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2019年5月31日 (金)

好投の西投手に援護なく広島に延長11回サヨナラ負け!!!

 十一 RHE
阪  神00000000100 1101
広  島00001000001x 290

先発西投手に援護なく広島にサヨナラ負けでした。一応、セリーグ1位と2位の首位決戦でしたし、しっかりした投手戦ながら、結局、阪神打線が湿りっぱなしでした。最終回の粘りが明日につながってほしい気がします。

明日こそ広島の独走をストップすべく、
がんばれタイガース!

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増産を示す鉱工業生産指数(IIP)と伸びが縮小する商業販売統計と引き続き堅調な雇用統計と下がり続ける消費者態度指数!

本日、経済産業省から鉱工業生産指数(IIP)商業販売統計が、また、総務省統計局の失業率や厚生労働省の有効求人倍率などの雇用統計が、さらに、内閣府から5月の消費者態度指数が表されています。消費者態度指数の三5月の統計ですが、ほかはいずれも4月の統計です。鉱工業生産指数は季節調整済みの系列で前月から+0.6%の増産を示し、また、商業販売統計のヘッドラインとなる小売販売額は季節調整していない原系列の統計で前年同月比+0.5%増の12兆540億円、季節調整済み指数は前月から横ばいを記録しています。失業率は前月から▲0.1%ポイント低下して2.4%と低い水準にあり、有効求人倍率も前月と同じ1.63倍と、タイトな雇用環境がうかがえます。ただ、消費者態度指数は前月から▲1.0ポイント低下して39.4となり、8か月連続で前月を下回っています。まず、長くなるんですが、日経新聞のサイトから関連する記事を引用すると以下の通りです。

鉱工業生産4月0.6%増 電子部品低調、回復鈍く
経済産業省が31日発表した4月の鉱工業生産指数速報(2015年=100、季節調整値)は102.8と、前月に比べて0.6%上昇した。増産は2カ月ぶり。自動車や生産用機械などの生産が増えた。一方で電子部品・デバイスなど輸出関連の品目は低調だった。中国経済の減速を受けて減産が続いた業種も目立ち、1~3月の停滞からの回復は鈍い。
QUICKがまとめた民間予測の中心値(0.2%上昇)は上回った。業種別では15業種中、10業種が上昇した。最も上昇に寄与したのは自動車で、前月比3.2%上昇した。国内向けに普通乗用車などが増産となった。前月に大きく落ち込んだ生産用機械はアジア向けのディスプレー製造装置などが回復し、5.3%上昇した。
経産省は「5月の大型連休を前に、生産を4月に前倒しした可能性がある」と指摘した。一方で出荷指数も1.7%上昇の102.6と2カ月ぶりに前月を上回ったことから「需要が良かったことが生産に寄与した面もある」と分析した。
もっとも、業種別の生産では汎用・業務用機械は7.1%低下、電子部品・デバイスは7.7%低下だった。中国向け輸出がけん引役となってきた品目は引き続き減産基調が続いた。
先行きは強弱入り交じっている。メーカーの先行き予測をまとめた製造工業生産予測調査によると、5月は前月比5.6%の上昇、6月は4.2%の低下となる。経産省はこうした見通しをもとに生産の基調判断を「一進一退」とし、前月の「このところ弱含み」から上方修正した。経産省は「このところの米中貿易摩擦などの影響はまだ織り込まれていない」と指摘した。
4月の在庫指数は103.8で、前月比横ばいだった。
4月の小売販売額、0.5%増 18カ月連続の増加
経済産業省が31日発表した4月の商業動態統計(速報)によると、小売販売額は前年同月比0.5%増の12兆540億円だった。18カ月連続の増加。経産省は小売業の基調判断を4カ月連続で「一進一退の小売業販売」に据え置いた。
業種別で見ると、皇位継承に伴う10連休の前に調剤医薬品を買う動きが広がり、医薬品・化粧品小売業が5.8%増となった。花見で総菜や弁当などの販売も好調で飲食料品小売業は1.7%増となった。
大型小売店の販売額については、百貨店とスーパーの合計が1.4%減の1兆5351億円だった。既存店ベースでは1.8%減だった。コンビニエンスストアの販売額は2.6%増の9977億円だった。
4月の失業率は2.4% 2カ月ぶり改善
総務省が31日に発表した4月の完全失業率(季節調整値)は前月から0.1ポイント低下し、2.4%だった。改善は2カ月ぶり。厚生労働省が同日発表した4月の有効求人倍率(同)は1.63倍で、昨年11月から横ばいとなっている。求職者が減り、売り手市場が続いているのを背景に、堅調な雇用情勢が続いている。
完全失業者数は前年同月比4万人減り、176万人だった。男女別の失業率は男性が0.3ポイント低下し2.5%、女性が0.1ポイント上昇し2.3%。転職など自己都合で離職する女性が一時的に増えたが、男性の失業者が大幅に減り全体でも減少した。就業者数は前年同月比37万人増の6708万人で、6年4カ月連続で増加した。
有効求人倍率は全国のハローワークで仕事を探す人に対し、企業から何件の求人があるかを示す。正社員の有効求人倍率は1.16倍と横ばいだった。雇用の先行指標となる新規求人倍率は0.06ポイント上昇の2.48倍で、2カ月ぶりに改善した。
新規求人数は前年同月比0.3%減の96万3317人だった。人手不足が続く建設業や医療・福祉業などで求人が増える一方、生活関連サービス・娯楽業や教育・学習支援業、製造業などの求人が減った。
消費者態度指数、8カ月連続で悪化 内閣府
内閣府が31日に発表した5月の消費動向調査で、消費者心理を表す消費者態度指数(2人以上の世帯、季節調整済み)は前月比1.0ポイント低い39.4と8カ月連続で前月を下回った。2015年1月以来となる4年4カ月ぶりの低い水準だった。
調査は全国8400世帯を対象に毎月、今後の暮らし向きなどについて聞いている。消費者態度指数を構成する4つの個別項目はすべて前月の水準を下回った。
個別項目のうち「収入の増え方」は3年3カ月ぶり、「雇用環境」は2年6カ月ぶりの低い水準だった。所得や雇用の悪化を懸念する世帯が徐々に増えている。今後半年間に耐久消費財が今より買い時になるかを問う「耐久消費財の買い時判断」も、4年5カ月ぶりの低い水準だった。
内閣府は調査を踏まえた消費者心理の基調判断を、4カ月連続で「弱まっている」とした

さすがに、4つの統計を並べると、とてつもなく長くなってしまいました。続いて、鉱工業生産と出荷のグラフは以下の通りです。上のパネルは2015年=100となる鉱工業生産指数そのものであり、下は輸送機械を除く資本財出荷と耐久消費財出荷のそれぞれの指数です。いずれも季節調整済みの系列であり、影を付けた期間は景気後退期を示しています。

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まず、鉱工業生産については、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスでは、前月比で+0.2%の増産でしたので、ややこれを上回っています。加えて、製造工業生産予測指数では5月+5.6%の増産の後、6月▲4.2%の減産と見込まれており、この統計の上振れバイアスを考慮しても、5月は+1.5%の増産との補正値の試算が示されています。単月の統計を見る限りでは、4月の増産はゴールデンウィークの大型連休前の前倒し生産の可能性もあるものの、15業種の中の10業種が増産を示して、幅広い分野の増産となったことに加えて、5月補正値でもそこそこのプラスが見込まれたことなどから、統計作成官庁である経済産業省では、基調判断を前月の「このところ弱含み」から「一進一退」に上方修正しています。基調判断は生産についてなんですが、出荷も生産以上の増加を示しており、堅調な需要が垣間見えます。もっとも、別の観点ながら、生産の基調判断は先月の統計公表の際に「足踏み」から「このところ弱含み」に下方修正されたばかりですので、毎月のように頻繁に変更すべきかどうかは疑問です。加えて、上のグラフを見れば明らかな通り、「一進一退」とはいえ、今年2019年1月に▲2.5%の大きな低下を記録した後の2~4月は、減産トレンドはストップしたかもしれませんが、以前よりやや低い生産水準での横ばいないし一進一退という点も忘れるべきではありません。

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続いて、商業販売統計のグラフは上の通りです。上のパネルは季節調整していない小売販売額の前年同月比増減率を、下は季節調整指数をそのままを、それぞれプロットしています。影を付けた期間は鉱工業生産指数(IIP)のグラフと同じく景気後退期です。ということで、小売業販売額の季節調整していない原系列の前年同月比で見て、引用した記事にもある通り、18か月連続のプラスを記録しているんですが、徐々に伸び率は縮小を示しており、今年2019年に入ってから1月+0.6%増、2月+1.0%増、3月0.6%増、そして、直近で利用可能な4月が+0.5%増と、かなりゼロに近づいていたりします。季節調整済の系列では、とうとう4月の伸びはゼロになっています。前年同月比でゼロパーセント台半ばということになれば、消費者物価(CPI)上昇率がほぼほぼ+1%の水準ですから、名目はプラスでも実質消費はマイナスに落ちている可能性が大きい、と考えるべきです。ただ、ゴールデンウィーク10連休を前に、買い置きのためを含むと見られる医薬品・化粧品小売業が前年同月比で+5.8%の増加を示しています。

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続いて、いつもの雇用統計のグラフは上の通りです。いずれも季節調整済みの系列で、上から順に、失業率、有効求人倍率、新規求人数をプロットしています。影を付けた期間は景気後退期を示しています。失業率は2%台半ばを記録し、有効求人倍率も1.63倍と高い水準を続けています。加えて、グラフはありませんが、正社員の有効求人倍率も前月と同じ1.16倍を記録し、一昨年2017年6月に1倍に達してから、このところ2年近くに渡って1倍を超えて推移しています。厚生労働省の雇用統計は大きく信頼性を損ねたとはいえ、少なくとも総務省統計局の失業率も低い水準にあることから、雇用はかなり完全雇用に近づいており、いくら何でも賃金が上昇する局面に入りつつあると私は受け止めています。もっとも、賃金については、1人当たりの賃金の上昇が鈍くても、非正規雇用ではなく正規雇用が増加することなどから、マクロの所得としては増加が期待できる雇用状態であり、加えて、雇用不安の払拭から消費者マインドを下支えしている点は忘れるべきではありません。ただ、賃上げは所得面で個人消費をサポートするだけでなく、デフレ脱却にも影響を及ぼすことから、マクロの所得だけでなくマイクロな個人当たりの賃上げも早期に実現されるよう私は期待しています。

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最後に、消費者態度指数のグラフは上の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。ということで、消費者態度指数のコンポーネントについて、季節調整済の系列の前月差で見ると、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.6ポイント低下、「雇用環境」が▲1.1ポイント低下、「収入の増え方」が▲0.7ポイント低下、「暮らし向き」が▲0.6ポイント低下、と、軒並み悪化を示しています。引用した記事にも見られる通り、「収入の増え方」が3年3か月振り、「雇用環境」も2年6か月振りの低い水準まで低下を示しており、人手不足から完全雇用に近い労働市場が消費者マインドを下支えしてきたんですが、雇用や収入に関するマインドが大きく悪化を示しており、消費者マインドの基礎となる部分が悪化しているようです。米国のトランプ大統領が次々に打ち出す関税率引き上げによる貿易制限的通商政策が、企業活動に先立って消費者マインドを悪化させているのではないか、とすら思えてしまいます。基本的に、10月の消費税率引き上げ直前の駆け込み需要の時期まで景気後退局面入りはない、と、私は考えてきたんですが、景気動向指数が示すように、すでに景気転換点を過ぎている、というご託宣もひょっとしたらあり得るのか、という気すらしています。

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2019年5月30日 (木)

先発高橋投手の好投と4番大山選手の打棒でジャイアンツに連勝!!!

  RHE
読  売020000000 250
阪  神30001010x 570

初回先制スリーランなどの4番大山選手の打棒と先発高橋投手の好投でジャイアンツに連勝でした。ほぼほぼ完璧な試合運びの完勝でした。昨夜のような延長サヨナラ勝ちも勢いがついていいんですが、やっぱり、今夜のような先行逃げ切りの勝利が阪神らしい気がします。

明日は広島の独走をストップすべく、
がんばれタイガース!

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リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パート及び派遣スタッフの賃金動向やいかに?

明日の雇用統計の公表を前に、ごく簡単に、リクルートジョブズによる4月のアルバイト・パートと派遣スタッフの募集時平均時給の調査結果を簡単に見ておきたいと思います。


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ということで、上のグラフを見れば明らかなんですが、アルバイト・パートの平均時給の上昇率は引き続き+2%前後の伸びで堅調に推移していて、三大都市圏の4月度平均時給は前年同月より+2.5%、26円増加の1,047円を記録しています。職種別では「事務系」(前年同月比増減額+41円、増減率+3.9%)、「販売・サービス系」(+31円、+3.0%)、「製造・物流・清掃系」(+27円、+2.6%)、「フード系」(+24円、+2.4%)など全職種で前年同月比プラスとなっており、地域別でも、首都圏、東海、関西のすべてのエリアで前年同月比プラスを記録しています。一方で、三大都市圏全体の派遣スタッフの平均時給は、昨年2018年11月統計から前年同月比プラスに転じて、今年2019年2月統計まで4か月の間は前年同月比プラスだったんですが、3~4月はマイナスを示しています。3月▲2.5%減、4月▲1.7%減です。4月統計の職種別では、「オフィスワーク系」(前年同月比増減額+27円、増減率+1.8%)、「IT・技術系」(同+34円、+1.7%)、「医療介護・教育系」(同+14円、+1.0%)、「クリエイティブ系」(同+2円、+0.1%)の4職種がプラスなんですが、「営業・販売・サービス系」(▲36円減、▲2.5%減)が伸びを押し下げています。いずれにせよ、全体としてはパート・アルバイトや派遣スタッフも人手不足の影響がまだ強いと私は受け止めているものの、景気循環の後半に差しかかって、そろそろ非正規の雇用には注視が必要、と考えるエコノミストも決して少なくなさそうな気がします。

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2019年5月29日 (水)

代打高山選手のサヨナラ満塁ホームランでジャイアンツに逆転勝ち!!!

 十一十二 RHE
読  売101100010000 4110
阪  神000020020004x 8161

延長12回代打高山選手のサヨナラ満塁ホームランでジャイアンツに逆転勝ちでした。実は、先発青柳投手からつないだ島本投手が6~7回の2イニングをピシャリと抑えた後、8回に守屋投手が丸選手にホームランを浴びて敗色濃厚と感じて、私は入浴してしまいましたが、お風呂から上がると同点で延長に入っており、11回ウラのノーアウト満塁の大チャンスでした。ですから、マルテ選手の同点ツーランは見ていません。11回の満塁のチャンスは、いつもの決定打不足で12回に入り、またまた満塁のチャンスで高山選手のサヨナラ満塁ホームランでした。ハッキリいって、びっくりしました。私はびっくりしただけで、矢野監督ほどには興奮しなかったような気がします。いつもの岡田さんの解説がとてもおもしろかったです。

明日も、
がんばれタイガース!

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インテージ「消費税増税によるキャッシュレス決済の動向調査」の結果やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、5月23日付けで、インテージから消費増税によるキャッシュレス決済の動向に関する調査結果が明らかにされています。インテージによる消費増税に関する調査第2段との位置づけのようで、このブログでは取り上げませんでしたが、【図解】軽減税率とか、2014年の消費増税時の振り返り軽減材率による消費への影響などが調査されていたようです。今年10月から予定されている消費税率の引き上げに際しては、9か月間に限り中小・小規模事業者などに対してキャッシュレスでの支払いを行うと、最大5%のポイント還元を受けられることになるようで、キャッシュレス決済が増えるんではないかと考えられています。ということで、インテージの調査結果から、いくつかグラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、インテージのサイトから、キャッシュレス決済非利用者の利用動向のグラフを引用すると上の通りです。スーパーやコンビニなどの4つの業態別の調査結果ですが、いずれもほぼ¼くらいとの結果が得られています。ポイント還元を受けられるのであれば、もっと多くの人が利用動向を示してもいいような気がしますので、やや合理性に欠けるんではないか、と思わないでもありませんが、何らかの理由があるんでしょう。実は、数年前まで我が家が暮らしていた青山の住宅からクイーンズ伊勢丹が何とか徒歩範囲で近くにあったところ、数年前の段階ですでにキャッシュレス決済が大いに普及していて、多くの場合は、EDYではなかったかと思うんですが、例の独特の決済音がレジ周辺で響き渡っていたような記憶があります。現時点のお話ながら、私自身もWAONやNANACOといった電子マネーをスーパーやコンビニなどで使うことが多いような気がします。それから、その昔、スタバによく行っていたころにはスタバ独自の電子マネーを使っていたんですが、なぜか、最近はトンと行かなくなりました。

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次に、インテージのサイトから、キャッシュレス決済・ポイント還元制度および軽減税率制度のそれぞれの認知状況のグラフを引用すると上の通りです。軽減税率については「内容を知っている+名前は知っている」の計で90%近い認知度なんですが、ポイント還元についてはまだ70%程度にとどまっています。これも、キャッシュレス決済の利用動向が高まらない要因のひとつな気がします。

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最後に、インテージのサイトから、増税による家計支出への影響について、昨年2018年11月と今年2019年4月の2時点で問うた結果のグラフを引用すると上の通りです。調査時点が近いせいもあって、ほとんど有意な違いは見いだせないんですが、大雑把に、「引き締める」30%と「少し引き締まる」50%という結果になっています。「引き締めない」は20%弱ですから、80%超の家計で何らかの引き締めを行う予定であり、消費がどこまで縮小するか、やや心配でもあります。

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2019年5月28日 (火)

4月の企業向けサービス物価(SPPI)上昇率はやや勢い低下も+1%近い水準を維持!

本日、日銀から4月の企業向けサービス価格指数 (SPPI)が公表されています。前年同月比上昇率で見て+0.9%を示しています。前月の1.1%からやや上昇率が縮小したものの、引き続き+1%近い伸びを続けています。2013年年央から70か月連続の前年同月比プラスを記録しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月企業向けサービス価格、前年比0.9%上昇 伸び率は前月から縮小
日銀が28日発表した4月の企業向けサービス価格指数(2010年平均=100)は105.6となり、前年同月比0.9%上昇した。伸び率は3月確報から0.2ポイント縮まった。前年同月の値上げ改定幅が大きかった反動などを主因に運輸・郵便のプラス幅が縮んだことが伸び率の縮小に影響した。
人手不足を背景とした人件費上昇の圧力は続いており、前年比でのプラスは70カ月連続だった。日銀調査統計局は「前年比1%近傍の伸びが維持されており、数字はしっかりした動きと評価していい」としている。
企業向けサービス価格指数は輸送や通信など企業間で取引するサービスの価格水準を総合的に示す。対象147品目のうち、前年比で価格が上昇したのは77品目、下落は31品目で、上昇から下落を引いた差は46品目となり、差し引きでのプラスは29カ月連続だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、企業向けサービス物価指数(SPPI)上昇率のグラフは以下の通りです。サービス物価(SPPI)上昇率及び変動の大きな国際運輸を除くコアSPPI上昇率とともに、企業物価(PPI)上昇率もプロットしてあります。なお、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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繰り返しになりますが、企業向けサービス価格指数(SPPI)の前年同月比上昇率は昨年2018年6月から直近で利用可能な今年2019年3月統計まで10か月連続で+1%に達していましたが、4月統計では+0.9%を記録しています。2018年5月の+0.9%の前の4月も+1.0%でしたので、昨年度2018年度の12か月間、さらにこの4月まで含めて、ほぼほぼ+1%に達する水準をキープしていたことになります。加えて、6年近い70か月連続でプラスを維持しています。しかし、4月の年度初めの価格改定期にどこまで物価上昇が実現されるかを期待していたんですが、やや物足りない上昇率に終わった気もします。引用した記事にもある通り、昨年4月の価格改定期の上げ幅が大きかった反動という面もあるのかもしれません。もちろん、3月速報で基調判断は、「生産はこのところ弱含み」に引き下げられた鉱工業生産指数(IIP)や、相変わらず「一進一退の小売業販売」の基調判断が続く商業販売統計、さらに、「悪化」の基調判断となった景気動向指数などを考え合わせれば、雇用統計こそ人手不足で堅調な推移を続けているものの、物価については、本日公表のSPPIをはじめとして底堅い動きを続けているとも評価できます。4月統計については、 前年比寄与度前月差で見て、運輸・郵便が▲0.13%、諸サービスが▲0.11%、情報通信が▲0.08%などのマイナス寄与を示しています。SPPIのこの先の動向については、現在の人手不足がどこまで続くか、に影響されるものと考えるべきです。

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2019年5月27日 (月)

オールスター2019のファン投票中間発表やいかに?

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本日、オールスター2019ファン投票中間発表が明らかにされ、下のテーブル画像のように、我が阪神からは、中継ぎ投手部門でジョンソン投手が、捕手部門で梅野捕手が、それぞれトップに立っています。特に、梅野捕手は次点にダブルスコアをつけています。当然でしょう。加えて、外野手部門でも近本外野手が3位に食い込んでいます。同じタイガースの糸井選手や福留選手を上回る得票を得て、セリーグを代表する筒香選手や青木選手を抑えて、外野手部門で当選圏内です。チーム状態も上り調子ですし、今後の阪神タイガースの戦いがとても楽しみです。

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明日のジャイアンツ戦は、
がんばれタイガース!

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2019年5月26日 (日)

ガルシア投手の力投に4ホーマーの乱れ打ちで援護し横浜に完封勝ち!!!

  RHE
阪  神140010100 7102
横  浜000000000 041

打線は序盤から打ちまくり、先発投手が9回完封するという形で、完璧な試合運びで横浜を粉砕しました。開幕から7失点の連続は背番号が悪いとすらいわれたガルシア投手が、ようやく本領発揮の完封劇を演じれば、打線は昨日の最終回の流れを離さず、休養の福留選手抜きでも、4ホーマーの乱れ打ちでした。ホームランでの得点が多くて目立たなかったんですが、1~2番打者の出塁が今後も続いてほしい気がします。

明後日は甲子園にジャイアンツを迎え撃つべく、
がんばれタイガース!

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第32回サラリーマン川柳ベストテンやいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の5月23日に第一生命から第32回サラリーマン川柳コンクールのベストテンが明らかにされています。以下のキャプチャ画像の通りなんですが、しみじみと身に染みて鑑賞しています。

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2019年5月25日 (土)

今週の読書も話題の経済書『貿易戦争の政治経済学』や『WTF経済』から小説まで計6冊!

今週も、質量ともに充実した読書でした。話題の経済書『貿易戦争の政治経済学』や『WTF経済』、あるいは、生命科学などの教養書、さらに、小説では『かがみの孤城』で昨年2018年の本屋大賞を受賞した後の辻村深月の受賞後第1作『傲慢と善良』などです。

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まず、ダニ・ロドリック『貿易戦争の政治経済学』(白水社) です。著者は、トルコはイスタンブール出身で米国ハーバード大学を本拠にしているエコノミストです。かつて、実証はされていませんが、グローバリゼーション、国家主権、民主主義の3つを同時に追求するのは難しく、どれか1つを犠牲にせざるをえない「政治的トリレンマ」の視点を提示し、トリフィンによる国際金融のトリレンマ、すなわち、固定為替相場、資本の自由な国際移動、自律的な金融政策の3つは同時には成り立たない、というのに対比させた論点でした。前著の『グローバリゼーション・パラドクス』や『エコノミクス・ルール』なんかも、ものすごく暗くて婉曲な表現で、正確を極めればこその判りにくさがあったんですが、本書では磨きがかかっている気がします。本書の英語の原題は Straight Talk on Trade であり、2018年の出版です。ということで、アダム・スミスが葬り去った重商主義が米国と中国のG2で復活しつつあるように見える現時点で、自由貿易と重商主義的な輸出振興と関税などによる輸入抑制の重商主義的な方向性を論じています。まず、著者は自由な貿易と攻勢な貿易の峻別を提示します。貿易に限らず、すべての経済活動や経済外活動も、インチキをする自由を認めるほど世間は甘くないわけで、特に、決して好ましいとは受け止められていないグループや得体の知れない外国人が、いかにもインチキのように見える方法により自分や親しい人々のグループに不利益を及ぼしているようであれば、それに一定の歯止めを要求する権利はあるように見えます。それを主張して選挙で票を集めることも可能な気がするわけです。しかし、経済意外の分野では、私はシロートながら、国内重視のナショナリストと国際重視のコスモポリタンないしインターナショナリストは相反するように見えるんですが、本書の著者は、経済分野については国内市場を整備して秩序あるものとし開放的にすることは同時に国際的な貢献にもなる、という意味で、国内重視と国際重視が経済学的には両立しうると主張します。これはマルクス主義でも同じことであり、100年ほど前には世界同時革命論のトロツキーと一国革命論のスターリンの対立があったんですが、国内で革命を成功させることにより世界革命に貢献するという意味で、国内重視と国際重視はマルクス主義では両立します。ですから、従来から、グローバリゼーションを擁護するエリートの間では、自由貿易で不利益となるグループへの補償とグローバル・ガバナンスの強化によって問題を克服しようという考え方が根強いわけですが、著者はこの考え方に対しては「手遅れ」として否定的な見方を示します。なぜかといえば、国民の間の民主的熟議を軽視し、国際機関や政府官僚などのテクノクラートに解決を委ねてしまう貿易テクノクラシーになりかねず、そうなれば、英米などに見られるように結果として、貿易に反対するポピュリズムとデマゴーグの台頭を許したと著者は考えているからです。そこで、著者はケインズを引用して、「資本主義は一国の中でのみうまく機能するものであり、国同士の経済交流は国内の社会的、経済的契約を過度に侵害しないよう規制しなければならない。」と主張し、資本主義には国家による経済運営が必要であることを強調します。私が読み終えた現段階で、著者のグローバリゼーションに対するスタンスはこれに尽きます。すなわち、各国の置かれた政治経済情勢の多様性と政策の自由裁量を求める需要を認識した緩やかなルールこそが現実的なアプローチであり、国内の民主的手続きにより市場をコントロールする大きな権限を国内権力である政府に与えれば、グローバリゼーションの効率性と正統性を高めることができる、というわけです。ただ、その場合、世界経済の動向ですから、どの国がリーダーシップを発揮するのか、が気にかかるところです。トランプ政権下の米国には私は無理そうな気がするんですが、同時に、人権の軽視や政敵の抑圧を続ける中国とロシアには、「グローバルなリーダーシップなど発揮できるはずがない」と著者は厳しい評価を下しています。かなりの範囲でこれらの貿易の政治経済学には私も同意します。以上でホントは終わりなんですが、私の興味の範囲で、本書のテーマである貿易とはやや観点が異なるものの、開発経済学的な視点で、著者は明記はせずに、ルイス的な二重経済モデルを持ち出して、ルイス的な用語を用いれば、限界生産性に対してではなく生存水準の報酬を得られる生存部門から、限界生産性に応じた報酬が得られる資本家部門に労働力が移動することにより高度成長が成し遂げられる、という意味での開発は、そろそろ終了ではないかと結論しています。アフリカでは小売やサービスで雇用が拡大しており、製造業が農業からの労働力を吸収するというルイス的な二重経済の発展的解消による高度成長は中国や東南アジアで終了し、南アジアやアフリカなどではリープフロッグ的な経済発展をする可能性を示唆しています。最後に、私の読書感想も飛びますが、経済モデルをダイナミック、というか、動学的にその時々で違うものにするのは、まあ、判らなくもないんですが、そこまでいうと、もはやモデルでも、科学でも、何でもなくなるような気がして怖いです。

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次に、ティム・オライリー『WTF経済』(オライリー・ジャパン) です。著者は、オライリー・メディアの創業者CEOであり、テクノロジー系の技術書の出版には慧眼を示しています。本書の英語の原題は WTF?: What's the Future and Why It's Up to Us であり、2017年の出版です。"WTF" とは最後の翻訳者の解説によれば、感嘆表現 "What the Fuck!?" の略で、「なんじゃこりゃ?」くらいの意味であり、口語ではかなり普及しているとはいえ、結構お下品な表現のようです。ということで、本書では著者は、著者自身が深くコミットしてきたコンピューターの歴史を振り返るところから始め、もちろん、自慢話しも多く盛り込みながら、新しい技術がもたらす "WTF?" という驚きを、悪い驚きではなくよい驚きにし、そして、インターネットやオープンソースソフトウェアの展開に置おいて、著者が果たした、とご自分で考えている役割やその際に適用した考え方や手法などを、新たに出始めている人工知能=AIや大規模ネットプラットフォームにも適用することで、いい方向に向かうのではないか、という主張をしています。ビジネスの世界で大成功した著者のことですから、すでに引退した官庁エコノミストの私なんぞには及びもつきませんが、オープンソースソフトとインターネットの普及により、ウェブが共通のプラットフォームとして普及し、今度はその上で提供されるサービスが重要となり、すなわち、ウェブ2.0に進化し、加えて、利用者の多くがパソコンからスマホをはじめとするモバイルに移行するにつれて、その性質は強まってきているわけで、さらにさらにで、グーグルやフェイスブックやアマゾンはAPIを公開し、他のプレーヤーがサービスを構築するための新たなプラットフォームを提供しつつ、というか、それを足場に、そこで利用者について収集したビッグデータも排他的にビジネスに活用して収益を上げているわけです。他方で、著者も注目しているようなギグエコノミーでの労働者の働き方が、著者の主張するように未来的で望ましいものかどうかは、私には疑問です。典型例はウーバーの運転手であり、市場における力関係は往々にしてそうなんですが、一応、対等なでウィン・ウィンな取引関係の形をとっていても、おカネを出す方の要求におカネをもらうほうが従うこととなります。フリーランス的な自由な労働形態としてもてはやされ、ブラック企業における非正規雇用よりも好ましそうな響きを持ちつつも、雇用の安定性や労働の実態はどこまで評価できるものかは私には疑問です。本書ではかなり偏った視点を提供しているとしか思えません。そういった弱点、疑問点を含みつつも、近い将来のビジネスの方向性については、それなりに参考になりそうな気もします。

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次に、ギデオン・ラックマン『イースタニゼーション』(日本経済新聞出版社) です。著者は、 Financial Times を中心に活動しているジャーナリストです。英語の原題もそのまま EASTERNIZATION であり、2016年の出版なんですが、あとがきには2018年ころのお話が出てきたりします。というのも、邦訳は2018年11月にアメリカで刊行されたペーパーバック版に基づいているからだそうです。本書は、必ずしも経済のトピックではなく、外交やその延長としての軍事・安全保障などにおける東洋、特に中国とインドの台頭について分析を加えています。タイトルはかなり面妖で、ウェスタニゼーションが東洋の国々の西洋化であったのは明らかで、例えば、イスとテーブルの生活や着物を捨てて洋服を着たり、といったことで、はなはだしくは、我が国の鹿鳴館のような活動もあったりしたわけですが、現時点で、西洋の国が東洋の生活様式を取り入れているようなことは私はあまり聞き及びません。まあ、体重コントロールのために日本食が流行ったり、座禅を組んでマインドフルネスな仏教を感じたり、といったくらいのことはあるかもしれませんが、経済社会の中での東洋化が欧米で進んでいるとはとても思えませんので、あまりいいタイトルではなさそうな気がします。まず、アジアや東洋というと、当然に、日本もそのカテゴリーに入るわけで、特に1980年代後半、プラザ合意以降我が国のバブル経済期には、日本経済に着目する動きもありましたが、本書では我が国は明確に台頭するアジアの代表にはなりえないと否定されています。その最大の眼目は人口や市場規模です。日本は人口では中国やインドと1桁違うわけですし、市場規模としても決して大きくないと見なされているわけです。そのうえで、特に、アジアへのピボットを目論んだ米国の第1期オバマ政権の動向、クリントン国務長官やその側近ブレーンなどの取材に基づく米国や欧州のアジア志向を分析しています。もちろん、その先鞭として天然門事件以降の中国の対外開放路線に基づく経済発展、さらに、今世紀の習近平政権からの大国化の路線を跡付けています。とても興味深かったのは、pp.70-71で展開されている習近平政権の中国の互いに関連する3つの思想性で、被害者意識に根ざしたナショナリズム、米国に肉薄する国力への自信の増大、内政の安定と欧州の潜在的な破壊的役割への憂慮、だそうです。私には4点に見えるんですが、最初の「被害者意識」は我が国にだけ向けられているように見えるのは私だけでしょうか。19世紀の英国とのアヘン戦争なんて、メチャクチャえげつないものだったように思え、更にその結果として香港の割譲まであったんですが、英国に対しては、我が国に対するほどの被害者意識は持っていないように私には見受けられるんですが、いかがなもんでしょうか。むしろ、私の単なる印象論ですが、インドの方が英国に対してよくない感情を持っていそうな気がします。それはそうとして、本書でも何度か出てくるトゥキディデスの罠は避けることができるんでしょうか?

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次に、リチャード・ハリス『生命科学クライシス』(白揚社) です。著者は科学ジャーナリストです。英語の原題は Rigor Mortis であり、直訳すれば「死後硬直」です。2017年の出版です。サブタイトルを見る限り新薬開発にフォーカスしているように見えますが、メインタイトル通りに生命科学全般を対象にしているように私には読めました。ということで、創薬をはじめとする新しい医療のイノベーションが進まない現状について警告を発しようと試みています。いろんな論点があるんですが、本書で取り上げられている順に私なりに解釈すると、まず、新訳や新たな医療技術について、その有効性をテストする際の方法の不適切さが強調されています。統計的な検定が不適切だったり、そもそも統計的な検定を行うためのサンプル数が確保されていなかったり、かなり初歩的な無理解がありそうな気がします。本書では、ショッキングな表現ながら、これまで発表された学術論文で間違っているものが多いと指摘しています。ただ、そこまでいわれると、ホントかね、という気がしないでもありません。薬学の場合、作用機序というものを考えて、薬がどのような順序で効果を発揮するかを考えるわけですが、経済学と同じで、実は、モデルにおける因果関係というものは必ずしも明確ではありません。薬ではなく、医療行為に関してはもっとそうです。どうして、この医療行為が効くのかは判らなかったりするわけです。ですから、統計的な有意性が求められるわけで、著者はその棄却水準のp値が5%でいいのか、という点まで含めて疑問を呈しています。サンプル数を60%増やしてp値を0.5%にすべきではないか、という意見のようです。同様に、有効性のテストの再現性も問題とされています。我が国の理化学研究所のSTAP細胞のスキャンダルについても触れられています(p.209)。続いて、実験動物、多くはマウスということになるんでしょうが、マウスで有効だった薬が人間でも有効であるとは限らない、とも主張しています。最後に、研究者の評価のあり方についても批判的です。これは経済学や他の科学分野でもそうなんでしょうが、生命科学の関係では、『サイエンス』、『ネイチャー』、『セル』といったインパクトファクターが高く権威ある学術誌への査読論文で研究者が評価され、数少ないテニュアの研究者ポストを目指さざるを得ない、という意味で、現在の研究者のインセンティブ構造にも問題があると指摘しています。ごもっともです。そして、ひとつの画期的な考えとして、生命科学の進歩のペースを意図的に落とすことさえ選択肢として提示しています。これも、生命科学だけでなく、他の科学や学問分野にも当てはまる可能性があります。先日、4月13日付けの読書感想文で取り上げた豊田長康『科学立国の危機』とは真逆の主張のように見えますが、本書は本書で間違ってはいないような気がします。なぜなら、科学研究を加速するためには、本書の主張のように逆に研究をペースダウンするか、『科学立国の危機』の主張のように研究リソースを画期的に拡大するか、どちらかなのかもしれません。

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次に、ピーター・ブラネン『第6の大絶滅は起こるのか』(築地書館) です。著者は惑星科学を専門とする科学ジャーナリストであり、本書は初めての著書だそうです。英語の原題は The End of the World であり、2017年の出版です。原題の意味は、要するに、現在までの5回の絶滅に続く第6回目の絶滅が生ずれば、それは世界の、とはいわないまでも、人類が今までに到達した文明の終わりを意味する、ということなんだろうと、読後に感じています。ということで、地球が惑星として成り立ち、生命が誕生してから、いままでに5度の大絶滅が生じてきたと解明されています。それが第2章から第6章までのタイトルとなっており、順に解説されています。出版社のサイトから目次をそのままコピペすれば、オルドビス紀末の大絶滅【4億4500万年前】、デボン紀後期の大絶滅【3億7400万年前、3億5900万年前】、ペルム紀末の大絶滅【2億5200万年前】、三畳紀末の大絶滅【2億100万年前】、白亜紀末の大絶滅【6600万年前】、というわけです。最初のオルドビス紀末の大絶滅は宇宙からの殺人光線であるガンマ線バーストの放射とか、氷河湖の決壊による大洪水などが仮設として提出されています。また、宇宙からの放射線の影響はペルム紀末の大絶滅の原因ともいわれています。これらの中でも、一番最近の白亜紀の大絶滅、恐竜の絶滅が当然ながらもっとも科学的な根拠がハッキリしていそうなんですが、1980年にアルバレス父子のグループから提唱された小惑星衝突仮説で決まり、というわけでもなさそうで、インド亜大陸の火山爆発というデカントラップ説も本書では紹介されています。しかし、本書でもお供興味深いのは、過去の5回に渡る絶滅における仮説の紹介や検証ではなく、現在進行系の第6回目の絶滅が始まっているかどうか、さらに、近い将来の絶滅はどのくらいの確度で生じるか、といった将来見通しの方ではないでしょうか。例えば、恐竜が絶滅した白亜期末の大絶滅のひとつ前の三畳紀末の大絶滅の原因は地球の温暖化に起因します。ほぼほぼサンゴは絶滅したんですが、もちろん、すべてが絶滅したわけではなく、細々と生き残った種が現在まで生きながらえていたりするわけです。そして、更新世末の大絶滅【5万年前―近い将来】は進んでいるのかどうか、第1に気候の温暖化は産業革命以降に急速な勢いで進んでいることは確かですし、第2にホモサピエンスの通った後にハッキリと種の絶滅が生じていることも事実です。ただ、本書の著者は人類が滅ぼしたのは190万種のうちのたったの800種だと主張しています。そして、次の第6回目の大絶滅が何の原因で生じるにせよ、人間の寿命という観点からはかなり遠い先の話であることは確かで、その時の人間社会や文明の状況は何ともいえないながら、実際に生命が失われる絶滅というよりは、電気に依存した現代生活を見ても理解できるように、地球環境の変化は文明の喪失をもたらす可能性が高い、と主張しています。私は専門外もいいところですが、そうかもしれません。というか、違っているという主張をするだけの根拠を持ち合わせません。最後にどうでもいいことながら、私はガンプラを通じてガンダムに詳しい倅どもと違って、それほどガンダムの物語は知らないんですが、シャア・アズナブルは何度か、というか、私の知る範囲では、第2次ネオ・ジオン抗争の際に、小惑星5thルナを連邦軍本部所在地であるチベットのラサに落下させたり、あるいは、地球へのアクシズ落としを企んだりして、巨大ではあるものの、こういった爆発物でない単なる物体を地球に落としたところでどうなるものでもあるまい、とシロートなりに考えていたんですが、第6章で恐竜を絶滅させた白亜紀末の大絶滅の原因とされる小惑星の衝突の衝撃をとても念入りに記述してあって、私はそのとてつもないパワーにびっくりしてしまいました。やっぱり、シャアはえらい?

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最後に、辻村深月『傲慢と善良』(朝日新聞出版) です。タイトルは、いかにも、ジェーン・オースティンの代表作『高慢と偏見』 Pride and Prejudice を思い起こさせるものですが、この作家の自負を表しているのかもしれません。男女間の恋愛ないし結婚をテーマにしている点は同じです。作品の中にの明示的に言及があります。『かがみの孤城』で昨年2018年の本屋大賞を受賞した後の第1作です。2部構成で、さらに、最後にエピローグがついてきます。婚約した男女が、結局、最後は結ばれるというハッピーエンドの恋愛小説です。しかし、結婚式の日取りまで決まっていながら、婚約者の女性が失踪します。ということで、第1部は、婚約者の女性に失踪されてしまった男性の視点から、女性の失踪の謎解きが始まります。結局、男性から見た女性は70点で、その前には100点満点の女性に逃げられて、40歳も近くなって結婚に逃げ込んだ印象です。ただ、女性がストーカーという非現実的ですぐにバレる嘘をついたのに気づかない男性も異常な気がします。第2部は失踪した女性の視点でストーリーが進みます。しかし、最後は大甘で、男性は失踪した女性を許す形になり、女性のそんな男性の包容力を受け入れます。私は決してせっかちな方ではないつもりで、私とカミさんが結婚したのも、この作品の男女と同じくらいの年齢でしたし、世代が違うので婚活という言葉もなく、婚活めいたことはしませんでしたし、見合いとかの出会いで断られた時には、全人格を否定するような断り方が不自然ではなかった時代です。加えて、今以上に結婚が男女の恋愛感情だけでなく、経済も含めた打算で決まっていた時代背景です。私は30歳を過ぎて、海外勤務のお話があり、結婚を考えないでもなかったんですが、時代はバブル経済のまっ盛りで、結局、二重の理由で結婚には至りませんでした。すなわち、バブル経済のころは十分に遊べて、結婚するまで不自由していない、という意味で、この作品の男性とよく似た恵まれた状況にありました。逆の面から見て、京大の経済学部を出て公務員なんてセンスのない職業選択に女性からは見えたわけで、「どうして証券会社に就職しなかったの?」というカンジの見方が圧倒的で、経済的な打算から公務員は結婚相手として決して上位には来なかったわけです。1994年に大使館勤務を終えて帰国すれば、バブル経済崩壊の後で学生の就職は超氷河期で、公務員の株が顕著に上昇していてびっくりした経験があります。そこで、私は結婚したわけです。ですから、上から目線の結婚だったかもしれませんし、この作品の男性のような考えは、女性の行動もいうに及ばず、とうとう私は理解できませんでした。世代が違うのでしょうから、この読書感想文は参考にはならないかもしれません。

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2019年5月24日 (金)

少ないチャンスをモノにして横浜に先勝!!!

  RHE
阪  神000101100 370
横  浜200000000 291

ヤクルト戦から僅差の競った試合が続き、今夜は4番大山選手の勝ち越しタイムリーで横浜に先勝でした。今日は、先発の西投手が初回に筒香選手のツーランを浴びましたが、結局5回2失点で乗り切りました。リリーフ陣も連夜の登板で疲れているんでしょうが、ゼロに抑え切りました。8回をゼロに抑えた藤川投手の派手なガッツポーズが印象的でした。守屋投手の2勝目はめでたい限りなんですが、打線はもう少し早い回に得点して、先発投手に勝ち星を付けられるよう奮起を望みます。

チコちゃんが始球式に出てこないうちに、
がんばれタイガース!

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OECD「経済見通し」Economic Outlook May 2019 やいかに?

3月で公務員を定年退職して、このところ、私の不注意で国際機関のリポートを見逃すことが多くなり、4月3日に公表されたアジア開発銀行(ADB)による「アジア開発見通し」Asian Development Outlook (ADO) 2019 はつい最近まで目につかず、今さら取り上げるのも気が引けていましたが、今週火曜日5月21日に公表された経済協力開発機構(OECD)の「経済見通し」OECD Economic Outlook May 2019 については、国際機関のリポートはこのブログの注目点でもありますので、1週間以内くらいであれば遅ればせながら、取り上げておきたいと思います。ADBにせよ、OECDにせよ、米中貿易摩擦により成長率見通しが引き下げられている点については方向性は一致していると考えて差し支えありません。

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まず、リポートから成長率や失業率などの総括表 Table 1.1. Global growth remains weak を引用すると上の通りです。世界経済の成長率は、先行き2019-20年に米中間の貿易摩擦により減速すると見込まれています。しかし、特に新興国や途上国などでは、それほど大きく減速するわけではありません。もちろん、中国は別です。しかしながら、私の理解するところ、今年2019年から来年2020年にかけて、2019年のレベルから成長率が上向く国と、そうでなく、今年から来年にかけて成長率が下がり続ける国があります。欧州やインド・ブラジルといった新興国などは前者の成長率が持ち直すグループなんですが、貿易摩擦の当事者そのものである米中と我が国については成長率が来年にかけて下がり続けます。もっとも、日本については、貿易摩擦の影響というよりは、今年2019年10月からの消費税率引き上げが今年よりも来年に大きな影響を及ぼしますので、少し別要因かも知れません。また、このテーブルには出ていませんが、韓国も今年から来年にかけて成長率がさらに減速します。もちろん、米中は成長率が2020年にかけて減速を続けるのは、ひとつに、貿易要因に加えて、輸出が設備投資とリンクしていて、投資の減速も招くからです。ただ、雇用については貿易からの影響大きい製造業ではなく、非製造業で生み出されていることから、引き続き持ちこたえている、と評価しています。

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次に、やや雑に3つのグラフを連結したのが上の画像です。上から順に、いずれも、リポートから、Figure 1.7. Global growth is set to remain modest と Figure 1.8. Global trade growth is set to remain subdued と Figure 1.13. The adverse effects from higher US-China tariffs could intensify further を引用して、私の方で結合しています。上2つのパネルを見れば明らかな通り、成長率も貿易の伸びも、ともに、2017年をピークとして2018-19年にかけて緩やかに減速し、2020年には反転して持ち直す、という見通しになっています。一番下のパネルでは、NiGEM global macro-model のシミュレーションにより、米中両国と世界のGDPおよび貿易に対するマイナスの効果を算出しています。関税率の引き上げに加えて、リスク・プレミアムの拡大により影響も決して無視できない、との結果が示されています。
こういった現状判断に加えて、貿易摩擦は目先の短期的なインパクトにとどまらず、長期的な展望にもダメージを及ぼす恐れがあり、各国政府が早急に成長を再活性化する必要を強調しています。政策対応としては、もちろん、発端が貿易摩擦ですので、多国間での貿易交渉を再開する必要性を指摘するとともに、ユーロ圏のように公的債務が比較的少ない国においては、金融政策に依存するのではなく、財政刺激策による構造改革に取り組むべきと主張しています。優先課題としては、インフラ整備、デジタルや交通や環境に配慮したエネルギー対策、人的資本への投資、機会の平等をもたらす政策、などを例示しています。

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この見通しと関連して、昨日5月23日付けで、国際通貨基金(IMF)から IMF Blog にて The Impact of US-China Trade Tensions と題する記事がアップされています。そして、米国と中国が互いにすべての輸入品に制裁関税を課すという形で貿易摩擦が激化すると仮定すれば、短期的には世界経済の成長率が▲0.3%ポイント下振れすると試算しています。すなわち、原文を引用すると、"At the global level, the additional impact of the recently announced and envisaged new US-China tariffs, expected to extend to all trade between those countries, will subtract about 0.3 percent of global GDP in the short term, with half stemming from business and market confidence effects." というわけです。なお、上のグラフは IMF Blog のサイトから、国別の生産者への影響のグラフを引用しています。

最後に、目を国内経済指標に転じると、総務省統計局から4月の消費者物価指数 (CPI) が公表されています。季節調整していない原系列の統計で見て、CPIのうち生鮮食品を除く総合で定義されるコアCPIの前年同月比上昇率は前月から上昇幅をやや拡大して+0.9%を示しています。

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いつもの消費者物価(CPI)上昇率のグラフは上の通りです。折れ線グラフが凡例の色分けに従って生鮮食品を除く全国のコアCPI上昇率と食料とエネルギーを除く全国コアコアCPIと東京都区部のコアCPIそれぞれの上昇率を示しており、積上げ棒グラフは全国のコアCPI上昇率に対する寄与度となっています。エネルギーと食料とサービスとコア財の4分割です。加えて、いつものお断りですが、いずれも総務省統計局の発表する丸めた小数点以下1位の指数を基に私の方で算出しています。丸めない指数で計算している統計局公表の上昇率や寄与度とはビミョーに異なっている可能性があります。さらに、酒類の扱いも私の試算と総務省統計局で異なっており、私の寄与度試算ではメンドウなので、酒類(全国のウェイト1.2%弱)は通常の食料には入らずコア財に含めています。

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2019年5月23日 (木)

最終回に新キャプテンのサヨナラ打でヤクルトを3タテ!!!

  RHE
ヤクルト000000000 052
阪  神000000001x 192

僅差の競った試合ながら、クローザーを出し惜しんだヤクルトに、新キャプテン糸原選手のタイムリーでサヨナラ勝ちでした。今日は、先発の高橋投手が6回までゼロに抑え、見ごたえある投手戦でした。リリーフ陣も1回ずつをピシャリとゼロに抑え、最終回にフォアボールを足場として、サヨナラ勝ちで3タテ完成の巻でした。

明日の横浜戦も、
がんばれタイガース!

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三菱UFJリサーチ&コンサルティングによる「新入社員意識調査アンケート結果」やいかに?

今年、我が家の上の倅も大学を卒業して就職し働き始めましたが、例年の通り、三菱UFJリサーチ&コンサルティングから5月17日付けで「新入社員意識調査アンケート結果」が明らかにされています。もちろん、pdfの全文リポートもアップされています。まず、三菱UFJリサーチ&コンサルティングのサイトからアンケート調査結果の概要を3点引用すると以下の通りです。

【アンケート調査結果の概要】
  • 多様な価値観の許容を何より求める新入社員たち
    会社から「私生活に干渉」されることを拒み、「会社の人と飲みに行くのは気がすすまない」新入社員が増えてきている。プライベートな時間を確保し、会社以外の居場所を大切にしたいという傾向が近年強まっている。
    兼業・副業をしたいと考えている新入社員が4割を超え、そのうち7割以上の人が「趣味を活かした仕事」を希望している。会社という枠にとらわれず、「私」の価値観の下で仕事をしたいと考えている可能性がある。令和の時代に求めることとしては、「多様な価値観が許容される」が最も多かった。
  • 転職にも前向きな姿勢、兼業・副業をその足掛かりに
    今年の新入社員は、転職にも前向きなようだ。良好な雇用情勢の下、転職先を見つけることが比較的容易であるためか、転職への抵抗感が和らいできた。新卒で入った会社で働き続けることが当たり前ではなく、将来の多様な可能性を求めたいということであろう。
    転職に前向きな新入社員ほど、兼業・副業にも前向きで、一部の人は兼業・副業から転職のきっかけを掴もうと考えているようだ。
  • 理想の上司は「寛容型」
    自己認識として、協調性には自信があるが、創造力や積極性に欠けると考える人が多い。また仕事がうまくできるかといった不安を抱えており、たとえミスをしても広い心で受け入れ、温かく成長を見守ってくれる「寛容型」の上司を求めている。

やたらと長くて、これだけでおなかいっぱいな気もします。私自身はすでに定年退職して一線を退いたんですが、倅の終活を見ていて興味あるところ、上に引用した概要とは必ずしも同じ並びではありませんが、私の興味の範囲で、リポートから図表を引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフはリポートから最近数年の 終業後の付き合い方 の推移を引用しています。2014年新入社員から今年2019年までの5年間の変化で、「上司や仲間と時々飲みに行きたい」が10%ポイント超の減少、逆に、「会社の人と飲みに行くのは気がすすまない」が10%ポイント超の増加、という結果が示されています。最初に引用した結果の概要にもある通り、多様な価値観の許容と個性の尊重が必要ということなんだろうと思います。終業後まで職場の人と付き合おうという新入社員は減っていることは確かでしょう。もっとも、大昔に私が役所に入ったころは霞が関では慢性的な残業体制が広がっていて、その後のバブル期を待たないと職場で飲みに行くなんてことはほぼほぼなかった気がします。

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次に、上のグラフはリポートから最近数年の 転職希望に関する就労意識 の推移を引用しています。最近の人手不足の影響が転職に対してどう表れるか、という点に関しては両方の考え方があり、第1に希望通りの就職先だったので転職しない、という考え方が成り立ちますが、逆に、第2に雇用情勢が良好で転職先が見つけやすいので転職も視野に入れる、ということもあり得ます。結果は実証するしかないんですが、2019年新入社員ンついては、従来からは後者の転職を視野に入れる方向に流れたようです。ただ、先行きは不透明そうな気もします。

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次に、上のグラフはリポートから最近3年の 海外勤務の希望 の推移を引用しています。わずかに3年間ですので、ここから傾向を見るのは厳しいような気もしますが、海外勤務の希望は減少しているように見えます。銃乱射などの治安、あるいは、かつてのように海外勤務が出世コースであった時代と異なり、また、日本にいても世界を相手にした仕事ができるインフラが整っていることなどが海外勤務希望の減少の背景にあるんではないか、と考えられます。私は南米のチリとインドネシアに2度の海外勤務を経験しましたが、まったく出世はしませんでした。しかしながら、すべてのサラリーマンに海外勤務の適性あるとは思わないものの、私のつたない経験からして、独身ないし子供が小さいころの海外勤務はそれなりに楽しかった記憶が残っています。

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最後に、上のグラフはリポートから最近数年の 残業に対する考え方 の推移を引用しています。残業と所得の間には一定のトレードオフがあり、ワークライフ・バランスの観点などから、ここ数年は「給料が増えなくても残業はない方がよい」が「残業が多くても給料が増えるのだからよい」を上回って過半を占めていたんですが、ここ2~3年はこの差が縮小してきています。基本は、残業せずにプライベートな時間を大切にしたい、ということなんだろうと受け止めていますが、いろんな要因から循環的な結果が示されるんだろうと思います。

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2019年5月22日 (水)

僅差の試合を競り勝ってヤクルトに連勝!!!

  RHE
ヤクルト000100001 2103
阪  神010000200 391

僅差の競った試合ながら、守備のミスに乗じて、ヤクルトに連勝でした。相変わらず、先発の岩田投手はピッチングのテンポはよろしくなく、ピンチを背負いながらも、何とかバレンタイン選手のホームランの1点に抑え、7回にはヤクルト守備陣のミスに乗じて勝ち越し、そのまま自慢のリリーフ陣で逃げ切りました。

明日は高橋投手をもり立てて3タテ目指し、
がんばれタイガース!

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黒字が大きく減少した4月の貿易統計と2か月連続で増加した機械受注をどう見るか?

本日、財務省から4月の貿易統計が、また、内閣府から3月の機械受注が、それぞれ公表されています。貿易統計については、季節調整していない原系列の統計で見て、輸出額は前年同月比▲2.4%減の6兆6588億円、輸入額も▲6.3%減の1兆2329億円、差引き貿易収支は+604億円の黒字を計上しています。また、機械受注のうち変動の激しい船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て前月比+3.8%増の8688億円を示しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

貿易黒字9割減 4月604億円、中国向け輸出6.3%減少
財務省が22日発表した4月の貿易統計(速報、通関ベース)によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は604億円の黒字だった。3カ月連続の黒字だが、前年同月に比べると黒字幅は9割縮小した。前月と比べても9割ほど縮小した。注目された中国向け輸出は液晶デバイス製造向けの半導体等製造装置が低迷し、前年同月比6.3%減と落ち込んだ。これを受け、世界全体の輸出額も5カ月連続の減少となった。
世界全体の輸出額は前年同月比2.4%減の6兆6588億円だった。中国向けの半導体等製造装置のほか、タンカーなど船舶輸出の減少が影響した。輸入額は6.4%増の6兆5983億円だった。イランからの原粗油のほか、中国からのパソコンや携帯電話の輸入が増えた。
中国向けの輸出額は1兆2329億円と6.3%減少した。自動車輸出は増えたものの、半導体等製造装置や半導体等電子部品などの輸出減が大きく、輸出額は2カ月連続の減少となった。
対米国の貿易収支は7232億円の黒字で、黒字額は17.7%増加した。増加は2カ月連続。自動車や半導体等製造装置の輸出が増えた。
4月の為替レート(税関長公示レート)は1ドル=111円18銭。前年同月に比べ4.6%の円安・ドル高に振れた。
3月の機械受注、3.8%増 建設機械などの大型受注
内閣府が22日発表した3月の機械受注統計によると、民間設備投資の先行指標である「船舶・電力を除く民需」の受注額(季節調整済み)は前月比3.8%増の8688億円だった。QUICKがまとめた民間予測の中央値(0.0%)を上回り、2カ月連続で上昇した。建設機械などの大型案件の受注があったことが寄与した。
製造業の受注額は前月比11.4%減の3440億円だった。2カ月ぶりの減少で、17業種のうち7業種で減少した。「造船業」で2月に大型案件を受注した反動があったことや「その他輸送用機械」で鉄道車両などの受注が低調だった。
半面、非製造業は13.4%増の5117億円と、3カ月ぶりに前月を上回った。「建設業」で建設機械の大型受注があったことが寄与した。
前年同月比での「船舶・電力を除く民需」の受注額(原数値)は0.7%減だった。受注総額は1.0%減の2兆2542億円。外需の受注額は1兆734億円で、官公需の受注額は1523億円だった。内閣府は基調判断を「足踏みがみられる」に据え置いた。
1▲3月期では前期比3.2%減と、2期連続の減少だった。製造業は7.7%減、非製造業は0.3%減だった。
4▲6月期は前期比15.7%増の見通し。製造業は11.7%増、非製造業は18.8%増を見込んでいる。内閣府によると、5月に表面化した米中貿易摩擦の影響については「織り込んでいない」としている。
2018年度の受注額は前年度比2.8%増の10兆4364億円で、2年ぶりの上昇に転じた。
機械受注は機械メーカー280社が受注した生産設備用機械の金額を集計した統計。受注した機械は6カ月ほど後に納入され、設備投資額に計上されるため、設備投資の先行きを示す指標となる。

長くなりましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。次に、貿易統計のグラフは以下の通りです。上2つのパネルとも月次の輸出入を折れ線グラフで、その差額である貿易収支を棒グラフで、それぞれプロットしていますが、一番上のパネルは季節調整していない原系列の統計であり、その下の2番めのパネルは季節調整済みの系列です。輸出入の色分けは凡例の通りです。下2つのパネルはともに季節調整していない原系列の輸出数量指数の前年同期比伸び率をOECD先行指数の前年同月比を並べてプロットしています。3番目のパネルは我が国の輸出数量指数とOECD諸国の先行指数のいずれも前年同月比であり、4番めの一番下のパネルはOECD先行指数のうちの中国の国別指数の前年同月比と我が国から中国への輸出の数量指数の前年同月比を並べています。影を付けた部分は我が国の景気後退期です。ただし、3~4番めのパネルのOECD先行指数はともに1か月のリードを取っており、また、左右のスケールが異なる点は注意が必要です。

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ということで、引用した記事にもある通り、季節調整していない原系列の統計で見ると貿易収支は大きく減少したとはいえ黒字なんですが、傾向を把握できる季節調整済みの系列の統計では昨年2018年年央の7月からほぼほぼ一貫して赤字が続いています。例外は、中華圏の春節による撹乱があった今年2019年2月統計だけです。GDP統計の基礎となる経常収支の方は直接投資収益などの第1次所得収支がコンスタントに黒字を稼ぎ出しているので、毎月1~2兆円の黒字を計上している一方で、通関統計の貿易収支は国際商品市況における石油価格の上昇による輸入額が増加しているの加えて、先進各国や中国の景気減速により輸出額が減少しており、差し引き貿易黒字は縮小ないし赤字となる傾向にあります。もちろん、我が国の場合は初期条件、というか、どこに初期条件を設定するかにもよりますが、従来から貿易黒字を計上してきていたので、まだ貿易黒字が縮小する段階なのかもしれませんが、石油価格は再上昇をはじめており、米中貿易摩擦の影響により世界経済の低迷が続けば、この傾向はさらに明確になると考えるべきです。さらにさらに、で、引用した記事の最後のパラにもある通り、円レートは対ドルでやや円高を示しているようですが、対ドルで円高でないとしても、中国の人民元が貿易摩擦の影響などから、かなりの減価を示しており、円レートは対ドルで見るよりも実効レートではさらに円高となっている可能性があります。心理的に株価にもインパクトあるとはいえ、為替相場は直接には貿易と物価に影響が大きいことはいうまでもありません。

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続いて、機械受注のグラフは上の通りです。上のパネルは船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注とその6か月後方移動平均を、下は需要者別の機械受注を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期を示しています。船舶と電力を除く民需で定義されるコア機械受注は、季節調整済みの系列で見て、2月の+1.8%増に続いて、3月直近統計では+3.8%増と、2か月連続の増加を示しています。ただし、引用した記事にもある通り、ややイレギュラーな大型案件があったような報道ですし、貿易摩擦の影響の大きい製造業では▲11.4%減、逆に、人手不足の影響の大きい非製造業では+13.4%増と明暗が別れています。また、4~6月見通しを見るとコア機械受注で前期比+15.7%増の2兆9,236億円と見込まれていますが、つい最近のこの5月から再燃した米中貿易摩擦の影響が考慮されていないようですから、かなり割り引いて考える必要があるかもしれません。先行きについては、それほどしっかりした根拠があるわけではありませんが、私の見る限りでは、4~6月見通しのような四半期ベースで2ケタ増が続くとは考えられず、貿易摩擦のため製造業でややマイナス、人手不足のため非製造業でややプラス、といったところでしょから、合わせて横ばい近傍の動きになりそうな気がします。繰り返しになりますが、それほどの根拠はありません。

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2019年5月21日 (火)

アップデートされた大和総研「米中冷戦再開の政治経済分析」やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、先週木曜日の5月16日に大和総研から「<最新版> 米中冷戦再開の政治経済分析」と題するリポートが明らかにされています。基本的には、大和総研から5月7日に明らかにされ、このブログで5月10日に取り上げた「『米中冷戦』再開の政治経済分析」をアップデートしたものと明記されています。まず、リポートから要約5点のうち4点めと5点めの2点を引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、足下の追加関税率に6月1日に予定されている中国の報復を加えると、GDPの下押し効果は中国▲0.25%、米国▲0.29%、日本▲0.02%となる。さらに、米国が残りの3,000億ドル相当にも25%の追加関税を賦課した場合、GDPの下押し効果は中国▲0.36%、米国▲0.55%、日本▲0.03%となる。
  • 【日本経済への含意】日本にとって最も懸念すべき問題は「二次的効果」だ。すなわち、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の対中輸出が顕著に減少する効果である。他方、米中冷戦が深刻化するほどに同盟関係が重要となり、米国による対日関税の引き上げリスクが後退することや、米中が関税を相互に賦課することで日本における代替生産が増加する「代替効果」は、日本経済にとって言わば「漁夫の利」となりうる点にも留意しておきたい。

関税率引き上げの影響試算の概要は以下のグラフの通りです。一番上の図表7については、5月10日付けでこのブログで取り上げた際の図表6とまったく同じです。その下の図表9と図表11がアップデートされています。すなわち、図表7は、関税率引き上げの5月10日の前の段階の関税率であり、米国が中国からの2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税率を10%で据え置かれていた場合の影響を試算しており、図表9は、米国の関税率が25%に引き上げられ、中国が報復で600億ドルの対米輸入品の追加関税を平均7.4%から14.5%へと引き上げた5月10日以降の試算を示しており、最後の図表11は、米国が医薬品とレアアースを除くすべての品目に25%の追加関税を賦課した場合の試算となっています。ですから、繰り返しになりますが、5月10日の前の関税率で試算されている一番上の図表7には変更ありません。なお、中国の通信機器大手ファーウェイ(華為技術)が制裁対象のイランとの金融取引にかかわったとして、米国商務省の輸出管理規則に基づくエンティティ・リストに追加され、米国製品比率が25%以上含まれていればファーウェイ向けの輸出は事前許可が必要となることから、このエンティティ・リスト入りは事実上の禁輸措置と考えられているんですが、このリポートの試算はあくまで関税率に関するものということなのか、この措置については試算には含まれていないように見受けられます。

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私の直感的な理解ながら、CGEモデルで試算すれば、大和総研リポートにもあるように、代替効果を通じる我が国への「漁夫の利」のような影響はプラスとなる可能性が高いと考えられるんですが、このリポートでは日本への影響はマイナスと出ています。リポートでは「大和総研のマクロモデルを用いた試算」としか記されていないんですが、たぶん、CGEモデルではなく、ひょっとしたら、クライン型の計量経済モデルなのかもしれない、と思わないでもありません。いずれにせよ、詳細は不明です。

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2019年5月20日 (月)

1-3月期GDP統計1次QEから先行きの景気動向を考える!

本日、内閣府から1~3月期のGDP統計1次QEが公表されています。季節調整済みの前期比成長率は+0.5%、年率では+2.1%を記録しました。2四半期連続のプラス成長で、1~3月期は前期よりも成長が加速しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

1-3月GDP、年率2.1%増 個人消費は0.1%減
内閣府が20日発表した1~3月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除く実質で前期比0.5%増、年率換算では2.1%増だった。2四半期連続のプラス成長となった。10~12月期は年率換算で1.6%増だった。住宅投資や公共投資の増加がプラス成長に寄与した。QUICKが集計した民間予測の中央値は前期比0.1%減で、年率では0.3%減だった。
生活実感に近い名目GDPは前期比0.8%増、年率では3.3%増だった。名目でも2四半期連続のプラスになった。
実質GDPの内訳は、内需が0.1%分のプラス、外需の寄与度は0.4%分のプラスだった。
項目別にみると、住宅投資は1.1%増で、3四半期連続でプラスだった。持ち家を中心に持ち直しの傾向がみられた。公共投資は1.5%のプラスだった。
輸出は2.4%減だった。中国を中心として海外経済の減速が影響した。輸入は内需の弱さを反映して4.6%減となった。輸入の減少幅が輸出の減少幅を上回ったため、GDPにはプラスに寄与している。
個人消費は0.1%減と、2四半期ぶりのマイナスだった。暖冬の影響で衣料品の販売が不調だったことや、食品の値上げを受け消費意欲が冷え込んだことが寄与した。
設備投資は0.3%減で、2四半期ぶりのマイナス。米中貿易摩擦などによる中国経済の減速懸念で、電気機械などの製造業を中心に設備投資を手控える動きがみられた。民間在庫の寄与度は0.1%のプラスだった。
総合的な物価の動きを示すGDPデフレーターは前年同期と比べてプラス0.2%だった。輸入品目の動きを除いた国内需要デフレーターは0.3%のプラスだった。
同時に発表した2018年度のGDPは実質で前年比0.6%増、生活実感に近い名目で0.5%増だった。

ということで、いつもの通り、とても適確にいろんなことが取りまとめられた記事なんですが、次に、GDPコンポーネントごとの成長率や寄与度を表示したテーブルは以下の通りです。基本は、雇用者報酬を含めて季節調整済み実質系列の前期比をパーセント表示したものですが、表示の通り、名目GDPは実質ではなく名目ですし、GDPデフレータと内需デフレータだけは季節調整済み系列の前期比ではなく、伝統に従って季節調整していない原系列の前年同期比となっています。また、項目にアスタリスクを付して、数字がカッコに入っている民間在庫と内需寄与度・外需寄与度は前期比成長率に対する寄与度表示となっています。もちろん、計数には正確を期しているつもりですが、タイプミスもあり得ますので、データの完全性は無保証です。正確な計数は自己責任で最初にお示しした内閣府のリンク先からお願いします。

需要項目2018/1-32018/4-62018/7-92018/10-122019/1-3
国内総生産GDP▲0.1+0.5▲0.6+0.4+0.5
民間消費▲0.1+0.6▲0.3+0.2▲0.1
民間住宅▲2.4▲2.1+0.8+1.4+1.1
民間設備+1.2+2.4▲2.5+2.5▲0.3
民間在庫 *(▲0.2)(▲0.0)(+0.1)(+0.1(+0.1)
公的需要▲0.1▲0.1▲0.2+0.3+0.2
内需寄与度 *(▲0.1)(+0.6)(▲0.4)(+0.7)(+0.1)
外需寄与度 *(+0.1)(▲0.1)(▲0.2)(▲0.3)(+0.4)
輸出+1.0+0.7▲2.0+1.2▲2.4
輸入+0.7+1.0▲1.0+3.0▲4.6
国内総所得 (GDI)▲0.3+0.4▲0.9+0.4+0.9
国民総所得 (GNI)▲0.4+0.6▲1.1+0.5+0.7
名目GDP▲0.2+0.3▲0.6+0.5+0.8
雇用者報酬 (実質)+1.0+1.4▲0.5+0.2+0.1
GDPデフレータ+0.5▲0.1▲0.4▲0.3+0.2
内需デフレータ+0.9+0.5+0.6+0.5+0.3

上のテーブルに加えて、いつもの需要項目別の寄与度を示したグラフは以下の通りです。青い折れ線でプロットした季節調整済みの前期比成長率に対して積上げ棒グラフが需要項目別の寄与を示しており、左軸の単位はパーセントです。グラフの色分けは凡例の通りとなっていますが、本日発表された1~3月期の最新データでは、前期比成長率がプラスを示し、灰色の在庫と黒の外需(純輸出)がプラスの寄与を示しているのが見て取れます。

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まず、潜在成長率を上回るという意味で、1~3月期GDP成長率は1次QE段階ではかなり大きなプラス成長となっています。別の観点からは、日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは前期比で▲0.3%のマイナス成長、レンジでも▲0.4%~+0.4%でしたから、上限を上回る大きなプラス成長ということになります。内外需ともにプラス寄与なんですが、内需では消費も設備投資もマイナスで在庫がプラスですし、外需のプラス寄与については輸出が伸びたからではなく、国内需要の減速を受けて輸入が減ったことに起因している点などを考慮に入れて、成長率の数字の量的な面ではなく、成長の質のようなものを考え合わせると、それほど評価できる成長の姿ではないのかもしれません。ただし、景気動向指数の基調判断などから、景気後退局面が近い、ないし、すでに入っている、といった景気後退に対する懸念は大きく和らいだと私は受け止めています。少なくとも、2四半期連続のマイナス成長というテクニカルな景気後退観測が成り立ちにくくなったことは確かです。もちろん、米中間の貿易摩擦の影響やそれに起因する中国経済の低迷などから、おそらく、5~6月統計あたりから輸出をはじめとして鉱工業生産など、我が国景気に密接に関連する各種統計にも停滞感が出始める可能性があることは覚悟すべきです。しかし、もう少し先を考えると、ポイント還元などで、かなりの緩和措置が講じられる予定とはいえ、10月の消費税率の引き上げ直前には一定の駆け込み需要はあると想定され、1~3月期の住宅投資にはすでにそれが現れているとの見方もありますので、年度前半くらいまでの景気後退局面入りは可能性として低い気がしています。ただ、年度後半には駆け込み需要の後の反動減はありえますので、決してサステイナブルではなく、景気局面の進み方はやかなり複雑な気がしています。

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上のグラフは、価格の変動を取り除いた実質ベースの雇用者報酬及び非居住者家計の購入額の推移をプロットしています。1~3月期の消費はわずかながらマイナスとなっていますが、雇用者報酬が伸び悩んでいるのが見て取れます。インバウンド消費も順調な拡大を続けており、まだまだ拡大の余地はあると考えられるものの、かつて「爆買い」と称されたほどの爆発的な拡大はそろそろ安定化に向かっている印象です。まだ、消費者マインドは改善の兆しすら見えませんが、現在の人手不足は省力化・合理化投資を誘発して設備投資にも増加の方向の影響を及ぼすことが考えられますし、加えて、賃金が上昇して消費者マインドが上向けば、内需主導の成長がサポートされるものと考えます。もちろん、賃金上昇はデフレ脱却に向けて有効であることは明らかです。

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2019年5月19日 (日)

甲子園で負けが続いて広島にも3連敗!!!

  RHE
広  島210200000 5112
阪  神000000001 161

広島が実力を発揮したというか、先発秋山投手が序盤から失点し、打線に得点力なく広島に連敗でした。上り坂の王者広島との実力差を見せつけられた気がします。それにしても、甲子園で負けが続いています。ルーキーに疲れが見えます。特に、近本選手の出塁が減っています。また、木浪遊撃手もいいんですが、これだけ打てないんですから、鳥谷選手を使って欲しいです。

次のヤクルト戦は、
がんばれタイガース!

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2019年5月18日 (土)

メッセンジャー投手がホームラン攻勢に沈んで広島に連敗!!!

  RHE
広  島300001000 470
阪  神000000000 080

いつもの悪いときの阪神を見ているようで、先発メッセンジャー投手がホームラン攻勢に沈んで広島に連敗でした。打つ方も、相変わらず、塁上を賑わせつつも決定打なく、安打数は広島を上回ったにもかかわらず零封されてしまいました。

明日は秋山投手をもり立てて、
がんばれタイガース!

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今週の読書は経済書中心に『図書館巡礼』も読んで計8冊!!!

10連休のゴールデンウィーク明けにしては、今週はよく読書にいそしんだ気がします。いつもの通り、経済書が中心なんですが、昨日から岩波ホールで「エクス・リブリス ニューヨーク公共図書館」が公開されていまして、その関係でもないんですが、図書館に関する教養書も読んだりしています。1日1冊を超えるペースで読んだ結果、計8冊の大量の読書です。

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まず、佐々木実『資本主義と闘った男』(講談社) です。著者は、日本経済新聞記者だったジャーナリストです。上の表紙画像にも見える通り、タイトルの資本主義と闘った男とは、宇沢弘文教授です。本書の指摘を待つまでもなく、おそらく、1960年代にはもっともノーネル経済学賞に近かった日本人であることは明らかです。宇沢の2部門成長モデルは今でも経済成長理論で参照されるモデルです。もっとも、私なんかも理解が容易なソローの新古典派的な成長モデルやもっと単純なAKモデルが一般的な気もしなくもありません。ということで、本書はその宇沢教授の伝記となっています。ただ、宇沢教授の行動でもっとも不可解だったとされる2点についてはまったく解明されていませんので、私は大いに不満です。不可解な2点とは、スタンフォード大学からカリフォルニア大学バークレイ校に移ったのは本書でも指摘する通りの事情なんでしょうが、スタンフォード大学に復帰せずに、何を血迷ったのか、シカゴ大学に移ったのはなぜなんでしょうか。本書では、アロー教授の弟分でいることに飽き足らずに新天地を求めたかのような推測が並べられていますが、それなら、おそらく、宇沢教授と極めて周波数の合致するカリフォルニア大学バークレイ校に留まるのがベストの選択であった気もします。そして、シカゴ大学教授から東大助教授で帰国したんですから、何となく足元を見られた雰囲気もあります。これは、余りに右派なシカゴ大学経済学部に嫌気が差した、というのはかなりの程度に理解できますし、個人的な思想を基にする嫌がらせもあったんだろうと想像できます。いずれにせよ、きちんと進路を考えて1960~70年代に経済学の主流であった米国で研究を重ねれば、宇沢教授がノーベル経済学賞を授賞されていた可能性はかなりあるんではないか、という気がします。しかし、宇沢教授は帰国して東大に復帰し、それからは、経済学の研究よりもアクティビストとして活動することに重点を置いたような気がします。ノーベル経済学賞に関しては、1980年代からは英国で研究を続けた森嶋教授が、そして、1990年代半ばくらいからは林文夫教授が、さらに、21世紀に入ってからは清滝教授が、日本人研究者としてはもっとも近い、といわれるようになったんだろうと私は理解しています。もちろん、ノーベル賞を目指すのが研究者の人生最大の目標とはならないケースはいっぱいあることは私も理解しており、アクティビストとしてもエコノミストを離れて私個人としては、ポジティブなフィードバックを考慮せずに、市場経済が自己調整的に均衡に向かうメカニズムを有すると盲信する右派的な資本主義と闘った宇沢教授はとても尊敬できるところです。それにしても、宇沢教授を取り巻くキラ星のようなエコノミストの面々に私は圧倒されてしまいました。

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次に、ビクター・マイヤー=ショーンベルガー & トーマス・ランジ『データ資本主義』(NTT出版) です。著者は、オックスフォード大学オックスフォード・インターネット研究所の研究者とドイツのビジネス誌 brand eins のジャーナリストです。英語の原題は Reinventing Capitalism in the Age of Big Data であり、2018年の出版です。ということで、本書の著者は人間の本質について調整を行うこととして捉え、従来の市場では極めて単純化された価格という貨幣単位での評価により財・サービスの交換、というか、資源配分が行われていたんですが、ビッグデータの時代になり、データリッチ市場が出現するに及んで、価格という貨幣単位だけで単純に評価されていた商品が膨大なデータを参照することにより、過剰な簡略化を逃れて最適な配分に調整されるようになる未来、近未来、というよりもすでにいくぶんなりとも実現されている事実を明らかにしています。そして、著者は経済の中で、市場は分権分散型であるのに対して、企業は集中型であるとのモデルを提示し、富国生命の保険支払査定業務へのAI導入をやや揶揄しつつ、ダイムラーの意思決定組織のフラット化について高く評価しています。データリッチな企業経営を実践したいのであれば、富国生命のようにAIをパーツとして導入するのではなく、ダイムラーのように組織としてデータリッチネスをうまくいかせるような組織にする必要がある、という意味で、集中型の企業の意思決定を分権分散型にする必要を指摘しています。しかし、エコノミストが考える市場とは、まさに情報の塊であって、著者は少しバイアスのかかった見方を示しているとしか私には考えられません。ですから、市場が本来の資源配分の効率性を発揮するためには情報がいっぱいあった方が望ましいのはいうまでもありません。ただ、現実にはGoogleやAmazonやFacebookやといったインターネット企業は情報独占により巨大な収益を上げていることも事実であり、本書の著者はスーパースター独占企業と呼んでいますが、こういった企業に対してはアルゴリズムの公開よりも、情報の共有を促す仕組みが必要と指摘します。そのための基礎はすでに機械学習により出来上がっているという評価です。そして、ここから先は付加的な部分で、データ資本主義とは関係薄くて、やや飛躍するようにも見えますが、社会生活の基礎としてユニバーサル・ベーシックインカム=UBIを提唱しています。私はこれに大いなる理解を示すものです。ただ、ここ10-20年ほどの労働分配率の低下と資本の蓄積が加速しているという事実、ピケティ教授らの指摘する不平等の拡大については、やや違った見方を示しています。これは私には理解できませんでした。

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次に、アジェイ・アグラワル & ジョシュア・ガンズ & アヴィ・ゴールドファーブ『予測マシンの世紀』(早川書房) です。著者は3人ともカナダはトロント大学ロットマン経営大学院の経営戦略論やマーケティングの研究者です。エコノミスト的な考え方が随所に見られます。英語の原題は Prediction Machines であり、2018年の出版です。ということで、タイトルにある予測マシンとは、ズバリ人工知能=AIのことであり、本書の著者はAIとは予測マシン=Prediction Machinesであると位置づけています。これは、AIについて考える際のひとつの前進だという気がします。というのは、今まで、AIについては幽霊のように実態について、あるいは、その作用に関して、特に考えるでもなく、単純に恐れたり、軽視したりしている考えがまかり通っているからです。ビッグデータという定義のない表現をするかどうかはともかくとして、膨大な量のデータを処理して、データがいっぱいある前提の大量のパラメータを推定して、かなり正確な予測を行い、それをAIが、あるいは、人間が判断を下す、というプロセスを明確にしています。ただ、私からすればまだ足りない部分があり、それは評価関数を人間がAIの外から与えるか、それとも、AI自身が決めるか、ということです。おそらく、ホントのAIは後者なんでしょうね。というのも、本書でも登場しますが、MicrosoftのTayが学習の過程でナチス礼賛とか、差別的な学習結果が示された事実があります。そして、AIはほぼほぼ制限のないデータ処理と評価関数の設定により、かなり急速に人類の知能を上回る可能性があります。もっとも、この場合の「知能」も定義が必要なんでしょうが、通常の意味で、例えば、人類の知能はイヌ・ネコを上回る、位の意味で定義も十分ではないかと私は思いっています。そうすると、何が起こるかといえば、例えば、ここでも哺乳類を考えて、ウシについては、その昔の濃厚の動力の提供という重労働からは逃れたものの、ウシ、特に雌ウシ独特の昨日である搾乳、あるいは、雄ウシの場合は牛肉の提供に供されるわけです。ニワトリの場合も、メスが卵の提供、オスはウシと同じで鶏肉の提供が主たる眼目となって飼育されているのは広く知られている通りです。もう少し知能が高いと、例えば、イヌ・ネコのようにペットの地位に上ったりしています。おそらく、人間とAIの関係も知能の高さの差に従って、こういった現時点における人類と哺乳類の関係になぞらえることができると私は予想しています。もちろん、ひとつの可能性として、哺乳類ではなく鳥類ですが、北米のリョコウバトのような運命が待っている可能性も否定できません。ですから、本書でいう予測マシン=AIの未来は、単なる予測ではなく、新しい知能の誕生と考えるべきだと私は考えています。あるいは、ハードウェアのマシンではなくソフトな技術について考えれば、自動車の自動運転が主流になれば、現在のような人間が手動運転する自動車は、現時点の馬術のような扱いになるような気もします。いずれにせよ、本書で考えるようなトレードオフについては、人間から見たトレードオフであって、AIから見ると違う観点がありそうな気もします。不安な未来についても、"But Who Will Guard the Guardians?" ではないんですが、AIを制御するAIが必要になりそうな気がします。

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次に、持田信樹『日本の財政と社会保障』(東洋経済) です。著者は東大経済学部の研究者です。今年3月の退官ではないかと記憶しています。相も変わらず、財政学の権威が我が国の財政赤字を問題にし、持続可能な財政とその最大の支出項目のひとつである社会保障について分析しています。すなわち、問題意識としては、財政赤字の解消とまでいわないまでも、その縮減を目指して、「中福祉・中負担」を標榜しつつも、実体は「中福祉・低負担」となっている財政・社会保障の姿を、ホントの「中福祉・中負担」にすべく財政や社会保障を改革することは可能か、また、より規範的には、そうせねばならない、ということに尽きます。確かに、一般論として、財政赤字がフローで垂れ流され、ストックで積みあがっていくのは、何らかのショックに対して脆弱そうに見えて、財政のサステイナビリティの観点から均衡に近づけたい、というのは私も理解します。ただ、他方に、やや極端かつ圧倒的な少数派ながら、米国の大統領候補を目指す民主党の予備選に出ていたサンダース上院議員の経済スタッフのケルトン教授らが主張する現代貨幣理論(MMT)も注目され始めており、この根本的な均衡財政の必要性から解き明かして欲しい気もします。というのは、少なくとも、両極端を考えて、初期条件から財政赤字がなく、従って、国債残高がゼロであれば、中央銀行の金融オペレーションが成立せず、指標金利が得られませんから、金融政策が運営できません。もちろん、逆の極端は財政が破綻して、資本や資金の海外逃避やハイパー・インフレのケースです。その間のどこかに最適解があるハズなんですが、不確定な経済学ではそれを探し当てることが出来ません。悲しきエコノミストなわけです。繰り返しになりますが、私は決してMMTを支持しているわけではありません。むしろ、boodooエコノミクスだとすら思っています。さて、本筋に戻って、本書では、マクロの財政経済データやマイクロな国民生活基礎調査のデータを用いたフォーマルな計量分析がなされていますが、根本的な財政赤字の最適ラインは、もちろん、算出されていません。最後に、立命館大学の松尾教授の従来からの主張ではありませんが、財政や税制を考える際に、右派は税金を多く徴収して財政支出を削減しようという方向であるのに対して、左派は減税と財政支出の増加を志向します。「もっとカネをよこせ」ということです。財政や税制に関する本を読む場合に、これを念頭に置くと、とても理解が進んだりします。もうひとつ、私の観点ですが、需要について考えるのは左派エコノミストであり、供給サイドを重視するのは右派エコノミストです。これも時折役に立ちます。

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次に、スチュアート・ケルズ『図書館巡礼』(早川書房) です。著者は、作家・古書売買史家とされていますが、私はよく知りません。英語の原題はズバリ The Library であり、2017年の出版です。ということで、私はおそらくかなりの図書館ヘビーユーザではないかと自覚しているんですが、本書の著者ほど図書や図書館に対して愛情を持っている読書家は出会ったことがありません。もちろん、本書にはさらに強烈な愛書家がいっぱい登場します。世界の図書館の歴史といえば、アレクサンドリア図書館があまりにも有名なんですが、そのアレクサンドリア図書館ができる前の本のない時代にボルヘスによって想像されたバベルの図書館のような空想上の図書館から図書館の歴史を始めています。でも、もちろん、事実上の図書館の歴史は第2章のアレクサンドリア図書館から始まります。入港した船から書物や巻物が押収され、もちろん、コピーを取った上で、原本が図書館に留め置かれ、コピーが元の場所に返却される、という専制君主らしいやり方が印象的です。図書の材質がそもそも羊皮紙やパピルスですし、デジタル技術はもとよりアナログのコピーもありませんから、書写生が手で書き写す必要があります。当然です。さらに時代が下って、画期的であったのは、1573年モンペリエの勅令により、フランス王国における出版については法定納本制が敷かれた点です。少し遅れて英国でもオックスフォード大学に納本する制度が始まっています。我が国でも、国会図書館への納本義務についてはかなりの国民の間に知識として普及しているんではないでしょうか。こういった納本制の効果もあり、21世紀に入って図書館版のムーアの法則が成り立つそうで、15年ごとに蔵書が2倍に増加すると本書の著者は指摘しています。もちろん、第5章で取り上げられているように、さかのぼること15世紀に印刷技術が発明されて1500年ころにはロンドンに5社が印刷所を展開していたそうですから、この辺りから本格的な出版ラッシュ、というか、図書館にも納本されるようになり、現在見られる本棚に縦置きするというのは画期的なイノベーションだったようです。図書の出版と図書館の蔵書の増加は、当然ながら、常に順調に進んだわけではなく、第6章ではバチカン図書館がカール5世軍により破壊された点が指摘されています。もちろん、その後も火災による被害などもあることは忘れるべきではありません。いずれにせよ、図書館は単なる図書の倉庫ではなく、読書階級が読書するとともに図書を借り出し、加えて、有識者たり司書が働く知的な場所であり、私が利用するような公的な図書館だけでなく、本書に登場するような愛書家や読書家が収集したコレクションを収納していたりもしますから、公立私立の別を問わず図書館は知の集積場という性格を持つことは当然でしょうし、場合によっては、建物についてもそれなりに壮麗な建築だったりもします。収納された図書とともに建築そのものも、大きな知的価値を持っていたりもするわけです。経済学の用語でいえば、メチャメチャな外部経済を持っているといえます。小説でも、本書でよく取り上げているのはエーコの『薔薇の名前』とトールキンの『指輪物語』なんですが、ともに図書や図書館が重要な役割を演じています。ただ、最後に、現在の図書のデジタル化や電子図書の普及に対して、図書館がどのようなポジションにあるのか、包括的でなくとも著者の見識を示して欲しかった気もします。いずれにせよ、私は図書館の利用がもっと盛んになるように願っています。

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次に、ローラ J. スナイダー『フェルメールと天才科学者』(原書房) です。著者は米国セント・ジョーンズ大学の歴史と哲学の研究者です。英語の原題は Eyes of the Beholder であり、普通の高校英語では、"Beauty is in the eye of the beholder." の慣用句で習うんではないでしょうか。原書は2015年の出版です。ということで、本書では、17世紀の半ばから後半にかけてオランダがデルフトを舞台にした画家・画商のフェルメールと顕微鏡の製作者であり顕微鏡を用いたさまざまな新発見に貢献した科学者のレーウェンフックの同い年の2人を主人公とした歴史ノンフィクションです。主人公の2人が友人とか顔見知りであったかどうかは史料がありませんが、フェルメールが不遇のうちに負債を残して没しった後に、レーウェンフックがその遺産管財人に任じられているようですから、何らかのつながりはあったものと著者は推察しています。ということで、同じオランダのデルフトの同い年の2人に共通するものとは、まさに英語の原題の通りに、一般には目に見えない何かを見る力であったと著者は考えているようです。画家で画商でもあったフェルメールは、レンズと鏡とカメラ・オブスクラを駆使して、極めてていねいに作品を仕上げています。我が国では、本書冒頭の図版にも収録れている「牛乳を注ぐ女」や「真史の耳飾りの少女」が有名ですが、歴史に残された記録を調べても生涯に45程度の作品しか残さなかったようですし、現存していて確認されるのは35作品にしか過ぎないとされています。じつは、今年2019年2月まで東京展が、そして、ゴールデンウィーク明けの5月まで大阪展が、それぞれ開催されていたフェルメール展なんですが、「日本美術史上最多の9点」が売りの文句になっていて、「9/35」という表示もあり、たった9点という評価は当たらないのだろうと思います。また、科学者のレーウェンフックは我が国ではフェルメールよりも知名度が少し低いんではないかと私は想像していますが、顕微鏡でありとあらゆるものを観察して生物の自然発生説にとどめを刺したり、それらのおびただしい数の観察結果を論文に取りまとめてロンドンの王立協会に送りつけて、最後にはとうとうフェローに任命されて大喜びしたりと、デカルト的に理性だけで結論を出そうとするのではなく、ベーコン的に観察に基づいて事実から結論を引き出す姿勢が、他の人物による再検証可能性の担保とともに、とても近代的な科学の真髄を象徴している気がします。本書の主人公が生きた17世紀半ばから後半にかけての時代は、我が国では鎖国が完成した一方で、清とオランダだけには門戸を開き、その後は蘭学という形での西洋科学の摂取に向けた時代であったわけですが、当時の江戸幕府がオランダを西洋唯一の貿易相手国、あるいは、西洋文明の窓口に選んだのは、なかなかの慧眼だったのかもしれません。

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次に、井坂理穂・山根聡[編]『食から描くインド』(春風社) です。チャプターごとの著者は、大学の研究者が多く、歴史や文化人類学や文学の専門家であり、もちろん、地域研究の研究者も含まれています。タイトルに見られる「インド」は、大きなインド亜大陸を指して使われているようで、表現は悪いかも知れませんが、英国の植民地だったころのインドとの見方も成り立ちそうです。ですから、特に、宗教についてはイスラム教の食への影響も着目されています。本書は3編構成であり、英国による植民地支配とナショナリズムの観点、文化や文学に見るインドの食、食から見たインド社会、といった感じで私は読みました。まず、我が国でも明治維新とともに食生活や食文化は大きく変化し、一般には西洋化が進んだわけですが、インドでも独立時に同じように西洋化が進むという方向性がある一方で、逆に、インドの独自性を守ろうとする方向性もあったようです。そして、植民市時代には、英国人メムサーヒブの料理が紹介され、ゴア出身のキリスト教徒の料理人が重宝された、との見方も示されています。我が家も、ジャカルタ在住時にはキリスト教徒のメイドさんを雇っていて、豚肉に対するタブーなどが一切なかったのを私も記憶しています。本書には明記してありませんが、我が家の経験ではジャカルタでは複数のメイドさんを雇う場合、料理人がメイドさんの頭として扱われ、お掃除などをするメイドさんを、場合によっては、指揮命令下に置くこともあると聞いたことがあります。インドではどうなんでしょうか。そして、食に関する本書の議論に戻ると、チキンティッカー・マサーラーに関して、英国発祥の料理がインドに持ち込まれたのか、それとも、インド伝来の料理なのか、といった議論も紹介されています。4冊の伝統的な料理書、すなわち、『料理の王』、『料理の月光』、『料理規則の鏡』、『広範な料理の知識』といった本が紹介されています。ただ、日本人が考えるように、すべてがカレーというわけではありません。食に起因する社会会問題としては、第8章で飲酒が取り上げられています。アルコール度数の低い現地酒であるアラックが労働者階級のエネルギー源となっていたのは少し驚きました。もちろん、イスラム教における豚肉のタブーについても人るのチャプターが割かれています。私は豚肉に関するイスラム教徒のタブーはユダヤ教から受け継いだものだろうと理解していたんですが、本書ではそのあたりの由来は不明としています。最後に、本書でももう少し図版が欲しかった気がします。顔写真は何枚かあるんですが、料理そのものや、もちろん、調理器具、あるいは、食器なども実物や歴史的な書物の紹介図を見れば、もっと理解がはかどりそうな気がします。

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最後に、レグ・グラントほか『世界史大図鑑』(三省堂) です。各ページをじっくり読むというよりは、カラー図版を眺め渡すことを主眼とする図鑑です。ここ2-3週間の読書で、図版が欲しいと読書感想文に書いたケースが散見されていますが、その反動というわけでもなく、ついつい、近くの区立図書館で借りてしまいました、三省堂の大図鑑シリーズの1冊であり、このシリーズにはほかに、経済学、心理学、政治学、哲学、社会学などがあるんですが、なぜか、物理学や化学などは一括化されて科学で1冊にまとめられていたりしますし、変わり種としては『シャーロック・ホームズ大図鑑』なんてのがあったりもします。ということで、本書は、編年体で6部構成であり、第1に人類の起源として20万年前から紀元前3500年くらいまで、そして、第2に古代の文明として紀元前6000年から西暦500年くらいまで、第3に中世の世界として500年から1492年まで、第4に近世の時代として1420年から1795年まで、第5に近代という意味なんでしょうが変わりゆく社会と題して1776年から1914年まで、最後に第6にコンテンポラリーな現代の世界として1914年から現在まで、という形で、少し重複を含みつつ、構成されています。タイトル通り、世界史についての図鑑であり、アルタミラの洞窟壁画から、今世紀に入ってからの同時多発テロや世界金融危機まで。世界の歴史において重要な意味をもつ104の出来事を取りあげ、オールカラーの図解と写真でわかりやすく解説してあります。解説はそれほど専門的でもありません。また、我が国や西洋先進国をフォーカスするだけでなく、アジア・アフリカのトピックや第2次世界大戦後のイベントにも多くのページを割いており、21世紀の視点から人類の起源以来の過去を俯瞰する「世界史」の見方を展開しています。ただ、トピックごとの図版ですから、それらのリンケージを探ろうとするグローバル・ヒストリーの観点は希薄な気もします。ただし、現代の関心に合わせて、人口増加や気候や環境の変化など、人類史を通じて長期的に重要な意味をもつトピックも取り上げていますし、各章末に「もっと知りたい読者のために」というコラムを第6部の後の巻末に設け、さらに60のテーマに関して簡潔に解説を加えています。もちろん、索引なども充実しています。それぞれの関心や必要性に応じて、いずれかのテーマの大図鑑を買い求めるもよし、私のように図書館で借りてザッと眺めるもよしで、いろんな利用方法があるような気がします。

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2019年5月17日 (金)

終盤に阪神リリーフ投手陣が崩壊して広島に大敗!!!

  RHE
広  島000100027 10130
阪  神000002000 280

終盤までもつれた試合ながら、結局、広島に競り負けでした。最終回に阪神のリリーフ陣が崩壊した、というか、連勝街道を走り始めた広島打線が王者の実力を発揮した、というか、最終回の攻撃には目を見晴らせるものがありました。8回3失点でがんばった西投手に援護なく、結局、負け投手になってしまいました。

明日はメッセンジャー投手をもり立てて、
がんばれタイガース!

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来週月曜日公表予定の1-3月期GDP統計1次QEはマイナス成長か?

豪華絢爛10連休のゴールデンウィーク前の先々週金曜日に公表された鉱工業生産指数(IIP)など、ほぼ必要な統計が出そろい、来週月曜日の5月20日に1~3月期GDP速報1次QEが内閣府より公表される予定となっており、すでに、シンクタンクなどによる1次QE予想が出そろっています。いつもの通り、顧客向けのニューズレターなどのクローズな形で届くものは別にして、web 上でオープンに公開されているリポートに限って取りまとめると下の表の通りです。ヘッドラインの欄は私の趣味でリポートから特徴的な文言を選択しています。いつもの通り、足元から先行きの景気動向について重視して拾おうとしています。明示的に、先行きに言及しているのは、以下のテーブルの上から3機関、すなわち、日本総研、大和総研、みずほ総研だけで、特に大和総研は需要項目別に長くなりそうなので、消費だけでストップしてしまったんですが、いずれにせよ、詳細な情報にご興味ある向きは一番左の列の機関名にリンクを張ってありますから、リンクが切れていなければ、pdf 形式のリポートが別タブで開いたり、ダウンロード出来たりすると思います。"pdf" が何のことか分からない人は諦めるしかないんですが、もしも、このブログの管理人を信頼しているんであれば、あくまで自己責任でクリックしてみましょう。本人が知らないうちにAcrobat Reader がインストールしてあって、別タブが開いてリポートが読めるかもしれません。

機関名実質GDP成長率
(前期比年率)
ヘッドライン
日本総研▲0.1%
(▲0.2%)
先行きマイナス成長が続く公算は小さく、4~6月期には緩やかな景気回復基調に復する見込み。中国政府の景気刺激策の効果により中国経済は最悪期を脱しつつあることから、昨年夏場以降減少傾向にあるわが国の輸出は底入れする見込み。設備投資も、中国経済の失速懸念が後退するのに伴い、先送りしていた投資案件を実行に移す動きが顕在化する見通し。
大和総研▲0.1%
(▲0.5%)
先行きの日本経済は、潜在成長率を若干下回る低空飛行を続ける公算が大きい。
まず、個人消費は一進一退が続きながらも緩やかに増加するとみている。人手不足を背景に名目賃金は緩やかに増加している。また、実質賃金も2018年11月以降原油価格が大きく下落したことで一時的に増加していた。しかし、今年に入り原油価格が再び上昇したことから、先行きは名目賃金上昇の効果が物価高により相殺されるだろう。また、賃金カーブのフラット化や残業抑制により名目賃金の上昇ペースが鈍る可能性にも注意が必要だ。
また、10月に予定されている消費増税に関しては、各種経済対策の実施により駆け込み需要・反動減はいくらか緩和される見込みである。ただし、施策の一つであるポイント還元策が、制度終了(2020年6月末)前後に駆け込み需要・反動減を生じさせる点には留意しておく必要がある。また、増税対策は公共投資の比重が大きく、家計に限れば消費増税に伴う負の所得効果を全て相殺できるような内容ではないことも留意しておくべきだ。
みずほ総研+0.4%
(+1.4%)
4~6月期以降については、輸出の伸び悩みが当面続く一方、内需の更なる低迷は回避される見通しだ。消費が底堅く推移するほか、設備投資の深刻な調整は避けられるとみている。
輸出は、景気対策による中国経済の持ち直しやIT需要の調整局面からの脱却時期が年後半以降になるとみており、当面伸び悩む見通しだ。
個人消費は、労働需給のひっ迫に伴う雇用者所得の堅調さが押し上げ要因となり、底堅く推移するだろう。消費増税前の駆け込み需要も、2014年度当時と比べ小幅ではあるが発生し、一時的だがプラス要因となろう。
設備投資は、高水準の企業収益や人手不足による合理化・省力化投資が下支えになり、深刻な調整局面入りは回避される見通しだ。
リスクはマインド面の更なる低迷だろう。足元続く原油価格の上昇が仮に続けば、低迷している消費マインドをさらに押し下げる可能性がある。また世界経済の更なる減速や貿易摩擦の激化は、輸出減退だけでなく、投資マインドの更なる悪化に繋がるおそれもある。内需のマインド低迷を引き起こす可能性があるこうした要因には、引き続き注視する必要がある。
ニッセイ基礎研▲0.0%
(▲0.2%)
実質GDPは2016年1-3月期から8四半期連続でプラス成長となった後、2018年1-3月期からはマイナス成長とプラス成長を繰り返している。2019年1-3月期のマイナス幅は2018年1-3月期、7-9月期よりも小さくなるとみられるが、2018年中のマイナス成長が大雪、台風、地震など天候不順や自然災害による影響が大きかったのに対し、2019年1-3月期は天候が比較的恵まれている中でのマイナス成長である。また、成長率のマイナス幅が小さい理由は国内需要の低迷を受けた輸入の落ち込みであり、内容的にも悪い。
日本経済は2018年に入ってから横ばい圏の推移が続いていたが、2018年度末にかけて実態として大きく悪化したと判断される。
第一生命経済研▲0.1%
(▲0.2%)
小幅マイナス成長が予想される1-3月期のGDPだが、今回は見た目以上に内容が悪くなりそうだ。輸出が大幅マイナスになることに加え、個人消費、設備投資も弱く、主要どころの需要項目が軒並み弱い結果になるとみられる。こうしたなかでも小幅なマイナス成長にとどまるとみられる理由は、輸入の減少に尽きる。輸入が前期比▲4.5%と、輸出以上に大きな落ち込みとなることでで、外需寄与度は前期比年率で+1.5%Ptも成長率を押し上げる見込みである。輸入の減少によって成長率は押し上げられるが、これは内需の弱さの反映という面もあるため、決して喜べるものではない。表面上の数字以上に足元の景気の弱さを示す内容になるだろう。
伊藤忠経済研+0.3%
(+1.2%)
輸出が大きく落ち込み、設備投資もマイナスに転じたが、個人消費が減速しつつも増勢を維持したことに加え、公共投資が大幅に増加し、成長を下支えした。前年同期比では10~12月期の+0.3%から1~3月期は+0.6%へ伸びを高めていることもあり、日本経済は緩やかながらも拡大基調を維持していると評価できよう。ただし、内閣府が試算する潜在成長率1.0%とさほど変わらない程度の成長にとどまり、物価上昇圧力を大きく高めるほどではない。依然としてデフレ脱却への道のりは遠い。
三菱UFJリサーチ&コンサルティング▲0.0%
(▲0.1%)
2019年1~3月期の実質GDP成長率は、前期比-0.0% (年率換算-0.1%) と前期比で小幅ながらもマイナス成長となったと予想される。外需は3四半期ぶりにプラスに寄与するものの、個人消費や設備投資など国内需要が弱い。
三菱総研+0.4%
(+1.4%)
2四半期連続でのプラス成長を予測する。輸出は減少に転じたものの、内需が緩やかながらも増加したとみられる。

ということで、ほぼほぼゼロ成長が予想されており、しかも、成長率の押し上げ要因が輸入の減少というわけで、かなり仕上がりの悪い姿が予想されています。ニッセイ基礎研のヘッドラインでも引用しておきましたが、2018年中もプラス・マイナスの成長率がジグザグに現れたんですが、これは地震や台風や豪雨などの経済外要因たる自然災害に起因していた面が強く、今年2019年1~3月期の成長率の大幅減速は、自律的、というか、経済の内生的な景気循環の局面変化であり、国内要因というよりは海外要因、すなわち、米中貿易摩擦などに起因する中国経済の減速が大きく影響しているとはいえ、世界経済全体が減速する中での我が国経済の成長鈍化と考えるべきです。かつての米国に次ぐの世界第2位の経済大国も、「中国がくしゃみをすれば風邪をひく」ようになったといえます。ですから、日本経済が、このまま、景気後退局面入りするかどうかも世界経済や中国経済の動向に依存します。米国のトランプ政権の強硬姿勢を見る限り、我が国経済が景気後退にすでに入っている、あるいは、これから短期間の間に景気後退局面に入る確率、は決して小さくないと私は受け止めています。
下のグラフは、実質GDP成長率の推移のグラフをニッセイ基礎研のリポートから引用しています。

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2019年5月16日 (木)

+1%超の上昇続く企業物価(PPI)の先行きやいかに?

本日、日銀から3月の企業物価 (PPI) が公表されています。PPIのヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は+1.3%と前月の+0.9%から上昇率が拡大し、引き続き、プラスの上昇率を継続しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の企業物価指数、前年比1.2%増 米中貿易交渉の進展期待で
日銀が16日発表した4月の国内企業物価指数(2015年平均=100)は101.8で前年同月比で1.2%上昇した。上昇は28カ月連続で、上昇率は3月の確報値の1.3%から縮小した。原油価格の上昇幅が昨年同時期と比べて小さかったため前年比の増加は小幅に縮小したが、米中貿易交渉の進展期待などから企業物価指数は上昇した。
前月比では3カ月連続のプラスで上昇率は前月と同じ0.3%だった。日銀の調査統計局は4月の物価指数上昇について、4月中旬までは米中貿易交渉の進展が期待されており、世界的な景気減速の懸念が和らいでいたとの見方を示した。
円ベースでの輸出物価は前年比で0.2%上昇し、前月比では0.4%上昇した。輸入物価は前年比で1.8%、前月比では0.5%それぞれ上昇した。

いつもながら、コンパクトによく取りまとめられた記事だという気がします。続いて、企業物価(PPI)上昇率のグラフは上の通りです。一番上のパネルは国内物価、輸出物価、輸入物価別の前年同月比上昇率を、真ん中は需要段階別の上昇率を、それぞれプロットしています。色分けは凡例の通りであり、上2つのパネルの影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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ということで、基本的に、ヘッドラインとなる国内物価の前年同月比上昇率は前月の3月統計の+1.3%からほぼ横ばいの+1.2%となっています。日経・QUICKによる市場の事前コンセンサスは+1.1%の上昇でしたので、これとも大きな違いはありませんでした。同時に、国際商品市況における石油価格にも連動した動きと考えています。すなわち、輸入物価のうち、石油・石炭・天然ガスは円ベースの前年同月比で見て、3月の+7.3%の上昇から、4月統計では+6.4%にやや上昇幅を縮小させています。加えて、季節調整していない原系列ながら、国内物価の前月からの上昇幅+0.3%に対する寄与度で見て、ガソリンをはじめとする石油・石炭製品が+0.22%、エチレンなどの化学製品が+0.06%、などとなっており、エネルギー価格と中国をはじめとする新興国経済の減速懸念が和らいだ点を背景とした価格上昇の色彩が強いとの報道もうなずけると私は考えています。もっとも、十分な情報はありませんが、4月の新年度に入って価格改定が進んだ部分もあるんではないかと想像しています。企業物価(PPI)ではなく消費者物価(CPI)なんでしょうが、少なくとも、スーパーマーケットなどにおける商品を見ている限り、一部分ながら価格改定が進んでいるような印象を私は持っています。まあ、個人的な印象論です。ただし、ただしなんですが、引用した記事にもある通り、世界経済の減速懸念が4月時点で和らいでいたのは、あくまで米中貿易交渉の進展に対する期待でしたので、現時点では、この交渉進展は望み薄との見方もありますから、来月統計の際には逆の見方が支配的になっていても不思議ではありません。ですから、とても無責任な見方ながら、4月統計の+1%超えの国内物価上昇率は、世界経済要因か、新年度価格改定要因か、来月の統計でヒントが得られるのかもしれません。

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2019年5月15日 (水)

菅野投手から4ホームランのメッタ打ちで巨人に爆勝!!!

  RHE
阪  神320014120 13180
読  売011200310 8132

乱打戦を制して巨人に連勝でした。特に、巨人の先発菅野投手には4ホーマーを浴びせて10点を奪い、完全に打ち崩しました。ヒーローインタビューに登場した守屋投手の初勝利も目出度い限りです。ただ、阪神生え抜きの能見投手は失点しましたし、私が強く応援している鳥谷選手が三振に倒れたのは悔しい限りです。

甲子園の広島戦も、
がんばれタイガース!

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マクロミル調査による今夏のボーナスの使い道やいかに?

もうすでにかなり前のことのように思えてきますが、4月22日付けで「今夏のボーナスは増えるのか?」と題して、シンクタンク4機関のややビミョーな予想を取りまとめましたが、ゴ0ルデンウィークの10連休が終わって、マクロミル・ホノテから昨日5月14日付けで2019年夏のボーナス、支給見込みや使い道に関する調査結果が明らかにされています。まず、マクロミル・ホノテのサイトから調査結果のTOPICSを4点引用すると以下の通りです。

TOPICS
  • 2019年夏のボーナスが「支給される予定」は84%。昨年から4.9ポイント上昇
  • 夏ボーナスの見込み額は、平均466,326円。昨年より12,805円増加
  • 夏ボーナスの使い道は「預貯金」が7割でダントツ。その理由は「安心感を持つため」が最多
  • 夏のボーナスで奮発したいこと、1位は「旅行」。奮発したいと思わない人も3割

支給額などはシンクタンク予想と比べるべきではないような気もしますが、グラフを引用しつつ簡単に取り上げておきたいと思います。

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まず、上のグラフは夏のボーナスの受給予定と予想金額を結合させています。いずれも最近3年間ですが、今年2019年は支給される予定が83.7%と、昨年より4.9%ポイント上昇しており、予想金額についても昨年より+12,805円増の平均466,326円に上っています。シンクタンク予想の民間企業平均は40万円に届きませんでしたので、大盤振舞いな気がするんですが、正社員対象の調査でもあって、かなりいい結果ということなのかもしれません。

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次に、夏のボーナスで奮発したいことのグラフは上の通りです。もっとも多かったのは旅行35%で、次いで、レジャー19%、趣味18%と続き、電化製品や洋服などを購入したいという人はどちらも15%以下という結果となっています。他方、奮発してやりたいことや買いたいものはない、という回答も34%に上っています。ただ、グラフはありませんが、夏のボーナスの使い道について複数回答でたずねると、1位は預貯金が70%でダントツとなっています。その理由は、まず、安心感を持つため47%、次いで、老後の生活費として45%などが多くなっています。定年退職して、私も判るようになった気がします。

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2019年5月14日 (火)

現状判断DIが上昇した4月の景気ウオッチャーと黒字が続く経常収支!

本日、内閣府から4月の景気ウォッチャーが、また、財務省から3月の経常収支が、それぞれ公表されています。景気ウォッチャーでは季節調整済みの系列の現状判断DIが前月から+0.5ポイント上昇の45.3を記録した一方で、先行き判断DIも▲0.2ポイント低下の48.4となり、また、経常収支は季節調整していない原系列の統計で+2兆8479億円の黒字を計上しています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月の街角景気、現状判断指数は2カ月ぶり改善 10連休に期待
内閣府が14日発表した4月の景気ウオッチャー調査(街角景気)によると、街角の景気実感を示す現状判断指数(季節調整済み)は45.3と、前の月から0.5ポイント上昇(改善)した。改善は2カ月ぶり。10連休を控え、消費の増加に対する期待や生産を上乗せする動きが指数を押し上げた。内閣府は基調判断を「回復に弱さがみられる」に据え置いた。
企業動向関連は1.1ポイント上昇の46.0だった。調査時点では「米中貿易摩擦に対する懸念が和らいでいた」(内閣府)ことも心理を上向かせたとみられる。「連休に備えるための注文が例年以上に多い」(東北の食料品製造業)との声があった。家計動向関連は0.5ポイント上昇の44.7だった。「新元号に関連した商戦、10連休など消費が活発になるきっかけがあった」(北海道のスーパー)との声があった。
2~3カ月後を占う先行き判断指数は48.4と、前の月から0.2ポイント低下した。雇用関連が2.5ポイント低下の47.4だった。「製造業中心に求人が減少している影響がある」(内閣府)という。企業動向関連も低下し、燃料価格などコストの増加を懸念する声が目立った。内閣府は先行きの基調判断について「海外情勢等に対する懸念がみられる」とした。
3月の経常収支、2兆8479億円の黒字 57カ月連続黒字
財務省が14日発表した3月の国際収支状況(速報)によると、海外との総合的な取引状況を示す経常収支は2兆8479億円の黒字だった。黒字は57カ月連続。QUICKがまとめた民間予測の中央値は3兆515億円の黒字だった。
貿易収支は7001億円の黒字、第1次所得収支は2兆564億円の黒字だった。
同時に発表した2018年度の経常収支は19兆4144億円の黒字だった。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がしますが、2つの統計の記事を並べるとやたらと長くなってしまいました。続いて、景気ウォッチャーのグラフは下の通りです。現状判断DIと先行き判断DIをプロットしています。いずれも季節調整済みの系列です。色分けは凡例の通りであり、影をつけた部分は景気後退期です。

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4月の景気ウォッチャー全体としては、引用した記事にもある通り、足元から目先についてはゴールデンウィークの10連休に期待して現状判断DIは上向くも、さらに2~3か月先の動向については米中貿易摩擦などからやや不透明感が残って先行き判断DIは下向き、といったところでしょうか。ということで、4月の景気ウォッチャーの現状判断DIを前月差で少し詳しく見ると、3項目のコンポーネントのうち、第1の家計動向関連は住宅関連を除いておおむね前月から上向いており、家計全体で+0.5の上昇を示し、第2の企業動向関連でも製造業がけん引して+1.1の上向きとなっていますが、第3の雇用動向関連が▲0.6とマイナスを示しています。これは、先行き判断DIについても同じ傾向が見受けられ、雇用動向関連が前月差でもっとも大きなマイナスをつけています。世間一般では、雇用はまだまだ堅調であり、人手不足が続いていると考えられていますが、引用した記事と違って、私が景気判断理由集を見る限り、南関東の民間職業紹介機関から「一部の電機、部品メーカーから採用抑制の意向が出てきている。携帯電話の販売状況や米中貿易摩擦の影響が出ており、これまでの採用計画を抑える状況にある。」とか、東海の民間職業紹介機関からも「大手メーカーの一部で中途採用の求人がストップし始めている。」といった見方が出始めています。例の米中間の貿易摩擦に伴う両国の関税率引き上げについては、我が国の実体経済に対して製造業などに影響を及ぼすのはまだまだ先だろうと考えるべきなんですが、米中貿易摩擦が企業マインドを通じて、先行きの不透明感や悲観的な見通しから雇用にマイナスのインパクトを及ぼしているように見えます。消費者者マインドだけでなく、企業マインドも米中貿易摩擦で悪化する可能性がありますし、そうであれば、雇用よりも設備投資への影響も出る懸念があります。もちろん、貿易摩擦だけでなく、実体経済に関して、昨日公表された景気動向指数の「悪化」への基調判断修正も、消費者マインドだけでなく、企業マインドにも否定的な影響を及ぼすのは明らかです。

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続いて、経常収支のグラフは上の通りです。青い折れ線グラフが経常収支の推移を示し、その内訳が積上げ棒グラフとなっています。色分けは凡例の通りです。上のグラフは季節調整済みの系列をプロットしている一方で、引用した記事は季節調整していない原系列の統計に基づいているため、少し印象が異なるかもしれません。月次の季節調整済の系列で見て、安定的に1~2兆円の黒字を計上してます。2018年度の統計が利用可能となり、したがって、年度の経常収支が+19兆4144億円の黒字を記録しています。前年度から▲2兆7,605億円の黒字縮小となり、特に、貿易収支が2018年度は+7,068億円と▲3兆8,328億円の大幅な黒字縮小となっています。基本は、国際商品市況における石油価格の上昇ですから、この2018年度の貿易黒字縮小は我が国産業の国際競争力に起因するものではない、と私は受け止めています。また、2018年度経常黒字+14兆円余りの中で、第一次所得収支が+21兆652億円に上っており、さらにそのうちの約+20兆円ほどは直接投資の収益で、かつて大きかった証券投資の収益は+7兆円弱に過ぎません。いずれにせよ、海外投資による収益の黒字が、財サービスの輸出入に基づく貿易黒字よりもはるかに大きくなっています。

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2019年5月13日 (月)

基調判断が「悪化」に引き下げられた3月統計の景気動向指数をどう見るか?

本日、内閣府から3月の景気動向指数が公表されています。今年に入って1月統計でCI一致指数が大きく下降して、基調判断が「事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高い」とされる「下方への局面変化」に下方修正されて注目が集まっていたところ、CI先行指数は前月差▲0.9ポイント下降して96.3を、CI一致指数も▲0.9ポイント下降して99.6を、それぞれ記録し、基調判断は「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正されています。まず、日経新聞のサイトから記事を引用すると以下の通りです。

3月の景気動向指数、判断「悪化」に 6年2カ月ぶり
内閣府は13日、3月の景気動向指数(CI、2015年=100)速報値を発表した。景気の現状を示す一致指数は99.6と前月より0.9ポイント下がった。指数の推移から機械的に決まる基調判断は下方修正され、2013年1月以来6年2カ月ぶりに「悪化」となった。この表現は景気が後退局面にある可能性が高いことを示す。
政府は5月中にまとめる月例経済報告で公式の景気認識を示す。これまで「回復」としてきた表現を修正するかどうかが焦点になる
一致指数が低下したのは、中国経済の減速で中国向けの輸出が落ち込んだ影響が大きい。特にアジア向けの半導体製造装置の出荷などが低迷した。
内閣府が指数に基づく機械的な景気判断を示すようになったのは08年4月以降。指数の動きに照らして「改善」などの基調判断を示す。近年は16年10月から18年8月まで23カ月連続で「改善」だった。18年9~12月は「足踏み」、19年1~2月は「下方への局面変化」となっていた。
過去に判断が「悪化」となった局面は08年6月~09年4月、12年10~13年1月の2回ある。いずれも専門家が事後的に判定した景気後退期と重なる期間が多い。
ただ一致指数以外にも景気の状況を示す指標はある。例えば雇用情勢は依然として堅調との見方が多い。内閣府の担当者は「政府としての正式な景気判断は月例経済報告で行う」と説明した。政府は参院選や消費増税を控える今後の政治日程も念頭に、慎重に経済情勢を見極める。

いつもながら、包括的によく取りまとめられた記事だという気がします。でも、景気局面がビミョーな時期に入りましたので、かなり熱心に取材したのかインタビュー結果も多く、通常の月に比べてとても長い記事になっています。続いて、下のグラフは景気動向指数です。上のパネルはCI一致指数と先行指数を、下のパネルはDI一致指数をそれぞれプロットしています。影をつけた期間は景気後退期を示しています。

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ということで、引用した記事にもある通り、3月のCI一致指数に基づく景気の基調判断は「悪化」に下方修正されています。内閣府の「CI の『基調判断』について」に従えば、先月までの「局面変化」は、「事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。」と定義され、基準は「7ヶ月後方移動平均の符号が変化し、1ヶ月、2ヶ月、または3ヶ月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。」とされています。他方で、「悪化」については、「景気後退の可能性が高いことを示す。」と定義され、基準としては「原則として3ヶ月以上連続して、3ヶ月後方移動平均が下降した場合。」に適用されることとされています。そもそも、景気判断は景気動向指数のCI一致指数だけで決まるのではなく、総合的に判断されるものですし、中でも、統計的には景気動向指数よりもヒストリカルDIの方が重視されます。
本日公表の3月統計では、投資財出荷指数(除輸送機械)、耐久消費財出荷指数、生産指数(鉱工業)、有効求人倍率(除学卒)、商業販売額(卸売業)(前年同月比)などのマイナス寄与が目立っています。引用した記事には雇用はまだ「堅調」との評価が見られますが、有効求人倍率がマイナス寄与しているのも事実です。また、単月統計ではあるものの、やっぱり、消費者向けの需要が弱い気もします。いずれにせよ、先週木曜日5月9日付けで消費者態度指数を取り上げた際にも言及しましたが、実体経済の景気動向指数とマインドが相乗効果をもって低下する可能性は否定できません。他方で、10月からの消費税率引き上げ前には何らかの規模での駆け込み需要が発生することも予想され、決してサステイナブルではないながらも、一時的な需要の高まりは発生します。やや景気動向は複雑になってきたようです。

最後に、私の方で簡単に取りまとめた「CIによる景気の基調判断」の基準のテーブルを以下に記しておきます。あくまで私自身のメモですので、正確には内閣府の資料をご参照ください。

基調判断定義基準
① 改善景気拡張の可能性が高いことを示す。原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が上昇した場合。
② 足踏み景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す。3か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
③ 局面変化事後的に判定される景気の山・谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。7か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。
④ 悪化景気後退の可能性が高いことを示す。原則として3か月以上連続して、3か月後方移動平均が下降した場合。
⑤ 下げ止まり景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す。3か月後方移動平均の符号が変化し、1か月、2か月、または3か月の累積で1標準偏差分以上逆方向に振れた場合。

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2019年5月12日 (日)

塁上を賑わせつつも初モノ投手を打ち崩せず中日に完敗!!!

  RHE
中  日210020000 580
阪  神200000000 271

昨日の試合は別用あって見られなかったので、今日は試合開始前から気合を入れて観戦しましたが、先発才木投手が序盤から打ち込まれた上に、打線も塁上を賑わせつつも初モノ投手に決定打なく、中日に完敗でした。特に、最終回こそヒットが出たものの、近本選手がお疲れの様子で少し気がかりです。また、バントの成功不成功もカギになりましたし、内外野の守備の差も見せつけられた気がします。

ジャイアンツ戦は今季初勝利目指して、
がんばれタイガース!

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2019年5月11日 (土)

今週の読書は左翼エコノミストの経済書をはじめとして計6冊!

月曜日が10連休の最終日だったとはいえ、ほぼほぼゴールデンウィークも終わって、今週の読書は、左翼的なエコノミスト・アクティビストの経済書をはじめとして以下の6冊です。今日の土曜日も、いいお天気で気温も上がった昼間のうちに自転車で周辺図書館を回り終えており、来週も数冊は読みそうな予定です。

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まず、ラジ・パテル『値段と価値』(作品社) です。著者は、英国生まれで現在は米国テキサス大学で経済学の研究者をしています。研究だけでなく、ジャーナリストとして情報を発信したり、アクティビストとして1999年シアトルにおけるWTO閣僚会議に対する抗議行動を組織したことでも有名です。英語の原題は The Value of Nothing であり、2010年の出版です。ということで、本書では、マルクス主義の影響も強く見られ、シカゴ学派に代表されるような現在の主流派経済学が圧倒的に支持している市場における効率的な価格付けを認めていません。例えば、マクドナルドのビッグマックは日本では390円、スイスは728円、エジプトは195円で販売されていますが、実は、森林保全などの環境、あるいは、ほかの社会的コストを加えて試算すると、助成金なども含めて、原価だけでも200ドルを超える、といった説を持ち出すとともに、市場の公正さに関する疑義も呈しつつ、市場経済に対する疑問を並べています。私もこれは気になっているところで、労働者の賃金を低く抑えて、労働分配率を引き下げつつ、現在に日本では企業が果てしなく内部留保を溜め込んでいます。これは、市場に分配機能が備わっておらず、政府の介入が必要な根拠とされてきましたが、実は、市場が公正な価格付けに失敗している、というのが本書の著者の主張です。そうかもしれません。そして、現在の民主主義社会におけるマネーの役割は、教育を受けたり、病気の際に医者にかかったり、食料を買ったりすることを通じて、社会で自由になるための権利である、とも主張しています。これはその通りです。しかも、私が従来から指摘している通り、民主主義は1人1票で決定する原則なんですが、市場経済は利用可能な購買力で加重平均された決定となります。最後に、著者はかなりの程度に直接民主主義的な市民参加を通じて、例えば、ポルトアレグレの市民参加型予算などの例を示し、直接行動の重要性を訴えます。ただ、私の目から見て、フリーソフトウェアは少し違う気もします。いずれにせよ、経済だけでなく、広く現代社会の暗部を直視し、その解決に向けた方策を提示しており、我が国でももっと広く読まれるべき書だという気がします。

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次に、リチャード・ブックステーバー『経済理論の終焉』(パンローリング) です。著者は、モルガン・スタンレーやソロモン・ブラザーズなどの投資銀行、また、ヘッジファンドでリスク管理の責任者を務めた後、米国財務省の勤務を経て、現在はカリフォルニア大学で研究者をしています。英語の原題は The End of Theory であり、2017年の出版です。本書についても、先の『値段と価値』と同じように、合理的なホモ・エコノミクスを前提とするシカゴ学派的な主流派経済学を批判し、タイトル通りに、少なくとも金融論においては経済理論は終焉し死んだと結論しています。その上で、表紙画像にあるように、エージェントベースのモデルを再構築し、理論に基づいた構造パラメータに依存するモデルではなく、新たな変化に対応して柔軟に構造パラメータを変更できるような、というか、ここまでくると構造パラメータではなくなるわけですが、柔軟なモデルを提唱しています。私はすでに定年退職して、もう官庁エコノミストではなくなりましたし、不勉強にしてエージェントベースのモデルというのは理解がはかどりませんが、要するに、代表的な個人を1人だけ想定する主流派経済学ではなく、異質な個人の集団を考える、ということなんだろうと思います。でも、金融に関しては、本書でも指摘している通り、流動性の出し手の問題がある一方で、本書では指摘していない取引の調整速度の問題もあります。メチャクチャに調整速度が速いわけです。それを、言葉は悪いんですが、エッチラオッチラとモデルを修正することで調整スピードに追い付けるかどうかは、実務的に疑問が残ります。ただ、そういった現実の金融動向に即した調整可能なモデルの構築が有効であろうとは直感的に感じます。もうひとつ疑問なのは、異質な個人がヒューリスティックに解を求めようとするかどうかです。異質であるがゆえに、ヒューリスティックでない方法で、カーネマン教授のいうシステム2で解を求める可能性があるような気もします。いずれにせよ、本書で著者が指摘する現在の主流派経済学のモデルに関する難点はかなり当たっていて、異質な個人から成る上にかなり複雑でアルゴリズムで解明できない人間の判断をモデル化するのに、現在のような著者のいう「演繹的で公理的な手法の妥当性は低くなっていく」のは事実だろうと思いますし、リカーシブで柔軟なモデルがより妥当性高い可能性は否定できません。しかし、実際の危機の際に有効かどうかは経験が不足している気もします。

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次に、齊藤孝浩『アパレル・サバイバル』(日本経済新聞出版社) です。著者は、ファッション流通コンサルタントで、専門は店頭在庫最適化だそうです。その著者の主張によれば、アパレル業界では10年おきくらいにパラダイムシフトがあり、最近では、1998年ころにユニクロなどのSPA型のビジネスモデルの展開が始まり、2008年のH&Mの日本上陸に始まるファストファッションのブームも2018年にそのH&M1号店が閉店して終了し、時代はオムニチャンネルなどのデジタル展開が始まる、というわけです。私自身のワードローブを見ても、確かに、フルタイムのキャリアの公務員だったころから、まあ、行政職ではなくて研究職の官庁エコノミストだったせいもあって、オフィスに着て行く洋服までもユニクロとGUが多かったような気がします。オックスフォードのボタンダウンシャツをトップに着て、ボトムスはチノの細身のパンツ、季節によってはソフトジャケットを上に着て、クールビズではない季節でもネクタイを締めることもなく、足元はリーガルのビジネスシューズなんぞはとっくに脱ぎ捨てて、一応、皮革製ではあるもののあんまりビジネス向きではない靴を履いたりして、時には、デッキシューズにベリーショートのソックスを合わせることもありました。今や、定年退職したパートタイマーですので、かなり服装は乱れています。自分のことはさて置いて、本書では、アパレルの小売ないし流通と、アパレルに限定されない小売業ないし流通を、ややごっちゃに論じているところもありますが、アパレルの今後の方向を探る上でとても参考になりました。例えば、H&Mといったファストファッションから、さらに低価格を思考し都市型のPRIMARKのようなウルトラ・ファストファッションがロンドンで移民も顧客対象としつつ展開しているとか、オンラインでウルトラ・ファストファションを牽引するASOS、あるいは、著名ブランドの過剰在庫をキャッシュで買い取ってディスカウント販売するT.J.Maxxなどの巨大なオフプライスストア、などなど、著者は、日本では欧米先進国から10年遅れでトレンドを追いかける傾向があると指摘しますが、こういったアパレルの業態が今後は日本でも出てくるのかもしれません。最後は、もちろん、Eコマースの展開です。ただ、我が国のZOZOタウンについては、ZOZOスーツの失敗などがあり、著者が考えるほど順調には伸びていない印象もあります。さらに、オンライン販売については、AMAZONがそうだったように、洋服やファッション・アイテムというよりは、書籍やCDなどのように大きな差別化がなされていない商品から始まるような気もしますが、いずれは洋服やアクセサリなどの嗜好性の強い財にも広がるのは確実です。ブランドへのロイヤリティをいかに形成し維持するかはマーケターの腕の見せ所かもしれません。

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次に、アランナ・ミッチェル『地磁気の逆転』(光文社) です。著者はカナダのトロント在住で、ニューヨーク・タイムズやCBCラジオなどで活躍する科学ジャーナリストです。本書の英語の原題は The Spinning Magnet であり、2018年の出版です。本書では、地磁気の謎に挑んだ歴史上の科学者たちの業績を追いながら、そもそも磁力とは何なのか、なぜ地球は巨大な磁石となっているのか、そして、何よりも、なぜ磁気逆転が起こるのか、加えて、来るべき磁気逆転の危機を前にいかに備えるべきか、などなどについての考察を進めています。地磁気、というか、磁場研究については、私のような専門外の人間でも知っているのが第15章のファラデーと第16章のマクスウェルではないでしょうか。でも、右手の法則だとか、左手の法則だとかのファラデーの研究成果を数式で簡単明瞭に示したのがマクスウェルだとは知りませんでした。ただ、歴史を離れて磁気や地磁気の研究に関しては、私にはとても難しく、例えば、本書のテーマである地球磁場の逆転については、p.240に簡単な説明があって、3段階を経ることとされており、双極子成分が弱まり、すなわち、S極とN極の差が小さく不明瞭になり、次に、磁極が地球の反対側にすばやく移動し、最後に、双極子成分が再び大きく成長する、ということになります。各段階に数百年かかる可能性も示唆されていますし、正確なことは誰にも判らないそうです。直近の地磁気の逆転は67万年前に起こり、100年で逆転が終了したという研究もある一方で、1万年かかったという研究も少なくないようです。ですから、私のような専門外に者に地磁気の逆転が正確に理解できるはずもなく、雰囲気として感じ取れるだけ、という気もします。自然科学の分野でこのように経済学のように曖昧模糊とした分野があるとは知りませんでした。もっと、天文学の星の運行のように未来永劫まで正確に予測できるんだと思っていましたが、いずれにせよ、地磁気の逆転に関しては不明な点が多いようです。そして、何らかの要因で地磁気が乱れると、まあ、大規模な逆転までいかないとしても、多くの動物の行動に影響を及ぼすとともに、スマートに制御された電気の配電などにも強烈なインパクトがあります。コイルと磁石で発電しているんですから当然です。私のようなシロートから見て、それを防ぐ方法はないような気もします。まあ、よく判らないながらも恐ろしいことだという感覚は伝わって来ました。最後に、本書にはまったく図版が用意されていません。私の理解がはかどらなかった要因のひとつかもしれません。シロート向けとはいわずとも、地球磁場のマップくらいは欲しい気がします。

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次に、中川越『すごい言い訳!』(新潮社) です。著者は、編集者を経てエッセイストになっていますが、手紙に関する著作が多いようです。ということで、本書は文豪や名だたる評論家・エッセイストの手紙の中から、言い訳に関するものを集めています。7章建てとなっていて、恋愛、お金、無作法の詫び、頼まれごとの断り、失敗や失態、ありがちなケース、の横断的な6章に加えて、最終章は夏目漱石の言い訳を集めています。基本パターンは何らかの不都合、すなわち、浮気の発覚とか、借金返済の滞りとか、作品がかけなくなったりとか、などなどに対して詫びをいっておいて、それでも、責任回避をしたり、不都合のように見えるが実は不都合ではない、といい張ったりするわけです。もちろん、「記憶にない」という言い訳の横綱を持ち出したり、言い訳が逆効果になったりする例もあります。こういった言い訳を、最終章の夏目漱石はいうまでもなく、名だたる文豪や評論家などの筆で生計を立てている有名人の手紙から抽出していますので、表現力が豊かな上に、そもそもがいわゆる芸術家ですから、私のような一般ピープルとは違って、表現する前の発想がそもそも常識を超えている場合もあったりします。さらに、そういった言い訳をする場合でも、というか、言い訳をする場合だからこそなのかもしれませんが、人柄や性格といったものが手紙ににじみ出ているような気がします。そして、中にはこういった著述業を生業とする有名人の文才にしてすら苦しい言い訳も散見され、いろんな人生があるものだと実感させられます。私は、文豪などの言い訳を数多く拝読して、今後の人生で使うことがあるかもしれない、などといった下心がなくもなかったんですが、巻末の「おわりに」で著者がしみじみと「なるほど言葉は、言い訳は、極力控えるのが賢明です。」というのが結論なのかもしれません。

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最後に、杉本昌隆『弟子・藤井聡太の学び方』(PHP文庫) です。著者は8段のプロの棋士であり、何冊かの将棋本も出版していますが、それよりも、タイトルや上の表紙画像からも理解される通り、藤井聡太七段の師匠としても有名です。子弟ともに名古屋周辺の東海在住です。昨年2018年2月に単行本として出版された第30回将棋ペンクラブ大賞受賞作品の文庫本化です。ということで、今さらながら、史上最年少で中学生のプロ棋士になり、プロデビュー後の29連勝、1年間で3回の昇段、朝日杯将棋オープン戦で史上2人目の連覇などなど、将棋界を超えて広く一般に知名度を上げ、数々の記録を塗り替えて、一大ブームを巻き起こした藤井聡太七段の師匠がいかに弟子を導いたのか、がテーマとなっています。本書でも着目している「思考力」、「集中力」、「忍耐力」、「想像力」、「闘争心」といった将棋の棋士として必要な資質に加え、「自立心」や「平常心」も含め、決して棋士として将棋に強くなるために必要、というだけでなく、将棋を離れても人間として大成し、人生を豊かにするために欠かすことができません。一応、私も教員の経験があり、地方国立大学の経済学部2年間出向し、最大400名ほどの学生を相手にする講義を受け持った記憶もありますが、大学教授というのは決して勝負師ではありませんし、勝負師を育てるわけでもありません。ただし、お金を払って教えを請うアマチュアを、お金を取れるプロに仕立て上げるという点では同じです。そこは、小学校や中学の教師と大学の教員の違いです。その意味で、決して勝負師を育てるわけではありませんが、お金を取れるプロに育てるという点については、同様の経験をしたつもりです。でもやっぱり、違いは大きいです。第4章が読みどころです。私が育てたのは平凡極まりないサラリーマン予備軍ではないかと思いますが、そうではなくて、その世界のトップになるには努力だけでは足りないわけで、持って生まれた才能というものの大切さと、それに気づく感性の重要性を理解できた気がします。

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2019年5月10日 (金)

投打がかみ合って中日に完勝!!!

  RHE
中  日020000100 370
阪  神05001001x 7100

8時過ぎに帰宅すると試合展開が早くて8回に入っていましたが、何はともあれ、投打がかみあって中日に完勝でした。先発西投手は序盤の2回に先制されながらも、すぐに逆転してくれた打線の援護もあって、7回3失点の好投で3勝目を上げ、2番手ジョンソン投手も安定した投球でした。打つ方では、4番に座り続ける大山選手が3打点で、新外国人マルテ選手にもホームランが出ました。好調な時のいい勝ち方だった気がします。

明日も、
がんばれタイガース!

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大和総研による米国の対中国製品関税率25%への引き上げの影響試算やいかに?

やや旧聞に属する話題かもしれませんが、今週月曜日の5月7日に大和総研から「『米中冷戦』再開の政治経済分析」と題するリポートが明らかにされています。米中間の通商協議が決裂した際の政治力学的な解析と世界および日本経済への影響試算がなされています。前者の政治力学的な解析はやや専門外ですので、世界経済と日本経済への影響試算に限って、簡単に取り上げておきたいと思います。まず、リポートから要約5点のうち世界経済・日本経済への影響試算に関する2点を引用すると以下の通りです。

[要約]
  • 【世界経済に与える影響の網羅的分析】米国の対中関税は、2,353億ドルの輸入品目に対して賦課される。追加関税総額は現行で305億ドルだが、25%へ引き上げられれば588億ドルとなる。なお、今回問題となる約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きい。大和総研のマクロモデルを用いた試算によれば、GDPの下押し効果は中国▲0.22%、米国▲0.28%、日本▲0.02%となる。
  • 【日本経済への含意】日本にとって最も懸念すべき問題は「二次的効果」だ。すなわち、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の対中輸出が顕著に減少する効果である。他方、米中冷戦が深刻化するほどに同盟関係が重要となり、米国による対日関税の引き上げリスクが後退することや、米中が関税を相互に賦課することで日本における代替生産が増加する「代替効果」は、日本経済にとって言わば「漁夫の利」となりうる点にも留意しておきたい。

まず、リポートでは、米中間の通商協議が難航している可能性が高いと指摘しつつ、決裂の可能性が高く、さらに、米中冷戦は両国間における経済のみならず安全保障や軍事・外交面も含めた覇権争いが決着するまで解決しない、と指摘し、米国は軍事的優位性を維持する上で経済力をはじめとする総合的な国力の両国間の格差の維持を必要とすることから、減税と関税が大きな意味を持つ一方で、冷戦は消耗戦であり同盟諸国による中国包囲網を必要とする、と結論しています。このあたりは、専門外の私にはよく判りませんが、そうだという気もします。

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その上で、関税引き上げの影響試算の概要を上のグラフのように試算しています。その前提は、今回の約2,000億ドル相当の輸入品目に対する追加関税については、記憶装置の部品などの電子機器の部品、携帯電話を含む電話機のウェイトが大きく、パブリック・コメントを受けて除外された品目では、化学製品や原料プラスチック製品などの金額が大きかったとし、他にはスマートウオッチなどの消費者家電、繊維、農産品などもリストの対象から外れている、と指摘し、他方で、中国の対米報復関税は、対象品目の輸入総額1,109億ドル、追加関税総額は165億ドル、対象品目に対する平均追加関税率は14.9%と見込んでいます。そして、我が国に対する経済的影響としては、モデル上の試算は2次効果と代替効果が描写できない深刻な弱点を抱えている、と指摘しつつ、前者については、中国から米国に輸出されている電子機器を生産するために必要となる部材や資本財の我が国からの対中輸出が顕著に減少するリスクがある一方で、後者については、逆に、「漁夫の利」があり得るとし、米中が関税を相互に賦課することで日本をはじめとする周辺関係国が相対的な価格競争力を向上させて代替生産が増加する可能性を指摘しています。

最後に、私の直感なんですが、このリポートでも欠けているのは、国内の企業や消費者のマインドを低下させる効果です。昨日公表された消費者態度指数でも消費者マインドは引き続き低下を続けていることが示され、米中間の貿易摩擦は企業や消費者の将来見通しを通じて内需の回復に水を差す可能性もあり得ることは忘れるべきではありません。

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2019年5月 9日 (木)

7か月連続で低下を続ける消費者態度指数はそろそろ下げ止まるか?

本日、内閣府から4月の消費者態度指数が表されています。前月から▲0.1ポイント低下して40.4を示しています。これで、7か月連続の低下を記録したことになります。統計作成官庁である内閣府は基調判断を「弱まっている」に据え置いています。まず、ロイターのサイトから記事を引用すると以下の通りです。

4月消費者態度指数は7カ月連続悪化、マインド「弱まっている」=内閣府
内閣府が9日発表した4月消費動向調査によると、消費者態度指数(2人以上の世帯・季節調整値)は、前月から0.1ポイントの低下となり、40.4に落ち込んだ。低下は7カ月連続。構成する4項目のうち、「暮らし向き」「雇用環境」が改善、「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」が低下した。
内閣府は消費者態度指数からみた消費者マインドの基調判断を「弱まっている」として据え置いた。
1年後の物価見通しについては、「上昇する」との回答が4カ月連続で増加。「低下する」、「変わらない」が減少した。

いつもの日経新聞ではないんですが、なかなか簡潔によく取りまとめられた記事だという気がしますが、続いて、消費者態度指数のグラフは下の通りです。ピンクで示したやや薄い折れ線は訪問調査で実施され、最近時点のより濃い赤の折れ線は郵送調査で実施されています。また、影をつけた部分は景気後退期を示しています。

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消費者態度指数を構成するコンポーネントごとに詳しく前月差を見ると、「耐久消費財の買い時判断」が▲1.1ポイント低下し38.8、「収入の増え方」が▲0.1ポイント低下し40.5となった一方で、「雇用環境」が+0.7ポイント上昇し44.4、「暮らし向き」も+0.3ポイント上昇し38.0となりました。今年2019年に入って、1月や3月はコンポーネントの4指標すべてが前月差マイナスでしたし、2月も「雇用環境」を除く3指標がマイナスでしたから、4月統計では消費者態度指数が前月からの低下幅を▲0.1ポイントに縮小するとともに、半分の2指標がプラスを示していますので、7か月連続の低下はものすごく長いとはいえ、そろそろ下げ止まりの局面に入った可能性がうかがえます。ただ、実体経済の動向を示す景気動向指数が来週月曜日の5月13日に公表される予定となっており、景気の基調判断が現在の「下方への局面変化」から「悪化」に下方修正されてる可能性があると私は考えており、そうすると、一気にマインドの方もさらに悪化する可能性が否定できません。加えて、近くこのブログの記事でも詳しく取り上げようと考えているところですが、米中間の貿易摩擦がさらに激化し、明日の5月10日から中国の輸出品のうち約2,000億ドル相当分について関税率が10%から25%に引き上げられる予定となっていて、少なくとも、マインド的には悪影響を及ぼすことは明らかです。

最後に、繰り返しになりますが、このブログでは昨年2018年7月24日付けで大和総研のリポートを引用して、米中間の貿易摩擦の経済的な影響をに着目しましたが、その続きで、日を改めて、同じ大和総研の新しいリポートを取り上げる予定です。米中貿易摩擦の行方は、企業や消費者のマインドにも、それなりのインパクトを持つんではないかと私は考えています。

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2019年5月 8日 (水)

骨折り損のくたびれ儲けでヤクルトと延長12回引き分け!!!

 十一十二 RHE
阪  神300000020002 7110
ヤクルト000000050002 7120

8回オモテまでは左団扇の楽勝の展開ながら、継投ミスでヤクルトと引き分けでした。夜の11時近くまでかかって、勝つチャンスは十分ありながら0.5敗くらいのカウントかもしれません。

次の中日戦は、
がんばれタイガース!

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ダイヤモンド・オンラインによる「『睡眠不足が多い』職業ランキング」やいかに?

昨日5月7日付けのダイヤモンド・オンラインの日本全国ストレスランキングにて「『睡眠不足が多い』職業ランキング【完全版】」が明らかにされています。1位は男性で「畜産」、女性で「ガソリンスタンドスタッフ」が上げられています。以下のテーブルの通りです。

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私も定年退職前から、ついつい寝不足に陥りがちな生活を送っていたんですが、年齢的に体力が逆についていかず、しっかり寝ないと起きている間の活動レベルが大きく鈍るような高齢者になってしまった気がします。それはそれで哀しいことかもしれません。

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2019年5月 7日 (火)

ダイヤモンド・オンライン記事に見る日本企業の役員報酬やいかに?

やや旧聞に属する話題ですが、4月25日付けでダイヤモンド・オンラインにて「役員なら年収は億を狙える! 1億円プレーヤーが最も多い企業とは?」と題する記事を見かけました。我が国で1億円以上の役員報酬を受け取っている主な経営者は以下のテーブルの通りだそうです。私が35年間勤め上げた公務員では考えられないんでしょうね。何ら、ご参考まで。

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2019年5月 6日 (月)

青柳投手が4失点でヤクルトに完敗!

  RHE
阪  神000002000 261
阪  神20020000x 462

初回にエラーから先制され4回にもホームランで加点され、先発青柳投手が4失点でヤクルトに完敗でした。昨日のサヨナラ勝ちからいいムードで試合に入ったような気がしたんですが、1回にいきなり失点して、そのままズルズルと、ヤクルト先発のブキャナン投手には初勝利を、梅野投手にも初セーブを献上し、さしたる見せ場もなくゴールデンウィークを終えました。

明日の秋山投手に期待して、
がんばれタイガース!

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2019年5月 5日 (日)

5番福留選手のセリーグ5万号ホームランで横浜にサヨナラ勝ち!!!

  RHE
横  浜010130000 5100
阪  神020002102x 7134

今日も終盤までもつれた試合で、5番福留選手のホームランで横浜にサヨナラ勝ちでした。先発高橋投手の足を引っ張るエラーなどで2回に先制されましたが、6~7回に着実に追いつき9回サヨナラでした。エラー4つにフィルダース・チョイスもありでよく勝てたものですが、何はともあれ横浜を3タテし、セリーグ5万号ホームランのオマケ付きでした。ヒーローインタビューのお子さまインタビュアーが2人とも鳥谷選手のファンだったのが、私には感激でした。

明日も青柳投手をもり立てて、
がんばれタイガース!

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2019年5月 4日 (土)

ゴールデンウィーク10連休の読書はさすがにたくさん読んで計8冊!

今週はゴールデンウィーク10連休で、さすがにかなり大量に読みました。経済専門書やテキストから進化心理学、ミステリっぽいエンタメ小説、新書に短編ミステリを収録した文庫本、などなど、以下の通りの計8冊です。やや短めの読書感想文を取りまとめています。

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まず、ローレンス・サマーズほか『景気の回復が感じられないのはなぜか』(世界思想社) です。上の表紙画像を見ると、何か、いかにも英語の原題が The Enigma of the Elusive Recovery であるかのような誤解を与えかねないんですが、私の想像するに、本書の原書に当たる本は出版されていないんではないかと思います。原書は存在せず、VOX や各論者のブログサイトにアップされた記事、また、テキストが入手可能な講演などをもとに邦訳を施したのであろうと私は受け止めています。その意味で、邦訳に当たった山形氏は翻訳者であるとともに、編集者なんだろうと思います。同時に、解説もしていたりします。ということで、いわゆる長期停滞論 Secular Stagnation、1930年代にハンセン教授が提唱した考えを現代に応用したサマーズ教授と、それに対する反論を提示したバーナンキ教授、さらに、コメントを寄せるクルーグマン教授の見方を紹介しています。すなわち、いわゆる Great Recession 以降の景気の低迷について、このまま放置すれば構造的な経済の停滞に陥ると警告し、財政政策の出動によるインフラ整備の必要性を論じるサマーズ教授に対して、通常の景気循環に異なる特徴は必ずしも多くなく金融政策で対応可能と反論するバーナンキ教授、さらに、ややサマーズ教授寄りの論陣を張るクルーグマン教授、という形になっています。私は、基本的に、バーナンキ教授の見方が正しいと感じており、ラインハート-ロゴフの This Time Is Defferent は、なくはないものの、それほどお目にかかれる機会は多くない、と感じています。ただ、ケインズ的に表現すれば、「嵐が過ぎれば波はまた静まるであろう」ではダメなわけであり、景気循環のひとつの局面だから何もしなくていい、ということにはならないと考えます。

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次に、 後藤和子・勝浦正樹[編]『文化経済学』(有斐閣) です。著者は、基本的に、文化経済学ないし経済学そのものの研究者です。タイトル通りに、文化経済学のテキストです。テキストとして、学部レベルなのか、大学院博士課程前期レベルなのかは、個々のレベルによるのかもしれません。文化経済学のテキストとしては、私の大学生のころにはすでに存在しており、ボウモル&ボウエンによる舞台芸術のパラドックスを取り上げたものでした。私の大学生の時には、芸術とは4分野であり、絵画や彫刻をはじめとする美術、小説などの文学、お芝居や舞踏などの舞台、そして、誰でも判りやすい音楽です。今では、これらはハイカルであり、これらに属さないアニメやマンガや映画などはサブカルに分類されます。文化経済学の厄介なところは、余りに外部経済が大きく、産業活動のようにGDPなどの統計で把握することが難しい点です。外部経済が大きいので、それなりに公的部門からの助成も必要ですし、スタジオなどのインフラ整備も欠かせません。官庁エコノミストをしていた私からすれば、メインストリームの経済学とはとても感じられませんが、インバウンド消費のもととなる観光産業への示唆も含めて、とても重要な分野に成長する可能性を秘めている気がします。

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次に、竹信三恵子『企業ファースト化する日本』(岩波書店) です。著者は、ジャーナリスト出身で、今は大学の研究者です。上の表紙画像に見えるサブタイトルのように、本書は安倍内閣が進める働き方改革に対する疑問や反論を提示しています。たじゃ、ジャーナリスト出身の著者ですから、統計を用いての計量的な分析ではなく、ケーススタディに終止しているんですが、どうも、ケースの選択が恣意的な気もします。特に、私が考える資本主義的な働き方改革とは、傾向的な利潤率の低下の果てに、絶対的剰余価値の生産に資する改革といえます。ですから、本書でも指摘されているように、長時間労働の容認が主たる内容になります。この点で本書の指摘はとても正しいんですが、ケーススタディの例がよくありません。教員やパートタイム公務員を取材していたんでは、働き方改革の本質に迫るには距離がある、といわざるを得ません。私は工場に働くブルーカラーが労働者の真髄だとは思いませんが、広く絶対的剰余価値の生産について取材することの必要性を痛感しました。着眼点も論旨も問題ないんですが、控えめにいっても、迫力のない単なる著者の心情の吐露に終わっています。

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次に、アラン S. ミラー & サトシ・カナザワ『進化心理学から考えるホモサピエンス』(パンローリング) です。著者は、いずれも米国の研究者です。進化心理学ですから、遺伝子の保存がすべてのクライテリアで、それを基にホモサピエンスを考えるんですから、セックスと結婚がすべてとなります。しかもしかもで、それでとてもよく我々の行動原理を説明できるんですから、なかなかに手強い相手かもしれません。私は進化心理学には圧倒的に反感を覚えていて、種の保存にここまで重点を置くのには反対です。その前に個の保存も必要なわけで、闘争に勝ち抜けるような暴力的な男性は遺伝子を残せる可能性が高くなるのは事実かもしれませんが、暴力的であれば個の存在を危うくする可能性も高まります。相打ちになって3番目の個が遺伝子を残す可能性もあるわけです。いずれにせよ、進化心理学的なセックスと結婚観は私には大いに疑問です。

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次に、葉真中顕『W県警の悲劇』(徳間書店) です。男尊女卑で旧態依然たる警察組織の中でも、特にセクハラなどが横行して後進県的な雰囲気の強いW県警における女性警官の活動をメインテーマにしています。特に、W県警初の女性警視となり、さらに警視正に昇進し県警部長に就任するとともに、念願の円卓会議に出席を果たす女性警察官の昇進と転落をさまざまな視点から描き出しています。なお、円卓会議とは、23年で異動するお飾りのキャリアの県警本部長に代わって、県警を実質的に動かす影の組織なんですが、これがそもそも組織防衛や隠蔽工作に熱心と来ています。ということで、基本は連作短編集となっていて、それほど本格的ではないにしてもミステリ短編です。もっとも、謎解きというよりも、極めて巧みに読者をミスダイレクションする小説の方が目立ちます。ややネタバレながら、特に第2話の「交換日記」は我孫子武丸『殺戮にいたる病』に肉薄する出来栄えだという気がします。一方で、千春の正体はそれほど難しくなく判るんではないかと思います。私が気がかりなのは、第1話の最後で失踪した警察官については、とうと最後まで謎解きがなされませんでした。ひょっとしたら、続きがあるのかもしれません。それから、読者によっては読後感の悪い「イヤミス」と受け止める向きもありそうな気がしました。

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次に、市川裕『ユダヤ人とユダヤ教』(岩波新書) です。著者は、東大人文研の研究者であり、もちろん、専門はユダヤ宗教だったりします。歴史、宗教、学問、社会あるいは経済からと、いくつかの視点からユダヤ人とユダヤ教について解説を加えています。私の歴史感覚や宗教感覚からすれば、ユダヤがローマ帝国に敗れ去った際に、ユダヤ人の信仰していたメシアはとうとう現れず、ユダヤ教はもうダメだ破綻した、というところからキリスト教が始まったんだと思っていましたが、まあ、私ごときシロートの考えですから少し違うようです。それから、十戎でも何でもいいんですが、殺すなかれとか、利子の禁止とかは、あくまで同朋、というか、同じ宗教の信者の間でのお話であって、キリスト教徒は聖地奪回のための十字軍でイスラム教徒をいっぱい殺しているんでしょうし、ユダヤ教徒とキリスト教徒の間で利子付きのの貸借が行われていても不思議ではありません。もう一度、私のシロートなりの解釈ですが、ユダヤ人とはユダヤ教徒のことであり、遺伝子によってユダヤ人の特徴が語られるんではない、と認識しています。ですから、ユダヤ人論は人文研で宗教を基礎として研究されていて医学部で遺伝や優生学的な研究が行われているわけではない、と私は理解しています。

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次に、折原一ほか『自薦 THE どんでん返し 3』(双葉文庫) です。シリーズ3作目の自薦による、どんでん返しの短編ミステリ集です。タイトル通り自薦です。執筆陣が、 折原一、北村薫、鯨統一郎、長岡弘樹、新津きよみ、麻耶雄嵩の6人ですから、とても豪華な短編アンソロジーです。それから、このシリーズからのスピンアウトとして「新鮮THEどんでん返し」というシリーズも誕生しています。2017年暮れの発売で、私も読みました。

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最後に、ロバート・ロプレスティ『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』(創元推理文庫) です。本邦初公開の作家の作品集です。レオポルド・ロングシャンクスこと、シャンクスなるミステリ作家を主人公とする連作短編ミステリ集です。本邦初公開ですから、もちろん、私も初めて読んだんですが、これは掘り出し物です。

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2019年5月 3日 (金)

米国雇用統計は堅調で失業率は50年振りの低水準も利上げは停止?!

本日、米国労働省から4月の米国雇用統計が公表されています。非農業雇用者数は前月統計から+263千人増と大きな回復を示し、失業率もさらに低下して同じ3.6%を記録しています。いずれも季節調整済みの系列です。まず、USA Today のサイトから記事を手短に4パラだけ引用すると以下の通りです。

Economy added 263,000 jobs in April, unemployment falls to 3.6%, new 50-year low
Hiring was strong for the second straight month in April and unemployment fell to a new 50-year low, easing concerns that a slowing global and U.S. economy could dampen hiring.
Employers added a booming 263,000 jobs, the Labor Department said Friday. The unemployment rate fell from 3.8% to 3.6%, lowest since December 1969, but that was because nearly 500,000 Americans left the labor force, which includes people working and looking for jobs.
Economists had estimated that 190,000 jobs were added last month, according to a Bloomberg survey.
Another positive: Job gains for February and March were revised up by a modest 16,000. February's total was upgraded from 33,000 to 56,000 and March's was revised down from 196,000 to 189,000.

やや長く引用してしまいましたが、いつもながら、包括的によく取りまとめられている印象です。続いて、いつもの米国雇用統計のグラフは上の通りです。上のパネルから順に、非農業部門雇用者数の前月差増減の推移とそのうちの民間部門と失業率をプロットしています。いずれも季節調整済みの系列であり、影をつけた部分は景気後退期です。全体の雇用者増減とそのうちの民間部門は、2010年のセンサスの際にかなり乖離したものの、その後は大きな差は生じていません。

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失業率の3.6%なんですが、先月からさらに0.2%ポイント改善し、ほぼ半世紀振りの低水準まで低下しています。非農業部門雇用者の伸びも、2月に寒波などの天候要因で大きく鈍化しましたが、早くも4月には+263千人増ですから、反動による増加といった要因もあるかもしれません。いずれにせよ、引用した記事にもある通り、市場の事前コンセンサスは+190千人増くらいでしたので、これを大きく上回っています。産業別には、ヘルスケアや接客業などサービス分野の雇用が伸びています。製造業の雇用も伸びていますが、4月は+4千人にとどまりました。ADPも4月は+275千人増でしたから、米国の雇用は極めて堅調と考えるべきです。ただ、米国経済が拡大している中で、トランプ政権からの強い圧力もあって、連邦準備制度理事会(FED)は前回の連邦公開市場委員会(FOMC)では利上げを一時停止した上で、今年2019年いっぱいは利上げを見送る可能性を強く示唆しています。このところ、物価上昇率が+2%を上回るようになっていることから、まさか、トランプ政権の圧力に屈して、政策金利を1%まで低下させるとは私は考えていませんし、利上げを停止したところで、世界経済が減速する中で米国経済だけが加熱に向かうとも思われませんが、いずれにせよ、今後の米国の金融政策動向にも注目しています。

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ただ、景気動向とともに物価の番人としてデュアル・マンデートを背負ったFEDでは物価上昇圧力の背景となっている時間当たり賃金の動向も注視せねばならず、その前年同月比上昇率は上のグラフの通りです。米国雇用は底堅くて、労働市場はまだ逼迫を示しており、賃金もジワジワと上昇率を高めています。すなわち、4月は前年同月比で+3.2%の上昇と、昨年2018年8月から+3%の上昇率に達して、半年以上に渡って3%台の上昇率が続いています。日本や欧州と違って米国では物価も賃金上昇も+2%の物価目標を上回る経済状態が続いているんですが、利上げを停止して大丈夫なんでしょうか?

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4番大山選手の長打で横浜との延長戦にサヨナラ勝ち!!!

  RHE
横  浜0100000000 150
阪  神0000010001x 160

昨日は終盤までもつれての敗戦でしたが、今日は4番大山選手の長打で横浜との延長戦にサヨナラ勝ちでした。昨日と異なり、先発勝負なら西投手の方が格上、と思っていたんですが、今日も同点でリリーバー勝負にもつれ込み、最後には4番の一打で決着しました。お子さんによるキッズインタビューも可愛らしく、とてもいい試合でした。ただひとつだけ、鳥谷選手ファンの私としては、9回ウラの満塁機に鳥谷選手に決めて欲しかった気がします。

明日もメッセンジャー投手をもり立てて、
がんばれタイガース!

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2019年5月 2日 (木)

好投の岩田投手に援護なく広島に敗戦!!!

  RHE
広  島000000004 480
阪  神000000000 091

投手戦で最終回のクローザー勝負だったんですが、ドリス投手が失点して万事休すで広島に敗戦でした。昨日の段階で予告先発を見て、先発投手の勝負なら広島に分があるような気がしたんですが、午後から外出して帰宅すると、8回まで両チームゼロ行進で、リリーフ勝負になれば阪神に分があると思ったのも束の間、さすがに、セリーグ王者の広島に3タテは叶いませんでした。好投の岩田投手に援護なく悔しい敗戦だった気がします

明日の横浜戦は、
がんばれタイガース!

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2019年5月 1日 (水)

打線が効率的に得点して広島に連勝!!!

  RHE
広  島002000000 2112
阪  神00014100x 640

先発才木投手が何とか5回2失点でしのぎ、5回に打線が効果的に得点して逆転で広島に連勝でした。試合を終わってみれば、広島11安打に対して阪神はわずかに4安打で、決して猛打爆発というわけでもなかったんですが、フォアボールに加えてもらいもののエラーを絡めて、盗塁に効果的なタイムリーと、極めて効率よく得点しました。マルテ選手の来日初ホームランがついつい目立ちますが、5回の代打北条選手の絶妙の送りバントも忘れるべきではありません。才木投手が代打を送られて、6回からリリーフ陣でつなぎましたが、4人ともピシャリとゼロで抑えて、甲子園を満員にした阪神ファンも、4連勝で勝率5割に満足の1戦だったのではないでしょうか。

明日も、
がんばれタイガース!

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