は2年連続の最下位の可能性もあります。
ひょっとしたら、今シーズンはこのままジャイアンツに負け続けるんでしょうか?
いったい、キャンプで何をやっていたんでしょうか?

明日は何とか、
がんばれタイガース!

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今週の読書は『ピケティ以後』をはじめ、計7冊ながらボリュームたっぷり!!

今週は、『21世紀の資本』という話題の高かった経済書を発行から3年後に振り返る、というビミョーな位置づけの経済書をはじめとして、パットナム教授による米国の宗教についての社会学分析など、以下の通りの計7冊です。ただ、『ピケティ以後』とパットナム教授の『アメリカの恩寵』はともに、大判の書物で600ページを超えるボリューームでしたので、それぞれが通常の2冊分くらいに相当しそうな気もします。今週もすでに自転車で図書館を回り、来週の読書も数冊に上りそうな予感です。

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まず、ヘザー・ブーシェイ & J. ブラッドフォード・デロング & マーシャル・スタインバウム[編]『ピケティ以後』(青土社) です。5部22章から構成され、600ページを超える大作です。編著者と章構成などは出版社のサイトに詳細が示されていますが、このサイトにも本書にもかなり誤植があります。これは後ほど。ピケティ教授の『21世紀の資本』については、フランス語の原書が2013年、英語の翻訳版とその英訳版からの邦訳版がともに2014年に出版され、その後3年を経ての余波、功罪、真価などについて問い直そうと試みています。本書の英語の原題は After Piketty であり、2017年の出版です。ということで、まず、『21世紀の資本』のおさらいから始まります。すなわち、r>gが成り立てば経済成長に基づく所得よりも資本からの利得のほうが上回るため、その要因による格差が拡大すること、米国などのスーパー経営者のスーパーサラリーなどを見ても理解できるように、1%の富裕層では資本所得よりも労働所得のシェアが高いものの、0.1%の富裕層になれば資本所得が圧倒的な部分を占め、そのため、相続に基づく世代間の格差拡大の連鎖がポジティブにフィードバックしかねない、などです。これらのおさらいを含めつつ、最終章のピケティ教授自身からの回答を別にしても4部21章にして600ページを超える大著であり、しかも、チャプターごとに著者が異なっていてテーマもさまざまなわけですので、ハッキリいって、出来のいいチャプターとそうでないのが混在しています。最後の山形浩生さんによる訳者解説でかなりあからさまに記述されているように、奴隷やフェミニスト経済学のようにできの悪いチャプターも少なくないですし、ピケティ教授の格差論や経済学とは何の関係もなしに、あるいは控えめにいっても、ほとんど関係なしに、ご自分の持論の展開に終始しているチャプターもいっぱいあります。それらのチャプターを見渡して、私の見方でも訳者解説と同じで、第16章と第17章は出来がいいと思います。特に、第16章はムイーディーズ・アナリスティクスの計量モデルに基づく議論は一番の読み応えがあります。それでも、やや結論が楽観的で格差の弊害を軽視している点は懸念が残ります。でも、貯蓄率の変動を介して格差が景気循環に対してプロサイクリカルに作用するという視点はその通りだと私は受け止めています。また、エコノミストの目から見てなのかもしれませんが、第Ⅳ部の政治経済学的な見方は参考になりました。資本主義の根本となる私有財産制がいかにして理論付けられてきたか、というのは根本的な問いかけに対する答えのような気がします。最後に、誤植が多いです。やや知名度に欠ける出版社なので仕方ないかもしれないのですが、要請と妖精は誤植にしてもヒドい気がしますし、反トラストとせずともアンチ・トラストでいいのに、半トラストはないと思います。

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次に、ロバート D. パットナム & デヴィッド E. キャンベル『アメリカの恩寵』(柏書房) です。著者のうち、パットナム教授はハーバード大学の研究者であり、『孤独なボウリング』や『われらの子ども』で有名です。キャンベル教授はブリガム・ヤング大学のご卒業ですからモルモン教徒なんではないかと私は想像しています。本書の英語の原題は American Grace であり、ハードカバー版は201年の出版ですが、この邦訳書の底本となっているペーパーバック版は2011年の新たな調査結果を盛り込んで2012年に出版されています。ですから、パットナム教授の著書の順でいえば、『孤独なボウリング』と『われらの子ども』の間に入ることとなります。今週2冊めの600ページ超の大作です。ということで、「人種のるつぼ」といわれる米国は同時に宗教も極めて多様性を有しており、基本はWASPと称される伝統的なキリスト教プロテスタントなんですが、もちろん、ヒスパニックをはじめとし、イタリア人などを含めて、本書でラティーノと呼んでいる人々やアイルランド人やポーランド人の間ではカトリックが主流でしょうし、さらに、キリスト教の中でも東方正教もいれば、もちろん、ユダヤ教も少なくありません。パットナム教授は改宗したユダヤ教徒ですし、キリスト教の中でもモルモン教やクリスチャン・サイエンスなんて、カルトすれすれながら連邦議会議員にとどまらず、閣僚や大統領候補まで輩出している新興宗教もあります。おそらく、私の直感ながら、クリスチャン・サイエンスからさらに、エホバの証人まで行けばカルトと見なされそうな気もしますが、例えば、私が自伝を読んだ範囲では、ブッシュ政権下の最後の財務長官を務めたゴールドマン・サックス証券出身のポールソン元長官はクリスチャン・サイエンスですし、2期目のオバマ大統領に挑戦した共和党のロムニー候補はモルモン教徒でした。本書では、福音派や黒人プロテスタントなどの例外的な存在のキリスト教徒も含めて、ほぼほぼ99パーセントはキリスト教中心ながら、ユダヤ教や、あるいは、イスラム教徒や仏教徒まで視野を広げつつ、米国民が西欧に比べて極めて宗教的である点を、「毎週教会に行く」などの行動の面から確認しつつ、女性の権利拡大、所得の不平等の拡大、同性婚の容認などについての米国民の思考パターンや行動の源泉としての宗教について分析を展開しています。私にはやや疑問の残る結論なんですが、本書では、多様な人々から構成されている米国社会において、それぞれのグループは自らのアイデンティティを確認するために宗教へと向かう一方で、人々はそれらの宗教に基づいてばらばらになるのではなく、むしろ長期的には他のグループ出身者と知り合い、友人になり、さらには婚姻関係を結んだりして、かなりの程度に交流を深めます。そして、こういった社会的流動性こそが、やがては異なる宗教間の橋渡しをすることを、著者は「アメリカの恩寵」と名付け、実際の米国社会がそういった方向に進んでいることを実証的に示そうと試みています。私は、マルクス主義的なエコノミストですから、経済が下部構造となって文化を規定し、その文化が政治的な傾向を示す、と考えています。もちろん、宗教は第2段階の文化であり、それが、米国においてはティーパーティーなどの政治動向に、もちろん、共和党と民主党の分断に結びついている、と考えています。トランプ政権の成立などを見ても、ここ数年における動向は私の見方を指示していると自負しています。

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次に、川本裕司『変容するNHK』(花伝社) です。著者は朝日新聞の記者であり、なぜか、NHKウォッチャーだったりもします。本書は、そのジャーナリストとしてのNHK観察の結果を取りまとめていますが、特に、ここ数年の籾井前会長の就任とその活動・発言や、政府との距離感や政府の意向の忖度などについて、事実関係とともに考えさせられる材料を提供しています。加えて、放送局としての国民に対する情報提供の在り方も考えさせられます。すなわち、エリート層に対する情報解釈の方向まで含めたニュースの報道や解説やドキュメンタリ番組などを提供しつつ、単なるエリート層向けにとどまらず、一般大衆向けのエンタメ番組の提供まで、放送局は幅広い役割を担う必要がある点も忘れるべきではありません。また、同時に、本書ではほとんど用語として現れませんが、ガバナンスについても議論されています。一般的な民法ではコマーシャルを流して収入としている一方で、NHKでは受診料を徴収することが認められています。コマーシャルは市場における評価を代理する一方で、もちろん、広告主に対しての忖度が働きます。受信料収入で放送番組を作成しているNHKで政権に対する忖度が働くのと、果たして、どちらにどういった長短があるのか、決して単純ではありませんが、もう少し議論なりとも展開してほしかった気もします。加えて、衛星放送に伴って受信料収入が潤沢になったことをもって、NHKの不祥事のひとつの原因との指摘も取り上げられており、事実上の国営とはいっても、いち放送局がここまで肥大化するのが適当なのかどうか、私は疑問を持ちます。すなわち、JRやNTTのように単純に地域で分割するのが適当とは決して思いませんが、放送のチャンネルごとにいくつかにNHKを分割するという見方も成り立つように見えるところ、そういった視点は本書の著者にはないようです。ただ、海外の同種の放送局との対比はそれなりに説得力あります。例えば、英国BBCには解釈ある一方で、NHKは解釈なしの生の情報を流しているとか、これもBBC幹部の発言で、政党政治の目的と放送局の目的は異なる、といったあたりです。視聴者目線としては、裏方の編成などのエラいさんばかりではなく、現場の記者やキャスターについて女性ばかりが取り上げられていた気がします。まあ、私の気のせいかもしれません。岩田明子記者が安倍官邸に食い込んでいるというのは、それはその通りでしょうし、ジャーナリストとしては悪くないような気もしますが、本書ではなぜか奥歯にものの挟まったような取り扱いしかなされていません。他方で、章まで立っている国谷裕子キャスターは「クローズアップ現代」で官房長官に対して否定的な立場からのインタビューをして降板につながった点を指摘しています。また、有働アナウンサーも取り上げられていました。いずれにせよ、受信料収入で成り立っていて、予算が国会で議論されるNHKなのですから、従来からそれなりの政府への遠慮や忖度はあったことと私は想像していますが、前の籾井前会長の特異なキャラクターが生み出した1冊と受け止めています。

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次に、楊継縄『文化大革命五十年』(岩波書店) です。著者は中国新華社出身のジャーナリストです。本書は著者の大作『天地翻覆』を編集し直したものだそうです。タイトル通り、1966年から毛沢東の死や4人組の逮捕・失脚までの約10年間続いた中国におけるプロレタリア文化大革命について論じています。もちろん、中国共産党自身が1981年6月の11期6中全会で採択した歴史決議、すなわち、「毛沢東同志が発動した『文化大革命』のこれらの左傾の誤った論点は明らかにマルクス・レーニン主義の普遍的原理と中国の具体的実践を結び付けた毛沢東思想の道からはずれており、それらと毛沢東思想とは完全に分けねばならない」との指摘だけで終わるハズもなく、近代史でもまれに見るような国家的な大混乱を引き起こしています。このプロレタリア文化大革命について、著者は3つのグループないしプレイヤーを設定し、毛沢東、造反派、官僚集団のの三角ゲームであったとし、毛沢東が紅衛兵などを扇動しつつ官僚集団を粛正するためには造反派を必要とし、逆に、この文化大革命が毛沢東の意図した範囲に収まらずに、暴走した結果、秩序を回復するためには官僚集団を必要とした、と結論しています。短くいえばそうなんですが、こういった考察を3部構成として、文化大革命の進行、その後のポスト文革の後処理、特に毛沢東死後の4人組の逮捕と失脚、そして、50年の総括に当てています。文革さなかの酸鼻を極めた死刑の処刑、特に、処刑される者が最後に発する声を防止するための驚くべきやり方など、一般大衆の中の犠牲者の像が明らかにされるとともに、もちろん、大きなターゲットとされた劉少奇や林彪の考えや行動を跡付けています。ポスト文革の後処理については曹操の故事を引きつつ責任追及をあいまいにするような論調が出た点を紹介しつつ、文革終了の大きな起点となった毛沢東の死去の後の中国の政治的な継承と混乱について分析を加えています。そして、「中体西用」として、中国的な体を西洋的な用で運用する、すなわち、権力の抑制均衡と資本の制御のための有効な制度は立憲民主制度であると結論しています。もちろん、今さら指摘するまでもなく、文化大革命を発動した毛沢東の動機はたんン位劉少奇の排除だけではありえませんし、また、発動した毛沢東にすら制御できなくなり、暴走した文化大革命のムーブメントを鎮めて秩序を取り戻すには官僚組織のシステマティックな活動が必要であり、その結果として、官僚組織の頭目である鄧小平の権力奪取の一因となったのは理解できるところです。いまだに、中国国内では正面から文化大革命に向かい合うことができないでいる現時点で、それなりの貴重な事実関係のコンパイルではなかったかと私は受け止めています。ただ、結論としての権力の抑制均衡のための立憲民主性、というのはやや物足りません。

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次に、アントニオ・ダマシオ『進化の意外な順序』(白揚社) です。著者はリスボン出身で、現在は米国南カリフォルニア大学の研究者であり、専門分野は神経科学や神経医学です。英語の原題は The Strange Order of Things であり、2018年の出版です。かなり難しい進化生物学の専門書です。私は半分も理解できたとは思えません。本書は3部構成であり、第1部では生物の進化に従って、生命の誕生から神経系が発生するまでが概観され、第2部では神経系が高度に発達することにより、心や感情や意識などの生物の精神的な働きが描写され、第3部では生物たる人類が構成する社会における文化や経済やその他の社会的な活動のマクロの社会学が語られます。そして、その根本となっているのがホメオスタシスです。本書では冒頭の方で「恒常性」と訳され、「平衡」や「バランス」といった概念に注目しつつ、本書では、単に生存を維持するのみならず、生存に資するようなより効率的な手段の確保と繁殖の可能性の両方を意味する繁栄を享受し、生命組織としての、また生物種としての未来へ向けて自己を発展させられるよう生命作用が調節される、といった働きが重要であるとする。そして、生命体の調節は非常に動的であるものの、進化の過程で人類だけに備わった高度に発達した脳の働き、という従来の進化生物学的な考えを否定し、ホメオスタシスに支えられた単細胞生物に始まる生命現象全体を通して、心や意識や感情などを位置づけます。例えば、細菌は環境の状態を感知し、生存に有利な方法で反応し、その過程では相互のコミュニケーションもあると主張し、はすでに知覚、記憶、コミュニケーション、社会的ガバナンスの原点が見られると指摘しています。ですから、よく、我々エコノミストに対して「経済学中華思想」という、なかなかに正しい指摘や、あるいは、非難が寄せられることがありますが、本書では正々堂々と生物学中華思想を展開しています。人間が高度に発達した脳をもって心や意識や思考を持つ例外的な存在である点は否定しないものの、こういったホメオスタシスに基づく生物としてのはtら期は単細胞生物の時代から備わっていたと主張するわけです。ですから、これらのホメオスタシスの働きをもって、パーソンズ的な社会学は解釈されるべきであるし、サブプライム・バブル崩壊後の金融危機や景気後退なども一連の生物学的な根拠がある、と指摘します。本書を通読した私の解釈によれば、感情や意識などはホメオスタシスの心的表現であり、身体と神経系の協調関係が意識の出現をもたらし、ここで生れた意識や感情などをはじめとする心の働きが人間性の現われである文化や文明をもたらした、ということになり、ひいては、芸術・哲学・宗教・医療などのあらゆる文化・文明をいかに動的であるとはいえホメオスタシスという生物的現象に帰すことができる、という主張です。そして、こういった視点から人工知能(AI)についても議論の射程に入れつつ、決して悲観的ではなく、生物的進化の流れの中で解決できる課題、と考えているような感触を私は受けました。ただ、繰り返しになりますが、専門外の私にはかなり難しい読書でしたので、間違って読んでいる部分もかなりありそうな気がして、ここまで堂々と読書感想文を書くと少し怖い気もします。

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次に、山内マリコ『あたしたちよくやってる』(幻冬舎) です。著者は、『ここは退屈迎えに来て』でデビューした話題の小説家であり、私も決して嫌いではなく、何冊か読んでは読書感想文をアップしています。本書では、Short Story と Essay と Sketch の3種類のカテゴリーの文章が集められており、それぞれに異なるフォントを使っています。なぜか、Short Story だけには扉のページがあったりもします。初出が明示されていないのですが、どこかで発表した短い文章に、いくつかは書下ろしを入れて単行本にしたのではないか、と私は想像しています。著者ご本人は1980年生まれですからアラフォーなんですが、本書の視点はアラサーのような気がします。私のような還暦を過ぎた男性にはなかなかむつかしくて付いて行けない女性のファッション・アイテムもありますが、こういった軽快な文章は私も嫌いではありません。職業や、年齢や、結婚や、ファッションまで含めて、いろんな観点から女性を語った短編+エッセイ集です。 ドラえもんの登場人物で構成しながらもドラえもん自身は登場せずしずかちゃんを中心とする短編の「しずかちゃんの秘密の女ともだち」、そして、京都の喫茶店文化を綴るエッセイ「わたしの京都、喫茶店物語」、などが私の印象に残っています。いつもながら、特にこの作品はタイトルからもうかがえる通り、とても強く現状肯定的でありながら、時には自分自身を否定して新しい自分探しを始めようとし、それでも、自分のオリジナルに返っていく主人公の人生について、所帯じみていながらも軽やかに進める山内マリコの筆致を私はは評価しています。おそらく、私には書けない種類の文章だと直感的に感じています。ただ、純文学に近い小説であるにもかかわらず、所帯じみているのも事実です。もっと浮世離れしている部分があってもいいような気がします。もちろん、ファッション・アイテムを買い求めるにはお金が必要ですし、異性や同姓とのおつきあいにも出費は避けられません。あるいは、女性の場合はお付き合いの出費は抑えられるのかもしれませんが、男性の負担は少なくありません。エコノミストだったころの所帯じみた発想かもしれませんが、著者の作品に登場する主人公も著者自身の実年齢に合わせて、すこしずつ年齢層が高くなっているような気がしないでもありませんし、今後の年齢とともに社会で果たすべき役割や責任や何やが重さを増す可能性が高い中で、軽やかな著者の作品に現れる女性主人公が、あるいは新境地を切り開く際に登場させる可能性ある男性主人公が、どのようなステップを踏んで進化して行くのかが楽しみです。

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最後に、小倉紀蔵『京都思想逍遥』(ちくま新書) です。今朝の朝日新聞朝刊の読書欄で取り上げられていました。著者は我が母校京都大学教授であり、哲学研究者です。そして、本書のタイトル通りに、京都をそぞろ歩きます。ただ、京都といっても広いわけですから、著者のいう「京の創造性臨界ライン」、すなわち、京都頭部の比叡山から始まって、大雑把に京大や吉田神社あたりから伏見稲荷や深草くらいまでのエリアとなります。本書 p.49 の地図で示されいる通りです。この地域的な特徴に、著者の留学先であったソウルの韓国や朝鮮半島を重ね合わせたり、あるいは、これも著者の趣味の藤原定家の歌を引用したりしつつ、その思想的あるいは芸術的な背景を探ります。いくつか、面白い視点は、やはり、平安京を開いた桓武天皇の血筋にある朝鮮半島の視点です。でも、他方で、和辻哲郎が「古今和歌集」よりも「万葉集」を高く評価した、などといった新年号「令和」の選定にも合致した現時点の時代背景を先取りした視点も紹介されたりしているのはなかなかの先見性だと私は受け止めました。著者の専門領域である京都大学の哲学者は、経済学者と違って、綺羅星のごとく存在するわけですが、何といっても西田幾多郎にとどめを刺します。その西田教授にも大いに関係する哲学の道とか、逍遥するのは京大生だけではありません。哲学者としても、西田先生をはじめとして、西谷啓治先生た田辺元先生などはドイツ学派、すなわち、ドイツ観念論、中でもヘーゲル哲学に根ざしていた一方で、『「いき」の構造』の九鬼周造先生はフランス学派、ベルクソンを必要とした、などといったペダンティックな議論は、とても京都思想にふさわしい展開ではないかと私は思います。本書にも登場する梶井基次郎の短編「檸檬」の八百卯は私が京大生のころにはまだありました。まあ、丸善はなかったですが、そういった舞台装置がまだ雰囲気を残していました。また、井上先生の『京都ぎらい』への言及もありますが、少し物足りません。井上先生は京都バブル、あるいは、かなり不当な京都プレミアムに対する疑問を呈しているわけですが、それを商家としての杉本家だけに矮小化するのはどうか、という気もします。さらに、疑問点をもう2点だけ上げておくと、京都や関西にある在日朝鮮人に対する差別はもちろん考えさせられる点ですが、著者の留学先というのはともかくとしても、日本人間の差別、すなわち、部落差別についての言及がないのは少し疑問です。最後に、京都を逍遥するとすれば先斗町あたりから祇園は欠かせません。まさに、著者のいう「京の創造性臨界ライン」のど真ん中に位置しているにもかかわらず、また、五条楽園には言及しているにもかかわらず、どうして祇園を抜かしたのか、積極的な理由があるなら明示すべきですし、ついうっかりと忘れたのであるなら、迂闊にもほどがあると思います。

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2019年4月19日 (金)

今シーズンいつになったらジャイアンツに勝てるのだろうか?

  RHE
読  売030210060 12140
阪  神000000300 4103

ともに開幕戦先発の表ローテの投手を立てながら、実力の差はいかんともしがたくジャイアンツに大敗でジャイアンツ戦4連敗の巻でした。何から何までジャイアンツにはかないませんでした。どうせなら、昨夜のヤクルトみたいに試合中盤で主力を引っ込めるのも一案かも、と思ってしまいました。4打点を上げた木浪選手も、負け試合ではなく、これからは勝利に貢献する活躍を期待します。
ひょっとしたら、今シーズンはこのままジャイアンツに負け続けるんでしょうか?
いったい、キャンプで何をやっていたんでしょうか?

明日は何とか、
がんばれタイガース!

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27か月連続でプラスを記録した消費者物価(CPI)上昇率の先行きやいかに?

本日、総務省統計局から3月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から上昇幅をやや拡大して+0.8%を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。
3月の全国消費者物価0.8%上昇、ガソリン上昇に転じる 18年度は0.8%上昇
総務省が19日発表した3月の全国消費者物価指数(CPI、2015年=100)は、生鮮食品を除く総合指数が101.5と前年同月比0.8%上昇した。プラスは27カ月連続。伸び率は2月の0.7%から拡大した。足元の原油高を背景にガソリン価格が上昇に転じたことで、エネルギーのプラス寄与が拡大した。
QUICKがまとめた市場予想の中央値は0.7%上昇だった。生鮮食品を除く総合では全体の過半にあたる280品目が上昇した。下落は179品目、横ばいは64品目だった。総務省は物価について「緩やかな上昇が続いている」との見方を示した。
生鮮食品とエネルギーを除く総合指数は101.3と前年同月比0.4%上昇した。在庫が少なくなり、新製品の出回りが早くなったルームエアコンが上昇した。10月の消費増税前の駆け込み需要などがみられるという。
生鮮食品を含む総合は101.5と0.5%上昇した。伸び率は前月(0.2%)に比べ拡大した。生鮮食品を除く食料で、メーカーが相次いで食料品の値上げをしたことが小幅ながら上昇幅拡大に寄与した。
2018年度のCPIは、生鮮食品を除く総合が101.2となり、17年度に比べ0.8%上昇した。2年連続の上昇。ガソリン価格の上昇などが寄与した。
いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは以下の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。
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消費者物価(CPI)上昇率は、先月の2月統計からやや上昇幅を拡大して、27か月連続のプラスを記録していますが、まず、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の影響が要因として上げられます。一時は下落していた石油価格も、2019年に入って再び上昇に転じ、例えば、CPIの中のガソリン価格などに典型的に現れています。ガソリンカは2月統計では前年同月比▲1.3%の下落、▲0.03%の寄与度を示していましたが、本日公表された3月統計では上昇率+1.3%、寄与度+0.03%ですから、2月統計から3月統計にかけての寄与度差が+0.06%あり、これだけで3月統計のコアCPI上昇率の拡大の半分を説明できてしまいます。ですから、消費者物価の先行きについても石油価格が大きなインパクトを及ぼすと考えられるんですが、何せ相場モノですので私には判りかねます。ただ、この先のイベントとして、今週月曜日にはドコモが最大4割の携帯電話料金引き下げを明らかにしていますし、6月からの実施となれば、それなりの物価への引き下げ材料となることは明らかです。加えて、10月からは幼児教育無償化も予定されています。いくつかのリポートを私が拝見した限り、携帯電話料金も幼児教育無償化も、それぞれで▲0.3%程度のコアCPI上昇率の引き下げ要因との試算が見受けられ、2つを合わせて軽く▲0.5%を超える寄与度となる可能性が高く、この先、国際商品市況における石油価格の動向を別としても、携帯電話料金引き下げと幼児教育無償化だけでもコアCPIは年央から年後半にかけて緩やかに低下に向かうものと私は考えています。

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2019年4月18日 (木)

打線爆発で岩田投手の完投を援護しヤクルトに爆勝!!

  RHE
阪  神402402100 13161
ヤクルト100100102 591

ともにローテーションの谷間ながら、阪神の打線爆発で岩田投手が大量点に守られて悠々の完投勝利でした。今季不動の4番に座った大山選手が2連発、お休みの福留選手に代わって出場の中谷選手も2打席連続ホームランと、打線が爆発しヤクルトに爆勝でした。ジャイアンツ戦に向けて弾みとなって欲しいものです。

次のジャイアンツ戦も、
がんばれタイガース!

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帝国データバンク調査による企業のアベノミクスの評価やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、ちょうど1週間前の4月11日に帝国データバンクから、「2019年度の業績見通しに関する企業の意識調査」が明らかにされ、その中に、アベノミクスに関する企業の評価が2年連続で低下している、との結果も示されています。pdfの全文リポートから簡単にグラフとテーブルを引用して取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから アベノミクスへの評価分布 を引用しています。ただ、その前に、グラフやテーブルは引用しませんが、ここ数年の企業によるアベノミクスの評価を簡単に振り返ると、グラフエリアの左上にある通りであり、2016年3月調査では100点満点の60.3点、202017年3月調査では63.1点で直近のピークを付け、2018年3月調査では62.4点、そして、今回2019年3月調査では61.8点となっています。その分布が上のグラフの通りとなっており、30点未満の極端な評価が平均点を引き下げているとはいえ、平均の60点台よりも、分布としては70点台の評価を付ける企業数がもっとも多いのが見て取れます。まあ、50点台も少なくないので、平均で60点台、というのがよく理解できます。さらに、これもグラフの引用はしませんが、今年2019年3月調査で企業規模別に見て、大企業63.5点、中小企業61.3点、小規模企業60.7点と、規模が大きいほどアベノミクスの評価が高くなっています。

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次に、上のテーブルはリポートから 企業の意見 (アベノミクスについて) を引用しています。高評価ではマインド的に「景気の高揚感」を指摘したり、利益を出しやすくなった点などが上げられている一方で、やっぱり、恩恵は大企業のみであり、中小企業は雇用悪化、販売価格の抑制、仕入単価の上昇に直面している、といった意見もあります。また、平均的な60点以上の評価の中にも、個人消費の活性化に厳しい見方や地域経済はそれほどよくない、とする指摘もあります。自社や産業の動向に大きく左右されるんでしょうが、当然ながら、ほぼすべてが真実なんだろうと私は受け止めています。

最後に、リポートの本来のフォーカスは、あくまで、「2019年度の業績見通しに関する企業の意識調査」なんですが、ここでは本来テーマは無視してアベノミクスの評価だけを取り上げています。悪しからず。

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2019年4月17日 (水)

継投に失敗して大山選手の2ランを守れずヤクルトと引き分け!!

 十一十二 RHE
阪  神000200000000 271
ヤクルト000000020000 290

継投失敗で大山選手のツーランを守れず、ヤクルトに追いつかれ、延長12回で引き分けでした。もっとも、終盤8回に追いつかれたとはいえ、9回や延長10回はサヨナラのピンチをよくしのぎましたし、クローザーのドリス投手を甲子園のジャイアンツ戦に温存しましたから、首位ヤクルト相手によく戦って0.5勝とカウントしていいのかもしれません。

次のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

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前年同月比で4か月連続のマイナスを示した輸出に見る貿易統計の今後やいかに?

本日、財務省から3月の貿易統計が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲2.4%減の7兆2013億円、輸入額は+1.1%増の6兆6728億円、差引き貿易収支は+5285億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の貿易収支、2カ月連続で黒字 5285億円 中国向け輸出は9.4%減と低迷
財務省が17日発表した3月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は5285億円の黒字だった。黒字は2カ月連続。中国向け輸出は前年同月比9.4%減と低迷し、米中貿易戦争などを背景とした中国経済減速の影響がまだ尾を引いていることを浮かび上がらせたかたちだ。
全体の輸出額は前年同月比2.4%減の7兆2013億円だった。減少は4カ月連続。中国向けに、鉄鋼や、液晶デバイスなどの科学光学機器が減少したことが影響した。
中国向けの輸出額は1兆3046億円で2カ月ぶりに減少した。みずほ証券の稲垣真太郎マーケットエコノミストは「春節の影響がなくなったものの数字としては弱い印象。中国経済減速の影響が出ているようだ」と指摘する。
全体の輸入額は前年同月比1.1%増の6兆6728億円と、3カ月ぶりに増加した。金額ベースではフランスからの航空機輸入が大きかったことに加え、中国からの衣類関連の輸入も増えた。一方、石油製品や原粗油の輸入は減少した。
対米国の貿易収支は6836億円の黒字で、黒字額は9.8%増加した。増加は2カ月ぶり。自動車や建設用・鉱山用機械、半導体等製造装置の輸出が増えた。
3月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=111円16銭。前年同月に比べ4.3%の円安・ドル高だった。
併せて発表した2018年度の貿易収支は1兆5854億円の赤字と、3年ぶりの赤字となった。中国向けの鉱物性燃料や自動車の輸出が増えたものの、原油高の影響で原粗油や液化天然ガスの輸入が金額ベースでは大きく増えたことで、差し引きでは赤字となった。

いつもの通り、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上下のパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、下は季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。

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まず、貿易収支については、季節調整していない原系列の統計を見ると、先月2月統計から黒字に転じ京発表の3月統計も黒字ですから、2か月連続で黒字を計上しています。しかし、傾向を見る季節調整済みの系列では、上のグラフを見ても明らかな通り、昨年2018年年央からほぼ赤字が継続しており、2018年5月から直近の2019年3月までの11か月のうち、黒字を計上したのは、わずかに2018年6月と先月の2019年2月の2か月しかありません。さらに、その2か月のうちの公社の2019年2月は中華圏の春節の影響が大きいと考えるべきですので、1年近くの間でほぼほぼ毎月のように貿易赤字を続けているに近いと私は考えています。輸入サイドの要因として、国際商品市況における石油価格の動向に左右されるとはいうものの、基本的には、輸出サイドの原因であり、すなわち、米中間の貿易摩擦の影響などから世界経済が停滞を示し、我が国輸出に対する需要が低迷しているのが大きな要因です。特に、中国経済の停滞から中国向け輸出が伸びないわけです。

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その輸出をいくつかの角度から見たのが上のグラフです。上のパネルは季節調整していない原系列の輸出額の前年同期比伸び率を数量指数と価格指数で寄与度分解しており、まん中のパネルはその輸出数量指数の前年同期比とOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしていて、一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。ただし、まん中と一番下のパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。ということで、先進国たるOECD諸国の先行指数と中国の先行指数が向かっている方向に違いが見られるのがグラフから読み取れます。もっとも、前年同月比でOECDも中国もまだマイナスが続いていますので、我が国の輸出数量指数がマイナスを続けている一因となっています。しかも、私が見る限り、まだ輸出数量の底打ちの兆しは見えません。しばらく年央くらいまでは輸出数量は緩やかに減少を続ける可能性が高い、と私は予想しています。加えて、石油価格が再上昇を始めています。昨年ほどの水準に達するペースではありませんが、我が国の貿易収支は簡単には黒字にならないんではないか、と私は考えています。

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2019年4月16日 (火)

リクルートライフスタイルによる『じゃらんnet』のGW予約動向やいかに?

とても旧聞に属する話題ですが、4月4日付けでリクルートライフスタイルから『じゃらんnet』のGW予約動向が明らかにされています。私が定年退職して、上の倅が新入社員研修に入り、下の倅は昨年から大阪で下宿し、ということで我が家では特段のアクティビティは予定していませんが、特例の10連休となる今年のゴールデンウィークの旅行予約状況は興味あるところです。リクルートライフスタイルのサイトpdfのリポートから、いくつか図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リクルートライフスタイルのサイトからチェックイン日別人泊シェアのグラフを引用すると上の通りです。チェックインの日付ですので、ほぼほぼ出発日に当たると私は考えています。ブルーのラインの昨年2018年は曜日要因により、ツインピークっぽい形状を示したんですが、今年2019年は土日休みとすれば4月27日の土曜日から始まっての10連休ですし、マクロミル・ホノテの調査によれば4割を超えるビジネスパーソンが10連休をの取得を予定しているようですので、少なくとも曜日要因によるピークはないように見受けられ、連休最初の方の4月28日の日曜日にピークが来ています。その後は高原状となりますが、それも連休おしまいの方の5月3日金曜日までで、その先は急激に低下します。当然でしょう。

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次に、リクルートライフスタイルのサイトから人泊数で見た『じゃらんnet』GW人気旅行先ランキングのテーブルを引用すると上の通りです。人気の旅行先1位は、昨年2018年と同じ北海道で、北海道の中でも特に札幌が人気のようです。2位3位は、沖縄、東京と続いています。テーブルから明らかなように、今年のGWの旅行先として特に順位を伸ばしているのは福岡で、ホテルの新設やリニューアルが多く、受入可能数が増加したことも要因のほとつと指摘されています。私の出身地である京都はトップテンに入っていませんが、春や初夏よりも秋に人気の行楽地が多いのかもしれません。

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最後に、上はリクルートライフスタイルのサイトから『じゃらんnet』GW「遊び体験予約」人気アクティビティのランキングのテーブルを引用すると上の通りです。いちご狩りは季節ならではでしょうし、シュノーケルやスキューバは沖縄などの南の方のリゾートで休暇を楽しむ人たちなんだろうと私は想像しています。

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2019年4月15日 (月)

第一生命経済研リポート「新紙幣・硬貨発行で期待される特需」やいかに?

先週の月曜日4月8日に政府から新紙幣と硬貨が発行される旨の報道がありましたが、早速にもその翌日4月9日付けで第一生命経済研から「新紙幣・硬貨発行で期待される特需」と題するリポートが明らかにされています。リポートでは、「新紙幣・硬貨発行に伴う特需は、現環境が変わらないと仮定すれば、直接額1.6兆円、生産誘発額として3.5兆円、付加価値誘発額として1.3兆円が見込める計算」と試算しているところ、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上の円グラフはリポートから、新紙幣・硬貨発行に伴う特需を引用しています。グラフを見ての通りであり、新紙幣・硬貨製造に約6,114億円の需要が見込まれるほか、ATM/CDの買い替えや改修費用は約3,709億円となっており、これは1台当りの値段は単機能なコンビニ向けで平均200万円程度、高機能の銀行向けは500~800万円程度と見込みつつ、その3割程度を買い替えで対応するという前提で試算しているようです。最後のコンポーネントの自動販売機の改良・改修に伴う需要は約6,064億円と見込まれ、1台当たり平均50~60万円程度の自動販売機の約3割程度を買い替えで対応するという前提です。この3つを合わせると、新紙幣・硬貨発行で期待される直接的な特需で約1.6兆円となります。

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続いて、上の円グラフはリポートから、2017年12月末の自販機普及台数を引用しています。全国で自動販売機は2017年12月末時点で約427万台設置されているらしいですが、中には100円以下の硬貨のみの自動販売機もあるため、全てを改修する必要はない。ただ、残念なことに紙幣の使える自動販売機の統計はなく、ある程度推測で決めていくるとリポートでは書かれており、ヒアリングなどを通して前提を置いているようです。

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最後に、上のテーブルはリポートから、新紙幣・硬貨発行に伴う特需を引用しています。最初の円グラフの直接効果の1.6兆円に加え、産業連関表を用いて生産誘発額地付加価値誘発額を試算しています。結果は見ての通りであり、生産誘発額が約3.5兆円、付加価値誘発額が1.3兆円となっています。過去の経験的な例から、新紙幣・硬貨発行に伴う特需が2年間実現すると仮定すれば、+0.1%の成長率引き上げ効果がある、とリポートでは結論しています。

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2019年4月14日 (日)

4回の5点を西投手が守って連敗ストップ!!

  RHE
中  日010000100 2100
阪  神00050000x 5100

ようやく連敗ストップでした。雨が降る中、4回の5点を西投手が7回2失点の好投で守り、ジョンソン投手からドリス投手のリレーで中日打線を抑え込みました。それにしても、西投手は表情豊かで見ていて楽しい選手です。阪神は鳥谷選手や能見投手に代表されるポーカーフェイスが多いような気がするんですが、ニコニコ顔の西投手も愛嬌あります。それから、ジョンソン投手は初めて見たんですが、かつてのアッチソン投手を思い起こさせるようなキレのいいスライダーと安定した投球でした。打つ方は西投手の2点タイムリーもあって下位打線で得点しましたが、さらに勝ちを重ねるためには上位打線の奮起を期待します。

次のヤクルト戦も、
がんばれタイガース!

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2019年4月13日 (土)

今週の読書は経済書や経営書をはじめとして古いミステリ短編集まで計7冊!

今週の読書は、経済書や経営書をはじめとして、幅広く完全版として復刻された古典的なミステリ短編集まで含めて、以下の通りの計7冊です。本日午前に図書館回りをすでに終えており、来週も数冊の読書計画となっています。

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まず、 守口剛/上田雅夫/奥瀬喜之/鶴見裕之[編著]『消費者行動の実証研究』(中央経済社) です。著者たちは経済学を専門とするエコノミストというより、むしろ、マーケティングの分野のビジネス分析の専門家です。消費者の選択というより、消費行動がマーケティングによってどのような影響を受けるか、という分析を集めた論文集です。消費者行動は外部環境の影響を受けながら常に変化しているわけなんですが、ICT情報技術の発展に伴って、ハードウェア的に高性能かつ携帯性に優れたデバイスなどが普及するとともに、ソフトウェア的にSNSなどで情報が画像や動画などとともに拡散するなど、消費者の情報取得行動やそれに基づく選択や購買行動は大きな変化を遂げてきています。同時に、このような情報技術の進展と消費者行動の変化は、企業のマーケティング活動といった実務にも大きな変革を促してきたところであり、消費者行動とそれに対応する企業のマーケティング活動が大きく変化し続けている現状において、消費者行動の実証研究に関連する理論や分析手法を整理すべく、計量的な分析も加えつつ、さまざまな消費行動への影響要因を分析しようと試みています。ただ、本書でも指摘されているように、コトラー的に表現すれば、行動経済学や実験経済学とはマーケティングの別名ですから、実務家が直感的に感じ取っていることを定量的に確認した、という部分も少なからずあります。もっとも、企業活動にとっての評価関数が、場合によっては、企業ごとに違っている可能性があり、株価への反映、売上げ極大化、利益極大化、あるいは、ゴーン時代の日産のように経営者の利便の極大化、などもあるのかもしれません。いずれにせよ、エコノミストたる私から見て違和感あったのは、あくまで、本書の視点は消費者行動をコントロールすることであり、しかも、企業サイドから何らかの企業の利益のためのコントロールであり、日本企業が昔からの「お客様は神様」的な視点での企業行動とはやや異質な気がしました。ある意味で、欧米正統派経営学的な視点かもしれませんが、消費者視点に基づく顧客満足度の達成ではない企業目的の達成というマーケティング本来の目的関数が明示的に取り上げられており、グローバル化が進む経営環境の中で、従来の日本的経営からのジャンプが垣間見られた気がします。実務家などでは参考になる部分も少なくないものと考えますが、情けないながら、私には少し難しかった気がします。

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次に、ロビン・ハンソン & ケヴィン・シムラー『人が自分をだます理由』(原書房) です。著者はソフトウェア・wンジニアと経済学の研究者です。英語の原題は The Elephant in the Brain であり、2018年の出版です。英語の原題は "The Elephant in the Room" をもじったもので、くだけた表現なら「何かヘン」といったところでしょうか。ですから、私はこの邦訳タイトルは、あまりよくないと受け止めています。ということで、繰り返しになりますが、著者2人はいずれも心理学の専門家ではありませんが、本書は進化心理学の視点からの動機の持ち方に関する分析を展開しています。すなわち、本書 p.11 の図1にあるように、何らかの行動の動機として美しい動機と醜い動機があり、美しい動機でもって言い訳しつつ、他人だけでなく自分自身も欺いている、というのが本書の主張です。かつて、経済学の分野でもウェブレンのいう衒示的消費という説が提唱されたことがあり、すなわち、人に見せびらかす要素が消費には含まれており、使用価値だけで消費者行動が説明できるものではない、ということです。典型的には、「インスタ映え」という言葉が流行ったところですし、例えば、単に美味しいというだけでなく、見た目がよくて写真写りもよく、スマホで写真を撮ってインスタにアップしてアクセスを稼ぐのがひとつの目標になったりするわけです。それはそれで、なかなか素直な動機なんですが、それを自分すら偽って合理的なあるいは美しい動機に仕立て上げるというわけです。消費は本書10章で取り上げているんですが、同様に、芸術、チャリティ、教育、医療などの分野を取り上げています。邦訳タイトルがよくないよいう私の感触を敷衍すると、教育などはエコノミストの間でもシグナリング効果と呼ばれ、基礎的な初等教育の読み書き算盤なともかく、高等教育たる大学を卒業下だけで、ここまでの所得の上乗せが生じるのは教育と学習の効果というよりは、むしろ、大学進学のための勉強をやり抜く粘り強さとか、あるいは、学習よりむしろ大学での人脈形成とかの価値を認める、という部分も少なくないと考えられています。特に、本書は米国の高等教育を念頭に置いているんでしょうが、日本のように大学がレジャーランド化しているならなおさらです。ゾウさんが頭の中にいて、「何かヘン」なわけです。

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次に、佐藤俊樹『社会科学と因果分析』(岩波書店) です。著者は東大社研の社会学研究者であり、社会科学の中でも経済学とは少し異なる気もしますが、副題にあるようなウェーバー的な視点からの因果論を展開しています。本書にもある通り、極めてシロート的にウェーバーの因果論、すなわち、適合的因果構成については、ウェーバーと同時代人であるものの、架空の人物であるシャーロック・ホームズの考え方が思い起こされます。つまり、何らかの結果に対して原因となる要素が網羅的に列挙された上で、それらの原因候補について考察を巡らせ、可能性のない原因候補を消去していった上で、最後に残ったのが原因である、とする考え方といえます。ただ、ミステリの犯人探しならこれでいいのかもしれませんが、実際の社会的な事象に対する原因の考察についてはここまで単純ではありません。そして、私にとってウェーバー的な視点といえば、本書ではp.378だけに登場する「理念型」、あるいは、現代社会科学でいえば、モデルにおける因果関係が重要な出発点となります。おそらくは、歴史上で1回限りのイベントである結果に対して、その結果を生ぜしめるに至ったモデルの中で、複数の原因候補があり、しかも、原因と結果が一義的に規定されるとは限らず、同時に原因でもあり結果でもある、というリカーシブな関係があり得る場合、それを現実の複雑な系ではなくモデルの中の系として、ある意味で、単純化して考え、相互作用も見極めつつ因果関係を考察しようと試みたのがウェーバー的な方法論ではなかったか、と私は考えています。経済学の父たるスミス以来、経済学では明示的ではないにせよ、背景としてモデルを考えて、その系の中で因果関係を考え、政策的な解決策を考察する、という分析手法が徐々に確立されて、一時的に、どうしようもなく解決策の存在しないマルサス的な破綻も経験しつつ、ケインズによる修復を経て、経済モデルを数学的に確立したクライン的なモデルの貢献もあって、経済学ではモデル分析が主流となっています。これは物理学と同じと私は考えています。ただ、現時点までの経済学を考えると、ビッグデータと称される極めて多量の観察可能なサンプルを前にして、どこまで因果関係を重視するかは、私は疑問だと考えています。おそらく、ビッグデータの時代には相関関係が因果関係よりも重要となる可能性があります。すなわち、一方的な因果の流れではなく、双方向の因果関係でスパイラル的に原因と結果が相互に影響しあって動学的に事象が進行する、というモデルです。ただ、こういったビッグデータの時代にあってもモデルの中の系で分析を進め、可能な範囲で数学的にモデルを記述する、という方向には何ら変更はないものと私は考えています。その意味で、ウェーバー的な因果関係の考察はやや時代錯誤的な気もしますが、別の意味で、アタマの体操としてのこういった考察も必要かもしれません。

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次に、豊田長康『科学立国の危機』(東洋経済) です。著者は三重大学学長を務めた医学分野の研究者です。本書では、研究成果を権威あるジャーナルに掲載された論文数で定義した上で、論文数とGDPや豊かさ指標は正の相関を持ち、科学立国によりGDPで計測した豊かさが伸びる、としてそのための研究成果たる論文数の増加の方策を探ろうと試みています。OECD.Statをはじめとするかなり膨大なデータに当たり、さまざまなデータを駆使して我が国の科学技術研究の現状、そして、その危機的な現状を打開するため、決定的な結論として、研究リソースの拡充、すなわち、研究費の増加とそれに基づく研究員の増加が必要との議論を展開しています。なお、本書の主たるターゲットは医学や理学工学など、いわゆる理系なんですが、経済学・方角、あるいは心理学などの文系も視野に入れています。ということで、私自身も地方大学の経済学部に日本経済論担当教授として出向の経験があり、科研費の研究費申請などの実務もこなせば、入試をはじめとする学内事務にも汗をかいた記憶があります。研究については、ほとんどが紀要論文であり、本書で研究成果としてカウントされている権威あるジャーナルに掲載された論文には含まれないような気もしますが、査読付き論文も含めて20本近くを書いています。その私の経験からしても、研究はリソース次第、あるいは、本書第3章のタイトルそのままに「論文数は"カネ"次第」というのは事実だろうと考えます。もちろん、一部に、いまだに太平洋戦争開戦当時のような精神論を振り回す研究者や評論家がいないわけではありませんが、研究リソースなくして研究成果が上がるハズもありません。本書でも指摘しているように、我が国の研究に関しては「選択と集中」は明らかに間違いであり、むしろ、バラマキの方が研究成果が上がるだろうと私も同意します。これも本書で指摘しているように、我が国における研究は大企業の研究費は一流である一方で、中小企業や大学の研究費は三流です。でも、その一流の大企業研究費をもってしても、多くののノーベル賞受賞者を輩出してきたIBM基礎研究所やAT&Tベル研究所に太刀打ちできるレベルにないのは明白です。最後に2点指摘しておきたいと思います。すなわち、まず、因果の方向なんですが、本書では暗黙のうちに研究成果が上がればGDPで計測した豊かさにつながる、としているように思いますし、私も基本的には同意しますが、ひょっとしたら、逆かもしれません。GDPが豊かでジャカスカ金銭的な余裕あるので研究リソースにつぎ込んでいるのかもしれません。でも、これは研究成果を通じてGDP的な豊かさに結実する可能性も充分あるように思われます。次に、歯切れのよい著者の論調の中で、p.47図表1-14に示された我が国における国立研究機関の研究費のシェアの大きさについては、原子力研究などにおける高額施設でフニフニいっていますが、私の知る限りで、国立の研究機関、研究開発法人はかなりムダが多くなっています。もちろん、はやぶさで名を馳せたJAXAのような例外もありますが、NEDOやJSTなどはお手盛り研究費でムダの塊のような気がします。

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次に、マリー=クレール・フレデリック『発酵食の歴史』(原書房) です。著者はフランスのジャーナリストであり、食品や料理に関するライターでもあります。フランス語の原題は NI CRU, NI CUIT であり、直訳すれば、生ではなく、火も通さず、といったところでしょうか。2014年の出版です。副題に Historie とあるので、日本語タイトルにもついつい「歴史」を入れてしまったんでしょうが、ラテン語系統では歴史よりも物語なんでしょうね。読書の結果として、それほど歴史は含まれていないと私は受け止めています。本書は3部構成であり、第1部で古代からの発酵食品と文明とのかかわり、第2部で具体的な食品を取り上げた発酵食品のそれぞれ個別の例を紹介し、第3部で発酵食品を通して現代社会の問題を投げかけています。特に最後の第3部では、食べ物が画一的均質な工業製品として供給され、効率的にカロリー補給ができる食品として、いわば、味も素っ気もない無機質な食品ではなく、スローフードとして食事を楽しみ、コミュニケーションを図る食事のあり方まで含めて議論を展開しようと試みています。発酵食品ということで、酵母が糖などを分解するわけで、典型的にはアルコールを含有するお酒ということになります。西洋的にはビールとワインとなりますが、私は正しくはエールとワインだと考えています。そして、エールとビールの違いはホップにあります。要するに、エールにホップを加えた飲み物がビールだと私は考えています。アルコール含有飲料は、本書にもあるように、俗っぽくは楽しく陽気に酔いが回るとともに、トランス状態に近くなって神に近づくかもしれない、と思わせる部分もあります。発酵食品は微生物が活躍しますので、火を加えると発酵が停止しますから、各国別では、強い火力でもって調理することから、ピータンなどの例外を除いて、中国料理がほとんど登場しません。火の使用をもって人類の進化と捉え、調理の革命と考える向きも少なくないんですが、本書では真っ向からこれを否定しているように見えます。また、各国別の食品に戻ると、日本料理では大豆から作る発酵食品である味噌・醤油・納豆とともに、何といっても、京都出身の私には漬物が取り上げられているのがうれしい限りです。京都では、しば漬けとともに、全国的にはそれほど有名ではないんですが、酸茎をよく食べます。今度の京都土産にいかがでしょうか。本書を読んでいると、他のノンアルコールの飲み物でもコーヒーや紅茶など発酵させた飲み物はいっぱいありますし、欧米の主食であるパンはイースト菌で発酵させますから、発酵食品ではない食品を見つけるほうが難しいのかもしれません。ただ、発酵と腐敗が近い概念として捉えられている可能性は本書の指摘するように、そうなのかもしれませんが、毒物を発酵により解毒することもあるのも事実で、そこまでいかなくても、渋柿を甘くする働きも発酵であり、ペニシリンまで言及せずとも、いろんな応用が効くのが発酵であるといえるかもしれません。

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次に、福嶋亮大『ウルトラマンと戦後サブカルチャーの風景』(PLANETS/第二次惑星開発委員会) です。著者は京都出身で立教大学をホームグラウンドとする文化・文芸評論の研究者です。本書は、タイトル通りに解釈すれば、ウルトラマンを切り口に戦後サブカルチャーを解釈しようと試みているようですが、間口はさらに広く、ウルトラマンだけでなく特撮一般に切り口を広げるとともに、戦後サブカルだけでなく戦争当時からのマンガなどのサブカルも含んだ構成となっています。というのは、オモテの解釈で、実は、そこまで広げて論じないと本1冊になならないんだろうと私は見ています。でも面白かったです。ウルトラマンのようなテレビ、あるいは、映画もそうなんでしょうが、こういった動画を論じようとすれば、本の速読のようなことはムリですから、時間の流れの通りにすべてを見なければならないんですが、研究者でそこまで時間的な余裕ある場合は少ないんではないかという気もします。でも、見てるんでしょうね。本書でも論じているように、デジタルなCGが現在のように十分な実用性を持って利用される時代に至るまで、すなわち、アナログの世界では、融通無碍なアニメーションの世界、現在のNHK朝ドラのアニメータの世界と対比して、いわゆる実写の世界があり、その間のどこかに特撮の世界があったんだろうという気がします。そして、実写の世界には「世界の黒沢」を始めとして、本書でも取り上げられている大島渚や小津安二郎のような巨匠がいますし、アニメの世界でも、戦後の手塚治虫からジブリの宮崎駿、もちろん、ポケモンやドラえもんも含めて、世界に通用する目立った作品が目白押しなんですが、特撮だけはウルトラマンの円谷英二が唯一無二の巨峰としてそびえ立っていて、独自の世界を形成しているというのも事実です。私のように60歳近辺で団塊の世代に10年と少し遅れて生まれでた世代の男には、プロ野球とウルトラマンといくつかのアニメが少年時代の強烈な思い出です。その意味で、本書のウルトラマンを軸としたサブカル分析には、かなりの思い入れがあったりします。

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最後に、C. デイリー・キング『タラント氏の事件簿』(創元推理文庫) です。著者は19世紀末に生まれて、すでに定年退職した私が生まれる前に亡くなっています。要するに古い本だということです。ただ、この邦訳の完全版は昨年2018年1月の出版です。私は古いバンを読んだことがありますが、この完全版には新たな作品も収録されています。ということで、収録されている短編は、「古写本の呪い」、「現われる幽霊」、「釘と鎮魂曲」、「<第四の拷問>」、「首無しの恐怖」、「消えた竪琴」、「三つ眼が通る」、「最後の取引」、「消えたスター」、「邪悪な発明家」、「危険なタリスマン」、「フィッシュストーリー」の12話です。いわゆる安楽椅子探偵に近いタラント氏が日本人執事兼従僕のカトーとともに登場します。でも、カトーがなぞ解きに果たす役割はほとんどありません。資産家で働く必要のない、いかにもビクトリア時代的なタラント氏ではありますが、ニューヨーク東30丁目のアパートメントに住む裕福な紳士であり、舞台は米国ニューヨークとその近郊です。どこかの短編に年齢は40台半ばと称していたように記憶しています。その意味では、事件の舞台だけはクイーンの作品に似ていなくもありません。なお、ワトソン役は出番の少ない執事兼従僕のカトーではなく、最初の事件の当事者で家族で親しくなるジェリー・フィランが務めます。設定はオカルト的あるいは心霊現象的なものも少なくなく、エドワード・ホックのサイモン・アークのシリーズのような感じですが、語り手のフィランが結婚するなど、時間が着実に流れるのがひとつの特徴かもしれません。もっとも、ホームズのシリーズでもワトスンも結婚しましたので、同じことかもしれません。

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2019年4月12日 (金)

やっぱり先発投手がホームランを被弾し打線が左腕を打てずに中日に大敗して甲子園で3連敗!!

  RHE
中  日100203003 9120
阪  神000001300 481

またまた先発投手がホームランに沈み打線が左腕投手に沈黙して、中日に大敗して甲子園で3連敗の巻でした。今季始まってまだ10試合余りなんですが、このパターンでもう何回も負け続けているような気がします。今夜の試合では、左バッターが左投手を打てないんではなく、右バッターがサッパリでした。先発投手も相変わらずホームランを被弾して早い回に失点します。今夜はビシエド選手の2発が効きました。今の阪神打線では5点を追いかけるのは難しいかもしれません。木浪内野手のプロ初安打もあって、ラッキーセンブンは盛り上がりましたが、結果的にはあだ花でした。

明日は打線の奮起を期待して、
がんばれタイガース!

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帝国データバンクによる2018年度の人手不足倒産やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、今週月曜日の4月8日に帝国データバンクから「『人手不足倒産』の動向調査 (2013~18年度)」と題するリポートが明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。2018年度の人手不足倒産は169件発生し、前年度比48.2%の増加を示すなど、最近6年間で右肩上がりに増加を続けています。まず、帝国データバンクのサイトから調査結果のサマリーを5点引用すると以下の通りです。

調査結果
  1. 2018年度(2018年4月~19年3月)の人手不足倒産は169件発生し、前年度比48.2%の増加。調査開始以降、右肩上がりでの推移が続き、6年間の累計件数は540件にのぼる
  2. 2018年度の負債規模別件数では、「1億円未満」(100件)の小規模倒産が前年度比75.4%の増加となった
  3. 2018年度の業種別件数を見ると、「建設業」が最多の55件(構成比32.5%)を占め、前年度比77.4%の増加
  4. 業種細分類別の6年間累計件数では、「道路貨物運送」が49件で最多。このうち、2018年度は23件(前年度10件)と、前年度比2.3倍に急増
  5. 都道府県別の6年間累計件数では、「東京都」が75件で最多。このうち、2018年度は26件(前年度13件)発生した

とても包括的に取りまとめられており、これ以上に付け加える点は何もありませんが、リポートからグラフを引用しつつ、簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、リポートから「人手不足倒産」の件数のグラフを引用すると上の通りです。最初に引用したサマリーにある通りで、右肩上がりに人手不足倒産が年々増加を示していますが、特に、2017~18年度とこの最近2年で大きく増加が加速しているのが見て取れます。倒産件数の前年度比で見て、2017年度は+44.3%増、2018年度は+48.2%増をそれぞれ記録しています。

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次に、リポートから業種細分類別上位 (2013~18年度、6年間累計)のグラフを引用すると上の通りです。業種別の倒産件数で見て、2018年度は「建設業」が最多の49件、構成比32.5%、次いで、「サービス業」が49件、29.0%、さらに、続いて、「運輸・通信業」が32件、18.9%とビッグスリーを形成しており、この順位は2013~18年度の6年間累計でも同じです。もう少し詳しい細分類を見たのが上のグラフであり、「道路貨物運送」では通販市場の拡大などを受け、配送需要が拡大基調の中、ドライバー不足により仕事を受けられず、固定費負担が経営を圧迫した倒産が目立ち、「老人福祉事業」では、有資格スタッフの確保難や離職者の増加から十分なサービスを提供できなくなったケースなどが見られ、「木造建築工事」では職人不足による工期遅延や労務費の上昇で資金繰りが悪化したケースが上げられています。私の目から見れば、確かに人手不足はあったかもしれないものの、本格的にデフレを脱却して値上げがもっと容易になれば、回避できた倒産もあるんではないか、という気がしてなりません。

最後に、東京商工リサーチでも同種の「2018年度『人手不足』関連倒産」の結果を4月5日付けで明らかにしていますが、2018年度は400件に上っており、そのうち、後継者難型の倒産件数が269件を占めており、やや印象が異なるので、この私のブログでは帝国データバンクの調査結果に着目してみました。ご参考まで。

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2019年4月11日 (木)

今季初先発の秋山投手がホームランに沈み打線は横浜ルーキー投手に初勝利を献上!!

  RHE
横  浜020003000 590
阪  神001000100 261

またまた先発投手がホームランに沈み打線が沈黙して、横浜に連敗でした。どう組み替えても1番2番が出塁せず、打線の方は得点力が上がりません。投手はこれだけ広い甲子園でもホームランに沈む場面が多くなっています。明日も中日は左投手を先発に立てていますし、打線がどこまで攻略できるのか、メッセンジャー投手のピッチングが安定しているだけに、打線の出来が試合を左右するような気がします。

明日は打線がサウスポーを打ち崩して投手を援護し、
がんばれタイガース!

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「IMF世界経済見通し」の見通し編は世界経済の減速を予想!!

明日の4月12日から米国のワシントンDCで始まるIMF世銀の春季会合に先立って、「IMF世界経済見通し」IMF World Economic Outlook, April 2019 の見通し編が日本時間の昨夜公表されています。副題は Growth Slowdown, Precarious Recovery であり、成長の減速と再加速の不確実性を表現しています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。なお、第2章からの分析編については、すでに、このブログで4月4日に取り上げています。見通し編についても、テーブルやグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、IMFのブログサイトから成長率見通しの総括表を引用すると上の通りです。世界経済の成長率は昨年2018年の+3.6%から今年2019年は+3.3%に減速し、来年2020年には+3.6%と再加速するシナリオとなっています。世界経済の成長が減速する要因としては、米中貿易摩擦の激化、中国での与信の引き締め、アルゼンチンやトルコでのマクロ経済的なストレス、ドイツ自動車産業の混乱、金融環境のタイト化や主要先進国での金融政策正常化を上げています。IMFのブログサイトからの引用は、"The escalation of US-China trade tensions, needed credit tightening in China, macroeconomic stress in Argentina and Turkey, disruptions to the auto sector in Germany, and financial tightening alongside the normalization of monetary policy in the larger advanced economies" となります。我が国については、昨年2018年の+0.8%成長に続いて、今年2019年は+1.0%成長、来年2020年は東京オリンピック・パラリンピック開催にもかかわらず+0.5%成長に減速するのは、今年2019年10月から実施予定の消費税率引き上げに起因します。

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続いて、リポート p.21 Figure 1.21. Risks to the Global Outlook を引用すると上の通りです。一番上のパネルのファンチャートは、昨年2018年春時点での見通しからやや下方にリスクがシフトしています。そして、2番めのパネルに見られる通り、国際商品市況における石油価格のリスクが低下する一方で、金融環境のタイト化や主要先進国での金融政策正常化に伴う金利の期間構造の変化、株価に代表される金融市場ののリスクが今年から来年にかけて高まると予想されています。

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最後に、今回のリポートでは p.37 から Special Feature: Commodity Market Developments and Forecasts として商品市況の見通しを展開しています。私は商品市況や株価・為替をはじめとする金融市場の動向については「判らない」で済ませてしまうことが多いんですが、さすがに、IMFではそういうわけにもいかず、それなりの見通しを議論しようと試みています。上のグラフはリポート p.38 Figure 1.SF.1. Commodity Market Developments を引用しています。上から3番目のパネルが石油の代表としてブレントの価格動向の予想がプロットされています。基本は足元価格の横置きなんですが、先行きのファンチャートはやや価格上昇を示す上方に広く展開しているようです。

最後に、こういった経済見通しに基づいて、マクロ経済政策と金融政策は、成長率が潜在成長率を下回るような場合にはさらなる減速を阻止し、政策による支援を段階的に打ち切っていく必要がある場合にはソフトランディングを促進することを確実にすべき、としています。リポート p.21 からの引用は、"Macroeconomic and financial policy should aim to guard against further deceleration where output may fall below potential and to ensure a soft landing where policy support needs to be withdrawn." となります。

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2019年4月10日 (水)

またまたサウスポーに打線が沈黙して青柳投手と能見投手がソロホームラン2発に沈む!!

  RHE
横  浜000010100 2100
阪  神000000000 011

またまた打線がサウスポーに沈黙してしまいました。先発青柳投手は走者を出しながらも粘り強い投球を続けていたんですが、ソロホームランに沈みました。後をつないだ能見投手もまたホームランに沈みましたが、青柳投手は文句なしのQSですし、今夜の敗戦は打線の責任です。牽制アウトも何度もやられましたし、まったく学習効果のないことがバレバレです。このまま何ら改善なくシーズンを終えるんですかね。

明日は打線が秋山投手をサポートして、
がんばれタイガース!

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足踏み続く機械受注と石油価格に連動する企業物価(PPI)上昇率!

本日、内閣府から2月の機械受注が、また、日銀から3月の企業物価 (PPI) が、それぞれ公表されています。機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て、前月比+1.8%増の8367億円を示し、PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.3%と前月の+0.9%から上昇率が拡大し、引き続き、プラスの上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の機械受注は1.8%増 4カ月ぶり増加 市場予想は下回る
内閣府が10日発表した2月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比1.8%増の8367億円だった。増加は4カ月ぶり。QUICKがまとめた民間予測の中央値は2.7%増だった。
製造業で船舶の内燃機関の大型案件があったことなどが上昇に寄与した。内閣府は基調判断について「足踏みがみられる」で3カ月連続で据え置いた。
製造業の受注額は前月比3.5%増の3881億円だった。4カ月ぶりに増加した。製造業17業種のうち8業種で増加した。造船業での大型案件や化学機械、工作機械の受注増が寄与した。
半面、非製造業は0.8%減の4510億円と、2カ月連続で前月を下回った。情報サービス業やリース業での電子計算機などの受注が低調だった。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は5.5%減だった。受注総額は同3.1%減の2兆3558億円。外需の受注額は同1.9%減の9850億円だった。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。
3月の企業物価指数、前年比1.3%上昇 原油高などで
日銀が10日発表した3月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.5で前年同月比で1.3%上昇した。上昇は27カ月連続で、上昇率は2月の確報値の0.9%から拡大した。原油価格の上昇や米中貿易交渉の進展期待を背景にした非鉄金属市況の改善などで、企業物価指数は上昇した。
前月比では2カ月連続のプラスとなり、上昇率は前月と同じ0.3%だった。日銀の調査統計局は3月の物価指数上昇について「米中貿易交渉の進展期待や中国経済の減速懸念が和らいだことが背景にある」との見方を示した。
円ベースでの輸出物価は前年比で0.2%上昇し、4カ月ぶりのプラスとなった。前月比では0.8%上昇した。輸入物価は前年比で2.5%、前月比では1.6%それぞれ上昇した。
あわせて発表した18年度の企業物価指数は2.2%上昇した。上昇は2年連続。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、機械受注のグラフは以下の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注の季節調整済みの系列を見ると、昨年2018年11月から今年2019年1月まで3か月連続で前月比マイナスを記録していますので、4か月振りの前月比プラスということになります。しかし、引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは前月比+2%を超えていましたが、実績は下回りましたし、3か月連続マイナスからの戻りは弱くて力強さに欠ける印象です。上のグラフを見ても、太線の6か月後方移動平均はまだ下向きだったりします。簡単に業種別に概観しておくと、製造業が前月比プラスの非製造業がマイナスとなっていて、このところのトレンドとは逆の方向が示されています。機械受注の今後の方向については、世界経済の減速により製造業では足踏み、ただ、非製造業では人手不足などから底堅い動き、というのが予想されるところであり、これらを総合すれば全体としては緩やかな減少という予想がエコノミストの間では多いんではないかと私は考えています。先々月の2018年12月統計公表時に明らかにされた今年2019年1~3月期の見通しが前期比で▲0.9%減ですから、ちょうどこれくらいのペースではなかろうかと想像しています。統計作成官庁である内閣府でも基調判断を「足踏み」で据え置いています。この基調判断は3か月連続です。

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続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は、機械受注のグラフと同じで、景気後退期を示しています。基本的に、国際商品市況における石油価格に連動した動きと考えています。すなわち、季節調整していない原系列ながら、国内物価の前月からの上昇幅+0.3%に対する寄与度で見て、石油・石炭製品が+0.18%、非鉄金属が+0.04%、スクラップ類が+0.03%、電力・都市ガス・水道が+0.02%、などとなっており、エネルギー価格と中国をはじめとする新興国経済の減速懸念が和らいだ点を背景とした価格上昇の色彩が強いと私は受け止めています。

なお、IMF・世銀総の春季会合に合わせて国際通貨基金(IMF)から「世界経済見通し」の見通し編が日本時間の昨夜公表されています。日を改めて取り上げたいと思います。

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2019年4月 9日 (火)

日銀「さくらリポート」に見る地域経済動向やいかに?

昨日午後に、日銀から4月の「さくらリポート」が公表されています。各地域の景気の総括判断をみると、引き続き、すべての地域で「拡大」または「回復」が維持されています。ただ、前回2019年1月のリポートと比較すると、北海道だけは地震の下押し圧力が解消したことから判断を引き上げているものの、輸出・生産面で中国など新興国をはじめとする世界経済の減速の影響が指摘される中、3地域(東北、北陸、九州・沖縄)が判断を引き下げる一方、5地域(関東甲信越、東海、近畿、中国、四国)が判断を据え置いています。以下のテーブルの通りです。なお、転記は誤りなきよう慎重に行っているつもりですが、タイプミスもありえますので、引用は日銀のサイトからお願いします。

 【2019年1月判断】前回との比較【2019年4月判断】
北海道基調としては緩やかに回復しており、北海道胆振東部地震の影響による下押し圧力は緩和を続けている緩やかに回復している
東北緩やかな回復を続けている一部に弱めの動きがみられるものの、緩やかな回復を続けている
北陸拡大している緩やかに拡大している
関東甲信越緩やかに拡大している輸出・生産面に海外経済の減速の影響がみられるものの、緩やかに拡大している
東海拡大している拡大している
近畿緩やかな拡大を続けている緩やかな拡大を続けている
中国緩やかに拡大している緩やかに拡大している
四国回復している回復している
九州・沖縄しっかりとした足取りで、緩やかに拡大している緩やかに拡大している

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2019年4月 8日 (月)

下がり続ける消費者態度指数と景気ウォッチャーのマインド指標をどう考えるべきか?

本日、内閣府から消費者マインドを代表する指標である消費者態度指数景気ウォッチャーが、また、財務省から経常収支が、それぞれ公表されています。消費者態度指数と景気ウォッチャーはともに3月の統計で、経常収支だけ2月の統計です。消費者態度指数は前月から▲1.0ポイント低下して40.5を記録し、景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から▲2.7ポイント低下の44.8を記録した一方で、先行き判断DIも▲0.3ポイント低下の48.6となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆6768億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の消費者態度指数、3年1カ月ぶり低水準 食品値上げ響く
内閣府が8日発表した3月の消費動向調査によると、消費者心理を示す一般世帯の消費者態度指数(季節調整値)は前月比1.0ポイント低下の40.5と6カ月連続で低下した。身近な食料品の値上げや世界経済への先行き不安が重荷となった。指数は2016年2月以来、3年1カ月ぶりの低水準だった。内閣府は基調判断を「弱まっている」で据え置いた。
指数を構成する4つの意識指標のすべてが低下した。「暮らし向き」は1.5ポイント低下の37.7と7カ月連続で低下。15年1月(35.9)以来4年2カ月ぶりの低水準だった。乳製品や塩、麺類などの値上げが予定されることが消費者の暮らし向きに響いたという。「海外経済の減速や輸出の減少に伴う先行き不安」(内閣府)も影響した。
「収入の増え方」は0.6ポイント低下の40.6、「雇用環境」は1.1ポイント低下の43.7だった。
消費者態度指数に含まれない「資産価値」の意識指標は、0.7ポイント低下し40.3となった。
1年後の物価見通し(2人以上世帯)について「上昇する」と答えた割合(原数値)は前月比0.4ポイント上昇し86.4%となった。
態度指数は消費者の「暮らし向き」など4項目について今後半年間の見通しを5段階評価で聞き、指数化したもの。全員が「良くなる」と回答すれば100に、「悪くなる」と答えればゼロになる。
調査基準日は3月15日。調査は全国8400世帯が対象で有効回答数は6493世帯、回答率は77.3%だった。
3月の街角景気、現状判断指数は2カ月ぶり悪化 世界経済の先行き懸念で
内閣府が8日発表した3月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は44.8と、前の月から2.7ポイント低下(悪化)した。悪化は2カ月ぶり。指数は2016年7月以来、2年8カ月ぶりの低水準となった。世界経済の先行き懸念や人件費・資材費などの増加による業績圧迫が響いた。
現状指数の大幅な低下を受け、内閣府は基調判断を「緩やかな回復基調が続いている」から「回復に弱さが見られる」に下方修正した。下方修正は2018年12月以来3カ月ぶり。
家計動向関連が2.9ポイント低下し44.2となった。3月から食品の値上げが相次いだことを受け「対象となった商品の伸びは非常に鈍化しており、消費者の動きは節約志向に大きくかじを切っている」(東北のスーパー)という声があった。
企業動向関連は2.0ポイント低下し44.9だった。「原材料費の高騰により収益が悪化している。先行きにも明るい兆しは感じられない」(東海の食料品製造業)などの声が聞かれた。世界経済の成長鈍化の影響も複数の景気ウオッチャーが指摘した。雇用関連も2.3ポイント低下し48.4となった。製造業などでの求人減少が観測されるという。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.6と、前の月から0.3ポイント低下した。先行き判断指数の部門別では企業動向関連が1.0ポイント低下し47.7となった。製造業は2.1ポイント低下と低下幅が大きく「(中国経済の減速の影響で)輸出ウエートの高い取引先を中心に減産による生産調整の動きがあり、今後減収減益が見込まれる」(中国地方の化学工業)といった声が聞かれた。化学、一般機械、電気機械産業などで悪化の意見が多くみられた。雇用関連も低下した。
一方、家計動向関連は0.1ポイントと小幅に上昇した。大型連休や消費増税前の駆け込み需要への期待が聞かれた。
内閣府は基調判断で先行きについて「海外情勢等に対する懸念もある一方、改元や大型連休等への期待がみられる」とまとめた。
2月の経常黒字、25%増 原油価格下落で輸入減
財務省が8日発表した2月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆6768億円の黒字だった。黒字は56カ月連続。黒字額は前年同月に比べて25.3%拡大した。貿易収支の黒字幅が拡大した。海外企業から受け取る配当金や投資収益を示す第1次所得収支の黒字も増えた。
輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は前年同月に比べ2.4倍の4892円の黒字だった。輸出額は自動車や鉄鋼などが落ち込み1.9%の減少となった。原油価格の下落を反映し、輸入額が6.6%減った。
第1次所得収支は2兆145億円の黒字だった。海外子会社から受け取る配当金など直接投資の収益が伸び、黒字額は3.2%拡大した。一方、配当金の受取額は減少。証券投資収益の黒字幅が縮小した。
第2次所得収支は635億円の赤字(前年同期は1835億円の赤字)だった。2018年後半に国内で発生した自然災害にかかる再保険金の受け取りが増え、赤字幅が縮小した。
輸送や旅行などのサービス収支は前年同期に比べ1.4倍の2366億円の黒字だった。訪日外国人の消費を映す旅行収支は2274億円の黒字と、2月として過去最高だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、いくつもの統計の記事を並べるとやたらと長くなってしまいました。続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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どこまで落ちるのか判りませんが、引用した記事にもある通り、消費者態度指数は前月から▲1.0ポイント低下して40.5と、昨年2018年10月から始まった低下が止まらずに6か月連続となり、方向性だけでなくレベルとしても2016年2月以来3年1か月振りの低水準を記録しています。3月の結果をコンポーネントごとに前月差で少し詳しく見ると、「暮らし向き」が▲1.5ポイント低下し37.7、「雇用環境」が▲1.1ポイント低下し43.7、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.0ポイント低下し39.9、「収入の増え方」が▲0.6ポイント低下しています。加えて、「資産価値」に関する意識指標も前月差から▲0.7ポイント低下し40.3となっています。統計作成官庁の内閣府では、先月の2月統計公表時にそれまでの「弱い動きがみられる」から、「弱まっている」に下方修正していて、今月も同じ表現で据え置いています。次に取り上げる景気ウォッチャーもそうなんですが、こういったマインド指標は実態景気に先行すると考えるべきであり、ここまでマインドが悪化すると実体経済にも一定の影響を及ぼすことは明らかです。

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続いて、景気ウォッチャーのグラフは上の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。景気ウォッチャーは「家計関連」、「企業関連」、「雇用関連」の3つの項目から構成されていて、最後の「雇用関連」以外の「家計関連」と「企業関連」についてはさらにもう少し細かい項目があったりするんですが、これらの3項目の中で3月統計の現状判断DIで前月から低下幅が大きい方から並べると、「家計関連」▲2.9ポイント、「雇用関連」▲2.3ポイント、「企業関連」▲2.0ポイントの順となります。「企業関連」では非製造業よりも製造業の落ち方が大きく、海外経済減速の影響による輸出不振がうかがえます。また、「家計関連」の中でもっとも低下幅が大きかったのが「サービス関連」であり、逆に、もっとも低下幅が小さかったのが「小売り関連」です。さらに、先行き判断DIを見ると、「小売り関連」は+1.4を示しており、改元やGW10連休などに小売り売上げを増加させようとする商機を見出そうとする期待が見られるんではないかと私は考えています。

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最後に、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。月次の季節調整済の系列で見て、安定的に1~2兆円の黒字を計上してます。特に、2月の経常収支が大きな黒字になっているのは、引用した記事にもある通り、国際商品市況における石油価格の下落の影響と考えるべきです。少し前の昨年2018年9~11月の3か月は貿易収支が赤字を記録していましたが、石油価格もほぼほぼピークを超えて、2018年12月には貿易黒字に回帰しています。ただ、またしても石油価格の動向が不透明ですので、先行きは何とも予想がつきません。

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2019年4月 7日 (日)

広島に爆勝して西投手が移籍後初勝利!!

  RHE
阪  神001120230 9130
広  島000000000 061

広島に爆勝して西投手が移籍後初勝利でした。今季開幕してここまでヤクルトと広島に1点差勝ちで3勝を上げていますが、1点差よりも点差がついての勝利は初めてのような気がします。大量得点のビッグイニングこそありませんでしたが、小刻みに加点しました。投手は西投手1人しか出ていませんでいたが、見事な完封勝利でした。この1戦を契機に、打線爆発、とはならないもんでしょうか?

この勢いで横浜戦も、
がんばれタイガース!

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先週の読書はいろいろ読んで計7冊!!

何だかんだといって、経済書は少ないながら、今週もそれ相応に読んだ気がします。先週だけはポッカリとあいた無職の時期で、今週に入って明日からは働きに出る予定です。週4日、逆から見て、週休3日制のパートタイムですが、オフィスワークでそれなりのお仕事です。ただ、公務員の定年間際の年功賃金が最高レベル近くに達した時期と比べれば、お給料は大きくダウンします。仕方ないと考えています。

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まず、平沼光『2040年のエネルギー覇権』(日本経済新聞出版社) です。著者は東京財団の研究員であり、外交・安全保障、資源エネルギー分野のプロジェクトを担当しているそうです。本書では、やや大袈裟なタイトルなんですが、2040年までをスコープとして、タイトルにある「覇権」は忘れて、今後のエネルギー転換の方向を探ろうと試みています。まず、そのエネルギー転換の原因なんですが、温暖化防止対策としての二酸化炭素排出規制となっています。私のような1970年台の2度の石油ショックの記憶ある世代では、エネルギー問題とは石油問題であり、供給サイドの産油国側の要因、そして、需要サイドの先進国ないし新興国側の要因、これに加えて、金融面での金利や通貨供給の要因などを思い浮かべますが、この先は気候変動要因が大きく立ちはだかり、従って、石炭削減と再生可能エネルギーの大幅な普及を目指すこととなります。本書では再生エネルギー価格の大幅な低下により、2040年には欧州では再生可能エネルギーのシェアが50%のレベルに達することが目標とされており、天然ガスはともかく、電力用途としての石油は終焉すると見込まれています。これに加えて、エネルギー消費の一定の部分を占める自動車についてもその将来像が示されており、電気自動車は家庭向けの巨大な蓄電装置になる可能性を示唆しています。私は再生可能エネルギーの技術的な面、例えば、本書でも取り上げられている海洋温度差発電についてはサッパリ判りませんし、再生可能エネルギーの価格低下もすっ飛ばしますが、少なくとも、少し前までの我が国における太陽光発電などの再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度における価格が高すぎて、日本では再生可能エネルギーへの転換が進んでおらず、従って、国際規格の策定などで遅れを取り、ビジネスになっていない、というのはその通りと感じています。他方で、かなり進んでいる欧州に対して、本書でも米国は不確定要素が大きいと指摘し、トランプ政権になってからシェールガスやシェールオイルを含めた化石燃料の支配を通じて世界エネルギーのコントロールを覇権を目指すという形で、やや時代錯誤的ながら方針が定まったと受け止めているようです。なお、本書では原子力発電についてはほとんど言及がありません。最後に、私が大学で勉強した古い古いマルクス主義的な技術論からすれば、西洋の覇権を決定づけた産業革命におけるもっとも大きな発明のひとつが蒸気機関であることはいうまでもなく、さらにそれを敷衍すれば、要するに、水を沸かして上記にしてタービンを回し、その動力をそのまま、あるいは、電力に変換する、というのがマルクス主義的な視点でいうところの資本主義的なエネルギー観です。ですから、水を沸騰させるのは石炭・石油といった化石燃料を用いたニュートン力学的な方法であっても、核分裂や核融合を応用した相対性理論的な方法であっても、水を沸騰させてタービンを回す、という点については変わりありません。それに対して、水を沸騰させてタービンを回す部分をすっ飛ばす太陽光発電こそが、未来の社会主義的なエネルギーである、といった議論をしていた記憶があります。まあ、違うんでしょうね。

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次に、ダグラス・マレー『西洋の自死』(東洋経済) です。著者は英国のジャーナリストであり、「スペクテーター」の編集者だそうです。英語の原題は The Strange Death of Europe であり、2017年の出版です。ということで、ある意味、とても注目の論考です。すなわち、欧州を代表する形で、難民受け入れや移民に強烈に反対の論陣を張っているからです。本書の著者は、欧州への難民はサブサハラのアフリカからが多いとされている一方で、そのほとんどをイスラム教徒と同定しているようで、しかも、政治的な難民かどうかは疑わしく、「経済的な魅力が主たる誘引」(p.452)と指摘します。そして、キリスト教的な欧州におけるイスラム教徒のテロ行為をはじめとし、国家財政的にも負担となっている点を強調しています。本書の論理にはやや疑問に感じる部分があるものの、私も基本的には移民受け入れには懐疑的です。純粋経済学的には、昨年2018年3月11日にボージャス教授の『移民の経済学』を取り上げていますので、「我々が欲しかったのは労働者だが、来たのは生身の人間だった。」というフレーズに象徴される通り、要するに、移民と競合し代替的な低賃金労働者などは移民受け入れによって損をする一方で、その低賃金労働力を豊富に使える企業経営者などは得をするわけです。ただ、本書ではイスラム教徒受け入れという宗教的な軋轢をかなり重視しており、私の場合はお隣の人口大国中国からの移民により、宗教的な面は抜きにしても日本的な何かが壊される恐れを直感的に感じています。そして、本書の著者とかなり似通った視点は、あくまで、大量移民の受け入れが国内的な混乱をもたらす可能性があるわけで、国民のコンセンサスに基づいて政府が移民受け入れをキチンとコントロールすれば、「同化」という言葉を使うかどうかは別にしても、それなりに問題の発生を防ぐことができそうな気もします。ただ、繰り返しになりますが、移民受け入れで損をするグループと得をするグループがありますし、一般的には後者のほうが政治的なパワーを有していると考えるべきですから、移民受け入れは格差の拡大につながりかねないデリケートな問題であることも確かです。その意味で、本書でも指摘しているように、国内の政治家などのエリート層やオピニオンリーダーが移民受け入れに賛成し、本書でいうところの大衆は懐疑的な視線を送る、というのは経済的にもその通りなんだろうという気がします。また、私の歴史観からして、世界経済のグローバル化は不可逆的な進み方をしており、従って、貿易の自由化や開放度の向上、資本移動の自由化とともに、労働力の移動たる移民も増加するのであろうと受け止めていますが、本書の著者はp.103からのパートでこの見方に反論しているところ、この部分については私はイマイチ理解がはかどりませんでした。最後に、中野博士が本書冒頭に解説を寄せています。実は、大きな声ではいえませんが、この20ページ余りに目を通しておけば、本書の80%ほどは読んだ気になれるんではないか、と私は考えています。いずれにせよ、耳を傾けるべきひとつの見識だと私は受け止めています。

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次に、スティーヴン・ホーキング『ビッグ・クエスチョン』(NHK出版) です。著者は現時点で最も著名な宇宙物理学者といえ、昨年2018年3月に亡くなっています。21歳の時に発病したALSで余命5年といわれたことを考え合わせると、76歳の天寿を全うしたといえます。英語の原題は Brief Answers to the Big Questions であり、2018年の出版です。ということで、タイトル通りに大きな疑問に著者が答えようと試みています。すなわち、神は存在するのか? 宇宙はどのように始まったのか? 宇宙には人間のほかにも知的生命は存在するのか? 未来を予言することはできるのか? ブラックホールの内部には何があるのか? タイムトラベルは可能なのか? 人間は地球で生きていくべきなのか? 宇宙に植民地を建設するべきなのか? 人工知能は人間より賢くなるのか? より良い未来のために何ができるのか? の10の疑問です。私は不勉強にして、すでにホーキング博士が明らかにしている回答もあるようで、それも知りませんでしたが、私から見て興味深かったのは、7番目と8番目の問いに対して、ホーキング博士は従来から向こう1000年の間に人類は地球を出て宇宙に新たな生活の場を求めるべきと提言しているようです。その理由は何点かあり、かつて恐竜を絶滅させたような小惑星の衝突の可能性、人口の増加により地球のキャパを超過する可能性、さらに、核戦争の危機を上げています。ガンダムを見る限り、シャアの目論見の原点にある小惑星の落下衝突の可能性は否定しようもありませんし、恐竜が絶滅したというのも歴史的な事実なのかもしれませんが、1000年の間に起こるかどうかは別問題であり、そもそも、元エコノミストの私には1000年というタイムスパンは余りに長過ぎて、何とも想像のしようもありませんが、斯界の権威の従来からの変わらぬ発言ですから、そうなのかもしれないと思ってしまいます。それから、人工知能AIについては、私の懸念を共有しているような気がします。コンピュータが人類の知能や知性をエミュレートすることはそう難しいことではないと考えるべきです。その場合、AIが人類に接する態度は、我々人類はイヌ・ネコなどのペットを飼う際を大きくは異ならない可能性が軽く想像されます。ただ、神については、ホーキング博士はすべての事実は神抜きで科学的に説明可能、として神の存在や必要性を否定していますが、私は何か不可解な現象に遭遇した際に神の存在を仮定することにより個々人の心に安らぎをもたらすのであれば、神の存在を否定する必要性は小さいと考えています。いずれにせよ、ホーキング博士は人類の到達したもっとも上質の知性を体現する一人でしょうから、本書の主張が全て正しいと考えないとしても、こういった視点を共有しておくことは教養人として意義あることではないかと私は考えます。

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次に、ヴァイバー・クリガン=リード『サピエンス異変』(飛鳥新社) です。著者は、英国ケント大学の研究者であり、専門は環境人文学だそうです。英語の原題は Primate Change であり、2018年の出版です。本書は歴史を分割した5部構成であり、第1Ⅰ部がBC800万年からBC3万年、第Ⅱ部がBC3万年からAD1700年、第Ⅲ部が産業革命から20世紀初頭の1700年から1910年、第Ⅳ部がそれ以降の現時点まで、第Ⅴ部が将来、ということになっており、出版社の宣伝文句では、15,000年前の農耕革命、250年前に英国で始まった産業革命、そしてスマホ・AI・ロボットなどの現代文明、などの人類が生み出した文明の速度に、人類の進化が追いついていないんではないか、という問題意識から始まっているらしいということで借りて読んだんですが、どうも違います。冒頭で、現代人はミスマッチ病で死ぬ確率が高いというお話から始まり、ミスマッチ病とは、要するに、進化の過程も含めてとはいえ、肉体条件と損周囲の環境とのストレスに起因する病気のことのようです。まあ、周囲の環境条件に進化が間に合わない、ということであれば広く解釈できるのかもしれません。でも、私のような健康に無頓着な人間からすれば、健康オタクのお話が続いていたような気もします。ということで、具体的に判りやすいのはギリシア時代からであり、奴隷が生産活動に励む一方で、本書では貴族とされていますが、私の認識に従えば、市民はスポーツに励んで健康を維持するわけです。しかし、本書第Ⅲ部が対象とする産業革命期には劣悪な労働条件と石炭などに起因する環境汚染により、本格的に一般市民の健康が悪化し始めます。それでも、伝染性疾患への対応から寿命が伸びる一方で、産業化が進んで農作業から向上やオフィスにおける椅子に座った仕事が大きく増加して、これが健康を蝕む、というのが著者の認識です。やや、一般の理解とは異なります。すなわち、私なんぞは、戸外の農作業に比べて、オフィスの事務作業はいうまでもなく、工場の流れ作業であったとしても、屋根のある雨露のしのげる環境での椅子に座った仕事というのは、健康にいいんではないか、そのために寿命が伸びたんではないか、と考えているんですが、著者は認識を異にするようです。第Ⅳ部冒頭の章番号なしのパートが著者の考えをエッセンス的に示している気がするんですが、私にようなシロートとはかなり理解が異なっています。米国で肥満や糖尿病が多いのは、私はかなりの程度に食生活に起因すると考えているんですが、著者は座った生活が原因と考えているようです。理解できません。エピローグで、著者の考える対策がp.299に示されていて、それは政府が運動不足と肥満対策に取り組む、ということのようです。それが出来ないからムダにヘルスケアに財政リソースをつぎ込んでいる現実を著者は認識できていないようで、少し悲しくなりました。最近の読書の中でも特に無意味に近かった本のような気がします。

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次に、更科功『進化論はいかに進化したか』(新潮選書) です。著者は、分子古生物学を専門とする研究者であり、本書ではダーウィン進化論の歩みをひも解き、今でも通用する部分と誤りとを明らかにしようと試みています。まず第1部で、著者はダーウィン進化論のエッセンスは、進化+自然選択+分岐進化、の3本柱だと主張し、歴史的に見て、特に2番めの自然選択が人気なかったと指摘しています。まあ、今西進化論が共存を重視するのに対して、ダーウィン進化論は競争重視と解釈する向きもあるようですから、ひょっとしたらそうなのかもしれません。その上で、私のような元エコノミストにはかなり自明のことなんですが、ダーウィン的な進化とは進歩とか改良といった価値判断を含んでいるわけではないとの議論を展開します。当然です。私の理解では、環境の変化に対してショットガン的に何らかの突然変異的な形質の変化が生じ、その中で環境にもっとも適した自然選択が生き残る、ということになります。ただ、著者は生存バイアスについては少し配慮が足りないような気もします。すなわち、環境に適して生存が継続した生物については、生きていても化石になっても、かなり多くの観察記録が残るとしても、適していなかった変化を遂げた個体の観察例は多くない可能性が高いのは忘れるべきではありません。第2部では、生物の老化、ないしは死ぬことについて考察を進め、老化して衰えるというよりは、子孫の残すことができる年齢でピークを迎える、と考えるほうが正しい、という趣旨のようです。それはその通りということで、還暦を超えて定年退職した私も少し考えさせられるところがありました。鳥と恐竜についても、やや生存バイアスについて考えが不足しているような気がしました。鳥は生存している一方で、恐竜はジュラシックパークで復活させなければ死滅してしまったわけですから、恐竜から鳥への進化、と一般的に考えられるのは一定の理由があります。もちろん、著者の指摘するように、鳥と恐竜は同時に共存していたというのが正しいんでしょうが、そこは生存バイアスを考慮すべきです。最後の直立二足歩行で自由になった手の使い方については、私も大いに同意します。ただ、単婚と結びつけるのはやや不自然な気もしました。進化生物学は物理学などとともに、科学としての経済学との類似性が指摘される学問分野であり、なかなか興味深い読書でした。

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最後に、アミの会(仮)編『怪を編む』(光文社文庫) と『毒殺協奏曲』(PHP文芸文庫) です。実は、アミの会(仮)編集の本としては、文庫本はすべて読んでいると思います。なお、順番からすれば、上の表紙画像の後の方の『毒殺協奏曲』はアミの会の2冊めに当たるんですが、文庫本になって最近の出版ですので読んでみた次第です。ある意味で当然でしょうが、登場人物に薬剤師が多かった気がします。『怪を編む』の方はほぼほぼ1年前の出版なんですが、ショートショートのホラーっぽい短編集で、霊的ながら現実的でない怖さとものすごく現実に即した怖さのどちらも楽しめます。2冊めの『毒殺協奏曲』は、女性作家の集まりではなかったかと記憶しているアミの会の編集本に2冊めにしていきなり男性作者が入っています。『毒殺協奏曲』はタイトル通りに毒殺の作品を集めており、本格ミステリとはいい難い作品ばかりですが、それなりに楽しめます。『怪を編む』は5部構成で、AREA ♥、AREA ♣、AREA ♦、AREA ♠、AREA ★となっています。私には後ろの方のAREA ♠とAREA ★の作品が印象的でした。

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2019年4月 6日 (土)

やっぱり広島にもボロ負け!!

  RHE
阪  神000020010 372
広  島01213300x 10113

広島にもボロ負けでした。得点通りの実力差があるとはいえ、相変わらず、投手はホームラン攻勢に沈み、打者は左投手を打ちあぐねる、という負けパターンばかりを見せつけられ、このまま最下位独走なんてことにならないように願いたいものです。ここまでボールに手を出していては打てるハズもない気がします。キャンプでは何をやっていたんですかね?

明日は西投手の移籍後初勝利を願って、
がんばれタイガース!

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米国雇用統計は気候条件の影響を脱して伸びを回復!

日本時間の昨夜、米国労働省から3月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計からわずかに+196千人増と、降雪などで大きく伸びが鈍化した2月統計から一定の回復を示し、失業率も前月と同じ3.8%と低い水準を示しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を13パラ引用すると以下の通りです。

Economy added solid 196,000 jobs in March, unemployment stays at 3.8%
Hiring rebounded strongly in March as employers added 196,000 jobs, easing fears that payroll growth is slowing sharply amid a cooling economy.
The unemployment rate was unchanged at 3.8%, the Labor Department said Friday.
Economists surveyed by Bloomberg had estimated 175,000 jobs were added last month.
Job gains for January and February were revised up by a modest 14,000.
After severe, weather-related swings in employment early this year, economists largely anticipated a return to normalcy in March. If anything, Goldman Sachs reckoned below- average snowfall would bolster job gains by about 20,000.
Payroll growth was feeble in February, with just 33,000 additions, but that was largely blamed on weather as construction and leisure and hospitality had especially poor performances. Unusually mild temperatures pulled forward hiring to January, inflating that month's employment gains. An offsetting drop the following month was compounded by snowstorms.
Yet, the February showing was so paltry it raised concerns that hiring was tapering off more than anticipated as the benefits of federal tax cuts and spending increases fade and the low unemployment rate makes it harder for employers to find workers. The global economy, particularly Europe and China, also has been sputtering, hurting manufacturers.
Economists eagerly awaited the March jobs report to help determine whether the February totals reflected a blip or the start of a steeper downshift in hiring and the economy.
Employers added a robust average of 223,000 jobs a month in 2018, but analysts expect employment growth to throttle back this year amid the slowing economy and worker shortages. Many predict average monthly gains of about 165,000. In the first quarter, the average was 180,000.
"The gradual slowdown in trend employment growth is another sign that the economy is weakening," economist Paul Ashworth of Capital Economics wrote in a note to clients.
Average hourly earnings rose 4 cents to $27.70, lowering the annual gain from a 10-year high of 3.4% to 3.2%.
Wage growth has picked up as employers compete for a dwindling supply of available workers. The faster pay increases haven't yet prompted most companies to pass their rising labor costs to consumers through higher prices, keeping inflation subdued.
But further earnings gains eventually could lead to stronger inflation, posing a dilemma for a Federal Reserve that has vowed to remain patient and forecast no interest rate hikes this year. March's annual pullback helps keep the Fed in its market friendly wait-and-see mode.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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繰り返しになりますが、2月の雇用は降雪や寒波などの気候条件の影響で、+33千人増と大きく伸びが鈍化しましたが、3月統計では+196千人増と回復しています。1~3月の3か月平均でも+180千人増と底堅い動きと私は評価しています。失業率も前月に続いて3.8%ですから、歴史的に見ても低い水準といえます。ただ、雇用増をけん引したのはヘルスケア+61.2千人増やレジャー+33千人増などであり、個人消費のバロメータとなる小売業は2月の▲20.2千人減に続いて、3月も▲11.7千人減と大きなマイナスを記録しています。小売業については、今年2019年のイースターが4月19日のグッドフライデーから始まりますので、4月統計を見たい気もします。さらに、今年に入って1~2月はプラスを記録していた製造業が3月は▲6千人減とマイナスに転じています。▲6.3千人減の自動車産業が製造業の減少の主因となっています。海外経済の低迷が主因なんでしょうが、これは米国から仕掛けた貿易摩擦ですから、覚悟の上なのかもしれません。金融政策動向について見ると、景気の先行き不安を受けて市場の一部には年内に利下げに転じるとの見方まで出始めているようですが、引用した記事の最後にもあるように、"market friendly wait-and-see mode" が続きそうな気がします。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高め、3月は前年同月比で+3.2%の上昇と、昨年2018年8月から+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているんですが、これはまだまだ物価安定の範囲内という見方が多いようです。

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2019年4月 5日 (金)

CI一致指数が4か月振りの上昇を示した景気動向指数の先行きやいかに?

本日、内閣府から2月の景気動向指数が公表されています。先月公表の1月統計でCI一致指数が大きく下降して、基調判断が「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高い」とされる「下方への局面変化」に下方修正されて注目が集まっていたところ、CI先行指数は前月差+0.9ポイント上昇して97.4を、CI一致指数も+0.7ポイント上昇して98.8を、それぞれ記録し、基調判断は「下方への局面変化」で据え置かれています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

2月の景気一致指数、4カ月ぶり上昇 判断「下方への局面変化」据え置き
内閣府が5日発表した2月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値は、景気の現状を示す一致指数が前月比0.7ポイント上昇の98.8だった。上昇は4カ月ぶり。1月に低調だった自動車生産の反動増などが寄与した。内閣府は一致指数の動きから機械的に求める景気の基調判断について「下方への局面変化を示している」と、1月から据え置いた。
一致指数を構成する9系列中、速報段階で算出対象となる7系列のうち3系列が指数のプラスに影響した。自動車や二輪車など耐久消費財出荷指数や、国外向けの半導体など投資財出荷指数(除輸送機械)が持ち直した。
数カ月後の景気を示す先行指数は前月比0.9ポイント上昇の97.4と、6カ月ぶりに上昇した。景気の現状に数カ月遅れて動く遅行指数は同0.5ポイント低下の104.3だった。
基調判断の基準では「原則として3カ月以上連続して、3カ月後方移動平均が下降」し、「当月の前月差の符号がマイナス」となった場合、景気後退の可能性が高いことを示す「悪化」となる。2月時点で、3カ月後方移動平均は4カ月連続のマイナスだった。今後、3カ月後方移動平均のマイナスが続き、さらに一致指数も前月差でマイナスとなれば、基調判断が2013年1月以来の「悪化」に引き下げられる可能性がある。
CIは指数を構成する経済指標の動きを統合して算出する。月ごとの景気動向の大きさやテンポを表し、景気の現状を暫定的に示す。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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ということで、引用した記事にもある通り、2月のCI一致指数に基づく景気の基調判断は先月1月に続いて「下方への局面変化」で据え置かれています。ただ、鉱工業生産指数などの3月統計に基づく3月のCI一致指数の前月差の符号がマイナスで、かつ、3か月以上連続して3か月後方移動平均が下降を示せば、基調判断は「悪化」に下方修正されます。これも引用した記事の通りです、そうなれば、本格的に景気局面に関する議論が盛り上がる、というか、何と申しましょうかで、いろんなコメントが飛び出しそうな気がします。景気とのシンクロの度合いが極めて強い鉱工業生産指数(IIP)については、製造工業生産予測調査で3~4月がともに前月比プラスと予想されており、さすがに、このまま景気後退に一直線に突入するとは私も考えていませんし、景気判断では景気が下降する期間も加味されますので、余りに短期間の景気下降では景気後退と認定されない可能性もあります。さらに、景気動向指数の基調判断が「悪化」に転じれば、政府として景気が回復や拡大の認識を示したことはない、との報道もありました。ところが、さらにさらに、で、今年2019年は10月から消費税率が10%に引き上げられ、何とも予測しがたいところながら、直前の駆け込み需要とその後の反動減は均等化出来ない可能性が強いと私は予想しています。極めて短期的に駆け込み需要で景気悪化のプロセスが停止する可能性もあるわけです。元々が現在の景気低迷は国内需要ではなくて米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速から生じていますし、消費税率の引き上げという政策要因もあって、景気は複雑なパスを描くと思いますが、2019年年央くらいまでに一直線に景気後退局面に入る可能性は低い一方で、2018年10月の消費税率引き上げ以降に景気が後退する可能性は決して無視できない、と考えるべきです。

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2019年4月 4日 (木)

連夜のボロ負けで阪神は早くも最下位コースに転落か!!

  RHE
阪  神000010000 161
読  売30032101x 10151

なすすべなくジャイアンツに3タテを食いました。実力通りといえば、それだけなのかもしれませんが、3日間ともまったく勝てそうな気配すらありませんでした。次はマツダでの広島戦ですし、まさか、このまま最下位独走なんてことにならないように願いたいものです。

明日は連敗脱出を願って、
がんばれタイガース!

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IMF「経済見通し」分析編を軽く読む!

日本時間の昨夜、国際通貨基金(IMF)から今月のIMF世銀総会に向けて準備が進んでいる「世界経済見通し」IMF World Economic Outlook の分析編が公表されています。第1章が見通し編で、第2章から第4章が分析編となっており、分析編の章別タイトルは以下の通りです。

  • Chapter 2: The Rise of Corporate Market Power and Its Macroeconomic Effects
  • Chapter 3: The Price of Capital Goods: A Driver of Investment Under Threat?
  • Chapter 3: The Price of Capital Goods: A Driver of Investment Under Threat?

いくつかの IMF Blog のサイトからグラフを引用しつつ、簡単にながめておきたいと思います。

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第2章は、市場における企業の影響力に関してマークアップの大きさなどにつき分析しており、上の画像は IMF Blog のサイトから Investment Impact のグラフを引用しています。本章では、企業の市場における影響力は拡大しているのか、もしそうだとすれば、マクロ経済へのインプリケーションは何か、を分析しています。まず、企業の市場への影響力は着実に拡大しており、マークアップ率はコストと対比して2000年から8%ほど上昇しており、そして、この影響力の拡大は先進国では幅広い産業分野で観察されると結論しています。その上で、現時点ではまだこの企業の影響力の拡大は穏当な水準でとどまっているが、今後、さらに企業の影響力が拡大すれば、投資にマイナスの効果を及ぼし、イノベーションを抑制し、労働分配率のさらなる低下をもたらすとともに、金融政策によるマクロ経済安定化政策の運営を難しくしかねない、と懸念を示しています。

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第3章は、消費財と比較した資本財価格の動向から投資の決定要因などにつき分析しており、上の画像は IMF Blog のサイトから Investment Impact のグラフを引用しています。本章では、消費財価格と比較して機械装置の資本財価格が最近10年で劇的な低下を示し、そして、その資本財価格の相対的な低下は貿易統合とともに、金融危機以降の世界経済の減速によってもたらされたと結論し、この相対価格の有利性と投資促進政策が相まって現在の投資の増加をもたらしたと指摘しています。

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第4章は、二国間貿易収支の決定要因、特に関税率の影響力などにつき分析しており、上の画像は IMF Blog のサイトから Economic Forces のグラフを引用しています。本章では、二国間貿易収支の決定要因について分析を進めており、マクロ経済要因、産業構造の変化と国際分業の伸展、そして、二国間関税率二分割して定量的な把握を試みています。そして、マクロ経済要因や産業構造要因などとともに、二国間における関税率や貿易コストが二国間貿易収支に一定の影響を及ぼしていることを明らかにしています。

これら分析編のいずれの章においても、現下の米中間の貿易摩擦に起因する世界経済の減速を強く意識した分析が示されています。第1章の見通し編では、成長率などがやや下方修正された世界経済の姿が明らかにされるものと私は考えています。

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2019年4月 3日 (水)

今日も序盤に失点しジャイアンツに連夜のボロ負け!!

  RHE
阪  神000000030 391
読  売00040020x 681

またまた先発投手が序盤に失点し、ジャイアンツに連夜のボロ負けでした。実力通りといえば、それだけなのかもしれませんが、まったく勝てそうな気配すらありませんでした。私は途中で入浴してしまいました。昨日今日とどうしようもないので、仕方なく明日に期待します。

明日は若い先発投手の対決を制すべく、
がんばれタイガース!

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第一生命経済研リポート「改元がもたらす日本経済への影響」やいかに?

新元号「令和」が官房長官から公表された一昨日4月1日に、第一生命経済研から「改元がもたらす日本経済への影響」と題するリポートが明らかにされています。ダイヤモンド・オンラインの4月1日付けの記事「祝賀ムードでも株価がなぜ下がる?『改元』と日本経済の意外な法則」も同じエコノミストによる寄稿です。なお、4~5月のゴールデンウィーク10連休は供給面からGDPにマイナスの影響があるとするニッセイ基礎研のリポート「GW10連休は景気にプラスか? マイナスか?」はすでに1月14日付けのエントリーで取り上げていますが、第一生命経済研のリポートは、何と、「お祝いムードが一気に景気後退モードへ様変わりする可能性」との副題がついており、図表とともに簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、おさらいですが、新天皇のご即位や新元号への改元などの経済効果としては、需要面からはプラスになることが想像されるものの、QW10連休などのお休みが増えることについては供給面からマイナスのインパクトも想像されます。上のグラフは 日本人の旅行消費額 を第一生命経済研のリポートから引用していますが、旅行需要については、GW10連休や即位礼正殿の儀が行われる10月22日が休日となり、こういった今年限りの祝日があるほか、大型スポーツイベントの「ラグビーワールドカップ2019日本大会」も控えており、JTB総研から旅行総消費額が前年比+2.8%増の15.3兆円と予想されていて、前年からの増加額が+4,156億円程度であることからすれば、約0.1%のGDP押し上げ効果に相当し、総旅行延べ人数が3.1億人であることからすれば、一回当たり約4.9万円程度の平均消費額となる、とリポートでは指摘しています。

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次に、上のグラフは 消費者態度指数 を第一生命経済研のリポートから引用していますが、昭和天皇の崩御による平成の代替わりでは国民の間に自粛ムードが漂ったのに対して、今回のご即位に際しては、退位日を含めて10連休となればお祝いムードが盛り上がるといったプラスの側面もある一方で、製造業では工場の稼働日数が減ることで生産量が抑制される、とリポートでは指摘しています。

これらの他に、私のような平凡な元エコノミストには思いつきもしない点を2点だけ取り上げると、第1に、GW10連休前にネット通販の駆け込み需要が発生する可能性があり、配送面でのトラブルが警戒され、第2に、10連休でお金を使いすぎた消費者が一気に節約モードにシフトする可能性も指摘されています。そうかもしれません。

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2019年4月 2日 (火)

新元号「令和」を冠した企業は存在せず!?

昨日明らかにされた新元号「令和」を冠した企業が存在するのか、どうか、早速に帝国データバンクと東京商工リサーチが調べ上げていて、どちらもデータベース内には「令和」を冠した企業は存在しない、としています。引用元は以下の通りです。

もちろん、両社とも新元号「令和」を社名・屋号へ採用する動きが広がると予想しています。まあ、そうなんでしょう。なお、下のグラフは東京商工リサーチのサイトから、社名に元号が入った企業数について、「明治」以降の社数をプロットしたものを引用しています。やっぱり、長かっただけあって、「昭和」を冠した企業数が最多となっているようです。

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2019年4月 1日 (月)

大きく景況感が低下した日銀短観をどう見るか?

本日、日銀から3月調査の短観が公表されています。ヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIは12月調査から大きく低下して+12を示した一方で、本年度2019年度の設備投資計画は全規模全産業で前年度比▲2.8%の減少からスタートしてます。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

大企業・製造業の景況感 大幅悪化 日銀短観
日銀が1日発表した3月の全国企業短期経済観測調査(短観)は、企業の景況感を示す業況判断指数(DI)が大企業・製造業でプラス12だった。前回2018年12月調査のプラス19から7ポイント悪化した。悪化は2四半期ぶりとなる。7ポイントの悪化は12年12月(9ポイントの悪化)以来、6年3カ月ぶりの大幅な悪化となる。米中の貿易摩擦や海外経済の減速が景況感の悪化につながった。非鉄金属やはん用機械などの悪化が目立った。石油・石炭製品や電気機械も悪化した。
3月の大企業・製造業DIは17年3月(プラス12)以来、2年ぶりの低い水準となる。業況判断DIは景況感が「良い」と答えた企業の割合から「悪い」と答えた企業の割合を引いた値。3月の大企業・製造業DIは、QUICKがまとめた市場予想の中央値であるプラス14を下回った。回答期間は2月25日~3月29日で、回収基準日は3月11日だった。
3カ月先の業況判断DIは大企業・製造業がプラス8と悪化する見通し。市場予想の中央値(プラス12)を下回った。海外経済の不透明感などを背景に、先行きも慎重姿勢が強い。
19年度の事業計画の前提となる想定為替レートは大企業・製造業で1ドル=108円87銭と、実勢レートより円高・ドル安だった。
大企業・非製造業の現状の業況判断DIはプラス21と前回を3ポイント下回った。業況感の悪化は2四半期ぶり。人手不足による人件費の高騰などコスト上昇圧力が逆風となった。卸売などの悪化が目立った。3カ月先のDIは1ポイント悪化のプラス20だった。
大企業・全産業の雇用人員判断DIはマイナス23となり、前回と同じだった。DIは人員が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いたもので、マイナスは人員不足を感じる企業の割合の方が高いことを表す。
19年度の設備投資計画は大企業・全産業が前年度比1.2%増と、市場予想の中央値(0.7%減)を上回った。人手不足を背景にした省力化投資の需要が追い風となったようだ。

やや長いんですが、いつもながら、適確にいろんなことを取りまとめた記事だという気がします。続いて、規模別・産業別の業況判断DIの推移は以下のグラフの通りです。上のパネルが製造業、下が非製造業で、それぞれ大企業・中堅企業・中小企業をプロットしています。色分けは凡例の通りです。なお、影をつけた部分は景気後退期です。

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引用した記事にもある通り、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスはヘッドラインとなる大企業製造業の業況判断DIで見て+14でしたから、ややこれを下回りました。加えて、先行きは+12の予想に対して、実績は+8でしたから、だんだんと乖離幅が大きくなる不安はあります。DIですので方向感覚を見るべき指標であって、水準はそれほど大きな重要性はないながら、低下テンポはそれなりに重要です。水準という意味では、企業規模や製造業・非製造業別で見て、業況判断DIがマイナスに突っ込むのは先行きの中小企業製造業だけであり、足元ではまだプラスをキープしているのも事実です。もちろん、先行きでもっと悪化する可能性もありますし、先行指標である企業マインドが悪化すれば、実体経済においてもラグを伴って景気が下降するのは目に見えています。景況感の悪化の大きな要因は、米中間の貿易摩擦の激化などを受けた世界経済の減速の影響に加えて、石油価格の再上昇も影響しているように私は感じています。少なくとも先行きの石油価格動向は不明ですが、やや懸念の残ることは間違いありません。ですから、中国経済との関係も含めて、紙・パルプ、化学、石油・石炭製品、非鉄金属といった素材産業をはじめとする製造業が先行して景況感の低下を見ているわけで、他方、非製造業は底堅い動きを示しています。すなわち、全規模の業況判断DIで見て、製造業が12月調査+16、3月調査の足元+7、先行き+2と、かなり急速な低下を示しているのにたいして、非製造業は12月調査+15から3月調査の足元も+15、そして先行き+9と、低下のテンポはかなり緩やかです。でも、経験的に製造業が先行指標と考えられますので、非製造業の底支えがどこまで続くのかも不安であることは確かです。

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続いて、いつもお示ししている設備と雇用のそれぞれの過剰・不足の判断DIのグラフは上の通りです。設備については、後で取り上げる設備投資計画とも併せて見て、設備の過剰感はほぼほぼ払拭されたと考えるべきですし、雇用人員についても人手不足感が広がっています。ただ、このところ、設備投資と雇用に関しては少し異なった動きを見せているのも事実です。上のグラフを見ても判るように、設備についてはやや不足感が薄らいでいるように見え、逆に、雇用についてはさらに不足感が広がっています。極めて大雑把な印象論ながら、設備は製造業だけを対象にした調査であり、世界経済の減速の影響が強く、設備不足感がやや和らいでいる一方で、雇用については非製造業を中心に不足感がひいろがっている、というように、同じ生産要素ながら設備と雇用とで業種間の跛行性が存在するような気がします。

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最後に、設備投資計画のグラフは上の通りです。今年度2019年度の全規模全産業の設備投資計画は▲2.8%減という水準で始まっています。これを、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスで示された大企業全産業の▲0.7%減とベースを合わせると、短観の調査結果では+1.2%増ですから、設備不足感はやや和らいだとはいえ、設備投資意欲はそれほど低下していないと考えられます。言い古された短観の統計としてのクセですが、3月調査の時点では設備投資計画が固まっておらず、どうしても低めに出るのは例年の通りと解釈すべきであろうと私は受け止めています。

本日正午前の記者会見で官房長官から新元号は「令和」と公表されています。いきなり、景気後退で新しい時代が始まるのは避けたいのは誰しも同じだと思います。

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